説明

類似設計構造検索装置、および類似設計構造検索方法

【課題】設計段階で過去の不具合情報や設計改善情報を参照する際、類似したアセンブリ構造をもとに絞り込み検出することができる設計支援技術を提供する。
【解決手段】複数の部品で構成される組立品の類似設計構造検索装置において、複数の部品で構成された組立品の3DCADデータから各部品の部品特徴と部品間の隣接関係を取得しアセンブリ構造データとして過去の不具合事例、設計改善事例、製造指示事例ともに格納する手段、評価対象の3DCADデータからアセンブリ構造データを生成し、格納された事例データと類似したアセンブリ構造を検索する際、部品特徴と隣接関係の2つのステップの類似性判定から絞り込み検出する手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、類似設計構造検索装置、および類似設計構造検索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2010−244465号公報(特許文献1)がある。特許文献1には「過去に設計物で起こった不具合情報を基本的な部品および基本的な現象に対応づけて格納する不具合情報記憶部を備え、検索条件で指定される部品と部品構造情報から特定し、当該特定した部品で起こり得る現象を部品現象対応情報から導出する」と記載されている。
【0003】
また特開2000−222428号公報(特許文献2)がある。特許文献2には「検索モデルと被検索モデルの類似度を算出し類似度評価し類度の高い順にソートして出力する」と記載されている。
【0004】
また特開2008−117031号公報(特許文献3)がある。特許文献3には「取付可能空間範囲の形状と設計モデルの形状とから取付可能空間形状を作成する。形状検索部は、指定された部品種類であって作成された取付可能空間形状に収まる形状の部品を部品形状データベースから抽出する」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−244465号公報
【特許文献2】特開2000−222428号公報
【特許文献3】特開2008−117031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1には、不具合の原因となる現象を入力しなくても設計中で起こり得る不具合情報のみを絞り込んで検索する方法として、過去の不具合情報を部品構造情報から特定する仕組みが記載されている。しかし、この部品構造情報とは部組品に含まれる部品の構成を示すものであり、部品と部品とがどのように組み付けられているかという組立構造を考慮できていない。また前記特許文献2、特許文献3に作成済みの3DCADのデータをもとにした検索方法として、モデル名での検索やモデルに登録した部品属性情報(図番、部品種別、部品名、材質など)をもとにした検索方法や類似した部品形状を検索する方法としては部品を外包する直方体(以下、バウンディングボックス)の類似度で計算する方法がある。いずれも部品属性や部品形状での検索などが記載されている。いずれも部品の属性や形状の検索方法であり、複数の部品の組立構造は考慮できていないため、組み付け作業、製造工法に関する検索の絞り込みが不十分である。
【0007】
そこで本発明の目的は、設計段階で過去の不具合情報や設計改善情報を参照する際、部品名や部品種別や部品形状などの部品特徴と、部品間の相対的な隣接方向を含む隣接関係の2つのステップの類似性判定により検索したいアセンブリ構造を絞り込み検出することができる設計支援技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明では、過去のアセンブリ構造の設計事例を、指定部品特徴と、部品間の相対的な隣接方向を含む隣接関係の2つのステップの類似性判定により検索する類似設計構造検索装置を、3DCADモデルから、締結部品と接続フィーチャを指定部品として検出する手段と、前記締結部品と接続フィーチャに基づいて、アセンブリグラフを生成する手段と、事例データベースに登録した事例モデルごとの検索条件を指定した部品との類似部品を検索する手段と、前記手段にて検索した部品と前記アセンブリグラフによる部品間の隣接関係に基づき事例モデルにおける検索始点候補を抽出し、検索始点をもとに事例ごとに設定された隣接関係の絞り込み条件をもとに類似構造を検出する手段とを備えて構成した。
