説明

顔料分散組成物、光硬化性組成物、カラーフィルタ、液晶表示素子および固体撮像素子

【課題】高い顔料分散性と分散安定性とを有し、色特性が良好な顔料分散組成物、現像性および画素の表面平滑性に優れ、かつ高いコントラストを得ることができる光硬化性組成物、色特性が良好でコントラストの高いカラーフィルタを提供する。
【解決手段】ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有し、重量平均分子量が1,000〜100,000であり、且つブロック型、グラフト型または末端変性型の構造を有する高分子化合物(A)、および顔料(B)を含有する顔料分散組成物、上記顔料分散組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する光硬化性組成物、上記の光硬化性組成物を用いてなるカラーフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ、カラープルーフ等の画像材料や、インクや塗料などの光硬化性材料を構成するのに利用することができる顔料分散組成物、並びに液晶表示装置、固体撮像素子などのカラーフィルタの形成に好適な光硬化性組成物、該硬化性組成物を用いたカラーフィルタ、液晶表示素子および固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルタは、液晶表示素子(LCD)用途ではモニターのみならずテレビへと用途が拡大する傾向にあり、この用途拡大に伴い、色度、コントラストなどにおいて高度の色特性が要求されるに至っている。また、イメージセンサ(固体撮像素子)用途においても同様に、色むらの低減、色分解能の向上など色特性の高いものが求められるようになっている。
【0003】
上記のような要求に対して、より微細な状態で顔料を分散させること(良好な分散性)、安定な分散状態で顔料を保持させること(良好な分散安定性)が求められている。分散性が不十分である場合には、形成された着色レジスト膜にフリンジ(エッジ部のギザギザ)や表面凹凸が生じ、製造されるカラーフィルタの色度や寸法精度が低下したり、コントラストが著しく劣化したりするという問題がある。また分散安定性が不十分である場合には、カラーフィルタの製造工程において、特に、着色光硬化性組成物の塗布工程での膜厚の均一性が低下したり、露光工程での感光感度が低下したり、現像工程でのアルカリ溶解性が低下したりするという問題が生じ易い。さらに、顔料の分散安定性が悪い場合には、時間の経過に伴い、着色光硬化性組成物の構成成分が凝集を起こして粘度が上昇し、ポットライフが極めて短くなるという問題もある。
【0004】
このような問題を解決するために、有機色素とポリマーを結合させたポリマーの顔料分散剤などが提案されている(特許文献1参照)。またカルボン酸、スルホン酸等の酸基を含有する共重合体、フェノール性酸基が置換したマレイミドを含有するポリマーを使用することも提案されている(特許文献2、3参照)。
しかしながら、顔料の粒子径を微細化すると顔料粒子の表面積が大きくなるため、顔料粒子間の凝集力が強くなり、高度なレベルで分散性と分散安定性を両立することが困難であった。
【0005】
また、該顔料分散組成物を用いてカラーフィルタを製造するに当たっては、基板上あるいは予め所望のパターンの遮光層を形成した基板上に、光硬化性組成物を塗布して、乾燥したのち、乾燥した塗膜に所望のパターンに放射線を照射(以下、「露光」という。)し、現像することにより、各色の画素を得ている。しかし、このようにして製造されたカラーフィルタは、現像工程で未露光部の基板上あるいは遮光層上に残渣や地汚れを生じやすく、また現像後にポストベークされた画素が、表面平滑性が悪いなど塗膜物性に劣るという問題があった。しかも、基板上あるいは遮光層上の残渣や地汚れおよび表面平滑性の劣化の程度は、光硬化性組成物に含まれる顔料の濃度が高くなるにつれて著しくなる傾向があり、そのため従来のカラーフィルタ用光硬化性組成物では、十分な色濃度を達成することが困難であった。
【0006】
また、ラクトンを含有した線状ランダム重合体を使用することが提案されている(特許文献4参照)。しかし、この場合、現像性に有効なラクトンを多く入れると分子量が高くなりすぎて溶剤溶解性や現像性が悪化するという問題が生じる。そのため、十分な量を導入することができず、現像性を良化する効果を良好に得ることができなかった。また、上記ラクトンを含有した線状ランダム重合体は、顔料同士の凝集を抑制する効果が低く、分散性を発現するためには他の分散剤を併用する必要があり、その結果、ラクトンを含有した線状ランダム重合体を多量に添加することができないという問題があった。
【特許文献1】特開平4−139262号公報
【特許文献2】特許第3094403号公報
【特許文献3】特開2004−287409号公報
【特許文献4】特開2007−65155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、顔料を高濃度で含む場合でも、高い顔料分散性と分散安定性とを有し、色特性が良好な顔料分散組成物を提供することである。また、カラーフィルタを構成するときには、現像性および画素の表面平滑性に優れ、かつ高いコントラストを得ることができる光硬化性組成物、並びに色特性が良好でコントラストの高いカラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の方法により達成できることを見出し、本発明に至った。
<1> ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有し、重量平均分子量が1,000〜100,000であり、且つブロック型、グラフト型または末端変性型の構造を有する高分子化合物(A)、および顔料(B)を含有する顔料分散組成物。
<2> 前記高分子化合物(A)が、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有する繰り返し単位を、5〜80質量%有するブロック型高分子化合物である前記<1>記載の顔料分散組成物。
<3> 前記高分子化合物(A)が、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有する繰り返し単位をグラフト側鎖に有すると共に、グラフト側鎖における前記繰り返し単位の割合が5〜100質量%であるグラフト型高分子化合物である前記<1>記載の顔料分散組成物。
<4> 前記高分子化合物(A)が、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有する繰り返し単位を幹ポリマー部に有すると共に、幹ポリマー部における前記繰り返し単位の割合が5〜100質量%である末端変性型高分子化合物である前記<1>記載の顔料分散組成物。
<5> 前記高分子化合物(A)が、さらに吸着部位を含有する前記<1>から<4>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<6> 前記高分子化合物(A)が、前記吸着部位を有する繰り返し単位を5〜50質量%有するブロック型高分子化合物である前記<5>記載の顔料分散組成物。
<7> 前記高分子化合物(A)が、前記吸着部位を有する繰り返し単位をグラフト主鎖に有し、該グラフト主鎖における前記繰り返し単位の割合が5〜50質量%であるグラフト型高分子化合物である前記<5>記載の顔料分散組成物。
<8> 前記高分子化合物(A)が、前記吸着部位で末端が変性された末端変性型高分子化合物である前記<5>記載の顔料分散組成物。
【0009】
<9> 前記<1>から<8>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する光硬化性組成物。
<10> 前記<9>記載の光硬化性組成物を用いてなるカラーフィルタ。
<11> 前記<10>記載のカラーフィルタを用いた液晶表示素子。
<12> 前記<10>記載のカラーフィルタを用いた固体撮像素子。
【0010】
即ち本発明の高分子化合物は、ブロック型、グラフト型または末端変性型の構造を有するものであり、顔料の表面に吸着し、顔料同士の再凝集を阻害するのに有効な立体反発基を有するため、良好な分散性を発揮することができる。特に、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を、上記立体反発基に導入した場合においては、図1(A)に示すようにラクトンや酸無水物が外側に配置されているものと推察される。図1(B)に示すように内側に配置されていると現像液との反応(開環)が鈍くなるが、ラクトンや酸無水物が外側に配置されていることにより現像液と素早く反応(開環)し、優れた現像性を得ることができるものと考えられる。
【0011】
また本発明の顔料分散組成物を用いた着色硬化性組成物は、塗布の配管部や塗布ヘッド部にポリマー液が付着しにくいので、配管内での液の滞留が少なくなったり、また塗布ヘッド部での乾燥異物等の付着が少なくなったりする。これにより、特に表面平滑性に優れたカラーフィルタを得ることができるものと考えている。またアルカリ可溶性ポリマーと分散剤との会合等に起因する分散液、光硬化性組成物の経時での増粘が防止できたり、顔料の凝集を防止できたことによるものと考えられる。
さらにアルカリ現像がマイルドに進行するので、露光部と非露光部のディスクリミネーションが付き易く、良好な現像パターンが得られ、残渣、地汚れ等が良好になったものと推定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、顔料を高濃度で含む場合でも、高い顔料分散性と分散安定性とを有し、色特性が良好な顔料分散組成物が得られる。また、カラーフィルタを構成するときには、現像性および画素の表面平滑性に優れ、かつ高いコントラストを得ることができる光硬化性組成物、並びに色特性が良好でコントラストの高いカラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において本発明を詳しく説明する。
≪顔料分散組成物≫
本発明の顔料分散組成物は、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有し、重量平均分子量が1,000〜100,000であり、且つブロック型、グラフト型または末端変性型の構造を有する高分子化合物(A)と、顔料(B)と、を含んでなるものであり、必要に応じて樹脂成分などの他の成分を用いて構成することができる。
上記の通り、本発明の顔料分散組成物はブロック型、グラフト型または末端変性型の構造を有しているため、顔料の表面に吸着し、顔料同士の再凝集を阻害するのに有効な立体反発基を有しており、良好な分散性が発揮される。また、特にラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を、上記立体反発基に導入した場合にはラクトンや酸無水物が外側に配置され、現像液と素早く反応(開環)し、優れた現像性を得られる。例えばカラーフィルタを構成したときには、顔料を高濃度で含む場合であっても高い現像性と表面平滑性を発現することができる。
【0014】
さらに本発明の顔料分散組成物を用いたカラーフィルタは、電圧保持率に優れる。
電圧保持率の低下は、カラーフィルタ中の金属イオンが膜中を移動しやすい場合に発生する。通常、現像性基としてはカルボン酸が用いられるため、金属イオンがカルボン酸を経由して移動しやすい状況となっていた。本発明の顔料分散組成物は、酸基をカルボン酸でなく潜在酸基(ラクトン/酸無水物)とすることで塩基性基との相互作用を低減しているものと考えられ、その結果、優れた電圧保持率が得られたものと推察される。
【0015】
高分子化合物(A)
本発明の顔料分散組成物は、ラクトン構造または酸無水物構造を有する重量平均分子量が1,000〜100,000のブロック型、グラフト型、または末端変性型の高分子化合物(A)を含有する。
ラクトン構造または酸無水物構造を導入することにより、有機溶媒中の顔料の分散状態が良好になると共に、例えばカラーフィルタを構成したときには、顔料を高濃度で含む場合であっても高い現像性と表面平滑性を発現することができる。
【0016】
(ラクトン構造)
ラクトン構造としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、5〜7員環ラクトン構造を有する基が好ましい。更には、下記一般式(LC1−1)〜(LC1−10)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を備えた繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。下記に示す一般式(LC1−1)〜(LC1−10)の中でも、より好ましいラクトン構造としては(LC1−1),(LC1−4),(LC1−8),(LC1−9)であり、特定のラクトン構造を用いることで現像性が良好になる。
【0017】
【化1】



【0018】
ラクトン構造部分は置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。nが2以上の時、複数存在するRb2は同一でも異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0019】
上記一般式(LC1−1)〜(LC1−10)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を備える繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0020】
【化2】



