説明

顔料分散物、インクジェット記録用インク及びその製造方法、並びに、インクジェット記録方法

【課題】流動性、粒径分布、及び、高濃度インクへの適応性に優れた顔料分散物を提供すること。また、保存安定性に優れたインクジェット記録用インク及びその製造方法、並びに、インクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、カチオン重合性化合物を含むことを特徴とする顔料分散物、前記顔料分散物を使用したインクジェット記録用インク及びその製造方法、並びに、前記インクを使用したインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散物、インクジェット記録用インク及びその製造方法、並びに、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
最近では、家庭用又はオフィス用の写真印刷や文書印刷に留まらず、インクジェットプリンターを用いた商業用印刷機器や産業用印刷機器の開発が行なわれるようになってきた。
家庭用又はオフィス用のインクジェットインク、写真プリント又は文書印刷を意図して開発されてきたケースが多く、商業用や産業用の印刷物としては色再現性が狭いこと、また、基材が紙や多孔質基材などの吸収性の被記録媒体に限定されるなどの問題があった。
上記課題を解決する方法として、これまでに様々な技術が提案されており、例えば、特許文献1には着色剤をラジカル重合性化合物に分散又は溶解させた紫外線硬化型インクジェットインクなどが開示されている。
【0003】
ただし、紫外線硬化型インクジェットインクを用いた場合の問題点として、異色領域間、色濃度の差が大きく異なる領域間、又は、着色部と非着色部の領域間での硬化膜の厚みの差に起因した違和感(以下、レリーフ感)が挙げられる。また、全体としても数十μmの厚みを有した画像が形成されるために、従来のフレキソ印刷やオフセット印刷とは異なった風合いの仕上がりとなる。このような紫外線硬化型インクジェットインクを用いた場合の硬化膜の厚みに起因した違和感や従来印刷との風合いの違いを解消することが強く望まれている。
【0004】
これらを解消する手段としては、紫外線硬化型インクジェットインクの着色剤の濃度を上げ、少ないインク量で画像を形成することが挙げられる。しかしながら、(1)着色剤の濃度を上げた場合は、粘度上昇による吐出不良が発生する。特にイエローやマゼンタインクにおいて増粘による吐出不良が顕著になる。また、(2)少ないインク量で画像を形成した場合は、硬化膜の速乾性や定着性が劣化すしたりする。以上のように、紫外線硬化型インクジェット印刷におけるレリーフ感の低減が実現できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−504778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、流動性、粒径分布、及び、高濃度インクへの適応性に優れた顔料分散物を提供することである。
本発明の他の目的は、保存安定性に優れたインクジェット記録用インク及びその製造方法、並びに、インクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、下記<1>、<4>、<6>及び、<7>によって達成された。好ましい実施態様である<2>、<3>及び<5>とともに以下に列記する。
<1>15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、カチオン重合性化合物を含むことを特徴とする顔料分散物、
<2>高分子分散剤をさらに含む、<1>に記載の顔料分散物、
<3>ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩をさらに含む、<1>又は<2>に記載の顔料分散物、
<4><1>〜<3>のいずれか1つに記載の顔料分散物、並びに、光酸発生剤及びカチオン重合性化合物を含むことを特徴とするインクジェット記録用インク、
<5>前記イソインドリン系有機顔料がピグメントイエロー185であり、かつ、インクジェット記録用インク中の前記イソインドリン系有機顔料の含有量がインク総重量に対し7重量%以上10重量%以下である<4>に記載のインクジェット記録用インク、
<6>15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、カチオン重合性化合物を含む混合物を顔料分散物とする分散工程、並びに、前記顔料分散物を、光酸発生剤及びカチオン重合性化合物を含む希釈組成物により希釈する希釈工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法、
<7><4>又は<5>に記載のインクジェット記録用インクを、1画素当たりの付与液滴量が2pL以上10pL以下であって、さらに、最大付与量が2.2mg/cm2超8.8mg/cm2未満、被記録体に付与することを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動性、粒径分布、及び、高濃度インクへの適応性に優れた顔料分散物を提供することができた。
また、本発明によれば、保存安定性に優れたインクジェット記録用インクインク及びその製造方法、並びに、インクジェット記録方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に用いることができるインクジェット記録装置の一例を示す模式図を表す。
【図2】図1に示したインクジェット記録装置10におけるインクジェット記録用ヘッドユニット部12の拡大模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<顔料分散物>
本発明の顔料分散物は、15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、カチオン重合性化合物を含むことを特徴とする。
【0011】
(イソインドリン系有機顔料)
本発明に用いることができるイソインドリン系有機顔料としては、イソインドリン構造を有する顔料であれば、特に制限はないが、イソインドリン系イエロー有機顔料であることが好ましい。
【0012】
顔料分散物中のイソインドリン系有機顔料の含有量は、分散性(顔料濃度が低い方が良好である。)、及び、インクの生産効率(顔料濃度が高い方が、効率に優れる。)の観点から、顔料分散物の総重量に対して、15重量%以上45重量%以下であり、20重量%以上40重量%以下であることが好ましく、25重量%以上35重量%以下であることが更に好ましい。
【0013】
イソインドリン系イエロー有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 139や(ピグメントイエロー139)C.I.Pigment Yellow 185(ピグメントイエロー185)などが挙げられる。
中でも、本発明の効果が顕著に現れるC.I.Pigment Yellow 185を用いることが好ましい。
【0014】
(カチオン重合性化合物)
本発明におけるカチオン重合性化合物としては、好ましくは活性放射線の付与によりカチオン重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、光酸発生剤から発生する開始種により重合反応を生起する、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。また、カチオン重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよく、環状エーテル化合物、及び/又はビニルエーテル化合物が好ましい。光カチオン重合性モノマーの分子量は、好ましくは60〜800である。
【0015】
環状エーテル化合物及びビニルエーテル化合物については、インクジェット記録用インクの項目においてさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明の顔料分散物は、前記イソインドリン系有機顔料及びカチオン重合性化合物の混合物を分散して得られる。この分散には、種々の公知の分散手段を採用することができ、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ビーズミルなどの分散装置を好適に使用することができる。これらの中でも、ボールやビース等を使用するメディア分散装置を使用することがより好ましく、ビーズミル分散装置を使用することが更に好ましい。
【0017】
前記イソインドリン系有機顔料を分散させる際の顔料分散物は、必須成分として、カチオン重合性化合物を含有する。
顔料分散物中のカチオン重合性化合物の含有量は、顔料分散物の総重量に対して15〜45重量%であり、15〜40重量%であることが好ましく、15〜35重量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、良好な分散進度と分散安定性が両立でき、さらに、インクの硬化感度が良好となる。
【0018】
前記イソインドリン系有機顔料を分散させる際の顔料分散物中には、顔料分散剤を併用することが好ましく、高分子分散剤を併用することがより好ましい。高分子分散剤の使用量は、顔料分散物へ適当量を添加することができ、特に限定されるものではなく、使用する分散剤の化学構造や顔料濃度を考慮して決定することが好ましい。
顔料分散物中の高分子分散剤の含有量としては、顔料の分散性の観点と遊離分散剤濃度を下げるというから、顔料分散物中のイソインドリン系有機顔料の総重量に対して、1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、2重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、5重量%以上20重量%以下であることが特に好ましい。
なお、好ましい高分子分散剤の詳細については後に記載する。
【0019】
本発明の顔料分散物は、ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩については後述する。
【0020】
<インクジェット記録用インク>
本発明のインクジェット記録用インクは、本発明の顔料分散物、光酸発生剤及びカチオン重合性化合物を含むことを特徴とする。
このインクジェット記録用インクの製造方法は、15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、カチオン重合性化合物を含む混合物を顔料分散物とする分散工程、並びに、得られた顔料分散物を、光酸発生剤及びカチオン重合性化合物からなる希釈組成物により希釈する工程を必須工程として含む。この場合、顔料分散物及び/又は希釈組成物が、高分子分散剤を含有することが好ましい。顔料分散物が高分子分散剤を含有することが好ましく、高分子分散剤を含有しない場合には、希釈組成物に高分子分散剤を含有させることが好ましい。
【0021】
すなわち、本発明のインクジェット記録用インクの製造方法は、以下の分散工程及び希釈工程の2工程を必須工程として含む。
ここで、分散工程とは、15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、カチオン重合性化合物を必須成分として含有し、好ましい任意成分として高分子分散剤をさらに含有し、更に好ましい任意成分としてジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩を含有する混合物に分散処理を施して、顔料を好ましくは微粒子分散した分散物とする工程をいう。
【0022】
また、希釈工程とは、前記顔料分散物を、少なくとも光酸発生剤及びカチオン重合性化合物により希釈し、本発明のインクジェット記録用インクを得る工程をいう。
【0023】
少なくとも上記2工程を含む方法により得られるインクジェット記録用インクは、希釈工程後において、インク中の前記イソインドリン系有機顔料の含有量が、色再現性と吐出安定性の両立の観点から、7重量%以上15重量%以下となることが好ましく、7重量%以上10重量%以下となることが特に好ましい。
また、本発明のインクジェット記録用インクに含有させる成分を、必要に応じて、本発明の顔料分散物に含有させてもよい。
【0024】
以下、本発明のインクジェット記録用インクをさらに詳細に説明する。
【0025】
(インク組成物の物性)
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単に「インク」又は「インク組成物」ともいう。)は、放射線により硬化可能なインク組成物であり、また、油性のインク組成物であることが好ましい。油性とは、インクが水と混和しないことをいう。
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃におけるインク組成物の粘度が40mPa・s以下であることが好ましく、5〜40mPa・sであることがより好ましく、7〜30mPa・sであることが更に好ましい。
また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜20mPa・sであることが好ましく、3〜15mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0026】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点からは、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の観点からは、35mN/m以下が好ましい。
【0027】
本発明のインクジェット記録用インクは、放射線により硬化可能な性質を有する。
本発明でいう「(活性)放射線」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させることができるエネルギーを付与することができる活性放射線であれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものであるが、中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって、本発明のインクとしては、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能なインク組成物が好ましい。
【0028】
(インクジェット記録用インクの製造方法)
本発明のインクジェット記録用インクは、上述したように、イソインドリン系有機顔料を含有する本発明の顔料分散物を、少なくとも光酸発生剤及びカチオン重合性化合物により希釈して得ることができる。イソインドリン系有機顔料は、顔料分散物の項で前述したものを好適に使用することができる
