説明

顔料分散組成物およびインクジェットインキ組成物

【解決課題】優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するとともに、再溶解性、耐マーカー性および耐擦過性に優れた顔料分散組成物を提供する。
【解決手段】表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と接触させ尿素結合させてなるポリウレタン樹脂付加顔料(A)の水性分散体と、平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)とを含むことを特徴とする顔料分散組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散組成物およびインクジェットインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水性インキはその安全性と環境負荷が少ないことから幅広い分野で有機溶剤系インキに取って代わり普及している。特にビジネス用途などではオフィス
において各種印刷に使用されるインクとして臭いのない水性色材が必要不可欠であり、産業用途でも作業環境、インキや塗料の取り扱いの安全性、廃液処理の問題から有機溶剤の使用をできる限り少なくする傾向が強まっている。また、水性着色材は、有機溶剤型着色材に比べ、製造時に防爆設備、排気設備、有機溶剤回収装置などの特別な装置が要らず製造コストが安価であることも普及の要因となっている。
【0003】
水性着色材としては主に染料と顔料の二つが用途に応じて使い分けられており、染料は階調性に優れ高解像度の画像形成がしやすい反面、耐光性が顔料と比べて悪く実用上問題がある。これに対して顔料は染料に対して分散性は劣るが、耐水性、耐光性が極めて優れており、分散技術の進歩により顔料インクが数多く提供されてきている。
【0004】
印刷製版を経て印刷されるグラビアインキ、オフセット印刷用の水性リキッドインクも開発されているが、水性インクを用いるオフィス向けの記録方法として最も普及し始めているものはインクジェット記録方法である。
【0005】
インクジェット記録方法は、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や画像を紙などの記録媒体の表面に記録する方法であり、非接触で記録することにより、普通紙をはじめ多種多様な記録媒体にフルカラーで印刷版をおこすことなくオンデマンドで容易に印刷可能であることから広く普及し始めている。
【0006】
インクジェット記録方法を採用したインクジェットプリンターは、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や画像を紙などの記録媒体の表面に記録する方法であり、代表的な記録方式としてバブルジェット(登録商標)方式とピエゾ方式とがある。前者はノズルヘッドまで導いたインクをヒーターで瞬間的に加熱して泡を発生させ、その泡による体積膨張でインク液を断続的に吐出する記録方式であり、後者は電歪素子(圧電素子)を用いて電気信号を機械信号に変換し、ノズルヘッド部分に貯えたインク液滴を断続的に吐出する記録方式である。
【0007】
インクジェットプリンター用インク組成物(インクジェットインク組成物)のうち、黒色インク組成物は、主に文書印刷を目的としてオフィス等で多用されており、各プリンターの記録方式、記録速度に最適化された水性黒色顔料インク組成物が数多く提供されている。
【0008】
例えば、黒色顔料の表面を親水化して、水性媒体に対する分散性を向上させた水性黒色顔料インク組成物が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、特許文献1記載の方法では、普通紙に印字した場合に紙の内部にインク組成物が浸透してしまうことから、画像濃度が低下したり裏移りを生じたり、記録紙がカールする等の課題を生じていた。特に、近年、インクジェットプリンターの印刷速度の高速化に伴い、単位時間あたりのインク吐出量が増える傾向にあるため、従来の水性黒色顔料では十分な画像濃度が得られない場合があった。
【0009】
また、顔料は、粒子間の凝集力に比べて他の物質、例えば有機高分子、水および有機溶剤等との親和性が弱いために、通常の混合または分散条件では、均一に混合または分散することが極めて困難であるため、顔料表面に、各種の界面活性剤や樹脂等からなる分散剤を吸着させ、顔料表面全体を該分散剤で被覆して、固体状または液体状の他成分との親和性を高めることにより、顔料の分散性を改良する検討が数多くなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
更に、産業用途においては、プリンターの印刷速度が速く、パーソナル用途と異なりヘッドクリーニングを頻繁に行うことができないため、インクジェットインク組成物としては、連続吐出、断続吐出を繰り返してもヘッドに汚れや詰まりを生じさせない、再溶解性(乾燥後のインク組成物が未乾燥のインク組成物に再溶解し、連続吐出、断続吐出を繰り返してもノズルヘッドに汚れや詰まりを生じさせない特性)も求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−003498号公報
【特許文献2】特開平08−218015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、本発明者等が鋭意検討したところ、顔料表面に分散剤を吸着させてなる従来の水系顔料インク組成物においては、ノズルヘッドに設けられた細いノズルからインク組成物が吐出される際に、強い剪断力が加わって分散剤が離脱したり、長期保存中に分散剤が離脱したりする等して顔料の分散状態が不安定になり、保存安定性の悪化を引き起こすことが判明した。インク塗膜の耐擦過性、耐マーカー性を向上すべくアクリルエマルションなどの水性分散樹脂を添加すると保存安定性、吐出安定性の低下を招く。また、顔料全体を分散剤で被覆してマイクロカプセル化した場合には、保存安定性に優れる反面、画像濃度が大きく低下してしまう。
【0013】
また、顔料表面の官能基濃度を下げて、紙などの被印刷物に浸透せずに表面に止まる着色剤のほうが画像濃度が高くなることが知られているが、この場合、分散安定性、再溶解性、耐擦過性を低下させてしまう。
【0014】
従って、本発明は、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するとともに、再溶解性が高く、インク塗膜の耐マーカー性、耐擦過性に優れる顔料分散組成物およびインクジェットインク組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討したところ、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と接触させ尿素結合させてなるポリマー付加顔料水分散体(A)と、平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)とを含む顔料分散組成物またはインクジェットインク組成物により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、
(1)表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と接触させ尿素結合させてなるポリウレタン樹脂付加顔料(A)の水性分散体と、
平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)とを含む
ことを特徴とする顔料分散組成物、
(2)前記末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の固形分酸価が20〜200mgKOH/gである上記(1)に記載の顔料分散組成物、
(3)前記水性分散樹脂(B)が、分子中に陰イオン基またはノニオン基を有する自己分散型水性分散樹脂であるか、または陰イオン乳化剤およびまたはノニオン乳化剤により分散されてなる乳化剤分散型水性分散樹脂である上記(1)または(2)に記載の顔料分散組成物、
(4)前記表面に酸性基を有する顔料(I)が、表面に酸性基を有する自己分散型カーボンブラックである上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物、
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物からなることを特徴とするインクジェットインク組成物、
を提供するものである(なお、以下、適宜、表面に酸性基を有する顔料(I)を「顔料(I)」、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)を「塩基性化合物(II)」、末端イソシアネート基を有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)を「ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)」とそれぞれ称するものとする)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを水性媒体中で接触させることにより、イオン的な作用力によって両者を予め近接させ、末端イソシアネート基を有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)をさらに接触させることにより、顔料表面の未反応アミノ基とポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)とを尿素結合させてなるポリウレタン樹脂付加顔料(A)とともに、平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)を含むことにより、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するとともに、再溶解性が高く、インク塗膜の耐マーカー性、耐擦過性に優れる顔料分散組成物およびインクジェットインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ず、本発明の顔料分散組成物について説明する。
