説明

類似症例検索装置、方法、およびプログラム

【課題】時相の異なる複数の画像が存在する場合の類似症例検索において、より高い精度の検索を可能にする。
【解決手段】造影情報解析部21が、同一の検査で取得された時相の異なる複数の検索対象画像I1、I2の各々の付帯情報から各画像の時相情報Pa、Pbを取得し、第1の類似症例情報検索部25、第2の類似症例情報検索部26、判定部27の処理によって、検査ID・時相情報・特徴量・読影/診断支援情報とを含む類似症例情報が登録された類似症例データベース9に対して検索を行い、検索対象画像との造影フェーズの同一性、類似症例情報間での検査の同一性、検索対象画像との内容的特徴の類似性の3条件を満たす類似症例情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検索対象の医用画像に対する類似症例の情報の検索を行う装置、方法、および、この方法をコンピュータに実行させるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
読影医による医用画像の読影や臨床医による医用画像に基づく診断を支援するために、医用画像とその画像に関連する読影結果や診断結果等の情報をデータベースに蓄積しておき、読影/診断対象の1つの医用画像と類似する画像やその画像に関連づけられた読影/診断結果等の情報をデータベースから検索する類似症例検索システムが提案されている。
【0003】
例えば、被写体画像を表す画像データを多数保存している画像データベースの中から、入力された1つの検索画像の画像データと画像の特性が類似している部分を有する類似画像データを検索し、検索結果を出力するシステムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、病巣陰影を含む医用画像から複数の判別処理によって病巣陰影を検出した際の判別処理の演算の型と判別処理で求められた病巣陰影の特徴量と医用画像とが対応づけられた類似医用画像データベースを有し、読影対象の1つの画像に対して同様の判別処理を実行した結果に基づいて類似医用画像データベースに対する検索を行う類似医用画像検索装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004-005364号公報
【特許文献2】特開2004−173748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医用画像の撮影を行う際には、造影剤の注入に伴う同一箇所の時間経過像、すなわち時相の異なる複数の画像を撮影することで、病変の鑑別を行う例が多く存在している。例えば、CTを用いた肝腫瘍の鑑別検査の場合、造影前(単純CT)、造影早期層、門脈優位層、造影後期層の4つの時間経過を撮影することで、造影剤の浸透具合の差異を観察し、これにより、血管と腫瘍の判別や病変の進行の判別を行っている。
【0006】
この肝腫瘍部分は、他の正常な肝臓部分とのCT値の差が小さいだけでなく、単独の時相の画像のみで比較した場合、造影剤の浸透具合により、周辺の血管と類似した描出をされる場合がある。そのため、時相の異なる複数の画像を撮影し、X線の吸収量、すなわちCT値の時間変化に伴う複雑な変化を比較する必要がある。
【0007】
上記特許文献に記載の類似症例検索システムをこのような肝腫瘍の鑑別検査に適用した場合、1つの画像のみを検索対象として類似症例の検索を行うため、上記の複数の時間経過像のすべてが活用されるわけではない。
【0008】
また、検査で取得される情報を最大限に利用しておらず、比較を行う画像が同一の時相であるかどうかの区別も行われていなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、時相の異なる複数の画像が存在する場合の類似症例検索において、より高い精度の検索を可能にする装置、方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の類似症例検索装置は、医用画像の取得が行われた検査を識別する検査識別情報と、その検査において時相の異なる複数の医用画像が取得される場合の各々の時相を表す時相情報と、医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴情報と、その内容的特徴が類似する医用画像の読影および/またはその内容的特徴が類似する医用画像に基づく診断を支援する読影/診断支援情報とを含む類似症例情報であって、検査識別情報毎に時相情報が関連づけられ、かつ、時相情報毎に特徴情報が関連づけられたものが登録された類似症例データベースと、同一の検査で取得された時相の異なる複数の検索対象画像の各々に付帯されている付帯情報から検索対象画像の各々の時相を表す情報を取得する時相情報取得手段と、類似症例データベースに対する検索を行い、検索対象画像の各時相を表す時相情報が存在するという第1検索条件と、その各時相を表す時相情報が同一の検査を表す検査識別情報と関連づけられたものであるという第2検索条件と、その各時相を表す時相情報と関連づけられた特徴情報が、内容的特徴において、対応する各時相の検索対象画像の少なくとも一部の領域と類似することを表すものであるという第3検索条件のすべてを満たす類似症例情報中の少なくとも読影/診断支援情報を取得する類似症例検索手段とを設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明の類似症例検索方法は、同一の検査で取得された時相の異なる複数の検索対象画像の各々に付帯されている付帯情報から検索対象画像の各々の時相を表す情報を取得し、医用画像の取得が行われた検査を識別する検査識別情報と、その検査において時相の異なる複数の医用画像が取得される場合の各々の時相を表す時相情報と、医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴情報と、その内容的特徴が類似する医用画像の読影および/またはその内容的特徴が類似する医用画像に基づく診断を支援する読影/診断支援情報とを含む類似症例情報であって、検査識別情報毎に時相情報が関連づけられ、かつ、時相情報毎に特徴情報が関連づけられたものが登録された類似症例データベースに対して検索を行い、検索対象画像の各時相を表す時相情報が存在するという第1検索条件と、その各時相を表す時相情報が同一の検査を表す検査識別情報と関連づけられたものであるという第2検索条件と、その各時相を表す時相情報と関連づけられた特徴情報が、内容的特徴において、対応する各時相の検索対象画像の少なくとも一部の領域と類似することを表すものであるという第3検索条件のすべてを満たす類似症例情報中の少なくとも読影/診断支援情報を取得することを特徴とする。
【0012】
本発明の類似症例検索プログラムは、コンピュータに上記方法を実行させるためのものである。
【0013】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0014】
「検査」は、ここでは、1種類の検査モダリティによって撮影を行うものをいう。
【0015】
「医用画像」は、CT、MR等の検査モダリティによって被検体の所定の検査対象部位を表す画像であり、具体例としては、人間の腹部(肝臓)を対象とするCT撮影によって取得されたスライス画像が挙げられる。
【0016】
「検査において時相の異なる複数の医用画像が取得される場合」の具体例としては、前述の肝腫瘍の鑑別検査において、造影前、造影早期層、門脈優位層、造影後期層を表す4つの画像が取得される場合のように、造影剤の注入に伴う検査対象部位の経時的変化を表す画像を撮影した場合が挙げられる。
【0017】
「時相情報」とは、上記造影前、造影早期層、門脈優位層、造影後期層のような、経時的変化の各段階を意味する。「時相情報」は「医用画像」の「付帯情報」として記録されたシリーズ記述等を利用してもよいし、造影剤投入後の経過時間等が付帯されている場合は、それを基に相当する時相に区分してもよい。
【0018】
「医用画像中の少なくとも一部の領域」の具体例としては、医用画像中の関心領域が挙げられる。関心領域は、読影や診断を行うときに注目され、その領域の特徴が診断に与える影響が大きい領域であり、通常ROI(Region of Interest)と称されている領域のことである。この関心領域は、医用画像の観察者が画像の表示された画面を見ながらポインティングデバイス等によって指定することによって設定された領域であってもよいし、画像中の異常陰影領域を検出する公知の画像解析手法によって検出された領域であってもよいし、これらを組み合わせて、例えば、前者の方法で指定された領域に対して後者の方法で輪郭を抽出したものであってもよいし、後者の方法で検出された領域から前者の方法により選択したものであってよい。また、検索対象画像の1つである第1検索対象画像に設定された関心領域に基づいて、検索対象画像のうちの第1検索対象画像と異なる第2検索対象画像の、第1検索対象画像中の関心領域に対応する位置に関心領域を自動設定するようにしてもよい。
【0019】
