説明

顔料分散組成物、これを用いた着色感光性樹脂組成物、インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにカラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】近時求められる液晶表示装置等の精密画像関連機器における高い要求特性に応えることができる、高コントラストと高耐光性とを両立した顔料分散組成物、これを用いた着色感光性樹脂組成物、インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにカラーフィルタ及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】C.I.ピグメントレッド146とC.I.ピグメントレッド242との2種の顔料微粒子を含有し、前記C.I.ピグメントレッド242と前記C.I.ピグメントレッド146との合計質量に占める前記C.I.ピグメントレッド146の質量の割合(CIPR146/(CIPR146+CIPR242))が0.1以上0.95以下であり、前記2種の顔料微粒子の粒子サイズが40nm以下である顔料分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散組成物、これを用いた着色感光性樹脂組成物、インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにカラーフィルタ及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタについては、高性能・高品質が求められており、その作製に用いられる有機顔料の改良が試みられている。具体的には、顔料分散体の調製において貯蔵安定性に優れるもの、これを使用したカラーフィルタ着色画素部の塗膜のコントラストに優れるものなどが要求されている。そういったニーズに応えるべく、例えば顔料粒子を10〜100nmの範囲にまで小サイズ化し、しかも分散安定化する研究が精力的に進められている。これにより、ナノメートルサイズにすることで初めて発現する作用効果を活かし、従来予想できなかった新たな特性を効果的に引き出すことができる可能性がある。上述のカラーフィルタ用途はもとより、例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク等においても、その研究開発が進められている。とりわけ上述のカラーフィルタやインクジェットインクについては、精密化学技術を駆使した高性能化のための取り組みがなされ、その成果が期待されている。
【0003】
ここで有機顔料の分散方法についていうと、ブレイクダウン法と液相法とに大別される、ブレイクダウン法としては、ビーズミル法やソルトミリング法などの各種ミリング法により顔料を微細化する方法挙げられる。ブレイクダウン法により調製した顔料微粒子をインク等に活用することを開示したものとして、特許文献1及び2等がある。一方、液相法としては、顔料を良溶媒(第1溶媒)に溶解した顔料溶液と貧溶媒(第2溶媒)とを混合してナノ粒子を析出させる再沈法が挙げられる。最近では、この再沈法で得た分散液に所定の高分子化合物等を分散剤として添加することが提案されている(特許文献3〜5参照)。
【0004】
これまで、高性能表示装置や印画装置に適合する顔料微粒子については、上述のようなブレイクダウン法及び液相法を用い、顔料微粒子をナノメートルサイズにまで微細化し、しかも良好な分散性を付与する方向で開発が進められてきた。それ以外の手法として例えば複数の顔料を組み合わせることを検討した例は殆どなく、その物性や色特性に関する知見もあまりない。カラーフィルタに適用される赤色の色材をみても、表示装置としての色特性を考慮し、むしろPR254単独あるいはこれとPR177とを組み合わせたものが前提とされてきた。なかには、その赤色の色特性を維持しつつ透明度を向上させることを目的とし、ピグメントレッド242(PR242)をPR177ないしPR254と組み合わせることを提案したものがある(特許文献6参照)。しかしながら、この特許文献についてみても、顔料微粒子の粒径やカラーフィルタとしたときの詳細な性能は開示されておらず、近時要求されるカラーフィルタの高コントラスト化や高耐光性を満足しうるものかは分からない。特に、コントラストを向上させることを考慮し粒子の平均粒径を落とし微分散化すると、耐光性は逆に低下してしまう関係となる。通常どちらかを犠牲にしなければならず、これらの特性の両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−186681号公報
【特許文献2】特開2000−160084号公報
【特許文献3】国際公開第WO2006/121016号パンフレット
【特許文献4】特開2004−43776号公報
【特許文献5】特開2007−119586号公報
【特許文献6】特許3924872号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、近時求められる液晶表示装置等の精密画像関連機器における高い要求特性に応えることができる、カラーフィルタとしたときに高コントラストと高耐光性とを両立することができる顔料分散組成物、これを用いた着色感光性樹脂組成物、インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにカラーフィルタ及び液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は以下の手段により解決された。
(1)C.I.ピグメントレッド146とC.I.ピグメントレッド242との2種の顔料微粒子を含有し、前記C.I.ピグメントレッド146の質量の該C.I.ピグメントレッド242と前記C.I.ピグメントレッド146との合計質量に占める割合(CIPR146/(CIPR146+CIPR242))が0.1以上0.95以下であり、前記2種の顔料微粒子の粒子サイズが40nm以下であることを特徴とする顔料分散組成物。
(2)前記C.I.ピグメントレッド146の質量の割合(CIPR146/(CIPR146+CIPR242))が0.2以上であることを特徴とする(1)に記載の顔料分散組成物。
(3)質量平均分子量1000〜100000の高分子化合物を含有していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の顔料分散組成物。
