説明

顔料組成物、その製造方法、及びその顔料組成物を用いた着色組成物

【課題】
数年の保存安定期間を持ち、さらに、容易に有機溶剤中に分散できる顔料組成物、その製造方法、及びそれを用いた着色組成物を提供すること。
【解決手段】
顔料の水系ウェットケーキと水性樹脂とを、水性溶剤中で分散し、その後、水性溶剤を分離除去してなる顔料組成物は、有機溶剤中に容易に分散できるパウダー状の樹脂処理顔料として、長期間保存でき、さらに、それを用いたインキやレジスト等の着色組成物を適宜提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性及び保存安定性に優れた顔料組成物、その製造方法、その顔料組成物を用いた着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に顔料を溶剤に分散し、ペースト、塗料、又はインキ等の着色組成物として用いる場合には、顔料パウダーを溶剤に応じた樹脂中に分散して得られる。分散安定性や簡易分散の観点から、顔料誘導体や樹脂型分散剤を顔料に処理を施す場合や、顔料パウダーと溶剤に応じた樹脂と一緒に分散することが、特許文献1〜3に記載されているように周知技術となっている。
【特許文献1】特開2002−121418号公報
【特許文献2】特開2002−179979号公報
【特許文献3】特開2003−167112号公報 前記着色組成物は、その粘度やチキソ性などの安定性の観点から、保存安定期間を数ヶ月と担保され、製造から数ヵ月後までに使用されなければ廃棄される場合がほとんどである。一方で、保存期間を過ぎた着色組成物を再分散して用いるケースもあるが、廃棄と同様に、さらにコストをかけなければならない。
【0003】
着色組成物は、インキの用途を見てみると、塗料や印刷インキなどメインで消費されていて、これら用途のインキは、コモディティ商品化されているため以下にコストを低く抑えなければ価格面の優位性がなくなってしまう製品特徴がある。
【0004】
さらに、薄型テレビ等のカラー表示装置向けで、より分散が難しい微細化顔料を用いた高機能性インキにおいても、社会認知が一般化されたため、一般インキ同様にコストを低く抑えなければならない状況への環境変化が起こっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、数ヶ月ではなく数年まで保存安定期間を持ち、さらに、容易に有機溶剤中に分散できる顔料組成物、その製造方法、及びそれを用いた着色組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、顔料の水系ウェットケーキと水性樹脂を、水性溶剤中に分散し、その後、水性溶剤を分離除去してなる顔料組成物であって、水性樹脂が、ガラス転移温度が15〜100℃であり、かつその一部または全部が水性溶剤に溶解する樹脂であり、水性溶剤が、水、1種類以上の水混和性有機溶剤、又はそれらの混合物であることを特徴とする顔料組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、顔料の水系ウェットケーキと水性樹脂を、水性溶剤中に分散し、その後、水性溶剤を分離除去する顔料組成物の製造方法であって、水性樹脂が、ガラス転移温度が15〜100℃であり、かつその一部または全部が水性溶剤に溶解する樹脂であり、水性溶剤が、水、1種類以上の水混和性有機溶剤、又はそれらの混合物であることを特徴とする製造方法に関する。
【0008】
さらに、本発明は、前記顔料組成物と有機溶剤を含んでなる着色組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の顔料組成物は、顔料の水系ウェットケーキと水性樹脂を、水性溶剤中で分散し、その後、水性溶剤を分離除去してなる顔料組成物であり、有機溶剤中に容易に分散できるパウダー状の処理顔料として、長期間保存できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、顔料の水系ウェットケーキと水溶性樹脂を、水性溶剤中に分散し、その後、水性溶剤を分離除去してなる顔料組成物である。
【0011】
本発明では、パウダー顔料ではなく顔料の水系ウェットケーキを使用する。一般に使用されているパウダー顔料は、化学反応により製造された粒子径が10〜100μmのクルードと呼ばれるものを、顔料化処理により一次粒子とこれが凝集した二次粒子の混合物にまでしたものである。しかし、一次粒子あるいは二次粒子まで微細化が進行した顔料は一般に凝集し易く、実際には、顔料化処理後の乾燥工程により強固に凝集した巨大な塊状の乾燥固形物を粉砕した粉末状で使用される。その粉砕粒度は100〜150メッシュパス程度と粗く、微細且つ均一に分散するためには、多くの時間とエネルギーを要する。この様に、微細化の進行したパウダー顔料を、樹脂などを含有する顔料担体中へ一次粒子にまで近づけて分散させ、安定な着色組成物を得ることは非常に困難である。
【0012】
また、一般に顔料の分散度を上げていくと透明性が向上するが、粘度上昇も伴い、過度な分散を行った場合、二次粒子から一次粒子へ分散が進むのと並行して一次粒子の破砕が進み、品質の向上以上に粘度上昇が進む一因となっている
