説明

顔料組成物および顔料分散体

【課題】
本発明は、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂を顔料分散に用いることで、ウレタン樹脂中の顔料吸着部と思われる酸性基と顔料誘導体との相互作用を強め、オフセットインキ、グラビアインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色ウレタン樹脂組成物などに適する、分散性、非集合性および流動性に優れた安定な顔料組成物および顔料分散体の提供を目的とする。
【解決手段】
カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂と、顔料とを含有する顔料組成物であって、
上記ウレタン樹脂が、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応してなるカルボキシル基含有ポリオール(a)と、
さらに、ポリイソシアネート化合物(b)とを反応してなるカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂であることを特徴とする顔料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料組成物に関し、さらに詳しくは、インキ、塗料および着色樹脂組成物などの分野に適する、非集合性および流動性に優れた安定な顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、顔料の微細な粒子をオフセットインキ、グラビアインキおよび塗料のようなビヒクルに分散する場合、安定な分散体を得ることが難しく、製造作業および得られる製品の特性に種々の問題を引き起こすことが知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は、往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出し、輸送が困難となるばかりでなく、さらに悪い事例では貯蔵中にゲル化を起こし使用困難となることがある。
【0003】
また、展色物の塗膜表面に関しては、光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じることがある。特に、異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0004】
以上のような種々の問題の解決するために、種々のワニスに対して顔料を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有する顔料誘導体を混合する方法が提案されている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3) しかし、これだけでは必ずしも満足な効果が得られず、上記のような酸性基や塩基性基を有する置換基に対して、さらにその対イオンを有する樹脂を使用することが提案されている。(特許文献4,5) 樹脂の構造としては、酸性基や塩基性基を置換基として有する顔料誘導体に対して吸着するイオン性部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせるものが良好で、この二つの部位のバランスによって樹脂の性能は決まる。
【0005】
特許文献4には、塩基性基を置換基として有する顔料誘導体と、リン酸エステルを有する樹脂とを含む顔料組成物の例示がある。リン酸エステルを有する樹脂は塩基性基を置換基として有する顔料誘導体との併用で、ある程度の顔料分散能力を有するが、保存安定性が悪い場合や、リン酸由来の欠点、例えば耐熱性の低さ、耐薬品性の低さ、相溶性の悪さなどで問題を生じる場合があった。これは、スルホン酸を有する分散剤も同様である。このようなリン酸エステルや、スルホン酸を有する樹脂は、応用するインキや塗料などへの展開性に乏しく、一方カルボン酸を用いた樹脂では、耐熱性、耐薬品性、相溶性の点については問題がないが、粘度が高い、安定性が悪い、顔料微分散化不良など、分散樹脂としての能力に劣る場合が多かった。
【0006】
近年は、上記のような顔料の分散安定性に対するニーズの高まりと共に、局所的に酸性基を導入したウレタン系の分散樹脂が注目されている。有機顔料を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有する顔料誘導体を分散剤としてウレタン樹脂と混合する方法が開示されている(特許文献6参照)。
【0007】
しかしながら、いずれの発明も、有機顔料に対する分散性も満足なものではなかった。そのうえ、塗料やインキなどには非常に多くのワニス系が存在するため、これらの発明を用いても一部のワニス系を除いては満足な効果が得られていないのが実状である。
【特許文献1】特開昭63−305137号広報
【特許文献2】特開平1−247468号広報
【特許文献3】特開平3−26767号広報
【特許文献4】特開昭63−248864号広報
【特許文献5】特開平9−176511号広報
【特許文献6】特開昭62−295966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色樹脂組成物などに適する、非集合性、流動性に優れた分散性や安定性を有する、酸基含有ウレタン樹脂を含む顔料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂と、顔料とを含有する顔料組成物であって、
上記ウレタン樹脂が、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応してなるカルボキシル基含有ポリオール(a)と、
さらに、ポリイソシアネート化合物(b)とを反応してなるカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂であることを特徴とする顔料組成物に関する。
【0010】
さらに本発明は、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂と、顔料とを含有する顔料組成物であって、
上記ウレタン樹脂が、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応してなるカルボキシル基含有ポリオール(a)と、
さらに、ポリイソシアネート化合物(b)と、ポリオール(a)以外のポリオール化合物(c)とを反応してなるカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂であることを特徴とする顔料組成物に関する。
【0011】
さらに本発明は、前記多価カルボン酸無水物(a1)が、テトラカルボン酸二無水物である上記顔料組成物に関する。
【0012】
さらに本発明は、前記カルボキシル基含有ポリオール(a)の重量平均分子量が、300〜25000である上記顔料組成物に関する。
【0013】
さらに本発明は、前記カルボキシル基含有ポリオール(a)の酸価が、10〜400であり、かつ、水酸基価が、20〜300である上記顔料組成物に関する。
【0014】