本発明の顔料分散組成物は、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と接触させ尿素結合させてなるポリウレタン樹脂付加顔料(A)の水性分散体と、平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)とを含むことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の顔料分散組成物において、表面に酸性基を有する顔料(I)としては、表面が酸性の顔料が好ましく、シナジストにより表面酸性処理した各種顔料や、表面処理により酸性にした顔料をさらに対イオンで中和した顔料を挙げることができる。
【0020】
本発明の顔料分散組成物において、表面に酸性基を有する顔料(I)としては、黒色顔料が好ましく、具体的には、アイボリーブラック、ピーチブラック、ランプブラック、マルスブラック、ビチューム、チタンブラック、カーボンブラック等を挙げることができる。これ等の中で、カーボンブラックが、インクジェット記録用黒色顔料として、漆黒度と着色力に優れることから、好適に使用することができ、インク組成物の分散性や吐出安定性等を考慮すると、特に、表面に酸性基を有する自己分散型カーボンブラックが好適である。
【0021】
表面に酸性基を有する自己分散型カーボンブラック顔料とは、酸性基を含む少なくとも一種の親水性基がカーボンブラック顔料の表面に直接、若しくは他の原子団を介して結合したものであって、水中に懸濁して分散液とした際に界面活性剤や高分子化合物を添加することなく安定した分散状態を保持することができ、その分散液の表面張力がほとんど水と同等の値を示すものを意味し、本出願書類において、自己分散型カーボンブラック顔料には、上記酸性基等の親水性基を対イオンで中和したものも含むものとする。
【0022】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックを挙げることができ、これ等のカーボンブラックは、炭素含有量が高く、無定形構造に由来する黒色度が高く、ピーチブラックやランプブラック等に比較して乾燥速度が速く、保存安定性が高く、安価であることから、好ましく使用することができる。
【0023】
上記カーボンブラックのうち、ファーネスブラックやチャンネルブラック等の超微細カーボンブラックを用いると、得られる水性顔料分散体をインクジェットプリンター用インク組成物に用いたときに、高解像度で印刷品質に優れるものを得ることができる。
【0024】
カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上であるものが好ましく、50〜300m/gであるものがより好ましく、80〜250m/gであるものがさらに好ましい。また、カーボンブラックとしては、DBP吸収量が50cm/100g以上であるものが好ましく、50〜200cm/100gであるものがより好ましく、80〜180cm/100gであるものがさらに好ましい。
【0025】
カーボンブラックのNSAおよびDBP吸収量が上記範囲内にあることにより、得られる水性顔料分散体をインクジェットインク組成物に用いたときに、水性媒体に対して優れた分散性や、インキ性能を発揮することができる。
【0026】
なお、本出願書類において、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217−2に規定される「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部、比表面積の求め方−窒素吸着法、単点法」に従って測定した値を意味し、DBP吸収量は、JISK6217−4に規定される「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部、DBP吸収量の求め方」に従って測定した値を意味する。
【0027】
また、カーボンブラックを構成する一次粒子の平均粒径は、10〜300nmであることが好適であり、15〜270nmであることがより好適であり、20〜250nmであることがさらに好適である。なお、本出願書類において、カーボンブラックを構成する一次粒子の平均粒径は、15Å以上の分解能を持つ電子顕微鏡により2000〜10000個の一次粒子の粒径を測定したときの算術平均を意味する。
【0028】
カーボンブラックの具体例としては、トーカブラック#8500、トーカブラック#8500F、トーカブラック#7550SB、トーカブラック#7550F(以上東海カーボン(株)製)、#650、#750、MA600、#44B、#44、#45B、MA7、MA11、#47、#45、#33、#45L、#47、#50、#52、MA77、MA8(以上三菱化学(株)製)、FW200、FW2V、FWI、FW18PS、NIpex180IQ、FW1、Special Black6、S160、S170(以上Degussa社製)、Black Pearls 1000M、Black Pearls 800、Black Pearls 880、Monarch 1300、Monarch 700、Monarch 880、CRX 1444、Regal 330R、Regal 660R、Regal 660、Regal 415R、Regal 415、Black Pearls 4630、Monarch 4630(以上Cabot社製)、Raven 7000、Raven 3500、Raven 5250、Raven 5750、Raven 5000ULTRAII、HV 3396、Raven 1255、Raven 1250、Raven 1190、Raven 1000、Raven 1020、Raven 1035、Raven 1100ULTRA、Raven 1170、Raven 1200(以上Columbian社製)、DB1305(以上KOSCO社製)、SUNBLACK700、705、710、715、720、725、300、305、320、325、X25、X45(以上旭カーボン(株)製)、N220、N110、N234、N121(以上Sid Richardson社製)、ニテロン#300(以上新日化カーボン(株)製)、ショウブラックN134、N110、N220、N234、N219(以上昭和キャボット社製)などを挙げることができる。
【0029】
本発明の顔料分散組成物において、表面に酸性基を有する顔料(I)は、上記各顔料を、適宜酸化処理することにより得ることができる。
【0030】
酸化処理は、液相法および気相法等の公知の方法により行うことができる。
液相法により酸化処理する場合は、酸化剤として、過酸化水素水、硝酸、硫酸、塩素酸塩、過硫酸塩、過炭酸塩など種々の酸化剤を用いることができ、例えば、上記酸化剤を含む水溶液中に、カーボンブラック等の顔料を投入し、攪拌処理することにより、表面に酸性基を有する顔料を得ることができ、酸化剤の投入量および反応温度を制御することで、カーボンブラック表面に酸性基を均一に導入することができる。
【0031】
また、気相法による酸化処理は、オゾン酸化や空気酸化による方法を挙げることができ、上記気相法によれば、乾燥コストがかからず、液相法に比べて操作が容易である等の利点がある。
【0032】
酸化処理によって顔料表面に導入される酸性基としては、アミノ基を有する塩基性化合物と酸・塩基反応して塩を形成し得るものであれば特に制限されず、例えば、カルボキシル基、スルホン基等を挙げることができる。これら酸性基の導入量は、気相酸化条件もしくは液相酸化条件を制御することにより制御することができる。
【0033】
以下、表面に酸性基を有する黒色顔料として、カーボンブラックの酸化処理物を液相法で製造する場合を例にとって説明する。
【0034】
カーボンブラックと、酸化剤および水性媒体(好ましくは脱イオン水)とを適宜な量比で攪拌槽にて混合して、混合攪拌槽中で適宜な温度、例えば室温〜90℃の温度下、好ましくは60〜90℃の温度下で十分に攪拌混合することにより、カーボンブラックが酸化されて、カーボンブラック粒子凝集体の表面にカルボキシル基やヒドロキシル基などの親水性の官能基が生成してなる表面が酸化された顔料の水分散体(スラリー)を得ることができる。
【0035】
この場合、カーボンブラックを予め湿式あるいは乾式酸化しておくとスラリー中にカーボンブラックを効率よく分散させることができ、均一かつ効果的に酸性基を生成することができる。湿式法により酸化する場合、オゾン水、過酸化水素水、ペルオキソ二酸あるいはその塩類により酸化することが好ましく、乾式(気相)法により酸化する場合、オゾン、酸素、NO、SOなどのガス雰囲気中にカーボンブラックを曝すことにより酸化することが好ましい。
【0036】
また、スラリー中に表面が酸化された顔料を均一に分散させるために界面活性剤を添加することも好ましく、界面活性剤としてはアニオン系、ノニオン系、カチオン系いずれも使用することができる。例えば、アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩などが、ノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルなどが、カチオン系界面活性剤としてはアルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などが例示される。
【0037】
このようにして得られた表面が酸化された顔料のスラリーは、そのまま塩基性化合物との反応に供してもよいし、表面が酸化された顔料の凝集物が発生したり粘度が増加したりすることを抑制するために、部分中和処理(表面官能基である酸性基の一部を中和する処理)を施してもよい。
