説明

顔料濃縮物用の水希釈可能な分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂の利用

【課題】水希釈可能なバインダーを配合することができ、優れた防食性を有する被膜をもたらす分散剤を提供する。
【解決手段】顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABは20mg/g〜180mg/gの酸価を有し、および、該縮合樹脂は、酸基を含有しかつ30mg/g〜240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーと不飽和脂肪族カルボン酸の二量化またはオリゴマー化によって得られる化合物とのコポリマーから選択される成分Aと、ヒドロキシル基を含有しかつ20mg/g〜300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol〜5,000g/molの数平均モル質量Mを有するポリエステルBとの縮合によって得られ得るものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%〜90%であり、該成分Bの質量分率が70%〜10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、顔料濃縮物用の分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
水希釈可能な顔料濃縮物用の分散剤は、しばしば、アンモニウム塩、スルホニウム塩またはエポキシド−アミン付加物に由来するか、またはポリエチレングリコールセグメントを含む。これらの既知の分散剤は、そのイオン性もしくはイオン形成性(ionogenic)構造のため、またはポリエチレングリコール構造により、非常に親水性であり、したがって、被膜の耐水性および防食性に有害な影響を及ぼすという欠点を有する。特に、風乾性アルキド樹脂系との混合物においては、非相溶性であり、つや消しの非光沢性被膜しかもたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0496079号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0295403号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、水希釈可能なバインダーを配合することができ、優れた防食性を有する被膜をもたらす分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[発明の要旨]
酸基を含有し、中和後、水希釈可能であるポリマーであって、酸基を含有する成分Aと、ヒドロキシル基を含有する疎水性ポリエステルBとの縮合によって得られ得るポリマーは、優れた防食性を有する被膜に用いられる顔料混合物を分散させるのに特に好適であることが、中和後においてわかった。
【0006】
したがって、本発明は、顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用であって、縮合樹脂は20mg/g〜180mg/gの酸価を有し、縮合樹脂は、酸基を含有しかつ30mg/g〜240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーと不飽和脂肪族カルボン酸の二量化またはオリゴマー化によって得られる化合物とのコポリマーから選択される成分Aと、ヒドロキシル基を含有しかつ20mg/g〜300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol〜5,000g/molの数平均モル質量Mを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、ここで、縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の成分Aの質量分率は30%〜90%であり、成分Bの質量分率は70%〜10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になるものとする、顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
酸価は、DIN 53 402にしたがって、分析対象の試料を中和するのに必要な水酸化カリウムの質量mKOHと、この試料の質量m(溶液または分散液の場合は試料中の固形分の質量)の商と規定され、その慣例的単位は「mg/g」である。
【0008】
ヒドロキシル価は、DIN 53 240にしたがって、分析対象の試料と正確に同数のヒドロキシル基を有する水酸化カリウムの質量mKOHと、この試料の質量m(溶液または分散液の場合は試料中の固形分の質量)の商と規定され、その慣例的単位は「mg/g」である。
【0009】
好適な成分Aは、オレフィン性不飽和モノマーの酸基含有コポリマーであって、30mg/g〜240mg/gの酸価を有するコポリマーである。酸基を含有するかかるポリマーは、アクリレートコポリマー型で、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0010】
好ましくは、かかるコポリマーは、使用されるオレフィン性不飽和モノマーの少なくとも1種、すなわちAlが、少なくとも1個の酸基、好ましくはカルボキシル基を有して調製される。これらのモノマーA1の1種またはそれ以上を、酸基を有しないモノマーA2の1種またはそれ以上と互いに重合させる。また、重合中にモノマー混合物の組成を変えることも可能である。所望の酸価は、モノマーの性質および量の適切な選択によって容易に設定することができる。
【0011】
