説明

顔面用防寒・防護具

【課題】寒冷地において屋内外で作業する時や、屋外で遊びや運動をする時に顔面を保温し、或いは作業現場で飛散する岩石や氷の切削片等から顔面を保護し、しかも呼吸が楽であるし、内側に湿気が籠ることがなく、かつ必要に応じて口と鼻を容易に速やかに開放できる顔面用防寒・防護具を提供する。
【解決手段】顔面覆い体2は、鼻から顎までの縦幅で両側の頬まで一体に覆う形状からなり、中央に鼻・口開放穴3を有し、両端に耳掛け部4が設けてある。鼻・口開放穴3を閉塞するカバー体7は顔面覆い体2の下縁に折返し部5を介して上下方向に回動可能になっている。カバー体7は磁着片と磁性片からなる係着部材9によって顔面覆い体2に着脱可能で、係着部材9によって顔面覆い体2とカバー体7との間に上方及び左右方向に開放する吸排気用空隙が形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒さの厳しい寒冷地における屋内外での作業、屋外での遊び或は運動をする時に顔面を保温し、また作業現場で飛散する岩石や氷の切削片等から顔面を保護するのに好適であり、しかも呼吸が楽で必要に応じて口・鼻の開放が可能な顔面用防寒・防護具に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地での屋内外の作業時や、氷上釣り等の野外で遊ぶ場合或は登山の場合には、顔が冷気に曝されることから、防寒用にマスクを着用するが、従来のマスクは鼻から口にかけて顔の下半分を覆っているために、会話、飲食、或は喫煙の際にはその都度マスクを顔から全面的に外さなければならず、防寒性に劣るという欠点がある(特許文献1)。そこで、本件出願人は、防寒具本体と、耳掛け部と、防寒具本体に形成した開口部と、開口部を外側から閉塞する通気性口覆い体とから構成した顔用防寒具を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−239050号公報
【特許文献2】登録第3163707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献2の技術は、口を簡単に開放状態にして会話、飲食ができる構成からなる点で優れているが、防寒性を維持しながら呼吸を楽に行うことや、防寒具本体と通気性口覆い体との間の湿気の解消に関する機能性については改良すべき問題点がある。
【0005】
本発明は上述した従来技術の欠点や問題点に鑑みなされたもので、寒冷地において屋内外で作業する時や、屋外で遊びや運動をする時に顔面を保温し、或いは作業現場で飛散する岩石や氷の切削片等から顔面を保護し、しかも呼吸が楽であるし、内側に湿気が籠ることがなく、かつ必要に応じて口と鼻を容易に速やかに開放できる顔面用防寒・防護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために構成した本発明の手段は、鼻から顎までの縦幅で両側の頬まで一体に覆う形状からなり、中央に鼻・口開放穴を形成し、両端に耳掛け部を設けてなる顔面覆い体と、前記鼻・口開放穴を閉塞する大きさからなり、該顔面覆い体の下縁に形成した折返し部を介して上下方向に回動可能なカバー体と、該カバー体を前記顔面覆い体に着脱可能に係止する係着部材とから構成し、該係着部材によって前記顔面覆い体とカバー体との間に上方及び左右方向に開放する吸排気用空隙を形成したものからなる。
【0007】
そして、前記カバー体は、略中央に縦長細の吸排気孔を形成するとよい。
【0008】
また、前記折返し部には、下向きに開口する通気穴を形成するとよい。
【0009】
更に、前記係着部材は、前記顔面覆い体に設けた磁着片又は磁性片と、前記カバー体に設けた磁性片又は磁着片とから構成し、該係着部材によって前記吸排気用空隙を形成するとよい。
【0010】
また、前記係着部材は、前記顔面覆い体とカバー体に設けた面状ファスナにより構成し、該係着部材により前記吸排気用空隙を形成するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)顔面覆い体の鼻・口開放穴は、係着部材に着脱するカバー体によって容易にかつ速やかに開閉できるから、顔面の保温及び保護に好適であるし、瞬時にカバー体を外して声を出すことや笛を吹くことができるので、作業時などでの使い勝手に優れている。