【0009】
また、上記課題を解決するために本発明では、過去のアセンブリ構造の設計事例を、指定部品特徴と、部品間の相対的な隣接方向を含む隣接関係の2つのステップの類似性判定により検索する類似設計構造検索方法において、解析対象の3DCADモデルから部品の配置、形状特徴および部品属性、部品間隣接関係の情報を取得するステップと、3DCADモデルの形状特徴・部品属性と部品種別情報から締結部品を検出するステップと、3DCADモデルの接続フィーチャ種別と加工種別情報から接続フィーチャを検出するステップと、取得した3DCADデータから前記解析対象の組立品の各部品の部品特徴と部品間の隣接関係を基にアセンブリグラフを生成するステップと、事例データベースに登録した事例モデルごとの検索条件を指定した部品との類似部品を検索するステップと、前記ステップにて検索した部品と前記アセンブリグラフによる部品間の隣接関係に基づき事例モデルにおける検索始点候補を抽出し、検索始点を元に事例ごとに設定された隣接関係の絞り込み条件を基に類似構造を検出するステップとを有するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3DCADのデータを利用して各構成部品の隣接関係を解析してアセンブリグラフを作成し、それに基づいて事例に類似した組立構造を抽出することにより、その事例に登録した情報(不具合、設計改善、製造指示など)を参照することができ、不具合の未然防止、設計改善の検討時間短縮、的確な製造指示を実現する設計支援技術を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】各実施例に係る設計支援装置の全体概略構成図の例である。
【図2】第1の実施例に係る3DCADのアセンブリグラフ生成、類似構造検索処理を説明するフローチャートの例である。
【図3】図1に示す設計支援装置の記憶装置に格納された3DCADモデル情報テーブルの例である。
【図4】図1に示す設計支援装置の記憶装置に格納された部品種別テーブルの例である。
【図5】図5(a)は、図1に示す設計支援装置の記憶装置に格納された加工種別テーブルの例であり、図5(b)は、図5(a)のテーブルに示された接続フィーチャの例である。
【図6】3DCADモデルの例である。
【図7】第1の実施例において、図5に示した3DCADモデルに対し、接続部品の把握と接続フィーチャを追加して生成したアセンブリグラフの例である。
【図8】部品ノードと隣接エッジおよび締結部品ノードのエッジ変換によるノード数削減方法の説明例である。
【図9】事例データ登録の画面の例である。
【図10】事例ごとに設定した検索始点の候補抽出方法の概要説明図である。
【図11】隣接関係の絞り込みに関する処理フローチャートの概要説明図である。
【図12】事例データの登録テーブル例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明を実施例により説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施例では、3DCADデータをもとに各部品特徴と部品間の隣接関係をアセンブリグラフとしてデータ表現する設計構造とその設計構造に関わる過去事例情報を検索する類似設計構造検索装置を説明する。
【0014】
図1は、本発明の各実施例で適用される類似設計構造検索装置の概略機能構成図の例を示す。類似設計構造検索装置100は、キーボード、マウスなど、解析のために必要な設定情報の入力、メニューに選択指示、あるいはその他の指示等を入力する入力部110、対象モデルの表示、入力情報の表示、処理結果の表示、処理途中の経緯の表示等を行う表示部120と、本発明の各処理機能をプログラムの実効により実現する演算部200と、各種情報、プログラムを記憶する記憶部300と、ネットワーク410を介して3DCAD400からCADモデル情報を受信する通信部130とから、その主要部が構成されている。
【0015】
記憶部300は、3DCADモデル情報記憶部310、部品種別情報記憶部320、加工種別情報記憶部330、事例情報記憶部340、検索結果情報記憶部350、解析プログラム・計算条件記憶部360などを有し、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、および外部記憶装置より構成される。