(4)前記高分子化合物が、酸性基を50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲で有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーとを含有するカラーフィルタ用インクジェットインク。
(7)仮支持体上に、少なくとも、(5)に記載の着色感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性樹脂転写材料。
(8)(5)に記載の着色感光性樹脂組成物、(6)に記載のカラーフィルタ用インクジェットインク、及び/又は(7)に記載の感光性樹脂転写材料を用いて作製した、前記顔料分散組成物中の顔料微粒子を含有することを特徴とするカラーフィルタ。
(9)(8)に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の顔料分散組成物は、近時求められる液晶表示装置等の精密画像関連機器における高い要求特性に応えることができ、カラーフィルタとしたときに高コントラストと高耐光性とを両立して発揮するという優れた作用効果を奏する。さらにまた、上記の特性を有する顔料分散組成物を用いた着色感光性樹脂組成物、インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料により作製したカラーフィルタ及び液晶表示装置は赤の色味と黒のしまり(バックライトからの照射光を遮断し黒表示としたときに光の漏れがなく黒が深く暗くみえること)に優れ、長期間の使用においてもその優れた赤色の表示性能を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の顔料分散組成物はC.I.ピグメントレッド146とC.I.ピグメントレッド242の2種の顔料微粒子を含有することを特徴とする。本発明によれば、上述した2種の顔料微粒子の組合せにより、カラーフィルタとしたときに、従来のPR254とPR177との組合せでは実現困難であったほど高いレベルで、高コントラスト化及び高耐光性を両立して実現することができる。このような顕著な効果を奏する理由については未解明の点もあるが、光が照射されたときに微粒子化したPR146と微粒子化したPR242との間でのエネルギー移動が起こり、光吸収による分解反応が抑制されるため、微細化顔料にも関わらず耐光性が飛躍的に向上することが考えられる。
【0010】
[顔料]
本発明には、赤色顔料にピグメントレッド(Pigment Red)146とピグメントレッド(Pigment Red)242とが用いられる。両者の含有率は特に限定されないが、PR146の両顔料に対する比(PR146/PR146+PR242)としていえば、0.1以上0.95以下が好ましく、0.2以上0.95以下がより好ましく、0.4以上0.95以下であることが特に好ましい。前記両顔料を上記の範囲で組み合わせて用いることにより、カラーフィルタ用途の一般的な色特性を満たし、良好なコントラストに加え、とりわけ高い耐光性が得られ好ましい。なお、本発明においては、その効果の範囲で、上記以外の顔料微粒子や染料を組成物中に含有させて用いることが妨げられるものではない。
【0011】
本発明の顔料分散組成物における顔料の総含有率は、その全固形分成分に対して、10質量%〜70質量%が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が最も好ましい。上記下限値以上とすることで、微細化され表面積の増えた顔料微粒子を安定分散させることができ、上記上限値以下とすることで顔料誘導体の過剰添加による色価低下を防ぐことができる。なお、本発明においては、その所望の効果を損ねない範囲で、上記以外の顔料をさらに組み合わせて用いることが妨げられるものではない。
【0012】
・ 顔料微粒子
本発明において顔料微粒子(一次粒子)の平均粒径は40nm以下である。このような微細化した領域で耐光性を維持することは特に難しく、本発明の効果が顕著に発揮されて好ましい。下限値は特にないが、1nm以上であることが実際的である。また、粒子の均一性(単分散性)を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、CVを用いる。CVは数平均粒径LとLの標準偏差σの比(σ/L)で表される。本発明において顔料微粒子(一次粒子)の単分散度、つまりCVは30%以下であることが好ましく、20%以下であることが特に好ましい。本発明において顔料微粒子の結晶子径は特に限定されないが、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、20nm以下であることが実際的である。上記粒径、結晶子径の測定方法としては、特に断らない限り、実施例で採用した方法により測定したものをいう。なお、上記有機顔料微粒子の好ましい範囲は、少なくともPR146が上記範囲であることが好ましく、含まれるすべての顔料微粒子が上記範囲であることがより好ましい。
【0013】
・ 粉砕法
本発明に用いる顔料微粒子は、特に微粒化方法に制限はないが、粉砕法等のブレイクダウン法によって調製することができる。その際には、必要により各種溶剤、樹脂、ワニス等を混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより得ることができる。またニーダーなどの混練装置を用いて、有機顔料を無機塩で摩砕して、有機顔料の一次粒子径を更に微細になるようにソルトミリング処理したものを用いることもできる。後述する特定の高分子化合物やその他の顔料分散剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料と特定の高分子化合物(特定重合体)等、顔料のみ、あるいは顔料と顔料分散剤のみを分散し、次いで、他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。また微粒化処理の際に添加してもよい。
【0014】
また、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、または顔料への塩基性基を有するシナジスト及び/または分散剤の処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等の分散機や混合機を利用することができる。
【0015】
・ 再沈法