【0021】
一般式(AI)中、Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb0で表されるアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、またはハロゲン原子が挙げられる。
b0で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
b0としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。
は、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、単結合、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、またはこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。好ましくは単結合、または−Ab1−CO−で表される連結基である。
b1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−10)のいずれかで表される基を表す。
【0022】
ラクトン構造を有する基を備える繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。尚、下記(LC−1)〜(LC−20)において、Rは、HまたはCHを表す。
【0023】
【化3】



【0024】
【化4】



【0025】
【化5】



【0026】
(酸無水物構造)
酸無水物構造としては、酸無水物構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、5〜7員環酸無水物構造を有する基が好ましい。更には、下記一般式(UA1−1)〜(UA1−5)のいずれかで表される酸無水物構造を有する基を備える繰り返し単位を有することがより好ましい。また、酸無水物構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。
【0027】
【化6】



【0028】
酸無水物構造部分は置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、前述のラクトン構造における置換基(Rb2)と同様のものが挙げられる。
一般式(UA1−1)〜(UA1−5)のいずれかで表される酸無水物構造を有する基を備える繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0029】
【化7】



【0030】
一般式(AII)中、Rb0およびAは、前記一般式(AI)におけるRb0およびAと同義である。
は、一般式(UA1−1)〜(UA1−5)のいずれかで表される基を表す。
【0031】
酸無水物構造を有する基を備える繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。尚、下記(UA−1)〜(UA−4)において、Rは、HまたはCHを表す。
【0032】
【化8】



【0033】
本発明のラクトン構造または酸無水物構造を有する高分子化合物(A)は、既述のようなモノマーを重合しても合成できるし、前駆体の高分子化合物と、ラクトン構造または酸無水物構造を有する低分子化合物と、を反応させて合成することもできる。
ラクトン構造または酸無水物構造は、1種が含有されていても、2種以上組み合わせて含有されていてもよい。尚、合成が容易であり取り扱いが簡便な観点からは、ラクトン構造がより好ましい。
【0034】
(吸着部位)
本発明に係る高分子化合物(A)は、更に吸着部位を含有することが好ましい。尚、吸着部位とは、顔料に吸着し得る官能基を有する部位を表す。
吸着部位を構成する単量体としては、特に制限されないが、例えば、顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーが挙げられる。具体的には、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、酸性基を有するモノマー、塩基性窒素原子を有するモノマー、イオン性官能基を有するモノマーなどを挙げることができる。
【0035】
・有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー
有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、下記一般式(1)で表される単量体、または、マレイミド、マレイミド誘導体からなる単量体が挙げられる。更には、下記一般式(1)で表される単量体であることが特に好ましい。
【0036】
【化9】



【0037】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Rは、単結合、または2価の連結基を表す。Yは、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、またはフェニレン基を表す。Zは、複素環構造を有する基を表す。
で表されるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
で表されるアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3)、メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0038】
で表される好ましいアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。
としては、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
【0039】
一般式(1)中、Rは、単結合、または2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。
で表されるアルキレン基は、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子)を介して2以上連結したものであってもよい。
で表される好ましいアルキレン基として具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
で表される好ましいアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0040】
で表される2価の連結基としては、上記のアルキレン基の末端において、−O−、−S−、−C(=O)O−、−CONH−、−C(=O)S−、−NHCONH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OCONH−、および−NHCO−から選ばれるヘテロ原子またはヘテロ原子を含む部分構造を有し、該ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む部分構造を介してZと連結するものであってもよい。
【0041】
一般式(1)中、Zは複素環構造を有する基を表す。複素環構造を有する基としては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、ピラジン、テトラゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、環状アミド、環状ウレア、環状イミド等の複素環構造が挙げられる。これらの複素環構造は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、脂肪族エステル基、芳香族エステル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
Zは、炭素数が6以上である含窒素複素環構造を有する基であることがより好ましく、炭素数が6以上12以下である含窒素複素環構造を有する基であることが特に好ましい。炭素数が6以上である含窒素複素環構造として具体的には、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、および環状イミド構造が好ましく、下記一般式(2)、(3)または(4)で表される構造であることが特に好ましい。
【0043】
【化10】



【0044】
一般式(2)中、Xは、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NR−、および−C(=O)−からなる群より選ばれるいずれかを表す。ここでRは、水素原子またはアルキル基を表す。Rがアルキル基を表す場合のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(2)におけるXとしては、単結合、メチレン基、−O−、または−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
【0045】
一般式(4)中、YおよびZは、各々独立に、−N=、−NH−、−N(R)−、−S−、または−O−を表す。Rはアルキル基を表し、Rで表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(4)における、YおよびZとしては、−N=、−NH−、および−N(R)−が特に好ましい。YおよびZの組み合わせとしては、YおよびZのいずれか一方が−N=であり他方が−NH−である組み合わせ、イミダゾリル基が挙げられる。
【0046】
一般式(2)、(3)、および(4)において、環A、環B、環C、および環Dは、各々独立に芳香環を表す。該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フェノキサジン環、アクリジン環、フェノチアジン環、アクリドン環、アントラキノン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環が特に好ましい。
【0047】
具体的には、一般式(2)における環Aおよび環Bとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環等が挙げられる。一般式(3)における環Cとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環等が挙げられる。一般式(4)における環Dとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環等が挙げられる。
【0048】
一般式(2)、(3)および(4)で表される構造の中でも、分散性、分散液の経時安定性の点からは、ベンゼン環、ナフタレン環がより好ましく、一般式(2)または(4)においては、ベンゼン環がさらに好ましく、一般式(3)においては、ナフタレン環がさらに好ましい。
【0049】
本発明に係る有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーにおいて、前記一般式(1)で表される単量体、または、マレイミド、マレイミド誘導体からなる単量体の好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0050】
【化11】

【0051】
【化12】



【0052】
・酸性基を有するモノマー
酸性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基を有するビニルモノマーや、スルホン酸基あるいはリン酸基を有するビニルモノマーを含んでもよい。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なおこれらの内では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0053】
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
【0054】
・塩基性窒素原子を有するモノマー
塩基性窒素原子を有するモノマーとして、複素環を有するモノマーとして、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾールなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノヘキシル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジノエチル、(メタ)アクリル酸1−ピロリジノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチルおよび(メタ)アクリル酸N,N−メチルフェニルアミノエチルなどが挙げられる。(メタ)アクリルアミド類として、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミドおよび6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。スチレン類として、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン等が挙げられる。
【0055】
・イオン性官能基を含有するモノマー
イオン性官能基を含有するモノマーとしては、アニオン性ビニルモノマー、またはカチオン性ビニルモノマーが挙げられる。具体例としては、アニオン性ビニルモノマーとして、前記酸性基を有するビニルモノマーのアルカリ金属塩や、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン)との塩などが挙げられる。またカチオン性ビニルモノマーとしては、前記含窒素ビニルモノマーを、ハロゲン化アルキル(アルキル基:炭素数1〜18、ハロゲン原子:塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子);塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸エステル(アルキル基:炭素数1〜18);ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸アルキルエステル(アルキル基:炭素数1〜18);硫酸ジアルキル(アルキル基:炭素数1〜4)等で4級化させたもの、ジアルキルジアリルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0056】
顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーは、分散する顔料の種類に応じて、適宜選択することができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明に係る高分子化合物(A)は、前述の通り、ブロック型、グラフト型または末端変性型の構造をとる。
【0058】
[ブロック型高分子化合物]
ブロック型高分子化合物としては、吸着部位(顔料吸着ブロック)(a1)と、ラクトン構造または酸無水物構造を有するブロック(b1)と、顔料に吸着しないブロック(c1)と、からなるブロック型高分子化合物が好ましい。
顔料吸着ブロック(a1)は、高分子化合物全体の5〜50質量%であること好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。
ラクトン構造または酸無水物構造を有するブロック(b1)は、高分子化合物全体の5〜80質量%であること好ましく、より好ましくは10〜80質量%である。
顔料に吸着しないブロック(c1)は、高分子化合物全体の0〜80質量%であること好ましい。
顔料吸着ブロック(a1)を構成する単量体、並びにラクトン構造または酸無水物構造を有するブロック(b1)におけるラクトン構造または酸無水物構造については、それぞれ前述の吸着部位を構成するモノマー、並びに前述のラクトン構造および酸無水物構造を採用することができる。
【0059】
顔料に吸着しないブロック(c1)
顔料に吸着しないブロック(c1)を構成する単量体としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、(メタ)アクリル酸(2,3−ジヒドロキシプロピル)、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−イソシアネートエチルなどが挙げられる。
【0061】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、およびクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0063】
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0064】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0065】
ビニルケトン類の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
オレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
マレイミド類の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリロニトリルの例としては、メタクリロニトリル、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0066】
本発明に係るブロック型高分子化合物を得る方法としては、従来公知の方法を利用することができる。例えば、リビング重合、イニファータ法等が知られており、更に他の方法として、顔料吸着基を有する単量体または顔料吸着基を有しない単量体をラジカル重合する際に、チオールカルボン酸または2−アセチルチオエチルエーテル、10−アセチルチオデカンチオール等の分子内にチオエステルとチオール基とを含有する化合物を共存させて重合して得られた重合体を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリで処理して、片末端にチオール基を有する重合体とし、得られた片末端にチオール基を有する重合体の存在下でもう一方のブロックの単量体成分をラジカル重合する方法も知られている。これらの中でも、リビング重合が好適である。
【0067】
ブロック型高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることを要し、更には3,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、5,000〜50,000の範囲がより好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると、安定化効果が良好に得られず、また、重量平均分子量が100,000を超える場合には、良好な吸着が得られず、優れた分散性が発揮されない。
【0068】
尚、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算値として、測定することができる。より詳しくは、単分散PHS(ポリスチレン)を標品(基準)とし、GPCのRIにて測定する。ここで、本発明における上記測定の詳細な条件は、下記のとおりである。
カラムの種類:TSKgel GMH(XL)、TSKgel G4000H(XL)、TSKgel G3000H(XL)およびTSKgel G2000H(XL)(以上全てTOSOH製)
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1μL/分
温度:40℃
試料濃度:40g/L
試料注入量:100μL
本明細書における重量平均分子量の測定は、以下同様の方法により行うことができる。
【0069】
[グラフト型高分子化合物]
本発明に係るグラフト型高分子化合物は、ラクトン構造または酸無水物構造をグラフト側鎖に有していても主鎖に有していてもよいが、グラフト側鎖に有していることが特に好ましい。
グラフト型高分子化合物としては、吸着部位(a2)を構成するモノマーと、以下に示すラクトン構造または酸無水物構造を有するマクロモノマー(b2)と、顔料に吸着しない部位(c2)を構成するモノマーと、を重合してなるグラフト型高分子化合物が好ましい。これにより、顔料の分散性、分散安定性が向上する。
【0070】
吸着部位(a2)を有する繰り返し単位はグラフト主鎖に有すると共に、グラフト主鎖における前記繰り返し単位の割合が5〜50質量%であること好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。
ラクトン構造または酸無水物構造を有するマクロモノマー(b2)は、高分子化合物全体の20〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量%である。尚、マクロモノマー中においては、少なくともラクトン構造または酸無水物構造を有する繰り返し単位を有することを要し、更にはラクトン構造または酸無水物構造を有する繰り返し単位の含有量が5〜100質量%であることが好ましい。
顔料に吸着しない部位(c2)は、高分子化合物全体の0〜70質量%であること好ましい。
吸着部位(a2)を構成する単量体、並びに顔料に吸着しない部位(c2)を構成するモノマーについては、それぞれ前述の吸着部位を構成するモノマー、並びに前述の顔料に吸着しないブロック(c1)を構成するモノマーを採用することができる。
【0071】
マクロモノマー(b2)
前述の通り、本発明に係るグラフト型高分子化合物においては、ラクトン構造または酸無水物構造を有するマクロモノマー(b2)をグラフト側鎖または主鎖に有することが好ましい。
グラフト型高分子化合物におけるマクロモノマー(b2)は、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトン等が好適に挙げられ、下記一般式(5)で表される構成単位をグラフト側鎖に少なくとも有するグラフト型高分子化合物がより好ましい。
【0072】
【化13】