インクジェット記録用インクにおいても、前述のピグメントイエロー185が好ましく使用できる。そのインク中の前記顔料の含有量が、インク総重量に対し7重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
【0029】
本発明のインクにおいて、前記イソインドリン系有機顔料の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、微粒子であるほど発色性に優れるため、直径0.01〜0.4μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、前記イソインドリン系顔料の最大粒径としては、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。前記イソインドリン系有機顔料の粒径は、前記イソインドリン系顔料、分散剤、分散媒体の選択、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができ、前記イソインドリン系有機顔料の粒径を制御することにより、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、インク組成物の透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0030】
(好ましいカチオン重合性化合物)
使用するカチオン重合性化合物としては、環状エーテル化合物及び/又はビニルエーテル化合物を使用することが好ましい。なお、好ましい環状エーテル化合物、及び、ビニルエーテル化合物については後に記載する。
【0031】
上記カチオン重合性化合物以外に、イソインドリン系有機顔料に対するその他の分散媒を併用することができる。ただし、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインク組成物であり、インク組成物を被記録媒体上に適用後硬化させるため、溶媒を含まず、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このため、前記分散媒として、活性放射線硬化性化合物を用い、その中でも、粘度が低いカチオン重合性化合物を選択することが、分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の点で好ましい。
【0032】
本発明の顔料分散物、及び、インクジェット記録用インクは、カチオン重合性化合物として、環状エーテル化合物及び/又はビニルエーテル化合物を含有することが好ましい。
(環状エーテル化合物)
本発明に使用することができる環状エーテル化合物としては、硬化性及び耐擦過性の観点から、オキセタン環含有化合物及びオキシラン環含有化合物が好適であり、オキセタン環含有化合物及びオキシラン環含有化合物の両方を含有する態様がより好ましい。
【0033】
ここで、本明細書において、オキシラン環含有化合物(以下、適宜「オキシラン化合物」と称する場合がある。)とは、分子内に、少なくとも1つのオキシラン環(オキシラニル基、エポキシ基)を含む化合物であり、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができ、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。また、オキセタン環含有化合物(以下、適宜「オキセタン化合物」と称する場合がある。)とは、分子内に少なくとも1つのオキセタン環(オキセタニル基)を含む化合物である。
【0034】
本発明に用いることができる単官能オキシラン化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0035】
また、多官能オキシラン化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−7,8−エポキシ−1,3−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0036】
これらのオキシラン化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0037】
本発明におけるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
【0038】
本発明に使用することができるオキセタン化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インクジェット記録用液体の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0039】
本発明で用いることができる単官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル[ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0040】
多官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキサイド(EO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキサイド(PO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0041】
このようなオキセタン化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落0021乃至0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
【0042】
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インクジェット記録用液体の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
【0043】
本発明においては、これらの環状エーテル化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(ビニルエーテル化合物)
本発明におけるビニルエーテル化合物としては、何らかのエネルギー付与によりカチオン重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、光酸発生剤から発生する開始種により重合反応を生起する、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。また、ビニルエーテル重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
【0045】
本発明に用いることができる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0046】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0047】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0048】
(光酸発生剤)
本発明のインク組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物、すなわち光酸発生剤、を含有する。
本発明に用いることができる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0049】
このような光酸発生剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0050】
また、その他の本発明に用いられる活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同 Re 27,992号、特開平3−140140号等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker etal,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen etal,Tech,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello etal,Macromolecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、同第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号等に記載のヨードニウム塩、
【0051】
J.V.Crivello etal,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello etal.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello etal,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromolecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第3,902,114号、同4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−28237号、同8−27102号等に記載のスルホニウム塩、
【0052】
J.V.Crivello etal,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen etal,Tech,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meier et al,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、T.P.Gill et al,Inorg.Chem.,19,3007(1980)、D.Astruc,Acc.Chem.Res.,19(12),377(1986)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、
【0053】
S.Hayase etal,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、E.Reichmanis etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,23,1(1985)、Q.Q.Zhu etal,J.Photochem.,36,85,39,317(1987)、B.Amit etal,Tetrahedron Lett.,(24)2205(1973)、D.H.R.Barton etal,J.Chem.Soc.,3571(1965)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein etal,Tetrahedron Lett.,(17),1445(1975)、J.W.Walker etal,J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busman etal,J.Imaging Technol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihan etal,Macromolecules,21,2001(1988)、P.M.Collins etal,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayase etal,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanis etal,J.Electrochem.Soc.,Solid State Sci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihan etal,Macromolcules,21,2001(1988)、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号等に記載のO−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、
【0054】
M.TUNOOKA etal,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner etal,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs etal,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachi etal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同044,115号、同第618,564号、同0101,122号、米国特許第4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号、特開平2−71270号等に記載のジスルホン化合物、特開平3−103854号、同3−103856号、同4−210960号等に記載のジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0055】
また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、M.E.Woodhouse et al,J.Am.Chem.Soc.,104,5586(1982)、S.P.Pappas et al,J.Imaging Sci.,30(5),218(1986)、S.Kondo etal,Macromol.Chem.,Rapid Commun.,9,625(1988)、Y.Yamada etal,Macromol.Chem.,152,153,163(1972)、J.V.Crivello et al,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,3845(1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。たとえば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0056】
さらにV.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad etal,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0057】
本発明に使用することができる光酸発生剤として好ましい化合物として、下記式(b1)、(b2)及び(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【0058】
【化1】

