説明

顧客価値評価方法及びシステム

【課題】 企業が有するブランド価値の中でも、顧客がそのブランドをどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】 顧客価値評価方法は、アンケート結果に基づいてデータベースを作成するステップ(a)と、それぞれの顧客について当該企業の顧客サービスに対する第1の重み付け係数と当該企業の企業イメージに対する第2の重み付け係数とを求めるステップ(b)と、データベースの情報及び第1の重み付け係数を利用して当該企業の顧客サービスに関する顧客価値を表す金額を求めるステップ(c)と、データベースの情報及び第2の重み付け係数を利用して当該企業の企業イメージに関する顧客価値を表す金額を求めるステップ(d)と、これらの金額に基づいて当該企業のトータルの顧客価値を表す金額を求めるステップ(e)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業が有するブランド価値の中でも、顧客がそのブランドをどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業が有するブランド価値には、将来的にそのブランドをどのように高めていくべきかという社内のブランドに対する取り組みを表す従業員価値と、ブランドが売上や収益にどれだけ影響しているか、即ち、ブランドがどのくらい資産としての価値を生み出しているかを表す資産価値と、顧客がそのブランドをどのように見ているかを表す顧客価値とが含まれている。顧客価値は、顧客が受けるサービスと顧客が抱くブランドイメージとによって決定され、顧客がそのブランドを選択する際の顧客吸引力となるが、これを金額ベースで算出することができれば、企業のトータルとしてのブランド価値を客観的に判断するために有用である。
【0003】
例えば、電力自由化の下で、電力会社には、これまでの電力安定供給の要請に加えて、顧客重視の営業戦略が求められている。そこで、料金引き下げに対する需要家(顧客)の反応や、需要家から見たブランド価値、即ち、顧客価値を実際に計測し、電力会社に対する需要家満足度を引き上げるための具体的な方針を検討する必要性に迫られている。
【0004】
関連する技術として、下記の特許文献1には、組織間で伝達されるメッセージのアンケート調査結果を分析して、組織の価値を客観的に評価する評価装置及びその方法が開示されている。分析・評価装置が、組織の各構成員に対してアンケート調査を実施し、このアンケート調査に対する回答から、組織・個人毎の共通単語等(属性)を抽出する。分析・評価装置は、評価対象となる属性と、組織・個人の共通単語・概念等とを比較し、調査対象となる属性が組織に影響を与える範囲及びその度合い等を分析し、組織・個人の評価を行う。さらに、分析・評価装置は、評価対象に対する評価結果に対して統計分析及び時系列的な分析を行い、評価結果及び分析結果を記憶・出力する。
【特許文献1】特開2004−252947号公報(第1頁、図35)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、対象となる人に対してアンケート調査を実施し、そのアンケート調査の結果に基づいて、組織の価値を客観的に評価することは既に知られている。しかしながら、ここでいう組織の価値とは、組織の構成員によってもたらされる価値のことであり、顧客がそのブランドをどのように見ているかを表す顧客価値を評価する具体的な方法に関しては、未だ開示されていない。そこで、本発明は、企業が有するブランド価値の中でも、顧客がそのブランドをどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る顧客価値評価方法は、ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法であって、それぞれの顧客が企業を選択する際に考慮する価格と顧客サービスと企業イメージとのウエイトに関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを作成するステップ(a)と、それぞれの顧客について、当該企業の顧客サービスに対する第1の重み付け係数と、当該企業の企業イメージに対する第2の重み付け係数とを求めるステップ(b)と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、第1の重み付け係数との積に比例する第1の値の相加平均を算出することにより、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(c)と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、第2の重み付け係数との積に比例する第2の値の相加平均を算出することにより、当該企業の企業イメージに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(d)と、第1の値の相加平均と第2の値の相加平均とに基づいて、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(e)とを具備する。
【0007】
また、本発明の第2の観点に係る顧客価値評価方法は、ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法であって、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを作成するステップ(a)と、ステップ(a)において作成されたデータベースに基づいて、顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ額に対して顧客の変更意思の割合を表す第1の式を対数ロジスティック曲線として求めるステップ(b)と、ステップ(a)において作成されたデータベースに基づいて、顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に対して顧客の変更意思の割合を表す第2の式を対数ロジスティック曲線として求めるステップ(c)と、ステップ(b)において求められた第1の式と、ステップ(c)において求められた第2の式とに基づいて、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(d)とを具備する。
