説明

顔料及び染料成分を有する高分子着色剤並びに対応するインク組成物

【課題】顔料着色剤では、顔料粒子を溶液中に分散させたまま時間が経つと沈降することがあるという制限や、彩度の制限があるため、種々の化学的及び物理的メカニズムで制限を最小限にしているところ、より優れた着色剤としての自己分散型染顔料を提供する。
【解決手段】共有結合したポリマーを有する顔料と、ポリマーに共有結合している染料と、顔料、ポリマー及び染料のうちの少なくとも1つに共有結合している分散剤とを含み、ポリマーに共有結合している染料が、染料及びポリマーに結合する反応剤を含む、高分子着色剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願の原出願は、2004年10月25日付けの米国仮特許出願第60/622,276号に優先権を主張するところの、2005年2月14日付けの一部継続出願第11/058,006号であり、これらの出願は、参照することでその全てをここに取り入れることとする。
【背景技術】
【0002】
着色剤は、多くの用途に広く用いられており、物品及び印刷画像に有用且つ審美的な外観をもたらす。通常の着色剤は、たいていの場合、顔料又は染料のどちらかに分類され得る。そのような着色剤を製造物品中に直接混合させることができるが、多くの場合、カラー画像印刷用として着色剤含有のインク組成物を調製することが望まれる。当該インク組成物は、典型的に、染料又は顔料を含有する適切な溶媒などの液体ビヒクルを含む。染料系インクは、一般的に、所与の液体ビヒクルに可溶性の着色剤を使用する。逆に、顔料カラーインクは、典型的に、カラーを得るために、不溶性の分散性固体着色剤を使用する。
【0003】
染料及び顔料着色剤は、それぞれ、特定の情況において有益であるところの特定の性質を有し、且つ印刷画像に所定のカラー特性を与えることができる。しかしながら、染料及び顔料着色剤の各々はまた、種々の制約や欠点も抱えており、固有の問題を呈する。詳細には、染料着色剤は、充分な彩度と溶液中での長期安定性を示す。しかしながら、染料着色剤はまた、耐水性、耐光性、及びスミア耐性が不充分となりがちである。対照的に、顔料着色剤は、典型的に、充分な耐水性、充分な耐光性、及び充分なスミア耐性を有する。あいにく、顔料着色剤はまた、制限された彩度や、顔料粒子を溶液中に分散したままにすることに関連する多数の問題を抱えがちである。従って、顔料インクの顔料粒子は、しばしば、時間が経つと沈降することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、任意の特定の用途に供される染料及び顔料着色剤の選択は、しばしば、これらの制約により制限され、種々の化学的及び物理的メカニズムを用いることで特定商品におけるこれらの制限を最小限にしている。従って、より優れた着色剤及びインク調合物を開発する研究が継続されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願のシステム及び方法の一態様では、高分子着色剤は、ポリマーがそこに共有結合している顔料、前記ポリマーに共有結合している染料、及び前記顔料、ポリマー及び染料のうちの少なくとも1つに共有結合している分散剤を含んで成り、ポリマーに共有結合している染料は、染料及びポリマーに結合している反応剤を含む。
【0006】
他の実施形態では、インクジェットインク組成物は、ポリマーがそこに共有結合している顔料、前記ポリマーに共有結合している染料、及び前記顔料、ポリマー及び染料のうちの少なくとも1つに共有結合している分散剤を含んで成る高分子着色剤を含み、ポリマーに共有結合している染料は、染料及びポリマーに結合している反応剤を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本システム及び方法の特定の実施形態を開示、説明するにあたり、本システム及び方法が、ここに開示する、ある程度変更し得る特定のプロセス及び材料に限定されないことを理解されたい。また、本システム及び方法の範囲は添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定される故、ここに用いられる用語は、特定の実施形態を専ら記述するだけの目的で用いるものであって、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0008】
本願の例示的なシステム及び方法を説明し且つ範囲請求する際には、以下の用語を用いることとする。
【0009】
別途明確に指示のない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の意味を包含する。従って、例えば、「染料」という場合、1つ又は複数の当該材料を指すことを包含する。
【0010】
本明細書並びに添付の特許請求の範囲において用いるとき、用語「液体ビヒクル」は、顔料をはじめとする着色剤を、基材へと運ぶのに用い得る液体組成物を含むものとして定義される。液体ビヒクルは当分野で周知であり、本願の例示的なシステム及び方法の実施形態に従って広範な液体ビヒクル成分を使用することができる。そのような液体ビヒクルは、限定はしないが、界面活性剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤、殺生物剤、粘度修正剤、金属イオン封止剤、安定化剤、及び水をはじめとする、様々な各種薬剤から成る混合物を含むことができる。液体ビヒクルはまた、本質的に液体ではないが、ポリマー、UV硬化性材料、可塑剤、共溶媒、塩などのようなその他の固形物を含有することもできる。
【0011】
ここで用いるとき、「顔料」は、それが使用される液体ビヒクルに実質的に不溶性であるところの着色剤粒子を指す。
【0012】
ここで用いるとき、「染料」は、それが使用される液体ビヒクルに実質的に可溶性であるところの着色剤化合物を指す。
【0013】
ここで用いるとき、「官能基化」は、化合物が共有結合によって化学結合している顔料粒子を指す。これは、化合物がイオン結合又はその他の比較的弱い分子間力により結合した顔料粒子とは対照をなすものである。
【0014】
ここで用いるとき、「ブリード」は、隣り合って印刷されたインク中へ進入し、それと混ざり合うインクの性向を指す。ブリードは、典型的に、基材上に隣り合って印刷されたインクが十分乾燥する以前に生ずる。ブリードの程度は、種々の因子の中でも、インクの乾燥速度、インクの化学作用、即ち、反応性又は非反応性ブリード制御メカニズムの有無、及び基材の種類のような多様な因子に依存する。
【0015】
ここで用いるとき、「耐水性」は、基材上に印刷後のインクが示す水への耐性の程度を指す。典型的に、この性質は、インクが乾燥した後で測定され、水分の存在下でのスミア若しくは位置移りするインクの傾向を評価するものである。
【0016】
ここで用いるとき、「彩度」は、ASTM(ASTM E284)で定義されるような、同一明度のグレーからの色の逸脱の程度を示すのに用いられるカラー特性を指す。また、明度に対する彩度の比(C/L)であるところの色の飽和度について言及する際に使用される。典型的に、染料着色剤は、同一の又は実質的に同一の色相を有する顔料着色剤よりも大きい飽和度を有する。
【0017】
ここで用いるとき、「ニュートラルグレー」は、実質的な色不変性、即ち、蛍光及び太陽光のような異なる光源下で観察する際にも色の見掛けが実質的に変化しないこと、を呈する色合いのグレーを指す。なお、非ニュートラルグレー色はまた、かすかな赤若しくは褐色の色合い又は見掛けを有する傾向がある。
【0018】
ここで用いるとき、インクセットに関していう用語「反応性」は、2つ以上のインクジェットインク間の化学反応を指す。そのような反応性インクセットは、塩メカニズム、pH差メカニズム、重合メカニズムによるか、又はその他の当業者に周知の反応性メカニズムによって相互作用することができる。
【0019】
ここで用いるとき、「自己分散型顔料」は、顔料表面に分散剤を化学結合又は誘引させるなどして、分散剤で官能基化された顔料を指す。分散剤は、小分子でも、高分子であってもよい。
【0020】
ここで用いるとき、「ポリマー分散型顔料」は、顔料にポリマーが結合しているか又はポリマーによって少なくとも部分的にカプセル化されている一種の自己分散型顔料を指す。ポリマーは、直に又は中間結合基を介して顔料表面に共有結合させるか、又は非共有的な分子間引力によって結合させることができる。
【0021】
確認された特性や情況に関してここで用いるとき、用語「実質的に同じ」は、確認された特性又は情況がそれほど損なわれないほどに十分小さい偏差の程度を容認するものである。許容される正確な偏差の度合は、幾つかの場合、特定の情況に依存する。従って、例えば、他の着色剤と「実質的に」同じ色を有する着色剤とは、目視検査時に、色、即ち、色相や他の関連した特性が知覚できないか又はほとんど知覚できない範囲内で異なることがある。勿論、その他の特性は相当に異なってもよい。例えば、ブラック顔料は、ブラック染料と実質的に同一の色及び色相を有し得るが、彩度、光学濃度、光沢、溶解度等は、互いに劇的に異なり得る。逆に、「実質的に異なる」特性の確認は、可視及び/又は測定できる程度の差異を示す。