本発明では、上記の様なパウダー顔料の欠点である、乾燥凝集のない、乾燥前の水系のウェットケーキ顔料を用いることでそのままカラーフィルタ用着色分散体を得ることができる。
【0013】
本発明の顔料組成物の製造に用いられる顔料の水系ウェットケーキは、水系で製造された顔料の懸濁液を、例えばフイルタープレスや遠心分離、限外濾過、減圧濾過などの方法で水分を減少させたものである。
(顔料の水系ウェットケーキ)
顔料の水系ウェットケーキとは、大部分が顔料と水からなるものであり、顔料の合成や微細化の過程で残った原料、添加剤、あるいは有機溶剤等の中で完全に除去できないものを含んでいる水系ウェットケーキも含む。
【0014】
顔料の水系ウェットケーキ中の顔料含有量は、顔料の水系ウェットケーキの重量を基準(100重量%)として8〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。顔料の水系ウェットケーキ中の顔料含有量が8重量%より低い場合は、水が分離し、水系ウェットケーキ内の顔料の均一性が不充分となり、さらに顔料の水系ウェットケーキからの水分量が多くなり、分散組成に制約がでることから好ましくない。また、顔料の水系ウェットケーキ中の顔料含有量が80重量%より高い場合は、顔料の水系ウェットケーキが硬くなり、水性樹脂との混合性が劣り、混合物の均一性が得られず好ましくない。
【0015】
水系ウェットケーキの形態で使用される顔料としては、発色性が高く、且つ耐熱性、特に耐熱分解性の高い有機顔料が好適に用いられる。有機顔料等は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。また、有機顔料は、ソルトミリング、アシッドペースティング等により微細化したものであってもよい。
【0016】
以下に、本発明の顔料組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0017】
本発明の顔料組成物から、赤色着色組成物を製造する場合には、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、270、272等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、オレンジ顔料を併用することができる。
本発明の顔料組成物から、緑色着色組成物を製造する場合には、例えばC.I.Pigment Green7、10、36、37、58等の緑色顔料を用いることができる。緑色着色組成物には、黄色顔料を併用することができる。
本発明の顔料組成物から、青色着色組成物を製造する場合には、例えばC.I.Pigment Blue 15、 15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等の青色顔料を用いることができる。青色着色組成物には、紫色顔料を併用することができる。
【0018】
本発明の顔料組成物から、黄色着色組成物を製造する場合には、例えばC.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等の黄色顔料を用いることができる。
本発明の顔料組成物から、紫色着色組成物を製造する場合には、例えばC.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料を用いることができる。
【0019】
本発明の顔料組成物から、オレンジ色組成物を製造する場合には、例えばC.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料を用いることができる。
【0020】
本発明の顔料組成物から、マゼンタ色着色組成物を製造する場合には、例えばC.I.Pigment Violet 1、19、C.I.Pigment Red 144、146、177、169、81等の紫色顔料及び赤色顔料を用いることができる。マゼンタ色着色組成物には、黄色顔料を併用することができる。
【0021】
また、無機顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いることができる。
【0022】
顔料組成物を製造する際には、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で、染料を併用することができる。
【0023】
2種以上の顔料を含む着色組成物は、それぞれの顔料等のウェットケーキを混合して本発明の顔料組成物を製造してから溶剤に分散する方法、それぞれの顔料等のウェットケーキから製造した顔料組成物をそれぞれ溶剤に分散した着色組成物を製造してから混合する方法、あるいは主顔料のインキ組成物に他の方法で分散した顔料インキ組成物を混合する方法などにより製造することができる。
(水性樹脂)