【0008】
さらに、本発明の第1の観点に係る顧客価値評価システムは、ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するためのシステムであって、それぞれの顧客が企業を選択する際に考慮する価格と顧客サービスと企業イメージとのウエイトに関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを格納するための格納部と、それぞれの顧客について、当該企業の顧客サービスに対する第1の重み付け係数と、当該企業の企業イメージに対する第2の重み付け係数とを求め、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、第1の重み付け係数との積に比例する第1の値の相加平均を算出することにより、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求め、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、第2の重み付け係数との積に比例する第2の値の相加平均を算出することにより、当該企業の企業イメージに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求め、第1の値の相加平均と第2の値の相加平均とに基づいて、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求める演算部とを具備する。
【0009】
また、本発明の第2の観点に係る顧客価値評価方法は、ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するためのシステムであって、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを格納するための格納部と、格納部に格納されているデータベースに基づいて、顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ額に対して顧客の変更意思の割合を表す第1の式を対数ロジスティック曲線として求めると共に、顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に対して顧客の変更意思の割合を表す第2の式を対数ロジスティック曲線として求め、第1及び第2の式に基づいて、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求める演算部とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の質問を含むアンケート調査を行うことによって得られた情報にに基づいてデータベースを作成し、このデータベースを用いて演算を行うことにより、組織の顧客価値を客観的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下においては、企業の顧客価値として、電力会社の顧客価値を例として説明するが、本発明は、食品会社又はその他の企業等の顧客価値を評価する際にも適用することができる。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係る顧客価値評価システムの構成を示す。図1に示すように、この顧客価値評価システムは、各種のデータや命令を入力するために用いられるキーボードやマウス等の入力部10と、操作画面や算出された顧客価値を表示するCRT又はLCDディスプレイ等の表示部20と、入力部10及び表示部20と本体との接続を行うためのインタフェース30と、入力部10からインタフェース30を介して供給されるデータや命令を一時的に記憶するメモリ40と、各種の演算を行う中央演算装置(CPU)50と、CPU50に動作を行わせるためのソフトウェア(顧客価値評価プログラム)や顧客価値の算出において用いられるデータベース及びテーブルを記録するハードディスク等の記録媒体を制御する格納部60とによって構成される。
【0013】
これらの部分は、1つのコンピュータ内に収められていても良いし、別の場所に設置されてネットワークを介して接続されていても良い。また、記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、外付けハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いることもできる。
【0014】
ここで、CPU50とソフトウェア(顧客価値評価プログラム)とによって構成される機能ブロック51〜56について説明する。
データベース作成部51は、後で詳しく説明するアンケート調査によって得られたアンケート結果を企業毎に集計することにより、アンケート結果のデータベースを作成する。
【0015】
選択要因分析部52は、アンケート結果のデータベースに基づいて、顧客から見た企業の選択要因を分析する。値下げ率分析部53は、アンケート結果のデータベースに基づいて、顧客が企業を変更するために必要な値下げ率を分析する。継続期間分析部54は、アンケート結果のデータベースに基づいて、顧客が企業を変更するために必要な価格差の継続時間を分析する。
【0016】
顧客価値算出部55は、アンケート結果のデータベース、及び、選択要因分析部52〜継続期間分析部54によって得られた分析結果を表すテーブルに基づいて、顧客価値を算出する。表示処理部56は、顧客価値算出部55によって求められた顧客価値を表示部20に表示するための表示信号を生成する。
【0017】
次に、本発明の第1の実施形態に係る顧客価値評価方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る顧客価値評価方法を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、いくつかの企業を選び、各企業においてサンプルとして選ばれた社員200に対して、アンケート調査が行われる。その際に、企業間のサンプルの年齢を揃えることが望ましい。このアンケート調査においては、少なくとも以下の質問Q1〜Q4を行うことにする。
【0018】
Q1:電力会社を自由に選べることになった場合に、電力会社を選ぶ場合の基準として、次の2つの事項の内のどちらが重要だと思われるか?