さらに本発明は、前記カルボキシル基含有ポリオール(a)が、多価カルボン酸無水物(a1)中の酸無水物基と、ポリオール化合物(a2)中の水酸基とを、モル比(a1)/(a2)=0.3〜0.8の条件で反応してなるものである上記顔料組成物に関する。
【0015】
さらに本発明は、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂の酸価が、10〜200である上記顔料組成物に関する。
【0016】
さらに本発明は、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性基を有するトリアジン誘導体からなる群より選ばれる塩基性誘導体の少なくとも一種を含む上記顔料組成物に関する。
【0017】
さらに本発明は、上記記載の顔料組成物をワニスに分散してなる顔料分散体に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色樹脂組成物などに適する、非集合性、流動性に優れた分散性や安定性をもち、高い貯蔵安定性および高い経時安定性を有し、経時による粘度の増大も示さない顔料組成物を提供できた。本発明の顔料組成物、特に有機顔料を含む顔料組成物を各種ワニスに分散することにより、顔料分散性が飛躍的に改善され、安定な顔料分散体を提供できた。そのため、本発明の顔料組成物を使用すれば、ワニスに含まれる樹脂の顔料分散性が悪い場合でも、常に安定な顔料分散体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂と、顔料とを含有する顔料組成物であって、上記ウレタン樹脂が、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応させ得られるカルボキシル基含有ポリオール(a)と、ポリイソシアネート化合物(b)と、場合によってはさらにポリオール化合物(c)とを反応させてなることを特徴とする顔料組成物である。ここで、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応させ得られるカルボキシル基含有ポリオール(a)を原料として用いたウレタン樹脂を使用することが分散性、流動性、保存安定性に繋がる。
【0020】
本発明に使用する多価カルボン酸無水物(a1)は、2個以上の酸無水物基を含有する化合物であれば特に限定されない。酸無水物基は、水酸基と反応してエステル結合を形成し、かつ、重合体ポリオール主鎖上にペンダントカルボキシル基を残すことができる。
【0021】
例えば、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などを使用することができる。本発明では、テトラカルボン酸二無水物が好ましく使用される。
【0022】
詳しく例示すると、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル‐1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルノルボルナン‐2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラキドロフラル)−3−メチル‐3−シクロヘキセン‐1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト‐7−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物、
ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3,4,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4−ビフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3,4,4−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3,4,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン‐ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン‐ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0023】
本発明に使用するポリオール化合物(a2)としては、公知のものを使用し得る。それらのうちでも、特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のグループ(1)〜(7)に属するものがある。
(1)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンもしくは、ヘキサントリオールの如き多価アルコール類;
(2)ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールもしくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルグリコール類;
(3)上記した各種の多価アルコール類と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き各種の(環状)エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール類;
(4)上記した各種の多価アルコール類の1種以上と、多価カルボン酸類との共縮合によって得られるポリエステルポリオール類であって、多価カルボン酸類が、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4−シクロヘキサンヒカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサトリカルボン酸または2,5,7−ナフタレントリカルボン酸などで特に代表されるものを用いて得られるポリオール類;
(5)上記した各種の多価アルコール類の1種以上と、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンもしくは3−メチル−δ−バレロラクトンの如き各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール類、あるいは、
上記した各種の多価アルコール類と、多価カルボン酸類と、各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン変性ポリエステルポリオール類;
(6)ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、一価および/または多価アルコール類のグリシジルエーテル、あるいは、一塩基酸および/または多塩基酸類のグリシジルエステルの如き各種のエポキシ化合物を、ポリエステルポリオールの合成時に、1種以上併用して得られるエポキシ変性ポリエステルポリオール類;
