説明

顕微鏡対物レンズ

【課題】長時間観察可能で、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化を抑制することができる液浸対物レンズの技術を提供することを課題とする。
【解決手段】液浸対物レンズ10は、最も標本1側に形成されて光軸AXと直交する先端平面4と光軸AXと平行な側面5とを有す。液浸対物レンズ10は、先端平面4と側面5の間の部分である先端部6に凹部7を有す。浸液3は、先端平面4から凹部7よりも光軸AXから離れた位置に形成される斜面8にまで及ぶ。即ち、凹部7内も浸液3で満たされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡対物レンズに関し、特に、液浸対物レンズの先端形状に関する。
【背景技術】
【0002】
対物レンズと標本の間を空気に比べて高い屈折率を有する浸液で満たす液浸技術が知られている。現在、液浸技術は、例えば、生命科学・医学の分野などを中心に顕微鏡のさまざまな分野で広く用いられている。液浸技術によれば、対物レンズと標本の間を浸液で満たすことで対物レンズの開口数が向上し、標本を高解像度で観察することが可能となる。
【0003】
ところで、対物レンズと標本の間に満たされる浸液には、さまざまな種類のものが存在し、揮発性の成分を含むものも数多く存在する。
揮発性成分を含む浸液は、その液量が観察中に蒸発により不足することがある。このため、長時間の観察は困難である。また、揮発性成分を含む浸液は、蒸発により浸液を構成する成分間のバランスが変化する。このため、蒸発が進むと、浸液の特性の変化により対物レンズの光学性能を十分に発揮することができない。
【0004】
このような課題に関連する技術は、特許文献1、特許文献2に開示されている。
特許文献1には、対物レンズと標本容器の間にイマージョン液を供給するイマージョン液供給手段を備えた顕微鏡装置が開示されている。特許文献1に開示される顕微鏡装置によれば、必要なタイミングでイマージョン液を供給することができる。このため、常に、適当なイマージョン液を適量用いることができる。
【0005】
また、特許文献2には、水の光学的性質と油の低蒸発性を兼ね備えた浸液が開示されている。特許文献2に開示される浸液を用いることで、蒸発の影響が抑えられるため、水を浸液として観察することが適した標本を良好な性能で長時間観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−261940号公報
【特許文献2】特開2004−258662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、顕微鏡装置にイマージョン液を供給するイマージョン液供給手段が追加で必要となる。このため、顕微鏡装置の構成が複雑化し、その結果、製造コストの上昇を招いてしまう。
また、特許文献2に開示される技術では、使用する浸液が限定されてしまう。このため、必要に応じて所望の浸液を選択して使用することができない。
従って、長時間観察可能とし、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化を抑制する新たな技術が求められている。
【0008】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、長時間観察可能で、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化を抑制することができる液浸対物レンズの技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、最も標本側に形成されて光軸と直交する先端平面と前記光軸と平行な側面とを有する液浸対物レンズであって、前記先端平面と前記側面の間の先端部に凹部を有する液浸対物レンズを提供する。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の液浸対物レンズにおいて、さらに、前記先端部の前記凹部よりも前記光軸から離れた位置に、前記先端平面に対して傾斜した斜面を有し、αを前記光軸と前記斜面のなす角とするとき、以下の条件式60°<α<90°を満たす液浸対物レンズを提供する。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の液浸対物レンズにおいて、WDを前記液浸対物レンズの作動距離とし、WYを前記先端部に形成された前記凹部最深部から標本までの距離とするとき、以下の条件式0.1<WD/WY<0.5を満たす液浸対物レンズを提供する。