Q11:「価格の安さ」と「知名度・評判の高さやイメージの良さ」
Q12:「価格の安さ」と「サービスの豊富さ」
Q13:「知名度・評判の高さやイメージの良さ」と「サービスの豊富さ」
これらの質問に対する回答は、次の選択肢から選択する。
A1a:左の方が重要
A1b:左の方がやや重要
A1c:同程度
A1d:右の方が重要
A1e:右の方がやや重要
【0019】
Q2:電力会社を自由に選べることになった場合に、何パーセント以上の価格差があれば、電力会社を変更するか?
この質問に対する回答は、1〜100%の数値を記入するか、又は、次の選択肢から選択する。
A2a:1%
A2b:2〜3%
A2c:4〜5%
A2d:6〜10%
A2e:11〜15%
A2f:16〜20%
A2g:21〜30%
A2h:31〜40%
A2i:41〜50%
A2j:51〜60%
A2k:61〜70%
A2l:71〜100%
【0020】
Q3:競争によって生じた価格差が時間の経過につれてなくなるとした場合に、何ヶ月以上価格差が継続すれば、電力会社を変更した意義があると考えるか?
この質問に対する回答は、1〜100ヶ月の数値を記入するか、又は、次の選択肢から選択する。
A3a:1ヶ月
A3b:2〜3ヶ月
A3c:4〜6ヶ月
A3d:7〜9ヶ月
A3e:10〜12ヶ月
A3f:1年超〜1年半以下(13〜18ヶ月)
A3g:1年半超〜2年以下(19〜24ヶ月)
A3h:2年超〜3年以下(25〜36ヶ月)
A3i:3年超〜4年半以下(37〜48ヶ月)
A3j:4年超〜(49〜100ヶ月)
A3k:いずれ価格差がなくなるのなら、意義は全くない。
【0021】
Q4:お宅の1ヶ月の電気代は平均すると大体いくらくらいか?
この質問に対する回答は、数値を記入するか、又は、次の選択肢から選択する。
A4a:5000円未満
A4b:5000円〜1万円未満
A4c:1万円〜1万5000円未満
A4d:1万5000円〜2万円未満
A4e:2万円〜3万円未満
A4f:3万円以上
【0022】
次に、ステップS2において、データベース作成部51が、アンケート結果を企業毎に集計することにより、アンケート調査に対する回答に基づいて、アンケート結果のデータベースを作成する。
【0023】
次に、ステップS3において、図1に示す選択要因分析部52が、アンケート結果のデータベースに基づいて、質問Q1に対するアンケート結果のデータを処理することにより、需要家から見た電力会社の選択要因を分析する。
【0024】
ところで、同一系統に連系されているすべての需要家は、基本的に、周波数や電圧等が同じ品質で、停電等に関しネットワーク内で同じ信頼性の電気を受け取る。これらの点に関しては、電力会社を変更しても変化しない。従って、需要家は、品質や信頼性に基づいて電力会社を選択することはできない。その代わりに、需要家は、価格と、省エネ診断等のサービスの充実と、企業ブランドへの愛着とに基づいて電力会社を選択する。
【0025】
このような理由から、電力会社の選択要因として、価格と顧客サービスと企業イメージの3つの選択要因を取り上げている。アンケート調査の質問Q1は、これら3つの選択要因間で一対比較を行うように構成されているので、質問Q1に対する回答を分析することにより、これら3つの選択要因のウエイトを求めることができる。
【0026】
選択要因分析部52は、質問Q1に対する回答A1a〜A1eを数値に置き換える。例えば、回答A1a(左の方が重要)は「4:1=4」に置き換えられ、回答A1b(左の方がやや重要)は「2:1=2」に置き換えられ、回答A1c(同程度)は「1:1=1」に置き換えられ、回答A1d(右の方が重要)は「1:4=0.25」に置き換えられ、回答A1e(右の方がやや重要)は「1:2=0.5」に置き換えられる。さらに、選択要因分析部52は、これらの数値に基づいて、3つの選択要因のウエイトを求める。
【0027】
図3は、アンケート結果を分析することにより得られる3つの選択要因のウエイトを示す図である。図3においては、複数の需要家についての平均値が示されている。図3に示すように、今回のアンケート調査においては、ウエイトの高いものから、価格、顧客サービス、企業イメージの順となっている。
