説明

顔料分散物、インク組成物、及び、インクジェット記録方法

【課題】流動性、分散性及び保存安定性に優れた顔料分散物を提供すること、並びに、硬化性、色相彩度、色相色濃度、保存安定性、硬化膜の耐光性及び吐出信頼性に優れたインク組成物を提供すること。
【解決手段】有機顔料であるピグメントイエロー185、及び、式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする顔料分散物、並びに、前記顔料分散物を含有するインク組成物。


(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは0又は1を表し、Wは単結合又は二価の連結基を表し、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散物、インク組成物、及び、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンタに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
最近では、家庭用又はオフィス用の写真印刷や文書印刷に留まらず、インクジェットプリンタを用いた商業用印刷機器や産業用印刷機器の開発が行なわれるようになってきた。
従来の家庭用又はオフィス用のインクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法に対して、商業用印刷機器や産業用印刷機器を目的としたインクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法には、形成した画像の色再現性が広いこと、及び、長時間の吐出信頼性に優れていること、が強く要求されるようになってきた。
【0004】
また、特許文献1には、全組成物の80重量%乃至95重量%の多官能価のアルコキシ及び/又は多官能価のポリアルコキシアクリレート単量体と、光重合開始剤とを含有する放射線硬化性インクジェット組成物が開示されている。
また、イエローインクとしては、例えば、特許文献2には、少なくともイエロー顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤からなる紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物において、イエロー顔料としてC.I.ピグメント・イエロー・180を含有し、かつ塩基性の吸着基を有する高分子分散剤を含有することを特徴とする紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物が開示されている。
特許文献3には、光酸発生剤、光重合性化合物及び顔料を含有する活性光線硬化型インクジェットインク組成物が開示されており、前記顔料としてPY185が記載されている。
特許文献4には、少なくとも顔料と分散剤と重合性化合物を含む非水系顔料分散液の製造方法が開示されており、前記分散剤として有機顔料を形成する複素環残基を有する繰り返し単位を含む重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−504778号公報
【特許文献2】特開2004−2528号公報
【特許文献3】特開2005−105225号公報
【特許文献4】特開2007−204664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、流動性、分散性及び保存安定性に優れた顔料分散物を提供することである。
本発明が解決しようとするもう1つの課題は、硬化性、色相彩度、色相色濃度、保存安定性、硬化膜の耐光性及び吐出信頼性に優れたインク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
<1>有機顔料であるピグメントイエロー185、及び、式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする顔料分散物、
【0008】
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは0又は1を表し、Wは単結合又は二価の連結基を表し、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【0009】
<2>前記ピグメントイエロー185の含有量が、顔料分散物全量に対して15〜35重量%である、<1>に記載の顔料分散物、
<3>前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の含有量が、顔料分散物全量に対して5〜10重量%である、<1>又は<2>に記載の顔料分散物、
<4>重合性化合物を含む、<1>〜<3>いずれか1つに記載の顔料分散物、
<5>前記重合性化合物として、カチオン重合性化合物及び/又はラジカル重合性化合物を含む、<4>に記載の顔料分散物、
<6>有機顔料であるピグメントイエロー185、及び、式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とするインク組成物、
【0010】
【化2】

(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは0又は1を表し、Wは単結合又は二価の連結基を表し、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【0011】
<7>前記ピグメントイエロー185の含有量が、インク組成物全量に対して5〜12重量%である、<6>に記載のインク組成物、
<8>前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の含有量が、インク組成物全量に対して、0.1〜5重量%である、<6>又は<7>に記載のインク組成物、
<9>重合性化合物を含む、<6>〜<8>いずれか1つに記載のインク組成物、
<10>前記重合性化合物として、カチオン重合性化合物及び/又はラジカル重合性化合物を含む、<9>に記載のインク組成物、
<11>被記録媒体上に、<6>〜<10>いずれか1つに記載のインク組成物を吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、流動性、分散性及び保存安定性に優れた顔料分散物を提供することができた。
また、本発明により、硬化性、色相彩度、色相色濃度、保存安定性、硬化膜の耐光性及び吐出信頼性に優れたインク組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
I.顔料分散物
本発明の顔料分散物は、有機顔料であるピグメントイエロー185、及び、式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする。
【0014】
【化3】

(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは0又は1を表し、Wは単結合又は二価の連結基を表し、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【0015】
以下、本発明の顔料分散物について詳細に説明する。なお、数値範囲を表す「A〜B」等の記載は「A以上、B以下」と同義である。
【0016】
1.ピグメントイエロー185
本発明の顔料分散物は、有機顔料であるピグメントイエロー185を含有する。ピグメントイエロー185は、イソインドリン系有機顔料であり、以下に示す構造を有する。
【0017】
【化4】

【0018】
前記ピグメントイエロー185の含有量は、顔料分散物全量に対して15〜35重量%が好ましく、25〜35重量%がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、分散性、及び、インクの生産効率に優れる。
【0019】
本発明においては他の顔料を併用してもよく、他の顔料としては公知の顔料を用いることができ限定されないが、イソインドリン系の有機顔料が好ましく、イソインドリン系イエロー有機顔料であることがより好ましい。なお、本発明においては顔料としてピグメントイエロー185のみを含有する顔料分散物が好ましい。
【0020】
顔料分散物中の顔料は微細であるほど発色性に優れるため、平均粒径(直径)は、600nm以下が好ましく、300nm未満がより好ましく、100nm未満がさらに好ましい。また、5nm以上であることが好ましい。
前記顔料の最大粒径は、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。前記顔料の粒径は、分散剤、分散媒の選択、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができる。また、前記顔料の粒径を制御することにより、顔料分散物の流動性、保存安定性を維持することができる。
顔料分散物中における顔料の平均粒径及び最大粒径は、市販の粒径測定機(レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)等を用いて測定することができる。
【0021】
2.式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体
本発明の顔料分散物は、顔料の分散剤として式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する。
【0022】
【化5】

(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは0又は1を表し、Wは単結合又は二価の連結基を表し、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【0023】
前記特定の繰り返し構造単位を有する高分子化合物とすることで、顔料と高分子鎖との間での立体反発効果により分散安定化が可能である。
【0024】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
式(1)中、Jは、−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表す。これらの内、Jとしては−COO−、−CONH−、フェニレン基が好ましい。
【0025】
1は水素原子、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基など)、アリール基(例えばフェニル基)を表し、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0026】
Wは、単結合又は二価の連結基を表す。前記二価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基、アラルキレン基もしくはアリーレン基、又は、これらの基もしくはこれらの基の組み合わせと、−NR2−、−NR23−、−COO−、−OCO−、−O−、−SO2NH−、−NHSO2−、−NHCOO−もしくは−OCONH−との組み合わせ等が挙げられる。これらの基は置換基を有してもよい。
【0027】
前記Wで表されるアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、プロピレン基等は特に好ましい。
前記Wで表されるアラルキレン基としては、炭素数7〜13のアラルキレン基が好ましく、例えば、ベンジリデン基、シンナミリデン基等が挙げられる。
前記Wで表されるアリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基は特に好ましい。
前記R2,R3は、それぞれ独立に水素又はアルキル基を表し、水素、メチル基、エチル基、プロピル基等が好適に挙げられる。
前記Wで表される連結基の中でも、単結合、アルキレン基が特に好ましく、メチレン基、エチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基が特に好ましい。
nは0又は1を表し、0が好ましい。
【0028】
式(1)中、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表し、ピグメントイエロー185に対しては、該複素環残基としてアクリドン骨格、インドール骨格、キノリン骨格、又は、ナフタルイミド骨格を有するものが好ましい。式(1)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
中でも、アクリドン骨格を有する重合体が好ましい。
式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体は、さらに末端にエチレン性不飽和結合を有する重合性オリゴマー又は重合性ポリマー(以下、単に「重合性ポリマー」とも表記する。)を共重合単位として含む共重合体であることが好ましい。
【0032】
前記重合性ポリマーは、ポリマー鎖部分及びその末端に重合可能なエチレン性不飽和結合を有する官能基を有する重合性ポリマーであることが好ましい。このようなエチレン性不飽和結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端にのみ有することが、所望の重合体を得るという観点から好ましい。
【0033】
エチレン性不飽和結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基及びビニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。なお「(メタ)アクリロイル基」等は、「メタクリロイル基及び/又はアクリロイル基」等と同義であり、以下同様とする。
【0034】
重合性ポリマーのポリマー鎖の部分は、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル及びブタジエンよりなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体並びに共重合体が好ましい。また、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド等のポリアルキレンオキシド、並びに、ポリカプロラクトン等も好ましい。
【0035】
前記重合性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000の範囲内にあることが好ましく、2,000〜9,000の範囲内がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、分散のしやすさ、及び、分散物、インクの流動性の観点から好ましい。
【0036】
前記重合性ポリマーは、式(2)で表されるポリマーであることが好ましい。
【0037】
【化8】

