説明

顔料着色剤組成物及び該組成物を含有してなるカラーフィルター用顔料着色剤組成物

【課題】顔料の微分散性に優れ、特にアルカリ現像できる顔料分散剤を用いたカラーフィルター用着色剤に有用な顔料分散液の提供。
【解決手段】顔料、液媒体および高分子分散剤を含有する油性の顔料分散液からなり、高分子分散剤が、90質量%以上がメタクリレートモノマーで構成されるガラス転移温度が50℃以上のA−Bブロックコポリマーであり、Aブロックが、メタクリル酸を構成成分とし、酸価が50〜200mgKOH/g、数平均分子量が3,000〜15,000であり、Bブロックが、芳香族カルボン酸含有メタクリレートを構成成分とし、酸価が100〜360mgKOH/g、分子量が500〜5,000であり、A−Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度が1.6以下で、かつ、Bのポリマーブロックの含有量がA−Bブロックコポリマー中の5〜40質量%である顔料着色剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にカラーフィルター用の顔料着色剤とした場合に有用な顔料着色剤組成物、及び該組成物を含有してなるカラーフィルター用顔料着色剤組成物に関する。さらに詳しくは、顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤が、メタクリル酸を少なくとも構成成分とするAのポリマーブロックと、特有の芳香族カルボン酸含有メタクリレートとを構成成分とするBのポリマーブロックとからなるA−Bブロックコポリマーであるため、該高分子分散剤は、顔料の分散に作用し、かつ、カラーフィルター製造時のアルカリ現像時に対するアルカリ可溶性バインダーとして作用し得る顔料着色剤組成物となる。
【背景技術】
【0002】
昨今の情報化機器の非常な発展に伴い、液晶カラーディスプレーが情報表示部材として、テレビジョン、プロジェクター、パーソナル・コンピューター、モバイル情報機器、モニター、カーナビゲーション、携帯電話、電子計算機や電子辞書の表示画面、情報掲示板、案内掲示板、機能表示板、標識板などのディスプレー、デジタルカメラやビデオカメラの撮影画面など、あらゆる情報表示関連機器に多岐に亙って使用されている。それに伴い液晶カラーディスプレーに搭載されるカラーフィルターも、精細性、色濃度、光透過性、コントラスト性などの画像性能の色彩特性、光学特性の面でより優れた品質が要求されて来ている。
【0003】
従来のカラーフィルターの3原色画素に使用されるカラーフィルター用カラーでは、顔料の分散安定剤として、下記のようなものが使用されて、顔料の有機溶剤中の分散安定性を向上させ、顔料インキの粘度を下げ、長期保存安定性を維持させることが行われる場合があった。例えば、顔料の分散安定剤として、通常「シナジスト」と称される、顔料類似の色素誘導体にスルホン基などの酸性基を導入した色素誘導体(以下シナジストと称す場合がある)と、その対イオンである塩基性のアミノ基を有するポリマー型の高分子分散剤が組み合わされて使用されている。
【0004】
しかしながら、近年、高品質化が進行している液晶カラーテレビジョン用などに使用されるカラーフィルターでは、従来以上のカラー表示性能、例えば、色濃度、光透過性やコントラスト比などを向上させることが要求されている。このような状況下、画素の性能を改良するために、顔料の粒子径をどんどん小さくする超微粒子化の傾向にある。その結果、同じ重量の顔料は微粒子化された結果、粒子個数が増加し、顔料の全体としての表面積も非常に拡大したものになる。したがって、超微粒子化した顔料を安定に分散するために、シナジストおよび高分子分散剤の使用量をそれに合わせて増加せざるを得なくなる。しかし、画素の高色濃度化の要求から、顔料と樹脂皮膜形成成分の比率においては、高顔料含有率化などの画素塗膜組成への要求も厳しくなっており、インキの性状を維持することが非常に困難になってきている。なお、顔料を微細化する方法としては、ソルトミリングによる顔料を微細化し、粒子径を小さくする方法がある(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
また、前記した酸性基が導入されたシナジストと塩基性のアミノ基を有する高分子分散剤の組合せにおいて、該塩基性のアミノ基を有する高分子分散剤では、その分散剤の構造に酸性基を有することができない。これは樹脂構造中の酸性基とアミノ基がイオン結合してしまうからであり、この場合は、有機溶剤中でゲル化が起ったり、分子間や分子内でイオン結合しているので、シナジストとうまくイオン結合できず分散剤として機能しない。一方、カラーフィルター製造においては、露光後にアルカリ現像用水溶液で露光されていない部分を除去するが、このことに起因して下記の課題が生じる。アルカリ現像用水溶液で露光されていない部分を除去するために、酸基、例えば、カルボキシル基を有する現像ポリマーを添加し、アルカリ現像時にアルカリ現像用水溶液で現像ポリマーの酸基をイオン化中和し、水可溶とさせ除去させる。このため、前記した塩基性のアミノ基を有する高分子分散剤は、酸基を構造中にもつことができないので、該高分子分散剤は、アルカリ現像用水溶液に溶解せず、現像時間が遅かったり、画素エッジがシャープでなかったりと、現像性を悪化させる原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−179111号公報
【特許文献2】特開2003−227921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、顔料の微分散が可能で、保存安定性がよい、高分散性を与える新規な高分子分散剤を使用してなる顔料着色剤組成物を提供することにある。そして、特に、液晶カラーテレビジョンなどの情報表示機器に装備されるカラーフィルター用とした場合に、カラーフィルターに要求される画素の色の高濃度化、高精細性、高コントラスト性などの光学的特性の要求に対応させつつ、カラーフィルターの塗布特性、保存性安定性などの特性を向上させ、かつ、その高分子分散剤が、カラーフィルター製造時のアルカリ現像において、アルカリ溶解するアルカリ可溶性バインダーとして作用する現像特性を有するカラーフィルター用に好適な顔料着色剤組成物を提供することにある。この高分子分散剤がアルカリ現像できることによって、フィルター膜のアルカリ可溶性の樹脂分を減らすことができるという効果も得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる問題点を解決すべく鋭意研究した結果、高分子分散剤として、溶剤溶解鎖でありかつアルカリ現像に作用するメタクリル酸由来のカルボキシル基を有するAのポリマーブロックと、顔料吸着性を有する芳香族系カルボキシル基を有するBのポリマーブロックとを有する構造のA−Bブロックコポリマーを使用することで、下記の種々の効果が得られることを見出して本発明を達成した。すなわち、上記特有の構造を有するA−Bブロックコポリマーを高分子分散剤として用い、顔料、好ましくは顔料表面に塩基性を有する色素誘導体で処理された顔料を分散することで、顔料分散を達成し、顔料を微粒子分散することができ、低粘度で長期安定性を保持し、顔料の高含有率を保つ顔料分散液とできる。また、上記構成によって、高分子分散剤自体にアルカリ現像性が発現し、現像速度の調整やシャープなエッジ画素を得ることができる、という現像性を向上させた顔料着色剤組成物が得られる。さらに、この顔料着色剤組成物を使用したカラーフィルター用カラーを使用することで、画素の色濃度を向上させつつ、透過率やコントラスト比などの光学的特性、現像性が優れたカラーフィルターの画素が形成される。
【0009】
すなわち、上記効果が得られる本発明の構成は以下の通りである。
少なくとも、顔料、液媒体および高分子分散剤を含有する油性の顔料分散液からなる顔料着色剤組成物であって、上記高分子分散剤が、
1)90質量%以上がメタクリレートモノマーで構成されるガラス転移温度が50℃以上のA−Bブロックコポリマーであって、
2)該ブロックコポリマーを構成するAのポリマーブロックは、メタクリル酸を少なくとも構成成分とし、酸価が50〜200mgKOH/gであり、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000であり、
3)該ブロックコポリマーを構成するBのポリマーブロックは、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを構成成分とし、その酸価が100〜360mgKOH/gであり、かつ、A−Bブロックコポリマーの数平均分子量から、上記Aのポリマーブロックの数平均分子量を引いた分子量が500〜5,000であり、
4)A−Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、かつ、Bのポリマーブロックの含有量がA−Bブロックコポリマー中の5〜40質量%であることを特徴とする顔料着色剤組成物。
【0010】
本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。顔料着色剤組成物中における前記顔料の平均粒子径が、10〜100nmである上記の顔料着色剤組成物。さらに、塩基性である官能基を有する色素誘導体を含有してなる上記の顔料着色剤組成物。
【0011】
前記高分子分散剤が、有機ヨウ化物を開始化合物とし、リン化合物、窒素化合物、酸素化合物又は炭素化合物を触媒とするリビングラジカル重合法である可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法によって得られたものである上記の顔料着色剤組成物。該リン化合物は、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、又は、フォスフィネート系化合物であり、前記窒素化合物は、イミド類又はヒダントイン類であり、前記酸素化合物は、フェノール系化合物であり、前記炭素化合物は、ジフェニルメタン又はシクロアルケン系化合物である上記の顔料着色剤組成物。前記重合法における重合温度が、20〜50℃である上記の顔料着色剤組成物。前記2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物が、フタル酸、トリメリット酸及びナフタレンジカルボン酸からなる群から選択されるいずれかである上記の顔料着色剤組成物。