【0028】
次に、ステップS4において、図1に示す値下げ率分析部53が、アンケート結果のデータベースに基づいて、質問Q2に対するアンケート結果のデータを処理することにより、需要家が電力会社を変更するために必要な値下げ率を分析する。価格要因は、電力会社の選択要因として最も重要であるが、本実施形態においては、新規参入した電力会社の値下げ率に対して需要家がどのような反応を示すかを推定するために、表明選好法の1つである仮想市場法(CVM:Contingent Valuation Method)を採用している。
【0029】
値下げ率分析部53は、質問Q2に対する回答の選択肢として示されている数値の範囲を1つの数値に置き換える。例えば、回答A2d(6〜10%)は8%に置き換えられ、回答A2e(11〜15%)は13%に置き換えられる。
【0030】
その結果、図4に示すように、電力会社を変更するために必要な値下げ率の分布が得られる。図4において、横軸は、供給信頼度が同一という条件の下で、企業イメージやサービスが異なる電力会社に変更する場合の値下げ率(%)を表しており、縦軸は、需要家の該当割合(%)を表している。今回のアンケート調査においては、中央値が20%、平均値が19.6%となっている。
【0031】
次に、ステップS5において、図1に示す継続期間分析部54が、アンケート結果のデータベースに基づいて、質問Q3に対するアンケート結果のデータを処理することにより、需要家が電力会社を変更するために必要な価格差の継続時間を分析する。電力(海外)や電話や航空といった公益事業における競争の事例を見ると、新規参入した会社に対して既存の会社も値下げで対抗するので、2割以上の需要家が会社を変更する10%程度の価格差が長期間継続することは考えにくい。そこで、電力会社の場合に、既存の電力会社も値下げで対抗する状況を想定し、価格差がどの程度の期間存在することが電力会社を変更するための条件となるかについて、質問Q3に対するアンケート結果に基づいて分析を行う。
【0032】
継続期間分析部54は、質問Q3に対する回答の選択肢として示されている数値の範囲を1つの数値に置き換える。例えば、回答A3c(4〜6ヶ月)は5ヶ月に置き換えられ、回答A3d(7〜9ヶ月)は8ヶ月に置き換えられ、回答A3kは10年に置き換えられる。
【0033】
その結果、図5に示すように、電力会社を変更するために必要な価格差継続期間の分布が得られる。図5において、横軸は、供給信頼度が同一という条件の下で、企業イメージやサービスが異なる電力会社に変更する場合の価格差継続期間(月)を表しており、縦軸は、需要家の該当割合(%)を表している。今回のアンケート調査においては、平均値が18.9ヶ月と、1年以上の価格差の継続が期待されている。
【0034】
さらに、図1に示す顧客価値算出部55が、質問Q4に対する回答の選択肢として示されている数値の範囲を1つの数値に置き換える。例えば、回答A4c(1万円〜1万5000円未満)は1万2500円に置き換えられ、回答A4f(3万円以上)は4万円に置き換えられる。
【0035】
以上の分析によって、図6に示すようなテーブルが得られる。このテーブルは、図1に示す格納部60によって記録媒体に記録される。
ステップS6において、図1に示す顧客価値算出部55が、このテーブルに基づいて顧客価値を算出する。即ち、顧客価値算出部55は、質問Q1に対するアンケート結果に基づいて得られた電力会社の選択要因(ウエイト)と、質問Q2に対するアンケート結果に基づいて得られた電力会社を変更するために必要な値下げ率と、質問Q3に対するアンケート結果に基づいて得られた電力会社を変更するために必要な価格差継続期間と、質問Q4に対するアンケート結果に基づいて得られた需要家の単位期間当りの電力料金とに基づいて、顧客価値を定量的に求めることができる。以下に、その手法について説明する。
【0036】