【0038】
式(2)中、R11及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。
12は、炭素原子数1〜12のアルキレン基(好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、置換基(例えば水酸基)を有していてもよく、さらにエステル結合、エーテル結合、アミド結合等がアルキレン鎖中に含まれていてもよい。)を表す。
Yは、フェニル基又は−COOR14を表す。フェニル基は置換されていてもよく、置換基としては炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル、エチル)などが挙げられる。R14は、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル、エチル、ベンジル)又はフェニル基を表す。
Yは、無置換のフェニル基又はR14が炭素原子数1〜4のアルキル基である−COOR14が好ましい。
qは、20〜200を表し、25〜150が好ましく、30〜100がより好ましい。
【0039】
前記重合性ポリマーとしては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート及びポリスチレンの分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーを挙げることができる。
市場で入手できるこのような重合性ポリマーとしては、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6,000、商品名:AS−6、東亞合成(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6,000、商品名:AA−6、東亞合成(株)製)及び片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6,000、商品名:AB−6、東亞合成(株)製)を挙げることができる。
【0040】
前記重合性ポリマーは、前記式(2)で表される重合性ポリマーだけでなく、式(3)で表される重合性ポリマーであることも好ましい。これらは使用する重合性化合物に応じて適宜選択することが好ましい。
【0041】
【化9】

【0042】
式(3)中、R21は水素原子又はメチル基を表し、R22は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、X21は−OR23又は−OCOR24を表し、R23、R24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは2〜200を表す。
【0043】
21は、水素原子又はメチル基を表し、メチル基が好ましい。
22は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。
21は、−OR23又は−OCOR24を表す。ここで、R23は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。R24は、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。
nは、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100がより好ましい。
【0044】
式(3)で表される重合性ポリマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0045】
式(3)で表される重合性ポリマーの市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、新中村化学工業(株)製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日油(株)製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日油(株)製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日油(株)製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日油(株)製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日油(株)製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日油(株)製)などが挙げられる。
【0046】
式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体は、窒素原子を有するモノマーとの共重合体でもよい。
窒素原子を有するモノマーとしては式(4)で表されるモノマーが好ましい。
【0047】
【化10】

【0048】
式(4)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜12のアルキレン基を表し、X1は−N(R3)(R4)、−R5−N(R6)(R7)又は塩基性含窒素複素環基を表し、R3、R4、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表し、R5は炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、m及びnはそれぞれ独立に1又は0を表す。
【0049】
2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基が特に好ましい。
1は−N(R3)(R4)、−R5−N(R6)(R7)又は塩基性含窒素複素環基である。R3、R4は、R6及びR7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。アルキル基としては炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。アリール基としては炭素数6〜12のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましい。R5は、炭素数1〜12のアルキレン基を表し、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。
1の塩基性含窒素複素環基としては、ピリジル基(特に1−ピリジル基、2−ピリジル基)、ピペリジノ基(1−ピペリジノ基)、ピロリジル基(特に、2−ピロリジル基)、ピロリジノ基、イミダゾリノ基、又はモルホリノ基(4−モルホリノ基)であることが好ましく、ピリジル基、イミダゾリノ基がより好ましい。
式(4)で表されるモノマーは、さらに下記の式(4−2)〜(4−4)のいずれかで表される化合物であることが特に好ましい。
【0050】
【化11】

【0051】
式(4−2)中、R21はR1と同義であり、R22はR2と同義であり、そしてX2はX1と同義である。
【0052】
【化12】

【0053】
式(4−3)中、R31はR1と同義であり、そしてX3はX1と同義である。好ましくは、X3は−N(R33)(R34)(但し、R33及びR34は、それぞれに対応するR3及びR4と同義である)、あるいは−R35−N(R36)(R37)(但し、R35、R36及びR37は、それぞれに対応するR5、R6及びR7と同義である。)である。
【0054】
【化13】