「内容的特徴」とは、画像の内容に関する特徴であり、具体例としては、輝度、エッジ、形状、大きさ、孤立領域等の特徴が挙げられる。また、複数の種類の特徴を組み合わせたものであってもよい。
【0020】
「医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す」とは、画像中の関心領域等の一部の領域の内容的特徴を表すものであってもよいし、画像全体の内容的特徴を表すものであってもよいし、これらの両方を表すものであってもよいし、画像中の一部の領域の内容的特徴を表すものとその一部以外の領域の内容的特徴を表すものとの組合せであってもよい。
【0021】
「特徴情報」の具体例としては、上記の内容的特徴を定量化した特徴量が挙げられる。特徴量は、公知の画像解析手法によって取得することができる。また、特徴情報は画像データそのものであってもよい。
【0022】
「読影/診断支援情報」の具体例としては、放射線科医等によるその医用画像の読影レポート、その医用画像の被検体の検査対象部位についての最終確定診断情報等が挙げられる他、その被検体の検査対象部位を表す医用画像自体であってもよい。以下、各具体例の詳細について説明する。
【0023】
読影レポートや最終確定診断情報は、被検体の医用画像の読影結果を表す読影情報および/またはその被検体に対する診断内容を表す診断情報を、その被検体の医用画像との関連づけがなされた状態で記憶する記憶手段から取得された読影情報および/または診断情報に基づいて生成されたものであってもよい。
【0024】
この記憶手段の具体例としては、放射線部門情報管理システム(Radiology Information System : RIS)や、医用画像保管通信システム(Picture Archive and Communication System : PACS)、病院情報システムHIS(Hospital Information System : HIS)等の医療情報を管理するシステムに備えられた読影レポートや電子カルテ等を蓄積・記憶するデータベースが挙げられる。
【0025】
また、「(読影情報および/または診断情報を)医用画像との関連づけがなされた状態で記憶する」とは、読影情報および/または診断情報と医用画像の一方の一部の情報に基づいて、直接的または間接的に、他方にアクセス可能な状態で記憶することを意味する。「直接的にアクセス可能な状態」の具体例としては、読影情報には自らを識別するレポートIDと読影された医用画像を識別する画像IDが含まれており、一方、医用画像には自らを識別する画像IDとその画像の読影レポートを識別するレポートIDが付帯されており、読影情報側からはこの画像IDに基づいて直接的に医用画像にアクセスしたり、逆に、医用画像側からは、このレポートIDに基づいて直接的に読影情報にアクセスしたりすることができるように記憶されている場合が挙げられる。「間接的にアクセス可能な状態」の具体例としては、診断情報には自らを識別する患者IDとその患者が受けた検査を識別する検査IDが含まれており、一方、医用画像には、自らを識別する画像IDとその画像の撮影を含む検査を識別する検査IDが付帯されており、さらに、検査を識別する検査IDと検査を受けた患者を識別する患者IDと検査で撮影された画像を識別する画像IDが含まれる検査情報が存在し、診断情報側からは、検査IDに基づいて検査情報を特定し、その検査情報に含まれる画像IDに基づいて検査で撮影された画像を特定することによって、診断情報に基づいて医用画像に間接的にアクセスしたり、医用画像側からは、検査IDに基づいて検査情報を特定し、その検査情報に含まれる患者IDに基づいてその患者の診断情報を特定することによって、医用画像に基づいて診断情報に間接的にアクセスしたりすることができる状態が挙げられる。
【0026】
なお、この「記憶手段」が読影情報および/または診断情報と関連づけられた医用画像自体を記憶している必要はない。
【0027】
また、「読影情報」は、複数の放射線科医等による読影結果が記載された読影レポートであってもよく、「診断情報」には、最終確定診断情報の他、その医用画像に基づく所見に限らず、他の検査や問診の結果、処置の内容等の、その被検体に対する診断の過程で生じるすべての情報を含みうる。
【0028】
また、「読影情報および/または診断情報に基づいて読影/診断支援情報を生成する」とは、読影情報および/または診断情報から所定の情報を抽出して読影/診断支援情報を生成することであってもよいし、読影情報および/または診断情報をそのまま読影/診断支援情報とすることであってもよい。
【0029】
なお、「読影/診断支援情報」は、その実体的内容が記憶されている場所を示すリンク情報であってもよい。具体例としては、その断層画像の読影レポートやその被検体の電子カルテ、その断層画像自体が記憶されているデータベースの名前やその情報を取得するための検索キー情報等が挙げられる。
【0030】
類似症例データベースの類似症例情報に含まれる「検査識別情報」や「時相情報」は、データベース(テーブル)の一項目として定義されていてもよいし、検索対象画像と同様に、「特徴情報」または「読影/診断支援情報」としての医用画像に対する付帯情報として含まれていてもよい。
【0031】
「付帯情報」を画像に付帯する方法の具体例としては、DICOM規格による方法が挙げられる。DICOM規格では、上記の「検査識別情報」は一般検査情報等として、「時相情報」は、シリーズ記述、シリーズの位置関係情報、造影剤情報等として付帯される。
【0032】
「第3検索条件」における「(類似症例情報に含まれる)特徴情報が、内容的特徴において、・・・検索対象画像と類似することを表す」ことを判定する処理の具体例としては、検索対象画像中の少なくとも一部の領域の特徴量と、類似症例情報に含まれる特徴情報(特徴量)との差が最小である、または、前記の差が所定の閾値以下である、前記の差が小さいものから所定の数以内である等の基準を満たすことを判定する処理が考えられる。
【0033】
上記の第1から第3の検索条件に基づく検索の具体的方法としては、検索対象画像の1つである第1検索対象画像について、第1検索対象画像の時相を表す時相情報を有し、かつ、その時相を表す時相情報と関連づけられた特徴情報が内容的特徴において第1検索対象画像の少なくとも一部の領域と類似することを表す類似症例情報を取得し、取得された類似症例情報と同一の検査を表す検査識別情報を有する類似症例情報から、第1検索対象画像と異なる第2検索画像の時相を表す時相情報を有し、かつ、その時相を表す時相情報と関連づけられた特徴情報が上記内容的特徴において第2検索対象画像の少なくとも一部の領域と類似することを表す類似症例情報を抽出する方法が考えられる。
【0034】
さらに、上記内容的特徴における第2検索対象画像との類似を判定する際に、同一の検査を表す検査識別情報を有し、かつ、第1および第2検索対象画像の各時相を表す時相情報を有する類似症例情報中の上記各時相における特徴情報の差分が、第1および第2検索対象画像の少なくとも一部の領域の内容的特徴の差分と内容的に類似するような類似症例情報を抽出するようにしてもよい。この場合、類似症例情報の特徴情報として、同一検査における異なる時相の画像間での内容的特徴の差分が類似症例データベースに登録されていてもよい。
【0035】
また、上記第1から第3の検索条件に対する適合度を判定する際に、以下の(1)(2)(3)の順に適合度を下げるようにしてもよい。
【0036】
(1) 複数の検索対象画像のすべてについて第1から第3のすべての検索条件を満たす類似症例情報が存在する場合
(2) 複数の検索対象画像の一部について第1から第3のすべての検索条件を満たす類似症例情報が存在するが、検索対象画像の残りについては第1または第2の検索条件を満たす類似症例情報が存在しない場合
(3) 複数の検索対象画像の一部について第1から第3のすべての検索条件を満たす類似症例情報が存在するが、検索対象画像の残りについては第1または第2の検索条件を満たす類似症例情報が存在するが、類似症例情報のうち第3検索条件を満たすものが存在しない場合
この他、複数の検索対象画像の1つである第1検索対象画像の付帯情報から第1検索対象画像の取得が行われた検査を識別する検査識別情報、および、第1検索対象画像の時相を表す情報を取得し、第1検索対象画像と同一の検査で取得されたことを表す検査識別情報、および、第1検索対象画像とは異なる時相を表す情報を付帯情報に有する医用画像を第2検索対象画像として取得するようにしてもよい。
【0037】
また、本発明の類似症例検索装置に、検索によって取得された類似症例情報を出力する