【0012】
本発明の別の実施形態は、上記いずれかの顔料着色剤組成物を含有してなることを特徴とするカラーフィルター用顔料着色剤組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明を特徴づける上記特有の構造のA−Bブロックコポリマーからなる高分子分散剤を使用することで、顔料が良好な状態に微分散され、低粘度で長期安定性が保持される顔料着色剤組成物が提供される。また、該顔料着色剤組成物をカラーフィルター用着色剤として使用した場合は、高濃度、高精細化、高コントラスト、高透明性の優れた画素特性を発現し、かつ、アルカリ現像における現像性に優れたカラーフィルター用レジストを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に好ましい実施態様を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明の顔料着色剤組成物は、特有の構造を有するA−Bブロックコポリマーからなる高分子分散剤を含有してなることを特徴とする。本発明の顔料着色剤組成物は、少なくとも、顔料、液媒体および高分子分散剤を含有する油性の顔料分散液である。以下、これらの構成成分について説明する。
【0015】
(顔料)
顔料としては、従来公知の有機顔料、無機顔料を使用できるが、特に好ましくは、カラーフィルター、さらにはブラックマトリックスに使用されている顔料である。具体的には、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ・チオインジゴ顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料からなる群から選ばれた赤色、緑色、青色顔料および黄色、橙色、紫色あるいは黒色顔料が挙げられる。
【0016】
特に好ましくは、カラーフィルターで使用されている下記の各色の顔料が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド(PR)56、58、122、166、168、176、177、178、224、242、254、255が挙げられる。緑色顔料としては、ピグメントグリーン(PG)7、36、58、ポリ(14〜16)ブロム銅フタロシアニン、ポリ(12〜15)ブロム−ポリ(4〜1)クロル銅フタロシアニンが挙げられる。青色顔料としては、ピグメントブルー15:1、15:3、15:6、60、80などが挙げられる。上記の顔料に対して補色顔料あるいは多色型の画素用顔料として、黄色顔料として、例えば、ピグメントイエロー(PY)12、13、14、17、24、55、60、74、83、90、93、126、128、138、139、150、154、155、180、185、216、219、ピグメントバイオレット(PV)19、23を使用することができる。また、ブラックマトリックス用の黒色顔料としては、ピグメントブラック(PBK)6、7、11、26、銅・マンガン・鉄系複合酸化物などが挙げられる、その一次粒子径は特に限定されないが、微細化された5〜50nmの顔料を使用することが好ましい。このような一次粒子径のものを使用し、後述する本発明を特徴づける高分子分散剤によって分散させれば、顔料を微粒子分散でき、分散液中の顔料の平均粒子径が10〜100nmの顔料着色剤組成物が容易に得られる。
【0017】
(液媒体)
本発明で使用される液媒体は、従来公知の有機溶剤を使用することができ、特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、ヘキサンやトルエンなどの炭化水素系溶剤;ブタノールなどのアルコール系溶剤;酢酸プロピルや酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;シクロヘキサノンやメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートやジプロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコール系エステル又はエーテル溶剤;N−メチルピロリドンやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶剤などが挙げられ、1種以上が使用される。
【0018】
(高分子分散剤)
次に、本発明を特徴づける高分子分散剤について説明する。該高分子分散剤は、90質量%以上がメタクリレートモノマーで構成されるガラス転移温度が50℃以上のA−Bブロックコポリマーであって、各ポリマーブロックがそれぞれ下記の条件を満足する構造を有することを特徴とする。
【0019】
Aのポリマーブロックは、メタクリル酸を少なくとも構成成分とし、酸価が50〜200mgKOH/gであり、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000であることを要する。また、Bのポリマーブロックは、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを構成成分とし、その酸価が100〜360mgKOH/gであり、かつ、A−Bブロックコポリマーの数平均分子量から、上記Aのポリマーブロックの数平均分子量を引いた分子量が500〜5,000であることを要する。さらに、A−Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、かつ、Bのポリマーブロックの含有量がA−Bブロックコポリマー中の5〜40質量%であることを要する。
【0020】
上記した構造を有するA−Bブロックコポリマーは、少なくともメタクリル酸を有するAのポリマーブロックを重合後、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と、水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを重合してBのポリマーブロックを生成して得ることができる。
【0021】
本発明を特徴づける高分子分散剤は、A−Bブロックコポリマーであって、Aのポリマーブロック(以下、単にAブロックと呼ぶ)にメタクリル酸由来のカルボキシル基、Bのポリマーブロック(以下、単にBブロックと呼ぶ)には芳香族結合カルボキシル基を有することを特徴とする。Aブロックは、溶剤可溶性鎖であり、それに含有されるカルボキシル基は、カラーフィルター製造時のアルカリ現像でのアルカリ溶解に作用するものである。Bブロックは、顔料吸着性鎖であり、芳香族による顔料とのπ−πスタッキングによる吸着作用と、カルボキシル基と顔料、好ましくは塩基性の色素誘導体で処理された表面が塩基性の顔料とのイオン結合による吸着作用が達成され、顔料の微分散がなされる。
【0022】
このAブロックとBブロックはいずれもカルボキシル基を有するが、Bブロックのカルボキシル基が選択的に顔料、塩基性表面の顔料とイオン結合による吸着を起こすためには、Bブロックのカルボキシル基の酸性度がAブロックのカルボキシル基の酸性度よりも強い必要がある。言い換えるとBブロックの形成に用いるモノマーのカルボキシル基のpKa値が、Aブロックの形成に用いるモノマーのカルボキシル基のpKa値よりも小さい必要がある。Aブロックの形成に用いるモノマーよりも強い酸性度を持つ(pKa値の低い)モノマーをBブロックに用いることで、選択的にBブロックが顔料に吸着し、この結果、安定に顔料を微分散することができる。pKa値については、Aブロックの形成に用いるカルボキシル基を有するモノマーとBブロックの形成に用いるカルボキシル基を有するモノマーのpKa値の差が0.3以上あることが望ましい。0.3未満であると、Aブロックも顔料に吸着してしまい十分に溶剤と親和せず、顔料を微細な状態で分散安定化させることができにくくなる傾向があり、好ましくない。
【0023】
以下に代表的なポリマー又は化合物のカルボキシルのpKa値を示す。メタクリル酸モノマーのpKa値は4.66、ポリメタクリル酸のpKa値は、5.65(handbook of water-soluble gums and resin (1980))である。フタル酸モノ長鎖エステルのpKa値は、4.2(J. of physical chemistry(1975) 79 1176-1182)であり、一般的に芳香族に結合したカルボキシル基の方がメタクリル酸よりもpKa値は低い値となることが知られている。このことから、本発明で使用するA−Bブロックコポリマーは、Bブロックのカルボキシル基の方がAブロックのカルボキシル基よりも強酸性となるように設計されており、結果として、塩基性表面の顔料吸着の方向に働く。これが本発明を特徴づける高分子分散剤の基本構成であって、従来の分散剤と異なる一つの特徴点である。
【0024】
まず、本発明で使用する高分子分散剤を特徴づける構造としては、該分散剤を構成するモノマーは90質量%以上がメタクリレートモノマーであり、好ましく95%以上である。このメタクリレートを使用するのは、分散剤の構造として良好なだけでなく、本発明を特徴づける分散剤の合成方法であるリビングラジカル重合において、メタクリレートの方が、重合収率がよく、分子量分布も狭く、ブロック化も容易であるためである。アクリレートやスチレン系、ビニル系が存在すると、分子量分布が広くなったり、重合収率が悪かったりするので、これらのモノマーを使用すると、そのヨウ素末端が安定であり、本発明の重合に使用される触媒によって脱離する速度が非常に遅い、又は、脱離しないためである。
【0025】
本発明で使用する高分子分散剤は、Aブロックにメタクリル酸、Bブロックに2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを有することを特徴とする。上記で使用されるカルボキシル基含有のメタリレートとしては、以下のものが挙げられる。例えば、メタクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの如き水酸基含有メタクリレートにフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの1つの芳香環又は多環芳香族に2個以上のカルボキシル基を有する化合物、又は、その酸ハロゲン化物、酸無水物を反応させて、その芳香族化合物の1個のカルボキシル基がエステル化されているメタクリレートが使用できる。これらの化合物の性質としては、先に述べた理由から、残りのカルボキシル基の酸性度がメタクリル酸のカルボキシル基の酸性度よりも強いことが好ましい。本発明で好ましくは、入手が容易で、溶解性があるフタル酸、トリメリット酸、ナフタレンジカルボン酸が使用される。