【0016】
演算部200は、3DCADモデルの情報取得部210、締結部品および位置合わせマークの検出部220、アセンブリグラフの生成部230、アセンブリグラフの簡略化部240、類似部品の検索部250、類似した隣接構造の絞り込み検出部260、および検出結果の出力部270を有する。
【0017】
入力部110はタッチパネル、専用のスイッチやセンサあるいは音声認識装置を用いてもよい。表示部120は、例えばディスプレイ、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイなど画面やスクリーンに情報を表示する装置を用いる。表示部120に表示された情報を用紙に出力するプリンタ(図示しない)を類似設計構造検索装置100に接続してもよい。
【0018】
なお、これらのハード構成は、専用装置である必要はなく、パーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータシステムを利用することができる。
【0019】
図2は、3DCADデータを基にアセンブリグラフを生成する処理および事例モデルに設定した検索条件に合致した部品を特定するところまでの処理を説明するフローチャートの例である。
【0020】
ステップS101では、演算部200の3DCADモデル(解析対象モデル:組立品)の情報取得部210にて、解析対象の3DCADモデルから部品の配置、形状特徴および部品属性、部品間隣接関係の情報を取得し、記憶部300の3DCADモデル情報DB310に格納する。
【0021】
ここで解析対象は複数の部品から構成される組立品であるアセンブリモデルとする。なお本図のフローチャートには、3DCADモデルのモデリング操作および解析対象としたモデルを指定する操作は省略した。
【0022】
図3は、取得した3DCADモデルの情報310を説明するテーブル構成の項目例である。テーブルはデータNo.311、分類312、項目313、項目値314の欄を有するデータレコードより構成され、分類312は、部品属性、形状特徴、部品配置、部品構成、部品間隣接関係、位置合わせ用マークの分類から構成する。3DCADモデルにおいて部品および部組品を一意に識別する部品IDを設定し、その部品IDごとの情報を格納する。
【0023】
部品属性とは、部品ID、3DCADモデル上での構成を示す階層番号、モデル名、部品図番、部品タイトル、材質などの情報である。形状特徴とは、体積、表面積、最大長、重心などの情報である。またバウンディングボックス(パート座標系における部品を外包する境界となる直方体の8頂点の座標)、主慣性モーメント、慣性主軸、質量などの情報も利用してもよい。
【0024】
部品配置とは、ワールド座標系に配置されたアセンブリモデル上での各部品の位置および姿勢であり、各部品のパート座標系のX、Y、Zの3軸と部品原点から構成する。
部品構成とは、3DCADモデルの部組品と部品との親子関係を示す情報である。
【0025】
部品間隣接関係とは、アセンブリモデルをモデリングする際に設定するアセンブリ拘束情報であり、拘束要素種別、拘束要素を含む部品ID、拘束された部品ID(被拘束部品ID)、拘束面を表す拘束面法線、拘束面原点から構成する。またアセンブリ拘束情報は、モデリングする際に設計者が設定した情報だけではなく、アセンブリモデルをもとに部品と部品のクリアランス解析によって取得する方式がよい。ここでクリアランス解析の一方式としては、設定した閾値をもとにモデリングされた部品の各面からクリアランス距離内にある別のモデルを探索し、探索結果得た隣接部品の面(平面、円筒面、円錐面など)の位置、姿勢の情報を把握するものである。
【0026】
なおアセンブリ拘束とクリアランス解析の情報で得た拘束面情報は、平面の場合は、そのモデルの外側に向いた拘束面法線ベクトルと面上の点を拘束面原点に取得し、円筒面の場合は、その円筒の軸方向を拘束面法線ベクトルとして軸上の点を拘束面原点とする。
【0027】
ステップS102では、類似設計構造検索装置100の締結部品および位置合わせマークの検出部220において、3DCADモデルの形状特徴・部品属性と部品種別情報DB320から締結部品を検出する。
【0028】