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、前記溝は、前記先端平面と接する第1面と前記第1面に接する第2面とを含む複数の平面から構成され、βを前記第1面と前記第2面とのなす角とするとき、以下の条件式45°<β<135°を満たす液浸対物レンズを提供する。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、前記先端部は、前記先端平面とは異なる前記光軸と直交する平面を有する液浸対物レンズを提供する。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、前記光軸と直交する方向の前記凹部の幅は、前記液浸対物レンズの実視野の50倍以内である液浸対物レンズを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長時間観察可能で、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化を抑制することができる液浸対物レンズの技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。
【図2】実施例1に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。
【図3】実施例1に係る液浸対物レンズの一部を拡大した図である。
【図4】実施例2に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。
【図5】実施例3に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各実施例に係る液浸対物レンズの特徴の把握を容易にするため、図1を参照しながら、従来技術に係る液浸対物レンズ100の先端形状について簡単に説明する。
【0018】
図1は、従来技術に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。図1には、標本101をセットしたガラスボトムディッシュ102と液浸対物レンズ100との間を浸液103で満たした様子が示されている。なお、ここでは、液浸対物レンズ100は倒立顕微鏡に装着されている。
【0019】
液浸対物レンズ100は、最も標本101側に形成されて光軸AXと直交する平面(以降、先端平面と記す。)104と、光軸AXと平行な側面105と、先端平面104と側面105とつなぐ斜面107を有している。そして、これら先端平面104、側面105、斜面107によって、液浸対物レンズ100の標本101側の輪郭が画定されている。液浸対物レンズ100の先端平面104と側面105の間の部分(以降、先端部と記す。)は、光軸AXに対して対称な台形形状を呈している。
【0020】
液浸対物レンズ100では、浸液103は、先端平面104上だけでなく斜面107の一部にも及んでいるが、浸液103の表面張力によりガラスボトムディッシュ102と液浸対物レンズ100の間に留まっている。
以降、実施例1から実施例3では、従来の液浸対物レンズ100の先端形状とは異なる先端形状を備えた液浸対物レンズについて説明する。
【実施例1】
【0021】
図2は、本実施例に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。なお、対物レンズの外形形状のみを描き、対物レンズ内のレンズ枠や光学部品等については省略している。図3は、本実施例に係る液浸対物レンズの一部を拡大した図である。図2及び図3には、標本1をセットしたガラスボトムディッシュ2と液浸対物レンズ10との間を浸液3で満たした様子が示されている。なお、ここでは、液浸対物レンズ10は倒立顕微鏡に装着されている。
【0022】
図2に例示される液浸対物レンズ10は、最も標本1側に形成されて光軸AXと直交する先端平面4と光軸AXと平行な側面5とを有する点については、図1に例示される従来技術に係る液浸対物レンズ100と同様である。
【0023】
図3に例示されるように、液浸対物レンズ10は、先端平面4と側面5の間に、斜面107の代わりに、複数の斜面(斜面7a、斜面7b、斜面8)を含んでいる点が、図1に例示される液浸対物レンズ100と異なっている。先端平面4、側面5、及び複数の斜面は、光軸AX側から順に、先端平面4、斜面7a(第1面)、斜面7b(第2面)、斜面8、側面5の順番でつながっている。また、斜面7aと斜面7bは、液浸対物レンズ10の輪郭にV字型の溝を形成している。換言すると、液浸対物レンズ10は、その先端部6に凹部7を有している。
