説明

顕微測定装置

【課題】
本発明の解決すべき課題は、ステージの駆動方式、駆動精度にかかわらず、複数選択されたエリアの測定を順次行うことのできる顕微測定装置を提供することにある。
【解決手段】
試料面上で測定光軸を移動させることにより、所望部位の光学情報取得を行う光学測定装置10において、
試料の現位置にて観察可能な視野内で、試料面画像を観察画像として表示する観察画像表示手段44と、
前記観察画像に重畳して現測定光軸位置66及び測定予定エリア68を表示する光軸表示手段46と、
前記測定予定エリアを拡張、縮小、変形、移動し、測定エリアの設定を行うことのできるエリア設定手段48と、
測定開始指示により、前記一または複数の設定済測定エリアの測定を順次行う光学情報取得手段52と、
を備えたことを特徴とする顕微測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顕微測定装置、特に光学情報取得を行うマッピング測定エリアの設定手段の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微赤外分光光度計などの顕微測定装置によれば、試料上の微細部位の光学情報を取得できるが、フーリエ変換型赤外分光光度計では一の測定点に対しても測定データの積算を行う必要があり、また、広い領域の光学情報を微細部位ごとに得ていくためには試料面に対する検出器の相対位置を順次変更していく、いわゆるマッピング測定を行う必要がある。例えば、下記特許文献1には全反射測定装置を用いたマッピング測定方法が開示されており、定められた一定の領域のマッピング測定を自動的に行うことができる。
【0003】
しかしながら、前述したように多数の測定エリアから光学情報を得る場合には、前述したように各点での各測定エリアでの積算データ取得には時間がかかり、かつ所定面積のマッピングデータを得るためにも相応の時間がかかる。
そこで、予め複数箇所の光学情報取得エリアを設定可能とし、エリアの設定を一括して行ったあとに順次各設定済エリアのデータを取得していく手法も開発されている。
【0004】
ところで測定にあたって、順次、ステップ状に試料位置と受光器位置を相対移動しており、複数の光学情報取得エリアを設定した場合に、各エリア間の移動、および各エリア内での相対移動ともに試料を載置するステージを移動させるのが一般的であった。
【0005】
しかしながら、ステージの移動に伴い、移動誤差が累積し、しかもエリアの設定時、およびマッピング測定時の両者でステージ位置が狂いなく同一位置に位置決めされることが必要であり、きわめて高精度の電動制御型ステージが要求された。さらに、ステージはその安定性を図るため一般に重く、高速走査するには不向きである。このため、光学情報取得エリアを設定する際にゆっくりとした
、ステージ駆動によりエリア位置を設定するのは、操作者のストレスとなる場合もあった。
【特許文献1】特開2006−208016
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題はステージの駆動方式、駆動精度にかかわらず、測定エリアの設定を高速に行うことができ、しかも設定されたエリアの測定を正確に行うことのできる顕微測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、試料面上で測定光軸を移動させることにより、所望部位の光学情報取得を行う光学測定装置において、
試料の現位置に手観察可能な視野内で、試料面画像を観察画像として表示する観察画像表示手段と、
前記観察画像に重畳して現測定光軸位置及び測定予定エリアを表示する光軸表示手段と、
前記測定予定エリアを拡張、縮小、変形、移動し、測定エリアの設定を行うことのできるエリア設定手段と、
測定開始指示により、前記一または複数の設定済測定エリアの測定を順次行う光学情報取得手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記装置において、
複数の設定済エリアを記憶し、且つ現観察画像上に表示可能な設定済エリアを表示するエリア記憶・表示手段を備えることが好適である。
【0009】
また、前記装置において、
測定予定エリアは、該エリア内をマッピング測定するマッピング測定予定エリアであり、
設定済測定エリアは、設定済マッピング測定エリアであることが好適である。
また、前記装置において、