【0026】
本発明で使用される他の構成するメタクリレートとしては、従来公知のものが使用され、特に限定されない。例示すると、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどの脂肪族、脂環族アルコールのメタクリレート;メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチルなどの芳香環を含有するメタクリレート;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエトキシエチルなどのグリコールのメタクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリセロール、メタクリル酸ポリ(n=2以上)エチレングリコール、メタクリル酸ポリ(n=2以上)プロピレングリコールなどの水酸基含有(メタ)アクリレート、アミノ基を含有するモノマーとして、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0027】
他のモノマーを列記すると、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸オキセタニルメチルなどの酸素原子を有するメタクリレート、メタクリル酸オクタフルオロオクチル、メタクリル酸テトラフルオロエチルなどのハロゲン元素含有(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル、メタクリル酸2−(2’−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの如き紫外線を吸収するモノマー、トリメトキシシリル基やジメチルシリコーン鎖をもったケイ素原子含有メタクリレート、また、これらのモノマーを重合して得られるオリゴマーの片末端にメタクリル基由来の不飽和結合を導入して得られるマクロモノマーなども挙げられる。加えて、10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で、従来公知のアクリレート系、スチレン系、ビニル系などの不飽和結合含有モノマーが使用できる。
【0028】
[Aブロック]
次に、本発明で使用する高分子分散剤であるA−Bブロックコポリマーを構成するAブロックについて説明する。Aブロックは、メタクリル酸を少なくとも構成成分とし、酸価が50〜200mgKOH/gであり、かつゲルパーミエーションクロマトグラフにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000であることを要する。高分子分散剤として作用した時に、溶剤溶解性鎖として作用し、アルカリ現像できるポリマーブロックである。本発明で使用するA−Bブロックコポリマーのガラス転移温度(Tg)は50℃以上であるが、当該ガラス転移温度は、Aブロックのモノマー組成によって決定されるところが大きいので、この点を考慮してモノマーの配合を決定するようにするとよい。すなわち、Aブロックのガラス転移温度が50℃以上になるようにモノマー組成を決定することが好ましい。
【0029】
Aブロックのカルボキシル基はメタクリル酸由来であることが必須である。Bブロックのカルボキシル基が顔料に吸着するが、Aブロックは弱酸性であるために、顔料吸着せずに溶剤に溶解する鎖となることができる。その酸価は50〜200mgKOH/gであることを要し、50mgKOH/g未満であると十分なアルカリ現像性を発揮できず、200mgKOH/gよりも大きいと耐水性などが悪く、アルカリ現像時に剥離などを起こす可能性がある。
【0030】
また、Aブロックの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000であることを要す。Aブロックの分子量が3,000未満の構成の高分子分散剤であると、分子量が小さすぎて顔料分散時の立体反発が発揮できず安定な分散体にならず、一方、分子量が15,000よりも大きいと溶解している部分の分子量が大きくなるので、粘度が高くなったり、分子量が大きい分、吸着部が少なくなることによって、相対的に分散剤量を増やさなくてはならず、好ましくない。
【0031】
先に述べたとおり、本発明で使用するA−Bブロックコポリマーのガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることを要するが、好ましくはAブロックのガラス転移温度が50℃以上になるようにするとよい。これは50℃未満であると、カラーフィルターなどに使用して膜となった場合、軟質となってしまい、高温下で樹脂の溶融が起こりやすく顔料が凝集するなどの問題が起き易くなったり、膜としての強度が悪くなるからである。カラーフィルター用カラーの場合では、ガラス基板に塗布された塗膜を200℃以上の高温でベイクする工程があり、樹脂のTgが低いと溶融して顔料凝集を引き起こしコントラストの低下を招いてしまう。より好ましくは70℃以上がよい。
【0032】
このガラス転移点については、従来公知の熱分析などの測定によって得られるアクリル樹脂のランダムポリマーの実測値である。又は、従来公知の方法で算出できる値でもよい。この算出方法は、X(Xは2以上)成分のモノマーからなるアクリル樹脂のTgは、その各成分モノマーのホモポリマーのTgと、そのモノマーの質量比率から、次の式で算出できる。
1/T=A/Ta+B/Tb+C/Tc・・・+X/Tx
(TはそのランダムポリマーのTgで絶対温度、A、B、C・・・はX成分における質量比率、Ta、Tb、Tc・・・はそれぞれのモノマーのホモポリマーのTgで絶対温度)
Aブロックは、メタクリル酸を必須構成成分とし、そのTgが50℃以上になるように前記に挙げたようなメタクリレートを1種以上配合するとよい。
【0033】
[Bブロック]
次に、本発明で使用する高分子分散剤であるA−Bブロックコポリマーを構成するBブロックについて説明する。Bブロックは、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを構成成分とし、その酸価が100〜360mgKOH/gであり、かつ、A−Bブロックコポリマーの数平均分子量から、上記Aブロックの数平均分子量を引いた分子量が500〜5,000であることを要する。
【0034】
Bブロックの必須構成成分である、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレート(以下、単に「芳香族カルボン酸含有メタクリレート」と呼ぶ)としては、例えば、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシ−2−メチルエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシブチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルイソフタル酸、1−(2−メタクリロイロキシエチル)−8−ナフタレンカルボン酸、1−(2−メタクリロイロキシエチル)−2,4(又は2,5)−ベンゼンジカルボン酸、1−(2−メタクリロイロキシエチル)−2,4,5−ベンゼントリカルボン酸などが挙げられる。これらの芳香族カルボン酸含有メタクリレートを得るのに必要となる2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物としては、芳香環に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であればすべて使用できるが、特に(無水)フタル酸、(無水)トリメリット酸及びナフタレンジカルボン酸(無水物)からなる群から選択されるいずれかが好ましい。Aブロックの場合と同様に、これらを単独で用いることもできるし、前記に挙げたような他のメタクリレートを1種以上併用してもよい。その酸価は、100〜360mgKOH/gであることを要するが、酸価の値は、その他のメタクリレートで調整できる。この酸価については、100mgKOH/g未満であると吸着性に乏しくなり、360mgKOH/gを超えると、複数の顔料粒子間で吸着が起こり、凝集し、顔料の微分散ができなくなる。Bブロックの酸価は、150〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0035】
また、Bブロックの分子量は、Aブロック重合後の数平均分子量の値を、A−Bブロックコポリマー生成後の数平均分子量の値から引いて求める。Bブロックは、こうして求めた分子量の範囲が500〜5,000となるように構成する。該分子量が500未満の構成の高分子分散剤では吸着性が弱い場合があり、一方、Bブロックの分子量が5,000を超える場合は、顔料粒子間で吸着が起こる可能性がある。より好ましくは、Bブロックの分子量が1,000〜3,000となるようにする。
【0036】
[A−Bブロックコポリマー]
それぞれが上記した特定の構成からなるAブロックとBブロックを持つA−Bブロックコポリマーは、該コポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、かつ、Bブロックの含有量がA−Bブロックコポリマー中の5〜40質量%であることを要す。上記のように分子量分布を規定した理由は、そのAブロック、Bブロックの分子量に関係があり、分子量分布が広いと前記した範囲のそれぞれの分子量にならない可能性があるからである。また、分子量分布が1.6以下であるということは、Aブロック及びBブロックの分子量が揃っていることを意味する。より好ましくは、分子量分布は1.5以下である。また、特に、Aブロックの分子量分布を狭くすることで、Bブロックの分布が決定する。Bブロックの分子量が均一になるように、Aブロックの分子量分布は1.4以下であることが好ましい。
【0037】