【0024】
液浸対物レンズ10では、浸液3は、先端平面4上だけでなく先端平面4と側面5の間の斜面の一部にも及んでいる。具体的には、浸液3は、先端平面4から凹部7を形成する斜面7a及び斜面7bを超えて、凹部7よりも光軸AXから離れた位置に形成される斜面8にまで及んでいる。即ち、凹部7内も浸液3で満たされている。このため、液浸対物レンズ10では、凹部7を有しない場合に比べてより多くの浸液3を保持することができる。
【0025】
浸液3の量が多くなれば、蒸発により浸液3が不足して標本の観察ができなくなるまでの時間も長くなる。このため、より長い時間標本を観察することが可能となる。また、浸液3の量が多いほど、蒸発により浸液3に含まれる揮発性成分が一定量減少した場合に生じる揮発性成分と不揮発性成分の比率の変化は小さくなる。このため、蒸発が進んだ場合であっても、蒸発により浸液を構成する成分間のバランスの変化を小さく抑えることができる。このため、浸液の特性の変化により対物レンズの光学性能の劣化を抑制することができる。
【0026】
以上のように、本実施例に係る液浸対物レンズ10によれば、先端部に凹部7を有することにより保持しうる浸液3の量を増加させることができる。このため、従来の液浸対物レンズに比べて、長時間観察可能で、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化を抑制することができる。
【0027】
また、液浸対物レンズ10はその先端形状により上述した効果を実現している。従って、使用する浸液は特に限定されず、また、液浸対物レンズ10の外部に追加で必要な専用の構成要素も存在しない。このため、液浸対物レンズ10によれば、顕微鏡装置の構成を変更することなく任意の浸液を使用して上述した効果を得ることができる。
【0028】
なお、以上では、より多くの浸液3を保持することにより上述した効果が実現されることについて記載したが、上述した効果は浸液3の空気接触面の表面積を減少させることによっても実現することができる。空気接触面の表面積が少ないほど、単位時間当たりの浸液3の蒸発量が減少するからである。
【0029】
このため、液浸対物レンズ10は、浸液3の空気接触面の表面積が小さい先端形状を有することが望ましい。具体的には、液浸対物レンズ10は、浸液3の空気接触面の表面積を小さくするために、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。ここで、αは、光軸AXと斜面8とのなす角を示している。なお、斜面8は、先端部6の凹部7よりも光軸AXから離れた位置に形成された斜面であって、先端平面4に対して傾斜した斜面である。
60°<α<90° ・・・(1)
【0030】
条件式(1)の下限を下回ると、斜面8の勾配が急になりすぎる。このため、斜面8上の浸液3の空気接触面がガラスボトムディッシュ2の底面から離れすぎてしまい、浸液3の空気接触面の表面積が大きくなってしまう。一方、条件式(1)の上限を上回ると、斜面8の勾配がなくなり斜面ではなくなってしまうか、または、光軸AXから離れるほど標本1に近づくような斜面となってしまう。
【0031】
ところで、浸液3の空気接触面の表面積が大きい場合であっても、浸液3の量が多い場合には、蒸発による影響は小さくなる。反対に、浸液3の空気接触面の表面積が小さい場合であっても、浸液3の量が少ない場合には、蒸発による影響は大きくなる。このように、蒸発による影響の大小は、浸液3の空気接触面の表面積と浸液3の量とのバランスに依存すると考えられる。
【0032】
このため、液浸対物レンズ10は、蒸発による影響を抑えるために、さらに、以下の条件式(2)を満たすことが望ましい。ここで、WDは液浸対物レンズ10の作動距離を、WYは先端部に形成された凹部最深部から標本までの距離を示している。なお、WDは表面積を代表する値であり、WDが大きいほど空気接触面が多くなる。また、WYは浸液3の体積を代表する値であり、WYが大きいほど浸液3の体積も大きくなる。
0.1<WD/WY<0.5 ・・・(2)
【0033】
条件式(2)の下限を下回ると、対物レンズの先端部の製造において作業性、加工性が悪く、非現実的な形状になってしまう。一方、条件式(2)の上限を上回ると、従来の形状に近づくため、浸液の体積が増えず凹部を持つことの効果が得られない。
【0034】