【0022】
本書では、濃度、量、及びその他の数値データを範囲形式で提示する場合がある。そのような範囲形式は、単に便利且つ簡潔のために用いるものであって、範囲の限界として明記した数値を含むだけでなく、各数値及び副範囲が明記されているかのようにその範囲内に包含される個別の数値又は副範囲を全て包含するものと柔軟に解釈すべきことを理解されたい。例えば、約1wt%〜約20wt%という重量範囲は、1wt%〜約20wt%という明記された濃度限界を含むだけではなくて、2wt%、3wt%、4wt%のような個別の濃度、及び5wt%〜15wt%、10wt%〜20wt%、等のような副範囲を含むものと解釈すべきである。
【0023】
以下の説明では、説明目的で、顔料を含み且つポリマーがそこに共有結合されている高分子着色剤を製造するための本システム及び方法についての十分な理解を与えるべく、多数の具体的仕様を説明する。本方法が、これらの具体的な仕様なしでも実施可能であることは、当業者に明らかであろう。明細書において「一実施形態」又は「実施形態」という場合、その実施形態と関連して記述する特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な場所に出てくる「一実施形態では」という語句は、必ずしも全て同一の実施形態を意味するものではない。
【0024】
本システム及び方法によれば、高分子着色剤は、ポリマーがそこに共有結合している顔料を含むことができる。さらに、エステル化により又は染料を重合可能基で誘導体化することにより、そのポリマーに染料を共有結合させることができる。顔料、ポリマー、及び/又は染料の少なくとも1つに分散剤を共有結合させることで、液体ビヒクル中の高分子着色剤に分散安定性を与えることができる。顔料及び染料の両成分を含めることによって、当該高分子着色剤は、それぞれの諸性質から利益を得ることができる。染料及び顔料の成分は、所望の見掛けに応じて、実質的に同じ色とすることも、又は異なるとすることもできる。本例のシステム及び方法に関する高分子着色剤は、インクジェット組成物へ含有させることに充分適しているが、その他の多くの用途もまた本高分子着色剤に適していると考えられる。
【0025】
あるいはまた、インクジェットインク組成物は、液体ビヒクル、ポリマー結合型染料、及び顔料を含むことができる。ポリマー結合型染料は、ポリマーが共有結合している染料を含むことができ、当該染料は第1のカラーを有する。さらに、顔料は、第1のカラーとは色相が実質的に異なる第2のカラーを有し得る。この代替的な態様では、顔料は、自己分散型でも、ポリマー分散型でも、又はポリマーに共有結合させることができる。
【0026】
高分子着色剤
本例のシステム及び方法に関する高分子着色剤は、ここに開示する原理に従って染料及び/又は顔料に共有結合させ得る広範なポリマーを含むことができる。無水物、カルボン酸、スルホン酸、ビニルスルホン、アミン、アルコール、チオール等のような反応基を含有するポリマーは、適切なポリマーの適例である。使用し得る具体的ポリマーの非限定例としては、無水マレイン酸コポリマー、アクリルコポリマー、メタクリルコポリマー、アミン若しくはアルコール含有コポリマー、及びそれらの組合せが挙げられる。一態様においては、当該ポリマーは、染料の反応基と反応し得るよう構成された無水物基を含むことができる。別の態様では、当該ポリマーは、染料の結合部位として機能し得るカルボン酸基、並びに任意選択の付加基、例えば、結合基、耐光性向上基、分散剤等を含むことができる。さらに、適例となるポリマーの詳細を以下に与える。
【0027】
一態様では、適切なポリマーとして、限定はしないが、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、ビニルピロリドン−無水マレイン酸コポリマー、スチレンアクリル酸コポリマー、スチレンメタクリル酸コポリマー、4−ビニルアニリン−アクリル酸コポリマー、4−ビニルアニリン−メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組合せを挙げることができる。
【0028】
本例のシステム及び方法の一態様では、当該ポリマーは、限定はしないが、スチレン−無水マレイン酸コポリマー(SMA)やメチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマーなどの無水マレイン酸コポリマーとし得る。その他の具体的ポリマーとしては、スチレン−アクリル酸、ポリエチレンイミン/無水フタル酸、ポリエチレンイミン/無水コハク酸フェニル、ポリエチレンイミン/無水コハク酸、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリ尿素、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリピロリドン、エポキシ、ポリエステル、多糖、ポリペプチド、セルロース、ポリコート(polyquat)、ポリアミン、及びそれらのコポリマーを挙げることができる。さらに、スルホン酸、フッ素酸、及びα−及び/又はβ−フルオロカルボン酸を含有するものなどの、中性付近のpHで顔料を分散させ得るポリマー類がある。そのようなポリマーの幾つかの具体例として、スチレン−ビニルスルホン酸コポリマー、スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸−ビニルスルホン酸コポリマー、スチレン−トリフルオロアクリル酸−ビニルスルホン酸コポリマー、スチレン−α−(トリフルオロメチル)アクリル酸−ビニルスルホン酸コポリマー、スチレン−トリフルオロアクリル酸コポリマー等を挙げることができる。
【0029】
染料の結合
本例のシステムや方法に関する高分子着色剤は、ポリマーに共有結合した染料を含むことができる。一態様において、当該染料は、顔料への結合前に、結合後に、又は結合と同時に、ポリマーに共有結合させることができる。適切な染料は、特定のポリマーと反応して結合を形成し、ポリマー−染料着色剤を形成し得る活性基を有することができる。多数の染料がこの目的に適合し得る。特に、ヒドロキシ、アミン、カルボン酸、スルホン酸、チオール、ハロゲン化アルキル、ハロトリアジン、マレイミド及びビニルスルホン、並びにそれらの組合せのような活性基を有する染料が、適切なポリマーと共有結合を容易に形成することができる。あるいは、カルボキシ、スルホニル等のような活性基を有する染料は、アミン基若しくはアルコール基を有するポリマーと反応させることができる。従って、上述の反応基及び活性基は、特定の実施形態に応じて、染料又はポリマーのいずれかに存在させ得る。染料及びポリマーはまた、上述の基のどれかに容易に変換され、そのような変換後に染料とポリマーを結合し得る他の官能基を含むこともできる。当業者は、種々の結合反応、並びに多様な染料やポリマーと結合させるべく用い得る関連する反応基が理解されよう。
【0030】
特定の一態様では、脂肪族アミン活性基を有する染料を、無水物、カルボキシ、スルホニル、及び類似の基を有するポリマーに容易に結合させることができる。適切な染料の非限定例には、食用染料、FD&C染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、フタロシアニン染料、フタロシアニンスルホン酸の誘導体、及びそれらの組合せを含むことができる。適切な染料の幾つかの具体例としては、決して限定はしないが、C.I.Acid Red 440、C.I.Reactive Red 3、C.I.Reactive Red 13、C.I.Reactive Red 23、C.I.Reactive Red 24、C.I.Reactive Red 33、C.I.Reactive Red 43、C.I.Reactive Red 45、C.I.Reactive Red 120、C.I.Reactive Red 180、C.I.Reactive Red 194、C.I.Reactive Red 220、C.I.Reactive Violet 4、C.I.Reactive Blue 19、C.I.Reactive Blue 5、C.I.Reactive Blue 49、C.I.Reactive Yellow 2、C.I.Reactive Yellow 3、C.I.Reactive Black 39、及びそれらの組合せを挙げることができる。
【0031】