また、A−Bブロックコポリマー100質量%中のBブロックの含有量は、5〜40質量%である。さらに、A−Bブロックコポリマーは、AブロックとBブロックとの比率を上記の範囲内とし、かつ、各ブロックが前記した分子量範囲にあうように調整される。Bブロックの含有量が5質量%未満だと、該構成の高分子分散剤では顔料吸着部分が小さすぎて吸着・脱離してしまい、分散を不安定化させる恐れがある。一方、含有量が40質量%より多いと、該構成の高分子分散剤ではAブロックの溶剤溶解性鎖が少なくなり、分散安定性が保てない可能性がある。より好ましくは、Bブロックの含有量は10〜30質量%である。
【0038】
上記のように規定したAブロックとBブロックとで構成される本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、下記のような方法で得ることができる。本発明で使用する高分子分散剤は、ブロックコポリマー型の分散剤であり、少なくともメタクリル酸を有するAブロックを重合して生成後、芳香族カルボン酸含有メタクリレートを重合してBブロックを生成することで得ることができる。これは、Bブロックを生成するために芳香族カルボン酸含有メタクリレートを重合した後、Aブロックを生成するためにメタクリル酸を含むモノマーを重合すると、その芳香族カルボン酸含有メタクリレートは分子量が大きく、重合性が悪く、残存モノマーとなる結果、その後にAブロックを生成するためにメタクリル酸を含むモノマーを重合すると、溶剤溶解性鎖(Aブロック)にその芳香族カルボン酸含有モノマーが導入されてしまうことが起こるため、本発明で規定するA−Bブロックコポリマーの特徴を有さないものになる。先にメタクリル酸を含むモノマーを重合してAブロックを生成し、その後にBブロックを生成した場合は、Aブロック生成の重合率が悪く、残存モノマーとなったとしても、芳香族カルボン酸含有モノマーを含むBブロックを構成するポリマーに、Aブロックの残存モノマーが導入されても問題はなく、本発明で規定するA−Bブロックコポリマーが得られる。本発明を特徴づける高分子分散剤であるA−Bブロックコポリマーは、一方の鎖のみに芳香族カルボン酸を含有することが必須であり、そのような構成のものが得られればよく、その製造方法はいずれの方法であってもよい。
【0039】
考え方としては、Bブロックの芳香族カルボン酸含有モノマーを重合した後、精製して残存するモノマーを除去して、その後にメタクリル酸を含むモノマーを重合するという考え方があり、このような方法によっても本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーを得ることができる。しかしながら、上記の方法では工業的に工程が多くなり、コストが高くなってしまうので好ましくない。また、水酸基含有モノマーを重合してブロックポリマーとした後、2個以上のカルボキシル基含有芳香族化合物を反応させる方法によっても本発明で規定するA−Bブロックコポリマーを得ることができる。しかし、この方法では、芳香族化合物が未反応となって残存し、その残存芳香族化合物が顔料とイオン吸着してしまい、本発明を特徴づける高分子分散剤が有効に働かない場合がある。上記したような理由から、本発明では、先に述べたように、メタクリル酸を有するAブロックを重合して生成後、あらかじめ得ておいた2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である、Bブロックを生成するための芳香族カルボン酸含有メタクリレートを使用して重合を完結させて、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーを得ることが好ましい。このようにして得られたA−Bブロックコポリマーは、精製工程などの煩雑な工程を設けることなく、本発明で規定する要件を満たすものとなり、得られたA−Bブロックコポリマーを本発明の顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤とすれば、該組成物の有効な成分として働き、顔料に対して高度な分散(微分散と高安定性)を与える。
【0040】
次に、本発明を特徴づける高分子分散剤(A−Bブロックコポリマー)の合成方法について、さらに詳細に説明する。本発明を特徴づける構造のポリマーは、カチオン重合やリビングラジカル重合で得ることができる。しかし、カチオン重合は低温反応、材料の精製などが必要であり、容易に得ることができない。また、リビングラジカル重合は次のものが例示される。このリビングラジカル重合の例としては、ニトロキサイドを使用するニトロキサイド法(Nitroxide mediated polymerization、以下NMP法と略)、ハロゲン元素である保護基を金属錯体によって引き抜いたりする方法である原子移動ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polymerization、以下ATRP法と略)、ジチオエステルやザンテート化合物を使用する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(Revarsible Addition Fragmentation Transfer Polymerization、以下RAFT法と略)、有機テルル化合物、有機ビスマス化合物などを使用する方法、コバルト錯体を使用する方法、ヨウ素移動重合、ヨウ素を保護基とし、触媒としてリン、窒素、酸素、炭化水素の化合物を使用する可逆的触媒移動重合法(Revarsivle Transfer Catalized Polymerization、以下RTCP法と略)などが使用できる。
【0041】
しかし、NMP法はアクリレート、スチレン系などのモノマーは重合に使用することができるが、メタクリレートを用いた場合には十分な構造制御ができない。これは末端の解離による3級ラジカルの副反応が伴うからである。また一般的に高温が必要であり、またそのニトロキサイドは特殊な化合物であり、コストが高く、環境の面でも安全性が保証されない。また、ATRP法では、アミン系の錯体を使用するので、カルボキシル基含有モノマーをそのまま使用できない。したがって、本発明のメタクリル酸や芳香族カルボン酸含有モノマーをそのまま使用できない。考え方では、カルボキシル基をブロック(保護)しておいて、水酸基含有モノマーをブロック共重合させて、その水酸基に2個以上のカルボキシル基を含む化合物を反応させた後、カルボキシル基の保護をはずしてカルボン酸とする方法があるが、工程が多く、煩雑で工業的にコスト高である。RAFT法は多種のモノマーを使用した場合、低分子量分布になりづらく、かつ硫黄臭や着色などの不具合がある。有機テルルなどを使用する方法は、有機金属が高価であり、環境的な安全性も不明であるので、その安全性試験にコストがかかり、不適である。
【0042】
本発明者らの検討によれば、本発明で規定する高分子分散剤(A−Bブロックコポリマー)を得るために使用される重合方法は、従来のラジカル重合に、重合開始化合物と触媒を併用するだけで容易に行える重合方法であるRTCP法が適している。
【0043】
上記したRTCP方法は、下記反応式(1)で表される反応機構で進行するものと考えられる。すなわち、ドーマント種Polymer−X(P−X)の成長ラジカルへの可逆的活性反応によって重合が進行する。この重合機構は、触媒の種類によって変わる可能性があるが、次のように進むと考えられる。反応式(1)では、ラジカル開始剤(重合開始剤)から発生したP・がXAと反応して、in−situで触媒A・が生成する。A・はP−Xの活性化剤として作用して、この触媒作用によってP−Xは高い頻度で活性化する。
【0044】

【0045】
さらに詳しくは、ヨウ素(X)が結合した有機ヨウ素化合物を重合開始化合物として用いると、熱や光により発生したヨウ素ラジカルがモノマーと反応し、ポリマー末端ラジカルが生成する。逐次発生したヨウ素ラジカルはポリマー末端ラジカルと結合して安定化するので、停止反応が生ずるのを防止することができる。この繰り返しによりリビングラジカル重合が進行するため、得られるA−Bブロックコポリマー分子量や構造を容易に制御することができる。
【0046】
上記したヨウ素化合物は、熱や光の作用によりヨウ素ラジカルを発生し得るものであれば特に限定されない。具体的に例示すると、2−アイオド−1−フェニルエタン、1−アイオド−1−フェニルエタンなどのアルキルヨウ化物;2−シアノ−2アイオドプロパン、2−シアノ−2−アイオドブタン、1−シアノ−1−アイオドシクロヘキサン、2−シアノ−2−アイオドバレロニトリルなどのシアノ基含有有機ヨウ化物などを挙げることができる。
【0047】
これらの化合物は、市販品の有機ヨウ素化合物をそのまま使用することもできるが、従来公知の方法で得ることもできる。例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物とヨウ素を反応させることで得ることができる。また、臭素や塩素などのヨウ素以外のハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物とともに、第4級アンモニウムアイオダイドやヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物塩とを使用し、反応系中でハロゲン交換反応を起こさせて有機ヨウ素化合物を発生させてもよい。
【0048】
また、リビングラジカル重合においては、有機ヨウ素化合物からヨウ素原子を引き抜いてヨウ素ラジカルを生じさせ得る触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート化合物などのリン系化合物;イミド系化合物などの窒素系化合物;フェノール系化合物などの酸素系化合物;ジフェニルメタン系化合物、シクロペンタジエン系化合物などの活性な炭素原子を含む炭化水素化合物を挙げることができる。なお、これらの触媒を一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
リン系化合物の具体例としては、三ヨウ化リン、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネートなどが挙げられる。窒素系化合物の具体例としては、スクシンイミド、2,2−ジメチルスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、N−アイオドスクシンイミド、ヒダントインなどが挙げられる。酸素系化合物の具体例としては、フェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t−ブチルフェノール、カテコール、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンなどが挙げられる。炭化水素化合物の具体例としては、シクロヘキサジエン、ジフェニルメタンなどが挙げられる。触媒の使用量(モル数)は、後述する重合開始剤の使用量(モル数)未満である。触媒の使用量が多すぎると、重合が進行し難くなる場合がある。