【0055】
式(4−4)中、R41はR1と同義であり、X4はピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基又はモルホリノ基を表す。
【0056】
式(4)で表わされる化合物としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート(以上(メタ)アクリレート類);ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド及びN,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド(以上(メタ)アクリルアミド類);2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類);及び、ビニルピリジンを挙げることができる。
【0057】
本発明に用いられる分散剤は、さらにこれらと共重合可能な他のモノマーとの共重合体でもよい。共重合可能な他のモノマーの例として、不飽和カルボン酸(例、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸)、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなど)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル(例、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1、3−ブタジエン及びイソプレン)を挙げることができる。これらの中で、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。
【0058】
本発明の分散剤は、式(1)で表される繰り返し単位と前記重合性ポリマーから与えられる単位とからなる共重合体、あるいは式(1)で表される繰り返し単位と前記重合性ポリマーから与えられる単位と窒素原子を有するモノマーから与えられる単位とからなる共重合体であることが特に好ましい。
【0059】
上記共重合体が、式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位の5〜50重量%(特に5〜30重量%)の範囲で有することが好ましい。さらに、前記重合性ポリマーから与えられる単位を、全繰り返し単位の30〜80重量%(特に50〜80重量%)、窒素含有基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位の5〜80重量%(特に5〜50重量%)の範囲で有することが好ましい。さらにこれらと共重合可能な他のモノマーを使用する場合、このモノマーに由来する繰り返し単位を全繰り返し単位の5〜30重量%の範囲で有することが好ましい。
【0060】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000の範囲が好ましく、特に10,000〜100,000の範囲が好ましい。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0061】
分散剤に好適に用いられる前記重合体の例を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(1)上記例示化合物M−1を与えるモノマー/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:90重量比)共重合体
(2)上記例示化合物M−1を与えるモノマー/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(15:85重量比)共重合体
(3)上記例示化合物M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン(20:80重量比)共重合体
(4)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:90重量比)共重合体
(5)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(20:80重量比)共重合体
(6)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン(25:75重量比)共重合体
(7)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:20:70重量比)共重合体
(8)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(15:25:60重量比)共重合体
(9)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(8:22:50:20重量比)共重合体
(10)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(8:42:50重量比)共重合体
(11)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/2−ビニルピリジン/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(20:30:50重量比)共重合体
(12)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/p−ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミン/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(7:43:50重量比)共重合体
(13)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリn−ブチルメタクリレート(10:10:80重量比)共重合体
(14)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/スチレン/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(15:15:70重量比)共重合体
(15)上記例示化合物M−4を与えるモノマー/N,N−ジメチルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(20:10:70重量比)(5:25:70重量比)共重合体
(16)上記例示化合物M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:40:50重量比)共重合体
(17)上記例示化合物M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(15:15:70重量比)共重合体
(18)上記例示化合物M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(10:20:70重量比)共重合体
(19)上記例示化合物M−13を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(25:25:50重量比)共重合体
(20)上記例示化合物M−13を与えるモノマー/4−ビニルピリジン/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(5:25:70重量比)共重合体
(21)上記例示化合物M−13を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(10:30:60重量比)共重合体
(22)上記例示化合物M−14を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(15:25:60重量比)共重合体
【0062】
このような重合体は、重合性ポリマー、所望により併用される窒素原子含有基を有するモノマーや他のモノマーを、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。その際、一般に、ラジカル重合開始剤が使用されるが、開始剤に加えてさらに連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を添加して合成してもよい。
【0063】
顔料の分散を行う際に式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の分散剤を添加することができる。
他の分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
【0064】
本発明の顔料分散液には、式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体である分散剤を1種のみ添加してもよく、2種以上を併用してもよい。前記分散剤の使用量は、顔料の添加量に対し、1〜100重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、15〜35重量%であることがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、分散のしやすさ、流動性、保存安定性の観点から好ましい。
また、前記分散剤の含有量は、顔料分散物全体を100重量%として、1〜15重量%が好ましく、2〜12重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、微細な顔料の分散性及びその安定性がより向上し、流動性に優れた顔料分散物が得られ、鮮明な色調と高い着色力も顕著に向上するため好ましい。
【0065】
3.分散媒
本発明の顔料分散物は、イソインドリン系有機顔料であるピグメントイエロー185及び式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を任意の分散媒に分散して得られる。
この分散には、種々の公知の分散手段を採用することができ、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ビーズミルなどの分散装置を好適に使用することができる。これらの中でも、ボールやビーズ等を使用するメディア分散装置を使用することがより好ましく、ビーズミル分散装置を使用することがさらに好ましい。
【0066】
顔料の分散媒として好ましくは重合性化合物を含む。重合性化合物としては、活性放射線の付与により重合する化合物が好ましく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができる。中でも、活性放射線の付与により重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する光重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性化合物がより好ましい。重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
【0067】
前記重合性化合物としては、カチオン重合性化合物及び/又はラジカル重合性化合物が好ましく、カチオン重合性化合物又はラジカル重合性化合物のいずれかがより好ましい。インク組成物に添加する顔料のマスターバッチとして本発明の顔料分散物を用いる場合には、インク組成物がカチオン重合性である場合には、顔料分散物に分散媒として添加する重合性化合物もカチオン重合性のモノマーが好ましい。一方、インク組成物がラジカル重合性である場合には、顔料分散物に添加する重合性化合物もラジカル重合性のモノマーが好ましい。これらの重合性化合物については後述する。
【0068】
重合性化合物以外に有機溶媒等を分散媒として用いることもできるが、本発明の顔料分散物は有機溶媒を含まず、無溶剤であることが好ましい。これは、本発明の顔料分散物をインク組成物に添加して用いた場合に、硬化されたインク画像中に溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このため、前記分散媒として、重合性化合物を用い、その中でも、粘度が低い重合性化合物を選択することが、分散適性やハンドリング性向上の点で好ましい。
【0069】
顔料分散物中の分散媒として用いる重合性化合物の含有量は、顔料分散物の総重量に対して40〜90重量%が好ましく、50〜85重量%がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、流動性、分散性、保存安定性に優れた顔料分散物が得られる。
【0070】
II.インク組成物
本発明のインク組成物は、前記ピグメントイエロー185、及び、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする。前記インク組成物は、さらに重合性化合物及び重合開始剤を含むものが好ましい。
本発明のインク組成物は、顔料の分散性、保存安定性に優れることから、長期間にわたってインクジェットノズルの詰まりを抑制できるためインクジェット記録用インクとして好ましく用いることができる。
【0071】
本発明のインク組成物は、本発明の顔料分散物を調製する分散工程、並びに、得られた顔料分散物を光重合開始剤(単に「開始剤」ともいう。)及び重合性化合物を含む希釈組成物により希釈する希釈工程により製造されたものであることが好ましい。なお、分散工程において、インク組成物に含有させる成分を必要に応じて顔料分散物に含有させた後、希釈工程を行ってもよい。
【0072】
インク組成物中の前記ピグメントイエロー185の含有量は、インク組成物全重量を100重量%として、1〜15重量%が好ましく、5〜12重量%がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、色再現性、吐出安定性に優れる。
【0073】
インク組成物中における顔料は微細であるほど発色性に優れるため、平均粒径(直径)は、600nm以下が好ましく、300nm未満がより好ましく、100nm未満がさらに好ましい。また、5nm以上であることが好ましい。
また、前記顔料の最大粒径としては、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。前記顔料の粒径は、顔料、分散剤、分散媒の選択、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができ、前記顔料の粒径を制御することにより、インク組成物のインクジェット吐出安定性、保存安定性、色相を維持することができる。
インク組成物中における顔料の平均粒径は、市販の粒径測定機(レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)等を用いて測定することができる。
【0074】
インク組成物中の前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の含有量は、インク組成物全体を100重量%として、0.1〜5重量%が好ましく、1.0〜4重量%がより好ましく、1.5〜3.5重量%がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、色再現性、吐出安定性に優れる。
【0075】
本発明において、ピグメントイエロー185に対する前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の重量比は、本発明の顔料分散物における重量比と同様であり、好ましい範囲についても同様である。
【0076】
本発明のインク組成物は、油性のインク組成物であることが好ましい。油性とは、インクが水と混和しないことをいう。
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃におけるインク組成物の粘度が40mPa・s以下であることが好ましく、5〜40mPa・sであることがより好ましく、7〜30mPa・sであることがさらに好ましい。
また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜20mPa・sであることが好ましく、3〜15mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0077】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点からは、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の観点からは、35mN/m以下が好ましい。
【0078】
本発明のインク組成物は、好ましくは活性放射線により硬化可能なインク組成物である。本発明でいう「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させることができるエネルギーを付与することができる活性放射線であれば特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものであるが、中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって、本発明のインク組成物は、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物であることが好ましい。
【0079】
本発明のインク組成物は、添加する重合性化合物及び重合開始剤の選択により、カチオン重合性インク組成物、又は、ラジカル重合性インク組成物とすることができる。ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを併用することにより、ハイブリッド型のインク組成物とすることもできるが、本発明においては、カチオン重合性又はラジカル重合性のいずれかが好ましく、硬化感度の観点からはカチオン重合性のインク組成物が好ましい。以下、カチオン重合性インク組成物及びラジカル重合性インク組成物の成分について説明する。
【0080】
III.カチオン重合性インク組成物
1.カチオン重合性化合物
以下、本発明のインク組成物をカチオン重合性インク組成物とした場合に好ましく用いられるカチオン重合性化合物について説明する。
カチオン重合性化合物としては、環状エーテル化合物及び/又はビニルエーテル化合物を使用することが好ましく、環状エーテル化合物がより好ましい。
【0081】
本発明に使用することができる環状エーテル化合物としては、硬化性及び耐擦過性の観点から、オキセタン環含有化合物及びオキシラン環含有化合物が好適であり、オキセタン環含有化合物及びオキシラン環含有化合物の両方を含有する態様がより好ましい。
【0082】
オキシラン環含有化合物(以下、「オキシラン化合物」ともいう。)とは、分子内に、少なくとも1つのオキシラン環(オキシラニル基、エポキシ基)を含む化合物であり、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができる。例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。また、オキセタン環含有化合物(以下、適宜「オキセタン化合物」と称する場合がある。)とは、分子内に少なくとも1つのオキセタン環(オキセタニル基)を含む化合物である。
【0083】
単官能オキシラン化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0084】
多官能オキシラン化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−7,8−エポキシ−1,3−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0085】
これらのオキシラン化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0086】
オキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
【0087】
オキセタン化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インクジェット記録用インクの粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0088】
単官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル[ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0089】
多官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3,3’−オキシビスメチレンビス(3−エチル−オキセタン)、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキサイド(EO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキサイド(PO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
このようなオキセタン化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落0021乃至0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
【0090】
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インクジェット記録用インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。本発明においては、これらの環状エーテル化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0091】
ビニルエーテル化合物としては、何らかのエネルギー付与によりカチオン重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、光酸発生剤から発生する開始種により重合反応を生起する、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。また、ビニルエーテル重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
【0092】
カチオン重合性化合物の含有量は、インク組成物全重量に対して、60〜95重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましく、75〜85重量%がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、硬化性に優れる点で好ましい。
【0093】
2.カチオン重合開始剤
本発明のインク組成物には、カチオン重合開始剤として光酸発生剤を用いることができる。本発明に用いることができる光酸発生剤としては、第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0094】
本発明に用いることができるカチオン重合開始剤の好ましい具体例としては、特開2007−224149号公報に記載された(b−1)〜(b−96)の化合物、特開2002−122994号公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体などや、特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物を本発明に好適に使用することができる。光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
インク組成物中の光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜7重量%である。
【0096】
3.増感剤
本発明のカチオン重合性のインク組成物は増感剤を含有してもよい。
本発明に用いることができる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)などが挙げられる。
【0097】
本発明に用いる増感剤としては、下記式(vi)〜(xiv)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0098】
【化14】