図4は、記憶部300の部品種別情報DB320を説明するテーブル構成の例である。テーブルは、部品種別ID321、部品種別名称322、部品種別を引き当てるための情報として3DCADモデルの部品属性(モデル名323、部品図番324、部品タイトル325)と3DCADモデルの形状特徴(体積326、表面積327、重心328)の項目をもち、各行ごとの引き当て条件によって部品種別名称、部品種別IDで識別する構成とする。なお図4の例では各行の引き当て条件において、空白以外の項目を条件として検索する。ここで部品図番324、部品タイトル325は、3DCADモデルのパートモデルあるいはアセンブリモデルにユーザが任意に定義したテキスト情報である。また3DCADモデル名、部品タイトルなど文字列の部品属性においては、すべての文字列の完全一致だけではなく部分一致で引き当てる場合もある。そこで任意の文字を示すワイルドカード文字(*など)を含む文字列を格納する。なお文字列条件カラムを追加して、完全一致、前方一致、後方一致などの条件を定義してもよい。また形状特徴としては、上記のほかパートモデルにおけるバウンディングボックス頂点、主慣性モーメントなど3DCADモデルを計算することで取得できる質量特性を格納してもよい。
【0029】
部品種別名称欄よりも右側の各カラムに合致した部品について、締結部品の部品種別を把握する。空のセルは任意とし、各カラムのAND条件で検索する。OR条件を設ける場合は所定のカラムを空セルとして複数行定義する。
【0030】
ステップS103では、類似設計構造検索装置100の締結部品および位置合わせマークの検出部220にて、3DCADモデルの接続フィーチャ種別と加工種別情報DB330から接続フィーチャと関連した部品IDを検出する。
【0031】
なお、3DCADモデル情報DB310、部品種別情報DB320、加工種別情報DB330はハードディスクに記憶された情報を示す。
【0032】
図5(a)は、記憶部300の加工種別情報DB330を説明するテーブル構成の例である。テーブルにおいて、3DCADモデルの接続フィーチャ名にて、加工種別を引き当てる。なお接続フィーチャごとにクリアランス値334を格納し、隣接する部品を検出する際の閾値とする。図5(b)は位置合わせマーク種別(接続フィーチャ情報)の例(位置決め穴、刻印、ネジ穴等)を示す。
【0033】
この接続フィーチャに対して設定したクリアランス値以内に隣接した部品を検出するが、この方法としては、指定した接続フィーチャの表面エッジ上に少なくとも1点、もしくは等間隔で3点の計算対象点を設け、その点にクリアランス値以内で隣接する面を探索する。その際、対象とするモデルに含まれる各部品のバウンディングボックスにおいて、計算対象点を中心としてクリアランス値を半径とした球を含まない場合は、その部品は検索対象外とする。点と面との検索結果をもとに、クリアランス値以内で隣接する面を持つ部品がある場合には、その部品を特定し隣接面を識別する。なお接続フィーチャの表面の法線方向を部品の分解方向として記憶する。また前述のように1つの接続フィーチャ上の3点をもとに1つの部品との関係を検出した場合、接続フィーチャの中心点などの代表点の情報として1つの隣接関係情報として識別する。このようにすべての面のクリアランス解析を行う場合に対して、接続箇所に絞り込んで隣接の解析をすることで、また面対面の隣接の解析ではなく、点対面の隣接の解析で処理することで大幅に解析時間を短縮することが出来る。また全ての面の解析の場合は、モデル上のフィレットや面取り部分など部品と部品の隣接関係の判定には不要な面の解析が多々発生することがあるが、接続フィーチャを事前に指定して、その面上のエッジ上の点を基に隣接部品を検索することで、それら無駄な検索を行わず検索ノイズが削減できる。
【0034】
ステップS104では、類似設計構造検索装置100のアセンブリグラフの生成部230にて、接続部(締結部品、接続フィーチャ)をもとにアセンブリグラフを生成する。なおアセンブリグラフとは、部品特徴(モデル名、部品種別、材質などの部品属性と形状特徴)をノード、部品と部品の隣接関係をエッジとしたグラフ表現のデータ構造を示す。
【0035】
このデータ構造の説明に、図6のモデルを用いて説明する。図6のモデルは、構成部品A、B、C、D、EおよびネジAB、ネジBD、ネジCDの部品で構成した組立品である。またA上面とC下面には位置合わせ用マークの刻印(接続フィーチャPONCH)が4箇所ある。なお図では部品タイトル、接続フィーチャが同じものは、「×員数」(例えば、ネジAB×2等)で示したが、図3に示したようにそれぞれの部品情報は一意となる部品IDで管理している。