電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客価値CBV(円)は、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客サービス価値CSV(円)と、電力会社iの家庭用需要家1件当りの企業イメージ価値CIV(円)とに分割することが可能である。
CBV=CSV+CIV ・・・(1)
【0037】
ここで、電力会社iの複数の家庭用需要家の中の回答者kが1ヶ月に支払う電力料金をEP(円)とし、この回答者kが電力会社を変更するために必要な値下げ率をPR(%)とし、この回答者kが電力会社を変更するために必要な価格差継続時間をTP(月)とする。また、この回答者kについて、電力会社iの顧客価値に占める顧客サービスのウエイト(重み付け係数)をWSとし、電力会社iの顧客価値に占める企業イメージのウエイト(重み付け係数)をWIとする(ただし、WS+WI=1)。さらに、電力会社iについての調査サンプル数をnとする。
【0038】
これらを用いて、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客サービス価値CSV、及び、電力会社iの家庭用需要家1件当りの企業イメージ価値CIVが、次式(2)及び(3)によってそれぞれ表される。
【数1】

【数2】

【0039】
即ち、電力料金と値下げ率と価格差継続時間と顧客サービスの重み付け係数との積に比例する値の相加平均を算出することにより、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客サービス価値CSV(円)が求められる。また、電力料金と値下げ率と価格差継続時間と企業イメージの重み付け係数との積に比例する値の相加平均を算出することにより、電力会社iの家庭用需要家1件当りの企業イメージ価値CIV(円)が求められる。ここで、比例定数として1/2が掛けられているのは、新規参入した電力会社に対して既存の電力会社も値下げで対抗するので、価格差が時間と共に減少することを表したものである。さらに、顧客サービス価値CSV(円)と企業イメージ価値CIV(円)とを加算することにより、トータルの顧客価値CBV(円)が求められる。
【0040】
その結果、図7に示すように、値下げ額と価格差継続時間との関係において顧客価値が表される。図7においては、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客価値CBV(円)が、ハッチングされた三角形の面積として表されている。この三角形は、顧客サービス価値の部分(左側)と企業イメージ価値の部分(右側)とに分割されており、それらの部分の境界線によって、電力会社の選択要因が顧客サービスと企業イメージとのいずれにウエイトを置くものであるかを表すことができる。
【0041】
一般に、ブランドには、大きく分けてコーポレートブランドとプロダクトブランドとがあり、さらに、コーポレートブランドは、ある商品群の製造元(企業)を表す場合と、ある商品群の販売元(企業)を表す場合とがある。本モデルにおける顧客価値評価においては、図7からも分るように、ある商品群の販売元に対する需要家の選択行動に着目している。これは、コーポレートブランドとプロダクトブランドとの双方の顧客価値評価において利用可能である。
【0042】
ただし、電力会社の顧客価値に関しては、多様な燃料を投入しても算出される電気は同一であるという商品の特殊性に加えて、これまで地域独占で電気を販売してきた経緯から、経営多角化によって多数の商品群を有する訳ではない。従って、現段階においては、電気とガスとのエネルギー選択のような例外を除いて、プロダクトブランドの顧客価値評価は意味がない。そこで、本実施形態においては、電気の販売元を評価するというコーポレートブランドの視点から顧客価値を評価することになる。
【0043】
このような手法を用いて、日本の複数の電力会社に対して家庭用需要家の顧客価値を算出した結果を、図8に示す。図8においては、それぞれの電力会社の家庭用需要家1件当りの顧客価値が金額として示されている。さらに、この値に顧客数を掛けることにより、それぞれの電力会社における顧客価値の総額を求めることができる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態に係る顧客価値評価方法について説明する。