本発明において、有機顔料粒子は、有機顔料を良溶媒(以下、これを第1溶媒ということがある)に溶解した有機顔料の溶解液と、前記良溶媒に対して相溶性を有し、有機顔料に対して貧溶媒(以下、これを第2溶媒ということがある)となる溶媒とを混合することにより生成させたものを用いることができる。詳細は例えば特開2008−291193号公報、特開2007−262378号公報、2004−43776号公報、2008−231415号公報等を参照することができる。
【0016】
[高分子分散剤]
本発明においては、上述のとおり粉砕法ないし再沈法で調製した分散体に質量平均分子量1000〜100000の高分子化合物を含有させることが好ましく、質量平均分子量5000〜70000の高分子化合物を含有させることがより好ましい。このとき再沈法で得た分散体については、溶媒を除去して所定の有機溶媒等に置換しておくことが好ましい。このとき顔料の分散性をより向上させる目的で、特定の顔料分散剤や界面活性剤等の分散剤などを本発明の効果を損なわない限りにおいて加えることもできる。なお、ここで用いる分散剤を先に述べた再沈法において使用し、例えば、顔料微粒子の析出時に共存させてもよい。なお、本発明において、分子量というとき特に断らない限り質量平均分子量を意味し、分子量及び分散度は下記の測定方法で測定した値をいう。
【0017】
(高分子化合物の分子量・分散度の測定方法)
分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定する。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられるが、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましい。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。
【0018】
以下に分子量測定の具体的な条件を示す。
装置:HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
検出器:示差屈折計(RI検出器)
プレカラム:TSKGUARDCOLUMN MP(XL)
6mm×40mm(東ソー(株)製)
サンプル側カラム:以下の2本を直結(全て東ソー(株)製)
・TSK−GEL Multipore−HXL−M 7.8mm×300mm
リファレンス側カラム:サンプル側カラムに同じ
恒温槽温度:40℃
移動層:テトラヒドロフラン
サンプル側移動層流量:1.0mL/分
リファレンス側移動層流量:0.3mL/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:100μL
データ採取時間:試料注入後16分〜46分
サンプリングピッチ:300msec
【0019】
また、上記高分子化合物は、酸性基を有し、酸価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、70mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、現像液中での析出物の生成抑制効果を発揮し、かつ2次凝集体の凝集力を効果的に弱めることができる。以下、上記高分子化合物の好ましい例である分散剤A及びBについて説明する。
【0020】
(分散剤A)
本発明の顔料分散体には、加工顔料の分散性をより向上させる目的で、顔料分散剤や界面活性剤等の分散剤を加えることもできる。分散剤(顔料分散剤)としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。高分子分散剤は、その構造からさらに直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0021】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。前記高分子分散剤は、分散工程において、顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0022】
・グラフト型高分子
グラフト型高分子については、特に制限されないが、特開昭54−37082号公報、特開昭61−174939号公報などに記載のポリアルキレンイミンとポリエステル化合物を反応させた化合物、特開平9−169821号公報に記載のポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステルで修飾した化合物、特開昭60−166318号公報に記載のポリエステルポリオール付加ポリウレタン等が好適に挙げられ、更に、特開平9−171253号公報や、マクロモノマーの化学と工業(アイピーシー出版部、1989年)などにあるように、重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)を共重合成分とするグラフト型高分子も好適に挙げることができる。また、顔料に吸着して、良好な分散性を与えるという点において、特開2003−238837に記載の有機色素部分を有するグラフト型高分子が好ましい。グラフト型高分子の枝部は、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトン等が好適に挙げられるが、ポリカプロラクトン鎖を有するグラフト型高分子がより好ましい。前記グラフト型高分子の市販品としては、ソルスパース24000、同28000、同32000、同38500、同39000、同55000(以上ルーブリゾール社製)、Disperbyk−161、同−171、同−174(以上BYK Chemie社製)等[いずれも商品名]が挙げられる。
【0023】
・末端変性型高分子
末端変性型高分子としては、例えば、特開平9−77994号公報や、特開2002−273191号公報、特開2007−277514公報、特開2007−140487公報などに記載されているポリマーの末端に官能基を有する高分子を挙げることができる。
【0024】
・ブロック型高分子
ブロック型高分子としては、特に限定されないが、顔料吸着ブロックと、顔料に吸着しないブロックとからなるブロック型高分子が挙げられる。顔料吸着ブロックを構成する単量体としては、特に制限されないが、例えば、顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーが挙げられる。具体的には、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、酸性基を有するモノマー、塩基性窒素原子を有するモノマーなどを挙げることができる。有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、例えば、特開2003−238837に記載の有機色素骨格やマレイミド誘導体などが挙げられる。ブロック型高分子としては、市販品を利用することも可能である。具体的な例としては、Disperbyk−2000、同−2001(以上BYK Chemie社製)、EFKA4330、同4340(以上EFKA社製)等[いずれも商品名]を挙げることができる。