さらに、アルコール及び芳香族アミンなどの活性基を有する染料は、さほど求核性でない傾向がある。それ故、ポリマーへの当該染料の結合は、限定はしないが、ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等のような求核触媒を付加することによって促進し得る。さらに、ビニルスルホン基を有するもののような反応性染料は、例えば、当業者に周知のように、マイケル付加薬品を用いて、チオールのような染料結合基を介して結合させることができる。例えば、2−アミノエタンチオールは、無水物又はその他の反応性基を有するポリマーと反応させることができる。次いで、ナトリウム無水物の存在下で、チオール基を反応性染料と反応させてポリマー結合型染料着色剤を形成することができる。
【0032】
例示的な一実施形態によれば、カルボキシ基を有するポリマーと反応性染料分子とのエステル化を用いて、当該染料をポリマーに結合させることができる。より詳細には、下の反応1を参照して説明するように、カルボキシ基を含み且つ顔料分散用として用いられるポリマーには、決して限定はしないが、Joncryl(登録商標)アクリルポリマー及びそれらの類似物のようなスチレンアクリル酸コポリマーが含まれる。図示するように、当該染料は、決して限定はしないが、エチレンジアミンのようなアルコール反応部位を有する反応剤に結合させることができる。反応1の例示的反応によれば、染料は、ポリマーのカルボン酸とアルコールとの縮合反応によるエステル化を介して、カルボキシ基を有するスチレンアクリル酸コポリマーに共有結合される。
【0033】
【化3】

【0034】
上述の結合の代替形態を、下の反応2に図解する。図示するように、SMA、アミノエタンチオール(AET)、及びLRSCなどの染料誘導体が反応して合成複合体を形成する。図示するように、染料誘導体の1段階の修飾により、染料誘導体はSMAの第一反応部位に結合され、そしてアミノエタンチオール(AET)が第二反応部位に結合される。
【0035】
【化4】

【0036】
本例のシステム及び方法のさらに他の代替実施形態では、染料を、後で共重合させ得るモノマーに結合させて本システム及び方法によるポリマーを形成することもできる。上に開示したポリマーは、そのような実施形態に適合させることができる。例えば、メタクリレート官能基化染料は、スチレン、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等のようなモノマーと共重合させることができる。上述のメタクリレート官能基化染料の例は、米国特許出願第2004/0024100号にさらに詳しく説明されており、参照することでここに取り入れることとする。
【0037】
各ポリマー鎖に対する染料分子の結合の程度は、反応条件、ポリマー、及び染料に依存して変化し得る。しかしながら、一般的指針として、染料対ポリマー鎖の比は、ポリマー1グラム当りの染料分子のミリモルにて、約0.05mmol/g〜10mmol/g、多くの場合、約1mmol/g〜約5mmol/gの範囲とし得る。従って、顔料粒子当りの染料分子の数は、顔料1グラム当り染料分子約10μモル〜顔料1グラム当たり約100mモルであり、場合によっては、顔料1グラム当たり約0.05mモル染料〜顔料1グラム当たり約2mモルの範囲とし得る。
【0038】
例示的な一実施形態では、モノマーへの染料分子の結合は、染料誘導体の1段修飾によって実施することができる。この例示的実施形態によれば、所望の染料を重合可能基により誘導体化して得られるモノマーを、他の適切なモノマーと共重合させることができる。所望の染料の重合可能基による誘導体化は、反応3及び4を参照して以下に示す。下の反応3に示すように、Acid Red 52の染料誘導体である、キサンチリウム,9−[4−(クロロスルホニル)−2−スルホフェニル]−3,6−ビス(ジエチルアミノ)−、分子内塩(9Cl)とも称されるリサミンローダミンスルホニルクロリド、即ち、(LRSC)などの染料誘導体を、アダクトと組み合わせる。反応3に示す例示的実施形態によれば、当該アダクトは、決して限定はしないが、エチレンジアミンアダクトとし得る。
【0039】
【化5】

【0040】
同様に、反応4では、LRSCを2−アミノエチルメタクリレートと結合させることで、顔料に結合させ且つ分散させるのに用い得る他の反応性モノマーを形成することができる。
【0041】
【化6】

【0042】
染料誘導体とアダクトとの間の反応によって上述のモノマーが形成されると、それらは、決して限定はしないが、下の式1〜式3で表されるもの、又はスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ベンジルアクリレート、ブチルアクリレート等を含む、他のビニル含有モノマーと共重合させることができる。以下に示す例示的な式では、Rは、H又はメチル基のどちらかとし得る。
【0043】
【化7】

【0044】
共重合されると、生じたコポリマーは、後に詳述するように、顔料に結合させ且つ分散させるために用いることができる。例示的な一実施形態によれば、着色剤モノマーを他の適切なモノマーと共重合させることによって、シアン及びマゼンタの両発色団を含む高分子染料の調製が可能となる。従って、生じるポリマーの各着色剤モノマーは、シアン又はマゼンタ発色団のいずれかを含むことができ、他の発色団は他方の着色剤モノマーに含まれる。複数の染料発色団を含む高分子染料を作製し得ることによって、ニュートラルブラックインクの形成が可能となる。より詳細には、そのような高分子染料をフォトブラックインクに分散剤又はバインダーとして用いることで、ニュートラルブラックインクを得ることができる。
【0045】
さらに、染料結合モノマーを調製することで、他の種類のポリマーを合成することができる。例えば、下の反応5は、本例のシステム及び方法に従って、ポリウレタンを調製するのに適するモノマーの合成を図解するものである。
【0046】
【化8】

【0047】
上の反応5に示すように、当該モノマーをジイソシアナート、及びカルボン酸基を含む他のジオールと共重合させることで、顔料を分散させるのに用い得るポリウレタンを生成することができる。分散剤としての使用に加えて、当該高分子染料は、インク中のバインダーとして使用することもでき、それによって、耐水性の損失なしに彩度をさらに改善することができる。
【0048】
前述のように、当該ポリマーは、そこに共有結合している2種以上の染料を含むことができる。付加的な染料の結合は、第1染料の結合と同時に実施するか、又は後段で結合させることができる。さらに、付加的な染料は、第1染料と実質的に同じ色とし得る。そのような付加的な染料を用いることで、分散安定性、pH、耐光性、コスト、及び/又はその類のような多数の性質の何れかに影響することができる。任意に、付加的な染料(群)は、第1染料とは実質的に異なる色を有することができる。例えば、75度以上という色相角度差は、明らかに、実質的に異なる色を示すことになる。指針として、色相角度差は、レッドからイエロー、イエローからグリーン、及びグリーンからブルーまで、ほぼ90度である。
【0049】
顔料の結合
本例のシステムに関するポリマー及び方法を用いることで、通常知られている多くの顔料を共有結合させることができる。詳細には、各種顔料を、ポリマーに直接結合し得るか又は結合基を介してポリマーに結合し得る適切な化学成分により官能基化させることができる。顔料を官能基化する方法は、当業者に周知である。例えば、米国特許第5,554,739号、第5,707,432号、及び第5,851,280号、及び米国特許出願第2003/0195291号、第2003/0213410号、第2003/0217672号、及び第2004/0007152号は、多数の方法により顔料を官能基化する方法を開示しており、その各々は、参照することでその全てをここに取り入れることとする。
【0050】
前述のように、例示的な一実施形態によれば、結合基及び官能基によって、顔料は高分子着色剤に結合される。顔料に結合する一般的な結合基及び官能基の非限定例として、2−(4−アミノフェニル)スルホニルエタンスルホナート、ジアゾニウム塩の反応生成物、4−アミノベンジルアミン、4−アミノフェニルアラニン、及びその他の求核基を挙げることができる。任意選択的に、特定のポリマーを、官能基化された顔料に直に結合させることができる。例えば、アミノフェニル基を含むポリマーを、ジアゾ化の後で、顔料に直に結合させることも可能である。そのようなポリマーの一例は、スチレンモノマーの幾つかが4−アミノスチレン、即ち、4−ビニルアニリン、で置換されたスチレンアクリレートポリマーである。多くの場合、ポリマーに結合活性基を導入して、結合基がそこに結合するのを促進することが望ましい。例えば、ポリマーを2−アミノエタンチオールと反応させてチオール基を生成し、それを後で、2−(4−アミノフェニル)スルホニルエタンスルホナートで官能基化された顔料に結合させるために用いることができる。その他の結合活性基としては、決して限定はしないが、無水物、アミン等を挙げることができる。
【0051】