(2)顔面覆い体とカバー体との間に形成する吸排気用空隙は上方及び左右方向に開放して開放面積が大きいので極めて楽に呼吸を行うことができ、しかも正面から冷気が吹き込まないので防寒性に優れているし、破砕片等の浸入して顔面を直撃する事態を確実に防止できるので安全性に優れている。
(3)カバー体の略中央に、縦長細の吸排気孔を形成したから、息が籠もらないので内側が蒸れることが無いし、息に含まれる湿気が凝結により水滴になったとしても吸排気用空隙を流下し、顔面が水滴に濡れることが無いので長時間着用していても不快感を覚えることがない。
また、カバー体に形成した吸排気孔によって息の抜けがいいので、呼吸が楽であるし、声が籠らないからカバー体を外さなくても普通に会話ができる。
(4)折返し部に下向きに開口する通気穴を形成し、吸気と排気を下方からも出来るようにしたから、開放面積が更に拡大して呼吸を楽に行える。また、カバー体の内側に形成された水滴は通気穴から外に落下するので、水滴が吸排気用空隙内に溜まることがない。
(5)係着部材は磁性片と磁着片により、或いは面状ファスナによって構成したから、カバー体による鼻・口開放穴の開閉動作を容易に、速やかに行うことが出来るので操作性に優れている。また、係着部材によって吸排気用空隙を形成するので、顔面覆い体やカバー体に吸排気用空隙のための構成部分を形成する必要がないから、成形型や材料のコストを節減できる。
(6)顔面覆い体、折返し部及びカバー体は一体物であるから、例えば型抜き加工によって一体に成形可能であり極めて安価に制作できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る顔面用防寒・防護具の正面図である。
【図2】顔面用防寒・防護具の平面図である。
【図3】顔面用防寒・防護具の底面図である。
【図4】カバー体を下げた顔面用防寒・防護具の正面図である。
【図5】顔面用防寒・防護具を装着した説明図である。
【図6】顔面用防寒・防護具を装着してカバー体を下げた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図において、1は顔面用防寒・防護具、2は該顔面用防寒・防護具1を構成し、コットン不織布、或いはポリプロピレン等の軟質合成樹脂の素材で形成した顔面覆い体を示す。該顔面覆い体2は着用者の顔51の鼻から顎まで覆う縦幅で、口から両側の頬まで一体に覆う略横長四角形の形状からなっている。3は顔面覆い体2の中央に上縁3Aが略山型の四角形に形成した鼻・口開放穴で、該鼻・口開放穴3は鼻及び口が露出する大きさにしてある。そして、顔面覆い体2の左右両端2Aには、顔51に装着するための耳掛け紐4、4が設けてある。
【0014】
5は顔面覆い体2の下縁2Bから前記鼻・口開放穴3より幅広に突出する折返し部で、該折返し部5を介して後述するカバー体7は上下方向に回動可能になっている。そして、折返し部5には幅方向に沿って一対の横長の通気穴6、6が形成してあり、呼吸の通気路になると共に、内部に形成される水滴を下方に流下させることができる。7は前記鼻・口開放穴3を閉塞するために、折返し部5から一体に形成したカバー体で、該カバー体7は上辺7Aが山型で、前記鼻・口開放穴3を覆う大きさの略四角形に形成してあり、折返し部5を介して上下方向に回動可能になっている。
【0015】
8は前記カバー体7の略中央に形成した吸排気孔で、該吸排気孔8は鼻先から口に至る長さで幅が約5〜7mmの縦孔部8Aと、口の位置に対応して約10mmの横幅の横孔部8Bとから略逆T字状に形成することで、呼吸が楽であるし、声の通りが良いのでカバー体7を外さずに会話ができる。
【0016】
9、9は前記カバー体7を顔面覆い体2に着脱可能に係止するための一対の係着部材を示す。該各係着部材9は顔面覆い体2の外面2Bに取着した厚さのある磁性片9Aと、カバー体7の内面7Bに取着した磁着片9Bとから構成することにより、磁着片9Bを磁性片9Aに磁着した状態で顔面覆い体2の外面2Bとカバー体7の内面7Bとの間には上方と左右両方向に開放する通気用空隙10が形成されるようにしてある。