【0038】
部分中和処理を施す場合、予め、酸化処理により生じた還元塩(酸化剤の還元化物)を除去することが好ましく、還元塩を除去することによって、以下の中和反応が効率的に進行して水分散性が向上し、表面酸化顔料の再凝集を抑制することができる。還元塩の除去は、限外濾過膜(UF)、逆浸透膜(RO)、電気透析膜などの分離膜を用いて行うことが好ましい。
【0039】
表面酸化顔料の部分中和処理は、上記スラリーに中和剤を加え、加温しながら行うことが好ましい。中和剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ塩類、アンモニア、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、第4級アミンなどの有機アミン類が例示されるが、この限りではない。中和剤の添加量は、顔料表面官能基量によっても異なるので一概に決めることは出来ないが表面酸性官能基に対し50〜100モル%であることが好ましい。中和反応は常温で行ってもよいが、中和剤を撹拌槽中の顔料スラリーに投入し、40〜100℃で、1〜16時間攪拌を行うことが好ましい。
【0040】
一般に、自己分散型顔料、即ち表面に酸性基を有する顔料(I)は対イオンによって中和されるとイオンの反発によって顔料粒子が分散し、表面にポリマーを付加した場合にはその保存安定性を高めることができるが、顔料表面の酸性基の濃度が低い場合には、分散安定性を欠く場合がある。これに対して、本発明で用いるポリウレタン樹脂付加顔料(A)は、特に顔料(I)表面の酸性基濃度が低い場合であっても、顔料(I)に対して後述する表面に末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)を尿素結合により付加してなるものであることにより優れた分散性と分散安定性を付与することができる。
【0041】
また、顔料スラリー中に大きな未分散塊や粗粒が存在する場合には、遠心分離や濾過などの方法により除去することが好ましく、未分散塊や粗粒を除去することにより、得られる水性顔料分散体の粒度分布を制御することができ、水性顔料分散体をインクジェットプリンター用インク組成物に使用したときに、印刷時におけるノズルの目詰りの発生を抑制することができる。
スラリーの中和処理を行った場合は、中和処理により生じた塩類(中和剤の酸化物)を除去することが好ましく、上記塩類を除去することにより、顔料の水分散性を向上させ、表面酸化顔料の再擬集を抑制することができる。上記塩は、限外濾過膜(UF)、逆浸透膜(RO)、電気透析膜などの分離膜により除去することが好ましい。
【0042】
表面に酸性基を有する顔料(I)が表面に酸性基を有するカーボンブラックである場合、カルボキシル基当量が200〜1200μmol/gであるものが好ましく、400〜1000μmol/gであるものがより好ましく、600〜800μmol/gであるものがさらに好ましい。
【0043】
スラリー中における、表面に酸性基を有する顔料(I)の濃度は、3〜30質量%であることが好ましく、4〜28質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることがさらに好ましい。スラリー中における、表面に酸性基を有する顔料(I)の濃度が上記範囲内にあることにより、後述する一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)をスラリー中に所定量投入することで、上記顔料と塩基性化合物との反応を容易に行うことができる。
【0044】
上述した方法によって、表面に酸性基を有する顔料(I)を得ることができるが、表面に酸性基を有する顔料としては、市販品を用いることもでき、自己分散型カーボンブラックとして市販されているAquaBlack(登録商標)162、AquaBlack(登録商標)164(いずれも東海カーボン(株)製)等の比較的分散安定性の高いカーボンブラックや、これ等の自己分散型カーボンブラックに対して、表面の酸性基濃度が50%以上100%未満であるカーボンブラックを挙げることができる。表面に酸性基を有する顔料(I)として、市販品を使用する場合には、後述する一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物との反応前に、塩基性化合物との反応を行う水性媒体中に予め分散することが好ましく、この場合、顔料の濃度が上記スラリー中の顔料濃度と同様の濃度になるように分散することがより好ましい。
【0045】
表面に酸性基を有する顔料(I)の平均粒径は、50〜250nmであることが好適であり、60〜200nmであることがより好適であり、70〜150nmであることがさらに好適である。なお、本出願書類において、表面に酸性基を有する顔料(I)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された、体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(平均粒径D50)を意味する。
【0046】
一級アミノ基または二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)としては、顔料表面の酸性基と酸・塩基反応し得るとともに、後述するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の末端イソシアネート基と尿素結合し得るものであれば、特に制限されず、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1、3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族多価アミンや、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、キシレンジアミン等の芳香族多価アミンや、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式多価アミン等が挙げられ、これらを単独でまたは複数使用することができる。
【0047】
本発明の顔料分散組成物において、ポリウレタン樹脂付加顔料(A)は、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させてなる表面に未反応アミノ基を有する顔料から調製されてなるものである。
【0048】
表面に酸性基を有する顔料(I)と塩基性化合物(II)とを接触させる水性媒体としては、水であることが好ましく、水以外の水性媒体としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類など水溶性でアミンとの反応、イソシアネートとの反応が起きない溶媒が好ましい。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール系水性溶媒や、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられ、これらの水性媒体を2種以上混合してなるものであってもよい。ただし、アルコール性水酸基を有するグリコール系水性溶媒は、後述するポリウレタン樹脂(III)の末端イソシアネート基と反応する場合があることから、グリコール系水性媒体は、その使用量を抑制し、後述するポリウレタン樹脂との反応後に添加することが好ましい。
【0049】
ポリウレタン樹脂付加顔料(A)の構成材料となる、表面に未反応アミノ基を有する顔料は、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で、20〜60℃の温度下、0.5〜10時間攪拌することにより接触させ、反応させることにより調製することが好ましい。
【0050】
一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)の添加量は、該塩基性化合物(II)のアミノ基が、後述する末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)のイソシアネート基に対して0.1〜2当量比となるように(塩基性化合物(II)のアミノ基モル数/ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)のイソシアネート基モル数が0.1〜2になるように)反応させることが好ましい。上記当量比は 0.2〜1.8であることがより好ましい。
【0051】
表面に酸性基を有する顔料(I)に対して、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)を、水性媒体中で接触させることにより、上記顔料表面の酸性基にイオン的に引き寄せられ、塩基性化合物が顔料表面に近傍に存在する状態にして、表面に未反応アミノ基を有する顔料にすることができる。
【0052】
本発明の顔料分散組成物において、ポリウレタン樹脂付加顔料(A)は、上記表面に未反応アミノ基を有する顔料に対して、末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と接触させ尿素結合させることにより作製することができる。
【0053】
上記顔料表面のアミノ基とポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)のイソシアネート基は瞬時に反応して、尿素結合を形成する。このため、顔料表面においてポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の架橋、鎖伸長が起こり、顔料表面に対し化学的な結合や、物理的付着が生じ、表面がポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)で被覆されたポリウレタン樹脂付加顔料(A)を得ることができる。
【0054】