【0025】
分散体中の分散剤Aの使用量は特に限定されないが、カラーフィルタとの色材としての利用を考慮すると例えば、顔料100質量部に対して、10〜400質量部であることが好ましく、20〜200質量部であることがより好ましい。
【0026】
(分散剤B)
本発明においては、下記一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含む高分子化合物(以下、「分散剤B」ということがある)を含有することが好ましい。
【0027】
【化8】

【0028】
上記一般式(I)及び(II)中、R21〜R26は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X21及びX22は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L21及びL22は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、A21及びA22は、各々独立に、1価の有機基を表し、ma及びnaは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
【0029】
21〜R26は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、置換若しくは無置換のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。アルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3がより好ましい。)メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等が挙げられる。好ましいアルキル基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。R21、R22、R24、及びR25としては、水素原子が好ましく、R23及びR26としては、水素原子又はメチル基が、顔料表面への吸着効率の点からも最も好ましい。
【0030】
21及びX22は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。中でも、−C(=O)O−、−CONH−、フェニレン基が、顔料への吸着性の観点で好ましく、−C(=O)O−が最も好ましい。
【0031】
21及びL22は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表す。2価の有機連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基や、該アルキレン基とヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造とからなる2価の有機連結基が好ましい。ここで、アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。また、ヘテロ原子を含む部分構造におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子があげられ、中でも、酸素原子、窒素原子が好ましい。好ましいアルキレン基として、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。アルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。2価の有機連結基としては、上記のアルキレン基の末端に、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有し、該ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介して、隣接した酸素原子と連結したものが、顔料への吸着性の点から好ましい。ここで、隣接した酸素原子とは、一般式(I)におけるL21、及び一般式(II)におけるL22に対し、側鎖末端側で結合する酸素原子を意味する。
【0032】
21及びA22としては、分散安定性、現像性の点から、炭素原子数1〜20までの直鎖状、炭素原子数3から20までの分岐状、及び炭素原子数5〜20までの環状のアルキル基から選ばれる基が好ましく、炭素原子数4〜15までの直鎖状、炭素原子数4〜15までの分岐状、及び炭素原子数6〜10までの環状のアルキル基から選ばれる基がより好ましく、炭素原子数6〜10までの直鎖状及び炭素原子数6〜12までの分岐状のアルキル基から選ばれる基が更に好ましい。
【0033】
ma及びnaは、各々独立に、2〜8の整数を表す。分散安定性、現像性の点から、4〜6が好ましく、5が特に好ましい。
【0034】
p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。pの異なるもの、qの異なるものが2種以上、混合されてもよい。p及びqは、分散安定性、現像性の点から、5〜60が好ましく、5〜40がより好ましく、5〜20が更に好ましい。
【0035】
本実施態様における分散剤Bとしては、分散安定性の点から、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0036】
また、一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(I)−2で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0037】
【化9】

【0038】
上記一般式(I)−2中、R21〜R23は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、Laは、炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lbは、−C(=O)−、又は−NHC(=O)−を表し、A21は、1価の有機基を表し、maは、2〜8の整数を表し、pは、1〜100の整数を表す。