手段を付加することも考えられる。具体的には、ディスプレイ画面への表示による出力や印刷による出力や、電子データとしての装置の記憶媒体への出力等が考えられる。また、出力対象は、類似症例情報のすべてであってもよいし、一部であってもよいし、検索によって所定の基準を満たす類似症例情報が取得されなかった場合には、その旨を表す情報であってもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の類似症例検索を実行すれば、同一の検査で取得された時相の異なる複数の検索対象画像の各々の付帯情報から各画像の時相情報を取得し、検査識別情報・時相情報・医用画像の特徴情報・読影/診断支援情報とを含む類似症例情報が登録された類似症例データベースに対して検索を行い、検索対象画像の各時相を表す時相情報が存在するという第1検索条件と、その各時相を表す時相情報が同一の検査を表す検査識別情報と関連づけられたものであるという第2検索条件と、その各時相を表す時相情報と関連づけられた特徴情報が、内容的特徴において、対応する各時相の検索対象画像の少なくとも一部の領域と類似することを表すものであるという第3検索条件のすべてを満たす類似症例情報を取得する。すなわち、本発明によれば、同一検査で得られた異なる複数の時相の画像を検索対象画像として利用して類似症例データベースに対する検索を行い、検索対象画像との時相の同一、類似症例情報間での検査の同一、検索対象画像との内容的特徴の類似の3条件を満たす類似症例情報を得ることができる。したがって、これまで利用されていなかった同一検査における時相の異なる画像を有効に活用することにより、類似症例の検索精度が向上し、例えば、血管と病変の違いを検出できずに誤判定を下してしまうといった、読影・診断時の判定の誤りの減少に資する。
【0039】
また、上記第1から第3の検索条件に基づく検索を、第1検索対象画像について、第1検索対象画像の時相を表す時相情報を有し、かつ、その時相を表す時相情報と関連づけられた特徴情報が内容的特徴において第1検索対象画像の少なくとも一部と類似することを表す類似症例情報を取得し、取得された類似症例情報と同一の検査を表す検査識別情報を有する類似症例情報から、第2検索画像の時相を表す時相情報を有し、かつ、その時相を表す時相情報と関連づけられた特徴情報が内容的特徴において第2検索対象画像の少なくとも一部と類似することを表す類似症例情報を抽出するようにした場合には、第2検索対象画像の内容的特徴の類似性の判定対象となる類似症例情報が、第1検索対象画像との時相の同一性・内容の類似性が満たされた類似症例情報と同じ検査で得られたものに限定されるので、内容的特徴の類似性の判定という負荷の高い処理の回数が減り、検索処理全体の高速化が図られる。
【0040】
さらに、第2検索対象画像の少なくとも一部との内容的特徴の類似性を判定する際に、同一の検査を表す検査識別情報を有し、かつ、第1および第2検索対象画像の各時相を表す時相情報を有する類似症例情報中の上記各時相における特徴情報の差分が、第1および第2検索対象画像の少なくとも一部の内容的特徴の差分と類似するような類似症例情報を抽出するようにした場合、時相間での画像の変動をより反映した類似性判定が可能になり、検索精度の向上に資する。
【0041】
また、上記第1から第3の検索条件に対する適合度を判定する際に、複数の検索対象画像の一部について第1から第3のすべての検索条件を満たす類似症例情報が存在するが、検索対象画像の残りについては第1または第2の検索条件を満たす類似症例情報が存在するが、類似症例情報のうち第3検索条件を満たすものが存在しない場合に、複数の検索対象画像の一部について第1から第3のすべての検索条件を満たす類似症例情報が存在するが、検索対象画像の残りについては第1または第2の検索条件を満たす類似症例情報が存在しない場合よりも適合度を低くすれば、複数の検索対象画像の各時相に対応する類似症例情報は存在するが、一部は画像の内容的特徴が類似しない場合と、複数の検索対象画像の一部の時相に対応する類似症例情報が存在しなかった場合とを区別することができ、検査における時間経過を踏まえれば類似症例とはいえない前者の場合の適合度を、検査における時間経過は考慮できないが、画像としての類似性は考慮の余地がある後者の場合よりも低くできるので、よりきめの細かい類似症例情報の提供が可能になる。
【0042】
第1検索対象画像の付帯情報から検査識別情報および時相情報を取得し、これに基づいて第1検索対象画像と同一の検査で異なる時相の第2検索対象画像を取得するようにすれば、医用画像の観察者が、第1の検索対象画像の存在のみを認識していた場合であっても、第2検索対象画像も含めた類似症例の検索が可能になり、読影・診断精度の向上に資する。
【0043】
また、類似症例情報中の特徴情報として、医用画像そのものではなく、医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴量を登録するようにした場合、類似症例検索の度に、特徴情報として登録されている画像データから特徴量を算出する必要がなくなり、処理負荷の軽減に資する。
【0044】
また、内容的特徴の類似性の判定の対象を画像中の関心領域とすれば、画像中の重要部分での内容的特徴の類似性を判定することによって、より適切な類似症例の検索が可能になり、読影/診断精度の向上に資する。ここで、第2検索対象画像の関心領域を、第1検索対象画像の関心領域に対応する位置に自動設定すれば、読影者/診断者による関心領域の設定の手間が省ける。さらに、検索対象画像中の関心領域を自動的に検出するようにすれば、読影者/診断者の作業負担のさらなる軽減や、画像中の病変部の見落としの軽減に資する。
【0045】
読影/診断支援情報に、その情報と関連づけられる医用画像自体を含むようにすれば、検索対象画像の読影や検索対象画像に基づく診断の際に、読影/診断支援情報として得られた画像を参照することが可能になり、両画像の比較読影に資する。
【0046】
また、読影/診断支援情報を、RISや、PACS、HIS等の他の医療情報システムに記憶されている読影/診断情報や画像データに対するリンク情報とした場合には、同じ内容の情報を複数箇所に記憶することによる記憶容量の無駄を省くことができるとともに、複数の箇所に記憶される情報の一方のみが更新されることによって発生するデータ内容の不整合を回避することができるので、情報の信頼性が高まり、また、このような不整合を回避するためのデータの同期処理も不要になることから、システムの処理負荷が軽減される。特に、診断情報の一例である電子カルテの情報等は随時更新される性質のものであるから、このデータ内容の不整合の問題が回避される効果は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0048】
図1に、本発明の第1の実施形態における類似症例検索装置が導入された医療情報システムの概略構成を示す。図に示すように、このシステムは、医用画像の撮影装置(モダリティ)1、画像品質チェック用ワークステーション(QA−WS)2、画像診断医用ワークステーション3(3a,3b)、画像情報管理サーバ4、画像情報データベース5、読影レポートサーバ6、読影レポートデータベース7、類似症例検索サーバ8、類似症例データベース9が、ネットワーク19を介して互いに通信可能な状態で接続されて構成されている。各機器は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムによって制御される。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバからダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0049】
モダリティ1には、被検体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を3次元的に表した画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM規格で規定された付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置が含まれる。具体例としては、CT(Computed Tomography)、MR(Magnetic Resonance)、PET(Positron Emission Tomography)、超音波撮影装置などが挙げられる。また、ここでは、造影剤の投入に伴う検査対象部位の経時的変化をCT等により撮影することも行われ、取得された画像は、本発明の類似症例検索装置における検索対象画像となる。なお、以下では、被写体を表す画像データと画像データの付帯情報の組を「画像情報」と称することとする。すなわち「画像情報」の中には画像に係るテキスト情報も含まれる。
【0050】
QA−WS2は、汎用の処理装置(コンピュータ)と1台または2台の高精細ディスプレイとキーボード・マウスなどの入力機器により構成される。処理装置には、検査技師の作業を支援するためのソフトウェアが組み込まれている。QA−WS2は、そのソフトウェアプログラムの実行によって実現される機能により、モダリティ1からDICOMに準拠した画像情報を受信し、受信した画像情報に含まれる画像データと付帯情報の内容を画面に表示することで検査技師に確認を促す。そして、検査技師による確認が済んだ画像情報を、ネットワーク19を介して画像情報管理サーバ4に転送し、その画像情報の画像情報データベース5への登録を要求する。
【0051】