正確な比は、幾分変更し得るとはいえ、典型的には、顔料粒子対ポリマー鎖の重量比は、約10:1〜1:10とし得る。さらに、顔料に直にではなく、ポリマーに染料を結合させることによって、本システムのポリマー分散剤(共有結合されるか又はカプセル化するかのいずれか)、ポリマー−染料着色剤、及び/又は他の有用な添加物のために利用し得る顔料表面積を向上させることができる。従って、顔料粒子安定性のための分散剤を付与する能力を減じることなく、染料の量を増大させることができる。
【0052】
適切な顔料は、ブラック顔料、ホワイト顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料等とし得る。さらに、顔料は、当分野で周知のように、有機又は無機粒子とし得る。適切な無機顔料としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。しかしながら、酸化チタン、コバルトブルー(CoO−Al)、クロムイエロー(PbCrO)、及び酸化鉄などの他の無機顔料もまた適し得る。適切な有機顔料としては、例えば、ジアゾ顔料やモノアゾ顔料をはじめとするアゾ顔料、多環顔料(例えば、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンのようなフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴイド顔料、イソインドリノン顔料、ピラントロン顔料,及びキノフタロン顔料)、不溶性染料キレート(例えば、塩基性染料タイプのキレート及び酸性染料タイプのキレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料等が挙げられる。フタロシアニンブルーの代表例には、銅フタロシアニンブルー及びその誘導体(Pigment Blue 15)が含まれる。キナクリドンの代表的例には、Pigment Orange 48、Pigment Orange 49、Pigment Red 122、Pigment Red 192、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 209、Pigment Violet 19及びPigment Violet 42が含まれる。アントラキノンの代表的例には、Pigment Red 43、Pigment Red 194(Perinone Red)、Pigment Red 216(Brominated Pyranthrone Red)及びPigment Red 226(Pyranthrone Red)が含まれる。ペリレンの代表的例には、Pigment Red 123(Vermillion)、Pigment Red 149(Scarlet)、Pigment Red 179(Maroon)、Pigment Red 190(Red)、Pigment Violet 19、Pigment Red 189(Yellow Shade Red)及びPigment Red 224が含まれる。チオインジゴイドの代表的例には、Pigment Red 86、Pigment Red 87、Pigment Red 88、Pigment Red 181、Pigment Red 198、Pigment Violet 36、及びPigment Violet 38が含まれる。ヘテロ環イエローの代表的例には、Pigment Yellow 1、Pigment Yellow 3、Pigment Yellow 12、Pigment Yellow 13、Pigment Yellow 14、Pigment Yellow 17、Pigment Yellow 65、Pigment Yellow 73、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 117、Pigment Yellow 128及びPigment Yellow 138が包含される。上述の顔料は、バスフ社(BASF Corporation)、エンゲルハルド社(Engelhard Corporation)及びサンケミカル社(Sun Chemical Corporation)をはじめとする多数の発売元から粉末又は圧縮ケークの何れかの形態で市販されている。
【0053】
用い得るブラック顔料の例には、カーボン顔料が含まれる。カーボン顔料は、許容し得る光学濃度及び印刷特性をもたらす市販のほとんどのカーボン顔料とし得る。本システム及び方法における使用に適するカーボン顔料としては、限定はしないが、カーボンブラック、黒鉛、ガラス質炭素、木炭、及びそれらの組合せが挙げられる。そのようなカーボン顔料は、チャネル法、コンタクト法、ファーネス法、アセチレン法、又はサーマル法のような様々な既知の方法により製造することができ、カボット社(Cabot Corporation)、コロンビアケミカル社(Columbia Chemicals Company)、デグッサ社(Degussa AG)、及びデュポン社(E.I.DuPont de Nemours and Company)のような発売元から市販されている。適切なカーボンブラック顔料としては、限定はしないが、MONARCH 1400、MONARCH 1300、MONARCH 1100、MONARCH 1000、MONARCH 900、MONARCH 880、MONARCH 800、MONARCH 700、CAB−O−JET 200、及びCAB−O−JET 300、REGAL、BLACK PEARLS、ELFTEX、MOGUL、及びVULCAN顔料のようなカボット社の顔料;RAVEN 7000、RAVEN 5750、RAVEN 5250、RAVEN 5000、及びRAVEN 3500のようなコロンビア社の顔料;Color Black FW200、RAVEN FW2、RAVEN FW2V、RAVEN FW1、RAVEN FW18、RAVEN S160、RAVEN FW S170、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4、PRINTEX U、PRINTEX 140U、PRINTEX V、及びPRINTEX 140Vのようなデグッサ社の顔料;並びにデュポン社から入手できるTIPURE R−101がある。上記の顔料リストには、非修飾顔料粒子、小分子結合型顔料粒子、及びポリマー分散型顔料粒子が含まれる。
【0054】
同様に、広範なカラー顔料もまた本システム及び方法に用いることができ、それ故、以下のリストは限定しようとするものではない。例えば、カラー顔料は、ブルー、ブラウン、シアン、グリーン、ホワイト、バイオレット、マゼンタ、レッド、オレンジ、イエロー、並びにそれらの混合物とし得る。次のカラー顔料:CABO−JET250M、及びCABO−JET270Yは、カボット社から入手可能である。次のカラー顔料:PALIOGEN Orange、PALIOGEN Orange 3040、PALIOGEN Blue L 6470O、PALIOGEN Violet 5100、PALIOGEN Violet 5890、PALIOGEN Yellow 1520、PALIOGEN Yellow 1560、PALIOGEN Red 3871K、PALIOGEN Red 3340、HELIOGEN Blue L6901F、HELIOGEN Blue NBD 7010、HELIOGEN Blue K7090、HELIOGEN Blue L7101F、HELIOGEN Blue L6900、L7020、HELIOGEN Blue D6840、HELIOGEN Blue D7080、HELIOGEN Green L8730、HELIOGEN Green K8683、及びHELIOGEN Green L9140は、バスフ社から入手可能である。次の顔料:CHROMOPHTAL Yellow 3G、CHROMOPHTAL Yellow GR、CHROMOPHTAL Yellow 8G、IGRAZIN Yellow 5GT、IGRALITE Rubine 4BL、IGRALITE Blue BCA、MONASTRAL Magenta、MONASTRAL Scarlet、MONASTRAL Violet R、MONASTRAL Red B、及びMONASTRAL Violet Maroon Bは、チバガイギー社(Ciba−Geigy Corp.)から入手可能である。次の顔料:DALAMAR Yellow YT−858−D及びHEUCOPHTHAL Blue G XBT−583Dは、ホイバッハ社(Heubach Group)から入手可能である。次の顔料:Permanent Yellow GR、Permanent Yellow G、Permanent Yellow DHG、Permanent Yellow NCG−71、Permanent Yellow GG、Hansa Yellow RA、Hansa Brilliant Yellow 5GX−02、Hansa Yellow−X、NOVOPERM Yellow HR、NOVOPERM Yellow FGL、Hansa Brilliant Yellow 10GX、Permanent Yellow G3R−01、HOSTAPERM Yellow H4G、HOSTAPERM Yellow H3G、OSTARERM Orange GR、HOSTAPERM Scarlet GO、HOSTAPERM Pink E、Permanent Rubine F6B、及びHOSTAFINEシリーズは、ヘキストスペシャルティケミカル社(Hoechst Specialty Chemicals)から入手可能である。