【0073】
一般式(5)中、R74は、水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、Qはシアノ基、炭素原子数6〜30のアリール基、−COOR75(ここで、R75は水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基、または炭素原子数6〜30のアリール基を表す)またはラクトン構造または酸無水物構造を有する基を表す。
但し、グラフト型高分子化合物に含まれる全マクロモノマーにおいては、少なくとも上記ラクトン構造または酸無水物構造を有する基を含有することを要し、更にはラクトン構造または酸無水物構造を有する基の含有量が5〜100質量%であることが好ましい。
【0074】
一般式(5)中、R74で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。アルキル基の置換基としてはハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基等が挙げられる。このようなアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、カルボキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基などが挙げられる。
このようなR74のうち、水素原子、メチル基が好ましい。
【0075】
一般式(5)中、Qで表されるアリール基は置換基を有していてもよく、炭素原子数6〜20のアリール基が好ましく、特に炭素原子数6〜12のアリール基が好ましい。アリール基の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。このようなアリール基の具体的な例としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。このようなアリール基のうち、無置換アリール基、または、ハロゲン原子、アルキル基、若しくはアルコキシ基で置換されたアリール基が好ましく、特に無置換アリール基、またはアルキル基で置換されたアリール基が好ましい。
【0076】
一般式(5)中、Qで表される−COOR75における、R75で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜12のアルキル基が好ましく、特に炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としてはハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基等が挙げられる。このようなアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、2−ブロモプロピル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ビシクロ〔3.2.1〕オクト−2−イル基、1−アダマンチル基、ジメチルアミノプロピル基、アセチルアミノエチル基、N,N−ジブチルアミノカルバモイルメチル基などが挙げられる。このようなアルキル基のうち、無置換アルキル基、またはハロゲン原子、アリール基、若しくは水酸基で置換されたアルキル基が好ましく、特に無置換アルキル基が好ましい。
【0077】
一般式(5)中、Qで表される−COOR75における、R75で表されるアリール基は置換基を有していてもよく、炭素原子数6〜20のアリール基が好ましく、特に炭素原子数6〜12のアリール基が好ましい。アリール基の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基等が挙げられる。このようなアリール基の具体的な例としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオアミドフェニル基、ドデシロイルアミドフェニル基等が挙げられる。このようなアリール基のうち、無置換アリール基、またはハロゲン原子、アルキル基、若しくはアルコキシ基で置換されたアリール基が好ましく、特にアルキル基で置換されたアリール基が好ましい。
【0078】
このようなR75のうち、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基が好ましく、特に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基が好ましい。
【0079】
一般式(5)中、Qで表されるラクトン構造または酸無水物構造を有する基としては、具体的には、前述の一般式(LC1−1)〜(LC1−10)、(UA1−1)〜(UA1−5)で表される基が好ましい。
【0080】
このような一般式(5)で表される構成単位を枝部(グラフト側鎖)に少なくとも有するグラフト型高分子化合物の枝部(グラフト側鎖)の具体的な例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ(メチル(メタ)アクリレート−co−ベンジル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチル(メタ)アクリレート−co−スチレン)、ポリ(メチル(メタ)アクリレート−co−(メタ)アクリル酸)、ポリ(メチル(メタ)アクリレート−co−アクリロニトリル)などが挙げられる。
【0081】
一般式(5)で表される構成単位を枝部(グラフト側鎖)に少なくとも有するグラフト型高分子化合物の合成には、公知のいずれの方法を用いてもよい。
具体的には、一般式(5)で表される構成単位を少なくとも有するマクロモノマーと、該マクロモノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーと、の共重合が挙げられる。
【0082】
一般式(5)で表される構成単位を少なくとも有するマクロモノマーのうち、好ましいものは下記一般式(6)で表されるものである。
【0083】
【化14】



【0084】
一般式(6)中、R76は、水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、Wは、単結合、または下記連結基郡から選ばれた単独の連結基もしくは任意の組合せで構成された連結基を表し、Aは、前記一般式(5)で表される構成単位を少なくとも有する基を表す。
【0085】
【化15】



【0086】
上記連結基郡において、ZおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基を表し、Zは、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基を表す。
【0087】
上記一般式(6)で表されるマクロモノマーの具体的を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0088】
【化16】



