説明

顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージ

【目的】本発明は、顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージに関し、試料を固定した試料台を簡単な作業で固定して動かないようにして拡大された画像を表示させることを目的とする。
【構成】側面にピンセットで保持するための少なくとも2つの穴を設けた試料台と、試料台を挿入する穴、カット面、スプリング、および側面に2つの穴を設けた試料ホルダと、試料ホルダを挿入する穴、カット面、およびスプリングを設けた試料ステージとから構成される顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料台上に固定した試料を拡大して観察する顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子顕微鏡では、試料を固定した試料台をビスで試料ホルダに固定して動かないようにしたり(特許文献1)、導電性両面テープで固定して動かないようにしたりし、試料移動機構で試料上の任意の場所に位置づけ、当該位置づけた場所の試料の拡大した画像を表示していた。
【特許文献1】特開2002−110078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、ビスで試料を固定した試料台を試料ホルダに固定したのでは、試料を交換する毎に、ネジを締めたり、緩めたりする必要があり、試料交換作業が面倒であるという問題があった。
【0004】
また、試料は小さく、通常はピンセットでつまんで試料台上に導電性ペイント(例えばシルバーペイント)で試料の端や試料の裏面を試料台に固定する必要があり、更に、ネジはドライバで締めたり、緩めたりする必要があり、ピンセット、ドライバというように作業に伴い工具を持ち替える必要があり、試料交換が面倒で、作業性が悪いという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するため、試料台上に固定した試料を拡大して観察する顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージであって、円柱状の上面あるいは底面に試料を固定する共に、側面にピンセットで保持するための少なくとも2つの穴(試料台)を設けた試料台と、試料台を挿入する穴、およびピンセットで試料台の2つの穴(試料台)をつまんだままの状態で穴に試料台を挿入あるいは穴から試料台を取り出すためのカット面(試料ホルダ)、および試料台を穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ホルダ)、および側面にピンセットで保持するための少なくとも2つの穴(試料ホルダ)を設けた試料ホルダと、試料ホルダを挿入する穴、およびピンセットで試料ホルダの2つの穴(試料ホルダ)をつまんだままの状態で当該穴に試料ホルダを挿入あるいは穴から試料ホルダを取り出すためのカット面(試料ステージ)、および試料ホルダを穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ステージ)を設けた試料ステージとを備えるようにしている。
【0006】
また、試料台上に固定した試料を拡大して観察する顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージであって、円柱状の上面あるいは底面に試料を固定する共に、側面にピンセットで保持するための少なくとも2つの穴(試料台)を設けた試料台と、試料台を挿入する穴、およびピンセットで試料台の2つの穴(試料台)をつまんだままの状態で穴に試料台を挿入あるいは穴から試料台を取り出すためのカット面(試料ホルダ)、および試料台を穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ホルダ)を設けた試料ホルダと、試料ホルダを挿入する穴、および試料ホルダをつまんだままの状態で穴に試料ホルダを挿入あるいは試料ホルダをつまんで取り出すための対向したカット面(試料ステージ)、および試料ホルダを穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ステージ)を設けた試料ステージとを備えるようにしている。
【0007】
この際、試料ホルダに、複数の穴を設けて複数の試料台を挿入あるいは取り出すようにしている。
【0008】
また、試料ホルダの穴の底に、ピンセットあるいは指で挿入された試料台を押し出すための開口を設けるようにしている。
【0009】