【0059】
式(b1)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
【0060】
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-や以下に示す基などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0061】
【化2】

【0062】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0063】
【化3】

【0064】
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
Rd1は、水素原子、アルキル基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基である。
Rc1、Rc3〜Rc5の有機基として、最も好ましくは1位がフッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子又はフルオロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0065】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、1〜30であり、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0066】
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)における対応する基を挙げることができる。
なお、式(b1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、式(b1)で表される化合物のR201〜R203のうち少なくともひとつが、式(b1)で表される他の化合物におけるR201〜R203の少なくともひとつと直接、又は、連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
更に好ましい(b1)成分として、以下に説明する化合物(b1−1)、(b1−2)、及び(b1−3)を挙げることができる。
【0067】
化合物(b1−1)は、上記式(b1)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
【0068】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
【0070】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0071】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうち、いずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0072】
次に、化合物(b1−2)について説明する。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
【0073】
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
【0074】
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0075】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができ、直鎖、分岐2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0076】
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができ、環状2−オキソアルキル基がより好ましい。
【0077】
201〜R203の直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基としては、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0078】
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
【0079】
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0080】
化合物(b1−3)とは、以下の式(b1−3)で表される化合物であり、フェナシルスルホニウム塩構造を有する化合物である。
【0081】
【化4】

【0082】
式(b1−3)において、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
x及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。
Zc-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0083】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cのシクロアルキル基として、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0084】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1cからR5cの炭素数の和が2〜15である。溶剤溶解性がより向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制されるので好ましい。
【0085】
x及びRyとしてのアルキル基、シクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。
x及びRyは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基、シクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0086】
式(b2)、(b3)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。X-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
【0087】
使用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、更に、下
記式(b4)、(b5)、(b6)で表される化合物を挙げることができる。
【0088】
【化5】

【0089】
式(b4)〜(b6)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
206、R207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0090】
前記光酸発生剤の中でも、好ましくものとしては、式(b1)〜(b3)で表される化合物を挙げることができる。
本発明に用いることができる光酸発生剤の好ましい化合物例〔(b−1)〜(b−96)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化6】

【0092】
【化7】

【0093】
【化8】

【0094】
【化9】

【0095】
【化10】

【0096】
【化11】

【0097】
【化12】

【0098】
【化13】

【0099】
【化14】

【0100】
【化15】

【0101】
また、特開2002−122994号公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体などや、特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も本発明に好適に使用することができる。
【0102】
光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは1〜7重量%である。
【0103】
(ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩)
本発明の顔料分散物、及び、インク組成物は、優れた分散性と分散物の経時安定性を得るために、ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩(以下、「特定分散助剤」ともいう。)を含むことが好ましい。該化合物を分散の段階でイソインドリン系顔料と併用することによって、均一で安定な顔料分散物又はインク組成物とすることができる。また、特に粒径が0.4μm以下の前記イソインドリン系顔料を用いた場合であっても、均一で安定な顔料分散物又はインク組成物とすることができる。また、従来の分散剤では、十分な分散性が得られたかったイソインドリン系顔料を使用した場合であっても、良好な分散性を得ることができ、色再現性に優れた顔料分散物又はインク組成物を得ることができる。
【0104】
なお、前記イソインドリン系顔料の顔料分散物又はインク組成物における粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
【0105】
ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩は、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
【0106】
ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩におけるジスアゾ系イエロー着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 81、及び、C.I.Pigment Yellow 83等が例示できる。
【0107】
ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩におけるスルホナト基(−SO3-)の置換位置は、特に制限はなく、任意の位置に置換していればよいが、芳香環上であることが好ましい。すなわち、ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩は、芳香環上にスルホナト基を有する化合物であることが好ましい。
【0108】
ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩におけるアンモニウム基の窒素原子上の4つの基としては、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜30のアルキル基であることがより好ましい。ただし、窒素原子上の4つの基の少なくとも1つはアルキル基であり、窒素原子上の4つの基の少なくとも1つは炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
また、窒素原子上の4つの基のうちの2つ以上の基が結合して、環構造を形成していてもよい。
また、ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩に2以上のアンモニウム基を有する場合は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩におけるアンモニウム基としては、テトラアンモニウム基であることが好ましく、2つの炭素数10〜30のアルキル基及び2つの炭素数1〜3のアルキル基を2つ有するアンモニウム基であることがより好ましい。
【0109】
ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩としては、C.I.Pigment Yellow 12のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩であることが好ましく、下記式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0110】
【化16】