【0089】
上記具体例において、Aは、前記一般式(6)におけるAと同義である。
市販品として入手できる上記マクロモノマーとしては、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)および片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0090】
上記マクロモノマーの分子量としては、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1,000〜20,000であるのが好ましく、2,000〜15,000であるのがより好ましい。上記数平均分子量が上記範囲内であると、顔料分散剤としての立体反発効果をより効果的に得ることができる。
尚、上記数平均分子量は、前述の重量平均分子量の測定方法に準じて測定することができ、本明細書における数平均分子量の測定は、以下同様の方法により行うことができる。
【0091】
また、上記本発明に係るグラフト型高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることを要し、更には3,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、5,000〜50,000の範囲がより好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると、安定化効果が良好に得られず、また、重量平均分子量が100,000を超える場合には、良好な吸着が得られず、優れた分散性が発揮されない。
【0092】
[末端変性型高分子化合物]
本発明に係る末端変性型高分子化合物は、ラクトン構造または酸無水物構造を幹ポリマー部(即ちポリマーの末端以外の部分)に有すると共に、ポリマーの末端に官能基を有する。
ポリマーの末端に官能基を有する高分子を合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法およびこれらを組み合わせた方法などを挙げることができる。
1.官能基含有の重合開始剤(ポリマー末端に官能基を導入できる重合開始剤)を用い、重合(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など)して合成する方法
2.官能基含有の連鎖移動剤(ポリマー末端に官能基を導入できる連鎖移動剤)を用いてラジカル重合で合成する方法
ここで末端に導入する官能基としては、吸着部位(a3)が好ましく、該吸着部位(a3)に誘導できる官能基であっても構わない。
【0093】
ポリマー末端に官能基を導入できる連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト化合物(例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メカルプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メカルプルイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、メルカプトアセトフェノン、ナフタレンチオール、ナフタレンメタンチオール等)またはこれらメルカプト化合物の酸化体であるジスルフィド化合物、およびハロゲン化合物(例えば2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸など)が挙げられる。
【0094】
また、ポリマー末端に官能基を導入できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2−シアノペンタノール)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕またはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0095】
また、幹ポリマー部としては、ラクトン構造または酸無水物構造を有する部位(b3)と、顔料に吸着しない部位(c3)と、からなる重合体が好ましい。
尚、上記ラクトン構造または酸無水物構造を有する部位(b3)を構成する単量体、並びに顔料に吸着しない部位(c3)を構成する単量体として、例えばラジカル重合性モノマーとしては、前述のラクトン構造および酸無水物構造、並びに前述の顔料に吸着しないブロック(c1)を構成するモノマーを採用することができる。
ラクトン構造または酸無水物構造を有する繰り返し単位は、幹ポリマー部において5〜100質量%含有されることが好ましい。
【0096】
上記の末端変性型高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることを要し、更には1,000〜5,0000であることが好ましく、1,000〜30,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると、顔料分散剤としての立体反発効果が良好に得られず、また、重量平均分子量が100,000を超える場合には、効果的な立体効果が得られず、顔料への吸着の時間の短縮が実現できない。
【0097】
以上の高分子化合物(A)は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
高分子化合物(A)の添加量は、後述の顔料(B)に対して、0.3〜100質量%となるように添加することが好ましく、0.5〜80質量%がより好ましい。これらの高分子化合物(A)を顔料分散剤として前記範囲内で使用すると、十分な顔料分散効果が得られる。ただし、高分子化合物(A)の最適な添加量は、使用する顔料(B)の種類、溶剤の種類などの組み合わせ等により適宜調整される。
【0098】
顔料(B)
本発明の顔料分散組成物は、少なくとも一種の顔料(B)を有する。顔料(B)としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を適宜選択して用いることができる。顔料(B)の粒子サイズとしては、本発明の顔料分散組成物が好適に用いられるカラーフィルタが、高透過率であることが好ましいこと等を考慮すると、有機顔料が好ましく、また、なるべく粒子サイズの小さいものを使用することが好ましい。顔料分散組成物およびこれを含有する光硬化性組成物のハンドリング性をも考慮すると、顔料の平均一次粒子径としては、100nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。該粒径が前記範囲内であると、透過率が高く、色特性が良好であると共に、高いコントラストのカラーフィルタを形成するのに有効である。平均一次粒子径は、SEMあるいはTEMで観察し、粒子が凝集していない部分で粒子サイズを100個計測し、平均値を算出することによって求めることができる。
【0099】
前記有機顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、81:1、81:2、81:3、83、88、90、105、112、119、122、123、144、146、149、150、155、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、184、185、187、188、190、200、202、206、207、208、209、210、216、220、224、226、242、246、254、255、264、270、272、279、
C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214
C.I. Pigment Orange 2、5、13、16、17:1、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、71、73
C.I. Pigment Green 7、10、36、37
C.I.Pigment Blue 1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66、79、79のCl置換基をOHに変更したもの、80
C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、32、37、42
C.I.Pigment Brown 25、28
C.I.Pigment Black 1、7 等を挙げることができる。
【0100】
これらの中で好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
C.I.Pigment Yellow 11、24、108、109、110、138、139、150、151、154、167、180、185、
C.I.Pigment Orange 36、71、
C.I.Pigment Red 122、150、171、175、177、209、224、242、254、255、264、
C.I.Pigment Violet 19、23、32、
C.I.Pigment Blue 15:1、15:3、15:6、16、22、60、66、
C.I.Pigment Green 7、36、37;
C.I.Pigment Black 1、7
【0101】
本発明において、必要に応じて、微細でかつ整粒化された有機顔料を用いることができる。顔料の微細化は、顔料と水溶性有機溶剤と水溶性無機塩類と、を共に高粘度な液状組成物として、摩砕する工程である。
【0102】
この工程において、必要に応じて、顔料を被覆する高分子化合物や本発明の高分子化合物(A)を添加してもよい。添加してもよい顔料(B)を被覆する高分子化合物は、好ましくは室温で固体であり、水不溶性で、かつソルトミリング時の湿潤剤に用いる水溶性有機溶剤に少なくとも一部可溶である必要があり、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂が用いられる。乾燥した処理顔料を用いる場合には、用いる化合物は室温で固体であることが好ましい。
【0103】
天然樹脂としてはロジンが代表的であり、変性天然樹脂としては、ロジン誘導体、繊維素誘導体、ゴム誘導体、タンパク誘導体およびそれらのオリゴマーが挙げられる。合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。天然樹脂で変性された合成樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
合成樹脂としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
顔料に吸着し得る官能基を有する合成樹脂であることが好ましく、有機色素構造または複素環構造を有する高分子化合物であることが好ましい。具体的には(M−1)〜(M−27)で表されるモノマーを有するポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。顔料に吸着し得る官能基を高分子化合物中に有することで、高分子化合物が顔料を効率よく被覆し、顔料同士の凝集を抑制することができる。
これらの樹脂を加えるタイミングは、ソルトミリング工程の初期にすべてを添加してもよく、分割して添加してもよい。
【0104】
顔料(B)の摩砕に用いられる水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテール、ジエチレングリコールモノエチルエーテール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレンゴリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。しかし少量用いることで顔料に吸着して、廃水中に流失しないならばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン、ピリジン、キノリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘササン、ハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を用いても良く、また必要に応じて2種類以上の溶剤を混合して使用してもよい。
【0105】
本発明において水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。
水溶性無機塩の使用量は、顔料(B)の1〜50倍(質量比)であることが好ましく、多い方が摩砕効果はあるが、より好ましい量は生産性の点で1〜10倍(質量比)で、さらに水分が1質量%以下であることが好ましい。
【0106】
水溶性有機溶剤の使用量は、顔料に対して50〜300質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜200質量%の範囲である。使用量が50質量%以上であることにより、均一な混練を行うことができ、粒子サイズをより揃えることができる。使用量が300質量%以下であることにより、混練組成物がやわらかくなりすぎず、混練組成物へのシェアが良好にかかり、十分な微細化効果が得られる。
本発明において湿式粉砕装置を用いる場合には、その運転条件については特に制限はないが、装置がニーダーの場合、粉砕メディアによる磨砕を効果的に進行させるため、その運転条件は装置内のブレードの回転数が10〜200rpmが好ましく、また2軸の回転比が相対的に大きいほうが摩砕効果が大きく好ましい。運転時間は乾式粉砕時間と併せて1時間〜8時間が好ましく、装置の内温は50〜150℃が好ましい。また粉砕メディアである水溶性無機塩は、粒度が5〜50μmで粒子径の分布がシャープで、且つ球形が好ましい。
摩砕後の混合物を、温水に水溶性有機溶剤と水溶性無機塩類を溶解させ、ろ過、水洗し、オーブンで乾燥して、微細な顔料を得ることができる。
【0107】
これら有機顔料は、単独もしくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。上記組合せの具体例を以下に示す。例えば、赤の顔料として、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料単独またはそれらの少なくとも1種と、ジスアゾ系黄色顔料、イソインドリン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料またはペリレン系赤色顔料、アントラキノン系赤色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料と、の混合などを用いることができる。例えば、アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド177が挙げられ、ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド155、C.I.ピグメント・レッド224が挙げられ、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド254が挙げられ、色再現性の点でC.I.ピグメント・イエロー83、C.I.ピグメント・イエロー139またはC.I.ピグメント・レッド177との混合が好ましい。また、赤色顔料と他顔料との質量比は、100:5〜100:80が好ましい。100:5以上であることにより、400nmから500nmの光透過率を良好に抑えることができ色純度を上げることが出来る。また100:80以下であることにより、良好な発色力を得ることができる。特に、上記質量比としては、100:10〜100:65の範囲が最適である。尚、赤色顔料同士の組み合わせの場合は、色度に併せて調整することができる。
【0108】
また、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料を1種単独でまたは、これとジスアゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、アゾメチン系黄色顔料若しくはイソインドリン系黄色顔料との混合を用いることができる。例えば、このような例としては、C.I.ピグメント・グリーン7、36、37とC.I.ピグメント・イエロー83、C.I.ピグメント・イエロー138、C.I.ピグメント・イエロー139、C.I.ピグメント・イエロー150、C.I.ピグメント・イエロー180またはC.I.ピグメント・イエロー185との混合が好ましい。緑顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:200が好ましい。上記質量比が100:5以上であることにより、400nmから500nmの光透過率を良好に抑えることができ色純度を上げることが出来る。また100:200以下であることにより、主波長が長波長寄りになり過ぎずNTSC目標色相からのずれがを良好に抑制することができる。上記質量比としては100:20〜100:150の範囲が特に好ましい。
【0109】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料を1種単独で、若しくはこれとジオキサジン系紫色顔料との混合を用いることができる。特に好適な例として、C.I.ピグメント・ブルー15:6とC.I.ピグメント・バイオレット23との混合を挙げることができる。
青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0〜100:100が好ましく、より好ましくは100:70以下である。
【0110】
また、ブラックマトリックス用途に好適な顔料としては、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン単独または混合を用いることができ、カーボンブラックとチタンブラックとの組合せが好ましい。また、カーボンブラックとチタンブラックとの質量比は、100:0〜100:60の範囲が好ましい。100:60以下であることにより、分散安定性の低下を良好に抑制することができる。
【0111】
顔料誘導体(C)
本発明の顔料分散組成物は、必要に応じて、顔料誘導体(C)が添加される。分散剤と親和性のある部分、あるいは極性基を導入した顔料誘導体(C)を顔料表面に吸着させ、これを分散剤の吸着点として用いることで、顔料を微細な粒子として光硬化性組成物中に分散させ、その再凝集を防止することができ、コントラストが高く、透明性に優れたカラーフィルタを構成するのに有効である。
【0112】
顔料誘導体(C)は、具体的には有機顔料を母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物である。有機顔料は、具体的には、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノリン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンゾイミダゾロン顔料等が挙げられる。一般に、色素と呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系、トリアジン系、キノリン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。顔料誘導体(C)としては、特開平11−49974号公報、特開平11−189732号公報、特開平10−245501号公報、特開2006−265528号公報、特開平8−295810号公報、特開平11−199796号公報、特開2005−234478号公報、特開2003−240938号公報、特開2001−356210号公報等に記載されているものを使用できる。
【0113】
本発明に係る顔料誘導体(C)の顔料分散組成物中における含有量としては、顔料の質量に対して、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。該含有量が前記範囲内であると、粘度を低く抑えながら、分散を良好に行なえると共に分散後の分散安定性を向上させることができ、透過率が高く優れた色特性が得られ、カラーフィルタを作製するときには良好な色特性を有する高コントラストに構成することができる。
顔料誘導体(C)を加えるタイミングは、ソルトミリング時に添加してもよく、分散時に添加してもよい。
【0114】
分散剤(D)
既述の高分子化合物(A)は、分散剤(D)として用いることができる。これにより、有機溶媒中の顔料(B)の分散状態が良好になると共に、例えばカラーフィルタを構成したときには、顔料(B)を高濃度で含む場合であっても高い現像性と表面平滑性を発現することができる。
【0115】
分散剤(D)として使用する場合には、本発明の高分子化合物(A)は、グラフト型高分子化合物、末端変性型高分子化合物が好ましく、中でも有機色素構造あるいは複素環構造を有する単量体に由来する共重合単位を含有するグラフト型高分子化合物、末端基として有機色素構造、複素環構造、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、またはウレタン基を有する末端変性型高分子化合物が特に好ましい。
【0116】
また必要に応じて、高分子化合物(A)の他に、従来から公知の顔料分散剤や界面活性剤等の分散剤、その他成分を加えることができる。
公知の分散剤(顔料分散剤)としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、およびポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造からさらに直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0117】
公知の分散剤を併用する場合の、高分子化合物(A)と公知の分散剤との比率(質量比)は、特に制限されないが、10/90〜90/10が好ましく、特に20/80〜80/20が好ましい。
【0118】
本発明の好ましい態様は、重量平均分子量1,000〜100,000の高分子化合物(A)で被覆処理した上述の顔料(加工顔料)(B)と、顔料誘導体(C)と、分散剤(D)と、を有機溶剤中に分散してなる顔料分散組成物である。高分子化合物(A)は、顔料加工時に添加する顔料被覆高分子化合物として用いてもよいし、分散剤(D)として用いてもよい。尚、分散剤(D)として用いることが好ましい。
【0119】
本発明に係る高分子化合物(A)は、ソルトミリング工程、分散工程のいずれで使用しても良いが、分散工程で使用することが好ましい。またソルトミリング工程と分散工程との両方で使用することもできる。また更に本発明に係る高分子化合物(A)を有する顔料分散組成物を用いて、光硬化性組成物を調製する工程で添加し、使用することもできる。
【0120】
≪顔料分散組成物の調製≫
本発明の顔料分散組成物の調製態様は、特に制限されないが、例えば、顔料と分散剤と溶剤とを、縦型もしくは横型のサンドミル、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用いて、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理を行なうことにより得ることができる。
【0121】
ビーズ分散を行なう前に、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸もしくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行なうことも可能である。
【0122】
なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
【0123】
本発明の顔料分散組成物は、カラーフィルタの製造に用いられる着色光硬化性組成物に好適に用いられる。
【0124】
本発明の光硬化性組成物は、既述の本発明の顔料分散組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含んでなり、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。なお、本発明の顔料分散組成物の詳細については既述の通りである。以下、各成分を詳述する。
【0125】
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0126】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類およびその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0127】
上記の線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、さらに側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0128】
これらの中では特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。
このほか、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0129】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0130】
アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。ここで(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
【0131】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基およびアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0132】
また、前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR、CH=C(R)(COOR)〔ここで、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、等を挙げることができる。
【0133】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい共重合可能な他の単量体は、CH=CR、CH=C(R)(COOR)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびスチレンから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、CH=CRおよび/またはCH=C(R)(COOR)である。
【0134】
アルカリ可溶性樹脂の光硬化性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは2〜12質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0135】
光重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましく、中でも4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0136】
前記少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号各公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用できる。
【0137】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)および(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
【0138】
中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびこれらのアクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
また、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光硬化性組成物を得ることができる。市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ(株)製)、UA−7200」(新中村化学(株)製)、DPHA−40H(日本化薬(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社(株)製)などが挙げられる。
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適であり、市販品としては、例えば、東亞合成(株)製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、およびカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382などが挙げられる。
【0139】
光重合性化合物は、1種単独で用いる以外に、2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合性化合物の光硬化性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分100質量部に対して、20〜200質量部が好ましく、より好ましくは50〜120質量部である。光重合性化合物の含有量が前記範囲内であると、硬化反応が充分に行なえる。
【0140】
本発明の顔料分散組成物は、重合開始剤を含有してもよい。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、例えば、特開平57−6096号公報に記載のハロメチルオキサジアゾール、特公昭59−1281号公報、特開昭53−133428号公報等に記載のハロメチル−s−トリアジン等活性ハロゲン化合物、米国特許USP−4318791、欧州特許公開EP−88050A等の各明細書に記載のケタール、アセタール、またはベンゾインアルキルエーテル類等の芳香族カルボニル化合物、米国特許USP−4199420明細書に記載のベンゾフェノン類等の芳香族ケトン化合物、Fr−2456741明細書に記載の(チオ)キサントン系またはアクリジン系化合物、特開平10−62986号公報に記載のクマリン系またはビイミダゾール系の化合物、特開平8−015521号公報等のスルホニウム有機硼素錯体等、等を挙げることができる。
【0141】
前記光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、ハロメチルオキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン類系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等が好ましい。
【0142】
前記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−トリル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1などを好適に挙げることができる。
【0143】
前記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタールなどを好適に挙げることができる。
【0144】
前記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、を好適に挙げることができる。
【0145】
前記ベンゾイン系またはベンゾイル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ゼンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、メチルo−ベンゾイルベゾエート等を好適に挙げることができる。
【0146】
前記キサントン系光重合開始剤としては、例えば、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、モノイソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、等を好適に挙げることができる。
【0147】
前記活性ハロゲン光重合開始剤(トリアジン系,オキサジアゾール系,クマリン系)としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メチルビフェニル)−s−トリアジン、p−ヒドロキシエトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル−s−トリアジン、3,4−ジメトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−ベンズオキソラン−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン,2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(シアノスチリル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(ナフト−1−イル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−スチリル)スチリル−1,3,4−オキソジアゾール,3−メチル−5−アミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−クロロ−5−ジエチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−ブチル−5−ジメチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン等を好適に挙げることができる。
【0148】
前記アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン等を好適に挙げることができる。
【0149】
前記ビイミダゾール系光重合開始剤としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等を好適に挙げることができる。
【0150】
上記以外に、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0151】
本発明では、以上の光重合開始剤に限定されるものではなく、他の公知のものも使用することができる。例えば、米国特許第2,367,660号明細書に記載のビシナールポリケトルアルドニル化合物、米国特許第2,367,661号及び第2,367,670号明細書に記載のα−カルボニル化合物、米国特許第2,448,828号明細書に記載のアシロインエーテル、米国特許第2,722,512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3,046,127号及び第2,951,758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3,549,367号明細書に記載のトリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチール−s−トリアジン系化合物、J.C.S. Perkin II(1979)1653−1660、J.C.S.PerkinII(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載のオキシムエステル化合物等が挙げられる。
また、これらの光重合開始剤を併用することもできる。
【0152】
光重合開始剤の顔料分散組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。光重合開始剤の含有量が前記範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0153】
<増感剤>
本発明においては必要に応じ増感剤(増感色素)を添加することが好ましい。この増感色素が吸収しうる波長の露光により上記重合開始剤成分のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素または染料、或いは光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料または顔料が挙げられる。
【0154】
(分光増感色素または染料)
本発明に用いられる増感色素として好ましい分光増感色素または染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体(例えば、下記化合物)、アントラキノン類、(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、等が挙げられる。
【0155】
【化17】