本発明の水性樹脂とは、ガラス転移温度が15〜100℃であり、その一部または全部が水性溶剤に溶解する樹脂であり、アニオン性、カチオン性、あるいはノニオン性の水溶性基を有するアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられ、水性溶剤に溶解または分散された樹脂水溶液、水性ワニス、エマルジョン、水性ゾル等の形態、またはそれらの混合物でも使用できる。水性樹脂の使用量は、顔料の重量を基準にして、不揮発成分として25〜100重量%、好ましくは40〜65重量%である。25重量%未満では、水性樹脂の顔料表面への処理量が不十分で、顔料組成物としての十分な保存安定性を得られない。100重量%より多いと、顔料濃度が低く実用的でない。
【0024】
本発明で用いる水性樹脂としては、前記の通り、顔料の水系ウェットケーキと混合した際に、均一な分散体ができるものであれば、特に限定はないが、レジストインキやインクジェットインキへの用途を考えると、フォトリソ適正あるいはインキジェット吐出適正、及び耐性等を考えて、ガラス転移温度や酸価を容易に調整できる点からも、カルボキシル基を含有するアクリル系樹脂をアンモニア水などで中和して水溶化あるいは水分散化したものが好適に使用できる。アンモニア水で水溶化あるいは水分散化したアクリル系樹脂は、本発明の顔料組成物生成後にアンモニアが外れ、顔料組成物を有機溶剤に分散する時に有利である。
【0025】
本発明で用いる水性樹脂は、ガラス転移温度が15〜100℃、好ましくは20〜80℃である。15℃より低いと粉状化した顔料組成物がブロッキングしやすくなるため、取り扱いにくく、再溶解性も低下して、好ましくない。100℃より高いと、着色組成物に使用する溶剤への樹脂の溶解性が低く、良好な分散状態を実現することができず、好ましくない。
【0026】
本発明で用いる水性樹脂の好適な重量平均分子量は、1000〜50、000、好ましくは3000〜30、000である。1000未満では、顔料の凝集を抑えることができないため好ましくない。50,000より大きいと着色組成物に使用する有機溶剤への溶解性が低下し好ましくない。
【0027】
本発明で好適に用いられるカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂の酸価は、50〜300mgKOH/g(固形分)、好ましくは100〜250KOHmg/g(固形分)である。50mgKOH/g(固形分)未満では、親水性が低く水及び/又は水混和性溶剤中で顔料と一緒に分散することが難しい。300KOHmg/g(固形分)より大きいと親水性が高すぎて、顔料に吸着せず濾別され、顔料組成物中に残らない。また、酸価が高すぎると、レジストインキとしては現像速度が速すぎ、カラーフィルタとしては耐アルカリ性が悪くなる。
【0028】
本発明で好適に用いられるカルボキシル基を有するアクリル樹脂としては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジニル等のモノマーと、(メタ)アクリル酸、及び無水マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマーとの共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。カルボキシル基をアンモニア等の塩基性化合物で中和することにより、水溶液、水分散液、あるいは水溶液と水分散液の混合、水混和有機溶剤を混合した水性ワニス又は水性分散液として使用できる。
(水性溶剤)
本発明の水性溶剤とは、水、1種類以上の水混和性有機溶剤、又はそれらの混合物であり、主溶剤を水(顔料の水系ウエットケーキに含まれる水を含む)とし、状況に応じて、1種類以上の水混和性有機溶剤を併用することができる。水混和性有機溶剤の添加要否、種類、及び添加量は、分散性、粘度、及び乾燥性等によって決められる。
【0029】
水混和性有機溶剤としては、混練時に温度が上昇して蒸発しやすい状態になるので、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点溶剤が好ましく、例えば、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0030】
水系ウェットケーキ中の顔料の重量を基準にした水性溶剤量は、場合によって異なり、特に限定はないが、200〜500重量%、好ましくは250〜350重量%である。200重量%未満では、粘度が高く、混練に時間がかかるために、また、500重量%より多いと水性溶剤除去に時間がかかり、共に効率が悪い。
(分散助剤)
顔料の水系ウェットケーキと水性樹脂を、水性溶剤中に分散する際に、適宜、顔料誘導体や、樹脂型顔料分散剤、界面活性剤等の分散助剤を用いることができる。分散助剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、水性溶剤中での分散性を上げるだけでなく、水性樹脂と顔料との親和性を上げ、水性樹脂中への顔料の分散性を向上させることができる。分散助剤は、乾燥凝集のない水系ウェットケーキ状の顔料分散剤を用いる事がより好ましい。分散助剤は、水系ウェットケーキ中の顔料を基準として、0.1〜30重量%の量で用いることができる。
【0031】
顔料誘導体は、下記一般式(1)で示される化合物であり、塩基性置換基を有するものと酸性置換基を有するものとがある。