画像診断医用ワークステーション3は、画像診断医が画像の読影や読影レポートの作成に利用する装置であり、処理装置と1台または2台の高精細ディスプレイとキーボード・マウスなどの入力機器により構成される。この装置では、画像情報管理サーバ4に対する画像の閲覧要求や、画像情報管理サーバ4から受信した画像の表示、画像中の病変らしき部分の自動検出・強調表示、読影レポートの作成の支援、読影レポートサーバ6に対する読影レポートの登録要求や閲覧要求、読影レポートサーバ6から受信した読影レポートの表示、類似症例検索サーバ8への類似症例情報の閲覧要求や、類似症例検索サーバ8から受信した類似症例情報の表示、類似症例検索サーバへの類似症例情報の登録要求等が行われる。
【0052】
画像情報管理サーバ4は、汎用の比較的処理能力の高いコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムを組み込んだものである。画像情報管理サーバ4は画像情報データベース5が構成される大容量ストレージを備えている。このストレージは、画像情報管理サーバ4とデータバスによって接続された大容量のハードディスク装置であってもよいし、ネットワーク19に接続されているNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)に接続されたディスク装置であってもよい。
【0053】
画像情報データベース5には、被写体画像を表す画像データと付帯情報とが登録される。付帯情報には、例えば、個々の画像を識別するための画像ID、被写体を識別するための患者ID、検査を識別するための検査ID、画像情報ごとに割り振られるユニークなID(UID)、その画像情報が生成された検査日、検査時刻、その画像情報を取得するための検査で使用されたモダリティの種類、患者氏名、年齢、性別などの患者情報、検査部位(撮影部位)、撮影条件(造影剤の使用有無や注入後の経過時間/使用された色素、放射線核種、放射線量など)、1回の検査で複数の画像を取得したときのシリーズ番号あるいは採取番号などの情報が含まれうる。画像情報は、例えばXMLやSGMLデータとして管理されうる。
【0054】
画像情報管理サーバ4は、QA−WS2からの画像情報の登録要求を受け付けると、その画像情報をデータベース用のフォーマットに整えて画像情報データベース5に登録する。
【0055】
また、画像管理サーバ4は、画像診断医用ワークステーション3からの閲覧要求をネットワーク19経由で受信すると、上記画像情報データベース5に登録されている画像情報を検索し、抽出された画像情報を要求元の画像診断医用ワークステーション3に送信する。
【0056】
画像診断医用ワークステーション3は、画像診断医等のユーザによって読影対象画像の閲覧を要求する操作が行われると、画像管理サーバ8に対して閲覧要求を送信し、読影に必要な画像情報を取得する。そして、その画像情報をモニタ画面に表示し、画像診断医からの要求に応じて病変の自動検出処理などを実行する。
【0057】
さらに、画像診断医用ワークステーション3は、読影レポートの作成を支援するレポート作成画面をモニタに表示し、放射線科医から読影に基づいて行った診断(所見など)の内容を示すテキストが入力されたときに、入力された情報と読影の対象とされた画像(以下、読影対象画像)を記録した読影レポートを生成する。読影対象画像が複数あるときは、読影レポートには、診断に与えた影響が最も大きい代表的な画像(以下、代表画像)を記録する。画像診断医用ワークステーション3は、生成した読影レポートを、ネットワーク19を介して読影レポートサーバ6に転送し、その読影レポートの読影レポートデータベース7への登録を要求する。
【0058】
読影レポートサーバ6は、汎用の比較的処理能力の高いコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムを組み込んだものであり、画像診断医用ワークステーション3からの読影レポートの登録要求を受け付けると、その読影レポートをデータベース用のフォーマットに整えて読影レポートデータベース7に登録する。
【0059】
読影レポートデータベース7には、例えば、読影対象画像もしくは代表画像を識別する画像IDや、読影を行った画像診断医を識別するための読影者ID、関心領域の位置情報、所見、所見の確信度といった情報が登録される。この他、画像の読影時に画像情報の付帯情報を参照することで取得された検査番号、患者番号、さらには、読影対象画像または代表画像の画像データ自体も等も含まれうる。画像データは、画像情報データベース5に登録されている画像データをそのままコピーしたものでもよいが、画像情報データベース5に登録されている画像データよりも画素数が少ない(間引きされた)縮小画像データでもよい。また、画像データは、画像情報データベース5内の画像データの保管場所(フォルダなど)およびファイル名を示すリンク情報であってもよい。また、関心領域の位置情報は、読影レポートデータベース7ではなく、画像データの付帯情報として画像情報データベース5に登録しておいてもよい。なお、読影レポートは、例えばXMLやSGMLデータとして管理されうる。
【0060】
読影レポートサーバ6は、画像診断医用ワークステーション3からの閲覧要求をネットワーク19経由で受信すると、読影レポートデータベース7に登録されている読影レポートを検索し、抽出された読影レポートを要求元の画像診断医用ワークステーション3に送信する。
【0061】
類似症例検索サーバ8は、汎用の比較的処理能力の高いコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムを組み込んだものである。また、類似症例データベース9には、過去に読影された画像とその画像の読影結果とが類似症例情報として登録されている。本発明の実施形態となる類似症例検索装置は、画像診断医用ワークステーション3と類似症例データベース9を有する類似症例検索サーバ8がネットワーク19によって接続されたクライアント・サーバ型のシステムとして実装されている。詳細については後述する。
【0062】
ネットワーク19は病院内の各種装置を接続するローカルエリアネットワークである。但し、画像診断医用ワークステーション3が他の病院あるいは診療所にも設置されている場合には、ネットワーク19は、各病院のローカルエリアネットワーク同士をインターネットもしくは専用回線で接続した構成としてもよい。いずれの場合にも、ネットワーク9は光ネットワークなど画像情報の高速転送を実現できるものとすることが望ましい。
【0063】
以下、造影剤注入に伴う肝臓での経時的変化をCT撮影することによって得られた、造影前(単純CT)、造影早期層、門脈優位層、造影後期層の4つの造影フェーズ(時相)の画像を読影対象とした場合を例にして、本発明の実施形態となる類似症例検索装置の詳細について説明する。図2は、この類似症例検索装置の構成とデータの流れを模式的に示したブロック図である。図に示したように、この装置は、造影情報解析部21、関心領域設定部22、関心領域反映部23、特徴量算出部24、第1の類似症例情報検索部25、第2の類似症例情報検索部26、判定部27、類似症例データベース9から構成される。
【0064】
造影情報解析部21は、入力されたDICOM準拠の医用画像データの付帯情報であるシリーズ記述、シリーズの位置関係情報、造影剤情報を解析して上記4つの造影フェーズのいずれかを表す造影情報を取得し、画像診断医用ワークステーション3のメモリに記録する。
【0065】
関心領域設定部22は、画像診断医用ワークステーション3のディスプレイの所定の領域に表示されている(第1検索対象)画像に対して、マウス等の入力デバイスの操作による関心領域の設定を受け付け、関心領域の位置情報および画像情報を特定し、画像診断医用ワークステーション3のメモリに記録する。
【0066】
関心領域反映部23は、関心領域の位置情報および第2の検索対象画像の画像データを入力として、入力された画像データの、入力された関心領域の位置に、関心領域を設定し、設定された関心領域の位置情報および画像情報を特定し、画像診断医用ワークステーション3のメモリに記録する。
【0067】
特徴量算出部24は、入力された(第1および第2の検索対象画像の)画像データ(関心領域の画像情報)に基づいて画像解析処理を行い、特徴量を算出する。算出される特徴量の具体例としては、関心領域中の異常陰影の位置や大きさ(径)、輝度ヒストグラムの他、AAM(T.F.クーツ(Cootes), G.J.エドワーズ(Edwards), C.J.テイラー(Taylor)、「動的見えモデル(Active Appearance Models)」、第5回計算機視覚欧州会議報(In Proc. 5th European Conference on Computer Vision)、ドイツ、シュプリンガー(Springer)、1998年、vol.2、p.p.484-498)の手法によって得られる、関心領域中の病変部の形状情報やテキスチャ情報等が挙げられる。なお、特徴量は複数の種類を組み合わせたものであってもよい。
【0068】
第1の類似症例情報検索部25は、第1検索対象画像の造影情報および特徴量情報を入力とし、入力された造影情報と一致する造影情報を有し、かつ、入力された特徴量との差が所定の閾値以下となる特徴量を有する類似症例情報を類似症例データベース9から取得する。
【0069】
第2の類似症例情報検索部26は、第1の類似症例情報検索部25で取得された類似症例情報と、第2検索対象画像の造影情報とを入力とし、類似症例データベース9から、入力された類似症例情報と同一の検査IDを有し、かつ、入力された造影情報と一致する造影情報を有する類似症例情報を取得する。