(7)ポリエステルポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール、ひまし油、ひまし油誘導体、水添ひまし油、水添ひまし油誘導体、水酸基含有アクリル系共重合体、水酸基含有含フッ素化合物または水酸基含有シリコン樹脂などが挙げられる。
【0024】
これら(1)〜(7)に示されたポリオール化合物(a2)は、単独使用でも2種以上の併用でもよいことは勿論であるが、その数平均分子量としては、200〜10,000なる範囲内が、好ましくは、300〜7,000なる範囲内が、さらに好ましくは、500〜3,000なる範囲内が適切である。
【0025】
次に、ポリイソシアネート化合物(b)としては、芳香族ポリイソシアネ−ト、脂肪族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環族ポリイソシアネ−ト等が挙げられる。
【0026】
芳香族ポリイソシアネ−トとしては、例えば1,3−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、1,4−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト、2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、ジアニシジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネ−トとしては、例えばトリメチレンジイソシアネ−ト、テトラメチレンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネ−ト、2,3−ブチレンジイソシアネ−ト、1,3−ブチレンジイソシアネ−ト、ドデカメチレンジイソシアネ−ト、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0028】
芳香脂肪族ポリイソシアネ−トとしては、例えばω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0029】
脂環族ポリイソシアネ−トとしては、例えば3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト、1,3−シクロペンタンジイソシアネ−ト、1,3−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、1,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネ−トメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0030】
上記のうち顔料分散後の粘度を考慮すると、脂肪族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環族ポリイソシアネ−トが好ましく、さらには脂環族ポリイソシアネ−トが好ましい。
【0031】
また、ウレタン樹脂の分子量を上げる目的で、1分子内に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネ−トを併用しても良く、芳香族ポリイソシアネ−ト、脂肪族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環族ポリイソシアネ−ト等の2量体、3量体が挙げられる。
【0032】
例えば、1,3−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、1,4−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト類のジイソシアネートの2量体および3量体である3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、ジアニシジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等も挙げることができる。その他に一部上記ポリイソシアネ−トのトリメチロ−ルプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレ−ト環を有する3量体等を使用することができる。
【0033】
本発明に使用する、上記カルボキシル基含有ポリオール(a)以外のポリオール化合物(c)としては、公知ものを使用し得る。ポリオール化合物(c)としては、低分子量ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール及びヒドロキシ末端化ポリオレフィンなどが挙げられ、例えば、前記したポリオール化合物(a2)を使用することができる。
【0034】
ポリオール化合物(c)は、単独使用でも2種以上の併用でもよいことは勿論であるが、その数平均分子量としては、200〜10,000なる範囲内が、好ましくは、300〜7,000なる範囲内が、さらに好ましくは、500〜3,000なる範囲内が適切である。ポリオール(c)は、得られるウレタン樹脂溶液の粘度を調整したり、ウレタン樹脂の硬さや強度を調整したりするために使用することができる。
【0035】
また、強靱なるウレタン樹脂を得るためには、ポリエステルポリオールの使用が望ましく、例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンまたは3−メチル−δ−バレロラクトンの如き、各種のラクトン類の重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール類の使用が望ましい。
【0036】
本発明のウレタン樹脂の製造に用いられる触媒としては、公知の触媒を使用することができる。例えば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0037】
3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0038】
有機金属系化合物としては錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としては、例えばジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテ−ト、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテ−ト、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネ−ト、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネ−トなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらは単独使用、もしくは併用することもできる。
【0039】
本発明のウレタン樹脂は、これまで挙げた原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になるなどの問題を回避すべく、溶剤を用いるのが好ましい。使用される溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0040】