観察画像表示手段は、試料面を目視観察する観察光学系を有し、該観察光学系の観察光軸を試料面上で固定し、固定観察光軸で観察可能な視野内で、試料面画像を観察画像として表示するものであることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明に係る顕微測定装置によれば、観察可能な視野内で測定エリア設定を行い、該測定エリアについて測定光軸のみを移動することにより特定し、それぞれについて光学情報を測定することとしたので、ステージの駆動機構、駆動精度に依存せず、高速のエリア設定、および高位置精度の測定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は一実施形態にかかる顕微測定装置の概略構成が示されている。
同図に示す顕微測定装置は、フーリエ変換型顕微赤外分光光度計10に適用されている。
【0012】
本実施形態において、赤外分光光度計10は、測定光学系として、光照射手段12と、試料14の被測定面上に光を集光し、該被測定面からの反射光を集光するカセグレン型対物鏡16と、反射光を検出する検出器18と、検出器18へ向かう光を特定領域からの光に制限するアパーチャー20と、試料14からアパーチャー20へと至る光路上に設置された検出側スキャンミラー22と、光照射手段12から試料14へ至る光路上に設置された照射側スキャンミラー24とを備えている。そして、検出側スキャンミラー22及び照射側スキャンミラー24により、視野内で任意の位置へ光軸を移動させる光軸移動手段を構成している。
【0013】
前記光照射手段12は、赤外光源26と、干渉計28より構成され、赤外光源26からの光は、干渉計28により干渉光となり、照射側スキャンミラー24へと向かう。そして、照射側スキャンミラー24により反射され、対物鏡16へと送られ、対物鏡16から試料14に光が照射される。このとき、照射側スキャンミラー24の反射面の向きを光軸コントローラ30によって制御し、試料14上の照射領域を調整する。また、試料14からの反射光は対物鏡16により集光され、検出側スキャンミラー22へと送られる。検出側スキャンミラー22では、試料からの反射光の特定の測定部位からの光のみがアパーチャー20の開口に向かうように調整されている。アパーチャー20では測定部位以外からの反射光を遮断し、測定部位からの光のみが透過する。アパーチャー20を通過した光は集光鏡32によって集光され、検出器18で検出される。検出されたデータはデータ処理回路34にて処理され、コンピュータ36により記憶・処理される。そして、照射側スキャンミラー24及び検出側スキャンミラー22の反射面の向きを変更して測定を繰り返すことにより、試料面の二次元マッピング測定を行う。
【0014】
なお、本実施形態において、前記測定光学系とは別個に観察光学系を備えている。すなわち、赤外分光光度計10は可視光源38および画像出力手段40を備え、可視光源38からの可視光は、対物鏡16を経由して試料14上に照射され、試料14からの反射光は同じく対物鏡16を経由して画像出力手段40に入光する。画像出力手段40はそのまま接眼レンズとして直接目視観察に供し、或いはCCD撮像素子などにより撮像し、コンピュータモニターを介して目視観察に供する。この観察光学系は、基本的に前記スキャンミラー22,24の影響を受けず、試料14と対物鏡16の相対位置、すなわち試料14を載置する図示を省略したステージの位置により観察位置が決定される。
【0015】
図2は、本発明において好適に用いられるコンピュータ36の機能説明図である。
同図に示すように、コンピュータ36は画像出力手段40の出力する観察画像をディスプレイ42上に表示する観察画像表示手段44と、前記観察画像表示手段44により表示された観察画像上で、現在の光軸位置及びマッピング測定予定エリア枠を表示する光軸位置表示手段46と、該光軸位置で光学情報取得エリアをマウス47等により拡大、縮小、変形、移動することで設定可能な光学情報取得エリア設定手段48と、該エリア設定手段48により設定された設定済エリアの光軸位置情報、エリア情報、測定条件等をハードディスク49等に記憶し、且つ観察画像上に表示するエリア記憶・表示手段50と、エリア設定が終了した後に複数設定されたエリアについて順次マッピング測定を行い、スペクトル情報出力手段51より取得する光学情報取得手段52とを備える。
【0016】