一般式(1)
A−B 式(1)
A:有機顔料残基
B:塩基性置換基又は酸性置換基

一般式(1)中、Aの有機顔料残基を構成する有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられる。
【0032】
一般式(1)中、Bの塩基性置換基としては、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、及び一般式(5)で示される置換基が挙げられ、酸性置換基としては、下記一般式(8)、一般式(9)、及び一般式(10)で示される置換基が挙げられる。
【0033】
一般式(2):
【0034】
【化1】



一般式(3):
【0035】
【化3】



一般式(4):
【0036】
【化3】





一般式(5):
【0037】
【化4】



〔一般式(2)〜(5)において、Xは、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−、又は直接結合であり、nは、1〜10の整数であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、R1とR2とが一体となって形成された置換されていてもよい複素環、又はR1とR2とが一体となって形成された窒素、酸素、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含む複素環であり、R3は、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、R4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、Yは、−NR8−Z−NR9−、又は直接結合であり、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、Rは、一般式(6)で示される置換基、又は一般式(7)で示される置換基であり、
Qは、水酸基、アルコキシル基、一般式(6)で示される置換基、又は一般式(7)である。
【0038】
一般式(6):
【0039】
【化5】







一般式(7):
【0040】
【化6】










[一般式(6)及び(7)において、R1〜R7及びnは、一般式(2)〜(5)で定義した通りのものである。]〕

一般式(8):
−SO3M/i (8)

一般式(9):
−COOM/i (9)

一般式(10):
【0041】
【化7】









〔一般式(8)〜(10)において、Mは、水素原子、カルシウム原子、バリウム原子、ストロンチウム原子、マンガン原子、又はアルミニウム原子であり、iは、Mの価数であり、R10〜R13は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基である。〕
一般式(2)〜(7)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジーsec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニペコチン酸メチル、イソニペコチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0042】
式(10)のスルホン酸アミン塩を形成するために使用されるアミン成分は1級、2級、3級、4級のいずれのアミンでもよく、例えば、1級アミンとしては、側鎖を有していてもよいへキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エオコシルアミン等のアミン、もしくはそれぞれの炭素数に対応する不飽和アミンが挙げられる。
【0043】
2級、3級及び4級アミンとしては、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルジドデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルデシルアンモニウムクロリド、トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、ジメチルドデシルテトラデシルアンモニウムクロリド、ジメチルヘキサデシルオクタデシルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0044】
樹脂型顔料分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤;(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
本発明の顔料組成物の製造方法は、顔料の水系ウェットケーキと、水性樹脂とを、水性溶剤中に分散し、その後、水性溶剤を分離除去するという製造方法である。
【0046】