好ましくは、使用する酸基含有モノマーA1は、3〜13個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸、またはアルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するα,β−不飽和脂肪族ジカルボン酸のモノアルキルエステルである。また、非エステル化形態のマレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸およびジヒドロムコン酸などのオレフィン性不飽和ジカルボン酸を用いることも可能である。好適な不飽和カルボン酸は、アクリル酸およびメタクリル酸、クロトン酸およびイソクロトン酸、ビニル酢酸、3−プロピルアクリル酸および2−オクテン酸である。好適な不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルは、モノメチル、モノエチル、モノプロピルおよびモノブチルエステル、例えばマレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、メサコン酸モノブチルエステルおよびトランス−3−ヘキセン二酸モノプロピルエステルなどである。好ましくは、これらの酸基を含有するモノマーは、モノマー混合物の質量に対して10%〜33%の質量分率で用いられる。
【0012】
酸基を有しないモノマーA2は、酸成分中に3〜7個の炭素原子を有しかつアルキル成分中に1〜20個、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する一塩基性α,β−不飽和脂肪族カルボン酸のアルキルエステル;酸成分中に4〜8個の炭素原子を有しかつアルキル成分中に1〜20個、好ましくは1〜12個の炭素原子を有するα,β−不飽和脂肪族ジカルボン酸のジアルキルエステル;記載の酸のニトリル;酸成分中に3〜7個の炭素原子を有しかつヒドロキシアルキル成分中に2〜20個の炭素原子を有する記載の一塩基性α,β−不飽和脂肪族カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルであり、2〜50の数平均重合度を有するオリゴオキシアルキレングリコールモノエステル(そのアルキレン基は、エチレンおよび1,2−プロピレン基ならびにその混合物から選択される)も含み;ならびにスチレンおよびビニルトルエンなどのビニル芳香族、および2〜20個の炭素原子を有する飽和脂肪族の直鎖および分枝鎖モノカルボン酸のビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニル、から選択される。モノマーA2は、A1とA2のモノマー混合物の質量に対して、67%〜90%の質量分率で用いられる。
【0013】
また、14〜30個の炭素原子を有する一不飽和または多不飽和脂肪酸、またはアルキル基中に1〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとのそれらのエステルを、さらなるモノマーA3として任意に使用し得る。好適なモノマーA3の例は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシネン(ricinenic)酸およびかかる酸の混合物、例えば、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸およびトール油脂肪酸ならびにそれらのエステル、である。また、A1、A2およびA3のモノマー混合物におけるこれらのモノマーA3の質量分率は0%〜50%である。
【0014】
モノマー混合物の重合は、既知の方法によって、好ましくは、フリーラジカルにより開始される重合によって行われる。使用され得る開始剤は、既知の過酸化物、過酸およびその誘導体、アゾ化合物、また、レドックス触媒として知られる酸化剤と還元剤の一組、並びにまた、鉄、セリウムまたはマンガンなどの遷移金属の塩である。重合は、溶液中または乳化液中で、またはバルク中でも行ない得る。
【0015】
同様に成分Aとして好適な二量化およびオリゴマー化不飽和脂肪族カルボン酸は、6〜30個の炭素原子を有する一不飽和または多不飽和脂肪酸の二量化およびオリゴマー化により得られる。金属酸化物を有する触媒により得られる、16〜24、特に18個の炭素原子を有する不飽和脂酸の直鎖、分枝鎖および環状の二量体および三量体の混合物が好ましい。
【0016】
ヒドロキシル基を含有し、20mg/g〜300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol〜5,000g/mol、好ましくは1,000g/mol〜3,000g/molの数平均モル質量を有するポリエステルが成分Bとして好適である。かかるポリエステルBは、
B1 2〜20個の炭素原子を有する二価脂肪族の直鎖、分枝鎖または環状のアルコールおよび/または4〜20個の炭素原子を有する1,2−エポキシド、および
B2 4〜40個の炭素原子を有する一塩基または二塩基の脂肪族または芳香族カルボン酸
の縮合により得られ得る。
【0017】
記載の成分B1およびB2の反応性誘導体(エステル、無水物など)も、これらの成分の代わりに、またはこれらの成分との混合物中に使用され得る。
【0018】
ここで、10%までの量の成分B1の一部を、3〜20個の炭素原子を有する三価以上の脂肪族の直鎖、分枝鎖または環状アルコールで置き換えてもよい。同様に、10%までの量の成分B2の一部を、三塩基以上の脂肪族または芳香族カルボン酸で置き換えてもよい。また、ポリエステルを、15%までの質量分率のヒドロキシカルボン酸B3で各々は少なくとも1個のヒドロキシル基および少なくとも1個のカルボキシル基を含むものとの同時使用をする縮合に供してもよい。
【0019】
使用され得るアルコールBlは、例えば、好ましくは、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−および1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、3,4−ジエチル−3,4−ヘキサンジオール、および1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンを、単独でまたは混合物で使用される。グリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,2−プロピレングリコールが特に好ましい。