【0156】
より好ましい分光増感色素または染料の例を以下に例示する。
特公平37−13034号公報に記載のスチリル系色素;特開昭62−143044号公報に記載の陽イオン染料;特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩;特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物;特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類;特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料;特開平2−226148号公報及び特開平2−226149号公報記載のアクリジン類;特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類;特公昭46−42363号公報記載のシアニン類;特開平2−63053号記載のベンゾフラン色素;特開平2−85858号公報、特開平2−216154号公報の共役ケトン色素;特開昭57−10605号公報記載の色素;特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体;特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素;特開昭62−31844号公報、特開昭62−31848号公報、特開昭62−143043号公報記載のキサンテン系色素;特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン;特開平2−179643号公報記載の色素;特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素;特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素;特開昭59−89303号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−129257号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−334897号公報記載のベンゾピラン系色素が挙げられる。
【0157】
(350〜450nmに極大吸収波長を有する色素)
増感色素の他の好ましい態様として、以下の化合物群に属しており、且つ、350〜450nmに極大吸収波長を有する色素が挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)が挙げられる。
【0158】
更に好ましい増感色素の例としては、下記一般式(XIV)〜(XVIII)で表される化合物が挙げられる。
【0159】
【化18】

【0160】
(一般式(XIV)中、Aは硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、Lは隣接するA及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。)
以下に、一般式(XIV)で表される化合物の好ましい具体例〔(F−1)〜(F−5)〕を示す。
【0161】
【化19】

【0162】
【化20】



【0163】
(一般式(XV)中、Ar及びArはそれぞれ独立にアリール基を表し、−L−による結合を介して連結している。ここでLは−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(XIV)に示したものと同義である。)
一般式(XV)で表される化合物の好ましい例としては、以下のもの〔(F−6)〜(F−8)〕が挙げられる。
【0164】
【化21】

【0165】
【化22】

【0166】
(一般式(XVI)中、Aは硫黄原子またはNR59を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(XVI)で表される化合物の好ましい例としては、以下のもの〔(F−9)〜(F−11)〕が挙げられる。
【0167】
【化23】

【0168】
【化24】

【0169】
(一般式(XVII)中、A、Aはそれぞれ独立に−S−、または−NR63を表し、R63は置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同してして色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R61、R62はそれぞれ独立に一価の非金属原子団であるかまたは互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。)
一般式(XVII)で表される化合物の好ましい例としては、以下のもの〔(F−12)〜(F−15)〕が挙げられる。
【0170】
【化25】

【0171】
また、そのほかに、本発明に用いられる好適な増感色素として、下記式(XVIII)で表されるものが挙げられる。
【0172】
【化26】

【0173】
(一般式(XVIII)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、Xは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R)−を表し、Yは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R)−を表す。R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団を表し、AとR、R、Rとは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。)
【0174】
ここで、R、R、Rが一価の非金属原子団をあらわすとき、好ましくは、置換若しくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。
次に、R、R、Rの好ましい例について具体的に述べる。好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、及び環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0175】
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N−アルキルウレイド基、N,N−ジアルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N,N−ジアリールウレイド基、N−アルキル−N−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N−アルキル−N−アルキルウレイド基、N−アルキル−N−アリールウレイド基、N,N−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N,N−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N−アリール−N−アルキルウレイド基、N−アリール−N−アリールウレイド基、N,N−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N,N−ジアリール−N−アリールウレイド基、N−アルキル−N−アリール−N−アルキルウレイド基、N−アルキル−N−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO2)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。
【0176】
また、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基等を挙げることができる。
【0177】
ヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、または多環芳香族環から誘導される基が用いられ、特に好ましいヘテロアリール基中のヘテロアリール環の例としては、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジン等が挙げられ、これらは、更にベンゾ縮環してもよく、また置換基を有していてもよい。
【0178】
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(GCO−)におけるGとしては、水素、並びに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これら置換基のうち、更により好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスホナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスホナト基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキリデン基(メチレン基等)が挙げられる。
【0179】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0180】
上記置換基とアルキレン基を組み合わせることにより得られるR、R、またはRとして好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトプロピル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、等を挙げることができる。
【0181】
、R、またはRとして好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0182】
、R、またはRとして好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、(水素原子以外の)1価の非金属原子団の基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、並びに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
【0183】
なお、R及びRの更に好ましい例としては、置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。また、Rの更に好ましい例としては、置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。その理由は定かではないが、このような置換基を有することで、光吸収により生じる電子励起状態と開始剤化合物との相互作用が特に大きくなり、開始剤化合物のラジカル、酸または塩基を発生させる効率が向上するためと推定される。
【0184】
次に、一般式(XVIII)におけるAについて説明する。Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環の具体例としては、一般式(XVIII)におけるR、R、またはRについての前述の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
中でも、好ましいAとしては、アルコキシ基、チオアルキル基、アミノ基を有するアリール基が挙げられ、特に好ましいAとしてはアミノ基を有するアリール基が挙げられる。
【0185】
次に、式(XVIII)におけるYについて説明する。Yは上述のA及び隣接炭素原子と共同して、複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す。このような複素環としては縮合環を有していてもよい5、6、7員の含窒素、或いは含硫黄複素環が挙げられ、好ましくは5、6員の複素環がよい。
【0186】
含窒素複素環の例としては例えば、L.G.Brookerら著、ジャーナル オブ アメリカンケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)第73巻(1951年)、p.5326−5358及び参考文献に記載されるメロシアニン色素類における塩基性核を構成するものとして知られるものをいずれも好適に用いることができる。
具体例としては、チアゾール類(例えば、チアゾール、4−メチルチアゾール、4−フェニルチアゾール、5−メチルチアゾール、5−フェニルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、4,5−ジフェニルチアゾール、4,5−ジ(p−メトキシフェニルチアゾール)、4−(2−チエニル)チアゾール、4,5−ジ(2−フリル)チアゾール等)、ベンゾチアゾール類(例えば、ベンゾチアゾール、4−クロロベンゾチアゾール、5−クロロベンゾチアゾール、6−クロロベンゾチアゾール、7−クロロベンゾチアゾール、4−メチルベンゾチアゾール、5−メチルベンゾチアゾール、6−メチルベンゾチアゾール、5−ブロモベンゾチアゾール、4−フェニルベンゾチアゾール、5−フェニルベンゾチアゾール、4−メトキシベンゾチアゾール、5−メトキシベンゾチアゾール、6−メトキシベンゾチアゾール、5−ヨードベンゾチアゾール、6−ヨードベンゾチアゾール、4−エトキシベンゾチアゾール、5−エトキシベンゾチアゾール、テトラヒドロベンゾチアゾール、5,6−ジメトキシベンゾチアゾール、5,6−ジオキシメチレンベンゾチアゾール、5−ヒドロキシベンゾチアゾール、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、6ージメチルアミノベンゾチアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾチアゾール、等)、ナフトチアゾール類(例えば、ナフト[1,2]チアゾール、ナフト[2,1]チアゾール、5−メトキシナフト[2,1]チアゾール、5−エトキシナフト[2,1]チアゾール、8−メトキシナフト[1,2]チアゾール、7−メトキシナフト[1,2]チアゾール、等)、チアナフテノ−7,6,4,5−チアゾール類(例えば、4−メトキシチアナフテノ−7,6,4,5−チアゾール、等)、オキサゾール類(例えば、4−メチルオキサゾール、5−メチルオキサゾール、4−フェニルオキサゾール、4,5−ジフェニルオキサゾール、4−エチルオキサゾール、4,5−ジメチルオキサゾール、5−フェニルオキサゾール等)、ベンゾオキサゾール類(ベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、5ーメチルベンゾオキサゾール、5−フェニルベンゾオキサゾール、6−メチルベンゾオキサゾール、5,6−ジメチルベンゾオキサゾール、4,6−ジメチルベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、5−メトキシベンゾオキサゾール、4−エトキシベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、6ーメトキシベンゾオキサゾール、5−ヒドロキシベンゾオキサゾール、6−ヒドロキシベンゾオキサゾール、等)、
【0187】
ナフトオキサゾール類(例えば、ナフト[1,2]オキサゾール、ナフト[2,1]オキサゾール、等)、セレナゾール類(例えば、4−メチルセレナゾール、4−フェニルセレナゾール、等)、ベンゾセレナゾール類(例えば、ベンゾセレナゾール、5−クロロベンゾセレナゾール、5−メトキシベンゾセレナゾール、5−ヒドロキシベンゾセレナゾール、テトラヒドロベンゾセレナゾール、等)、ナフトセレナゾール類(例えば、ナフト[1,2]セレナゾール、ナフト[2,1]セレナゾール、等)、チアゾリン類(例えば、チアゾリン、4−メチルチアゾリン、4,5−ジメチルチアゾリン、4−フェニルチアゾリン、4,5−ジ(2−フリル)チアゾリン、4,5−ジフェニルチアゾリン、4,5−ジ(p−メトキシフェニル)チアゾリン等)、2−キノリン類(例えば、キノリン、3−メチルキノリン、5−メチルキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、6−クロロキノリン、8−クロロキノリン、6−メトキシキノリン、6−エトキシキノリン、6ーヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリン、等)、4−キノリン類(例えば、キノリン、6−メトキシキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、等)、1−イソキノリン類(例えば、イソキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン、等)、3−イソキノリン類(例えば、イソキノリン等)、ベンズイミダゾール類(例えば、1,3−ジメチルベンズイミダゾール、1,3−ジエチルベンズイミダゾール、1−エチル−3−フェニルベンズイミダゾール、等)、3,3−ジアルキルインドレニン類(例えば、3,3−ジメチルインドレニン、3,3,5−トリメチルインドレニン、3,3,7−トリメチルインドレニン、等)、2−ピリジン類(例えば、ピリジン、5−メチルピリジン、等)、4−ピリジン(例えば、ピリジン等)等を挙げることができる。また、これらの環の置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0188】
また、含硫黄複素環の例としては、例えば、特開平3−296759号記載の色素類におけるジチオール部分構造を挙げることができる。
具体例としては、ベンゾジチオール類(例えば、ベンゾジチオール、5−t−ブチルベンゾジチオール、5−メチルベンゾジチオール、等)、ナフトジチオール類(例えば、ナフト[1,2]ジチオール、ナフト[2,1]ジチオール、等)、ジチオール類(例えば、4,5−ジメチルジチオール類、4−フェニルジチオール類、4−メトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジメトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジエトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジトリフルオロメチルジチオール、4,5−ジシアノジチオール、4−メトキシカルボニルメチルジチオール、4−カルボキシメチルジチオール、等)等を挙げることができる。
【0189】
以上に述べた一般式(XVIII)における、Yが上述のA及び隣接する炭素原子と共同して形成する含窒素或いは含硫黄複素環の例のうち、下記一般式(XVIII−2)の部分構造式で表される構造を有する色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れた顔料分散組成物を与えるため、特に好ましい。一般式(XVIII−2)で表される構造を有する色素は新規化合物として、特願2003−311253明細書に詳細に記載した化合物である。
【0190】
【化27】