【0070】
判定部27は、第1の類似症例情報検索部25によって取得された類似症例情報(Aとする)、第2の類似症例情報検索部26によって取得された類似症例情報(Bとする)、および、第2検索対象画像の関心領域の特徴量を入力とし、各類似症例情報の検索条件に対する適合度を判定する。具体的には、類似症例情報Bのうち、第2検索対象画像の関心領域の特徴量との差が所定の閾値以下となる特徴量を有するもの、すなわち、第1検索対象画像と第2検索対象画像の両方について適切な類似症例が存在したものを、最も適合度が高いと判定し、次に、類似症例情報Bが存在しなかったもの、すなわち、第1検索対象画像に対してのみ類似症例が存在したものを次に適合度が高いと判定し、類似症例情報Bのうち、第2検索対象画像の関心領域の特徴量との差が所定の閾値より大きくなる特徴量を有するもの、すなわち、第1検索対象画像に対する類似症例は存在するが、その症例が得られた検査で取得された第2検索対象画像と同一造影情報における症例情報は、第2検索対象画像に対する適切な類似症例ではなかったものは、最も適合度が低いと判定する。
【0071】
類似症例データベース9には、図3に構成例を示したように、類似症例となる画像が撮影された検査を識別する検査IDと、その画像の造影情報(造影フェーズ)と、その画像中の関心領域の特徴量と、その画像の読影結果やその画像に基づく最終確定診断情報等を含む読影/診断支援情報を含む類似症例情報が登録されている。
【0072】
図3(a)の例では、類似症例データベース9は、検査ID毎・造影情報毎に特徴量が登録された特徴量テーブル9aと、検査ID毎に読影/診断支援情報が登録された読影/診断支援情報テーブル9bとから構成されており、両テーブルは検査IDによって関連づけられている。この構成は、類似症例となる画像は、造影フェーズ毎に存在するが、読影/診断支援情報は検査毎にまとめられている場合に好適に採用されうる。
【0073】
また、図3(b)の例では、検査ID毎、造影情報毎に、類似症例となる画像中の関心領域の特徴量および読影/診断支援情報が登録された類似症例情報テーブル9cのみから構成されている。この構成は、類似症例となる画像毎に読影/診断支援情報が存在する場合に好適に採用されうる。具体的には、類似症例となる画像自体を読影/診断支援情報として登録する場合が挙げられる。
【0074】
なお、各処理部は、画像診断医用ワークステーション3や類似症例検索サーバ8、ネットワーク19の性能や、画像診断医用ワークステーション3の設置台数、類似症例検索サーバ8に対するアクセス頻度、応答時間等の様々な性能要件に応じて、適宜分散して実装される。例えば、造影情報解析部21と、関心領域設定部22、関心領域反映部23、特徴量算出部24、判定部27を画像診断医用ワークステーション3に実装し、第1の類似症例情報検索部25および第2の類似症例情報検索部26を類似画像検索サーバに実装する形態や、造影情報解析部21と、関心領域設定部22、関心領域反映部23、判定部27を画像診断医用ワークステーション3に実装し、特徴量算出部24と第1の類似症例情報検索部25、第2の類似症例情報検索部26を類似症例検索サーバ8に実装する形態等が考えられる。
【0075】
次に、図4のフローチャート、図2のブロック図におけるデータの流れ、図3のデータベース構成を用いて、類似症例検索処理の詳細と処理の流れについて説明する。
【0076】
まず、画像診断医は、この医療情報システムへのアクセスのためのユーザID・パスワード、指紋等の生体情報等によるユーザ認証を画像診断医用ワークステーション3で行う。ユーザ認証に成功すると、オーダリングシステムによって発行された画像診断オーダに基づく検査(読影)対象画像リストがディスプレイに表示される。画像診断医は、マウス等の入力機器を用いて検査対象画像リストから読影対象の画像I1、I2を選択する。ここで、画像I1は、モダリティ1において、ある患者に造影剤を注入しながらCT撮影を行う検査で得られた造影早期層の画像であり、画像I2は同じ検査で得られた非造影画像とする。画像診断医用ワークステーション3は、選択された画像I1、I2の画像IDを検索キーとする画像情報管理サーバ4への閲覧要求を行い、この要求を受信した画像情報管理サーバ4が画像情報データベース5に対する検索を行って、読影対象画像I1、I2の画像ファイル(便宜上、画像と同じ符号I1、I2で表す)を取得し、要求を送信した画像診断医用ワークステーション3にそれらの画像ファイルI1、I2を送信する。画像診断医用ワークステーション3は、それらの画像ファイルI1、I2を受信する(#1)。
【0077】
次に、造影情報解析部21は、画像ファイルI1、I2の付帯情報を解析して各画像の造影フェーズの情報Pa、Pbを取得する(#2)。
【0078】
画像診断医用ワークステーション3は、画像ファイルI1、I2の各画像データに基づき、画像I1、I2をディスプレイに表示するとともに、造影情報解析部21で得られた造影情報Pa、Pbを、画像I1、I2と対応づけ可能な位置に表示する(#3)。図5において(a)は画像I1の表示例、(b)は画像I2の表示例である。図示されていないが、例えば、各画像の下部に造影フェーズの情報Pa(造影早期層)、Pb(非造影画像)も表示される。
【0079】
画像診断医は、ディスプレイに表示された画像I1、I2を観察し、例えば、画像I1の中央左側に腫瘍の疑いがある領域(図5(a)の網掛け部分)を発見した場合、その部分をマウス等の操作によりマーキングする。関心領域設定部22は、この操作によってマーキングされた領域の位置情報および画像情報を特定し、関心領域情報R1として画像診断医用ワークステーション3のメモリに記録しておく(#4)。
【0080】
ここで、画像診断医が、ディスプレイに表示されているユーザインターフェースから、マウス操作等によるメニュー選択を行い、「類似症例検索」を選択すると、画像診断医用ワークステーション3では、メニュー中の「類似症例検索」項目に対する選択イベントを検出し(#5; YES)、後続の類似症例検索処理が行われる。一方、それ以外の項目が選択された場合には、選択された処理が行われる(#5; NO)。
【0081】
「類似症例検索」が選択された場合(#5; YES)、特徴量算出部24が、関心領域情報R1に基づいて画像解析処理を行い、特徴量C1を算出する(#8)。
【0082】
第1の類似症例情報検索部25は、算出された特徴量C1と造影情報Paを検索キーとして、類似症例データベース9に対する検索を行い、画像I1と同一の造影フェーズで、かつ、画像I1の関心領域R1の内容的特徴と類似する類似症例情報A1、A2、A3、A4を取得する(#9、#10; YES)。
【0083】
より詳細には、例えば、類似症例データベース9が図3(a)の構成の場合、第1の類似症例情報検索部25は、まず、特徴量テーブル9aにアクセスし、造影情報Paとテーブル中の各レコードの造影情報と順次比較し、両者が一致する場合に、そのレコードの特徴量を取得する。次に、特徴量C1とそのレコードの特徴量の差を求める。その差が所定の閾値以下の場合には、画像I1の関心領域はその類似症例情報のもとになる画像中の関心領域と類似していると判定し、そのレコードの検査IDを検索キーとして読影/診断支援情報テーブル9bにアクセスし、その検査IDと関連づけられた読影/診断支援情報を取得する。このようにして、少なくとも検査IDと読影/診断支援情報、好ましくはさらに特徴量を含む類似症例情報A1、A2、A3、A4が得られる。
【0084】
なお、この検索の結果、画像I1と同一の造影情報を有するレコードが特徴量テーブル9aに存在しなかった場合や、画像I1と同一の造影情報を有するレコードが特徴量テーブル9aに存在するが、特徴量C1とそのレコードの特徴量の差が所定の閾値より大きい場合には、画像I1に対する類似症例情報が類似症例データベース9には登録されていないと判定され(#10; NO)、「類似症例なし」を示すメッセージが画像診断医用ワークステーション3のディスプレイに表示される(#14)。
【0085】
さらに、第2の類似症例情報検索部26は、類似症例情報A1、A2、A3、A4のうちの検査IDを取得し、検査IDが類似症例情報A1、A2、A3、A4の検査IDと同一で、かつ、造影情報が画像I2の造影情報Pbと同一の類似症例情報B1、B2を類似症例データベース9から取得する(#11)。
【0086】
より詳細には、例えば、類似症例データベース9が図3(a)の構成の場合、第2の類似症例情報検索部26は、まず、特徴量テーブル9aにアクセスし、類似症例情報A1、A2、A3、A4の検査IDとテーブル中の各レコードの検査IDと順次比較し、両者が一致する場合には、造影情報Pbとテーブル中の造影情報を比較し、両者が一致する場合に、そのレコードの特徴量を取得するとともに、そのレコードの検査IDを検索キーとして読影/診断支援情報テーブル9bにアクセスし、その検査IDと関連づけられた読影/診断支援情報を取得する。このようにして、少なくとも特徴量と読影/診断支援情報を含む類似症例情報B1、B2が得られる。ここでは、類似症例情報A1とB1、A2とB2が、各々、同一の検査IDであり、類似症例情報A3については、同一検査IDの類似症例情報は登録されていたが、画像I2と同一造影フェーズ(造影情報がPbと等しい)ものは登録されておらず、類似症例情報A4については、同一検査IDの類似症例情報が登録されていなかったものとする。なお、類似症例情報A3、A4については、各々、同一造影フェーズの類似症例情報が存在しなかった旨、同一検査IDの類似症例情報が存在しなかった旨の情報が、例えばコード化されてメモリに記録されており、後述の判定部27によって利用可能である。