【0050】
上記したリビングラジカル重合する際の温度は20〜50℃とすることが好ましい。特に、酸基を有する(メタ)アクリル酸系化合物としてメタクリル酸を用いるので、リビングラジカル重合する際の温度を上記の温度範囲内とすることが好ましい。温度が高すぎると、重合末端のヨウ素ラジカルがメタクリル酸によって分解しやすく、形成されるポリマー末端が安定せずに、リビングラジカル重合が進行し難くなる場合がある。
【0051】
リビングラジカル重合の際には、ヨウ素ラジカルが発生しやすいように重合開始剤を添加することが好ましい。この重合開始剤としては、アゾ系開始剤や過酸化物系開始剤などの従来公知の化合物が使用される。但し、重合開始剤としては、上記の重合温度で十分にヨウ素ラジカルを発生させ得る化合物が好ましい。具体的には、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、重合するモノマーの0.001〜0.1モル倍とすることが好ましく、0.002〜0.05モル倍とすることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量が少なすぎると、リビングラジカル重合が十分に進行しない場合がある。一方、重合開始剤の使用量が多すぎると、リビングラジカル重合ではない通常のラジカル重合が副反応として進行する可能性がある。
【0052】
リビングラジカル重合は、有機溶剤を使用しないバルク重合としてもよいが、溶剤を使用する溶液重合とすることが好ましい。溶剤は、ヨウ素化合物、触媒、モノマー、及び重合開始剤を溶解可能な溶剤であることが好ましく、前記した有機溶剤の1種以上が使用される。
【0053】
溶液重合するに際し、重合液の固形分濃度(モノマー濃度)は特に限定されないが、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%とする。固形分濃度が5質量%未満であると、モノマー濃度が低すぎて重合が完結しない可能性がある。一方、固形分濃度が80質量%を超えると、実質的にバルク重合となって重合液の粘度が高くなりすぎてしまう。このため、撹拌が困難になるとともに、重合収率が低下する傾向にある。
【0054】
リビングラジカル重合は、モノマーがなくなるまで行うことが好ましい。具体的には、重合時間は0.5〜48時間とすることが好ましく、実質的には1〜24時間とすることがさらに好ましい。また、重合雰囲気は特に限定されず、通常の範囲内で酸素が存在する雰囲気であっても、窒素気流雰囲気であってもよい。また、重合に使用する材料(モノマーなど)は、蒸留、活性炭処理、又はアルミナ処理などにより不純物を除去したものを用いてもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。さらに、遮光下で重合を行ってもよいし、ガラスなどの透明容器中で重合を行ってもよい。
【0055】
重合開始化合物(ヨウ素化合物)の使用量を調整することによって、得られるA−Bブロックコポリマーの分子量を制御することができる。具体的には、重合開始化合物のモル数に対して、モノマーのモル数を適切に設定することで、任意の分子量のA−Bブロックコポリマーを得ることができる。例えば、重合開始化合物を1モル使用し、分子量100のモノマーを500モル使用して重合した場合、「1×100×500=50,000」の理論分子量を有するA−Bブロックコポリマーを得ることができる。すなわち、A−Bブロックコポリマーの理論分子量を下記式(2)で算出することができる。なお、上記の「分子量」は、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)のいずれをも含む概念である。
「A−Bブロックコポリマーの理論分子量」=「重合開始化合物1モル」×「モノマー分子量」×「モノマーのモル数/重合開始化合物のモル数」・・・(2)
【0056】
なお、上述のリビングラジカル重合では、二分子停止や不均化の副反応を伴う場合があるので、上記の理論分子量を有するA−Bブロックコポリマーが得られない場合がある。A−Bブロックコポリマーは、これらの副反応が起こらずに得られたものであることが好ましい。但し、カップリングによって得られるA−Bブロックコポリマーの分子量が多少大きくなっても、重合反応が途中で停止して得られるA−Bブロックコポリマーの分子量が多少小さくなってもよい。また、重合率は100%でなくてもよい。さらに、重合を一旦終了した後、重合開始剤や触媒を添加して残存するモノマーを消費させて重合を完結させてもよい。すなわち、A−Bブロックコポリマーが生成していればよい。
【0057】
得られたA−Bブロックコポリマーは、重合開始化合物として用いた有機ヨウ素化合物に由来するヨウ素原子が結合した状態のままであってもよいが、ヨウ素原子を脱離させることが好ましい。ヨウ素原子をA−Bブロックコポリマーから脱離させる方法としては、従来公知の方法であれば特に限定されない。具体的には、A−Bブロックコポリマーを加熱したり、酸やアルカリで処理したりすればよい。また、A−Bブロックコポリマーをチオ硫酸ナトリウムなどで処理してもよい。脱離したヨウ素は、活性炭やアルミナなどのヨウ素吸着剤で処理して除去するとよい。
【0058】
(色素誘導体)
本発明の顔料着色剤組成物では、本発明を特徴づける高分子分散剤の芳香族カルボン酸とイオン結合してなる吸着のために、さらに、塩基性であるアミノ基が導入された色素誘導体を使用することが好ましい。本発明における色素誘導体とは、本発明の顔料着色剤組成物に使用される顔料と同じ分子構造の化合物や、その構造に類似した化合物、その顔料に使用される原料の構造やその類似構造のことであって、特に限定されない。例えば、アゾ系色素骨格、フタロシアニン系色素骨格、アントラキノン系色素骨格、トリアジン系色素骨格、アクリジン系色素骨格、ペリレン系色素骨格などが挙げられる。その塩基性であるアミノ基としては、1級、2級、3級、4級の従来公知のアミノ基や第4級アンモニウム塩であり、さらにはスルホアミド基も含まれる。該アミノ基は色素骨格に直接結合していてもよいが、アルキル基やアリール基などの炭化水素基;エステル、エーテル、スルホン、ウレタン結合によって炭化水素基を介して結合していてもよい。
【0059】
(その他の添加剤)
本発明の顔料着色剤組成物は、上記で説明した構成を有すればよく、これら以外に、従来公知の他の添加剤や樹脂を添加してもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、光重合開始剤などの添加剤が挙げられ、樹脂としては例えば、感光性の樹脂ワニスと非感光性の樹脂ワニスが使用される。感光性樹脂ワニスの具体例としては、例えば、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂など、および不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などのワニス、或いはこれらにさらに反応性希釈剤としてモノマーが加えられたワニスが挙げられる。上記感光性樹脂ワニスの中で好適な樹脂としては、分子中にフリーのカルボン酸基を有するアルカリ現像可能なアクリレート系の樹脂が望ましい。
【0060】
非感光性の樹脂ワニスの具体例としては、例えば、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂などが挙げられ、これらは単独或いは2種以上を組み合わせて使用される。
【0061】
また、顔料、高分子分散剤、さらに色素誘導体において、そのまま別個に配合して分散してもよいが、顔料を顔料化や微細化する際に色素誘導体を添加して、色素誘導体で顔料の表面を塩基性にした表面処理顔料にして使用してもよいし、さらに加えて高分子分散剤を、色素誘導体の存在下又は非存在下で、顔料化や微細化時に添加して、顔料を高分子分散剤で処理して、樹脂処理顔料として使用してもよい。
【0062】
上記で述べたように、本発明の顔料着色剤組成物は、本発明を特徴づける高分子分散剤、顔料を少なくとも含み、好ましくは色素誘導体を使用して、有機溶剤で、必要に応じて添加剤や樹脂を添加して顔料の微分散がなされる。顔料とそれに対する高分子分散剤の使用量は特に限定されないが、顔料を5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%含有するのが好ましく、前記高分子分散剤は、顔料100質量部当たり5〜300質量部の割合で使用されるのが好ましく、さらに好ましくは10〜100質量部の割合である。色素誘導体は、顔料に対して1〜50質量%、好ましくは、5〜20質量%が使用される。
【0063】
本発明の顔料着色剤組成物を得る場合における顔料の分散方法を例示すると、本発明を特徴づける高分子分散剤と顔料と液媒体を使用して、必要に応じて各種添加剤を混合し、分散機で分散処理し、所定の顔料粒子径になるまで分散される。顔料と高分子分散剤と液媒体を混合し、必要であれば予備混合し、さらに分散機で分散し顔料分散液となる。本発明において使用できる分散機としては特に制限はなく、従来公知のものが使用できる。例えば、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスやジルコンなどを使用したサンドミルや横型メディア分散機、コロイドミルなどが使用できる。
【0064】
その分散方法を使用して、所定の顔料の粒子径まで分散する。本発明の顔料着色物組成物では、該顔料の平均粒子径が10〜100nmの粒子径であり、さらに好ましくは20〜80nmである。このように顔料が微細に分散され、しかも安定に分散されていることによって、カラーフィルター用の着色剤とした場合に、カラーフィルターにおいて、高透明性、高コントラスト性を達成することができる。
【0065】