【0020】
好ましく用いられる二塩基性カルボン酸B2は、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸、スルホニルジ安息香酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、およびナフタレンジカルボン酸異性体、ならびに脂肪酸二量体である非環式ジカルボン酸および環状ジカルボン酸の混合物である不飽和脂肪酸(例えば、トール油脂肪酸)の触媒二量化により得られるものである。マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびメサコン酸またはソルビン酸などの一不飽和または多不飽和脂肪族ジカルボン酸もまた使用され得る。アジピン酸、マレイン酸およびフタル酸異性体が、単独でまたは混合物で、各場合で特に好ましい。好適な一塩基酸は安息香酸またはステアリン酸などの脂肪酸である。
【0021】
好適なヒドロキシカルボン酸B3は、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、酒石酸、ラセミ体酒石酸、グリコール酸、ジヒドロキシコハク酸およびリンゴ酸である。この成分はまた、数種類の適当な物質の混合物を含み得る。
【0022】
ポリエステルは、遊離体(educt)B1〜B3またはそれらのエステル形成性誘導体(酸のメチルエステルもしくはハロゲン化物もしくは無水物またはアルコールの酢酸塩など)のバルク中または溶液中での重縮合により、既知の方法にて得られる。反応を加速するため、既知のエステル交換触媒を使用することができる。
【0023】
本発明による樹脂ABは、成分AとBの反応により、高温、好ましくは100℃〜220℃で、好ましくは溶媒の添加を伴わない溶融中で得られるが、任意に、反応条件下では不活性な溶媒を、成分AとBおよび溶媒の質量の合計に対して20%までの質量分率で添加することも可能である。反応は、AとBの縮合生成物の酸価が20mg/g〜180mg/gの値に達するまで行なう。縮合反応中、少量の水が形成され、これは、反応温度で消散する。また、水は、好ましくは、水と非混和性であり水との共沸混合物を形成する溶媒を用いることによる共沸蒸留により除去することができる。
【0024】
このようにして調製される樹脂ABを、任意に少量の水希釈可能な溶媒の添加後、水性アルカリ、好ましくはアンモニア溶液またはアミンで中和する。これに関し、アルカリの量は、樹脂の酸基の少なくとも半分が中和されるように選択する。しかしながら、好ましくは中和を完結させる。次いで混合物を、水の添加により、好ましくは20%〜60%、特に好ましくは30〜50%の固形分質量分率までさらに希釈する。また、中和剤の濃度を、希釈と中和が同時に行なわれるように調整することも可能である。中和された樹脂の水溶液または分散液は、このようにして得られる。
【0025】
本発明により調製される樹脂ABは、中和後、水希釈可能である。これらは、低溶媒および溶媒無含有顔料ペーストの調製のための分散剤として非常に好適である。これらは、高い顔料結合能力を有し、保存に対して安定であり、これらから調製される顔料ペーストにおいて保存中にその粘度を変化させないか、または実質的に変化させない。このような顔料ペーストは、水性バインダー中に容易に組み込み得る。顔料を直接加えた(pigmented)塗料と比べて、塗料特性は悪影響を受けない。
【0026】
用いる顔料の性質に応じ、本発明にしたがって使用される樹脂を用いて顔料濃縮物を調製することができる。無機系顔料の場合、100gの顔料濃縮物は、40g〜70gの顔料、5g〜20gの縮合樹脂、任意に10gまでの湿潤剤および10gまでの溶媒を含む。有機系顔料の場合は、100gの顔料濃縮物は、20g〜40gの顔料、5g〜40gの縮合樹脂、ならびに任意に、10gまでの湿潤剤および10gまでの溶媒を含む。カーボンブラックを含む顔料濃縮物の場合、濃縮物100g当たりの組成は、有益には、15g〜30gのカーボンブラック、10g〜30gの縮合樹脂、任意に10gまでの湿潤剤および10gまでの溶媒を含む。これに関し、濃縮物は、各場合において、水の添加により合計質量を100gにする。
【0027】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、その範囲において本発明を限定しない。
【0028】
以下の実施例において、上記の本文と同様、単位「%」を伴うすべてのデータは、特に記載のない限り質量分率である。「部」は、常に質量部である。「%」の濃度データは、溶液中の溶解した物質の質量分率である。
【実施例】
【0029】
1 コポリマーAI〜AIVおよびポリエステルBVおよびBVIの調製
1.1 コポリマーAIの調製
30部のアマニ脂肪油酸および5部のキシレンを、135℃〜140℃に加熱した。32部のメタクリル酸イソブチル、6部のtert−ブチル過安息香酸、1部のジベンゾイルペルオキシド(支持体としてのジシクロヘキシルフタレート上に50%の濃度)および5部のキシレンの混合物を同時に均一に、この温度で6〜8時間の間で添加した。添加終了時、反応温度を、残渣の測定により少なくとも95%の重合変換率が得られるまで維持した。コポリマーは、209mg/gの酸価および5.5cm/gのStaudinger指数(溶媒としてジメチルホルムアミド中)を有した。
【0030】
1.2 コポリマーAII〜AIVの調製
コポリマーAII〜AIVは、既知の方法で、固形分換算質量分率50%に相当する、イソプロパノール中の溶液重合により、調製した。用いたモノマーの量比および得られたコポリマーの特性値を表1にまとめる。
【0031】
表1 コポリマーの組成
【表1】