【0191】
(一般式(XVIII−2)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、Xは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R)−を表す。R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または一価の非金属原子団を表し、AとR、R、R、Rは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。)
一般式(XVIII−2)中、A及びRは一般式(XVIII)におけるのと同義であり、Rは一般式(XVIII)におけるRと、Rは一般式(XVIII)におけるRと、Rは一般式(XVIII)におけるRと、それぞれ同義である。
【0192】
次に本発明に用いられる一般式(XVIII)で表される化合物の好ましい態様である一般式(XVIII−3)で表される化合物について説明する。
【0193】
【化28】

【0194】
前記一般式(XVIII−3)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、Xは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R)−を表す。R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団であり、AとR、R、Rは、それぞれ互いに、脂肪族性または芳香族性の環を形成するために結合することができる。Arは置換基を有する芳香族環またはヘテロ環を表す。但し、Ar骨格上の置換基は、そのハメット値の総和が0より大きいことを要する。ここでハメット値の総和が0より大きいとは、1つの置換基を有し、その置換基のハメット値が0より大きいものであってもよく、複数の置換基を有し、それらの置換基におけるハメット値の総和が0より大きいものであってもよい。
【0195】
一般式(XVIII−3)中、A及びRは一般式(XVIII)におけるものと同義であり、Rは一般式(XVIII)におけるRと、Rは一般式(XVIII)におけるRと同義である。また、Arは置換基を有する芳香族環またはヘテロ環を表し、具体例としては、先に一般式(XVIII)におけるAの説明に記載されたもののうち、置換基を有する芳香族環またはヘテロ環に係る具体例が同様に挙げられる。ただし、一般式(XVIII−3)におけるArに導入可能な置換基としては、ハメット値の総和が0以上であることが必須であり、そのような置換基の例としては、トリフルオロメチル基、カルボニル基、エステル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホキシド基、アミド基、カルボキシル基等を挙げることができる。これら置換基のハメット値を以下に示す。トリフルオロメチル基(−CF、m:0.43、p:0.54)、カルボニル基(例えば−COHm:0.36、p:0.43)、エステル基(−COOCH、m:0.37、p:0.45)、ハロゲン原子(例えばCl、m:0.37、p:0.23)、シアノ基(−CN、m:0.56、p:0.66)、スルホキシド基(例えば−SOCH、m:0.52、p:0.45)、アミド基(例えば−NHCOCH、m:0.21、p:0.00)、カルボキシル基(−COOH、m:0.37、p:0.45)等が挙げられる。かっこ内は、その置換基のアリール骨格における導入位置と、そのハメット値を表し、(m:0.50)とは、当該置換基がメタ位に導入された時のハメット値が0.50であることを示す。このうち、Arの好ましい例としては置換基を有するフェニル基を挙げることができ、Ar骨格上の好ましい置換基としてはエステル基、シアノ基が挙げられる。置換の位置としてはAr骨格上のオルト位に位置していることが特に好ましい。
【0196】
以下に、本発明に係る一般式(XVIII)で表される増感色素の好ましい具体例〔例示化合物(F1)〜例示化合物(F56)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0197】
【化29】