具体的な製造方法としては、例えば、水性樹脂の水性液(水溶液、水性ワニス、水分散液、水性分散液、又はこれらの混合物)に、顔料の水系ウェットケーキを分散させる方法や、水性溶剤中に顔料の水系ウェットケーキを分散して顔料分散液を作製したのち水性樹脂の水性液と混合する方法等により水性樹脂処理顔料の水性溶剤分散液を作成した後、水性溶剤を除去し粉末化する方法である。分散方法には特に制限はないが、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロールミル、2本ロールミル、ニーダー等を用いる方法が好ましい。又、本発明の顔料組成物は、有機溶剤中への分散を容易にするめに、粉末化することが好ましい。顔料組成物の粉末化は、分散終了段階の形態が液状である場合は、噴霧乾燥機、凍結乾燥機などにより乾燥と粉末化を同時に行うことができる。分散終了段階が固形の場合は、ハンマーミル、ジェットミルなどを用いて粉末化を行うことが出来る。単純に水性溶剤を揮発させるだけの乾燥方法では、顔料の乾燥凝集を起こすため、高い信頼性を要求される分野では使用できない。
【0047】
なお、有機顔料とキノリン誘導体類からなる顔料分散剤は、別々に顔料担体溶液に分散したのち混合することもできるが、有機顔料の分散性を向上するためには、有機顔料を分散する際にキノリン誘導体類からなる顔料分散剤を添加することが好ましい。
【0048】
本発明の顔料組成物は、凍結乾燥等の乾燥工程で乾燥凝集せず、有機溶剤への再分散性に優れたパウダー状態で得られるため、長期保存でも高い信頼性を有する。
【0049】
すなわち、水性溶剤中で、微細顔料を、顔料担体の一部あるいは全部となる水性樹脂に、分散することによって、微細顔料が凝集することなく、微細顔料表面に均一に水性樹脂が処理され、水性溶剤を分離除去することによってパウダー状で得られた顔料組成物は、有機溶剤中に容易に分散できるパウダー状の処理顔料として、長期間保存できる。
【0050】
従来、顔料を水又は溶剤中に分散した液体状態で保存していたために、着色組成物中の分子運動が自由に起こってしまい、この分子運動の激しさや分子運動を伝達してしまうボリュームが着色組成物の保存期間に影響を及ぼしていた。本発明では、顔料と水性樹脂を含む固形の状態、すなわち水又は溶剤を含まないパウダー状樹脂処理顔料である顔料組成物とすることによって、数ヶ月という短期の保存安定期間ではなく、数年という超長期の保存安定期間を実現した。
【0051】
また、本発明の顔料組成物は、パウダー状態で長期間保存できるため、必要な時に容易に有機溶剤に分散でき、容易にインキや塗料等の着色組成物にすることができることから、インキ等の廃棄損や再生コストをなくすことができる。さらに、インキ等の需要予測からの生産動向に左右されずに大量に作り置きが出来るため、規模の経済効果を利用して大幅なコスト削減と効率化につながる。特に、微細顔料等の高機能性顔料を用いる分野では、これらの効果の影響が大きい。
【0052】
本発明の顔料組成物は、任意の有機溶剤に容易に分散することができ、塗料、印刷インキ、インクジェットインキ、レジストインキとして有用な本発明の着色組成物を調整することができる。
【0053】
本発明の着色組成物に用いる有機溶剤としては、特に限定はなく、例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルn−アミルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、シクロヘキサノールアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル等のアルコキシプロピオン酸エステル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル(セルソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセルソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セルソルブアセテート)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルセルソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールジアセテート系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系溶剤等が挙げられ、二種以上混合して用いることもできる。
【0054】
本発明の着色組成物には、顔料組成物及び有機溶剤の他に、必要に応じて、水性樹脂以外に顔料担体を構成する分散剤、バインダー樹脂、各種調整剤等の添加剤を使用することができる。
【0055】
本発明の着色組成物に用いるバインダー樹脂としては、特に限定はないが、例えば, ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、二種以上のものを用いることもできる。
【0056】
常温における経時安定性に問題がない範囲で、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を組み合わせて、耐性の改善を行うこともできる。
【0057】