また、試料ステージを、X移動機構およびY移動機構に搭載し、試料ステージをX方向およびY方向に移動させて、試料ステージに固定された試料台上の試料の任意の場所の拡大された画像を表示させるようにしている。
【0010】
また、試料ステージを、回転機構に搭載し、試料ステージを回転させて、試料ステージに固定された試料台上の傾斜された状態の試料の任意の場所の拡大された画像を表示させるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ピンセットで試料を固定した試料台をつまんだ状態のままで試料ホルダの穴に挿入して固定あるいは取り出したり、更に、試料ホルダをピンセットあるいは指でつまんだ状態のままで試料ステージに挿入して固定あるいは取り出したりすることにより、試料を固定した試料台を簡単な作業で固定して動かないようにして拡大された画像を表示させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ピンセットで試料を固定した試料台をつまんだ状態のままで試料ホルダの穴に挿入して固定あるいは取り出したり、更に、試料ホルダをピンセットあるいは指でつまんだ状態のままで試料ステージに挿入して固定あるいは取り出したりし、試料を固定した試料台を簡単な作業で固定して動かないようにして拡大された画像を表示させることを実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の1実施例構造図を示す。
【0014】
図1の(a)は試料台の斜視図を示し、図1の(b)は試料台を試料ホルダに挿入して固定した状態の斜視図を示し、図1の(c)は試料ホルダを挿入して固定するための当該試料ホルダが未挿入・固定の試料ステージの斜視図を示す。
【0015】
図1の(a)において、試料台1は、円柱状の導電性材料(例えば真鍮などの材料)であって、側面に少なくとも2個のピンセット穴(試料台)2を設けたものである。図示の状態の試料台1では、通常、円柱状の上面に導電性ペイントあるいは導電性両面粘着テープを用いて観察対象の試料を固定する。試料台1の側面に設けたピンセット穴(試料台)2にピンセットの先を入れ、矢印で示すように、ピンセットの先で試料台1の2つのピンセット穴(試料台)2をつまんだ状態のままで、図1の(b)の試料ホルダ3のカット面(試料ホルダ)5の部分からピンセットの先で試料台1のピンセット穴(試料台)2をつまんだままの状態で上から下方向に挿入して底まで押し込むと、スプリング(試料ホルダ)4で当該試料台1が固定される。
【0016】
図1の(b)において、試料ホルダ3は、平たい円柱状の導電性金属(例えば非磁性のアルミ)に図示のように複数の試料台1を固定する穴(ここでは、4個の穴)を設けた構造を有するものであって、当該試料ホルダ3の側面にピンセットでつまむピンセット穴(試料ホルダ)6、更に、各穴に試料台4をそれぞれ固定するスプリング(試料ホルダ)4を設けたものである。図示の試料ホルダ3は、1個の試料台1を挿入して固定されているが、図示の構造では最大、4個の試料台1を挿入して固定できる。試料ホルダ3は、図1の(c)の試料ステージ11に挿入して固定する。
【0017】
図1の(c)において、試料ステージ11は、図1の(b)の試料ホルダ3を挿入してスプリング(試料ステージ)12で固定するものであって、平たい円筒状でかつ底面(底面は周辺と中心部分のみで、その中間部分に開口部を設けてもよい)を有する形状であって、試料ホルダ3をピンセットの先でピンセット穴(試料ホルダ)6をつまんだ状態で(あるいは指先で試料ホルダ3の全体をつまんだ状態で)試料ホルダ3を、試料ステージ11の穴の部分に挿入してスプリング(試料ステージ)12で固定するためのカット面(試料ステージ)13を対向した面に図示のように設けたものである。
【0018】
また、試料ステージ11は、図示の傾斜機構21に搭載され、試料ステージ11に挿入・固定された試料ホルダ3は図示の状態で前後の方向(正確には11時の方向)に傾斜(回転)するように構成されている。更に、図示しないが、傾斜機構21の左側にX方向移動機構およびY方向移動機構(あるいはr方向移動機構およびθ方向移動機構)があり、試料ステージはこれらX方向移動機構およびY方向移動機構によりXY平面(あるいはrθ平面)の任意の場所に移動し、所望の場所の拡大した顕微鏡像を表示することが可能である。
【0019】
次に、試料を取り付けるときの手順の概略を説明する。
【0020】
(1)観察する試料を導電性ペイントあるいはカーボン両面テープで試料台1の上面に固定する(図1の(a)参照)。
【0021】
(2)(1)で試料の固定した試料台1の側面のピンセット穴(試料台)2に、ピンセットの先を挿入してつまんだままの状態で、図1の(b)の試料ホルダ3の任意の穴のカット面(試料ホルダ)5に当該ピンセットの先がくるようにして、上から下の方向に試料台1を差し込み(押し込み)、スプリング(試料ホルダ)4で当該試料台1を試料ホルダ3の穴に動かないように固定する(図1の(b)参照)。