【0087】
上記のステップ#8から#11の実行と並行して、関心領域反映部23が、関心領域の位置情報および他の画像データの入力として、画像I2の、関心領域R1に対応する位置に、関心領域を設定し(図5(b)の点線丸印の部分)、その位置情報および画像情報を関心領域情報R2として、画像診断医用ワークステーション3のメモリに記録する(#6)。
【0088】
さらに、特徴量算出部24が、関心領域情報R2に基づいて画像解析処理を行い、特徴量Cを算出する(#7)。
【0089】
判定部27は、特徴量C2と類似症例情報B1、B2の特徴量の比較により、画像I2の関心領域が類似症例情報B1、B2のもとになる画像中の関心領域と類似しているかどうかを判定した後、類似症例情報A1、A2、A3、A4、B1、B2の検索条件に対する適合度、すなわち、画像I1、I2に対する類似症例としての優先度を判定する(#12)。
【0090】
より詳細には、まず、特徴量C2と類似症例情報B1、B2の各特徴量との特徴量の差を求める。その差が所定の閾値以下の場合には、画像I2の関心領域はその類似症例情報のもとになる画像中の関心領域と類似していると判定する。ここでは、類似症例情報B1は、「類似」、B2は「非類似」と判定されたものとする。
【0091】
さらに、類似症例情報A1、A2、A3、A4、B1、B2の検索条件に対する適合度、すなわち、画像I1、I2に対する類似症例としての優先度を判定する。図6は、この適合度の判定処理の具体例を示すものであり、類似症例情報A1、A2、A3、A4、B1、B2の検査ID毎に各造影フェーズPa、Pbにおける検索対象画像I1、I2との内容的特徴の類似・非類似判定の結果をまとめたものである。ここでは、類似症例情報A1(B1)、A2(B2)、A3、A4の検査IDが順に「001」「002」「003」「004」であったものとする。この例では、判定部27は、各造影フェーズPa、Pbにおいて内容的特徴が類似していた検査ID「001」の類似症例情報A1(B1)を最も適合度が高い(優先度「1」)と判定し、造影フェーズPaでは内容的特徴が類似していたが、造影フェーズPbについては、同一造影フェーズの類似症例情報が存在しなかった検査ID「003」の類似症例情報A3を次に適合度が高い(優先度「2」)と判定し、造影フェーズPaでは内容的特徴が類似していたが、同一検査IDの他の(造影フェーズの)類似症例情報が存在しなかった検査ID「004」の類似症例情報A4を次に適合度が高い(優先度「3」)と判定し、造影フェーズPaでは内容的特徴が類似していたが、造影フェーズPbでは内容的特徴が類似していなかった検査ID「002」の類似症例情報A2(B2)の適合度を最も低い(優先度「4」)と判定する。ここで、検査ID「002」の類似症例情報の適合度を検査ID「003」「004」よりも低いと判定したのは、各造影フェーズにおける類似・非類似判定の結果から、画像I1、I2が取得された検査と検査ID「002」の検査とでは、造影剤注入からの時間経過に伴う関心領域の画像の内容的特徴の変化の様子が異なると判断されるため、一方の造影フェーズ(Pb)における類似症例情報が存在しないために、このような判断ができない検査「003」「004」の場合よりも、症例としての類似度が低いと積極的に判定できるからである。また、検査ID「003」の類似症例情報の適合度を検査ID「004」よりも高いと判定するのは、検査ID「003」の場合は、造影フェーズPbの類似症例情報が存在しなかっただけで、同一検査で他の造影フェーズについての類似症例情報が存在するので、この情報を取得することにより、同一検査で他の造影フェーズについての類似症例情報が存在しない検査ID「004」よりも、類似症例情報としての利用価値は高いと判断されるからである。なお、上記で同一優先度となる複数の検査IDの類似症例情報が存在した場合、造影フェーズPaにおける特徴量の差が小さいほど適合度が高いと判定すればよい。
【0092】
最後に、類似症例検索の結果が画像診断医用ワークステーション3のディスプレイに表示される(#13)。表示形態は、図6のように、複数の類似症例情報に優先度を付してリストしたものが考えられる。また、このリストを優先度順に並べ替えたものであってもよい。さらに、画像診断医が、このリストから所望の検査IDを選択すると、その検査IDと関連づけられた読影/診断支援情報が表示される。あるいは、このようなリストを表示せずに、最も優先度の高い検査IDと関連づけられた読影/診断支援情報を表示するようにしてもよい。
【0093】
このように、本発明の実施形態となる類似症例検索装置では、造影情報解析部21が、同一の検査で取得された造影フェーズの異なる複数の検索対象画像I1、I2の各々の付帯情報から各画像の造影情報(造影フェーズ)Pa、Pbを取得し、第1の類似症例情報検索部25、第2の類似症例情報検索部26、判定部27の処理によって、検査ID・造影情報・特徴量・読影/診断支援情報とを含む類似症例情報が登録された類似症例データベース9に対して検索を行い、検索対象画像との造影フェーズの同一性、類似症例情報間での検査の同一性、検索対象画像との内容的特徴の類似性の3条件を満たす類似症例情報を取得するので、これまで利用されていなかった同一検査における造影フェーズの異なる画像を有効に活用することにより、類似症例の検索精度が向上し、例えば、血管と病変の違いを検出できずに誤判定を下してしまうといった、読影・診断時の判定の誤りの減少に資する。
【0094】
例えば、前述のとおり、肝腫瘍の鑑別検査では、肝腫瘍部分は、X線の吸収量、すなわちCT値が時間の経過に伴って複雑に変化しまうため、腫瘍部分の検出が困難であるが、本発明では、このような時間の経過に伴って撮影された複数の画像を類似症例検索で利用することにより、このような複雑な変化の態様が類似する症例の情報も取得されうるため、読影・診断による腫瘍の検出精度の向上にも資する。
【0095】
具体的には、第1の類似症例情報検索部25が、第1検索対象画像I1について、第1検索対象画像I1の造影フェーズPaと同一、かつ、その造影フェーズPaと関連づけられた特徴量と第1検索対象画像I1についての特徴量C1との差が所定の閾値以下である類似症例情報A1、A2、A3、A4を取得し、第2の類似症例情報検索部26が、取得された類似症例情報A1、A2、A3、A4と同一の検査ID、かつ、第2検索画像I2の造影フェーズPbと同一の造影情報の類似症例情報B1、B2を取得し、判定部27が、類似症例情報B1、B2のうち、その特徴量と第2検索対象画像I2についての特徴量C2との差が所定の閾値以下である類似症例情報B1を抽出するので、判定部27による第2検索対象画像I2の内容的特徴の類似性の判定の対象となる類似症例情報が、第1検索対象画像I1との造影フェーズの同一性・内容的特徴の類似性が満たされた類似症例情報(A1、A2、A3、A4)と同じ検査IDを有するもの(B1、B2)に限定され、内容的特徴の類似性の判定という負荷の高い処理の回数が減り、検索処理全体の高速化が図られる。
【0096】
また、判定部27は、検索条件に対する適合度を判定する際に、第1検索対象画像I1に対する類似症例情報が存在するが、第2検索対象画像I2については、上記造影フェーズの同一性および上記検査IDの同一性を満たす類似症例情報が存在するが、上記内容的特徴の類似性を満たす類似症例情報が存在しない場合の適合度を、第1検索対象画像I1に対する類似症例情報が存在するが、第2検索対象画像I2については、上記造影フェーズの同一性または上記検査IDの同一性を満たす類似症例情報が存在しない場合よりも低くすることによって、上記2つの場合を区別するので、検査における時間経過を踏まえれば類似症例とはいえない前者の場合に、検査における時間経過は考慮できないが、画像としての類似性は考慮の余地がある後者の場合よりも適合度を低くするといった、よりきめの細かい類似症例情報の提供が可能になる。
【0097】
また、類似症例データベース9の類似症例情報中の特徴情報として、医用画像そのものではなく、医用画像中の関心領域の内容的特徴を表す特徴量を登録するようにしたので、第1の類似症例検索部25による検索や、判定部27による判定の度に、特徴量を算出する必要がなくなり、処理負荷の軽減に資する。
【0098】
また、関心領域設定部22が、画像中の重要部分である関心領域の情報R1、R2を取得するので、第1の類似症例検索部25や判定部27が、より重要な部分についての内容的特徴の類似性を判定するので、より適切な類似症例の検索が可能になり、読影/診断精度の向上に資する。
【0099】
次に、上記実施形態に対する変形例について説明する。
【0100】