本発明の着色組成物に用いるバインダー樹脂は、前記顔料担体として用いる水性樹脂を兼用しても、同一のものを追加しても、あるいは異なるものを追加してもよく、パターニングの方法によって任意に選ぶことができる。
【0058】
フォトリソグラフィー方式の場合には、カルボキシル基含有のアクリル系樹脂を顔料担体およびバインダー樹脂として用いるのが好ましい。
【0059】
本発明の着色インキ組成物に用いる光重合性化合物としては、特に限定はないが、光重合性樹脂、(メタ)アクリレート系のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる。
【0060】
光重合性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂、又は、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化した樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0061】
モノマー及びオリゴマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられるが、これらを二種以上併用して用いてもよく、また特にこれらに限定されない。
【0062】
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤は、着色インキ組成物の不揮発分重量を基準として、5〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の量で用いることができる。
【0063】
本発明の着色組成物中の、顔料および顔料誘導体以外の成分、すなわち、顔料担体となる水性樹脂、バインダー樹脂、光重合性化合物、及び光重合開始剤、さらに必要に応じて加えることができる樹脂型分散剤、および界面活性剤等の添加剤は、それぞれ単独あるいは混合した状態で、さららに、全ての反応・処理が終わった状態で、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が80%以上、好ましくは95%以上でなくてはならない。透過率が80%未満では、微細顔料の優れた色特性を十分に引き出すことができない。
【0064】
着色組成物の不揮発成分中の顔料濃度は、30〜85重量%、好ましくは40〜70重量%である。30重量%未満では、着色力が十分得られず、70重量%より高いと顔料担体成分が少なくなり、耐久性に優れた膜を得ることができない。
【0065】
本発明の着色組成物は、さらに顔料分散剤を含有することが好ましい。顔料分散剤の使用量としては、固形分100%として通常重量比で50:50〜99:1、好ましくは60:40〜95:5、より好ましくは70:30〜95:5、さらに好ましくは85:15〜95:5の割合で含有される。顔料分散剤の量が上記範囲よりも少なければ、顔料の分散安定化効果が充分に発揮されず、逆に上記範囲よりも多ければ、色相が好ましくないほど変化する可能性が生じ、また製造コスト面でも問題となる。分散剤としては、前記顔料誘導体、前期樹脂型分散剤、及び界面活性剤が挙げられる。
【0066】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸モノエタノールアミン、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が1〜2.5μmとなるように塗布してフィルタセグメントを形成することを容易にするために、同種あるいは異なる前記有機溶剤を加えて固形分や乾燥性を調整したり、レベリング剤等の添加剤を加えて表面張力を調整することができる。固形分濃度は、5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%が望ましい。5重量%未満では、膜の着色力が不十分であり、40重量%以上では、粘度が高く均一な膜厚を確保することができない。レベリング剤の種類及び添加量は、適宜決められる。
本発明の顔料組成物を用いた着色組成物は、グラビアオフセット用印刷インキ、水無しオフセット用印刷インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材(フォトリソグラフィー方式レジストインキ)、インキジェットインキの形態で調製することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、「重量部」及び「重量%」を表す。
(顔料の水系ウェットケーキ)
青色顔料水系ウェットケーキ:C.I.Pigment Blue 15:6水系ウェットケーキ(不揮発分60%)
(樹脂型顔料分散剤)
樹脂型顔料分散剤:ビックケミー社製、Disperbyk 190(不揮発分40%)
(アクリル樹脂水溶液)
水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂として、BASFジャパン(株)製アクリル樹脂ジョンクリル680(Tg67℃、酸価215、MW4900)の水溶液タイプ、ジョンクリル57(不揮発分37%水溶液)を使用した。
(アクリル樹脂溶液1)