【0039】
一般式(I)、(II)、又は、(I)−2で表される繰り返し単位は、それぞれ、下記一般式(i)、(ii)、又は、(i)−2で表される単量体を、重合あるいは共重合することにより、高分子化合物の繰り返し単位として導入される。
【0040】
【化10】

【0041】
上記一般式(i)、(ii)、及び(i)−2中、R21〜R26は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X21及びX22は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L21及びL22は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、Laは、炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lbは、−C(=O)−、又は−NHC(=O)−を表し、A21及びA22は、各々独立に、1価の有機基を表し、ma及びnaは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
【0042】
本実施態様における分散剤Bは、その効果を損なわない範囲において、更に、共重合可能なビニルモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0043】
本実施態様における分散剤Bの好ましい態様は、少なくとも一般式(i)、(ii)、又は(i)−2で表される単量体と、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーと、を共重合したもので、更に好ましくは、少なくとも前述の一般式(i)−2で表される単量体と、前述の一般式(11)で表される単量体と、酸基を有するモノマーと、を共重合したものである。これにより、顔料吸着に優れ、且つ、現像性に優れた顔料分散体を与えることができる。
【0044】
本実施態様に分散剤Bの好ましい分子量は、質量平均分子量(Mw)で1,000〜100,000の範囲、数平均分子量(Mn)で400〜50,000の範囲であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000の範囲、数平均分子量(Mn)で2,000〜30,000の範囲であることがより好ましい。特に、質量平均分子量(Mw)で8,000〜30,000の範囲、数平均分子量(Mn)で4,000〜12,000の範囲であることが最も好ましい。顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体を効果的にほぐし、あるいは、再凝集を効果的に弱めるための観点からは、分散剤Bの質量平均分子量(Mw)は1000以上であることが好ましい。また、顔料分散体を含有する着色感光性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、分散剤Bの質量平均分子量(Mw)は30000以下であることが好ましい。
【0045】
本実施態様における分散剤Bは、例えば、下記一般式(i)、(ii)、又は、(i)−2で表される単量体と、共重合成分として他のラジカル重合性化合物(前述のような各種モノマー)と、を用い、通常のラジカル重合法によって製造することができる。一般的には、懸濁重合法あるいは溶液重合法などを用いる。このような分散剤Bを合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。なお、ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノールおよびドデシルメルカプタン)を使用することができる。
【0046】
本実施態様の顔料分散体中、分散剤Bの含有量としては質量比で、顔料:分散剤B=1:0.1〜1:2が好ましく、より好ましくは、1:0.2〜1:1であり、更に好ましくは、1:0.4〜1:0.7である。
【0047】
また、本実施態様の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、上述の特定共重合体の他に、他の高分子化合物を同時に使用してもよい。他の高分子化合物としては、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等が用いられる。天然樹脂としてはロジンが代表的であり、変性天然樹脂としては、ロジン誘導体、繊維素誘導体、ゴム誘導体、タンパク誘導体およびそれらのオリゴマーが挙げられる。合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。天然樹脂で変性された合成樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。合成樹脂としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
【0048】
[カラーフィルタ、その原料組成物・材料]
上記の顔料分散物ないしその濃縮物、乾燥粉末を利用して良好な性能を発揮するカラーフィルタ、その原料組成物・材料とするこができる。その具体的な手順については、例えば、特開2007−262378号公報、特開2008−007773号公報、特開2008−291193号公報、特開2009−242687号公報等を参照することができる。概略を下記に述べておく。
【0049】
・ 着色感光性樹脂組成物
着色感光性樹脂組成物は、前記有機顔料微粒子の分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含む。顔料微粒子の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。
【0050】
モノマーもしくはオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合する多官能モノマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。
【0051】
バインダーとしては、酸性基を有するバインダーが好ましい。バインダーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、顔料微粒子100質量部に対する添加量は10〜200質量部が一般的であり、25〜100質量部が好ましい。
【0052】