(式(1)中、X及びYはそれぞれ独立に、下記式(2)で表される基を表し、mは0〜5の整数を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【0111】
【化17】

(式(2)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基を表し、R1〜R4のうちの少なくとも1つは炭素数1〜30のアルキル基である。)
【0112】
式(1)におけるmは、0〜5の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0113】
式(1)におけるnは、1〜5の整数を表し、1又は2の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0114】
式(1)におけるX及びYはそれぞれ独立に、前記式(2)で表される基を表す。
【0115】
式(2)におけるR1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基を表し、R1〜R4のうちの少なくとも1つは炭素数1〜30のアルキル基である。
【0116】
また、式(2)において、R1〜R4はそれぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましく、R1及びR2がそれぞれ独立に、炭素数10〜30のアルキル基であり、かつ、R3及びR4がそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
【0117】
また、mとnとの和であるm+nは、0.2<m+n<1.5であることが好ましく、平均0.5<m+n<1.4であることがより好ましく、0.7<m+n<1.2であることが更に好ましい。なお、m+n=0.5である場合とは、ジスアゾ系イエロー着色剤とジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体(モノスルホ化体、ジスルホ化体等を含む)との混合物であり、平均してジスアゾ系イエロー着色剤のアンモニウム化したスルホ基の量が平均0.5個であることを表す。
【0118】
本発明の顔料分散物、及び、インク組成物は、(c−1)ジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩、(c−2)ジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩及びジスアゾ系イエロー着色剤のジスルホ化体のジアルキルアンモニウム塩、(c−3)ジスアゾ系イエロー着色剤及びジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩、(c−4)ジスアゾ系イエロー着色剤、ジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩及びジスアゾ系イエロー着色剤のジスルホ化体のジアルキルアンモニウム塩、又は、(c−5)ジスアゾ系イエロー着色剤及びジスアゾ系イエロー着色剤のジスルホ化体のジアルキルアンモニウム塩を含有していることが好ましく、(c−1)ジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩、(c−2)ジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩及びジスアゾ系イエロー着色剤のジスルホ化体のジアルキルアンモニウム塩、(c−3)ジスアゾ系イエロー着色剤及びジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩、又は、(c−4)ジスアゾ系イエロー着色剤、ジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩及びジスアゾ系イエロー着色剤のジスルホ化体のジアルキルアンモニウム塩を含有していることがより好ましい。
【0119】
また、顔料分散物、及び、インク組成物中に含有することができるジスアゾ系イエロー着色剤、ジスアゾ系イエロー着色剤のモノスルホ化体のモノアルキルアンモニウム塩及びジスアゾ系イエロー着色剤のジスルホ化体のジアルキルアンモニウム塩は、同種のジスアゾ系イエロー着色剤及びそのスルホ化体のアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。
【0120】
また、前記ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩の−SO3-の量が、インク組成物中におけるジスアゾ系イエロー着色剤及び前記ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩の総量に対し、1分子あたり平均0.2〜2.0個であることが好ましく、平均0.2個を越え1.5個未満であることがより好ましく、平均0.5個を越え1.4個未満であることが更に好ましく、平均0.7個を越え1.2個未満であることが特に好ましい。
【0121】
C.I.Pigment Yellow 12のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩の具体例としては、下記の化合物が例示できる。
【0122】
【化18】

【0123】
本発明の顔料分散物又はインク組成物中におけるジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩の含有量としては、顔料分散物又はインク組成物中のイソインドリン系顔料の総重量に対して、0.1重量%以上100重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上80重量%以下であることがより好ましく、2重量%以上50重量%以下であることが特に好ましい。
【0124】
(増感剤)
本発明のインク組成物は増感剤を含有してもよい。
本発明に用いることができる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)などが挙げられる。
【0125】
本発明に用いる増感剤としては、下記式(vi)〜(xiv)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0126】
【化19】

【0127】
式(vi)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表す。L1は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51及びR52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0128】
式(vii)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立にアリール基を表し、L2による結合を介して連結している。L2は−O−又は−S−を表す。Wは式(vi)に示したものと同義である。
【0129】
式(viii)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。L3は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58は、それぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表す。
【0130】
式(ix)中、A3及びA4は、それぞれ独立に、−S−、−NR62-、又は−NR63-を表し、R62及びR63は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表す。L4及びL5は、それぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R60及びR61は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R60とR61は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0131】
式(x)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表す。A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67-を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R67とR64、及びR65とR67は、それぞれ互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0132】
【化20】

【0133】
式(xi)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0134】
【化21】

【0135】
式(xii)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−、−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4び隣接炭素原子と共同してして色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0136】
【化22】

【0137】
式(xiii)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0138】
【化23】

【0139】
式(xiv)中、R68、及び、R69それぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R70、及び、R71は、それぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表しnは0−4の整数を表す。nが2以上のときR70、R71はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0140】
式(vi)〜(xiv)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す(C−1)〜(C−26)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
【化24】