本発明のカルボキシル基含有ポリオール(a)の製造方法は、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応させることで得られる。多価カルボン酸無水物(a1)中の酸無水物基と、ポリオール化合物(a2)中の水酸基とのモル比は、(a1)/(a2)=0.3〜0.8が、好ましく、0.3未満であると、カルボキシル基含有ポリオール(a)の生成量が少なくなる場合があり、また樹脂の酸価も低くなる場合もある。また0.8を超えるとカルボン酸基含有ポリオール(a)が高分子量化を起こしてしまい、顔料組成物として使用した時に、樹脂間の相互作用が強くなり逆に増粘が起きる場合がある。反応温度は50℃〜200℃が好ましく更に好ましくは80℃〜150℃が好ましい。反応温度50℃未満であると反応速度が遅くなる場合があり、200℃を超える温度で行うと、カルボキシル基がポリオール化合物(a2)と反応してしまい、酸価の減少や、ウレタン化の際のゲル化を起こしてしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収で酸無水物の吸収がなくなるまで反応させるのが理想であるが、カルボキシル基含有ポリオール(a)の酸価が10〜400の範囲に入ったとき、または、水酸基価が20〜300の範囲に入った時に反応を止めてもよい。
【0041】
得られたカルボキシル基含有ポリオール(a)の重量平均分子量は、好ましくは、300〜25000である。重量平均分子量が300未満であればウレタン基密度に問題の場合があり、25000を超えると樹脂の高粘度化に問題がある場合がある。また、得られたカルボキシル基含有ポリオール(a)の酸価は、10〜400、かつ、水酸基価は、20〜300が好ましい。酸価が10未満では、顔料吸着が弱すぎて顔料組成物が高粘度になる場合があり、400を超えると、顔料吸着が強すぎて高粘度になる場合がある。さらに、水酸基価が20未満では、ウレタン化の際に反応性が落ちる場合があり、300を超えると、反応性の制御が困難になる場合がある。
【0042】
次に、カルボキシル基含有ポリオール(a)をウレタン化させカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂を製造する方法は、上記で得られたカルボキシル基含有ポリオール(a)と、ポリイソシアネート化合物(b)および必要に応じて加えられるポリオール化合物(c)とを反応させる方法であれば、特に限定されず、公知の方法で製造できる。例えば、全原料を一括混合して反応させる方法、カルボキシル基含有ポリオール(a)とポリイソシアネート化合物(b)とを反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーを形成した後、該プレポリマーとポリオール化合物(c)とを反応させる方法などが挙げられる。特に全原料を一括混合して反応させる方法が好ましい。本発明のカルボキシル基含有酸性基含有ウレタン樹脂を得るウレタン化反応の温度は40〜120℃が好ましい。さらに好ましくは50〜100℃である。
【0043】
本発明のカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂の酸価は、10〜200であることが好ましく、20〜80であることがさらに好ましく、30〜70であることが特に好ましい。酸価10未満であると顔料吸着能が低下し顔料分散性に問題がでる場合があり、酸価200を超えると樹脂間の相互作用が強くなり顔料分散組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0044】
また、本発明のカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂の重合平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算値)は、1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがさらに好ましく、1000〜30000であることが特に好ましい。
【0045】
本発明に使用する顔料は、インキ等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料としては溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等があり、更に具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー6,15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,144,146,149,166,168,177,178,179,185,206,207,209,220,221,238,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185,ピグメントオレンジ13,36,37、38,43,51,55,59,61,64,71,74等が挙げられる。但し、例示には限定されない。
【0046】
また、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料も使用することができる。カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。
【0047】
本発明の顔料組成物は、上記顔料に限らず、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、コバルト、ニッケル、及び/又はこれらの合金などの金属微粒子を含む固体微粒子を使用することができる。
【0048】
本発明の顔料組成物には、さらに塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体及び塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれる少なくとも一種の塩基性誘導体を含むことが好ましい。
【0049】
ここで、顔料誘導体とは、前記のカラーインデックスに記載されている有機顔料残基に、特定の置換基を導入したものであり、本発明では塩基性基を有するものを使用する。
【0050】
塩基性誘導体を含むことにより、塩基性誘導体なしでは分散の難しい顔料(特に、有機顔料の場合)も、分散性、流動性、保存安定性に優れた顔料組成物とすることができ好ましい。
【0051】
本発明の顔料組成物において用いることのできる塩基性誘導体は、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体及び塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれるものである。
【0052】
本発明の顔料組成物において用いることのできる塩基性誘導体の塩基性基は、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。
【0053】
一般式(1)
【化1】