価格に対する家庭用需要家の反応は、値下げ額、価格差継続時間ともに、対数ロジスティック曲線に当てはめると適合性が高い。そこで、第2の実施形態においては、推定された対数ロジスティック曲線に基づいて顧客価値を評価する。他の点に関しては、第1の実施形態に係る顧客価値評価方法と同様である。
【0045】
図4に示すような、電力会社を変更するために必要な値下げ率に対して、1ヶ月当りの電気料金を乗じれば、電力会社を変更するために必要な値下げ額となる。データベースに基づいて、値下げ額の度数分布に対して累積度数分布曲線をあてはめることにより、顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ額に対して顧客の変更意思の割合を表す第1の推定式を求めて、任意の値下げ額に対して顧客が変更意思を示す割合を推定する。
【0046】
図9は、米国における値下げ額と顧客が変更意思を示す割合との関係を表す図である。新規参入購入先の値下げ額(横軸)が大きくなればなるほど、顧客(家庭用需要家)が購入先の変更意思を示す割合(縦軸)が増加する。この累積度数分布曲線による推定においては、曲線が値下げ額の度数分布にあてはまる具合を適合度に基づいて吟味した結果、次式(4)によって表される対数ロジスティック曲線を採用した。
【数3】

【0047】
図9においては、パラメータを、α=1.84、β=20.57、γ=−0.97に設定している。この推定値によれば、平均値が34.6ドル、中央値が19.6ドルとなり、5ドルの値下げで9.3%の需要家が購入先を変更し、10ドルの値下げで24.0%の需要家が購入先を変更することになる。
【0048】
次に、データベースに基づいて、電力会社を変更するために必要な価格差継続時間の度数分布に対して累積度数分布曲線をあてはめることにより、顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続時間に対して顧客の変更意思の割合を表す第2の推定式を求めて、任意の価格差継続時間に対して顧客が変更意思を示す割合を推定する。
【0049】
図10は、米国における価格差継続時間と顧客が変更意思を示す割合との関係を表す図である。既存の電力会社と新規参入購入先との価格差継続時間が大きくなればなるほど、顧客(家庭用需要家)が既存の電力会社に留まる割合、即ち、購入先の変更意思を示さらい割合(縦軸)が減少する。この累積度数分布曲線による推定においては、価格差継続時間の分布に曲線があてはまる具合を適合度に基づいて吟味した結果、式(4)によって表されるのと同様の対数ロジスティック曲線を採用した。
【0050】
この推定値によれば、平均値が23.6ヶ月、中央値が7.3ヶ月となり、価格差継続時間が5ヶ月の場合には64.1%の需要家が購入先を変更せず、価格差継続時間が10ヶ月の場合には39.0%の需要家が購入先を変更しないことになる。
【0051】
値下げ額と価格差継続時間との間の関係を様々な属性との関連で調査した結果、両者の間には、どちらかといえば正の相関が認められるものの、相関係数等から判断して互いに独立しているものと判断される。これは、今回調査した幾つかの属性を用いて層別に検討しても、同様の結果となる。このような特徴を踏まえて、上記の第1の推定式と第2の推定式とに基づいて、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客価値CBVを、次式(5)によって表す。
【数4】

ここで、電力会社iの家庭用需要家が購入先を変更するために必要な1ヶ月当りの値下げ額をxとし(0<x<∞)、第1の推定式におけるパラメータをα、β、γとし、電力会社iの家庭用需要家が電力会社を変更するために必要な価格差継続時間をyとし(0<y<∞)、第2の推定式におけるパラメータをλ、μ、νとし、サンプルの電気料金の平均値と全体の電気料金の平均値との調整のための電気料金補正係数をκとしている。即ち、サンプルの電気料金の平均値と全体の電気料金の平均値とに基づいて電気料金補正係数κを算出し、回答者のばらつきによるバイアスの影響を極力排除し、現実的な値になるように工夫している。