【0142】
【化25】

【0143】
【化26】

【0144】
【化27】

【0145】
本発明のインク組成物に用いることができる増感剤の含有量は、インクの着色性の観点から、インク組成物の全固形分に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0146】
また、増感剤と前記重合開始剤とのインク組成物中における含有比としては、重合開始剤の分解率向上と照射した光の透過性の観点から、重量比で、重合開始剤/増感剤=100〜0.5が好ましく、重合開始剤/増感剤=50〜1がより好ましく、重合開始剤/増感剤=10〜1.5が更に好ましい。
【0147】
(高分子分散剤)
本発明のインクジェット記録用インクは、顔料分散剤を含有し、好ましくは高分子分散剤を含有する。
【0148】
本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の顔料分散剤を意味する。
【0149】
高分子分散剤の重量平均分子量Mwは、2,000〜300,000の範囲であることが好ましく、3,000〜200,000がより好ましく、4,000〜100,000が更に好ましく、5,000〜100,000が特に好ましい。高分子分散剤の重量平均分子量が上記範囲であると、顔料の分散性が向上し、インク組成物の保存安定性、吐出性が良好となる。
【0150】
高分子分散剤の主鎖骨格は、特に制限はないが、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリウレア骨格等が挙げられ、インク組成物の保存安定性の点で、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格が好ましい。また、高分子分散剤の構造に関しても特に制限はないが、ランダム構造、ブロック構造、くし型構造、星型構造等が挙げられ、同様に保存安定性の点で、ブロック構造又はくし型構造が好ましい。
【0151】
高分子分散剤としては、ビックケミー社より市販されている湿潤分散剤DISPER BYKシリーズの101、102、103、106、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、180、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より市販されているEFKAシリーズの4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4406、4800、5010、5044、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、5244、ルーブリゾール社より市販されているSolsperseシリーズの3000、11200、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、34750、35100、35200、36000、36600、37500、38500、39000、53095、54000、55000、56000、71000、楠本化成(株)より市販されているDISPARLONシリーズの1210、1220、1831、1850、1860、2100、2150、2200、7004、KS−260、KS−273N、KS−860、KS−873N、PW−36、DN−900、DA−234、DA−325、DA−375、DA−550、DA−1200、DA−1401、DA−7301、味の素ファインテクノ(株)より市販されているアジスパーシリーズのPB−711、PB−821、PB−822、PN−411、PA−111、エアープロダクツ社より市販されているサーフィノールシリーズの104A、104C、104E、104H、104S、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、DF110D、DF110L、DF37、DF58、DF75、DF210、CT111、CT121、CT131、CT136、GA、TG、TGE、日信化学工業(株)より市販されているオルフィンシリーズのSTG、E1004、サンノプコ(株)製SNスパースシリーズの70、2120、2190、(株)ADEKAより市販されているアデカコール及びアデカトールシリーズ、三洋化成工業(株)より市販されているサンノニックシリーズ、ナロアクティーCLシリーズ、エマルミンシリーズ、ニューポールPEシリーズ、イオネットMシリーズ、イオネットDシリーズ、イオネットSシリーズ、イオネットTシリーズ、サンセパラー100が挙げられる。
【0152】
(界面活性剤)
本発明のインク組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる界面活性剤は、下記の界面活性剤が例示できる。
例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤として、有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8から17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
特に本発明に用いることができる界面活性剤は、前述の界面活性剤に限定されることはなく、添加濃度に対して効率的に表面張力を低下させる能力のある添加剤であればよい。
【0153】
(ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤)
本発明のインク組成物は、カチオン重合性化合物及び光酸発生剤に加え、ラジカル重合性化合物を含有していることが好ましく、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有していることがより好ましい。
ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0154】
(その他の添加剤)
本発明の顔料分散物、及び、インク組成物には、前述した各成分以外にも、目的に応じて種々のその他の添加剤を併用することができる。
例えば、得られる画像の耐候性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
さらに、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、吐出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、インク組成物と基材との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
また、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤としては、特に制限はなく、公知の重合禁止剤や、塩基性化合物等を用いることができる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)などを含有させることができる。
【0155】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0156】
<インクジェット記録装置など>
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
【0157】
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
【0158】
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0159】
本発明のインクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法において、該インクの1画素当たりの付与液滴量が2pL以上10pL以下であって、さらに、最大付与量が2.2mg/cm2超8.8mg/cm2未満である記録方法が好ましい。より好ましい最大付与量は3.3mg/cm2以上7.7mg/cm2以下である。
【0160】
上述したように、本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
【0161】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0162】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
【0163】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0164】
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬
化する工程について説明する。
【0165】
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、カチオン、酸、塩基、ラジカルなどの開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0166】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性放射線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
【0167】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0168】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
【0169】
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
【0170】
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
【0171】
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0172】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物をイエローインク組成物として用いることが好ましい。
【0173】
本発明のインク組成物は、複数のインクジェット記録用インクからなるインクセットとして使用することが好ましく、この場合、インク組成物の他に、シアン、マゼンタ及びブラックの各色を呈するインクと併用してインクセットとすることが好ましく、必要に応じてホワイト色を呈するインクを併用することが好ましい。
【0174】
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、本発明のインク組成物及びシアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、本発明のインク組成物→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→本発明のインク組成物→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、本発明のインク組成物と、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→本発明のインク組成物→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
【0175】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【0176】
本発明に用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、図1に示すインクジェット記録装置10が例示できる。
【0177】
図1は、本発明に用いることができるインクジェット記録装置の一例を示す模式図を表す。
インクジェット記録装置10は、インク組成物の吐出及び紫外線の照射を行うことができるインクジェット記録用ヘッドユニット部12、インクジェットヘッドの保守やクリーニングを行うことができるヘッドメンテナンス・クリーニング用ボックス14、インク組成物を供給するチューブやインクジェットヘッドを作動させるための電気系統ケーブルを内蔵したヘッド往復運動動力部16、インクジェットヘッドと被記録媒体との距離を固定するヘッド用固定軸18、インクジェットヘッドの作動やインク組成物の供給、被記録媒体26の供給等のインクジェット記録装置10の全般の動作を制御するコントロール用パーソナルコンピューター20、被記録媒体26へのインクジェット記録を行う被記録媒体吸引ステージ22、インク組成物を保管するインクタンク24、並びに、連動して被記録媒体を被記録媒体吸引ステージ22への供給などを行う被記録媒体搬送用ローラー28及び被記録媒体巻取り用ローラー30を備えている。
コントロール用パーソナルコンピューター20と、インクジェット記録装置10の各部分とは、ヘッド往復運動動力部16内の電気系統ケーブルを含む各種ケーブル等(不図示)により接続されている。
また、インクタンク24は、5種のインク組成物を保管することができる。
被記録媒体26は、被記録媒体搬送用ローラー28及び被記録媒体巻取り用ローラー30によって被記録媒体吸引ステージ22上に供給され、被記録媒体吸引ステージ22上にてインクジェット記録用ヘッドユニット部12によりインクジェット記録が行われる。
【0178】
図2は、図1に示したインクジェット記録装置10におけるインクジェット記録用ヘッドユニット部12の拡大模式図を表す。
インクジェット記録用ヘッドユニット部12は、各色用の5つのインクジェットヘッド(ホワイトインク組成物用インクジェットヘッドW、シアンインク組成物用インクジェットヘッドC,マゼンタインク組成物用インクジェットヘッドM、イエローインク組成物用インクジェットヘッドY、ブラックインク組成物用インクジェットヘッドK)、及び、その5つのインクジェットヘッドの両側にそれぞれ紫外線照射用メタルハライドランプ32を備えており、各色用の5つのインクジェットヘッド(W、C、M、Y、K)と2つの紫外線照射用メタルハライドランプ32とは一体で、ヘッド固定用軸18を移動する。
各インクジェットヘッドへは、インクタンク24からヘッド往復運動動力部16内のチューブを通して、各色のインク組成物がそれぞれ供給される。
各色用の5つのインクジェットヘッド(W、C、M、Y、K)から被記録媒体26に吐出されたインク組成物は、いずれの側の紫外線照射用メタルハライドランプ32によっても硬化することができる。
【実施例】
【0179】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0180】
(イエロー顔料分散物の作製)
顔料分散物A〜Eを、予備分散工程と本分散工程とを経て作製した。
予備分散工程:表1に示す成分を混合し、1時間スターラーで撹拌した。
本分散工程:撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散物を得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間は、2〜8時間で行った。
【0181】
【表1】