次の顔料:QUINDO Magenta、INDOFAST Brilliant Scarlet、QUINDO Red R6700、QUINDO Red R6713、及びINDOFAST Violetは、モバイ社(Mobay Corp.)から入手可能である。次の顔料:L74−1357 Yellow、L75−1331 Yellow、及びL75−2577 Yellowは、サンケミカル社から入手可能である。その他の顔料の例としては、Normandy Magenta RD−2400、Permanent Violet VT2645、Argyle Green XP−111−S、Brilliant Green Toner GR 0991、Sudan Blue OS、PV Fast Blue B2GO1、Sudan III、Sudan II、Sudan IV、Sudan Orange G、Sudan Orange 220、Ortho Orange OR 2673、Lithol Fast Yellow 0991K、Paliotol Yellow 1840、Lumogen Yellow D0790、Suco−Gelb L1250、Suco−Yellow D1355、Fanal Pink D4830、Cinquasia Magenta、Lithol Scarlet D3700、Toluidine Red、Scarlet for Termoplast NSD PS PA、E.D.Toluidine Red、Lithol Rubine Toner、Lithol Scarlet 4440、Bon Red C、Royal Brilliant Red RD−8192、Oracet Pink RF、及びLithol Fast Scarlet L4300が挙げられる。これらの顔料は、ヘキスト社(Hoechst Celanese Corporation)、ポールユーリッヒ社(Paul Uhlich)、バスフ社、アメリカンヘキスト社(American Hoechst)、チバガイギー社、アルドリッチ社(Aldrich)、デュポン社、ユージンクールマン オブ カナダ社(Ugine Kuhlman of Canada)、ドミニオンカラー社(Dominion Color Company)、マグルーダー社(Magruder)、及びマテソン社(Matheson)のような発売元から市販されている。その他の適切なカラー顔料の例は、カラーインデックス第3巻(The Society of Dyers and Colourists,1982)に記載されている。
【0055】
特に挙げていない他の顔料もまた、ここに与えた開示に従って、ポリマーに結合させるのに適し得る。上述の顔料は、単一で又は2つ以上を組合せて用いることができる。典型的に、本システム及び方法に関する顔料の直径は、約10nm〜約10μm、一態様では10nm〜約500nmとし得るが、もし顔料が分散状態を維持し且つ適切なカラー特性をもたらすならば、この範囲外のサイズを用いることもできる。本システム及び方法の特定の一態様では、顔料は、インクジェットインク組成物の約1wt%〜約20wt%にて含有され、多くの場合、インクジェットインク組成物の約2wt%〜約5wt%にて含有され得る。
【0056】
多くの場合、顔料と染料は、実質的に同じ色を有することができる。こうすると、高分子着色剤は、顔料に起因して耐光性、耐水性、及び永続性を一方で改善しながら、染料の存在に起因して改善された彩度を有することができる。本システム及び方法の一代替実施形態では、顔料は、染料とは異なる色を有し得る。例えば、高分子着色剤がニュートラルグレーの有効色を有するように、顔料がブラック色を且つ染料がシアン又はマゼンタ色を有することができる。あるいはまた、シアン及びマゼンタの両染料を、同一ポリマーに、又は別々のポリマーに共有結合させた後にそれらを同一顔料に結合させることができる。従って、一般的事項として、2種以上の染料を同一のポリマー鎖に結合させることができる。加えて、2種以上のポリマー及び/又はポリマー−染料の組合せを、顔料粒子に結合させることもできる。
【0057】
分散剤の組み込み
本例のシステム及び方法に関する高分子着色剤は、さらに、そこに結合した分散剤を含むことができる。適切な分散剤を、顔料、ポリマー、及び/又は染料に結合させることができる。特定の一実施形態においては、分散剤を顔料に結合させることができる。多くの場合、本例のシステム及び方法に従って顔料にポリマーを結合させることで、顔料に分散剤を直に結合させるための付加的な余地がもたらされる。他の実施形態では、分散剤をポリマーに結合させることが望まれる場合がある。分散剤をポリマーに結合させるために、染料の結合に使用したものと類似の反応基を用いることができる。また、分散剤は、染料と同時に、又は別個のステップにより、結合させることができる。一般に、染料、分散剤、及び顔料の結合順序は、具体的な製造計画に適合するよう調整することができる。多くの場合、結合順序は重要ではないが、たいていの場合、そこに分散剤の結合したポリマー−染料着色剤に、最終処理段階で顔料を結合させる。たいていの場合、反応基には、カルボン酸が用いられるが、アルコール、アミン、無水物、スルホン酸、チオール、ハロトリアジン、マレイミド及びビニルスルホン等のような反応基を用いることもできる。
【0058】
本システム及び方法に関する高分子染料への結合に有用であり得る様々な分散剤が、当業者に知られている。適切な分散剤の広範な種類の非限定例には、ポリアルキルグリコール、ポリアルキルイミン、アリールジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、炭水化物、アクリレート、メタクリレート、トレハロース、それらの異性体、及びそれらの組合せが含まれる。一般的事項として、グリコール分散剤は、中性及び比較的高いpHにおいて安定である傾向があり、一方、イミン分散剤は、比較的低いpH、例えば約4−6、で安定である傾向がある。特定の一実施形態では、当該分散剤は、ポリエチレングリコールとし得る。分散剤は分散安定性を改善するに役立ち得るが、ブリード抑制を改善することもできる。幾つかの適切な分散剤の非限定的な具体例として、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、トレハロース、及びそれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態では、そこに染料の結合したポリマーは分散剤であり得、それによって顔料はポリマー分散される。
【0059】
本システム及び方法に関する他の代替実施形態では、高分子着色剤は、種々の安定化添加剤を含むことができる。そのような安定化添加剤は、改善された耐光性、オゾン耐性、立体安定性、静電的安定性等をもたらすところの任意の官能基とし得る。適切な安定化添加剤の非限定的な具体例には、PEG(立体安定化及び特定の染料の溶解度改善)、炭水化物(立体安定化)、ポリエチレンイミン(一般に酸性pHにおいて静電的に安定化)、アクリレート(一般に高pHにおいて静電的に安定化)等が含まれる。本システム及び方法の他の利点は、光褪色及び/又は空気への露出による劣化からの染料の保護改善を実現することである。これは、大多数の染料が、それが結合しているポリマー内に埋め込まれており、また、隣接するポリマー鎖によって取り囲まれていることに、少なくとも部分的に起因し得る。
【0060】
一般的事項として、本システム及び方法に関する高分子着色剤は、上述のような構造を有することができる。しかしながら、特定の一実施形態では、当該高分子着色剤は、無水マレイン酸コポリマーに基づくところの、式4に示す一般構造を有することができる。
【0061】
【化9】

【0062】
ここで、x、y及びzは、ポリマーが約20,000未満の分子量を有するような、ゼロでない正の整数であり、R1は、zが少なくとも3であり且つ染料、分散剤、及び結合基が各々、少なくとも1つ存在するという条件付で、顔料に結合している染料、分散剤、又は結合基であり、R2は疎水性基である。上記構造が必ずしもブロックコポリマーを表示していないことは理解されよう。そうではなく、簡略化のために複数の重合性単位を分離させたものであり、実際の実施形態では、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又は図示するモノマー単位から成る他の任意の配列であり得る。R2は、スチレン、4−アルキルスチレン、アルキルアクリレート、メタクリレート、メチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等のような任意の多くの疎水性モノマーを用いてもたらされ得る。さらに、式4に示すような無水マレイン酸コポリマーを用いる場合、基zのモノマー単位は、一般に、無水マレイン酸の無水物部分とR1基、即ち、染料、添加物、又は分散剤、との反応によって形成される。従って、本システム及び方法に関する高分子着色剤の製造時、無水マレイン酸単位の数は、元からzだけ減じられて、y個の無水マレイン酸単位が残る。