【0036】
図7は3DCADモデルの部品間隣接関係から生成したアセンブリグラフの一例である。ここで図3の部品間隣接関係および図5で説明した位置合わせマーク(接続フィーチャ)との隣接部品から、拘束要素種別として円筒の軸一致(C:円筒拘束)、面合致(P:平面拘束)などを識別し、また拘束要素を含む部品ID、被拘束部品IDから部品間の関係を識別する。また拘束面およびその法線ベクトルから隣接している方向を識別する。これにより部品特徴をノード、部品間隣接関係をエッジとしたグラフ表現で図7のようにアセンブリグラフを出力できる。
【0037】
ここで図6のA部品とC部品は、4箇所の位置合わせ用マーク刻印があり、溶接で固定される。この場合、図3に示すように、この位置決めを示す接続フィーチャPONCHが接続フィーチャを含む部品ID5のA部品にモデリングされており、被接続部品ID10と関係があることを判定する。また図5(a)の加工種別情報DB330から接続フィーチャPONCHの加工種別が刻印でありクリアランス値が0.5と識別し、その刻印と隣接する部品情報を取得しA部品との隣接関係を判定している。
【0038】
なお、位置合わせマークとの隣接関係を解析する処理は、位置合わせマークをモデリングする際のスケッチ面上のエッジ上の点を少なくとも1つ、あるいは等間隔で3点を設定し、その点にクリアランス値以内で隣接する面(他の部品の面)を検索し、隣接部品を特定する。なお隣接方向は、位置合わせマークの形状から部品を組み付け締結する方向を各IDに定義しておく。例えば、ネジ穴は円筒の軸方向で表面から外側に出る法線方向とする。また刻印はそのスケッチ面に対し外側に出る法線方向とする。また位置合わせマークにおいて、円筒形状の穴のように貫通している形状の場合は、その反対側の面においても同様にエッジ上の点に対してクリアランス値以内で隣接する面を検索し隣接部品を特定する。
【0039】
このようにモデリング時に設定した合致/拘束情報だけでなく、接続フィーチャをもとに隣接関係を取得することで、モデリングに依存しないアセンブリグラフを生成することができる。
【0040】
ステップS105では、アセンブリグラフの簡略化を行う。具体的には、部品ノードが同じで、隣接関係が同じ方向、同じ拘束関係である場合は、同じ部品タイトルで員数を集約して1つの部品ノード、1つのエッジにまとめて表現する。図6の例では、ネジAB、ネジBD、ネジCDが同じ部品タイトルで同じ方向の拘束関係を持っており、各2個を「×2」と表現した。また刻印も同様に同じ方向の拘束関係を持っており、「×4」と表現した。
【0041】
また図8には締結部品ノードに着目したアセンブリグラフの簡略化の例を示す。図8(a)は上述の集約により簡略化した例である。部品ノードは長丸、隣接エッジはその部品間の隣接関係を示す。ここでネジR、ネジYは締結部品である。また隣接エッジ上の矢印は隣接方向を示すイメージである。この締結部品ノードにおいて、同じ方向の隣接エッジに着目し、締結部品ノードを含む隣接エッジを1つの隣接エッジに変換する(図8(b)参照)。これにより締結部品分のノード数を削減することができる。組立型製品において締結部品の割合は30〜80%と多く、この簡略化手段を行うことで締結部品の割合に応じて計算対象のアセンブリグラフを縮小することができ、計算処理時間を大幅に短縮することができる。
【0042】
ステップS106では、生成したアセンブリグラフの各部品ノードにどの部品が隣接しているかを表した隣接行列、各部品ノードから伸びたエッジ(隣接関係)同士がどのような関係であるかを示す接続行列についての属性をラベルと呼び、この計算を行う。隣接行列のラベルとは部品ノードと部品ノードとの関係を示す情報であり、部品ノードから伸びたエッジの本数、種類、隣接した部品の種別などを示す情報である。具体的には例えば図7の例では、D部品ノードは{エッジ5本、隣接部品3つ、締結部品2つ}が一つの例である。
【0043】
また接続行列のラベルとはエッジとエッジの関係を示す情報であり、2つのエッジを構成する拘束面法線の角度、面を構成する拘束点の点列の配置関係(最近距離、最大距離等、および2エッジでの関係)などを示す。例えば図7の例では、{「D−E」と「D−C」のエッジ角度が0度、「D−B」と「D−C」のエッジ角度が0度}などである。