末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)としては、末端イソシアネート基が上記顔料表面に存在するアミノ基と尿素結合し得るものであれば特に制限されない。
【0055】
末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)としては、カーボンブラック表面のアミノ基と反応させるために、分子中に少なくとも水性媒体に分散しうる機能を有する官能基または分子鎖を有し、且つ2以上の水酸基を有する化合物とポリイソシアネート化合物とをウレタン結合させてなるポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0056】
分子中に水性媒体に分散しうる官能基または分子鎖を有する2以上の水酸基を有する化合物としては、最終段階でポリウレタン樹脂を水性媒体中に転相させる塩を形成し得る官能基を有するものが好ましく、具体的には、三級カルボキシル基含有ポリオール化合物を挙げることができる。
【0057】
三級カルボキシル基含有ポリオール化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシカルボン酸類を挙げることができ、これ等のうち、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジヒドロキシモノカルボン酸が好ましい。上記化合物が有する三級カルボキシル基はイソシアネート化合物との反応性が極めて低いことから、ウレタン結合反応を阻害することなく、目的とするポリウレタン樹脂を効率よく生成することができる。
【0058】
また、上述の三級カルボキシル基含有ポリオール化合物の配合量を制御することにより、得られるポリウレタン樹脂の酸価を制御することが可能であり、酸価を調整するためには、三級カルボキシル基含有ポリオール化合物以外に、更にノニオン性の分子鎖を有するジオール化合物を使用することが出来る。ノニオン性の分子鎖を有するジオール化合物としては、ポリエチレングリコールジオール(PEG)、或いはポリエチレングリコールジオール(PEG)とポリプロピレングリコールジオール(PPG)、ポリブチレングリコールジオール(PBG)との共重合ジオールに代表されるポリアルキレングリコールジオールを挙げることができる。
【0059】
三級カルボキシル基含有ポリオール化合物やノニオン性の分子鎖を有するジオール化合物とともに、分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオールを任意の割合で用いることもできる。
【0060】
分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオールとしては、マイケル付加等の反応により目的に応じた化学修飾を行った側鎖修飾ジオール等を用いることもでき、側鎖に種々の疎水基や親水基を導入することで、得られるポリウレタン樹脂(III)における親水性と疎水性のバランス設計を幅広く行うことができる。
【0061】
上記側鎖修飾ジオールは、ジアルカノールアミンと(メタ)アクリル酸誘導体との付加反応により合成することができる。マイケル付加等の反応は、ジアルカノールアミンとメタクリル酸誘導体との反応よりも低温で反応し反応性の高いアクリル酸誘導体との付加反応が制御しやすく好ましい。ジアルカノールアミンとしては、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の二級アミンのジヒドロキシアルキル置換体、(メタ)アクリル酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸置換芳香族エステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和二塩基酸またはその誘導体を挙げることができる。
【0062】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2―エチルヘキシル等が挙げられる。
【0063】
上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等が挙げられる。
【0064】
上記(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0065】
上記(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸フルオロメチル、(メタ)アクリル酸フルオロエチル等が挙げられる。
【0066】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル等が挙げられる。
【0067】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン等の核置換スチレン等が挙げられる。
【0068】
その他、(メタ)アクリル酸誘導体としては、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノアクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有するモノアクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族モノアクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキルエーテルアクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート等の二塩基酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエステル;モノ2−エチルヘキシルエーテルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、モノノニルフェニルエーテルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、モノ2−エチルヘキシルエーテルポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノノニルフェニルエーテルポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のモノアルキルエーテルポリオキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレンエーテル結合を有するモノアクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物等のヒドロキシル基を有するモノ(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の脂環エーテル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド等の含窒素モノアクリレート、ポリオキシエチレン燐酸エステルモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン燐酸エステルモノ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン燐酸エステルモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0069】
また分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8 −オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノールなどのジオール類あるいは高分子ポリオールを挙げることができる。
【0070】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルジオール等のポリエステルポリオールや、ポリカーボネートジオール、ポリラクトンジオール、ポリブタジエンジオールなどの高分子ジオールや、ポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、ロジン骨格または水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオールが挙げられる。高分子ポリオールの分子量は、数平均分子量で300〜5000の範囲のものが好ましく、数平均分子量で500〜3000のものがより好ましい。
【0071】
ポリエステルポリオールとしては、以下のポリオール、ポリオール同効成分のうちの1種または2種以上と、多塩基酸およびそれら無水物等のうちの1種または2種以上とが縮合反応することによって得られるものが挙げられる。
【0072】
ポリエステルポリオールの原料ポリオールとして例を挙げると、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8 −オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等を挙げることができる。
【0073】
ポリエステルポリオールの原料である、ポリオール同効成分としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテルおよびステアリルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類、並びにアルキルグリシジルエステル(製品名カージュラE10:シェルジャパン社製)等モノエポキシ化合物のうちの1種または2種以上が挙げられる。
【0074】