【0063】
さらに別のより詳細な態様では、高分子着色剤は、以下の一般構造を有することができる。
【0064】
【化10】

【0065】
ここで、a、b及びcは、ポリマーが約20,000未満の分子量を有するような、ゼロでない正の整数である。
【0066】
インクジェットインク組成物
本システム及び方法に関する高分子着色剤は、限定はしないが、インク組成物、成形物品等のような広範な用途に利用することができる。一態様において、本システム及び方法に関する高分子着色剤をインクジェットインク組成物の一部として含有させることができる。従って、ここに記述したような、高分子着色剤は、適切な液体ビヒクル中に分散させることができる。
【0067】
さらに他の代替実施形態では、インクジェットインク組成物は、液体ビヒクルと、ポリマー結合型染料と、顔料とを含むことができる。この実施形態では、ポリマー結合型染料は、ポリマーに共有結合している染料を含むことができ、当該染料は第1カラーを有する。顔料は、第1カラーとは色相が実質的に異なる第2カラーを有することができる。
【0068】
そのような場合、顔料は、必ずしも染料に結合されておらず、且つ既知の原理に従って分散させることができる。従って、顔料は、高分子着色剤を形成するべく、ポリマー分散させるか、自己分散させるか、又はポリマー結合型染料に共有結合させることができる。本実施形態のさらに詳細な態様では、当該ポリマーは、ポリマーに共有結合している少なくとも2つの異なる染料を有することができる。一態様では、染料の色は、シアン、マゼンタ、又はイエローとし得、顔料の色は、ブラックとし得る。
【0069】
本システム及び方法に関する、インクジェット可能なインク組成物は、典型的に、水、共溶媒、界面活性剤、緩衝剤、殺生物剤、金属イオン封止剤、粘度修正剤、湿潤剤、バインダー、可塑剤、定着剤、及び/又はその他の既知の添加物から構成し得る水性調合物、即ちインクビヒクルにおいて調製される。更に、本システム及び方法は、ブリード抑制向上のため、反応性インクセットと共に用いることができる。典型的に、本システム及び方法に関するインクジェットインク組成物は、約0.8〜約8cpsの粘度を有することができる。本システム及び方法の一態様では、当該インクビヒクルは、インクジェットインク組成物の約70wt%〜約98wt%を構成し得る。
【0070】
上述のように、共溶媒を本システム及び方法のインクジェット組成物に含有させることができる。本システム及び方法に使用される適切な共溶媒は、水溶性の有機共溶媒であり、限定はしないが、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリ(グリコール)エーテル、ラクタム、ホルムアミド、アセトアミド、長鎖アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、グリコールブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、エーテル、カルボン酸、エステル、有機スルフィド、有機スルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル誘導体、アミノアルコール、及びケトン、等が挙げられる。例えば、共溶媒には、炭素数30以下の第一脂肪族アルコール、炭素数30以下の第一芳香族アルコール、炭素数30以下の第二脂肪族一アルコール、炭素数30以下の第二芳香族アルコール、炭素数30以下の1,2−ジオール、炭素数30以下の1,3−ジオール、炭素数30以下の1,5−ジオール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテルの高次の同族体、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテルの高次の同族体、ラクタム、置換ホルムアミド、未置換ホルムアミド、置換アセトアミド、及び未置換アセトアミドが包含され得る。このシステム及び方法を実施するにあたり、好んで用いられる共溶媒の具体例としては、限定はしないが、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、3−メトキシブタノール、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等がある。共溶媒を添加することで、インク中の水の蒸発速度を低下させて閉塞を最小限としたり、粘度、pH、表面張力、光学濃度、及び印刷品質のようなインクの他の特性を変更することができる。共溶媒の濃度は、約0wt%〜約50wt%の範囲とし得る。
【0071】
任意に、種々の緩衝剤を本システム及び方法に関するインクジェットインク組成物に使用することができる。典型的な緩衝剤には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような、アルカリ金属の水酸化物とアミン、クエン酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びジメチルエタノールアミンのようなアミン、及び本システム及び方法に関する着色剤の特性に干渉しない他の塩基性若しくは酸性成分のようなpH制御溶液が含まれる。用いる場合、緩衝剤は、典型的に、インクジェットインク組成物の約10wt%未満である。
【0072】
本システム及び方法の別の態様では、種々の殺生物剤を用いて望ましくない微生物の成長を阻害することができる。適切な殺生物剤の幾つかの非限定例としては、安息香酸塩、ソルビン酸塩、NUOSEPT(ヌデックス社(Nudex,Inc.)、ヒュルスアメリカ社(Huls America)の一部門)、UCARCIDE(ユニオンカーバイド社(Union Carbide))、VANCIDE(RT ヴァンダービルト社(Vanderbilt Co.))、及びPROXEL(アイシーアイ アメリカ社(ICI Americas))のような市販品、及びその他の既知殺生物剤がある。典型的に、前述の殺生物剤は、インクジェットインク組成物の約5wt%未満、多くの場合、約0.1wt%〜約0.25wt%にて含有される。
【0073】
本システム及び方法の別の態様では、高分子着色剤を基材に固定化する機能を有するバインダーを含むことができる。本システム及び方法における使用に適したバインダーは、典型的に、約100〜約50,000g/molの分子量を有する。非限定例としては、ポリエステル、ポリエステル−メラニン、スチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−アクリル酸−アルキルアクリレートコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸−アルキルアクリレートコポリマー、スチレン−メタクリル酸コポリマー、スチレン−メタクリル酸−アルキルアクリレートコポリマー、スチレン−マレイン酸半エステルコポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸コポリマー、ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー、及びそれらの塩が挙げられる。
【0074】
任意に、通常の水溶性界面活性剤、例えば、アルキルポリエチレンオキシド、アルキルフェニルポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックコポリマー、アセチレンPEO、PEOエステル、PEOアミン、PEOアミド、及びジメチコンコポリオールを用い得る。これらの材料の幾つかは、商品名TERGITOL、SURFYNOL、ZONYL、TRITON、MERPOL等を付して市販されている。用いる場合、界面活性剤は、インクジェットインク組成物の0.01wt%〜約10wt%とし得る。
【0075】
インクジェットインク組成物の調製後は、当分野で周知のように、それらを1つ以上のインクジェットペン中に入れることができる。本例のシステム及び方法の1つの詳細な態様では、本システム及び方法にによる、基材上に画像を印刷するためのシステムは、インクジェットペンを形成するべく、それぞれ、インクジェットインク組成物を含む少なくとも1つの射出チャンバを備えることができる。典型的なインクジェットペンは、サーマル式、圧電式、又はその他の既知のインクジェット技術を用いてインクジェットインク組成物を基材へと送出し得る複数のオリフィスを有するオリフィスプレートを具備することができる。
【0076】
(実施例)