本発明を特徴づける高分子分散剤を使用して本発明の顔料着色剤組成物を得る方法としては、該分散剤を、乾燥した未処理の顔料と溶剤、その他の必要な助剤を加えてプレミキシングした後に、分散機にて分散してもよいし、粗顔料をニーダーにて微細化する際に添加して使用してもよい。この場合、混練後、塩、溶剤等を水で洗浄した後、乾燥させることによって該高分子分散剤で処理された顔料が得られる。このようにして得られる高分子分散剤で処理された顔料に、顔料処理剤、溶剤等を加えプレミキシングした後、分散処理することで新たに高分子分散剤を加えなくとも十分に分散することができるものとなる。
【0066】
上記のようにして得られた顔料分散液はそのままでもよいが、遠心分離機、超遠心分離機、又は、濾過機で僅かに存在する粗大粒子を除去することは、顔料分散液の信頼性を高める上で好ましい。得られる顔料分散液の粘度はその用途に併せて任意である。
【0067】
上記のようにして得られる本発明の顔料着色剤組成物(顔料分散液)は、微粒子分散でき、保存安定性、塗膜としての透明性、高色再現性に優れ、高分子分散剤を構成するAブロックのカルボキシル基でアルカリ現像できるので、カラーフィルター用着色剤として使用することができる。その印刷方法は、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット印刷法に適用することができる。
【実施例】
【0068】
つぎに、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、文中に「部」又は「%」とあるのは質量基準である。
【0069】
[合成例1]酸性高分子分散剤の合成−1
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計およびガス導入管を取り付けた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMAcと略記)を150部、ヨウ素を3.0部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V−70、和光純薬社製、重合開始剤、以下、V−70と略記)11.0部、ベンジルメタクリレート(以下BzMAと略記)80部、メタクリル酸(以下MAAと略記、pKa値:4.66)10部およびコハク酸イミド(以下SIと略記)0.04部を仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で5時間重合させてAブロックのポリマー溶液を作成した。サンプリングしてこの溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は、99%であった。また、GPCでの示差屈折率検出器(以下RIと略記)におけるMnは4,700であり、分子量分布は1.24であった。また、0.1N水酸化カリウム溶液の滴定により求めたAブロックの酸価は、71.1mgKOH/gであった。
【0070】
次いで、上記で得たAブロックのポリマー溶液に、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸(以下MEPAと略記、pKa値:4.2)10部を加え、さらに同温度(40℃)で3時間重合させてBブロックを形成し、ポリマー溶液を得た。サンプリングしてこの溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。また、GPCのRIにおけるMnは5,800であり、分子量分布は1.28であった。その酸価は、84.2mgKOH/gであった。さらに、熱分析により求めたTgは、66.6℃であった。分子量がAブロックのポリマー溶液から大きくなっていることから、得られたポリマーは、A−Bブロックコポリマーとなっていると考えられる。これをAP−1とする。なお、A−BブロックコポリマーのMnの値から、AブロックのMnの値を引くことにより算出したBブロックのMnは、1,100であった。結果を表1に示した。なお、表1中のBブロックの理論酸価は、MEPAの分子量を278.26、KOHの分子量を56.1として、下記のようにして算出した。他の例についても同様である。
(100/278.26)×56.1×1000/100=201.6mgKOH/g
【0071】
[合成例2]酸性高分子分散剤の合成−2
合成例1と同様の反応容器に、PGMAcを150部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.0部、BzMAを70部、MAAを20部、SIを0.04部仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で5時間重合させてAブロックのポリマー溶液を形成した。サンプリングしてこの溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのRIにおけるMnは4,400であり、分子量分布は1.26であった。また、その酸価は、142.1mgKOH/gであった。
【0072】
次いで、上記で得たAブロックのポリマー溶液に、MEPAを10部加え、さらに同温度(40℃)で3時間重合させてBブロックを形成し、ポリマー溶液を得た。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIでのMnは5,400であり、分子量分布は1.29であった。また、その酸価は、145.3mgKOH/gであった。Tgは、80.3℃であった。分子量がAブロックのポリマー溶液から大きくなっていることから、得られたポリマーはA−Bブロックコポリマーとなっていると考えられる。これをAP−2とする。なお、合成例1と同様にして算出したBブロックの分子量は、1,000であった。
【0073】
[合成例3]酸性高分子分散剤の合成−3
合成例1と同様の反応容器に、PGMAcを200部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.0部、BzMAを65部、MAAを15部及びSIを0.04部仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で3時間重合させてAブロックのポリマー溶液を作成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは4,500であり、分子量分布は1.23であった。また、酸価は、118.8mgKOH/gであった。
【0074】
次いで、MEPA20部を加え、さらに同温度で4時間重合させてBブロックを形成し、ポリマー溶液を得た。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは5,800であり、分子量分布は1.36であった。その酸価は、136.9mgKOH/gであった。Tgは、76.2℃であった。これをAP−3とする。なお、合成例1と同様にして算出したBブロックの分子量は、1,300であった。
【0075】
[合成例4]酸性高分子分散剤の合成−4
合成例1と同様の反応容器に、PGMAcを200部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.0部、BzMAを30部、メチルメタクリレート(以下MMAと略記)を30部、2−エチルヘキシルメタクリレート(以下EHMAと略記)20部、MAAを10部及びSIを0.04部仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で3時間重合させてAブロックのポリマー溶液を作成した。サンプリングしてこの固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは5,500であり、分子量分布は1.25であった。また、酸価は70.5mgKOH/gであった。
【0076】
ついで、MEPAを10部加え、さらに同温度で3時間重合させてBブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは6,500であり、分子量分布は1.33であった。その酸価は84.9mgKOH/gであった。Tgは63.3℃であった。これをAP−4とする。なお、合成例1と同様にして算出したBブロックの分子量は、1,000であった。
【0077】
[合成例5]酸性高分子分散剤の合成−5
(芳香族カルボン酸含有メタクリレートの調製)
まず、下記のようにして、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物として無水トリメリット酸を用い、水酸基を有するメタクリレートにとして2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用い、これらの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを合成した。合成例1と同様の反応容器に、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記)93.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略記)40部、無水トリメリット酸(以下TMAと略記、pKa値:4.2)53.0部、トリフェニルホスフィンを0.2部添加し、乾燥空気をバブリングしながら100℃で3時間反応させた。赤外吸収スペクトル(以下IRと略記)で酸無水物のピーク(1,850cm-1)を確認したところ、ほぼ消失していた。このことから、TMAがHEMAに付加した構造を有する付加物のNMP溶液(固形分50%)が得られたことがわかる。これをMETAと略記する。METAは精製せずに、上記NMP溶液の状態のままで次の反応に用いた。
【0078】
(A−Bブロックコポリマーの調製)
合成例1と同様の反応容器に、PGMAcを150部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.0部、BzMAを70部、MAAを10部及び2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール(以下BHTと略記)0.65部を仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で3時間重合させてAブロックのポリマー溶液を生成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは4,100であり、分子量分布は1.23であった。また、その酸価は80.4mgKOH/gであった。