【0198】
【化30】

【0199】
【化31】

【0200】
【化32】

【0201】
【化33】

【0202】
【化34】

【0203】
【化35】

【0204】
【化36】

【0205】
本発明に適用可能な前記増感色素の中でも、前記一般式(XVIII)で表される化合物が、深部硬化性の観点から好ましい。
【0206】
上記の増感色素に関しては、本発明の顔料分散組成物の特性を改良する目的で、以下のような種々の化学修飾を行うことが可能である。例えば、増感色素と、重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、架橋硬化膜の高強度化や、架橋硬化膜からの色素の不要な析出抑制効果向上を得ることができる。
【0207】
増感色素の含有量は、本発明のカラーフィルタ用顔料分散組成物の全固形分に対し、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
増感色素の含有量がこの範囲であることで、超高圧水銀灯の露光波長に対して高感度であり、膜深部硬化性が得られると共に、現像マージン、パターン形成性の点で好ましい。
【0208】
−溶剤−
本発明の顔料分散組成物および光硬化性組成物は、一般に上記成分と共に溶剤を用いて好適に調製することができる。
溶剤としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン等が挙げられる。
【0209】
これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0210】
−その他の使用可能な成分−
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、熱重合防止剤、着色剤、光重合開始剤、その他充填剤、上記のアルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
【0211】
−フッ素系有機化合物−
フッ素系有機化合物を含有することで、塗布液としたときの液特性(特に流動性)を改善でき、塗布厚の均一性や省液性を改善することができる。すなわち、基板と塗布液との界面張力を低下させて基板への濡れ性が改善され、基板への塗布性が向上するので、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成が可能である点で有効である。
【0212】
フッ素系有機化合物のフッ素含有率は3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率が前記範囲内であると、塗布厚均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中への溶解性も良好である。
【0213】
フッソ系有機化合物としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物を好適に用いることができる。具体的市販品としては、例えばメガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同780、同781、同R30、同R08、同F−472SF、同BL20、同R−61、同R−90(大日本インキ(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431、Novec FC−4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG7105,7000,950,7600、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭ガラス(株)製)、エフトップEF351、同352、同801、同802(JEMCO(株)製)などである。
【0214】
フッ素系有機化合物は特に、塗布膜を薄くしたときの塗布ムラや厚みムラの防止に効果的である。また、更には液切れを起こしやすいスリット塗布においても効果的である。
【0215】
フッ素系有機化合物の添加量は、光硬化性組成物の全質量に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1.0質量%である。
【0216】
−熱重合開始剤−
本発明の顔料分散組成物には、熱重合開始剤を含有させることも有効である。熱重合開始剤としては、例えば、各種のアゾ系化合物、過酸化物系化合物が挙げられ、前記アゾ系化合物としては、アゾビス系化合物を挙げることができ、前記過酸化物系化合物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどを挙げることができる。
【0217】
−熱重合成分−
本発明の顔料分散組成物には、熱重合成分を含有させることも有効である。必要によっては、塗膜の強度を上げるために、エポキシ化合物を添加することができる。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ環を分子中に2個以上有する化合物である。例えばビスフェノールA型としては、エポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170など(以上東都化成(株)製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103など(以上ナガセ化成(株)製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上ダイセル化学(株)製)の他に、これらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型も挙げることができる。またEbecryl 3700、3701、600(以上ダイセルユーシービー(株)製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。クレゾールノボラック型としては、エポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704など(以上東都化成(株)製)、デナコールEM−125など(以上ナガセ化成(株)製)、ビフェニル型としては3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジグリシジルビフェニルなど、脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上ダイセル化学(株)製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100など(以上東都化成(株)製)などを挙げることができる。また1,1,2,2−テトラキス(p−グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(p−グリシジルオキシフェニル)メタン、トリグリシジルトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、他にアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L(以上東都化成(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0218】
−界面活性剤−
本発明の顔料分散組成物には、塗布性を改良する観点から、各種の界面活性剤を用いて構成することが好ましく、前述のフッソ系界面活性剤の他にノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤を使用できる。中でも、前記のフッ素系有機化合物(界面活性剤)、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0219】
ノニオン系界面活性剤の例として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤が特に好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-プロピレンポリスチリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、エチレンジアミンポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物などのノニオン系界面活性剤があり、これらは花王(株)、日本油脂(株)、竹本油脂(株)、(株)ADEKA、三洋化成(株)などから市販されているものが適宜使用できる。上記の他に前述の分散剤も使用可能である。
【0220】
上記以外に、光硬化性組成物には各種の添加物を添加できる。添加物の具体例としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、ガラス、アルミナ等の充填剤;イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの、アルコール可溶性ナイロン、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから形成されたフェノキシ樹脂などのアルカリ可溶の樹脂などがある。
【0221】
また、未硬化部のアルカリ溶解性を促進し、顔料分散組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、顔料分散組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行なうことができる。具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0222】
−熱重合防止剤−
本発明の顔料分散組成物には、以上のほかに更に、熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0223】
≪光硬化性組成物およびこれを用いたカラーフィルタの製造方法≫
本発明の光硬化性組成物は、既述の本発明の顔料分散組成物にアルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、および光重合開始剤を(好ましくは溶剤と共に)含有させ、これに必要に応じて界面活性剤等の添加剤を混合し、各種の混合機、分散機を使用して混合分散する混合分散工程を経ることによって調製することができる。
【0224】
本発明の光硬化性組成物を、直接または他の層を介して基板に回転塗布、スリット塗布、流延塗布、ロール塗布、バー塗布等の塗布方法により塗布して、光硬化性の塗布膜を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、露光後に未硬化部を現像液で現像除去することによって、各色(3色あるいは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成し、カラーフィルタとすることができる。
この際、使用する放射線としては、特にg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましい。液晶表示装置用のカラーフィルタは、プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機を用いて、主としてh線、i線を使用した露光が好ましく、固体撮像素子用のカラーフィルタでは、ステッパー露光機を用いて、主としてi線を使用することが好ましい。
【0225】
本発明のカラーフィルタは、既述の本発明の光硬化性組成物を用いてガラスなどの基板上に形成されるものであり、本発明の光硬化性組成物を直接若しくは他の層を介して基板上に例えばスリット塗布によって塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥させ、パターン露光し、現像液を用いた現像処理を順次行なうことによって好適に作製することができる。これにより、液晶表示素子や固体撮像素子に用いられるカラーフィルタをプロセス上の困難性が少なく、高品質でかつ低コストに作製することができる。
【0226】
前記基板としては、例えば、液晶表示素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、およびこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等、並びにプラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていたり、密着促進等のために透明樹脂層を設けたりしている。
【0227】
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層および/または耐溶剤性層を有していることが好ましい。このほかに、薄膜トランジスター(TFT)方式カラー液晶表示装置の薄膜トランジスター(TFT)が配置された駆動用基板(以下、「TFT方式液晶駆動用基板」という。)上にも本発明の光硬化性組成物からなるパターン状皮膜を形成し、カラーフィルタを作成することができる。その際に使用されるフォトマスクには、画素を形成するためのパターンのほか、スルーホールあるいはコの字型の窪みを形成するためのパターンも設けられている。TFT方式液晶駆動用基板における基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。例えば、TFT方式液晶駆動用基板の表面上、あるいは該駆動基板の表面に窒化ケイ素膜等のパッシベーション膜を形成した基板等を挙げることができる。
【0228】
本発明の光硬化性組成物を基板に塗布する方法としては特に限定されるものではないが、スリット・アンド・スピン法、スピンレス塗布法等のスリットノズルを用いる方法(以下スリットノズル塗布法という)が好ましい。スリットノズル塗布法において、スリット・アンド・スピン塗布法とスピンレス塗布法は、塗布基板の大きさによって条件は異なるが、例えばスピンレス塗布法により第五世代のガラス基板(1100mm×1250mm)を塗布する場合、スリットノズルからの光硬化性組成物の吐出量は、通常500〜2000マイクロリットル/秒が好ましく、更には800〜1500マイクロリットル/秒が好ましく、また塗工速度は、通常50〜300mm/秒が好ましく、更には100〜200mm/秒が好ましい。光硬化性組成物の固形分としては、通常10〜20%が好ましく、更には13〜18%が好ましい。基板上に本発明の光硬化性組成物による塗膜を形成する場合、該塗膜の厚み(プリベーク処理後)としては、一般に0.3〜5.0μmが望ましく、更には0.5〜4.0μmが望ましく、0.8〜3.0μmが最も望ましい。
【0229】
通常は塗布後にプリベーク処理を施す。必要によってプリベーク前に真空処理を施すことができる。真空乾燥の条件は、真空度が、通常0.1〜1.0torrが好ましく、更には0.2〜0.5torrが好ましい。
プリベーク処理は、ホットプレート、オーブン等を用いて50〜140℃の温度範囲が好ましく、更には70〜110℃が好ましく、また時間として好ましくは10〜300秒の条件にて行なうことができる。高周波処理などを併用しても良い。高周波処理は単独でも使用可能である。
【0230】
現像処理では、露光後の未硬化部を現像液に溶出させ、硬化分のみを残存させる。現像温度としては、通常20〜30℃であり、現像時間としては20〜90秒である。
現像液としては、未硬化部における光硬化性の光硬化性組成物の塗膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0231】
前記有機溶剤としては、本発明の顔料分散組成物または光硬化性組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤が挙げられる。
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。アルカリ性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0232】
現像方式は、デイップ方式、シャワー方式、スプレー方式などいずれでもよく、これにスウィング方式、スピン方式、超音波方式などを組み合わせてもよい。現像液に触れる前に、被現像面を予め水等で湿しておいて、現像むらを防ぐこともできる。また基板を傾斜させて現像することもできる。
固体撮像素子用の場合はパドル現像も用いられる。
【0233】
現像処理後は、余剰の現像液を洗浄除去するリンス工程を経て、乾燥を施した後、硬化を完全なものとするために、加熱処理(ポストベーク)が施される。
リンス工程は通常は純水で行うが、省液のために、最終洗浄で純水を用い、洗浄はじめは使用済の純水を使用したり、基板を傾斜させて洗浄したり、超音波照射を併用したりできる。
【0234】
リンスの後で水切り、乾燥をした後に、通常約200℃〜250℃の加熱処理を行なう。この加熱処理(ポストベーク)は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行なうことができる。
以上の操作を所望の色相数に合わせて各色毎に順次繰り返し行なうことにより、複数色の着色された硬化膜が形成されてなるカラーフィルタを作製することができる。
【0235】
本発明の顔料分散組成物および光硬化性組成物の用途として、主にカラーフィルタへの用途を中心に説明したが、カラーフィルタを構成する各着色画素を隔離するブラックマトリックスの形成にも適用することができる。
前記ブラックマトリックスは、顔料としてカーボンブラック、チタンブラックなどの黒色顔料を用いた本発明の顔料分散組成物を露光、現像し、その後必要に応じて更にポストベークして膜の硬化を促進させることで形成できる。
【実施例】
【0236】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0237】
<高分子化合物(重合体)の合成>
−グラフト型重合体の合成−
(重合体1の合成)
BzMA 27.0g、末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(AA−6:東亜合成社製) 126.0g、LC−1を誘導するモノマー(RはCH) 27.0g、n−ドデシルメルカプタン 2.9gおよびメトキシプロピレングリコール 327gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)(和光純薬(株)製V−601)を0.8g加え、78℃にて2時間加熱攪拌を行った。2時間後、さらにV−601を0.8g加え、3時加熱攪拌の後、重合体1の30%溶液を得た。
得られた重合体1の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、2.0万であった。また、H−NMRから求めた繰り返し単位組成比(BzMA/AA−6/LC−1の質量比)は、15/70/15であった。
【0238】
(重合体4の合成)
重合体1の合成において、BzMA、AA−6、LC−1を下記表1に記載の通り変更した以外は、重合体1に記載の方法により重合体4を合成した。尚、表1に記載のUA−7は、UA−7を誘導するモノマーを表す。
【0239】
−側鎖にラクトンを導入したグラフト型重合体の合成−
(マクロモノマーAL−1の合成)
1−メトキシ−2−プロパノール 50.0gを窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温した。これにMMA 170.0g、LC−1を誘導するモノマー(RはCH) 30.0g、メルカプトプロピオン酸 4.1g、1−メトキシ−2−プロパノール 50.0g、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製V−65) 0.4gを、90℃にて2時間かけて滴下した。4時間後、1−メトキシ−2−プロパノール 104.1gで希釈した。次に、空気でフラスコ内を満たした後に、メタクリル酸グリシジル 6.0g、メチルヒドロキノン 0.06g、テトラエチルアンモニウムブロミド 4.0gを投入し、90℃にて5時間攪拌した。反応終了後、水12L/メタノール3L混合溶液にて再沈し、得られた白色粉体を乾燥して、マクロモノマーAL−1を得た。
【0240】
(マクロモノマーAL−9の合成)
マクロモノマーAL−1の合成において、LC−1を誘導するモノマーを、LC−9を誘導するモノマー(RはCH)に変更した以外は、マクロモノマーAL−1に記載の方法によりマクロモノマーAL−9を合成した。
【0241】
(重合体2、3および5の合成)
重合体1の合成において、BzMA、AA−6、LC−1をそれぞれ下記表1に記載の通り変更した以外は、重合体1に記載の方法により重合体2、3および5を合成した。
重合体2の、グラフト側鎖におけるラクトン構造を有する繰り返し単位の割合を、1H−NMRから求めたところ、10質量%であった。また同様に、重合体3の割合は10質量%、重合体5の割合は10質量%であった。
【0242】
−ブロック型重合体の合成−
(重合体6の合成)
ベンジルメタクリレート 140g、下記化合物(P) 2g、シクロヘキサノン 100.0gとの脱ガスした溶液を80℃で2時間攪拌後、120℃で0.5時間加熱し、Mn=6500のポリマーを得た。これにMAA 20gを投入、脱ガスした溶液を120℃で1時間加熱し、Mn=7200のポリマーを得た。さらに、LC−1を誘導するモノマー(RはCH) 40gを加え、脱ガスした溶液を120℃で1時間加熱した。反応終了後、1−メトキシー2−プロピルアセテート 392.0gで希釈し、重合体6の30%溶液を得た。
得られた重合体6の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、0.9万であった。また、H−NMRから求めた繰り返し単位組成比(BzMA/MAA/LC−1の質量比)は、70/10/20であった。
【0243】
【化37】



【0244】
(重合体7、8および9の合成)
重合体6の合成において、BzMA、MAA、LC−1をそれぞれ下記表1に記載の通り変更した以外は、重合体6に記載の方法により重合体7、8および9を合成した。尚、表1に記載のLC−9およびLC−20は、それぞれLC−9を誘導するモノマー(RはCH)およびLC−20を誘導するモノマー(RはCH)を表す。
【0245】
−末端変性型重合体の合成−
(重合体10の前駆体TM−1の合成)
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)〔DPMP;堺化学工業(株)製〕7.83部、および下記のイタコン酸4.55部を、1−メトキシ−2−プロパノール28.90部に溶解させ、窒素気流下70℃に加熱した。これに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〔V−65、和光純薬工業(株)製〕0.04部を加えて3時間加熱した。更に、V−65を0.04部加え、窒素気流下、70℃で3時間反応させた。室温まで冷却することで、以下に示すメルカプタン化合物(TM−1)の30%溶液を得た。
【0246】
【化38】