【0099】
式(vi)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表す。L1は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51及びR52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0100】
式(vii)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立にアリール基を表し、L2による結合を介して連結している。L2は−O−又は−S−を表す。Wは式(vi)に示したものと同義である。
【0101】
式(viii)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。L3は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58は、それぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表す。
【0102】
式(ix)中、A3及びA4は、それぞれ独立に、−S−、−NR62-、又は−NR63-を表し、R62及びR63は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表す。L4及びL5は、それぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R60及びR61は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R60とR61は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0103】
式(x)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表す。A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67-を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R67とR64、及びR65とR67は、それぞれ互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0104】
【化15】

【0105】
式(xi)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0106】
【化16】

【0107】
式(xii)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−、−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4び隣接炭素原子と共同してして色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0108】
【化17】

【0109】
式(xiii)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0110】
【化18】

【0111】
式(xiv)中、R68、及び、R69それぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R70、及び、R71は、それぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表しnは0−4の整数を表す。nが2以上のときR70、R71はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0112】
式(vi)〜(xiv)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す(C−1)〜(C−26)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
【化19】

【0114】
【化20】

【0115】
【化21】

【0116】
本発明のインク組成物に用いることができる増感剤の含有量は、インクの着色性の観点から、インク組成物の全固形分に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0117】
また、増感剤と前記重合開始剤とのインク組成物中における含有比としては、重合開始剤の分解率向上と照射した光の透過性の観点から、重量比で、重合開始剤/増感剤=100〜0.5が好ましく、重合開始剤/増感剤=50〜1がより好ましく、重合開始剤/増感剤=10〜1.5が更に好ましい。
【0118】
4.その他の添加剤
本発明の顔料分散物、及び、インク組成物には、前述した各成分以外にも、目的に応じて種々のその他の添加剤を併用することができる。
例えば、得られる画像の耐候性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
さらに、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、吐出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、インク組成物と基材との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
また、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤としては、特に制限はなく、公知の重合禁止剤や、塩基性化合物等を用いることができる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)などを含有させることができる。
【0119】
IV.ラジカル重合性インク組成物
以下、本発明のインク組成物をラジカル重合性インク組成物とした場合に好ましく用いられるラジカル重合性化合物及び重合開始剤等について説明する。
【0120】
1.ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、活性放射線の照射により重合するエチレン性不飽和化合物が好ましく、単官能重合性モノマー又は多官能重合性モノマーのいずれでもよいが、本発明においては多官能重合性モノマーと単官能重合性モノマーとを併用する態様が好ましい。
【0121】
ラジカル重合性の多官能重合性モノマーとして、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルオキシ基、及びN−ビニル基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和結合基を2つ以上有する多官能重合性モノマーを好ましく使用することができる。多官能重合性モノマーを含有することで、高い硬化膜強度が得られるインク組成物を提供することができる。
【0122】
多官能重合性モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン(メタ)アクリル系モノマーあるいはプレポリマー、エポキシ系モノマーあるいはプレポリマー、ウレタン系モノマーあるいはプレポリマー等の(メタ)アクリル酸エステルであって、エチレン性不飽和二重結合基を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。
【0123】
具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、PO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等の(メタ)アクリル誘導体;その他、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、(株)大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、(株)日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0124】
なお、上記(メタ)アクリル酸誘導体の中で、硬化性に優れる点から、アクリル酸誘導体が好ましい。また、芳香族環、脂肪族環等の環状構造を有していない多官能重合性モノマーが好ましい。
【0125】
本発明のインク組成物は、前記多官能重合性モノマーの他に、好ましくは単官能(メタ)アクリレート、単官能ビニルオキシ化合物、単官能N−ビニル化合物及び単官能(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される単官能重合性モノマーを含む。
【0126】
上記単官能ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基及びN−ビニル基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和結合基を1つのみ有し、かつ環状構造を有するモノマーを使用することがより好ましい。
本発明に好適に用いることができる単官能重合性モノマーとして下記式(A)で表されるエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0127】
【化22】