また、凹部に保持することができる浸液3の量が増加すれば、通常は、液浸対物レンズ10とガラスボトムディッシュ2の間の浸液3の量も増加する。このため、より多くの浸液3を凹部内に保持するため、凹部を構成する斜面7a及び斜面7bは、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。ここで、βは、先端平面4に接する斜面7a(第1面)と斜面7aに接する斜面7b(第2面)とのなす角を示している。
45°<β<135° ・・・(3)
【0035】
条件式(3)の下限を下回ると、凹部7内に保持する浸液3の量が少なくなりすぎるため、浸液3の増加量もごくわずかとなってしまう。一方、条件式(3)の上限を上回ると、第2面が光軸AXに対して90度未満の角度で傾斜する可能性がある。この場合、凹部7が浸液3を保持する構成ではなくなってしまう。
【0036】
なお、凹部7が大きいほど浸液3をより多く保持することができるが、光軸AXと直交する方向の凹部7の幅は、液浸対物レンズ10の実視野の50倍以内であることが望ましい。
【実施例2】
【0037】
図4は、本実施例に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。図4には、標本1をセットしたガラスボトムディッシュ2と液浸対物レンズ20との間を浸液3で満たした様子が示されている。なお、ここでは、液浸対物レンズ20は倒立顕微鏡に装着されている。
【0038】
図4に例示される液浸対物レンズ20は、最も標本1側に形成されて光軸AXと直交する先端平面4と、光軸AXと平行な側面5と、先端平面4と側面5とつなぐ斜面8を有する点については、図1に例示される従来技術に係る液浸対物レンズ100と同様である。
【0039】
図4に例示されるように、液浸対物レンズ20は、先端平面4に凹部7が形成されている点が、図1に例示される液浸対物レンズ100と異なっている。換言すると、液浸対物レンズ20は、その先端部6に凹部7を有している。なお、図4では、凹部7の形状は円弧形状であるが、特にこの形状に限られない。
【0040】
液浸対物レンズ20では、浸液3は、先端平面4上だけでなく先端平面4と側面5の間の斜面8の一部にも及んでいる。具体的には、浸液3は、先端平面4の凹部7を超えて斜面8にまで及んでいる。即ち、凹部7内も浸液3で満たされている。このため、液浸対物レンズ20では、凹部7を有しない場合に比べてより多くの浸液3を保持することができる。
【0041】
従って、本実施例に係る液浸対物レンズ20によれば、実施例1に係る液浸対物レンズ10と同様に、先端部に凹部7を有することにより保持しうる浸液3の量を増加させることができる。このため、従来の液浸対物レンズに比べて、長時間観察可能で、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化を抑制することができる。
【0042】
また、液浸対物レンズ20は、顕微鏡装置の構成を変更することなく任意の浸液を使用して上述した効果を得ることができる点、条件式(1)及び(2)を満たすことが望ましい点、光軸AXと直交する方向の凹部7の幅が液浸対物レンズ20の実視野の50倍以内であることが望ましい点についても、実施例1に係る液浸対物レンズ10と同様である。
【実施例3】
【0043】
図5は、本実施例に係る液浸対物レンズの光軸上で切断したときの断面を例示した図である。図5には、標本1をセットしたガラスボトムディッシュ2と液浸対物レンズ30との間を浸液3で満たした様子が示されている。なお、ここでは、液浸対物レンズ30は倒立顕微鏡に装着されている。
【0044】
図5に例示される液浸対物レンズ30は、最も標本1側に形成されて光軸AXと直交する先端平面4と光軸AXと平行な側面5とを有する点については、図1に例示される従来技術に係る液浸対物レンズ100と同様である。
【0045】
図5に例示されるように、液浸対物レンズ30は、先端平面4と側面5の間に、斜面107の代わりに、凹部7と、先端平面4とは異なる光軸AXと直交する平面9とを含んでいる点が、図1に例示される液浸対物レンズ100と異なっている。換言すると、液浸対物レンズ30は、その先端部6に、凹部7と、先端平面4とは異なる光軸AXと直交する平面9とを有している。
【0046】
なお、凹部7は、先端平面4に接する側面7cと、側面7cに接する底面7dと、底面7d及び平面9に接する側面7eから構成されていて、実施例1及び実施例2の凹部7に比べて非常に大きく形成されている。平面9は、その両端が面取りされている。液浸対物レンズ30の作動距離の基準面が液浸対物レンズ30の最も標本側の面であることを考慮すると、平面9は先端平面4と同一平面または先端平面4よりもガラスボトムディッシュ2から光軸AX方向に離れた面に形成されることが望ましい。