【0247】
(重合体10の合成)
前記TM−1の30%溶液 4.4g、LC−20を誘導するモノマー(RはCH) 24.8g、および1−メトキシ−2−プロピルアセテート 14.0gの混合溶液を、窒素気流下90℃に加熱した。この混合溶液を攪拌しながら、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕0.1g、1−メトキシー2−プロピルアセテート12.0gの混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了してから、90℃で2.5時間反応させた後、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.1g、1−メトキシー2−プロピルアセテート1.0gの混合溶液を投入し、更に2時間反応させた。反応液に1−メトキシー2−プロピルアセテート13.9gを加え、室温まで冷却することで、重合体10の30%溶液を得た。
【0248】
(重合体11の合成)
重合体10の合成において、LC−20を誘導するモノマーを下記表1に記載の通り変更した以外は、重合体10に記載の方法により重合体11を合成した。尚、表1に記載のLC−9は、LC−9を誘導するモノマー(RはCH)を表す。
【0249】
重合体10の、幹ポリマー部(ポリマーの末端以外の部分)におけるラクトン構造を有する繰り返し単位の割合を、1H−NMRにより求めたところ、100質量%であった。また同様に、重合体11の割合は20質量%であった。
【0250】
(比較樹脂2の合成)
特開2007−65155号公報に記載されている「合成例6」と同様の方法により比較樹脂2を合成した。
【0251】
(比較樹脂1および3の合成)
比較樹脂2の合成において、BzMA、MMA、LC−13、MAAをそれぞれ下記表1に記載の通り変更した以外は、比較樹脂2に記載の方法により比較樹脂1および3を合成した。
【0252】
【表1】

【0253】
尚、上記表1における記載は以下の通りである。
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
BzMA:メタクリル酸ベンジル
PhMI:フェニルマレイミド
DMAEMA:メタクリル酸−2−ジメチルアミノエチル
AL−1:MMA/LC−1=85/15(質量比)
AL−9:MMA/LC−9=85/15(質量比)
AA−6:末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート
M−6 :前述の化合物(具体例)M−6
M−13:前述の化合物(具体例)M−13
【0254】
<加工顔料の調製>
顔料 C.I.ピグメントグリーン36 50g、塩化ナトリウム 500g、表2記載の顔料加工に使用する重合体の溶液 25g、およびジエチレングリコール 100gをステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、9時間混練した。次に、この混合物を約3リットルの水中に投入し、ハイスピードミキサーで約1時間攪拌した後に、ろ過、水洗して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、乾燥して重合体(高分子化合物)で被覆された加工顔料を得た。
なお、重合体(高分子化合物)を加工顔料工程で使用しないときは、上記処方で重合体の溶液を抜いて同様の実験をした。
【0255】
<顔料分散組成物の調製>
下記組成(1)の成分を混合し、ホモジナイザーを用いて回転数3,000rpmで3時間攪拌して混合し、顔料を含む混合溶液を調製した。
〔組成(1)〕
・加工顔料 95部
・下記顔料誘導体A 5部
・表2記載の分散剤(30%1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液)
表2記載の量
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 750部
【0256】
【化39】



【0257】
続いて、上記より得られた混合溶液を、さらに0.3mmφジルコニアビーズを用いたビーズ分散機ディスパーマット(GETZMANN社製)にて6時間分散処理を行ない、その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散組成物を得た。
【0258】
<顔料分散組成物の評価>
(1)粘度の測定、評価
得られた顔料分散組成物について、E型粘度計を用いて、分散直後の顔料分散組成物の粘度(初期粘度)、および分散後(室温にて)1週間経過した後の顔料分散組成物の粘度(経時粘度)を測定し、増粘の程度を評価した。ここで、粘度が低いことは、分散剤に起因する粘度の上昇が抑制されており、顔料の分散性及び分散安定性が良好であることを示す。
【0259】
(2)コントラストの測定、評価
得られた顔料分散組成物をガラス基板上に塗布し、乾燥後の塗布膜の厚さが1μmになるようにサンプルを作製した。2枚の偏光板の間にこのサンプルを置き、偏光板が平行時の輝度と直行時の輝度を(BM−5 トプコン(株)製)にて測定し、コントラスト(=平行時の輝度/直行時の輝度)を求めた。ここで、コントラストが高いことは、顔料が高度に微細化された状態で均一に分散されていることを示す。
【0260】
(3)析出性の評価
100mm×100mmのガラス基板(商品名:1737 コーニング社製)上に得られた顔料分散組成物を膜厚2.0μmとなるように塗布し、90℃のオーブンで60秒乾燥した。その後、塗布膜に230℃のオーブンで30分間加熱処理(ポストベーク)を施し、光学顕微鏡にてパターン上の析出の有無を確認した。ポストベーク処理を繰り返して、その都度観察した。点数が高いほど、析出しにくく良好なことを示す。
4:ポストベーク4回目で析出
3:ポストベーク3回目で析出
2:ポストベーク2回目で析出
1:ポストベーク1回目で析出
【0261】
【表2】

【0262】
尚、上記表2における記載は以下の通りである。
P−1:メチルメタクリレート/メタクリル酸=85/15(質量比)の共重合体、
重量平均分子量2万、酸価98mgKOH/g
P−2:水素添加ロジンエステル(荒川化学(株)製「エステルガムHP」)
【0263】
<着色光硬化性組成物の調製>
下記組成の成分を混合し、ホモジナイザーを用いて回転数3,000rpmで3時間攪拌して混合し、顔料を含む混合溶液を調製した。
〔組成〕
・表3記載の加工顔料 110部
・表3記載の分散剤(30%1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液) 250部
・表3記載の分散剤顔料誘導体 20部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 750部
続いて、上記より得られた混合溶液を、さらに0.3mmφジルコニアビーズを用いたビーズ分散機ディスパーマット(GETZMANN社製)にて6時間分散処理を行ない、その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散組成物(着色光硬化性組成物)を得た。
【0264】
<着色光硬化性組成物を用いたカラーフィルタの調製>
得られた着色光硬化性組成物(カラーレジスト液)を、100mm×100mmのガラス基板(コーニング社製、1737)上に、色濃度の指標となるx値、y値がそれぞれ0.650となるように塗布し、90℃のオーブンで60秒間乾燥させた(プリベーク)。その後、塗膜の全面に200mJ/cmにて(照度20mW/cm)露光し、露光後の塗膜をアルカリ現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液にて覆い、60秒間静止した。静止後、純水をシャワー状に散布して現像液を洗い流した。そして、上記のように露光及び現像が施された塗膜を220℃のオーブンで1時間加熱処理し(ポストベーク)、ガラス基板上にカラーフィルタ用の着色パターン(着色樹脂被膜)を形成し、着色フィルタ基板(カラーフィルタ)を作製した。
【0265】
<カラーフィルタの評価>
作製した着色フィルタ基板(カラーフィルタ)について、以下のようにして評価を行なった。結果を下記表3に示す。
(1)コントラスト:顔料分散組成物における評価と同じ方法
【0266】
(2)現像残渣
現像後の基板を光学顕微鏡にて、未露光部のガラス基板への残り具合を観察した。未露光部には、残渣が全くないものを○、未露光部に、わずかに確認されたが実用上問題のない程度であるものを△、未露光部に、残渣が著しく確認されたものを×とした。
【0267】
(3)表面平滑性
スリット間隔100μm、塗布有効幅500mmのスリットヘッドを備えたスリット塗布装置を用いて、スリット塗布適性の評価を行った。通常の方法で10枚ガラス基板(幅550mm、長さ650mm、厚み0.7mm)上に塗布した後に、前記スリットヘッドを空中に5分間待機させ、強制乾燥させた。待機後3秒間ダミーデイスペンスし、そのままガラス基板に断続で10枚スリット塗布した。ポストベーク後の塗膜厚が2μmとなるようにスリットとガラス基板間の間隔を調節して、塗布速度100mm/秒で硬化性組成物を塗布した。塗布後、ホットプレートで、90℃、60秒間プリベークした後、塗布面のスジ状のムラの本数をナトリウム光源を用いて目視にてカウントし、以下の基準で評価し表3に示した。
−評価基準−
○:塗布面にスジ状のムラが全くないもの
△:スジ状のムラが1〜5本観察されたもの
×:スジ状のムラが6本以上観察されたもの
【0268】
【表3】

【0269】
尚、上記表3における記載は以下の通りである。
PR254:C.I.Pigment Red 254
PG36:C.I.Pigment Green 36
P−1:メチルメタクリレート/メタクリル酸=85/15(質量比)の共重合体、
重量平均分子量2万、酸価98mgKOH/g
P−3:a−10/MMA/MAA=20/30/30(質量比)の共重合体、
重量平均分子量2万
D−1:ルーブリゾール社製、ソルスパース24000
【図面の簡単な説明】
【0270】
【図1】(A)は本発明に係る高分子化合物(A)の現像液との反応性を示す説明図であり、(B)は従来における高分子化合物の現像液との反応性を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有し、重量平均分子量が1,000〜100,000であり、且つブロック型、グラフト型または末端変性型の構造を有する高分子化合物(A)、および顔料(B)を含有する顔料分散組成物。
【請求項2】
前記高分子化合物(A)が、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有する繰り返し単位を、5〜80質量%有するブロック型高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の顔料分散組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物(A)が、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有する繰り返し単位をグラフト側鎖に有すると共に、グラフト側鎖における前記繰り返し単位の割合が5〜100質量%であるグラフト型高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の顔料分散組成物。
【請求項4】
前記高分子化合物(A)が、ラクトン構造および酸無水物構造から選択される部分構造を1種以上有する繰り返し単位を幹ポリマー部に有すると共に、幹ポリマー部における前記繰り返し単位の割合が5〜100質量%である末端変性型高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の顔料分散組成物。
【請求項5】
前記高分子化合物(A)が、さらに吸着部位を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項6】
前記高分子化合物(A)が、前記吸着部位を有する繰り返し単位を5〜50質量%有するブロック型高分子化合物であることを特徴とする請求項5記載の顔料分散組成物。
【請求項7】
前記高分子化合物(A)が、前記吸着部位を有する繰り返し単位をグラフト主鎖に有し、該グラフト主鎖における前記繰り返し単位の割合が5〜50質量%であるグラフト型高分子化合物であることを特徴とする請求項5記載の顔料分散組成物。
【請求項8】
前記高分子化合物(A)が、前記吸着部位で末端が変性された末端変性型高分子化合物であることを特徴とする請求項5記載の顔料分散組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の顔料分散組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する光硬化性組成物。
【請求項10】
請求項9記載の光硬化性組成物を用いてなることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項11】
請求項10記載のカラーフィルタを用いた液晶表示素子。
【請求項12】
請求項10記載のカラーフィルタを用いた固体撮像素子。

【図1】
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【公開番号】特開2009−84450(P2009−84450A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256655(P2007−256655)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】