【0128】
式(A)中、R1は水素原子、又は、メチル基を表す。
1は、式(1)に示すエチレン性不飽和結合に(−C(O)O−)又は(−C(O)NH−)が結合した第1の二価の連結基を示し、この第1の二価の連結基に単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NH−、又は、−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)−)、分岐を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、又はこれらを組み合わせた第2の二価の連結基が結合してもよく、第1の二価の連結基のみ又は第2の二価の連結基を有する場合はエーテル結合、エステル結合及び炭素数20以下のアルキレン基を有するものが好ましい。
2は少なくとも1つ以上の環状構造を有する基であり、単環芳香族基及び多環芳香族基を含む芳香族基、並びに、シクロアルカン骨格、アダマンタン骨格及びノルボルナン骨格を含む脂環式炭化水素基を表す。上記の芳香族基及び脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0129】
式(1)中、R2で表される芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるフェニル基のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基であり限定されるものではないが、具体的には、ナフチル基、アントリル基、1H−インデニル基、9H−フルオレニル基、1H−フェナレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、テトラフェニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、アセナフチレニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、クリセニル基、プレイアデニル基等が好ましく挙げられる。本発明においては、フェニル基が好ましい。
【0130】
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。上記の芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
【0131】
また、式(1)のR2は脂環式炭化水素基でもよい。また、O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基でもよい。
これらの脂環式炭化水素基及びヘテロ単環を有する脂環式炭化水素基は、1つ以上の置換基を有していても良く、置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基が例示できる。また、二価の置換基としてオキシ基(=O)を有していてもよく、脂環式炭化水素基の2以上の置換基で、O、N、S等のヘテロ原子を含む複素環構造を形成していてもよい。
【0132】
本発明に用いることができる単官能ラジカル重合性モノマーとして、好ましくは、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロデシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−フタルイミドエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−2−フェニル)エチルアクリルアミド、N−ジフェニルメチルアクリルアミド、N−フタルイミドメチルアクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル))プロピルアクリルアミド、5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン等を例示できる。
【0133】
本発明のインク組成物中の重合性化合物の総量は、インク組成物の総重量に対し、55〜95重量%であることが好ましく、60〜90重量%であることがより好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適度であるため好ましい。
【0134】
2.重合開始剤
本発明のインク組成物は、重合開始剤を含有するものが好ましく、重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はα−アミノアセトフェノン化合物を含むものがより好ましい。また、本発明のインク組成物は、2種以上の重合開始剤を含有することが好ましく、3〜5種の重合開始剤を含有することがより好ましい。さらに、本発明のインク組成物は、2種以上のアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましく、2〜4種のアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することがより好ましく、2種のアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することがさらに好ましい。また、本発明において、重合開始剤として、少なくとも1種のアシルホスフィンオキサイド化合物、及び、少なくとも1種のα−アミノアセトフェノン化合物を併用することがより好ましい。これらの光重合開始剤を使用することにより、膜内部での硬化性を高めることができる。
【0135】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、下記式(2)又は下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0136】
【化23】

【0137】
前記式(2)中のR1及びR2は、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、R3は、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。前記R1とR2とは結合して5員環乃至9員環を形成してもよい。前記環構造は、環構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環であってもよい。
前記R1、R2又はR3で表される脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。また、鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1以上30以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
前記置換アルキル基の置換基としては、−COOH(カルボキシル基)、−SO3H(スルホ基)、−CN(シアノ基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、−OH(ヒドロキシ基)、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、炭素数30以下のアリールスルホニルアミノカルボニル基、炭素数30以下のアルキルスルホニル基、炭素数30以下のアリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、炭素数30以下のカルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、炭素数30以下のモルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、炭素数30以下のスルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、炭素数30以下の置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、炭素数30以下の置換ウレイド基、炭素数30以下の置換ホスホノ基、炭素数30以下の複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンは、陽イオンを形成し得る基であり、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許第2791143号公報に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+等)が好ましい。
【0138】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基におけるアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0139】
前記R1、R2又はR3で表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6以上30以下が好ましく、6以上20以下がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記R1又はR2で表される脂肪族オキシ基としては、炭素数1以上30以下のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
前記R1又はR2で表される芳香族オキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
前記R1、R2又はR3で表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0140】
【化24】

【0141】
前記式(3)中のR4及びR6は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。
前記R4、R5又はR6で表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、前記置換基としては、前記式(2)における場合と同様の置換基が挙げられる。
前記式(3)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記式(2)における場合と同義である。
【0142】
前記式(2)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0143】
【化25】

【0144】
式(4)中、R7及びR8はそれぞれ独立に、フェニル基、メトキシ基、又は、イソプロポキシ基を表し、R9は2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メチルフェニル基(o−トルイル基)、イソブチル基、又は、t−ブチル基を表す。
【0145】
前記式(3)で表される化合物は、下記式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0146】
【化26】

【0147】
式(5)中、R10及びR12はそれぞれ独立に、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、又は、2,6−ジメトキシフェニル基を表し、R11はフェニル基、又は、2,4,4−トリメチルペンチル基を表す。
【0148】
前記式(2)又は(3)で表されるアシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることできる。
【0149】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物等を使用することができ、モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のモノアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することができる。例えば、特公昭60−8047号公報、特公昭63−40799号公報に記載のモノアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスインオキサイド、イソブチリル−メチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、p−t−ブチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−t−ブチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイル−ビス−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、4−(t−ブチル)−ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0150】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば、特開平3−101686号公報、特開平5−345790号公報、特開平6−298818号公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0151】
これらの中でも、本発明において、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、LUCIRIN TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0152】
α−アミノアセトフェノン化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
前記α−アミノアセトフェノン化合物としては、下記の式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0153】
【化27】

(式中X1は下記式(a)、(b)又は(c)で表される基を表す。)
【0154】
【化28】

(式中pは0又は1である。)
【0155】
【化29】

(式中qは0乃至3の整数であり、rは0又は1である。)
【0156】
【化30】

(式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、OH基、炭素数1以上12以下のアルキル基(なお、特に断りのない場合、アルキル基とは直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する。本発明において、同様。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、芳香環基、又は、複素環基を表す。)
【0157】
前記芳香環基としては、フェニル基、又は、ナフチル基が好ましく例示できる。
また、前記複素環基としては、フリル基、チエニル基、又は、ピリジル基が好ましく例示できる。
Yにおけるアルキル基、アルコキシ基、芳香環基、及び、複素環基は置換基を有していてもよい。
Yにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、ハロゲン原子、−N(X102(X10は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基又はフェニル基を表す。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2OCH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、又は、−OCOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
Yにおけるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、又は、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)が挙げられる。
Yにおける芳香環基又は複素環基が有していてもよい置換基としては、−(OCH2CH2nOH(nは1以上20以下の整数を表す。)、−(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、フェノキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、フェニル基、又は、ベンジル基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば、2以上有していてもよい。また、これら置換基は、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中、X12は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。X13、X14及びX15は互いに独立して水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。X13とX14とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
【0158】
式中X2は前記式(a)、(b)若しくは(c)で表される基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
2におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
2におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、フェニル基が挙げられる。
2におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよい。また、これら置換基は、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中X1とX2とは架橋して次式で表される基を形成してもよい。
【0159】
【化31】

【0160】
式中X3は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
3におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
式中X4は炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、フェニル基を表す。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X4におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は2以上4以下であることが好ましい。
4におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
ここで、X2とX4とは架橋して炭素数1以上7以下のアルキレン基、炭素数7以上10以下のフェニルアルキレン基、o−キシリレン基、2−ブテニレン基、又は、炭素数2若しくは3のオキサ−若しくはアザ−アルキレン基を形成してもよい。
また、X3とX4とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
3とX4とが架橋して形成するアルキレン基は、置換基として、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)を有していてもよく、また、結合中に−O−、−S−、−CO−、又は、−N(X16)−(X16は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、結合鎖中に1若しくは2以上の−O−を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、−CH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基若しくはベンゾイル基を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。)を介在させてもよい。
式中X5、X6、X7、X8、X9は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、−OX17基、−SX18基、−SO−X18基、−SO2−X18基、−N(X19)(X20)基、−NH−SO2−X21基、又は、次式で表される基を表す。
【0161】
【化32】

【0162】
式中、Zは−O−、−S−、−N(X10)−X11−N(X10)−、又は、次式で表される基を表す。X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立に、前記式(1)と同義である。
【0163】
【化33】