【0044】
ステップS107では、事例情報DB340に登録された事例モデルの1番目から順にすべての事例情報に対して、次のステップの計算処理を行う。
【0045】
ステップS108では、類似部品の検索部250が事例モデル側で検索条件を指定した部品との類似部品検索を行う。ここで図9に事例登録画面900の例を示す。3DCADモデルから図3に記載の部品情報を出力し、不具合事例を登録する場合は、例えば不具合区分901(寸法不良、仕様不良、材質選定不足など)、関連資料の登録先902(URL、格納先ファイルパス)、不具合内容903、その不具合に関する最小限の部品構成リスト904を事例モデルとして登録する。
【0046】
ここで3DCADモデルから最小限の部品構成を選定する際、はじめに3DCADモデルのモデルツリーを表示し、その中で範囲指定することで図9の部品リストを抽出するとよい。また選定した際に再確認するために「3D表示」ボタン906にて3DCADを起動し、選定した部品リストのみを表示し、その他の部品を非表示とすることで確認する。これは3DCADから情報出力する際に、モデルファイルの格納先ディレクトリパス、モデルの更新日時、各パートモデルのIDを保存しておくことで実現できる。また登録する部品リストには部品検索条件を指定する。具体的には、形状類似、モデル名一致、モデル名部分一致、材質一致、材質類似、バウンディングボックス寸法類似、最大長類似などとし、その組み合わせでの検索絞り込みも設定可能とする。
【0047】
なお形状類似の観点では、単純なバウンディングボックスでの寸法や最大長だけでなく、表面積、体積、質量、重心、慣性主軸などの質量特性をもとにした特性値をもとに類似判定を行うこととし、その際の類似判定の閾値も設定可能とする。また文字列での判定では、完全一致、前方一致、後方一致、部分一致のほか、文字列の類似性としてルーベンシュタイン距離やハミング距離を計算しその特性値で類似性を判定してもよい。
【0048】
このように登録した事例モデルの検索条件を設定した部品モデルについて、評価対象モデルを構成するすべての部品モデル内の検索を行う。これにより隣接関係を検索する際の始点となる部品ノードを見つけることができる。
【0049】
また図9に示したように「隣接関係の絞り込み検索条件」905も事例ごとに設定する。これは始点から先の隣接ノードを絞り込む際の条件である。例えば「締結部品/それ以外の区別」の場合は、図4記載のテーブルにて締結部品を認識した上で、隣接した部品ノードが締結部品であるかどうかを判定する。「部品種別」の場合は、さらに細かな判定となり隣接した部品ノードが事例と同じ部品種別であるかを判定する。「材質」の場合は隣接した部品ノードが事例と同じ材質であるかを判定する。「隣接方向」の場合は隣接する部品の方向が事例と同じであるかを判定する。これは2つのエッジ角度をすべての組み合わせについて計算し、その事例側の組み合わせ角度が含まれているかを判定する。なお微小な角度の違いでの検出漏れを防ぐため、計算した角度は0度、45度、90度、135度、180度に離散化する。「隣接点の配置関係」の場合は、取得した隣接点が直線状に並んでいるのか、あるいは円弧上に並んでいるのか、格子上に並んでいるのかについて、隣接面ごとに計算し、事例と同じ種類の配置関係であるかを判定する。なおこれら絞り込み検索条件が複数選択された場合は、AND条件での検索とし、例えば「部品種別」、「材質」、「隣接方向」、「隣接点の配置関係」の全てが選択されて登録907された事例の場合は、始点からの隣接関係において、「部品種別−材質―隣接方向―隣接点の配置関係」を連続した文字列とし、その組み合わせが合致する(含まれる)ものを残すことで絞り込み検出する。
【0050】
図10に事例に登録された事例ごとのアセンブリグラフにおいて評価対象モデル(3DCAD)500から組立構造としてアセンブリグラフ503を生成し501、その部品と隣接関係をもとに、事例DB502に登録された検索始点の類似部品検索の概要を示した。このように、図9の事例登録画面にて設定された事例ごとの始点の検索条件に基づき、モデル名一致、形状類似等の条件にて、評価対象モデル内の検索始点候補を抽出する。
【0051】