以下の実施例は、現在知られている本システム及び方法の多数の実施形態を説明するものである。しかしながら、以下は、本システム及び方法の原理の応用についての単なる例示又は説明に過ぎないということを理解されたい。多数の修正及び代替の組成物、方法、並びにシステムを、本システム及び方法の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者は案出できる。添付の特許請求の範囲は、そのような修正並びに代替構成を網羅すべく意図している。従って、特定のものに関して本システム及び方法をこれまで説明してきたが、以下の実施例は、最も実用的で且つ好ましい実施形態であると現在思われるものに関してさらに詳述するものである。
【実施例1】
【0077】
染料C.I.Acid Red 440を、以下のようにして、スチレン無水マレイン酸ポリマーSMA 1000に結合させた。窒素雰囲気下、フラスコ中の1リットルの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に、110g(544mmole無水物)のSMA 1000を加えて、懸濁液を形成した。次いで、当該懸濁液を撹拌しつつ、約50℃にまで加熱して透明な溶液を得た。この溶液に、窒素下で、80.4g(220mmole)のAR440、22.3g(220mmole)のトリエチルアミン及び2.7g(22mmole)のジメチルアミノピリジンを添加した。次いで、当該混合物を、この温度で少なくとも4時間撹拌した。上述の混合物を撹拌後、36.4g(320mmole)の2−アミノエタンチオールヒドロクロリドを、次いで、64.8g(640mmole)のトリエチルアミンを添加した。次いで、当該混合物を一晩撹拌し、その間、窒素雰囲気下で室温にまで冷却した。次いで、当該混合物を、過剰の氷冷却された1N塩酸に添加した。これによって、赤みを帯びたポリマー−染料結合体の沈殿が生じた。その沈殿物をろ過し、そして1N HClで数回、次いで、脱イオン水で洗浄した。次いで、その混合物を、室温の真空デシケータを用いて乾燥させた。
【0078】
上記の染料−ポリマー結合体のpigment red 122への結合は、その後、以下のように実施した。窒素下、100mLの1N NaOHの撹拌溶液に、上述の20gの染料−ポリマー結合体を加えた。次いで、当該混合物を50℃にまで加熱して、完全な溶解を保証した。その透明なマゼンタ溶液に、2−(4−アミノフェニル)スルホニルエタンスルホナートで既に修飾されたpigment red 122の10%水性分散物400gを添加した。25mlを超える1N NaOHの付加によって、そのpHを約12−13まで上げ、そして当該混合物を窒素雰囲気下、室温にて一晩撹拌した。次に、得られた分散物をアクリル酸ナトリウムで保護し、そしてダイアフィルトレーションにより精製した。
【実施例2】
【0079】
窒素雰囲気下、反応フラスコ中の1リットルの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に、110g(544mmole無水物)のSMA 1000を加えた。次いで、当該懸濁液を撹拌しつつ、約50℃にまで加熱して透明な溶液を得た。この溶液に、約45.4g(400mmole)の2−アミノエタンチオールヒドロクロリド及び約100g(100mmole)のJeffamine(登録商標)XTJ506(ハンツマン社(Huntsman Corporation)から入手し得るポリオキシアルキレンアミン分散剤)を付加し、そして当該混合物を窒素雰囲気下で約30分間撹拌した。次いで、約101.2g(1mole)のトリエチルアミンを滴下添加した。当該混合物を、次いで、室温にまで冷却し、そして窒素雰囲気下で一晩撹拌した。次いで、その混合物を過剰の氷冷却された1N塩酸に付加し、これによって白色のポリマー沈殿物を生じた。次いで、その沈殿物をろ過し、そして1N HClを用いて数回、続いて、脱イオン水を用いて洗浄した。最終的に、その混合物を室温の真空デシケーターでその後乾燥させた。
【0080】
窒素下、700mLの1N NaOHの撹拌溶液に、上述の修飾されたSMAポリマー約140gを加えた。次いで、その混合物を約50℃にまで加熱して完全な溶解を保証した。その溶液に、染料reactive blue 19の10%水溶液約502g(80mmole)を10分間にわたって添加した。次いで、150mlの1N NaOHの付加によって、そのpHを約12−13まで上げ、その混合物を窒素雰囲気下で室温で一晩撹拌した。次いで、当該混合物を過剰の氷冷却された1N塩酸に添加した。これによって染料−ポリマー結合体から成るブルーの沈殿物が生じた。その沈殿物をろ過し、そして1N HClで数回、続いて、脱イオン水で洗浄した。次いで、その混合物を室温の真空デシケーターで乾燥させた。
【0081】
次に、上記の染料−ポリマー結合体のカーボンブラック顔料への結合を以下のように実施した。窒素下、100mLの1N NaOHの撹拌溶液に、上述の染料−ポリマー結合体約20gを加えた。当該混合物を約50℃に加熱して完全な溶解を保証した。次いで、その透明なブルーの溶液に、2−(4−アミノフェニル)スルホニルエタンスルホナートで既に修飾されたカーボンブラックの10%水性分散物400gを付加した。25mlの1N NaOHの付加によって、そのpHを約12−13まで上げ、そしてその混合物を窒素雰囲気下で室温で一晩撹拌した。次いで、得られた分散物をアクリル酸ナトリウムで保護し、ダイアフィルトレーションによって精製した。
【0082】
最後に、本例のシステム及び方法は、そこにポリマー共有結合した顔料を含む高分子着色剤の生成を可能とする。さらに、そのポリマーに染料を共有結合させることができる。顔料、ポリマー、及び/又は染料のうち少なくとも1つに分散剤を共有結合させて、高分子着色剤に液体ビヒクル中分散安定性を付与することができる。顔料及び染料の両成分を含めることによって、本高分子着色剤は、各々の諸特性から利益を得ることができる。
【0083】
以上の説明は、本システム及び方法の例示的な実施形態を例示し且つ説明するためにのみ提示したものである。当該システム及び方法は、開示されたまさにその形態のどれかを網羅したり、そのどれかに限定しようとするものではない。多くの修正及び変更は、上記教示に鑑み可能である。本システム及び方法の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、
前記顔料に共有結合しているポリマーと、
前記ポリマーに共有結合している染料と、
前記顔料、前記ポリマー、又は前記染料のうちの少なくとも1つに共有結合している分散剤と、
を含んで成り、
前記ポリマーに共有結合している前記染料が、前記染料及び前記ポリマーに結合している反応剤を含む、高分子着色剤。
【請求項2】
前記染料が、前記ポリマーでエステル化されており、前記ポリマーがカルボキシ基を有する、請求項1に記載の高分子着色剤。
【請求項3】
前記ポリマーが、スチレンアクリル酸コポリマーを含む、請求項1に記載の高分子着色剤。
【請求項4】
前記ポリマーが、Joncryl(登録商標)ポリマーを含む、請求項3に記載の高分子着色剤。
【請求項5】
前記反応剤が、アルコール反応部位を含む、請求項2に記載の高分子着色剤。
【請求項6】
前記反応剤が、エチレンジアミンを含む、請求項5に記載の高分子着色剤。
【請求項7】
前記ポリマーがスチレン−無水マレイン酸コポリマーを含み、
前記反応剤がアミノエタンチオールを含み、そして
前記染料が染料誘導体を含む、請求項2に記載の高分子着色剤。
【請求項8】
前記染料誘導体が、キサンチリウム、9−[4−(クロロスルホニル)−2−スルホフェニル]−3,6−ビス(ジエチルアミノ)−、分子内塩(9Cl)を含む、請求項7に記載の高分子着色剤。
【請求項9】
前記染料が、染料モノマーと適切なコモノマーとの共重合により、前記ポリマー中に取り込まれる、請求項1に記載の高分子着色剤。
【請求項10】
前記染料モノマーが、染料誘導体を修飾することで作られる、請求項9に記載の高分子着色剤。
【請求項11】
前記染料誘導体が、前記ポリマーで誘導体化される、請求項10に記載の高分子着色剤。
【請求項12】
前記染料誘導体が、キサンチリウム、9−[4−(クロロスルホニル)−2−スルホフェニル]−3,6−ビス(ジエチルアミノ)−、分子内塩(9Cl)を含む、請求項10に記載の高分子着色剤。
【請求項13】
前記染料誘導体の前記修飾が、アダクトを用いて前記染料誘導体を前記ポリマーに結合させるステップを包含する、請求項10に記載の高分子着色剤。
【請求項14】
前記アダクトが、エチレンジアミンのアダクトを含む、請求項13に記載の高分子着色剤。
【請求項15】
前記ポリマーが、ビニル含有モノマーと共重合されている、請求項10に記載の高分子着色剤。
【請求項16】
前記ビニル含有モノマーが、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ベンジルアクリレート、又はブチルアクリレートのうち1つを含む、請求項15に記載の高分子着色剤。