【0017】
本実施の形態の顔面用防寒・防護具1は上述の構成からなるもので、次にその作用について岩石の掘削作業を行う場合を例に挙げて説明する。着用者は、耳掛け紐4、4を両側の耳に掛け、顔面用防寒・防護具1を顔51の鼻、顎、口及び頬を覆うように装着する。そして、作業中はカバー体7を上げて磁着片9Bを磁性片9Aに磁着させ、顔面覆い体2に取着して鼻・口開放穴3を閉塞した状態にすることで、着用者は顔51の鼻から両頬にかけた下の部分を顔面用防寒・防護具1によって覆うことができるから、岩石の掘削作業中に破片が飛散しても顔51を保護することができる。また、寒冷期の作業時には冷気から顔51を保温することもできる。
【0018】
しかも、顔面覆い体2とカバー体7との間には吸排気用空隙10を形成し、折返し部5に通気孔6、6を形成し、カバー体7に吸排気孔8を形成することにより、着用者は息苦しさを感じることなく楽に呼吸をすることができる。そして、吸排気用空隙10は横方向に開放し、通気孔6、6は下方に開放しているから、吹雪が正面から吹付けても冷気が顔面51側に吹き込むことがない。また、正面に開口する吸排気孔8は縦長スリット状に形成してあるから、冷気が吹き込むとしても微量で、しかも呼吸時の排気によって吹き込みを阻止するから顔面51が冷たさを感じることは無い。
【0019】
他方、着用者が作業の休憩中はカバー体7を係止部材9からワンタッチの動作で下方に離脱させることにより、鼻と口を容易に速やかに開放させて会話、飲食等を円滑に行うことが出来る。このように、カバー体7は顔面覆い体2に対して簡単に開閉できるから、緊急時に大声を発する場合にも速やかに対応できる。
【0020】
また、本実施の形態では係止部材9を磁性片9Aと磁着片9Bとから構成したが、係止部材に面状ファスナを用いてもカバー体7を速やかに着脱することができるし、吸排気用空隙10を形成できる。
【符号の説明】
【0021】
2 顔面覆い体
2A 両端
2B 前面
3 口開放穴
4 耳掛け紐
5 折返し部
6 通気孔
7 カバー体
7B 内面
8 吸排気孔
9 係着部材
9A 磁性片
9B 磁着片
10 吸排気用空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻から顎までの縦幅で両側の頬まで一体に覆う形状からなり、中央に鼻・口開放穴を形成し、両端に耳掛け部を設けてなる顔面覆い体と、前記鼻・口開放穴を閉塞する大きさからなり、該顔面覆い体の下縁に形成した折返し部を介して上下方向に回動可能なカバー体と、該カバー体を前記顔面覆い体に着脱可能に係止する係着部材とから構成し、該係着部材によって前記顔面覆い体とカバー体との間に上方及び左右方向に開放する吸排気用空隙を形成してあることを特徴とする顔面用防寒・防護具。
【請求項2】
前記カバー体は、略中央に縦長細の吸排気孔を形成してあることを特徴とする請求項1記載の顔面用防寒・防護具。
【請求項3】
前記折返し部には、下向きに開口する通気穴を形成してあることを特徴とする請求項1記載の顔面用防寒・防護具。
【請求項4】
前記係着部材は、前記顔面覆い体に設けた磁着片又は磁性片と、前記カバー体に設けた磁性片又は磁着片とから構成し、該係着部材によって前記吸排気用空隙を形成してある請求項1記載の顔面用防寒・防護具。
【請求項5】
前記係着部材は、前記顔面覆い体とカバー体に設けた面状ファスナにより構成し、該係着部材によって前記吸排気用空隙を形成してある請求項1記載の顔面用防寒・防護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79461(P2013−79461A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219536(P2011−219536)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【特許番号】特許第4951716号(P4951716)
【特許公報発行日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(509063373)有限会社理温テック (3)
【Fターム(参考)】