光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、従来公知のものを適宜採用すればよい。例えば、米国特許第2367660号明細書、米国特許第2448828号明細書、米国特許第2722512号明細書、米国特許第3046127号明細書、同第2951758号明細書、米国特許第3549367号明細書、特公昭51−48516号公報、米国特許第4239850号明細書、米国特許第4212976号明細書、特開平11−133600号公報に開示されたものを好適なものとしてあげることができる。
光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
【0053】
着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましい。照射量は5〜1500mJ/cmが好ましく、10〜1000mJ/cmがより好ましく、10〜500mJ/cmが特に好ましい。
【0054】
上記の着色感光性樹脂組成物は通常の塗布方法により塗布することができ、それを乾燥することによって塗布膜を形成することができる。塗布方法については例えば、スリット状ノズルによる塗布、スピン塗布などが挙げられる。
【0055】
・ インクジェットインク
本発明のインクジェットインクとしてはカラーフィルタ用以外にも、画像形成用等、通常のインクジェットインクとしてもよいが、なかでもカラーフィルタ用インクジェットインクとすることが好ましい。インクジェットインクとして、本発明における実施態様としては特に限定されないが例えば特開2002−201387号に記載される方法などを好ましく用いることが出来る。本発明のインクジェットインクにおいては、さらに光重合開始剤ないしは光重合開始剤系(d)、その他の添加剤を含有させてもよい。それぞれの成分((a)〜(d)、その他の添加剤)の含有量は先に着色感光性組成物において説明したものと同様にしてもよい。ただし、本発明のインクジェットインクをカラーフィルタ作製用インクとするときには、感光性インクとはしない態様が好ましく、光重合開始剤ないしは光重合開始剤系を用いないことが好ましい。
【0056】
本発明においては、カラーフィルタ用インクジェットインクを用いて画素を形成する前に、予め隔壁を作製し、該隔壁に囲まれた部分にインクを付与することが好ましい。この隔壁はどのようなものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁(以下、単に「隔壁」とも言う。)であることが好ましい。該隔壁は通常のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材、方法により作製することができる。
【0057】
・ 感光性転写材料
本発明の感光性転写材料は、上記の着色感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を有してなり、具体的な構成は特に限定されないが、例えば一体型となったフイルムを用いて形成したものであることが好ましい。一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。
【0058】
感光性転写材料において、感光性樹脂層の膜厚としては、1.0〜5.0μmが好ましく、1.0〜4.0μmがより好ましく、1.0〜3.0μmが特に好ましい。また、特に限定されるわけではないが、その他の各層の好ましい膜厚としては、仮支持体は15〜100μm、熱可塑性樹脂層は2〜30μm、中間層は0.5〜3.0μm、保護フイルムは4〜40μmが、一般的に好ましい。
【0059】
・ カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、コントラストに優れる。本発明においてコントラストとは、2枚の偏光板の間において、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量の比を表す(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリミネーションが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
【0060】
本発明のカラーフィルタは、テレビ用として用いる場合は、F10光源による、レッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)のそれぞれ全ての単色の色度が、下表に記載の値(以下、本発明において「目標色度」という。)との差(ΔE)で5以内の範囲であることが好ましく、更に3以内であることがより好ましく、2以内であることが特に好ましい。
【0061】
x y Y
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R 0.656 0.336 21.4
G 0.293 0.634 52.1
B 0.146 0.088 6.90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0062】
本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、目標色度との差は、La表色系の色差で表す。
【0063】
本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置はコントラストが高く、黒のしまり等の描写力に優れ、とくにVA方式であることが好ましい。ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の液晶表示装置等としても好適に用いることができる。また、本発明のカラーフィルタはCCDデバイスに用いることができ、優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は共に質量基準である。
【0065】
〔製造例〕
顔料C.I.ピグメントレッド146(クラリアント社、Permanent Carmine FBB02[商品名]) 1質量部、粉砕した塩化ナトリウム7質量部、ジエチレングリコール1.6質量部を双腕型ニーダーに仕込み、100℃で4時間混練した。混練後80℃の水100質量部に取り出し、1時間攪拌後、濾過し、80℃の湯洗浄を行い、90℃で乾燥させ、ハンマーミルで粉砕し顔料粉体Aを得た。
顔料粉体Aを用い、下記組成の有機顔料分散組成物Aを調整した。
顔料粉体A 7.5g