【0182】
【表2】

【0183】
以下に、使用した素材の一覧を示す。
・イエロー顔料A(C.I.Pigment Yellow 185(PY185)):Paliotol Yellow D1155(BASF社製)
・イエロー顔料B(C.I.Pigment Yellow 155(PY155)):NOVOPERM YELLOW 4G01
・イエロー顔料C(C.I.Pigment Yellow 120(PY120)):NOVOPERM YELLOW H2G
・重合性化合物A:OXT−221(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・重合性化合物B:DPGDA(アクリレート化合物、新中村化学工業(株)製)
・溶媒A:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)
・市販分散剤A:BYK168(ビックケミー社製)
・市販分散剤B:TEGO Disperse685(TEGO社製)
・禁止剤:FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、Albemarle社製)
・化合物A:下記化合物(A)
【0184】
【化28】

【0185】
(その他の顔料の分散物の作製)
イエロー以外の顔料分散物を予備分散工程と本分散工程を経て作製した。
予備分散工程:表3に示す成分を混合し、1時間スターラーで撹拌した。
本分散工程:撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散物を得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間は、2〜8時間で行った。
【0186】
【表3】

【0187】
以下に、使用した素材の一覧を示す。
・シアン顔料A:C.I.Pigment Blue 15:3(PB15:3;IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・マゼンタ顔料A:C.I.Pigment Violet 19(PV19;CINQUASIA MAGENTA RT−355D;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・ブラック顔料A:カーボンブラック(SPECIAL BLACK 250;デグサ社製)
・ホワイト顔料A:二酸化チタン(CR60−2;石原産業(株)製)
・重合性化合物A:OXT−221(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・市販分散剤A:BYK−168(ビックケミー社製)
・市販分散剤B:ソルスパース36000(ノベオン社製)
【0188】
(インク組成物の作製)
表4〜7に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、インク組成物を得た。ここではインクA(5)〜E(5)の顔料濃度はおおよそ5重量%になるように顔料分散物A〜Eの濃度を調整した。同じように、インクA(7)〜E(7)の顔料濃度はおおよそ7重量%、インクA(10)〜E(10)の顔料濃度はおおよそ10重量%、同じように、インクA(12)〜E(12)の顔料濃度はおおよそ12重量%になるように、顔料分散物の濃度を調整した。なお、顔料分散物及び重合性化合物A以外の成分(重合性化合物C、重合性化合物D、光酸発生剤A、増感剤A)は一律の添加濃度とした。
【0189】
【表4】

【0190】
【表5】

【0191】
【表6】

【0192】
【表7】

【0193】
以下に、使用した素材の一覧を示す。
・重合性化合物A:OXT−221(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・重合性化合物C:OXT−211(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・重合性化合物D:1,2,8,9−ジエポキシリモネン(環状エーテル化合物、ダイセル化学工業(株)製)
・光酸発生剤A:下記化合物(B)
・増感剤A:下記化合物(C)
【0194】
【化29】

【0195】
【化30】

【0196】
表8〜11に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、インク組成物を得た。ここではインクF(5)〜J(5)の顔料濃度はおおよそ5重量%になるように顔料分散物F〜Jの濃度を調整した。同じように、インクF(7)〜J(7)の顔料濃度はおおよそ7重量%、インクF(10)〜J(10)の顔料濃度はおおよそ10重量%、同じように、インクF(12)〜J(12)の顔料濃度はおおよそ12重量%になるように、顔料分散物の濃度を調整した。
【0197】
【表8】

【0198】
【表9】

【0199】
【表10】

【0200】
【表11】

【0201】
以下に、使用した素材の一覧を示す。
・重合性化合物A:OXT−221(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・重合性化合物B:DPGDA(アクリレート化合物、新中村化学工業(株)製)
・重合性化合物C:OXT−211(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・重合性化合物D:1,2,8,9−ジエポキシリモネン(環状エーテル化合物、ダイセル化学工業(株)製)
・重合性化合物E:PEA(フェノキシエチルアクリレート;第一工業製薬(株)製)
・重合性化合物F:A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート;新中村化学工業(株)製)
・光酸発生剤A:前記化合物(B)
・ラジカル開始剤A:DAROCUR TPO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・ラジカル開始剤B:IRGACURE 184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・増感剤A:前記化合物(C)
・増感剤B:Speedcure ITX(Lambson社製)
【0202】
表12に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、インク組成物を得た。
【0203】
【表12】