図2記載のステップS109では、1つの事例モデルの複数の部品に検索条件が設定されていた場合、その複数の部品間の最小パス(部品ノードと部品ノードの間のノードの最小値)を満たしたもののみを絞り込み、事例と合致しないものは以後の処理の対象外とする。またステップS110では、検索条件を指定した部品からの最大パスが満たすもののみを絞り込み、事例と合致しないものは以後の処理の対象外とする(ステップS111)。これらの処理により評価対象モデル内で事例と合致する検索の始点となる部品ノードを絞り込むことができる。さらに、ステップS112では、抽出した検索の始点ノードからの隣接関係の解析となり、事例の隣接関係を含むものを残し、異なる場合は対象外とする処理となる。
【0052】
これらの隣接の詳細絞り込みのフローチャートの説明を図11に示す。類似した隣接構造の絞り込み検出部260が、図10にて検出した検索始点をもとに事例ごとに設定された隣接関係の絞り込み条件をもとに、始点から先の部品ノードとの隣接エッジの判定を行う。例えば、隣接した部品数を満たすか(S201)、始点から端部のエッジ数を満たすか(S202)、といった第1次の絞り込みの後、詳細絞り込みとして、隣接見解の絞り込み条件に従い、2つのエッジのなす角度が満たすか、部品種別の組み合わせが満たすか、などの判定を行う(S203)。この判定処理を検出したすべての検索始点において繰り返し行うことで類似構造を検出する。
【0053】
ここで図9の不具合内容の説明項目とともに事例モデルの情報としては、図3に示すアセンブリグラフ生成のために必要な情報と同様であり、この情報に図9の画面で設定した検索条件を加えた内容をDBに格納する。図12に不具合事例の登録情報を示す。なお図3と共通の部分は一部省略した。
【0054】
図9記載の不具合内容については、事例全体に対する情報であるため、部品ID=0の情報として登録する。事例として選択した部品構成(図9の部品リスト)は、親を不具合事例の識別IDを設定し、選択した部品を子部品とした部品構成として格納する。また部品検索条件はその部品構成内の部品について設定した条件に従い登録する。また隣接関係の絞り込み検索条件は事例全体に対する条件であるため部品ID=0の情報として登録する。
【0055】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。1例を挙げると、上記した実施例では過去に不具合が生じた組立構造を事例情報として新規設計モデルに事例と類似した組立構造が含まれるかを検出する方式であるが、事例情報としては公差解析など形状だけではなく組立構造についての詳細な設計書が必要となる組立構造の事例モデルを登録しておき、その事例モデルと類似した組立構造を検出することで詳細設計書が必要である旨を設計者に提示する方式でもよい。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0056】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0057】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 類似設計構造検索装置、
110 入力部
120 表示部
130 通信部
200 演算部、
210 3DCADモデルの情報取得部、
220 締結部品および位置合わせマークの検出部、
230 アセンブリグラフの生成部、
240 アセンブリグラフの簡略化部、
250 類似部品の検索部、
260 類似した隣接構造の絞り込み検出部、
270 検出結果の出力部、
300 記憶部、
310 3DCADモデル情報記憶部、
320 部品種別情報記憶部、
330 加工種別情報記憶部、
340 事例情報記憶部、
350 検索結果情報記憶部、
360 解析プログラム・計算条件記憶部、
400 3DCAD
410 ネットワーク
500 評価対象モデル(3DCAD)
501 組立構造のデータ生成
502 事例DB
503 アセンブリグラフ
900 事例登録画面、
901 区分表示領域
902 関連資料の登録先
903 不具合内容入力領域
904 最小限の部品構成リスト
905 隣接関係の絞り込み検索条件
906 3D表示釦