【0054】
一般式(2)
【化2】

【0055】
一般式(3)
【化3】

【0056】
一般式(4)
【化4】

前記一般式(1)〜(4)において、
X:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表す。
m:1〜10の整数を表す。
1 、R2 :それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはR1とR2とで一体となってさらなる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環残基を表す。
3 :置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置
換されていてもよいフェニル基を表す。
4 、R5 、R6、R7:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
Y:−NR8−Z−NR9−または直接結合を表す。
8、R9:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
Z:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基または置換されていてもよいフェニレン基を表す。
P:式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
Q:水酸基、アルコキシル基、式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
【0057】
一般式(5)
【化5】

【0058】
一般式(6)
【化6】

式(1)〜式(4)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0059】
塩基性基を有する顔料誘導体を構成する有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素である。また、塩基性基を有するアントラキノン誘導体および塩基性基を有するアクリドン誘導体は、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基または塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0060】
また、塩基性基を有するトリアジン誘導体を構成するトリアジンは、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、及びフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンである。
【0061】
本発明の塩基性基 を有する顔料誘導体、アントラキノン誘導体およびアクリドン誘導
体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素、アントラキノンもしくはアクリドンに式(7)〜式(10)で示される置換基を導入した後、上記置換基と反応して式(1)〜式(4)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
式(7) −SO2Cl
式(8) −COCl
式(9) −CH2NHCOCH2Cl
式(10) −CH2Cl
一般式(7)〜(10)で示される置換基と上記アミン成分との反応の際に、一般式(7)〜(10)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素原子が水酸基に置換したものが混在していてもよい。その場合、一般式(7)または一般式(8)で示される置換基は、それぞれスルホン酸基又はカルボン酸基となるが、何れも遊離酸のままでもよく、また、1〜3価の金属又は上記のモノアミンとの塩であってもよい。
【0062】
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、式(1)〜式(4)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0063】
前記塩基性基を有するトリアジン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に式(1)〜式(4)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンまたはN−メチルピペラジン等を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミンまたはアルコール等を反応させることによって得られる。
【0064】
本発明の顔料組成物において、塩基性誘導体の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは3〜30重量部、最も好ましくは5〜25重量部である。また、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜200重量部、更に好ましくは2〜175重量部、最も好ましくは5〜150重量部である。
【0065】
本発明の顔料組成物は、必要により各種溶剤、樹脂、添加剤等を混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、顔料組成物をワニスに分散せしめてなる顔料分散体を調製することができる。顔料、塩基性誘導体、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料と塩基性誘導体とのみ、あるいは、塩基性誘導体とカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂とのみ、あるいは、顔料と塩基性誘導体とカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂とのみを分散し、次いで、他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。
【0066】
また、横型サンドミル、 縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、または顔料への塩基性誘導体、および/またはカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂の処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が顔料分散体を製造するために利用できる。前記の顔料分散体に用いることができる各種溶剤としては、有機溶剤、水等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化型組成物に用いる場合、活性エネルギー線硬化性の液状モノマーや液状オリゴマーを溶剤代わりの媒体として用いてもよい。
【0067】
また、本発明の顔料分散体に用いることができる樹脂の例としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル酸性基含有ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0068】
本発明の顔料分散体は、非水系、水系、または無溶剤系の塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インキジェットインキ、カラーフィルター用インキ、デジタルペーパー用インキ、プラスチック着色等に利用できる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。また、数平均分子量は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いたときのポリスチレン換算分子量である。
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、3,3,4,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 (以下BPDA)(三菱化学株式会社製)16.4部、ネオペンチルグリコール(和光純薬株式会社製)10.5部、シクロヘキサノン27.1部を仕込み、100℃にて4時間反応させ、冷却し、カルボキシル基含有ポリオール(a)を得た。次に、イソホロンジイソシアネート(デグサジャパン株式会社製)51.8部、ネオペンチルグリコール21.4部、シクロヘキサノン73.2部を仕込み、徐々に昇温し、90℃にて反応を行った。IRにてイソシアネート基に基づく2270cm-1のピークの消失を確認した後、40℃まで冷却し、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂を得た。
(製造例2〜3)
表1に記載した原料と仕込み量を用いた以外は製造例1と同様にして合成を行い、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂を得た。
(製造例4)
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、カルボキシル基を含むラクトン系ポリエステルポリオール(PCL205BA、Mw500ダイセル化学工業株式会社製)53.5部、ネオペンチルグリコール(和光純薬株式会社製)8.6部、イソホロンジイソシアネート(デグサジャパン株式会社製)37.9部、シクロヘキサノン100.0部を仕込み、90℃にて反応させ、IRにてイソシアネート基に基づく2270cm-1のピークの消失を確認した後、40℃まで冷却し、カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂を得た。
【0070】
【表1】