【請求項17】
前記ビニル含有モノマーが、以下の構造のうち1つを含む、請求項15に記載の高分子着色剤。
【化1】

式中、Rは、水素又はメチル基のいずれかである。
【請求項18】
前記ポリマーが、ポリウレタンを含む、請求項9に記載の高分子着色剤。
【請求項19】
前記染料が、C.I.Acid Red 440、C.I.Reactive Red 3、C.I.Reactive Red 13、C.I.Reactive Red 23、C.I.Reactive Red 24、C.I.Reactive Red 33、C.I.Reactive Red 43、C.I.Reactive Red 45、C.I.Reactive Red 120、C.I.Reactive Red 180、C.I.Reactive Red 194、C.I.Reactive Red 220、C.I.Reactive Violet 4、C.I.Reactive Blue 19、C.I.Reactive Blue 5、C.I.Reactive Blue 49、C.I.Reactive Yellow 2、C.I.Reactive Yellow 3、及びC.I.Reactive Black 39から成る群から選択される、請求項1に記載の高分子着色剤。
【請求項20】
前記ポリマーに共有結合している第2染料をさらに含む、請求項1に記載の高分子着色剤。
【請求項21】
前記第2染料が、前記染料とは異なる色からなる、請求項20に記載の着色剤。
【請求項22】
前記顔料が、前記染料とは異なる色からなる、請求項1に記載の着色剤。
【請求項23】
前記顔料が黒色を有し、且つ前記染料がシアン又はマゼンタ色を有し、それによって、前記高分子着色剤が有効なニュートラルグレーカラーを有するようになる、請求項22に記載の着色剤。
【請求項24】
前記顔料が、ブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料から成る群から選択される成分を含む、請求項1に記載の着色剤。
【請求項25】
前記顔料が、カーボンブラックを含む、請求項24に記載の着色剤。
【請求項26】
前記分散剤が、前記顔料に結合している、請求項1に記載の着色剤。
【請求項27】
前記分散剤が、前記ポリマーに結合している、請求項1に記載の着色剤。
【請求項28】
前記分散剤が、ポリアルキルグリコール、ポリアルキルイミン、トレハロース、アクリレート、及びメタクリレートから成る群から選択された成分である、請求項1に記載の着色剤。
【請求項29】
安定化添加物をさらに含む、請求項1に記載の着色剤。
【請求項30】
高分子着色剤がその中に分散した液体ビヒクルを含んで成るインクジェットインク組成物であって、前記高分子着色剤が、
顔料と、
前記顔料に共有結合しているポリマーと、
前記ポリマーに共有結合している染料と、
前記顔料、前記ポリマー、又は前記染料のうちの少なくとも1つに共有結合している分散剤と、
を含んで成り、
前記染料が前記ポリマーでエステル化されており、前記ポリマーがカルボキシ基を有する、組成物。
【請求項31】
前記ポリマーが、スチレンアクリル酸コポリマーを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリマーが、Joncryl(登録商標)ポリマーを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
前記染料が、アルコール反応部位を有する反応剤に結合している、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
前記反応剤が、エチレンジアミンを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
液体ビヒクルと、
ポリマーがそこに共有結合している顔料と、
前記ポリマーに共有結合している染料と、
前記顔料、前記ポリマー、又は前記染料のうちの少なくとも1つに共有結合している分散剤と、
を含んで成り、
前記染料が、染料誘導体の一段修飾により前記ポリマーに結合している、インクジェット組成物。
【請求項36】
前記染料誘導体が、前記ポリマーで誘導体化される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記染料誘導体が、キサンチリウム、9−[4−(クロロスルホニル)−2−スルホフェニル]−3,6−ビス(ジエチルアミノ)−、分子内塩(9Cl)を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記染料誘導体の前記一段修飾が、アダクトを用いて前記染料誘導体を前記ポリマーに結合させるステップを包含する、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記アダクトが、エチレンジアミンのアダクトを含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記ポリマーが、ビニル含有モノマーと共重合されている、請求項35に記載の組成物。
【請求項41】
前記ビニル含有モノマーが、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ベンジルアクリレート、又はブチルアクリレートのうちの1つを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ビニル含有モノマーが、以下の構造のうちの1つを含む、請求項40に記載の組成物。
【化2】

式中、Rは、水素又はメチル基のいずれかである。
【請求項43】
高分子着色剤を形成する方法であって、
染料をポリマーに結合させてポリマー−染料着色剤を形成すること、
前記ポリマーを顔料に結合させること、及び
前記ポリマー−染料着色剤及び前記顔料のうちの少なくとも一方に分散剤を結合させること、
を包含し、染料をポリマーに結合させる前記ステップが、反応剤を前記染料及び前記ポリマーに共有結合させるステップを包含する、方法。
【請求項44】
染料をポリマーに結合させる前記ステップが、エステル化により達成される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリマーが、スチレンアクリル酸コポリマーを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
染料を前記ポリマーに結合させる前記ステップが、前記ポリマーを用いて染料誘導体を誘導体化させるステップを包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記染料誘導体が、キサンチリウム、9−[4−(クロロスルホニル)−2−スルホフェニル]−3,6−ビス(ジエチルアミノ)−、分子内塩(9Cl)を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリマーを用いて染料誘導体を誘導体化させる前記ステップが、アダクトを用いて前記染料誘導体を前記ポリマーに結合させるステップを包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記アダクトが、エチレンジアミンのアダクトを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記染料が、C.I.Acid Red 440、C.I.Reactive Red 3、C.I.Reactive Red 13、C.I.Reactive Red 23、C.I.Reactive Red 24、C.I.Reactive Red 33、C.I.Reactive Red 43、C.I.Reactive Red 45、C.I.Reactive Red 120、C.I.Reactive Red 180、C.I.Reactive Red 194、C.I.Reactive Red 220、C.I.Reactive Violet 4、C.I.Reactive Blue 19、C.I.Reactive Blue 5、C.I.Reactive Blue 49、C.I.Reactive Yellow 2、C.I.Reactive Yellow 3、及びC.I.Reactive Black 39から成る群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記顔料が、ブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料から成る群から選択された成分である、請求項43に記載の方法。

【公開番号】特開2006−176756(P2006−176756A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−309466(P2005−309466)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】