ポリエステルポリオールの原料である、多塩基酸およびそれらの無水物としては、琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸およびダイマー酸等の脂肪族二塩基酸並びにそれらの無水物、ドデセニル無水琥珀酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸および無水トリメリット酸等の芳香族多塩基酸並びにそれらの無水物、無水ヒドロフタル酸およびジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多塩基酸並びにそれらの無水物等が挙げられる。
【0075】
ポリラクトンジオールとしては、上記ポリオール、上記ポリエステルポリオールなどの水酸基末端化合物を出発物質としてε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのラクトン環を持つモノマーの開環付加重合によって得られるポリエステルポリオールもポリエステルポリオールの例として挙げられる。
【0076】
ポリカーボネートジオールとしては、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどのジオールを原料にしたポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0077】
ポリブタジエンジオールとしては、下記式:
【0078】
【化1】

【0079】
(ただし、k=0.2、l=0.2、m=0.6で、nは正の整数である。)で表されるポリブタジエンジオールPoly bdR−15HT、R−45HT(出光興産社製)や、ポリイソプレンジオールPoly ip(出光興産社製)や、下記式
【0080】
【化2】

【0081】
(式中、nは正の整数を示す。)
で表わされるα、ω―ポリブタジエングリコールG−1000、G−2000、G−3000(日本曹達社製)などが挙げられる。
【0082】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコールジオール(PEG)、ポリプロピレングリコールジオール(PPG)、ポリブチレングリコールジオール(PBG) に代表されるポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどを出発物質として、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0083】
ロジン骨格または水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオールとしては、パインクリスタルD−6011、D−6240(荒川化学工業社製)が挙げられる。
【0084】
一方、ポリイソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を2以上含有するものであれば特に限定されない。目的に応じてジイソシアネート化合物或いはイソシアネート基を3以上含有するポリイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0085】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略記)、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(以下TDIと略記)、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと略記)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと略記)、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等、また、これらのイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基の一部をビューレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、オキサゾリドン、アミド、イミド、イソシアヌレート、ウレトジオン等に変性したものが挙げられる。これらは必要に応じて、単独または2種以上を併用することができる。
【0086】
末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)のイソシアネート基は、水に分散した顔料(I)の表面にあるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)と反応する際に、水とアミノ基との競争反応になる。ジイソシアネート化合物としては、MDIやTDI等の芳香族系ジイソシアネート化合物のイソシアネート基よりも水との反応速度が遅い非芳香族系ジイソシアネート化合物が好ましく、特にIPDI、水添MDIに代表される肪環族ジイソシアネート化合物或いは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに代表される脂肪族ジイソシアネートを分子末端に用いることで、アミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の反応を優先させることができる。さらにはこのときの反応温度を50℃以下、好ましくは25〜40℃以内にすることでさらに反応速度差が生じ、塩基性化合物(II)とポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の反応を優先させることができる。
【0087】
上記分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオール化合物とジイソシアネート化合物、ポリイソシアネートとをウレタン結合させて末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)を調製するためには、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物における水酸基の当量数に対してジイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量数が2当量以上多い配合比(分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物としてジオール化合物を用いる場合には、ジイソシアネート化合物のモル数が1モル多い配合比)にすることにより、両末端にイソシアネート基が存在するポリウレタン樹脂を得ることができる。また、多段階的にイソシアネート末端オリゴマーを合成して分子量を上げていく方法も、精度良くイソシアネート末端のポリマーを得ることができ、分子量分布のばらつきの少ないポリウレタン樹脂が得られるため有用である。
【0088】
上記ポリウレタン樹脂を得るためには、分子中に2個の水酸基を有する化合物とジイソシアネート化合物との反応を例にとると、有機溶媒中で、ジオールの全モル数nの時、ジイソシアネートの全モル数(n+1)となるように反応することによって末端イソシアネート基のポリウレタンが合成できる。
【0089】
ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)は、水に分散する機能を与えるために、固形分酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、25〜150mgKOH/gであることがより好ましく、30〜120mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0090】
上記酸価は、三級カルボキシル基含有ジオール化合物のモル数を調整することによって調整することができる。
【0091】
なお、本出願において、分子中に水性媒体に分散しうる官能基または分子鎖を含みかつ2個以上の水酸基を有する化合物として三級カルボキシル基含有ジオール化合物を用い、ポリイソシアネート化合物としてジイソシアネート化合物を用いたときの、ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の酸価(AN)は、以下の式によって算出される。
【0092】
【数1】

【0093】
(ただし、上式において、a1:ジメチロールプロピオン酸などの三級カルボキシル基含有ジオール化合物のモル数、A1:ジメチロールプロピオン酸などの三級カルボキシル基含有ジオール化合物の分子量、a2、a3・・・an:その他のジオールのモル数、A2、A3・・・An:その他のジオールの分子量、b1,b2,b3・・・bn:ジイソシアネートのモル数、B1,B2,B3・・・Bn: ジイソシアネートの分子量である。)
【0094】
また、上記ポリオール類としてジオール化合物を用い、ポリイソシアネート化合物としてジイソシアネート化合物を用いたときの、ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の数平均分子量は、次式により算出、調整することができる。
【0095】
数平均分子量=nA’+(n+1)B’
(ただし、上式において、n:ポリオール類の全モル数、A’:ポリオール類の数平均分子量、B’:ジイソシアネートの数平均分子量である。)
【0096】
このようにして得られたポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)は、上記式によって算出された数平均分子量が、1000〜15000であることが好ましく、1300〜10000であることがより好ましく、1600〜8000であることがさらに好ましい。また、ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)は、水に分散する機能を与えるために、固形分酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、25〜150mgKOH/gであることがより好ましく、30〜120mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0097】