【0032】
用いた物質について示した数値は質量分率(%)であり、各場合において、合計すると100%である。
【0033】
1.3 ポリエステルBVおよびBVI(成分B)の調製
ポリエステルBVおよびBVIを、添加溶剤(entraining agent)としてトルエン約50gの添加を伴う共沸縮合により調製した。縮合は、酸価が5mg/g未満に低下するまで行なった。ポリエステルの組成(重縮合に用いた質量(g))は表2からわかる。
【0034】
表2 ポリエステルの組成
【表2】

【0035】
2 縮合樹脂(分散剤D1〜D7)の調製
実施例2.1〜2.7
コポリマーAおよびポリエステルBを、適切な反応容器内に、表3に従った量比で導入した。バッチを、攪拌しながら、徐々に200℃の循環温度にし、記載の酸価に達するまで、この温度に維持した。溶媒の除去後、バッチを、エチレングリコールモノブチルエーテルで固形分の質量分率87%に調整し、N,N−ジメチルエタノールアミンの添加により、50℃の水中で乳化した。アミンおよび水の量は、エマルジョンのpHが8.2〜8.8に、固形分の質量分率が35%になるように選択された。このようにして調製した分散剤の溶液は、乳白色から透明色の液状物であった。
【0036】
表3 縮合樹脂ABの調製
(出発物質の量に関するすべてのデータは、固形物質中の成分の質量分率であり、合計は100%である)
【表3】

【0037】
3 顔料用分散剤としての縮合生成物の塗料特性試験
表4のデータに従って、記載の量の特定の顔料を以下の分散剤配合物中にビーズミルで分散した後、配合物をその保存安定性の試験に供した。
250.0部の実施例で得た分散剤、水中濃度35%
22.0部のAdditol(登録商標)VXW 6374(湿潤剤)
4.0部のAdditol(登録商標)VXW 4973(消泡剤)
77.0部の水
−−−−
353.0部の顔料ペースト配合物
【0038】
表4 顔料ペースト
【表4】

【0039】
Clariant Deutschland 会社の顔料(1−4)
Kronos Titanの顔料(5)
Bayer 会社の顔料(6)
Degussa 会社の顔料(7)
BASF 会社の顔料(8−10)
保存試験:室温で3ヶ月間保存
OK:使用可能な状態、SS:やや沈降
【0040】
本発明による分散剤を用いて調製したペーストは、保存安定性であり、高い顔料結合能を有することがわかる。
【0041】
4 塗料試験
顔料ペーストP2および顔料ペーストP5を用い、種々の水性バインダーを表5に記載のバインダーの質量(m)に対する顔料の質量(m)の比で塗料を調製した。
【0042】
表5 塗料
【表5】