BPDA:3,3,4,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学株式会社製)
PMA:ピロメリット酸二無水物(和光純薬株式会社製)
NPG:ネオペンチルグリコール(和光純薬株式会社製)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(デグサジャパン株式会社製)
PCL205BA:カルボキシル基を有するカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業株式会社製)
(実施例1〜3)<分散体の製造>
表2に示すように、顔料(C.I. Pigment Blue 15:3)、製造例1〜3にて合成したカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂、下記構造式(11)で表される塩基性基を有する顔料誘導体、およびシクロヘキサノンを配合し、2mmφジルコニアビーズ100部を加えペイントコンディショナーで3時間分散し、塗料を作成した。
(比較例1)<分散体の製造>
製造例4にて合成したカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂を用いた以外は、実施例1〜3と同様に塗料を作成した。
【0071】
構造式(11)
【化7】

CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
(分散体の評価)
本発明の顔料分散体の性能を評価するために、得られた塗料の粘度をB型粘度計(25℃、回転速度100rpm)で、ヘイズをヘイズメーター( 光透過率20%)で測定し、初期粘度およびヘイズで分散体の性能を評価した(粘度は低いほど良好。ヘイズは小さいほど良好)。初期粘度およびヘイズは分散後1日室温で放置後に測定、経時粘度は1週間40℃に放置後に測定を行った。結果を表2に示す。
本発明の分散体は、比較例に比べ、良好な粘度およびヘイズを示した。
【0072】
【表2】






以上の評価結果から明らかなように、実施例1〜3は、低い初期粘度で、かつ経時粘度の増加がほとんどなく良好な安定性を示している。さらにヘイズも低い。これに対して、比較例1では、粘度とヘイズともに高く、分散性に問題があることがわかった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂と、顔料とを含有する顔料組成物であって、
上記ウレタン樹脂が、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応してなるカルボキシル基含有ポリオール(a)と、
さらに、ポリイソシアネート化合物(b)とを反応してなるカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂であることを特徴とする顔料組成物。
【請求項2】
カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂と、顔料とを含有する顔料組成物であって、
上記ウレタン樹脂が、多価カルボン酸無水物(a1)とポリオール化合物(a2)とを反応してなるカルボキシル基含有ポリオール(a)と、
さらに、ポリイソシアネート化合物(b)と、ポリオール(a)以外のポリオール化合物(c)とを反応してなるカルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂であることを特徴とする顔料組成物。
【請求項3】
多価カルボン酸無水物(a1)が、テトラカルボン酸二無水物である請求項1または2記載の顔料組成物。
【請求項4】
カルボキシル基含有ポリオール(a)の重量平均分子量が、300〜25000である請求項1〜3いずれか記載の顔料組成物。
【請求項5】
カルボキシル基含有ポリオール(a)の酸価が、10〜400であり、かつ、水酸基価が、20〜300である請求項1〜4いずれか記載の顔料組成物。
【請求項6】
カルボキシル基含有ポリオール(a)が、多価カルボン酸無水物(a1)中の酸無水物基と、ポリオール化合物(a2)中の水酸基とを、モル比(a1)/(a2)=0.3〜0.8の条件で反応してなるものである請求項1〜5いずれか記載の顔料組成物。
【請求項7】
カルボキシル基含有酸性ウレタン樹脂の酸価が、10〜200である請求項1〜6いずれか記載の顔料組成物。
【請求項8】
さらに、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性基を有するトリアジン誘導体からなる群より選ばれる塩基性誘導体の少なくとも一種を含む請求項1〜8いずれか記載の顔料組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の顔料組成物をワニスに分散してなる顔料分散体。


【公開番号】特開2007−254556(P2007−254556A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79672(P2006−79672)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】