【0079】
次いで、上記のポリマー溶液に、先に合成したMETAのNMP溶液を93.0部加え、同温度で3時間重合させてBブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は100%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは5,700であり、分子量分布は1.40であった。酸価は173.7mgKOH/gであった。そのTgは85.1℃であった。これをAP−5とする。また、合成例1と同様にして算出したBブロックの分子量は、1,600であった。
【0080】
[合成例6]酸性高分子分散剤の合成−6
(芳香族カルボン酸含有メタクリレートの調製)
まず、下記のようにして、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物として1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物を用い、水酸基を有するメタクリレートにとして2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用い、これらの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを合成した。合成例1と同様の反応容器に、NMPを94.7部、HEMAを40部、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物(以下NAと略記、カルボン酸としてはpKa値:3.69)54.7部、トリフェニルホスフィンを0.2部添加し、乾燥空気をバブリングしながら100℃で3時間反応させた。IRで酸無水物のピーク(1,850cm-1)を確認したところほぼ消失していた。このことから、定量的にHEMAのNA付加物のNMP溶液(固形分50%)が得られたことがわかる。得られたHEMAのNA付加物を、MENAと略記する。MENAは精製せず、上記NMP溶液の状態のままで次の反応に用いた。
【0081】
(A−Bブロックコポリマーの調製)
合成例1と同様の反応容器に、PGMAcを150部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.0部、BzMAを70部、MAAを10部およびBHTを0.65部仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で3時間重合させてAブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは4,100であり、分子量分布は1.23であった。また、その酸価は80.2mgKOH/gであった。
【0082】
次いで、上記のポリマー溶液に、先に合成したMENAのNMP溶液94.7部を加え、同温度(40℃)で3時間重合させてBブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは6,900であり、分子量分布は1.43であった。酸価は112.1mgKOH/gであった。Tgは77.6℃であった。これをAP−6とする。また、合成例1と同様にして算出したBブロックの分子量は、2,800であった。
【0083】
[比較合成例1]酸性ランダム共重合体の合成−1
合成例1と同様の反応容器に、PGMAc100部を投入し80℃に加温した後、予め別容器に調製しておいた2,2−アゾビスイソブチロニトリルを2.5部、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン2部を溶解させたBzMAを70部、MAAを10部及びMEPAを20部からなるモノマー混合溶液を反応容器中に1.5時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに同温度で5時間重合させて酸性ランダム共重合体を合成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ換算した重合転化率は100%であった。GPCのRIにおけるMnは5,300であり、分子量分布は1.90であった。酸価は104.6mgKOH/gであった。Tgは74.2℃であった。これをHP−1とする。
【0084】
[比較合成例2]酸性ブロック共重合体の合成−1(Aブロックの構成成分にメタクリル酸を含まない、pKa値差0.3未満)
合成例1と同様の反応容器に、PGMAcを200部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.0部、BzMAを70部、アクリル酸(以下AAと略記、pKa値:4.25)10部およびSIを0.04部仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で3時間重合させてAブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは4,500であり、分子量分布は1.33であった。また、酸価は71.1mgKOH/gであった。
【0085】
次いで、MEPAを20部加え、さらに同温度で3時間重合させてBブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは5,800であり、分子量分布は1.45であった。酸価は116.4mgKOH/gであった。Tgは62.3℃であった。これをHP−2とする。また、合成例1と同様にして算出したBブロックの分子量は、1,300であった。
【0086】
[比較合成例3]酸性ブロック共重合体の合成−2(Tg50℃未満)
合成例1と同様の反応容器に、PGMAcを200部、ヨウ素を3.0部、V−70を11.0部、MMAを10部、EHMAを60部、MAAを10部及びSIを0.04部仕込んで、窒素バブリングしながら40℃で3時間重合させてAブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは4,900であり、分子量分布は1.29であった。また、酸価は71.7mgKOH/gであった。
【0087】
次いで、MEPAを20部加え、さらに同温度で3時間重合させてBブロックを形成した。サンプリングしてこのポリマー溶液の固形分を測定し、不揮発分から換算したところ重合転化率は99%であった。このときのGPCのRIにおけるMnは6,200であり、分子量分布は1.35であった。酸価は116.9mgKOH/gであった。Tgは27.5℃であった。これをHP−3とする。また、合成例1と同様にして算出したBブロックの分子量は、1,300であった。
【0088】
表1〜4に、以上の合成例及び比較合成例により得られたポリマーの組成および物性を示した。合成例1〜4を表1に、合成例5〜6を表2に、比較合成例1を表3に、比較合成例2〜3を表4に示した。
【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】
[実施例1]カラーフィルター用レジストカラーへの応用
アクリル樹脂ワニス(BzMA/MAA/HEMA=70/15/15/の質量比で重合させたもの:分子量12,000、酸価100、固形分40%のPGMAc溶液)100部に、PR−254であるジクロロジケトピロロピロール顔料を90部、塩基性顔料処理剤であるモノジメチルアミノプロピルスルホンアミド化ジケトピロロピロール誘導体10部、合成例1で得られたAP−1を30部、PGMAcを150部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し、顔料分散液を得た。これをCOR−1とした。
【0094】
[実施例2〜6]
実施例1のAP−1の代わりに合成例2〜6で得られたAP−2〜6を使用し、その他は、実施例1と同様にして顔料分散液を得た。これらをCOR−2〜6とした。
【0095】
[実施例7]
実施例1のPR−254の代わりにPB−15:6であるε型銅フタロシアニンを、モノジメチルアミノプロピルスルホンアミド化ジケトピロロピロールの代わりにモノジメチルアミノプロピルスルホンアミド化銅フタロシアニンを使用し、合成例1で得られたAP−1を40部、PGMAcを150部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し、顔料分散液を得た。これをCOB−1とした。
【0096】
[実施例8〜12]
実施例7のAP−1の代わりに合成例2〜6で得られたAP−2〜6をそれぞれ使用し、その他は、実施例7と同様にして顔料分散液を得た。これらをCOB−2〜6とした。
【0097】
[実施例13]
実施例1のPR−254の代わりにPG−36であるブロモ化銅フタロシアニンを、モノジメチルアミノプロピルスルホンアミド化ジケトピロロピロールの代わりに、特開2000−1938178公報に記載の具体例2(下記化合物1)の顔料処理剤を使用し、合成例1で得られたAP−1を30部、PGMAcを150部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し、顔料分散液を得た。これをCOG−1とした。
【0098】

【0099】
[実施例14〜18]
実施例13のAP−1の代わりに合成例2〜6で得られたAP−2〜6をそれぞれ使用し、その他は、実施例13と同様にして顔料分散液を得た。これらをCOG−2〜6とした。
【0100】
[比較例1〜6]
実施例1、8、15で使用したそれぞれの分散剤の代わりに、比較合成例1、2で得られたHP−1、HP−2の2種類をそれぞれに使用し、その他は、実施例1、8、15と同様にして各顔料分散液を得た。これらをそれぞれCOR−7、COR−8、COB−7、COB−8、COG−7、COG−8とした。
【0101】
[カラーフィルター用顔料分散液の評価]
上記の実施例及び比較例で得られたカラーフィルター用顔料分散液の粘度と展色面のグロスの評価、および凝集物発生の有無を確認した。カラーフィルター用着色物の粘度と展色面のグロス評価および凝集物発生の有無の観察は、下記の方法により行った。また、製造直後と室温で1ヶ月間貯蔵後の評価を行い、それぞれの特性における保存安定性を調べた。結果を表5〜7に示した。
【0102】
粘度:製造直後と25℃で1ヶ月後の実施例の顔料分散液の粘度(mPa・s)をE型粘度計にて、25℃、ローターの回転数60rpmの条件で測定し、貯蔵前後における粘度の変化を調べた。