【0043】
バインダーaは、水性エマルジョン形態の酸化乾燥型アクリル改質アルキド樹脂((登録商標)Resydrol AY 586 w、Cytec Surface Specialties Austria 会社)であり、
バインダーbは、水性エマルジョン形態の酸化乾燥型アンモニア中和アクリル−アルキドハイブリッド系((登録商標)Resydrol VAY 6278 w、Cytec Surface Specialties Austria 会社)であり、
バインダーcは、アミンで中和後、水希釈可能である、エポキシ樹脂改質非乾燥型アルキド樹脂((登録商標)Resydrol AX 246 w、Cytec Surface Specialties Austria 会社)であり、
バインダーdは、2液型ポリウレタン系用のヒドロキシ官能性のアミン中和アクリル樹脂エマルジョン((登録商標)Macrynal VSM 6285 w、Cytec Surface Specialties Austria 会社)である。
【0044】
鋼板を、これらの塗料で、150imの湿潤膜厚で被覆した。
【0045】
酸化乾燥型塗料の試験板において、室温(RT、23℃)で48時間保存後、光沢および曇り度を、BYKのゴニオレフレクトメーター(gonioreflectometer)により測定し、ケーニッヒ振子硬度(Konig pendulum hardness)(DIN 53157)を、塗布後、室温で1日および7日間保存後に測定した。塗膜の機械的安定性を、RTで7日間保存後、DIN EN ISO 1520による圧痕試験により、およびASTM D 2794による衝撃試験により、30μm〜35μmの乾燥層厚みにおいて評価した。
【0046】
焼き付けタイプ((登録商標)Resydrol AX 246)をベースとする試験板を、塗布後10分間風乾し、80℃で10分間乾燥した後、130℃で20分間焼き付けた。試験は、焼き付けから1時間後に行なった。
【0047】
2液型ポリウレタンタイプ((登録商標)Macrynal VSM 6285 w)をベースとする試験板を、塗布後10分間風乾した後、80℃で30分間強制乾燥した。試験は、翌日行なった。
【0048】
比較として、各場合において、同じバインダーで顔料を直接加えた比較塗料C1〜C5(分散剤なし)で被覆した鋼板を使用した。塗料試験の結果を表6にまとめる。
【0049】
表6 塗料試験
【表6】

0:L試料とC試料間に差はなし
+:L試料のほうがC試料よりも、試験において10%まで良好である
++:L試料のほうがC試料よりも、試験において10%超良好である
−:L試料のほうがC試料よりも、試験において10%まで劣っている
−−:L試料のほうがC試料よりも、試験において10%超劣っている
【0050】
防食性の試験
防食性は、ISO 2812 T2に従う40℃水中保存、DIN 53210に従う耐湿性(熱帯条件下試験)、およびDIN EN ISO 7253に従う塩水噴霧試験により、エポキシ−アクリル樹脂ハイブリッドエマルジョン((登録商標)Resydrol VAX 6267 w,Cytec Surface Specialties Austria 会社)系の防食性下塗り剤において、判定した。
【0051】
手順:容易に磨砕可能な稠度のペーストを得るため、必要量の分散剤を、磨砕用バッチの顔料混合物に添加した。必要であれば、粘度を、さならる水の添加により調整した。顔料含有混合物を、溶解機内で30分間分散させ、次いで、下塗り剤配合物を、塗料仕上げ用混合物で仕上げ、混合物を10分間均質化し、必要であれば、さらなる量の水で、80mPa・s〜120mPa・sの粘度に調整した。
【0052】
表7 腐食試験用塗料組成物
磨砕用バッチ:
水 10部
分散剤 下記参照
(登録商標)Bayferrox 130FS 12.6部 顔料1)
(登録商標)Heucophos ZPZ 38.1部 活性顔料2)
(登録商標)Setacarb OG 27.7部 顔料3)
(登録商標)Talkum AT 抽出物 17.8部 顔料4)
(登録商標)Additol XW 372 0.75部 消泡剤5)

塗料仕上げ用混合物:
(登録商標)Additol VXW 6388 0.8部 PU増粘剤5)
(登録商標)Resydol VAX 6267 217.5部 5)
【0053】
製造業者
1)Bayer 会社、2)Heubach、3)Omya 会社、4)、Norwegian Talc、5)Cytec Surface Specialties Austria 会社
【0054】
試験した分散剤:
実施例2.1の本発明による分散剤D1(20部、35%濃度)を試験に使用した。
【0055】
比較C1では、充分な分散結果を得るため、磨砕はバインダー(70部、40%濃度)中で直接行ない、分散はビーズミルにて行なう(持続時間1時間)。
【0056】
比較C2は、アクリレート系のアニオン性分散剤(10部、35%濃度;(登録商標)Orotan 681、Rohm & Haas)である。
【0057】
比較C3は、ポリエーテル改質分散剤(8.8部、40%濃度、(登録商標)Byk 190、Byk)である。
【0058】
水中保存および湿潤試験(humidity cabinet test)では、150im湿潤膜を、ECボンダーシート(bonder sheet)上に引き伸ばし(drawn)、水中保存前の乾燥時間を24時間とし、湿潤試験は、1週間の乾燥期間後に行なった。塩水噴霧試験(DIN EN ISO 7253)では、下塗り剤を被覆ECボンダーシートに塗布し、1週間の乾燥後、碁盤目に切断し、試験した。
【0059】
結果:
結果を表8にまとめる。
【0060】
表8 腐食試験の結果
【表7】