上記ポリオール類として、二官能を超えるポリオール、ポリイソシアネート化合物を用いてポリウレタン樹脂を調製するときは、P.J フローリーのゲル化式などを参考にそのモル分率を調整しゲル化を防ぐ様工夫することが望ましい。
【0098】
ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)を得る場合、上記ポリオール類とポリイソシアネート化合物との反応温度は、副反応を押さえる意味から60〜80℃が望ましく、無溶媒、或いは酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトニトリルなどの通常ウレタン反応に用いられる公知、任意の有機溶媒を用いて反応することができる。ウレタン反応触媒は三級アミン系触媒、ジブチル錫ラウリレート、オクチル酸第一錫などの公知任意の触媒が使える。無触媒でも反応することが出来る。
【0099】
末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂が三級カルボキシル基含有ポリオール化合物等から構成されてなるものである場合は、ポリウレタン樹脂を水性媒体液中に転相する際に、適宜、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N−メチルモルホリン、トリブチルアミン、N-メチルピラジン、メチルイミダゾール等の三級アミンを添加することが好ましい。
【0100】
ポリウレタン樹脂付加顔料(A)を作製するために、表面に未反応アミノ基を有する顔料と末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と接触させ尿素反応させる際、表面に未反応アミノ基を有する顔料100質量部に対して、ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)を2〜200質量部添加することが好ましく、10〜100質量部添加することがより好ましい。上記添加量が2質量部より少ない場合は画像濃度の向上効果が得られず、また80質量部を超える場合は、ポリウレタン樹脂が過剰になって、画像濃度や保存安定性の低下を引き起こす。
【0101】
ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)のイソシアネート基が、表面に未反応アミノ基を有する顔料と反応する際、反応温度は50℃以下が好ましく、25〜40℃がより好ましい。反応温度を上記範囲内にすることで反応速度差を生じ、顔料表面に存在する未反応アミノ基とポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の反応を、副反応であるポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と水溶媒との反応に優先させることができる。
【0102】
このようにして、顔料表面の未反応アミノ基とポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基とを反応させ、尿素結合を形成することにより、顔料表面に分散剤としての効果を発揮するポリウレタン樹脂を物理的、化学的に結合することができる。
【0103】
一般に、自己分散型顔料、即ち表面に酸性基を有する顔料(I)は対イオンによって中和されるとイオンの反発によって顔料粒子が分散し、表面にポリマーを付加した場合にはその保存安定性を高めることができるが、顔料表面の酸性基の濃度が低い場合には、分散安定性を欠くことになる。これに対して、本発明で用いるポリウレタン樹脂付加顔料(A)は、特に顔料(I)表面の酸性基濃度が低い場合であっても、表面に末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)を尿素結合により付加していることにより優れた分散性と分散安定性を発揮することができる。
【0104】
本発明の顔料分散組成物は、固形分換算したときに、ポリウレタン樹脂付加顔料(A)を5〜150質量%含むものであることが好ましく、6〜120質量%含むものであることがより好ましく、7〜100質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0105】
本発明の顔料分散組成物は、平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)を含む。
水性分散樹脂(B)としては、分子中に陰イオン基またはノニオン基を有する自己分散型水性分散樹脂であるか、または陰イオン乳化剤およびまたはノニオン乳化剤により分散されてなる乳化剤分散型水性分散樹脂であることが好ましい。
水性分散樹脂(B)としては、例えば、樹脂分子鎖中にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの陰イオンを有しその一部または全部を対イオンで中和した自己分散型水性分散樹脂や、ポリオキシエチレンエーテル鎖などのノニオン型親水基を側鎖、主鎖に有する樹脂などを水に分散した自己分散型水性分散樹脂や、陰イオン乳化剤およびまたはノニオン乳化剤により水に分散した乳化剤分散型水性分散樹脂や、分子中に陰イオンまたはノニオン基を有し、且つ乳化剤分散して得られる乳化剤分散型水性分散樹脂等を挙げることができる。
水性分散樹脂(B)としては、水等の水性媒体に分散したものが好ましく、水性媒体としては上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0106】
水性分散樹脂(B)としては、より詳細には、アクリルエマルション、ラテックス、水性樹脂等の自己乳化、自己分散性を有する重合系水分散樹脂や、これ等の樹脂を構成するモノマーを乳化剤で乳化ないしは分散して粒子を形成し該粒子内で重合して得られる重合系水分散樹脂を挙げることができる。
また、エポキシエステル樹脂、ビニル変性エポキシ樹脂、高酸価アルキッド樹脂、ビニル変性水性アルキッド樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリウレタン樹脂等の自己分散、自己乳化型の樹脂や、これらの樹脂を乳化剤として用いて粒子を形成し、該粒子内で異種のモノマーを重合して得られるコアシェル型のものを挙げることができる。
【0107】
重合系水分散樹脂としては、クロトン酸、イタコン酸.フマル酸、マレイン酸などの不飽和基を持つ酸、およびそのエステル、スチレン、酢酸ビニル、バーサティック酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンスルホン酸ソーダなどのビニル重合性モノマーの共重合により得られるものを挙げることができる。
エマルション型の重合系水分散樹脂としては、乳化剤中に上述した重合系水分散樹脂が含有されてなるものを挙げることができる。
【0108】
エポキシエステル樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基、水酸基に不飽和二重結合を有する脂肪酸を反応して得られたエポキシエステルに、酸無水物を反応して得られる、分子内にカルボキシル基を有するポリマーを対イオンで中和して得られるものを挙げることができる。
【0109】
ビニル変性エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基、水酸基に不飽和二重結合を有する脂肪酸を反応して得られたエポキシエステル樹脂の脂肪酸の不飽和二重結合に対して、ビニル重合性モノマーを共重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂を挙げることができる。
【0110】
高酸価アルキッド樹脂としては、多塩基酸と油脂のアシドリシスによって得られる多価カルボン酸化合物とモノアルコール、ジオール、ポリオールとの縮合反応物などから得られるものを挙げることができる。
【0111】
ビニル変性水性アルキッド樹脂としては、多価アルコールと油脂のアルコリシスによって得られる化合物と多塩基酸との縮合によって作製されてなるアルキッド樹脂の油脂成分中の不飽和二重結合に対して、上述した重合系水分散樹脂の原料となるビニル重合性モノマーを共重合させて得られるものを挙げることができる。
【0112】
水性ポリエステル樹脂としては、例えば、分子中に水酸基と三級のカルボキシル基を有するジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのジアルカノールアルカン酸をジオール成分の一部として二塩基酸と反応させてなるものを挙げることができる。
【0113】
水性ポリエステル樹脂は、親水基を導入するポリオキシエチレンエーテルグリコール、三級カルボキシル基含有ポリオール化合物やポリオール、ポリオール同効成分から選ばれる1種以上と、多塩基酸およびそれらの無水物等のうちの1種以上とを縮合反応することによっても得ることができ、酸が分子鎖に導入されたポリエステルは対イオンにより中和することができる。
【0114】
上記水性ポリエステル原料の三級カルボキシル基含有ポリオール化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシカルボン酸類を挙げることができ、これ等のうち、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジヒドロキシモノカルボン酸が好ましい。
【0115】
前記水性ポリエステルの原料となるポリオールの例を挙げると、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8 −オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等を挙げることができる。
【0116】