上記の実施形態では、画像診断医が、造影フェーズの異なる画像I1、I2の両方を読影対象の画像として画像診断医用ワークステーション3のディスプレイに表示させて観察していたが、上記画像のいずれか一方のみを取得・表示して観察を行っている場合であっても、その表示されている画像(例えば、I1)と同一検査で得られた造影フェーズの異なる画像も含めた類似症例検索を行うような形態も考えられる。図7は、このような類似症例検索を実現する類似症例検索装置の構成を表すブロック図である。図に示したように、検査ID解析部28、同一検査画像検索部29、第2検索対象画像決定部30を、図2の上記の実施形態の構成に付加した構成となっている。
【0101】
検査ID解析部28は、入力されたDICOM準拠の医用画像データの付帯情報である一般検査情報を解析して、検査IDを取得し、画像診断医用ワークステーション3のメモリに記録する。
【0102】
同一検査画像検索部29は、画像診断医用ワークステーション3と、画像情報管理サーバ4、画像情報データベース5に実装されるものである。具体的には、画像診断医用ワークステーション3において、入力された検査IDを検索キーとする画像情報管理サーバ4への閲覧要求を行い、この要求を受信した画像情報管理サーバ4が画像情報データベース5に対する検索を行って、入力された検査IDと同一の検査IDと関連づけられた画像、すなわち第2検索対象画像の候補となる画像の画像ファイルを取得し、要求を送信した画像診断医用ワークステーション3にその画像ファイルを送信し、画像診断医用ワークステーション3がその画像ファイルを受信するという一連の処理を行う。
【0103】
第2検索対象画像決定部21は、第1検索対象画像の造影情報と第2検索対象画像の候補となる画像の造影情報とを入力とし、第1検索対象画像の造影フェーズと異なる造影フェーズの画像を第2検索対象画像に決定する。
【0104】
これらの処理部が付加された形態では、図4のステップ#5と#6の間で以下の処理が行われる。まず、「類似症例検索」が選択された後(#5; YES)、検査ID解析部28は、画像I1の付帯情報を解析して検査ID E1を取得する。同一検査画像検索部29は、検査IDE1を検索キーとして画像情報データベース5に対する検索を行い、画像I1と同じ検査で取得された画像I2、I3を取得する。次に、造影情報解析部21は、画像ファイルI2、I3の付帯情報を解析して各画像の造影フェーズの情報Pb、Paを取得する。そして、第2検索対象画像決定部21は、第1検索対象画像である画像I1の造影フェーズPaと、同一検査画像検索部29によって取得された画像I2、I3の造影フェーズPb、Paとを比較し、造影フェーズが異なる画像I2を第2検索対象画像に決定する。なお、図4のステップ#6では、第2検索対象画像決定部21で決定された第2検索対象画像I2を処理対象として関心領域反映部23の処理を行う。これ以外の処理は上記の実施形態と同様である。
【0105】
このようにすれば、医用画像の観察者が、第1の検索対象画像I1の存在のみを認識していた場合であっても、第1の検索対象画像I1と同じ検査で取得され、造影フェーズの異なる第2検索対象画像I2も含めた類似症例の検索が可能になり、読影・診断精度の向上に資する。
【0106】
また、上記の実施形態において、判定部27が、類似症例情報B1、B2中の各々の特徴量と第2検索対象画像I2の特徴量C2の差分を用いて内容的特徴の類似性を判定する際に、類似症例情報B1、B2の各々と、それらと同一の検査IDを有する類似症例情報A1、A2の各々と間で、特徴量の差分を算出し(各々、Δ1、Δ2とする)、さらに、第1および第2検索対象画像I1、I2の特徴量C1とC2の差分を算出し(Δ0とする)、両差分の差(Δ0−Δ1、Δ0−Δ2)が所定の閾値以下となる内容的特徴量を「類似」と判定するようにした場合、造影フェーズ間での画像の変動をより反映した類似性判定が可能になり、検索精度の向上に資する。
【0107】
また、特徴量が複数種類の尺度から構成されている場合には、各尺度による値に対して重みづけを行うことによって総合的特徴量を求め、この総合的特徴量について所定の基準に基づく判定を行うようにしてもよいし、各尺度による値をそのまま用いて多次元の特徴量とし、多次元空間における距離の大小によって類似・非類似の判定を行うようにしてもよい。
【0108】
さらに、内容的特徴の類似・非類似の判定の際には、類似症例情報中の特徴量と検索対象画像I1の関心領域の特徴量C1との差が小さいものから所定の数の類似症例情報を「類似」と判定してもよい。
【0109】
上記の実施形態では、関心領域設定部22において、画像診断医が画像I1中の関心領域を手作業で指定するようにしていたが、画像I1中の病変候補領域を自動検出し、関心領域情報R1とするようにしてもよい。この場合、画像I1をディスプレイに表示する際に、検出された病変候補領域をマーキング等によって識別可能な態様にして表示してもよいし、ディスプレイに表示されているユーザインターフェースから、マウス操作等によるメニュー選択を行い、「自動検出結果表示」という項目を選択したら、自動検出処理および検出結果の表示を行うようにしてもよい。また、自動検出方法の具体例は特開2005-198887号公報や特開2005-246032号公報等に記載の公知の方法でよい。さらに、自動検出の結果、病変候補領域が複数ある場合には、画像診断医がその中の1つを関心領域R1として選択するようにしてもよいし、自動検出による病変候補領域を修正するユーザインターフェースを設けてもよい。このように、読影対象画像I1中の関心領域を自動的に検出するようにすれば、読影者の作業負担の軽減や、画像中の病変部の見落としの軽減に資する。なお、上記の実施形態のように手作業で関心領域を指定する場合でも自動検出処理を組み合わせることが考えられる。例えば、画像診断医が病変候補を含む矩形領域を指定し、その領域から病変候補領域を自動検出して関心領域とすることが考えられる。
【0110】
また、図8のように、類似症例データベース9に、類似症例情報の検査ID毎に、どのフェーズの類似症例情報が存在するかを表すインデックステーブルを設けておき、第1の類似症例情報検索部25や第2の類似症例情報検索部26の処理の前に、第1および第2の検索対象画像I1、I2の造影フェーズの情報Pa、Pbを検索キーとして、このインデックステーブルに対して検索を行い、両方の造影フェーズの情報を有する検査IDを予め絞り込んでおき、第1の類似症例情報検索部25は、この絞り込まれた検査IDの類似症例情報のみを対象として検索を行うことが考えられる。これにより、第1の類似症例情報検索部25の処理負荷を軽減することが可能になる。
【0111】
上記の実施形態では、2つの検索対象画像を用いた類似症例検索処理について説明しているが、時相(造影フェーズ)が異なる3以上の検索対象画像を用いた場合であっても、上記と同様にして、本発明の類似症例検索処理を行うことが可能である。
【0112】
なお、上記の実施形態におけるシステム構成、処理フロー、データベース構成、ユーザインターフェース等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記の実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。例えば、図3(b)の類似症例データベース9の構成において、テーブル9cの読影/診断支援情報に医用画像データそのものを含めるようにし、さらに、造影情報をテーブルの一項目として持たずに、その医用画像データの付帯情報として持たせることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施形態における類似症例検索装置が導入された医療情報システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における類似症例検索装置の構成を模式的に示したブロック図
【図3】本発明の実施形態における類似症例データベースの構成例を模式的に表した図
【図4】本発明の実施形態における類似症例検索処理の流れを示すフローチャート
【図5】読影・検索対象となる造影フェーズが異なる医用画像の一例を表した図
【図6】検索条件に対する適合度を判定する処理の一例を示したブロック図
【図7】本発明の実施形態に対する変形例となる類似症例検索装置の構成を模式的に示したブロック図
【図8】本発明の実施形態における類似症例データベースに対するインデックステーブルの一例を表した図
【符号の説明】
【0114】
1 3次元画像撮影装置(モダリティ)
2 画像品質チェック用ワークステーション(QA−WS)
3,3a,3b 画像診断医用ワークステーション
4 画像情報管理サーバ
5 画像情報データベース
6 読影レポートサーバ
7 読影レポートデータベース
8 類似症例検索サーバ
9 類似症例データベース
10,10a,10b 診察医用ワークステーション
11 電子カルテ管理サーバ
12 電子カルテデータベース
12a 患者情報テーブル
12b 患者検査履歴テーブル
12c 患者診察履歴テーブル
12d 検査情報テーブル
12e 診察情報テーブル
19 ネットワーク
21 造影情報解析部
22 関心領域設定部