比較用として、ジョンクリル680のシクロヘキサノン溶液(不揮発分40%)を作成し、アクリル樹脂溶液1とした。
(アクリル樹脂溶液2)
バインダー樹脂として、下記のようにアクリル樹脂溶液2を調整した。
【0069】
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けて、シクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分30%、重量平均分子量26000のアクリル樹脂の溶液を得た。
【0070】
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃で20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液2を調製した。
(評価方法)
顔料組成物の外観は、140mlマヨネーズびんに約80gを採り、初期及び25℃3ヶ月後の状態を目視とヘラで確認した。
【0071】
顔料組成物の溶解性は、着色組成物作成時の撹拌混合状態及び1μmフィルタでの濾過性にて確認した。
【0072】
顔料分散体(比較例の溶剤分散タイプの顔料組成物)の粘度は、B型粘度計(東機産業社製BL型)を用いて、No.2ローター、回転数6rpm、25℃における粘度を測定した。さらに6rpmと60rpmの粘度比(チキソインデックスと呼び、値が大きいほどチキソトロピックス性が高い)を求め、チキソトロピック性の評価を行った。
【0073】
着色組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業社製TV20型)を用いて、1°34′×R24コーン、回転数20rpm、25℃における粘度を測定した。上記同様に6rpmと60rpmの粘度比を求めた。
【0074】
次に、着色組成物を用いて作製した塗膜のコントラスト比の測定法について説明する。コントラスト比は、図1に示す測定装置を用いて測定した。液晶ディスプレー用バックライトユニット(7)から出た光は、偏光板(6)を通過して偏光され、ガラス基板(5)上に塗布されたレジスト材の乾燥塗膜(4)を通過し、偏光板(3)に到達する。偏光板(6)と偏光板(3)の偏光面が平行であれば、光は偏光板(3)を透過するが、偏光面が直行している場合には光は偏光板(3)により遮断される。しかし、偏光板(6)によって偏光された光がレジスト材の乾燥塗膜(4)を通過するときに、顔料粒子による散乱等が起こり、偏光面の一部にずれを生じると、偏光板が平行のときは偏光板(3)を透過する光量が減り、偏向板が直行のときは偏光板(3)を一部光が透過する。この透過光を偏光板上の輝度として測定し、偏光板が平行のときの輝度と、直行のときの輝度との比(コントラスト比)を算出した。
【0075】
(コントラスト比)=(平行のときの輝度)/(直行のときの輝度)
従って、着色組成物の乾燥塗膜(4)の顔料により散乱が起こると、平行のときの輝度が低下し、かつ直行のときの輝度が増加するため、コントラスト比が低くなる。
【0076】
なお、輝度計(1)としては色彩輝度計(トプコン社製「BM−5A」)、偏光板としては偏光板(日東電工社製「NPF−G1220DUN」)を用いた。なお、測定に際しては、不要光を遮断するために、測定部分に1cm角の孔を開けた黒色のマスク(2)を当てた。
【0077】
尚、着色組成物の塗膜のコントラスト比は、洗浄乾燥した100×100×0.7mmガラス基板に、着色組成物を、スピンコーターで乾燥膜厚1.5μmになる様に塗布し、80℃30分乾燥して作成した。
〔実施例1〕
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで4時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、青色顔料水系分散体1を作製した。
【0078】
青色顔料水系ウェットケーキ(不揮発分60%) 27.0部
樹脂型顔料分散剤(不揮発分40%) 4.5部
アクリル樹脂水溶液(不揮発分37%) 32.4部
水 36.1部
ついで、上記青色顔料水系分散体1を−20℃の冷凍庫で予備凍結させた。その後トラップ温度−60℃以下、20Pa以下に減圧して乾燥した。得られたポーラス状着色固形物を軽く粉砕し、150メッシュで粗大粒子を取り除き、青色顔料組成物1として、青色着色粉末1を得た。
【0079】
尚、乾燥の終点は、着色分散体の温度が室温になり、真空度の上昇が終わり平衡となった時点とした。
【0080】
ついで、得られた青色着色粉末(顔料組成物1)を含む下記に示す組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、青色着色組成物1aとして、アルカリ現像型青色レジスト材1aを得た。
【0081】
青色顔料組成物1(青色着色粉末1) 12.0部
光重合開始剤 1.2部
(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア907」)
ジペンタエリストリトールペンタアクリレート及びヘキサアクリレート
(東亞合成社製「アロニックスM400」) 4.2部