ポリエステルの原料となるポリオール同効成分としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテルおよびステアリルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類、並びにアルキルグリシジルエステル(製品名カージュラE10:シェルジャパン社製)等モノエポキシ化合物のうちの1種または2種以上が挙げられる。
【0117】
上記水性ポリエステルの原料となる多塩基酸およびそれらの無水物としては、琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸およびダイマー酸等の脂肪族二塩基酸並びにそれらの無水物、ドデセニル無水琥珀酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸および無水トリメリット酸等の芳香族多塩基酸並びにそれらの無水物、無水ヒドロフタル酸およびジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多塩基酸並びにそれらの無水物等が挙げられる。
【0118】
水性分散樹脂(B)として用いられる乳化剤分散型水性分散樹脂としては、樹脂モノマーを乳化剤で乳化ないしは分散して粒子を形成しその粒子内にて重合して得られるエマルション型の重合系水分散樹脂や、上記自己分散型、自己乳化型と称される樹脂を乳化剤にして粒子内で異種のポリマーを重合、形成するコアシェル型エマルションなどを挙げることができる。
上記乳化剤としては、陰イオン乳化剤およびノニオン乳化剤から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0119】
本発明の顔料分散組成物において、水性分散樹脂(B)の平均粒子径は10〜300nmであり、20〜250nmであることが好ましく、30〜200nmであることがさらに好ましい。
【0120】
なお、本出願書類において、水性分散樹脂(B)の体積平均粒径は、動的光散乱式粒度分布測定装置により測定された、50%モード径(体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(平均粒径D50))を意味する。
【0121】
本発明の顔料分散組成物は、ポリウレタン樹脂付加顔料(A)とともに水性分散樹脂(B)を含むことにより、耐擦過性、耐マーカー性などの塗膜性能を向上させることができる。
【0122】
本発明の顔料分散組成物は、固形分換算で、水性分散樹脂(B)を1〜80質量%含むことが好ましく、3〜65質量%含むことがより好ましく、5〜50質量%含むことがさらに好ましい。
【0123】
本発明の顔料分散組成物は、ポリウレタン樹脂付加顔料(A)および水性分散樹脂(B)とともに、公知任意の保湿剤、防腐剤、乳化剤、PH調整剤、消泡剤、塗膜表面平滑剤等の添加剤、水溶性樹脂、水に分散したワックス、樹脂エマルションなどを含んでもよい。
【0124】
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、などのポリオキシアルキレンエーテルグリコール或いはポリオキシアルキレンエーテルグリコールのモノアルキルエーテル、ジアルキルエーテル等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0125】
本発明の顔料分散組成物は、例えば、攪拌容器中に、攪拌しながら、ポリウレタン樹脂付加顔料(A)および水性分散樹脂(B)を加えつつ、さらに公知任意の保湿剤、防腐剤、乳化剤、PH調整剤、消泡剤、塗膜表面平滑剤等の添加剤、水溶性樹脂、水に分散したワックス、樹脂エマルションなどを添加して、攪拌し、必要に応じて水、水溶性有機溶媒で粘度を調整して、公知任意の濾過方法により濾過することにより製造することができる。
【0126】
本発明の顔料水分散組成物において、顔料濃度、即ち組成物中における顔料(I)の質量割合は、顔料の種類や顔料分散組成物の使用目的に応じて適宜選択することができ、通常は2〜25質量%であり、カーボンブラック顔料を用いたインクジェットインク組成物として用いる場合には、2〜15質量%とすることができる。
【0127】
次に、本発明のインクジェットインキ組成物について説明する。
本発明のインクジェットインキ組成物は、本発明の顔料分散組成物からなることを特徴とする。
本発明のインクジェットインキ組成物は、その用途がインクジェットインキ用途に限定されることを除けば本発明の顔料分散組成物と同様であり、その詳細については上述した内容と同様である。
【0128】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0129】
以下に本発明の内容を具体的な例を挙げて説明する。ただし、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0130】
(低酸化カーボンブラック顔料Aの作製)
窒素吸着比表面積が170m/g、DBP吸収量が115cm/100gであるカーボンブラックaを100gと、該カーボンブラック単位表面積当たり0 . 1 0mmol/m 反応するように下記式1により秤量したペルオキソ二硫酸ナトリウム( Na)を純水に溶解し3d m とした水溶液とを、反応容器中に添加し、反応温度60℃ 、反応時間10時間、攪拌速度0 .12s− 1 で酸化処理した。
次いで、上記酸化処理したカーボンブラックを濾別し、純水中に分散させて水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和後、カーボンブラックのスラリーを遠心分離器(日立工機製CR22F)で回転数7.5×10−3−1にて15分間処理した。その後、得られた上澄み液から、限外濾過膜(旭化成(株)製、AHP−1010 、分画分子量50000〕により残存する塩を分離精製し、さらにカーボンブラック分散濃度が20質量%となるように水分を除去して、低酸化カーボンブラックAの水分散体を得た。
(式1)ペルオキソ二硫酸ナトリウムの必要量(mg)=ペルオキソ二硫酸ナトリウムのカーボンブラックの単位面積当たりの必要モル数(mmol/m)×カーボンブラックの比表面積(m/g)×カーボンブラック量(g)×ペルオキソ二硫酸ナトリウムの当量(238 .1g/mol)に従って計算する。
例えば、100gのカーボンブラックaを処理するために必要なペルオキソ二硫酸ナトリウムの質量は、0.10(mmol/m)×170(m/g)×100(g)×238.1(g/mol)=404770(mg)= 404.77(g)となる。
【0131】
(ポリマー付加カーボンブラック顔料分散体1の調製)
(1)側鎖ジオールの合成
撹拌棒、乾燥窒素吹き込み管、冷却管付きのフラスコにN,N’−ジエタノールアミン190部に対して、共栄社化学製ライトアクリレートNP−4EA(ノニルフェニルテトラエチレンエーテルグリコールアクリレート)を810質量部仕込み、80℃で7時間反応後、分子側鎖にノニルフェニル鎖を有するジオール(以下、ジオールLKG−1という)を得た。反応物の三級アミン価/全アミン価の商は0.98以上であった。
【0132】
(2)イソシアネート末端水性ポリウレタンの合成
撹拌棒、窒素ガス吹き込み管、玉入れ冷却管付きのフラスコ中に、メチルエチルケトン(MEK)400質量部に対して、ジメチロールブタン酸を60.4質量部[2.6モル比]、ひまし油変性ジオールHS−2G−160R(豊国製油製)を96.1質量部[0.8モル比]、クラレポリエステルジオールP−2050(数平均分子量2066、株式会社クラレ製)を129.7質量部[0.4モル比]、上記(1)で得たジオールLKG−1を104.5質量部[1.2モル比]、イソホロンジイソシアネートを209.3質量部[6モル比]を加えて、65℃にて7時間反応させた。このときの反応溶液のイソシアネート基の質量%は1.35質量%、固形分酸価は38mgKOH/gであった。
上記反応後、35℃まで冷却して、さらにトリエチルアミンを41.2質量部加えて30分間攪拌することにより、不揮発分58質量%、ガードナー気泡粘度:J−K、GPC数平均分子量1790、重量平均分子量5550、NCO基のモル数に対するOH基のモル数の比(OH基のモル数/NCO基のモル数)が5/6のイソシアネート末端水性ポリウレタン(以下、ポリウレタン樹脂1という)を得た。
【0133】
(3)ポリマー付加水性顔料分散体の調製
顔料(I)として、表面に酸性基を有するカーボンブラックであるAquaBlack(登録商標)162(東海カーボン社製、固形分濃度19.2質量%、カルボキシル基当量:800マイクロモル/g)1kgに対し、塩基性化合物(II)としてピペラジン・6HO (Mw=194)の5%水溶液を41.3g添加し、常温で30分攪拌後、ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)として上記(2)で得たポリウレタン樹脂1(固形分58.0重量%) を66.2g加え、常温で3時間攪拌し、更に40℃で1時間撹拌した。その後、減圧蒸留して反応溶媒(MEK)を溜去することにより、不揮発分24%のポリマー付加水性顔料分散体(以下、ポリマー付加カーボンブラック顔料分散体1という)を得た。得られたポリマー付加水性顔料分散体1において、ポリウレタン樹脂1に対する表面に酸性基を有するカーボンブラックの質量比(カーボンブラック/ポリウレタン樹脂)は、固形分換算で100/20であった。
【0134】
(ポリマー付加カーボンブラック顔料分散体2の調製)
(1)イソシアネート末端水性ポリウレタンの合成
撹拌棒、窒素ガス吹き込み管、玉入れ冷却管付きのフラスコにメチルエチルケトン(MEK)200質量部に対して、ジメチロールプロピオン酸を65質量部 [2.8モル比]、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製ディスモジュール)を203質量部[5.3モル比]加えて、65℃で6時間反応させた。