907 登録釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去のアセンブリ構造の設計事例を、指定部品特徴と、部品間の相対的な隣接方向を含む隣接関係の2つのステップの類似性判定により検索する類似設計構造検索装置であって、
3DCADモデルから、締結部品と接続フィーチャを指定部品として検出する手段と、
前記締結部品と接続フィーチャに基づいて、アセンブリグラフを生成する手段と、
事例データベースに登録した事例モデルごとの検索条件を指定した部品との類似部品を検索する手段と、
前記手段にて検索した部品と前記アセンブリグラフによる部品間の隣接関係に基づき事例モデルにおける検索始点候補を抽出し、検索始点をもとに事例ごとに設定された隣接関係の絞り込み条件をもとに類似構造を検出する手段とを有することを特徴とする類似設計構造検索装置。
【請求項2】
請求項1に記載の類似設計構造検索装置において、
前記アセンブリグラフを生成する手段が、締結部品および接続フィーチャに着目して、隣接する面の法線方向を取得することで締結方向を取得することを特徴とする類似設計構造検索装置。
【請求項3】
請求項1に記載の類似設計構造検索装置において、
前記事例データベースに登録した指定部品の検索条件として、少なくともバウンディングボックスの外形寸法値、重心、慣性主軸、体積、表面積、部品名、モデル名、材質の少なくとも1つの部品属性を登録していることを特徴とする類似設計構造検索装置。
【請求項4】
過去のアセンブリ構造の設計事例を、指定部品特徴と、部品間の相対的な隣接方向を含む隣接関係の2つのステップの類似性判定により検索する類似設計構造検索方法であって、
モデル情報取得部が、解析対象の3DCADモデルから部品の配置、形状特徴および部品属性、部品間隣接関係の情報を取得するステップと、
締結部品および位置合わせマークの検出部が、3DCADモデルの形状特徴・部品属性と部品種別情報から締結部品を検出するステップと、
締結部品および位置合わせマークの検出部が、3DCADモデルの接続フィーチャ種別と加工種別情報から接続フィーチャを検出するステップと、
アセンブリグラフ生成部が、取得した3DCADデータから前記解析対象の組立品の各部品の部品特徴と部品間の隣接関係を基にアセンブリグラフを生成するステップと、
類似部品検索部が、事例データベースに登録した事例モデルごとの検索条件を指定した部品との類似部品を検索するステップと、
類似構造検出部が、前記ステップにて検索した部品と前記アセンブリグラフによる部品間の隣接関係に基づき事例モデルにおける検索始点候補を抽出し、検索始点を元に事例ごとに設定された隣接関係の絞り込み条件を基に類似構造を検出するステップとを有することを特徴とする類似設計構造検索方法。
【請求項5】
請求項4に記載の類似設計構造検索方法において、
前記アセンブリグラフを生成するステップが、締結部品および接続フィーチャに着目して、隣接する面の法線方向を取得することで締結方向を取得することを特徴とする類似設計構造検索方法。
【請求項6】
請求項4に記載の類似設計構造検索方法において、
前記事例データベースに登録した指定部品の検索条件として、少なくともバウンディングボックスの外形寸法値、重心、慣性主軸、体積、表面積、部品名、モデル名、材質の少なくとも1つの部品属性を登録していることを特徴とする類似設計構造検索方法。
【請求項7】
請求項4記載の類似設計構造検索方法において、
前記隣接関係が類似した事例モデルを検索するステップにおいて、少なくとも2つ以上隣接方向の組み合わせが類似している条件で抽出することを特徴とする類似設計構造検索方法。
【請求項8】
請求項4記載の類似設計構造検索方法において、
前記隣接関係が類似した事例モデルを検索するステップにおいて、部品種別および隣接する部品の方向を判定し,その部品種別が同じ種類であり隣接方向が同じ場合に,員数を集約することで検索する対象を縮小し,処理時間を削減して類似検索することを特徴とする類似設計構造検索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−114484(P2013−114484A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260468(P2011−260468)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】