そして、図3に示すように、顕微鏡に対しては広大な試料面60に対し、所定ステージ位置で光軸移動による観察可能な最大領域として視野領域62が設定され、さらに該視野領域62に対して、現時点での光軸位置で観察可能な観察画像領域64が設定されている。観察画像のディスプレイ42への表示状態が図4に示されている。同図より明らかなように、ディスプレイ42には大きく観察画像64が表示され、該観察画像64上には現在の光軸位置66およびマッピング測定予定エリア68が表示されている。この予定エリア68については、その枠の任意の位置をマウス47を操作しカーソルによりつまみ、矩形エリア68の拡大、縮小、変形を行うことができる。なお、すでに設定されたエリア70も観察画像64に表示可能な限り同一画面上に表示されており、設定位置を容易に確認することができる。
【0017】
そして、観察画像上で全ての光学情報取得エリア70が設定されると、測定開始指示により光学情報取得手段52は、各エリアに光軸を移動するとともに、該エリアのマッピング測定を行い、順次各エリアのマッピング測定を行っていく。
このように本発明によれば、一の視野領域上の複数エリアについて順次マッピング測定を行うことができ、時間を要するマッピング測定を一括して行うことができる。
【0018】
また、本発明によれば、一の視野領域上でのエリア設定に限っているため、顕微鏡のステージは連動させる必要がなく、本発明は手動式ステージを有した顕微鏡にも適用可能である。
なお、本発明において、自動ステージを使用した場合にも、視野領域間の移動のみをステージ移動により行い、各視野領域内での光軸移動は光軸コントローラを介して行うことで、ステージの頻繁な移動に伴う誤差の累積を防止することができる。
【0019】
また、本実施形態においては、マッピング測定を行う例について説明したが、これに限られるものではなく、一のエリアについて一のデータを取得する場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る顕微測定装置の概略構成の説明図である。
【図2】本発明に係る顕微測定装置に用いられる制御機構の説明図である。
【図3】本発明において、試料面、視野領域、観察画像領域の関係の説明図である。
【図4】本発明に係る顕微測定装置のディスプレイへの表示例の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10 顕微測定装置(フーリエ変換型顕微赤外分光光度計)
22 検出側スキャンミラ(光軸変更手段)
24 照射側スキャンミラー(光軸変更手段)
40 観察画像出力手段
44 観察画像表示手段
46 光軸位置表示手段
48 光学情報取得エリア設定手段
50 エリア記憶・表示手段
52 光学情報取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料面上で測定光軸を移動させることにより、所望部位の光学情報取得を行う光学測定装置において、
試料の現位置にて観察可能な視野内で、試料面画像を観察画像として表示する観察画像表示手段と、
前記観察画像に重畳して現測定光軸位置及び測定予定エリアを表示する光軸表示手段と、
前記測定予定エリアを拡張、縮小、変形、移動し、測定エリアの設定を行うことのできるエリア設定手段と、
測定開始指示により、前記一または複数の設定済測定エリアの測定を順次行う光学情報取得手段と、
を備えたことを特徴とする顕微測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
複数の設定済エリアを記憶し、且つ現観察画像上に表示可能な設定済エリアを表示するエリア記憶・表示手段を備えることを特徴とする顕微測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、
測定予定エリアは、該エリア内をマッピング測定するマッピング測定予定エリアであり、
設定済測定エリアは、設定済マッピング測定エリアであることを特徴とする顕微測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の装置において、
観察画像表示手段は、試料面を目視観察可能とする観察光学系を有し、該目視観察光学系の観察光軸を試料面上で固定し、固定観察光軸で観察可能な視野内で、試料面画像を観察画像として表示するものであることを特徴とする顕微測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−103814(P2009−103814A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273967(P2007−273967)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】