【0164】
式中X10は前記と同義であり、X11は炭素数が2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は、これらの鎖中に1以上の−O−、−S−若しくは−N(X10)−が介在する炭素数が2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基(X10は前記と同義である。)を表す。
17は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、−(CH2CH2O)nH(nは2以上20以下の整数を表す。)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、−Si(R4r(R53-r(R4は炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、R5はフェニル基を表し、rは1、2又は3を表す。)を表す。
17におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
17におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、−CN、−OH、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数3以上6以下のアルケニルオキシ基、−OCH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、−COOH、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X17におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は1以上6以下であることが好ましい。
17におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
18は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
18におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
18におけるアルキル基が有していてもよい置換基は、−SH、−OH、−CN、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−OCH2CH2CN、又は、−OCH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)が挙げられる。
18におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
19及びX20は互いに独立して水素原子;炭素数1以上12以下のアルキル基;炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基;炭素数2以上10以下のアルコキシアルキル基;炭素数3以上5以下のアルケニル基;炭素数5以上12以下のシクロアルキル基;炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基;フェニル基;ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基により置換されたフェニル基;又は炭素数2若しくは3のアルカノイル基;又はベンゾイル基を表す。また、X19とX20とは架橋して炭素数2以上8以下のアルキレン基、又は、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)基により置換された炭素数2以上8以下のアルキレン基;結合鎖中に−O−、−S−若しくは−N(X16)−を介在させた炭素数2以上8以下のアルキレン基(X16は前記と同義である。)を形成してもよい。
21は炭素数1以上18以下のアルキル基;フェニル基;ナフチル基;又は、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基若しくは炭素数1以上8以下のアルコキシ基によって置換されたフェニル基若しくはナフチル基を表す。
【0165】
式(1)は、式(d)で表されることがより好ましい。
【0166】
【化34】

【0167】
式(d)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又は、ベンジル基を表し、−NX34はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表し、X5は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、ジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表す。これらの中でも−NX34はジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基であることがより好ましい。
【0168】
さらに、α−アミノアセトフェノン化合物として、前記式(1)で表される化合物の酸付加物塩を使用することもできる。
また、市販のα−アミノアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア907(IRGACURE 907)、イルガキュア369(IRGACURE 369)、イルガキュア379(IRGACURE 379)の商品名で入手可能な重合開始剤が例示できる。
【0169】
α−アミノアセトフェノン化合物として、具体的には、以下の化合物が例示できる。
例えば、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379)などが挙げられる。
【0170】
本発明の光硬化性組成物は、その他の光重合開始剤を含有することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
具体的なその他の光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Reviews, 93, 435 (1993)や、R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73, 81 (1993)や、J. P. Faussier "Photoinitiated Polymerization - Theory and Applications": Rapra Review, vol.9, Report, Rapra Technology (1998)や、M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996)に多く、記載されている。また、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照、に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く記載されている。さらには、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990)、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993)、H. B. Shuster et al, J. Am. Chem. Soc., 112, 6329 (1990)、I. D. F. Eaton et al, J. Am. Chem. Soc., 102, 3298 (1980)等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的又は還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0171】
V.インクジェット記録方法
本発明において、インクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0172】
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
【0173】
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
【0174】
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0175】
本発明のインクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法において、該インクの1画素当たりの付与液滴量が2pL以上10pL以下であって、さらに、最大付与量が2.2mg/cm2超8.8mg/cm2未満である記録方法が好ましい。より好ましい最大付与量は3.3mg/cm2以上7.7mg/cm2以下である。
【0176】
上述したように、本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
【0177】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0178】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
【0179】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0180】
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬
化する工程について説明する。
【0181】
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、カチオン、酸、塩基、ラジカルなどの開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0182】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性放射線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
【0183】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0184】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
【0185】
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
【0186】
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
【0187】
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0188】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物をイエローインク組成物として用いることが好ましい。
【0189】
本発明のインク組成物は、複数のインクジェット記録用インクからなるインクセットとして使用することが好ましく、この場合、インク組成物の他に、シアン、マゼンタ及びブラックの各色を呈するインクと併用してインクセットとすることが好ましく、必要に応じてホワイト色を呈するインクを併用することが好ましい。
【0190】
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、本発明のインク組成物及びシアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、本発明のインク組成物→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→本発明のインク組成物→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、本発明のインク組成物と、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→本発明のインク組成物→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
【0191】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【実施例】
【0192】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、特に断りのない限り「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
【0193】
1.式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の調製
以下、実施例において、以下のように調製した重合体A〜Cを用いた。
(重合体Aの合成)
9(10H)−アクリドン9.76部、t−ブトキシカリウム5.61部をジメチルスルホキシド30部に溶解させ、45℃に加熱した。これにクロロメチルスチレン15.26部を滴下し、50℃でさらに5時間加熱撹拌した。この反応液を蒸留水200部に撹拌しながら注ぎ、得られた析出物を濾別、洗浄することで、モノマー1を11.9部得た。
メチルエチルケトン15部を窒素置換した三口フラスコに導入し、撹拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて撹拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温した。別に調製した下記のモノマー溶液と開始剤溶液とをそれぞれ2時間かけて同時に上記の液に滴下した。滴下後、さらに下記V−65を0.08部添加し、78℃にて3時間加熱撹拌を行った。得られた反応液をヘキサン1,000部に撹拌しながら注ぎ、生じた沈殿を濾取して、加熱乾燥させることで重合体Aを得た。
(モノマー溶液)
・モノマー1 3.0部
・AA−6(末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(数平均分子量6,000、東亞合成(株)製) 21.0部
・3−(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド) 6.0部
・メチルエチルケトン 45部
(開始剤溶液)
・V−65(2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業(株)製) 0.04部
・メチルエチルケトン 9.6部
【0194】
(重合体Bの合成)
「重合体Aの合成」で用いたAA−6(末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート)をNKエステルM−230G(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、新中村化学工業(株)製)に変更した以外は、「重合体Aの合成」と同様にして重合体Bを得た。
【0195】
(重合体Cの合成)
N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド9.56部、トリエチルアミン5.16部、酢酸エチル50部を溶解させ、40℃に加熱した。これに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製カレンズMOI)7.76部を徐々に滴下した。45℃でさらに7時間加熱撹拌を行った。得られた反応液を酢酸エチルで抽出、水洗、及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥・濃縮させることでモノマー2を15.1部得た。
「重合体Aの合成」で用いたモノマー1を上記モノマー2に変更した以外は、「重合体Aの合成」と同様にして重合体Cを得た。
【0196】
2.カチオン重合性イエロー顔料分散物及びイエローインク組成物の調製及び評価
2−1.イエロー顔料分散物の調製
(イエロー顔料分散物の作製)
イエロー顔料分散物A〜K及びXを予備分散工程と本分散工程とを経て作製した。
予備分散工程:表1に示す成分を混合し、1時間スターラーで撹拌した。
本分散工程:撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散物を得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70体積%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間は、2〜8時間で行った。
【0197】
【表1】

【0198】
(使用した素材一覧)
・イエロー顔料:PY185(ピグメントイエロー185、Paliotol Yellow D1155、BASF社製)
【0199】
【化35】