23 関心領域反映部
24 特徴量算出部
25 第1の類似症例情報検索部
26 第2の類似症例情報検索部
27 判定部
28 検査ID解析部
29 同一検査画像検索部
30 第2検索対象画像決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像の取得が行われた検査を識別する検査識別情報と、該検査において時相の異なる複数の医用画像が取得される場合の各々の時相を表す時相情報と、前記医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴情報と、該内容的特徴が類似する医用画像の読影および/または該類似する医用画像に基づく診断を支援する読影/診断支援情報とを含む類似症例情報であって、前記検査識別情報毎に該各時相情報が関連づけられ、かつ、前記時相情報毎に前記特徴情報が関連づけられたものが登録された類似症例データベースと、
同一の検査で取得された時相の異なる複数の検索対象画像の各々に付帯されている付帯情報から該検索対象画像の各々の時相を表す情報を取得する時相情報取得手段と、
前記類似症例データベースに対して検索を行い、前記類似症例情報が前記検索対象画像の各時相を表す時相情報を有するという第1検索条件と、該各時相を表す時相情報が同一の検査を表す前記検査識別情報と関連づけられたものであるという第2検索条件と、該各時相を表す時相情報と関連づけられた前記特徴情報が、内容的特徴において、対応する各時相の前記検索対象画像中の少なくとも一部の領域と類似することを表すものであるという第3検索条件のすべてを満たす前記類似症例情報中の少なくとも前記読影/診断支援情報を取得する類似症例検索手段とを備えたことを特徴とする類似症例検索装置。
【請求項2】
前記類似症例検索手段が、
前記検索対象画像の1つである第1検索対象画像について、該第1検索対象画像の時相を表す時相情報を有し、かつ、該時相を表す時相情報と関連づけられた前記特徴情報が内容的特徴において前記第1検索対象画像の少なくとも一部の領域と類似することを表す前記類似症例情報を取得し、
取得された前記類似症例情報と同一の検査を表す前記検査識別情報を有する前記類似症例情報から、前記第1検索対象画像と異なる第2検索画像の時相を表す時相情報を有し、かつ、該時相を表す時相情報と関連づけられた前記特徴情報が、前記第2検索対象画像の少なくとも一部の領域と内容的特徴において類似することを表す前記類似症例情報を抽出することによって、前記第1から第3の検索条件での検索を行うものであることを特徴とする請求項1記載の類似症例検索装置。
【請求項3】
前記類似症例検索手段が、前記内容的特徴における前記第2検索対象画像の少なくとも一部の領域との類似を判定する際に、同一の検査を表す前記検査識別情報を有し、かつ、前記第1および第2検索対象画像の各時相を表す時相情報を有する前記類似症例情報中の前記各時相における前記特徴情報の差分が、前記第1および第2検索対象画像の少なくとも一部の領域の前記内容的特徴の差分と内容的に類似する前記類似症例情報を抽出するものであることを特徴とする請求項2記載の類似症例検索装置。
【請求項4】
前記類似症例検索手段が、前記第1から第3の検索条件に対する適合度を判定する際に、前記複数の検索対象画像のすべてについて前記第1から第3のすべての検索条件を満たす類似症例情報が存在する場合、前記複数の検索対象画像の一部について前記第1から第3のすべての検索条件を満たす前記類似症例情報が存在するが、該検索対象画像の残りについては前記第1または第2の検索条件を満たす前記類似症例情報が存在しない場合、前記複数の検索対象画像の一部について前記第1から第3のすべての検索条件を満たす前記類似症例情報が存在するが、該検索対象画像の残りについては前記第1または第2の検索条件を満たす前記類似症例情報が存在するが、該類似症例情報のうち前記第3検索条件を満たすものが存在しない場合の順に、該適合度を下げるものであることを特徴とする請求項1または3記載の類似症例検索装置。
【請求項5】
前記複数の検索対象画像の1つである第1検索対象画像の前記付帯情報から該第1検索対象画像の取得が行われた検査を識別する検査識別情報、および、該第1検索対象画像の時相を表す情報を取得し、該第1検索対象画像と同一の検査で取得されたことを表す前記検査識別情報、および、該第1検索対象画像とは異なる時相を表す情報を付帯情報に有する医用画像を第2検索対象画像として取得する第2検索対象画像取得手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の類似症例検索装置。
【請求項6】
前記類似症例情報中の前記特徴情報は、前記医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴量であり、
前記複数の検索対象画像の各々の中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴量を取得する特徴量取得手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の類似症例検索装置。
【請求項7】
前記医用画像中の少なくとも一部の領域とは前記医用画像中の関心領域であり、
前記検索対象画像中の関心領域を設定する関心領域設定手段をさらに備えたものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の類似症例検索装置。
【請求項8】
前記関心領域設定手段が、前記検索対象画像中の関心領域を検出するものであることを特徴とする請求項7記載の類似症例検索装置。
【請求項9】
前記関心領域設定手段が、前記検索対象画像の1つである第1検索対象画像に設定された関心領域に基づいて、該検索対象画像のうちの該第1検索対象画像と異なる第2検索対象画像の、該第1検索対象画像中の関心領域に対応する位置に関心領域を設定するものであることを特徴とする請求項7または8に記載の類似症例検索装置。
【請求項10】
同一の検査で取得された時相の異なる複数の検索対象画像の各々に付帯されている付帯情報から該検索対象画像の各々の時相を表す情報を取得し、
医用画像の取得が行われた検査を識別する検査識別情報と、該検査において時相の異なる複数の医用画像が取得される場合の各々の時相を表す時相情報と、前記医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴情報と、該内容的特徴が類似する医用画像の読影および/または該類似する医用画像に基づく診断を支援する読影/診断支援情報とを含む類似症例情報であって、前記検査識別情報毎に該各時相情報が関連づけられ、かつ、前記時相情報毎に前記特徴情報が関連づけられたものが登録された類似症例データベースに対して検索を行い、前記類似症例情報が前記検索対象画像の各時相を表す時相情報を有するという第1検索条件と、該各時相を表す時相情報が同一の検査を表す前記検査識別情報と関連づけられたものであるという第2検索条件と、該各時相を表す時相情報と関連づけられた前記特徴情報が、対応する各時相の前記検索対象画像の少なくとも一部の領域と内容的特徴において類似することを表すものであるという第3検索条件のすべてを満たす前記類似症例情報中の少なくとも前記読影/診断支援情報を取得することを特徴とする類似症例検索方法。
【請求項11】
コンピュータに、
同一の検査で取得された時相の異なる複数の検索対象画像の各々に付帯されている付帯情報から該検索対象画像の各々の時相を表す情報を取得するステップと、
医用画像の取得が行われた検査を識別する検査識別情報と、該検査において時相の異なる複数の医用画像が取得される場合の各々の時相を表す時相情報と、前記医用画像中の少なくとも一部の領域の内容的特徴を表す特徴情報と、該内容的特徴が類似する医用画像の読影および/または該類似する医用画像に基づく診断を支援する読影/診断支援情報とを含む類似症例情報であって、前記検査識別情報毎に該各時相情報が関連づけられ、かつ、前記時相情報毎に前記特徴情報が関連づけられたものが登録された類似症例データベースに対して検索を行い、前記類似症例情報が前記検索対象画像の各時相を表す時相情報を有するという第1検索条件と、該各時相を表す時相情報が同一の検査を表す前記検査識別情報と関連づけられたものであるという第2検索条件と、該各時相を表す時相情報と関連づけられた前記特徴情報が、対応する各時相の前記検索対象画像の少なくとも一部の領域と内容的特徴において類似することを表すものであるという第3検索条件のすべてを満たす前記類似症例情報中の少なくとも前記読影/診断支援情報を取得するステップとを実行させることを特徴とする類似症例検索プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−217362(P2008−217362A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53294(P2007−53294)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100124213
【弁理士】
【氏名又は名称】尾原 和貴
【Fターム(参考)】