【0061】
ランク付け方式
0 :試料とC1試料間に差はなし
+ :試料の方がC1試料よりも、試験において10%まで良好である
++:試料の方がC1試料よりも、試験において10%より大きく良好である
− :試料の方がC1試料よりも、試験において10%まで劣っている
−−:試料の方がC1試料よりも、試験において10%より大きく劣っている
【0062】
これらの結果から、本発明による分散剤により、一連の最も多様な低溶媒顔料ペーストを調製すること、および塗料の性能性質に悪影響を及ぼすことなく優れた結果を伴う防食性塗料に顔料を付与することが可能であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法であって、該方法は、該顔料および該縮合樹脂ABを混合することを含み、該縮合樹脂は20mg/g〜180mg/gの酸価を有し、該縮合樹脂は、酸基を含有しかつ30mg/g〜240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーと不飽和脂肪族カルボン酸の二量化またはオリゴマー化によって得られる化合物とのコポリマーから選択される成分Aと、ヒドロキシル基を含有しかつ20mg/g〜300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol〜5,000g/molの数平均モル質量Mを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%〜90%であり、該成分Bの質量分率が70%〜10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になるものとする、顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法。
【請求項2】
酸基を含有するモノマーA1と酸基を有しない不飽和モノマーA2との共(joint)重合により得られるコポリマーを、前記酸基を含有する成分Aとして使用することを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記酸基を含有するモノマーA1が、3〜13個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1〜20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項4】
前記モノマーA1とA2の混合物中における前記モノマーA1の質量分率が、10%〜33%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシル基を含有するポリエステルBが、二価の脂肪族アルコールBlと脂肪族または芳香族カルボン酸B2との重縮合物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項6】
前記縮合樹脂ABが、顔料との混合前に、中和され、かつ水中に分散されることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項7】
前記縮合樹脂ABが、100gの前記縮合樹脂に対して顔料30g〜300gの質量比で顔料と混合されることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項8】
顔料と、分散剤としての縮合樹脂ABとを含む水希釈可能な顔料濃縮物であって、
−無機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が40g〜70gであり、前記分散剤の質量が5g〜20gであり、溶媒が最大10gであり、
−有機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が20g〜40gであり、前記分散剤の質量が5g〜40gであり、溶媒が最大10gであり、
−顔料がカーボンブラックの場合、100gの前記顔料濃縮物中で、該カーボンブラックの質量が15g〜30gであり、前記分散剤の質量が10g〜30gであり、溶媒が最大10gであり、
各々の場合、残りは水であり、前記縮合樹脂は20mg/g〜180mg/gの酸価を有し、かつ前記縮合樹脂は、酸基を含有し且つ30mg/g〜240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーのコポリマーAと、ヒドロキシル基を含有し且つ20mg/g〜300mg/gのヒドロキシル価及び500g/mol〜5000g/molの数平均モル質量Mを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%〜90%であり、該成分Bの質量分率が70%〜10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になることを特徴とする水希釈可能な顔料濃縮物。
【請求項9】
顔料と、分散剤としての縮合樹脂ABとを含む水希釈可能な顔料濃縮物であって、
−無機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が40g〜70gであり、前記分散剤の質量が5g〜20gであり、溶媒が最大10gであり、
−有機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が20g〜40gであり、前記分散剤の質量が5g〜40gであり、溶媒が最大10gであり、
−顔料がカーボンブラックの場合、100gの前記顔料濃縮物中で、該カーボンブラックの質量が15g〜30gであり、前記分散剤の質量が10g〜30gであり、溶媒が最大10gであり、
各々の場合、残りは水であり、前記縮合樹脂は20mg/g〜180mg/gの酸価を有し、かつ前記縮合樹脂は、不飽和脂肪族カルボン酸からの二量体化又はオリゴマー化によって得られる、酸基を含有し且つ30mg/g〜240mg/gの酸価を有する成分Aと、ヒドロキシル基を含有し且つ20mg/g〜300mg/gのヒドロキシル価及び500g/mol〜5000g/molの数平均モル質量Mを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%〜90%であり、該成分Bの質量分率が70%〜10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になることを特徴とする水希釈可能な顔料濃縮物。

【公開番号】特開2011−68915(P2011−68915A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2796(P2011−2796)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2006−520730(P2006−520730)の分割
【原出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(505456584)サイテク サーフェィス スペシャルティーズ オーストリア ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】