増感剤(保土ヶ谷化学株式会社製「EAB−F」) 0.4部
アクリル樹脂溶液2(不揮発分20%) 11.0部
シクロヘキサノン 71.2部
〔実施例2〕
さらに、青色顔料組成物1(青色着色粉末1)を25℃2年経時保存後、実施例1と同様に青色着色組成物1bとして、アルカリ現像型青色レジスト材1bを作成した。
【0082】
〔比較例1〕
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで4時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、青色顔料組成物2として、青色顔料分散体2を作製した。
【0083】
C.I.Pigment Blue 15:6 10.8部
樹脂型顔料分散剤(不揮発分40%) 1.2部
アクリル樹脂溶液1(不揮発分40%) 20.0部
シクロヘキサノン 68.0部
ついで、得られた青色顔料分散体(青色顔料組成物2)を含む下記に示す組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、青色着色組成物2aとして、アルカリ現像型青色レジスト材2aを作成した。
【0084】
青色顔料分散体(青色顔料組成物2) 60.0部
光重合開始剤 1.2部
(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア907」)
ジペンタエリストリトールペンタアクリレート及びヘキサアクリレート
(東亞合成社製「アロニックスM400」) 4.2部
増感剤(保土ヶ谷化学株式会社製「EAB−F」) 0.4部
アクリル樹脂溶液1(不揮発分40%) 11.0部
シクロヘキサノン 23.2部
〔比較例2〕
さらに、青色顔料組成物2(青色顔料分散体2)を25℃2年経時保存後、比較例1と同様に青色着色組成物2bとして、アルカリ現像型青色レジスト材2bを作成した。
【0085】
〔比較例3〕
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで4時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、青色顔料組成物3として、青色顔料分散体3を作製した。
【0086】
C.I.Pigment Blue 15:6 10.8部
樹脂型顔料分散剤(不揮発分40%) 1.2部
アクリル樹脂溶液2(不揮発分20%) 40.0部
シクロヘキサノン 48.0部
ついで、青色顔料組成物2の代わりに青色顔料組成物3を使用する以外、比較例1と同様に青色着色組成物3aとして、アルカリ現像型青色レジスト材3aを作成した。
【0087】
〔比較例4〕
さらに、青色顔料組成物3(青色顔料分散体3)を25℃2年経時保存後、比較例3と同様に青色着色組成物3bとして、アルカリ現像型青色レジスト材3bを作成した。
【0088】
実施例1及び2、比較例1〜4で得られた顔料組成物1〜3、着色組成物1a〜3a、及び1b〜3bについて、外観、粘度、塗膜のコントラスト比を評価した。尚、顔料組成物については、安定性の比較を目的に、実施例2、比較例2、4にて、25℃2年後の品質比較を、着色組成物に調整して行った。
【0089】
結果を表1に示す。
【0090】
【表1】


本発明の着色粉体タイプの顔料組成物は、2年もの経時変化に耐えうる組成物であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】コントラスト比を測定するための測定装置の概念図である。
【符号の説明】
【0092】
1 輝度計
2 マスク
3 偏光板
4 着色組成物乾燥塗膜
5 ガラス基板
6 偏光板
7 バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料の水系ウェットケーキと水性樹脂を、水性溶剤中に分散し、その後、水性溶剤を分離除去してなる顔料組成物であって、水性樹脂が、ガラス転移温度が15〜100℃であり、かつその一部または全部が水性溶剤に溶解する樹脂であり、水性溶剤が、水、1種類以上の水混和性有機溶剤、又はそれらの混合物であることを特徴とする顔料組成物。
【請求項2】
顔料の水系ウェットケーキと水性樹脂を、水性溶剤中に分散し、その後、水性溶剤を分離除去する顔料組成物の製造方法であり、水性樹脂が、ガラス転移温度が15〜100℃であり、かつその一部または全部が水性溶剤に溶解する樹脂であり、水性溶剤が、水、1種類以上の水混和性有機溶剤、又はそれらの混合物であることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の顔料組成物と有機溶剤とを含んでなる着色組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−120658(P2009−120658A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294074(P2007−294074)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】