【0022】
(3)(2)で1個あるいは4個の試料台1を試料ホルダ3の穴にそれぞれ固定した状態で、ピンセットの先で試料ホルダ3のピンセット穴(試料ホルダ)6をつまんだ状態のままで(あるいは指で試料ホルダ3の両脇をつまんだ状態のままで)、ピンセット(あるいは指先)が試料ステージ11のカット面(試料ステージ)13の位置にくるようにして、上から下の方向に試料ステージ11を差し込み(押し込み)、スプリング(試料ステージ)12で当該試料ホルダ3を試料ステージ11の穴に動かないように固定する(図1の(c)参照)。
【0023】
(4)そして、傾斜機構21および図示外のXY移動機構を制御し、試料台1上の所望の試料の観察位置に位置づけ、拡大した顕微鏡像を表示する。
【0024】
次に、試料を取り出すときの手順の概略を説明する。
【0025】
(1)試料ステージ11に固定されている試料ホルダ3のピンセット穴(試料ホルダ)6をピンセットの先でつまんで(あるいは指先で試料ホルダ3の両脇をつまんで)上方向に当該試料ホルダ3を抜き取る(図1の(c),(b)参照)。
【0026】
(2)(1)で抜き取った試料ホルダ3の穴に固定されている試料台1のピンセット穴(試料台)2に、ピンセットの先を挿入してつまんだ状態のままで、上方向に当該試料台1を抜き出す(取り出す)、あるいは指先(ピンセットの先)で試料ホルダ3の穴の裏面の開口部から試料台1を押し出した後、指先(ピンセットの先)で当該試料台1を取り出す(図1の(b)参照)。
【0027】
次に、図2から図5に示す写真を用いて図1の本発明の構造を有する試料台1、試料ホルダ3、試料ステージ11の試作品の例を説明する。
【0028】
図2は、本発明の試料台1の試作品例を示す。
【0029】
図2において、試料台1は、円柱状の導電性金属で作成したものであって、側面にピンセットの先でつまんで持ち上げて試料ホルダ3に挿入して固定するためのピンセット穴(試料台)2を設けたものである。試料は、試料台1の平坦な上面あるいは下面にカーボン両面テープあるいは導電性ペイントで固定する。
【0030】
図3は、本発明の試料台2のピンセット穴(試料台)2にピンセットの先を挿入して持ち上げて試料ホルダ3の穴に上から下の方向に挿入しつつある途中の状態を示す。完全に挿入してスプリング(試料ホルダ)4で固定すると、上面がほぼ試料ホルダ4の上面と同じ面になる。試料台1を取り出すときは、試料ホルダ4の穴にスプリング(試料ホルダ)4で固定されている試料台1のピンセット穴(試料台)2にピンセットの先を入れて当該試料台1を上方向の図示の状態に持ち上げ、更に上方に持ち上げて試料ホルダ4から試料台1を取り出す。
【0031】
尚、図3の試作品の試料ホルダ3の側面にはピンセット穴(試料ホルダ)6が設けられていないが、これは初期試作段階のものであって、実際には、図1の(b)に示すようにピンセット穴(試料ホルダ)6を2個つづ4組、合計8個設ける。
【0032】
図4は、本発明の試料台1(観察試料は固定されていない)を4個固定した試料ホルダ3を、更に、試料ステージ11に固定した状態を示す。図示の状態で、左側に連結した傾斜機構21、更に図示外のXY移動機構により試料ステージ11上に固定された試料ホルダ3内の任意の試料台1に、丁度、電子ビームが照射されて走査されるように調整し、当該電子ビームで走査された範囲から放出された2次電子を増幅して図示外の表示装置上に拡大した試料の画像を表示することが可能となる。
【0033】
図5は、本発明の試料ステージを斜めから見た図を示す。図示の状態では、図4の試料ホルダ5が固定されていない、試料ステージの状態を示す。左側に図1の傾斜機構21、更に図示外のXY移動機構が連結されている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ピンセットで試料を固定した試料台をつまんだ状態のままで試料ホルダの穴に挿入して固定あるいは取り出したり、更に、試料ホルダをピンセットあるいは指でつまんだ状態のままで試料ステージに挿入して固定あるいは取り出したりすることにより、試料を固定した試料台を簡単な作業で固定して動かないようにして拡大された画像を表示させることができる、顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージに関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の1実施例構造図である。
【図2】本発明の試料台の試作例である。
【図3】本発明の試料ホルダの試作例である。
【図4】本発明の試料ステージ(試料ホルダを固定)の試作例である。