【0103】
グロス:製造直後と25℃で1ヶ月貯蔵後の実施例および比較例の顔料分散液を用い、バーコーター(巻線の太さ0.45mm)にて、PETフィルムにそれぞれ展色し、展色面のグロスをグロスメーターにて測定した。なお、評価結果は、相対的に判断し、下記のとおり表示した。
○:良好、△:やや良好、×:不良
【0104】
凝集物の観察:製造直後と25℃で1ヶ月貯蔵後の実施例および比較例の顔料分散液をスピンナーでガラス基板に塗布し、90℃で2分間乾燥後、顕微鏡を用いて倍率200倍で凝集物の有無を観察した。なお、評価結果は、下記のとおりの基準で表示した。
○:凝集物なし、△:わずかに凝集物有り、×:凝集物有り
【0105】

【0106】

【0107】

【0108】
表5〜7より、本発明を特徴づける高分子分散剤を用いた実施例で得られた顔料分散液は、粘度、グロス、凝集物に関して評価が優れ、さらに、貯蔵前後において安定した評価が得られることが分かった。
これに対し、比較合成例で得られた高分子分散剤を用いた比較例の顔料分散液の場合は、実施例の顔料分散液と比較して、粘度、グロス、凝集物に関する評価が劣ることが分かった。これは、比較例の顔料分散液で使用した高分子分散剤の構造がランダム共重合体であったり、さらには、AブロックとBブロックのpKa値の差が0.3未満であったりし顔料を安定に分散させることができなかったためと考えられる。
【0109】
[比較例7〜9]
実施例1、7、13でそれぞれ使用した分散剤AP−1の代わりに、比較合成例3で得られたHP−3を使用し、その他は、実施例1、7、13のそれぞれとと同様にして顔料分散液を得た。これらをそれぞれCOR−9、COB−9、COG−9とした。
【0110】
[顔料分散液の評価]
実施例1のCOR−1、比較例7のCOR−9、実施例7のCOB−1、比較例8のCOB−9、実施例13のCOG−1、及び比較例9のCOG−9をスピンナーでガラス基板に塗布し、90℃で2分間乾燥後、さらに270℃で30分間加熱した。顕微鏡を用いて200倍で異物の有無の観察をした。
なお、評価結果は、下記のとおり表示した。
○:凝集物なし、△:わずかに凝集物有り、×:凝集物有り
以上の結果を表8に示す。
【0111】

【0112】
ガラス基板を270℃に加温することにより比較合成例3で合成したHP−3を用いた分散液を用いた塗膜には凝集物が多く見られた。これはTgが50℃未満で低く、加熱により樹脂が溶融し顔料凝集を起こしたと考えられる。やはりTgの低い高分子分散剤を用いて得られた塗膜は耐熱性が劣ることが示唆された。
【0113】
実施例1で得られたCOR−1、実施例7で得られたCOB−1、実施例13で得られたCOG−1をそれぞれ100部に、PGMAc40部、アクリル樹脂ワニス50部、トリメチロールプロパントリアクリレート10部、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン2部および2,2−ジエトキシアセトフェノン1部を配合し、カラーフィルター用RGB色レジストカラーを得た。
【0114】
シランカップリング剤処理を行ったガラス基板をスピンコーターにセットし、上記カラーフィルター用RGBレジストカラーを使用して、最初300rpmで5秒間、次いで1,200rpmで5秒間の条件でスピンコートした。次いで、90℃で10分間プリベークを行い、モザイク状のパターンを有するフォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用い100mJ/cm2の光量で露光を行った。次いで専用現像液及び専用リンスで現像及び洗浄を行い、ガラス基板上に赤色のモザイク状パターンを形成させた。
【0115】
引き続いて緑色モザイク状パターン及び青色モザイク状パターンを上記の方法に準じて塗布及び焼き付けを行って形成し、RGBのカラーフィルターを得た。得られたカラーフィルターは色相調整を行っていないので、確実なフィルター色相とはいえないが、優れた分光カーブ特性を有し、耐光性、耐熱性等の堅牢性に優れ、又、光の透過性にも優れた性質を有し、液晶カラーディスプレー用カラーフィルターとして優れた性質を示した。
【0116】
[実施例19]カラーフィルター用インクジェットインクへの応用
塩基性処理されたPR−254のジケトピロロピロール、PB−15:6のε型銅フタロシアニン、およびPG−58の亜鉛フタロシアニンをそれぞれ90部、合成例3で得られたAP−3を60部およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下BDGAと略記)150部を配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミル分散機にて分散した。顔料が容易に微分散できることが確認され、それぞれの顔料分散液を得た。これらをCOR−10、COB−10、COG−10とする。これらの平均粒子径、粘度を表9に示す。
【0117】

【0118】
上記の各顔料分散液を用い、顔料分散液70部に、BDGA40部、アクリル樹脂ワニス2.5部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート4.5部、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン2部および2,2−ジエトキシアセトフェノン1部を配合し、カラーフィルター用RGB色インクジェットインクを得た。
【0119】
これをカラーフィルター用インクジェットインクとして使用してRGBのカラーフィルターを作成した。補色調整を行っていないので、確実なカラーフィルターの色相とはいえないが、優れた分光カーブ特性を有し、耐光性、耐熱性などの堅牢性に優れ、コントラストや光透過性にも優れ、画像表示として優れた性質を示した。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、特有の構造のA−Bブロックコポリマーからなる高分子分散剤を使用することで、顔料が良好な状態に微分散され、低粘度で長期安定性が保持される顔料着色剤組成物が提供される。例えば、該顔料着色剤組成物をカラーフィルター用着色剤として使用した場合は、高濃度、高精細化、高コントラスト、高透明性の優れた画素特性を発現し、かつ、アルカリ現像における現像性に優れたカラーフィルター用レジストを得ることができる。本発明の活用例としては、上記顔料着色剤組成物を使用することで、カラーフィルター用着色剤に限らず、塗料、インク、コーティング剤などの各種物品への優れた物性を与え、高性能な物品を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、顔料、液媒体および高分子分散剤を含有する油性の顔料分散液からなる顔料着色剤組成物であって、上記高分子分散剤が、
1)90質量%以上がメタクリレートモノマーで構成されるガラス転移温度が50℃以上のA−Bブロックコポリマーであって、
2)該ブロックコポリマーを構成するAのポリマーブロックは、メタクリル酸を少なくとも構成成分とし、酸価が50〜200mgKOH/gであり、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000であり、
3)該ブロックコポリマーを構成するBのポリマーブロックは、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物と水酸基を有するメタクリレートの反応生成物である芳香族カルボン酸含有メタクリレートを構成成分とし、その酸価が100〜360mgKOH/gであり、かつ、A−Bブロックコポリマーの数平均分子量から、上記Aのポリマーブロックの数平均分子量を引いた分子量が500〜5,000であり、
4)A−Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、かつ、Bのポリマーブロックの含有量がA−Bブロックコポリマー中の5〜40質量%であることを特徴とする顔料着色剤組成物。
【請求項2】
顔料着色剤組成物中における前記顔料の平均粒子径が、10〜100nmである請求項1に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項3】
さらに、塩基性である官能基を有する色素誘導体を含有してなる請求項1又は2に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項4】
前記高分子分散剤が、有機ヨウ化物を開始化合物とし、リン化合物、窒素化合物、酸素化合物又は炭素化合物を触媒とするリビングラジカル重合法である可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法によって得られたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項5】
前記リン化合物は、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、又は、フォスフィネート系化合物であり、前記窒素化合物は、イミド類又はヒダントイン類であり、前記酸素化合物は、フェノール系化合物であり、前記炭素化合物は、ジフェニルメタン又はシクロアルケン系化合物である請求項4に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項6】
前記重合法における重合温度が、20〜50℃である請求項4又は5に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項7】
前記2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物が、フタル酸、トリメリット酸及びナフタレンジカルボン酸からなる群から選択されるいずれかである請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物を含有してなることを特徴とするカラーフィルター用顔料着色剤組成物。

【公開番号】特開2012−211228(P2012−211228A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76723(P2011−76723)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】