Disperbyk 2155(ビックケミー社製) 4.5g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 38.0g
上記組成の有機顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで1時間、次いで直径0.1mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで4時間分散し、有機顔料分散組成物Aを得た。分散組成物Aの顔料微粒子の平均粒子径及び単分散度の測定は以下のように行った。
【0066】
電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EX(商品名))で観察撮影した写真画像を用い、200個の粒子において円相当直径を算定しその数平均を一次粒子の平均粒径、200個の粒径の標準偏差/平均粒径をCVとした。
測定した結果、下表のとおりであった。
【0067】
以下に、上記製造例のピグメントレッド146、および双腕型ニーダーでの混練時間を表1のとおりに変更して顔料分散組成物B〜Lを得た。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例1]
有機顔料分散組成物A7.5質量部、有機顔料分散組成物C7.5質量部、アルカリ可溶性樹脂A(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸(=75/25[質量比])共重合体(質量平均分子量:12,000、酸価:120mgKOH)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分30%))17質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15質量部を混合し、カラーフィルタ用着色組成物101を得た。これを調製された着色感光性組成物(カラーレジスト液)を、100mm×100mmのガラス基板(1737、コーニング社製)上に、色濃度の指標となるx値が0.650となるように塗布し、90℃のオーブンで60秒間乾燥させ、カラーフィルタ用赤色画素部101を得た。
【0070】
[実施例2〜7 比較例1〜13]
顔料分散組成物およびその質量を下記表2とした以外は実施例1と同様にして、カラーフィルタ用赤色画素部(102〜107、c01〜c13)を得た。
【0071】
〔カラーフィルタ赤色画素部の評価方法〕
(コントラストの測定、評価)
得られた顔料分散組成物を、ガラス基板上に塗布し、乾燥後の塗布膜の厚さが1μmになるようにサンプルを作製した。2枚の偏光板の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(この評価法は、「1990年第7回 色彩光学コンファレンス、512色表示10.4“サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」を参考にした)。ここで、コントラストが高いことは、顔料が高度に微細化された状態で均一に分散されているため、透過率すなわち着色力が高いことを示す。
【0072】
(耐光性の測定)
上記コントラストの測定に用いたサンプルを90mW/cmの高圧水銀ランプで24時間照射し、照射前後の色差を測定し、耐光性の指標とした。なお色度は顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、C光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、色度の差は、La表色系の色差(ΔEab)で表す。この色差が小さいほど耐光性が高いことを意味する。
各カラーフィルタ用赤色画素部のコントラストおよび耐光性試験結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
上記表に示されるとおり、PR146の微粒子とPR242の微粒子とを混合した色材においては、これを用いてカラーフィルタとしたときに高いコントラストと耐光性とを両立して実現しうることが分かる。また、上記実施例の顔料組成物を用いたものは、表示装置に求められる赤の色特性の範囲にあり、カラーフィルタ用の色材として有用であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントレッド146とC.I.ピグメントレッド242との2種の顔料微粒子を含有し、前記C.I.ピグメントレッド242と前記C.I.ピグメントレッド146との合計質量に占める前記C.I.ピグメントレッド146の質量の割合(CIPR146/(CIPR146+CIPR242))が0.1以上0.95以下であり、前記2種の顔料微粒子の粒子サイズが40nm以下であることを特徴とする顔料分散組成物。
【請求項2】
前記C.I.ピグメントレッド146の質量の割合(CIPR146/(CIPR146+CIPR242))が0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散組成物。
【請求項3】
質量平均分子量1000〜100000の高分子化合物を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料分散組成物。
【請求項4】
前記高分子化合物が、酸性基を50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲で有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーとを含有するカラーフィルタ用インクジェットインク。
【請求項7】
仮支持体上に、少なくとも、請求項5に記載の着色感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性樹脂転写材料。
【請求項8】
請求項5に記載の着色感光性樹脂組成物、請求項6に記載のカラーフィルタ用インクジェットインク、及び/又は請求項7に記載の感光性樹脂転写材料を用いて作製した、前記顔料分散組成物中の顔料微粒子を含有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2011−195796(P2011−195796A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67377(P2010−67377)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】