【0204】
以下に、使用した素材の一覧を示す。
・重合性化合物A:OXT−221(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・重合性化合物C:OXT−211(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・重合性化合物D:1,2,8,9−ジエポキシリモネン(環状エーテル化合物、ダイセル化学工業(株)製)
・光酸発生剤A:前記化合物(B)
・増感剤A:前記化合物(C)
【0205】
(インクジェット記録用プリンター)
印刷に使用したインクジェット記録用プリンターの概略図を図1に示す。
インクジェット記録用ヘッドユニット部は、市販ヘッド(東芝テック(株)製ヘッドCE2)を1色当たり2つ配列して600dpiにしたヘッドセットを10組で構成した。ホワイトインクヘッド、シアンインクヘッド、マゼンタインクヘッド、ブラックインクヘッドには、上記で調製したホワイトインクA、シアンインクA、マゼンタインクA、ブラックインクAを充填した。イエローインクヘッドについては、上記で調製したイエローインクを入れ替えて充填した。
市販紫外線硬化型ランプ(メタルハライドランプ)はヘッドユニット部を両端に2基配置した。該インクジェット記録用ヘッドユニット部は、長軸の金属軸で固定し、往復運動が可能な動力部によって、可変スピードで往復運動を行う。なお、往復運動が可能な動力部には、インク供給用チューブとヘッド制御用の電気配線が内蔵されている。
また、インクジェット記録用ヘッドに対し、ヘッド温度を30〜70℃の範囲になるように、恒温槽からの温水を送り込んだ。
該インクジェット記録用ヘッドユニット部の固定軸の両端には、ヘッドのメンテナンス及びクリーニングを実施するためのBOXを具備する。さらにこれらの外側には、インクジェット記録用プリンターをコントロールするためのPC、及び、インクタンクを配置した。
ヘッドの直下には、被記録媒体を吸引固定可能な被記録媒体吸引ステージを配置した。被記録媒体は、複数本の被記録媒体搬送用ローラーと被記録媒体巻取用ローラーによって、ヘッドの往復運動とは垂直方向に搬送する機構となっている。なお、ここでは被記録媒体は白色PVC機材を使用した。
ヘッドの吐出周波数とヘッド往復運動のスピードを制御し、常に600×600dpiの打滴密度で画像を印刷するように設定した。さらに、被記録媒体上に付与するインク量が4.4mg/cm2となるように駆動電圧とヘッド温度を調整した。
メタルハライドランプからの照射強度は被記録媒体上で約1,000mW/cm2と一定にし、照射量は5段階(200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2、500mJ/cm2、1,500mJ/cm2)の可変となるように往復運動のスピードとメタルハライドランプに内蔵しているスリット開口幅を調整した。
【0206】
<実施例1:顔料分散物中の顔料濃度を変化させた場合の顔料分散液の分散性及び高濃度インクへの適応性>
分散後の分散性(液体の流動性及び粒径分布)、及び、高濃度インクへの適応性を下記手順に従い評価した。
【0207】
(本分散後流動性)
分散後の液体の流動性を、下記手順に従い評価した。本分散後の分散液約50ccを200cc容量の新しいプラスチックディスポカップに移した。その後、ディスポカップの開口部を下向き斜め30度に15秒間静置し、分散液が流れ出るかどうかで、流動性を評価した。ここで、液温は25℃とした。なお、評価基準は下記の通りであり、良好及び適合が要求性能を満たす基準である。
良好:90%以上の混合物が流れ出て、ディスポカップの残留物は10%未満である。
適合:70%以上の混合物が流れ出て、ディスポカップの残留物は30%未満である。
不適:大部分の混合物がディスポカップに残留し、その量は30%以上である。
【0208】
(顔料分散物の粒径分布)
市販の粒径測定機(レーザー回折法:LA−920((株)堀場製作所製))によって、粒子径分布を測定した。なお、評価基準は下記の通りであり、優秀と良好と適合とが要求性能を満たす基準である。
優秀:1μm以上の分布が検出できず、平均粒径が100nm未満であった。
良好:1μm以上の分布が検出できず、平均粒径が300nm未満100nm以上であった。
適合:1μm以上の分布が検出できず、平均粒径が600nm以下300nm以上であった。
不適:1μm以上の分布が検出された。
【0209】
(高濃度インクへの適応性)
顔料濃度の高いインクを作製への適応性を下記基準で評価した。なお、ここでは、顔料分散物以外のインク成分(重合性化合物、光酸発生剤、増感剤等)として27.5重量%を添加すると想定した。
良好:12重量%以上のインク化に適応できた。
適合:10重量%以上のインク化に適応できた。
不適:10重量%以上のインク化に適応できなかった。
【0210】
【表13】

【0211】
<実施例2>
顔料分散液中の顔料濃度を変化させた場合(インクA〜F)、及び、特定の化合物(ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体の長鎖アルキルアンモニウム塩)を用いた場合の顔料分散液を希釈して作製したインクジェットインク(インクK)の保存安定性を評価した。
【0212】
(保存安定性の評価)
50cc(cm3)のインク組成物をガラス製のねじ口瓶(100cc)に入れしっかりと蓋をし、温度60℃、湿度45%RHに設定した恒温恒湿槽に30日間保管し、粘度、平均粒子径の変化率、及び、沈殿物の有無によってインク組成物の長期安定性を評価した。
インク組成物の長期安定性(高温)の評価基準は下記の通りであり、ここで良好、及び、適合が要求性能範囲である。
良好:粘度と平均粒子径の変化率は両方とも10%未満であった。沈殿物は確認できなかった。
適合:粘度の変化率は10%未満であり、平均粒子径の変化率が10%以上50%未満であった。また、沈殿物は確認できなかった。
不適合:粘度変化率が10%以上か、又は、平均粒子径の変化率が50%以上、又は、沈殿物の発生、のいずれか1つ以上に該当した。
【0213】
【表14】

【0214】
<実施例3>
顔料種を代えて作製した顔料分散液を希釈して作製したインク(インクF、I、J)を用いて、印刷した硬化膜の色再現性とインクの吐出信頼性とを評価した。
【0215】
(イエロー硬化膜の色相の評価)
前記プリンターのイエローインク用ヘッドに、イエローインク(F,I及びJ)を充填した。このプリンターを用い、イエローのベタ画像を白色PVC基材上に印画(1,500mJ/cm2のエネルギーで露光)し、イエロー硬化膜(被記録媒体上に付与したインク量は5.0mg/cm2とした)を得た。市販の測色計(グレタグ社製SPM100−II)を用いて、硬化膜の反射濃度及びa*、b*値を測定した。評価基準は下記の通りであり、ここで良好が要求性能範囲である。
優秀:105<b*
良好:100<b*≦105
適合:95<b*≦100
不適合:b*≦95
【0216】
(イエローインクの吐出信頼性)
前記プリンターのイエローインク用ヘッドに、イエローインク(F,I及びJ)を充填した。なお、ここではヘッドの温度が45±1℃となるように恒温槽を設定し、ヘッドの駆動電圧は25.0(V)の一定の値を保った。
6.2kHzの吐出周波数にて印刷を実施し、不吐出の有無によって吐出信頼性を評価した。評価基準は下記の通りであり、ここで優秀と良好が要求性能範囲である。
優秀:不吐出が発生したノズルは無かった。
良好:不吐出が発生したノズルは1又は2個であった。
不適合:不吐出が発生したノズルは3個以上10個未満であった。
不良:不吐出が発生したノズルは10個以上であった。
【0217】
【表15】