更に、ひまし油変性ジオールHS−2G−150(豊国製油社製 、数平均分子量765.3)66質量部 [0.5モル比]、クラレポリエステルジオールP−2050(数平均分子量2066、株式会社クラレ社製)を178質量部 [0.5モル比]、ポリエチレンエーテルグリコール#1000(日本油脂社製、 数平均分子量1002)88質量部[0.5モル比]、MEK200質量部を加えて65℃にて3時間反応させた。このときの反応溶液のイソシアネート基の質量%は1.45質量%、固形分酸価は45mgKOH/gであった。
上記反応後、35℃まで冷却して、N−メチルモロホリンを39.1質量部を加えて30分間攪拌することにより、不揮発分60.2質量%、ガードナー気泡粘度:T−U、GPC数平均分子量3400、重量平均分子量7800、NCO基のモル数に対するOH基のモル数の比(OH基のモル数/NCO基のモル数)が4.3/5.3のイソシアネート末端水性ポリウレタン(以下、ポリウレタン樹脂2という)を得た。
【0135】
(2)ポリマー付加水性顔料分散体の調製
顔料(I)として、表面に酸性基を有するカーボンブラックであるAquaBlack(登録商標)162の酸化度を下げた低酸化カーボンブラックAの水分散体(固形分濃度20.0質量%、カルボキシル基当量:600マイクロモル/g)1kgに対し、塩基性化合物(II)としてピペラジン・6HO (Mw=194)の5%水溶液を55.6g添加し、常温で30分攪拌後、ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)として上記(1)で得たポリウレタン樹脂2(固形分60.2質量%) を83.1g(固形分50g)を加え、常温で3時間攪拌後、更に40℃1時間撹拌した。その後、減圧蒸留して反応溶媒(MEK)を溜去することにより、不揮発分25%のポリマー付加水性顔料水分散体(以下、ポリマー付加カーボンブラック顔料分散体2という)を得た。
得られたポリマー付加カーボンブラック顔料分散体2において、ポリウレタン樹脂2に対する表面に酸性基を有するカーボンブラックの質量比(カーボンブラック/ポリウレタン樹脂)は、固形分換算で100/25であった。
【0136】
(実施例1〜実施例6)
ポリウレタン樹脂付加顔料(A)として、上記ポリマー付加カーボンブラック顔料分散体1およびポリマー付加カーボンブラック顔料分散体2を用いるとともに、水性分散樹脂(B)として、AE−986B(JSR社製、自己分散型アクリルエマルション;平均粒子径55nm)、ハイドランAP−40F(DIC社製、ポリウレタン樹脂ディスパージョン;平均粒子径20nm)、ポリマロン E100(荒川化学工業製、ロジン変性スチレンマレイン酸樹脂ディスパージョン;平均粒子径100nm)、
ボンコートDV−961(DIC社製、シリカ-アクリル樹脂エマルション;平均粒子径130nm)を用い、表1に示す配合比になるように攪拌容器中に攪拌しつつ投入し、さらに、グリセリン、界面活性剤(日信化学社製サーフィノール104E)、アミン化合物(トリエタノールアミン)、イオン交換水を表1に示す組成となるように添加し攪拌して各顔料分散組成物を作製した。
実施例1〜実施例4で得られた顔料分散組成物においては、ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と水性分散樹脂(B)との合計量に対する顔料(I)の質量比(顔料(I)の質量/ポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と水性分散樹脂(B)の質量の総和)がいずれも100/40であり、実施例5〜実施例6で得られた顔料分散組成物においては、上記質量比がいずれも100/45であった。
【0137】
【表1】

【0138】
(比較例1〜比較例6)
顔料分散体として、上記ポリマー付加カーボンブラック顔料分散体1およびポリマー付加カーボンブラック顔料分散体2の調製に用いたAquaBlack(登録商標)162(東海カーボン社製、固形分濃度19.2質量%、カルボキシル基当量:800マイクロモル/g)と、AquaBlack(登録商標)162の酸化度を下げた低酸化カーボンブラックAの水分散体(固形分濃度20.1質量%、カルボキシル基当量:600マイクロモル/g)を用い、水性分散樹脂として、上記AE−986B、ハイドランAP−40F、ポリマロン E100、ボンコートDV−961を用い、表2に示す配合比になるように攪拌容器中に攪拌しつつ投入し、さらに、グリセリン、界面活性剤(日信化学社製サーフィノール104E)、アミン化合物(トリエタノールアミン)、イオン交換水を表2に示す組成となるように添加し攪拌して各顔料分散組成物を作製した。
比較例1および比較例2で得られた顔料分散組成物においては、水性分散樹脂量に対する顔料の質量比(顔料の質量/水性分散樹脂の質量)がいずれも100/40であり、比較例3および比較例4得られた顔料分散組成物においては、上記質量比がいずれも100/20であった。
【0139】
【表2】

【0140】
<画像濃度評価>
実施例1〜実施例6および比較例1〜比較例5で得た各顔料分散組成物に対してイオン交換水を加え、顔料濃度でそれぞれ15質量%になるように調製して、インクジェットインキ組成物とした。
得られたインクジェットインキ組成物を、各々インクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターEM−930C(セイコーエプソン社製)で印字を行い、普通紙画像サンプルを反射型光学色濃度計(日本平版機材社X-Rite Inc.製 X−Rite 504)で測定したO.D.平均値を下記基準で評価することにより、画像濃度評価を行った。結果を表3および表4に示す。
○:O.D.値:1.4以上
△:O.D.値:1.3以上1.4未満
×:O.D.値:1.3未満
【0141】
<保存安定性評価>
上記15質量%に濃度調整したインクジェットインキ組成物を密閉式ガラス瓶に入れ、インキュベーターにおいて70℃で3〜4週間保存して、試験前後における粘度(mPa・s)および粒径(nm)をそれぞれ測定し、以下の基準により、保存安定性評価を行った。結果を表3および表4に示す。
◎:4周間経過時まで変化率が−5%〜+5%の範囲内にある。
○ :3周間経過時まで変化率が−5%〜+5%の範囲内にある。
△: 3周間経過時の変化率が−5%〜+5%の範囲外にあるが、−10%〜+10%の範囲内にある。
× : 3周間経過時の変化率が−10%〜+10%の範囲外にある。
【0142】
<再溶解性>
上記15質量%に濃度調製したインクジェットインキ組成物をテフロン(登録商標)シート上に一滴落とし、インキュベーターにより50℃で1時間乾燥後、イオン交換水で洗い流し、滴下したインキの痕跡が残るかどうか目視観察して、以下の基準により、再溶解性を評価した。同評価を各インクジェットインキ組成物についてそれぞれ4回行い、繰り返し性を確認した結果を表3および表4に示す。
○:痕跡が見えない
△:痕跡の輪が0%を超え30%以下残る。
×:痕跡の輪が70%以上残る。
【0143】
<耐マーカー性>
上記15質量%に濃度調製したインクジェットインキ組成物をインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターEM−930C(セイコーエプソン社製)で普通紙上に印字した後、普通紙印字部の文字上をコクヨ社ラインマーカーペン(PM−LM103Y)で線を描き、以下の基準により耐マーカー性を評価した。結果を表3および表4に示す。
○:印字部が汚れない。
△:印字部や文字の周りにわずかに汚れ、滲みが認められる。
×:印字部が滲み印字部以外が汚れる。
【0144】
【表3】

【0145】
【表4】

【0146】
表3および表4の結果より、実施例1〜実施例6で得られた顔料分散組成物は、
ポリウレタン樹脂付加顔料(A)と、平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)とを含むものであることにより、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するとともに、再溶解性および耐マーカー性に優れたものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明によれば、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するとともに、再溶解性、耐マーカー性および耐擦過性に優れた顔料分散組成物およびインクジェットインキ組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)と接触させ尿素結合させてなるポリウレタン樹脂付加顔料(A)の水性分散体と、
平均粒子径が10〜300nmである水性分散樹脂(B)とを含む
ことを特徴とする顔料分散組成物。
【請求項2】
前記末端イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートポリウレタン樹脂(III)の固形分酸価が20〜200mgKOH/gである請求項1に記載の顔料分散組成物。
【請求項3】
前記水性分散樹脂(B)が、分子中に陰イオン基またはノニオン基を有する自己分散型水性分散樹脂であるか、または陰イオン乳化剤およびまたはノニオン乳化剤により分散されてなる乳化剤分散型水性分散樹脂である請求項1または請求項2に記載の顔料分散組成物。
【請求項4】
前記表面に酸性基を有する顔料(I)が、表面に酸性基を有する自己分散型カーボンブラックである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の顔料分散組成物からなることを特徴とするインクジェットインク組成物。

【公開番号】特開2011−202004(P2011−202004A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70112(P2010−70112)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【Fターム(参考)】