【0047】
液浸対物レンズ30では、浸液3は、先端平面4上だけでなく平面9の一部にも及んでいる。具体的には、浸液3は、凹部7を超えて平面9の凹部7側の面取り部分にまで及んでいる。即ち、凹部7内は浸液3で満たされている。このため、液浸対物レンズ20では、凹部7を有しない場合に比べてより多くの浸液3を保持することができる。
【0048】
従って、本実施例に係る液浸対物レンズ30によれば、実施例1に係る液浸対物レンズ10と同様に、先端部に凹部7を有することにより保持しうる浸液3の量を増加させることができる。このため、従来の液浸対物レンズに比べて、長時間観察可能で、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化を抑制することができる。
【0049】
なお、液浸対物レンズ30では、液浸対物レンズ30の光軸AXと直交する方向の幅に対して、凹部7は先端平面4と同程度の割合を占めている。このように、液浸対物レンズ30の凹部7は、実施例1及び実施例2に係る液浸対物レンズに比べて非常に大きな凹部7を有している。このため、液浸対物レンズ30によれば、実施例1及び実施例2に係る液浸対物レンズに比べてより多くの浸液3を保持することができる。このため、実施例1及び実施例2に係る液浸対物レンズに比べて、さらに長時間観察可能で、且つ、浸液の蒸発による光学性能の劣化をさらに抑制することができる。
【0050】
また、液浸対物レンズ30では、浸液3の空気接触面は平面9上に形成される。従って、平面9の高さを先端平面4の高さと略一致させることで、先端平面4上に浸液3の空気接触面を形成した場合と同程度に、浸液3の空気接触面の表面積を抑えることができる。
【0051】
また、液浸対物レンズ30は、顕微鏡装置の構成を変更することなく任意の浸液を使用して上述した効果を得ることができる点、条件式(3)を満たすことが望ましい点についても、実施例1に係る液浸対物レンズ10と同様である。
【符号の説明】
【0052】
10、20、30、100・・・液浸対物レンズ
1、101・・・標本
2、102・・・ガラスボトムディッシュ
3、103・・・浸液
4、104・・・先端平面
5、105・・・側面
6、106・・・先端部
7・・・凹部
7a、7b、8、107・・・斜面
7c、7e・・・側面
7d・・・底面
9・・・平面
AX・・・光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も標本側に形成されて光軸と直交する先端平面と前記光軸と平行な側面とを有する液浸対物レンズであって、
前記先端平面と前記側面の間の先端部に凹部を有する
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の液浸対物レンズにおいて、
前記先端部は、前記凹部よりも前記光軸から離れた位置に、前記先端平面に対して傾斜した斜面を有し、
αを前記光軸と前記斜面のなす角とするとき、以下の条件式
60°<α<90°
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項3】
請求項2に記載の液浸対物レンズにおいて、
WDを前記液浸対物レンズの作動距離とし、WYを前記先端部に形成された前記凹部最深部から標本までの距離とするとき、以下の条件式
0.1<WD/WY<0.5
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
前記溝は、前記先端平面と接する第1面と前記第1面に接する第2面とを含む複数の平面から構成され、
βを前記第1面と前記第2面とのなす角とするとき、以下の条件式
45°<β<135°
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
前記先端部は、前記先端平面とは異なる前記光軸と直交する平面を有する
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
前記光軸と直交する方向の前記凹部の幅は、前記液浸対物レンズの実視野の50倍以内である
ことを特徴とする液浸対物レンズ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109112(P2013−109112A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253319(P2011−253319)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】