【0218】
<実施例4>
分散媒を代えて作製した顔料分散液を希釈して作製したインク(インクF、G、H)を用いて、イエローインクの硬化性(非タック性)及びブロッキングを評価した。
【0219】
(タックフリー感度)
前記プリンターのイエローインク用ヘッドに、イエローインク(F,G及びH)を充填した。このプリンターを用い、タックフリー感度(非タック性)を評価した。
露光後の表面のベトツキが無くなる露光エネルギーによってタックフリー感度を定義した。印刷後の表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け、下塗り液及び/又は着色液の移りが起きる場合はベトツキ有り、移りが起きない場合はベトツキ無しと判断した。
露光エネルギーは、200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2、500mJ/cm2、と変化させた。
ここでは、タックフリー感度は低い方が内部硬化性の観点から好ましく、評価基準は下記の通りであり、400mJ/cm2以下が要求性能範囲である。
優秀:200mJ/cm2でタックフリーとなる。
良好:300mJ/cm2でタックフリーとなる。
適合:400mJ/cm2でタックフリーとなる。
不適合:500mJ/cm2でタックフリーとなる。
不良:500mJ/cm2でタックフリーとならない。
【0220】
(ブロッキング試験)
前記プリンターのイエローインク用ヘッドに、イエローインク(F,G及びH)を充填した。このプリンターを用い、ブロッキングを評価した。印刷面と基材面を重ね合わせ、一定時間後に剥ぎ取った時に、印刷面の膜の破れや基材面への転写の有無を評価した。
なお、ブロッキング試験に用いた印刷物は、いずれも500mJ/cm2の露光エネルギーで露光したものを用いた。また、印刷物の保管は、印刷面と基材面を重ね合わせた上に、重りによって均一な加重(1kg/cm2)を印刷物全体にかけた状態を24時間(45℃恒温槽保管)で行った。24時間後、印刷面と基材面を剥ぎ取り、目視によって下記基準に従い評価した。
評価基準は下記の通りであり、ここで優秀と良好が要求性能範囲である。
適合:印刷面には膜の破れ等がなく、かつ、基材面にはインクの転写が無い。
不適合:印刷面には膜の破れや膜の内部破壊が一部に見られるか、又は、基材面にインクの転写が一部に見られる(ここで一部とは全面積の50%未満)。
不良:印刷面には膜の破れや膜の内部破壊が全面に見られるか、又は、基材面にインクの転写が全面に見られる(ここで一部とは全面積の50%以上)。
【0221】
【表16】

【0222】
<実施例4>
顔料種を代えて作製したインク(F,I及びJ)を用いて印刷した画像の色相及びレリーフ感を評価した。評価した画像は前記プリンターを用い、被記録媒体上に付与する単位面積当たりの液滴量を、1.1mg/cm2〜13.2mg/cm2の範囲で変化させた。
【0223】
(イエロー硬化膜の色相の評価)
前記プリンターのイエローインク用ヘッドに、イエローインク(F,I及びJ)を充填した。このプリンターを用い、イエローのベタ画像を白色PVC基材上に印画(1,500mJ/cm2のエネルギーで露光)し、イエロー硬化膜を得た。市販の測色計(グレタグ社製SPM100−II)を用いて、硬化膜の反射濃度及びa*、b*値を測定した。評価基準は下記の通りである。
4点:105<b*
3点:100<b*≦105
2点:95<b*≦100
1点:b*≦95
【0224】
(イエロー硬化膜のレリーフ感)
イエローのベタ画像を白色PVC基材上に印画(1,500mJ/cm2のエネルギーで露光)し、イエロー硬化膜を得た。
被験者10名に対し、ベタ画像部と非画像部の境界部を観察し、盛り上がりが視認できるかどうか判断して貰った。評価基準は下記の通りである。
4点:10名のうち全員が視認できないと判断した。
3点:10名のうち視認できた人数は3名以下であった。
2点:10名のうち視認できた人数は4名以上7名以下であった。
1点:10名のうち視認できた人数は8名以上であった。
【0225】
【表17】

【0226】
【表18】

【0227】
【表19】

【符号の説明】
【0228】
10:インクジェット記録装置
12:インクジェット記録用ヘッドユニット部
14:ヘッドメンテナンス・クリーニング用ボックス
16:ヘッド往復運動動力部
18:ヘッド用固定軸
20:コントロール用パーソナルコンピューター
22:被記録媒体吸引ステージ
24:インクタンク
26:被記録媒体
28:被記録媒体搬送用ローラー
30:被記録媒体巻取り用ローラー
32:紫外線照射用メタルハライドランプ
W:ホワイトインク組成物用インクジェットヘッド
C:シアンインク組成物用インクジェットヘッド
M:マゼンタインク組成物用インクジェットヘッド
Y:イエローインク組成物用インクジェットヘッド
K:ブラックインク組成物用インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、
カチオン重合性化合物を含むことを特徴とする
顔料分散物。
【請求項2】
高分子分散剤をさらに含む、請求項1に記載の顔料分散物。
【請求項3】
ジスアゾ系イエロー着色剤のスルホ化体のアルキルアンモニウム塩をさらに含む、請求項1又は2に記載の顔料分散物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散物、並びに、光酸発生剤及びカチオン重合性化合物を含むことを特徴とする
インクジェット記録用インク。
【請求項5】
前記イソインドリン系有機顔料がピグメントイエロー185であり、かつ、インクジェット記録用インク中の前記イソインドリン系有機顔料の含有量がインク総重量に対し7重量%以上10重量%以下である請求項4に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項6】
15重量%以上45重量%以下のイソインドリン系有機顔料、及び、カチオン重合性化合物を含む混合物を顔料分散物とする分散工程、並びに、
前記顔料分散物を、光酸発生剤及びカチオン重合性化合物を含む希釈組成物により希釈する希釈工程、を含むことを特徴とする
インクジェット記録用インクの製造方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のインクジェット記録用インクを、1画素当たりの付与液滴量が2pL以上10pL以下であって、さらに、最大付与量が2.2mg/cm2超8.8mg/cm2未満、被記録体に付与することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235776(P2010−235776A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85345(P2009−85345)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】