【0200】
・イエロー顔料:PY150(ピグメントイエロー150)
【0201】
・カチオン重合性化合物:OXT−221(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・分散剤:BYK116(DISPERBYK−116、ビックケミー社製)
・分散剤:BYK168(DISPERBYK−168、ビックケミー社製)
・分散剤:BYK182(DISPERBYK−182、ビックケミー社製)
・分散助剤:Solsperse 22000(Lubrizol社製)
【0202】
2−2.イエロー顔料分散物A〜K及びXの評価
得られたイエロー顔料分散物A〜K及びXの流動性、流径分布、保存安定性を評価した。以下に評価方法を示す。
【0203】
<流動性>
本分散後のイエロー顔料分散物の流動性を、下記手順に従い評価した。本分散後のイエロー顔料分散液約50ccを200cc容量の新しいプラスチックディスポカップに移した。その後、ディスポカップの開口部を水平よりも下向き斜め30度に15秒間静置し、分散液が流れ出た量で、流動性を評価した。ここで、液温は25℃とした。なお、評価基準は下記の通りであり、「良好」及び「適合」が要求性能を満たす基準である。
良好:90%以上の混合物が流れ出て、ディスポカップの残留物は10%未満である。
適合:70%以上の混合物が流れ出て、ディスポカップの残留物は30%未満である。
不適:大部分の混合物がディスポカップに残留し、その量は30%以上である。
結果を表2に示した。
【0204】
<粒径分布>
イエロー顔料分散物の粒径分布は、市販の粒径測定機(レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置:LA−920((株)堀場製作所製))を用いて測定した。なお、評価基準は下記の通りであり、「優秀」と「良好」と「適合」とが要求性能を満たす基準である。
優秀:1μm以上の分布が検出できず、平均粒径が100nm未満であった。
良好:1μm以上の分布が検出できず、平均粒径が300nm未満100nm以上であった。
適合:1μm以上の分布が検出できず、平均粒径が600nm以下300nm以上であった。
不適:1μm以上の分布が検出された。
結果を表2に示した。
【0205】
<保存安定性>
50cc(cm3)のイエロー顔料分散物をガラス製のねじ口瓶(100cc)に入れしっかりと蓋をし、温度60℃、湿度45%RHに設定した恒温恒湿槽に30日間保管し、粘度、平均粒子径の変化率及び沈殿物の有無によってイエロー顔料分散物の保存安定性を評価した。イエロー顔料分散物の保存安定性の評価基準は下記の通りであり、ここで「良好」、及び、「適合」が要求性能範囲である。
良好:粘度と平均粒子径の変化率は両方とも10%未満であった。沈殿物は確認できなかった。
適合:粘度の変化率は10%未満であり、平均粒子径の変化率が10%以上50%未満であった。また、沈殿物は確認できなかった。
不適合:粘度変化率が10%以上か、又は、平均粒子径の変化率が50%以上、又は、沈殿物の発生、のいずれか1つ以上に該当した。
結果を表2に示した。
【0206】
【表2】

【0207】
2−3.イエローインク組成物の調製
表3に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、カチオン重合性のイエローインク組成物A〜K及びXを得た。
【0208】
【表3】

【0209】
(使用した素材一覧)
・カチオン重合性化合物:OXT−221(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・カチオン重合性化合物:OXT−211(環状エーテル化合物、東亞合成(株)製)
・カチオン重合性化合物:1,2,8,9−ジエポキシリモネン(環状エーテル化合物、ダイセル化学工業(株)製)
【0210】
【化36】

【0211】
2−4.イエローインク組成物A〜K及びXの評価
(記録用プリンター)
インクジェット記録用ヘッドユニット部は、市販ヘッド(東芝テック(株)製ヘッドCE2)を2つ配列して600dpiにしたヘッドセットで構成した。インクヘッド部に調製したイエローインク組成物A〜K及びXを入れ替えて充填した。
市販紫外線硬化型ランプ(メタルハライドランプ)はヘッドユニット部の両端に2基配置した。該インクジェット記録用ヘッドユニット部は、長軸の金属軸で固定し、往復運動が可能な動力部によって、可変スピードで往復運動を行う。なお、往復運動が可能な動力部には、インク供給用チューブとヘッド制御用の電気配線が内蔵されている。また、インクジェット記録用ヘッドに対し、ヘッド温度を30〜70℃の範囲になるように、恒温槽からの温水を送り込んだ。
該インクジェット記録用ヘッドユニット部の固定軸の両端には、ヘッドのメンテナンス及びクリーニングを実施するためのBOXを具備する。さらにこれらの外側には、インクジェット記録用プリンターをコントロールするためのPC及びインクタンクを配置した。
ヘッドの直下には、被記録媒体を吸引固定可能な被記録媒体吸引ステージを配置した。被記録媒体は、複数本の被記録媒体搬送用ローラーと被記録媒体巻取用ローラーによって、ヘッドの往復運動とは垂直方向に搬送する機構となっている。なお、ここでは被記録媒体は白色PVC機材を使用した。
ヘッドの吐出周波数とヘッド往復運動のスピードを制御し、常に600×600dpiの打滴密度で画像を印刷するように設定した。さらに、被記録媒体上に付与するインク量が4.4mg/cm2となるように駆動電圧とヘッド温度を調整した。
メタルハライドランプからの照射強度は被記録媒体上で約500mW/cm2と一定にし、照射量が可変となるように往復運動のスピードとメタルハライドランプに内蔵しているスリット開口幅とを調整した。
【0212】
作製したイエローインクを前記プリンターに充填し硬化膜を作製し、硬化性、色相及び耐光性を評価した。インクの保存安定性の評価については、遮光ボトルに充填し、一定条件下で保管した後で物性を調べることで実施した。また、同プリンターを用いて吐出性を評価した。これらの評価の詳細な手順、条件及び基準を以下に示す。
【0213】
<硬化性>
露光後の表面のベトツキが無くなる(タックフリーとなる)露光エネルギーによって硬化性を定義した。印刷後の表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け、インク組成物の移りが起きる場合はベトツキ有り、移りが起きない場合はベトツキ無しと判断した。
露光エネルギーは、100mJ/cm2、150mJ/cm2、200mJ/cm2、250mJ/cm2、300mJ/cm2、と変化させた。
ここでは、露光エネルギーは低い方が好ましく、評価基準は下記の通りであり、200mJ/cm2以下が要求性能範囲である。
優秀:100mJ/cm2でタックフリーとなる
良好:150mJ/cm2でタックフリーとなる
適合:200mJ/cm2でタックフリーとなる
不適合:250mJ/cm2でタックフリーとなる
不良:300mJ/cm2でタックフリーとならない
結果を表4に示した。
【0214】
<色相(彩度と色濃度)>
イエローのベタ画像を白色PVC基材上に印画(インク量:4.4mg/cm2、露光量:1,500mJ/cm2のエネルギーで露光)し、イエロー硬化膜を得た。市販の測色計(グレタグ社製SPM100−II)を用いて、硬化膜の反射濃度及びa*、b*値(彩度)を測定した。評価基準は下記の通りである。
彩度
優秀:110<b*
良好:105<b*≦110
適合:100<b*≦105
不適合:b*≦100
色濃度
優秀:1.8<b*
良好:1.7<b*≦1.8
適合:1.6<b*≦1.7
不適合:DY≦1.6
結果を表4に示した。
【0215】
<保存安定性>
50cc(cm3)のインク組成物をガラス製のねじ口瓶(100cc)に入れてしっかりと蓋をし、温度60℃、湿度45%RHに設定した恒温恒湿槽に30日間保管し、粘度、平均粒子径の変化率、及び、沈殿物の有無によってインク組成物の保存安定性を評価した。
インク組成物の保存安定性(高温)の評価基準は下記の通りであり、ここで良好、及び、適合が要求性能範囲である。
良好:粘度と平均粒子径の変化率は両方とも10%未満であった。沈殿物は確認できなかった。
適合:粘度の変化率は10%未満であり、平均粒子径の変化率が10%以上50%未満であった。また、沈殿物は確認できなかった。
不適合:粘度変化率が10%以上か、又は、平均粒子径の変化率が50%以上、又は、沈殿物の発生、のいずれか1つ以上に該当した。
結果を表4に示した。
【0216】
<硬化膜の耐光性>
イエローのベタ画像を白色PVC基材上に印画(インク量:4.4mg/cm2、露光量:1,500mJ/cm2のエネルギーで露光)し、イエロー硬化膜を得た。市販の測色計(グレタグ社製SPM100−II)を用いて、硬化直後硬化膜の反射濃度(DY(初期))を測定した。測定後の膜を耐光性試験機に4週間保管し、保管後の反射濃度(DY(保管後))を測定した。耐光性試験機の保管前後の反射濃度の変化率を算出し、下記基準に基づき耐光性を評価した。
優秀:反射濃度の変化率が10%未満
良好:反射濃度の変化率が15%未満
適合:反射濃度の変化率が20%未満
不適合:反射濃度の変化率が20%以上
不良:反射濃度の変化率が30%以上
結果を表4に示した。
【0217】
<吐出信頼性>
前記プリンターのインク用ヘッドにインク組成物を充填した。なお、ここではヘッドの温度が45±1℃となるように恒温槽を設定し、ヘッドの駆動電圧は25.0(V)の一定の値を保った。
6.2kHzの吐出周波数にて印刷を実施し、不吐出の有無によって吐出信頼性を評価した。評価基準は下記の通りであり、ここで優秀と良好が要求性能範囲である。
良好:不吐出が発生したノズルは無かった
適合:不吐出が発生したノズルは1又は2個であった
不適合:不吐出が発生したノズルは3個以上10個未満であった
不良:不吐出が発生したノズルは10個以上であった
結果を表4に示した。
【0218】
【表4】