【図5】本発明の試料ステージの試作例である。
【符号の説明】
【0036】
1:試料台
2:ピンセット穴(試料台)
3:試料ホルダ
4:スプリング(試料ホルダ)
5:カット面(試料ホルダ)
6:ピンセット穴(試料ホルダ)
11:試料ステージ
12:スプリング(試料ステージ)
13:カット面(試料ステージ)
21:傾斜機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料台上に固定した試料を拡大して観察する顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージであって、
円柱状の上面あるいは底面に試料を固定する共に、側面にピンセットで保持するための少なくとも2つの穴(試料台)を設けた試料台と、
前記試料台を挿入する穴、およびピンセットで当該試料台の2つの穴(試料台)をつまんだままの状態で当該穴に試料台を挿入あるいは当該穴から試料台を取り出すためのカット面(試料ホルダ)、および前記試料台を穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ホルダ)、および側面にピンセットで保持するための少なくとも2つの穴(試料ホルダ)を設けた試料ホルダと、
前記試料ホルダを挿入する穴、およびピンセットで当該試料ホルダの2つの穴(試料ホルダ)をつまんだままの状態で当該穴に試料ホルダを挿入あるいは当該穴から試料ホルダを取り出すためのカット面(試料ステージ)、および前記試料ホルダを穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ステージ)を設けた試料ステージと
を備えたことを特徴とする顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージ。
【請求項2】
試料台上に固定した試料を拡大して観察する顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージであって、
円柱状の上面あるいは底面に試料を固定する共に、側面にピンセットで保持するための少なくとも2つの穴(試料台)を設けた試料台と、
前記試料台を挿入する穴、およびピンセットで当該試料台の2つの穴(試料台)をつまんだままの状態で当該穴に試料台を挿入あるいは当該穴から試料台を取り出すためのカット面(試料ホルダ)、および前記試料台を穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ホルダ)を設けた試料ホルダと、
前記試料ホルダを挿入する穴、および当該試料ホルダをつまんだままの状態で当該穴に試料ホルダを挿入あるいは当該試料ホルダをつまんで取り出すための対向したカット面(試料ステージ)、および前記試料ホルダを穴に挿入したときに固定するスプリング(試料ステージ)を設けた試料ステージと
を備えたことを特徴とする顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージ。
【請求項3】
前記試料ホルダに、複数の穴を設けて複数の試料台を挿入あるいは取り出すことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージ。
【請求項4】
前記試料ホルダの穴の底に、ピンセットあるいは指で挿入された試料台を押し出すための開口を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージ。
【請求項5】
前記試料ステージを、X移動機構およびY移動機構に搭載し、当該試料ステージをX方向およびY方向に移動させて、当該試料ステージに固定された試料台上の試料の任意の場所の拡大された画像を表示させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージ。
【請求項6】
前記試料ステージを、回転機構に搭載し、当該試料ステージを回転させて、当該試料ステージに固定された試料台上の傾斜された状態の試料の任意の場所の拡大された画像を表示させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の顕微鏡用の試料台・試料ホルダ・試料ステージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−60723(P2011−60723A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212253(P2009−212253)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(591003208)サンユー電子株式会社 (9)
【Fターム(参考)】