【0219】
2−5.顔料濃度を変更して分散した場合の顔料分散剤の評価
(イエロー顔料分散物の作製)
表5に示す成分を混合し、顔料濃度が10重量%、15重量%、30重量%、35重量%、40重量%となるイエロー顔料分散物L1、L2、L3、L4及びL5を予備分散工程と本分散工程とを経て調製した。
【0220】
【表5】

【0221】
(イエローインク組成物の調製)
表6〜表9に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、インク組成物を得た。ここではイエローインク組成物L1(5)〜L5(5)の顔料濃度はおよそ5重量%になるように顔料分散物L1〜L5の濃度を調整した。同じように、イエローインク組成物L1(7)〜L5(7)の顔料濃度はおよそ7重量%、イエローインク組成物L1(10)〜L5(10)の顔料濃度はおよそ10重量%、イエローインク組成物L1(12)〜L5(12)の顔料濃度はおよそ12重量%になるように、顔料分散物の濃度を調整した。
【0222】
【表6】

【0223】
【表7】

【0224】
【表8】

【0225】
【表9】

【0226】
(イエローインクの性能評価)
顔料濃度を変えて作製したイエロー顔料分散物の流動性、粒径分布、高濃度インクへの適応性を評価した。流動性及び粒径分布の評価方法は上記の通りである。高濃度インクへの適応性の評価の詳細な手順、条件及び基準を以下に示す。評価結果は表10に示す通りであった。
【0227】
<高濃度インクへの適応性>
顔料濃度の高いインク組成物作製への適応性を下記基準で評価した。
優秀:12重量%以上のインク化に適応できた
良好:10重量%以上のインク化に適応できた
適合:8重量%以上のインク化に適応できた
不適:8重量%以上のインク化に適応できなかった
【0228】
【表10】

【0229】
3.ラジカル重合性イエロー顔料分散物及びイエローインク組成物の調製及び評価
3−1.イエロー顔料分散物の調製
(イエロー顔料分散物の作製)
表11に示すイエロー顔料分散物M〜Wを予備分散工程と本分散工程とを経て作製した。
【0230】
【表11】

【0231】
(使用した素材一覧)
・ラジカル重合性化合物:DPGDA(アクリレート化合物、新中村化学工業(株)製)
【0232】
3−2.イエロー顔料分散物M〜Wの評価
得られたイエロー顔料分散物M〜Wの流動性、流径分布、保存安定性を評価した。
結果を表12に示した。
【0233】
【表12】

【0234】
3−3.イエローインク組成物の調製
表13に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、ラジカル重合性イエローインク組成物M〜Wを得た。
【0235】
【表13】

【0236】
(使用した素材一覧)
・ラジカル重合性化合物:DPGDA(アクリレート化合物、新中村化学工業(株)製)
・ラジカル重合性化合物:PEA(フェノキシエチルアクリレート、第一工業製薬(株)製)
・ラジカル重合性化合物:A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業(株)製)
・開始剤:DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・開始剤:Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・開始剤:Irgacure907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・増感剤B:Speedcure ITX(2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンとの混合物;Lambson社製)
【0237】
3−4.ラジカル重合性イエローインク組成物M〜Wの評価
作製したイエローインク組成物を前記プリンターに充填し硬化膜を作製し、硬化性、色相及び耐光性を評価した。インクの保存安定性の評価については、遮光ボトルに充填し、一定条件下で保管した後で物性を調べることで実施した。また、同プリンターを用いて吐出性を評価した。なお、硬化性の評価基準は下記の通りである。各評価結果は表14に示す通りであった。
【0238】
<硬化性>
露光後の表面のベトツキが無くなる(タックフリーとなる)露光エネルギーによって硬化性を定義した。印刷後の表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け、インク組成物の移りが起きる場合はベトツキ有り、移りが起きない場合はベトツキ無しと判断した。
露光エネルギーは、300mJ/cm2、600mJ/cm2、900mJ/cm2、1,200mJ/cm2、1,500mJ/cm2、と変化させた。
ここでは、露光エネルギーは低い方が好ましく、評価基準は下記の通りであり、200mJ/cm2以下が要求性能範囲である。
優秀:300mJ/cm2でタックフリーとなる
良好:600mJ/cm2でタックフリーとなる
適合:900mJ/cm2でタックフリーとなる
不適合:1,200mJ/cm2でタックフリーとなる
不良:1,500mJ/cm2でタックフリーとならない
【0239】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料であるピグメントイエロー185、及び、
式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする
顔料分散物。

(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは0又は1を表し、Wは単結合又は二価の連結基を表し、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【請求項2】
前記ピグメントイエロー185の含有量が、顔料分散物全量に対して15〜35重量%である、請求項1に記載の顔料分散物。
【請求項3】
前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の含有量が、顔料分散物全量に対して5〜10重量%である、請求項1又は2に記載の顔料分散物。
【請求項4】
重合性化合物を含む、請求項1〜3いずれか1つに記載の顔料分散物。
【請求項5】
前記重合性化合物として、カチオン重合性化合物及び/又はラジカル重合性化合物を含む、請求項4に記載の顔料分散物。
【請求項6】
有機顔料であるピグメントイエロー185、及び、
式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする
インク組成物。

(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Jは−CO−、−COO−、−CONR1−、−OCO−、メチレン基又はフェニレン基を表し、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nは0又は1を表し、Wは単結合又は二価の連結基を表し、Pは有機顔料を形成する複素環残基を表す。)
【請求項7】
前記ピグメントイエロー185の含有量が、インク組成物全量に対して5〜12重量%である、請求項6に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の含有量が、インク組成物全量に対して、0.1〜5重量%である、請求項6又は7に記載のインク組成物。
【請求項9】
重合性化合物を含む、請求項6〜8いずれか1つに記載のインク組成物。
【請求項10】
前記重合性化合物として、カチオン重合性化合物及び/又はラジカル重合性化合物を含む、請求項9に記載のインク組成物。
【請求項11】
被記録媒体上に、請求項6〜10いずれか1つに記載のインク組成物を吐出する工程、及び、
吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−26488(P2011−26488A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175225(P2009−175225)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】