【0052】
第1の実施形態におけるのと同様に、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客価値CBVは、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客サービス価値CSVと、電力会社iの家庭用需要家1件当りの企業イメージ価値CIVとに分割することが可能である。
CBV=CSV+CIV
【0053】
ここで、データベースに基づいて、家庭用需要家全体について、電力会社iの顧客価値に占める顧客サービスのウエイト(重み付け係数)の幾何学平均値WSと、電力会社iの顧客価値に占める企業イメージのウエイト(重み付け係数)の幾何学平均値WIとを求める(ただし、WS+WI=1)。これらを用いて、電力会社iの家庭用需要家1件当りの顧客サービス価値CSV、及び、電力会社iの家庭用需要家1件当りの企業イメージ価値CIVが、次式(6)及び(7)によってそれぞれ表される。
【数5】

【数6】

【0054】
図11に、これらの数式に基づいて、米国の複数の電力会社に対して家庭用需要家の顧客価値を算出した結果を示す。図11においては、米国の複数の電力会社における家庭用需要家1件当りの顧客価値が、顧客サービス価値と企業イメージ価値とに分けて示されている。なお、顧客価値は、105円/ドルのレートで円に換算している。
【0055】
図11に示すように、米国においては、日本と比較して、電力会社の顧客価値の平均値が高いことが分る。これは、米国の家庭用需要家が、値下げ額に対して敏感には反応しないことによる結果である。米国の家庭用需要家における1か月当りの平均電気料金は、日本と比較して若干少ない。その中で、電力自由化が導入されている米国の州において、既存の電力会社が高い評価を得ている点が注目される。電力自由化の導入と共に、購入先変更の面で大きな変化は見られていないものの、既存の電力会社に対する信頼感は上昇しているようである。
【0056】
それぞれの電力会社の家庭用需要家1件当りの顧客価値に、その家庭用需要家の数を乗じることによって、総顧客価値を算出することができる。ただし、本実施形態においては、家庭用需要家のみを調査対象としているので、業務用・産業用の需要家までを含めた全体の総顧客価値は不明である。そこで、全体の総顧客価値を近似値で把握するために、業務用・産業用の需要家についても、家庭用需要家と同様に、支払い電気料金に比例して顧客価値が存在すると仮定して、全体の総顧客価値を算出した。
【0057】
図12は、米国の複数の電力会社に対して全体の総顧客価値を算出した結果を示す図である。図12においては、米国の複数の電力会社における全体の総顧客価値が、全体の総顧客サービス価値と全体の総企業イメージ価値とに分けて示されている。
【0058】
さらに、図12においては、全体の総顧客価値が電力会社の総資産に占める割合である総資産顧客価値率も示されている。これにより、財務データとの関係を確認することもできる。図12に示すように、全体の総顧客価値が電力会社の総資産に占める割合は、電力会社によって5〜20%程度と開きがあり、米国平均で11.2%となっている。長期的な収益の改善に直接貢献する需要家を数多く所有しているという意味において、この総資産顧客価値率を引き上げることは、財務的な健全性の面での1つの目標ともなる。
【0059】
米国や日本の電力会社の貸借対照表において、無形固定資産は、地役権、諸施設利用権、地上権、土地賃借権、水利権等に限定されており、上記のような顧客価値を資産として計上することは行われていなかった。今回の顧客価値評価において算出された全体の総顧客価値を見ると、米国平均で11.7億ドルであり、その値は、総資産の中でも大きな割合を占めることが明らかにされた。
【0060】
ところで、顧客価値は、需要家毎の価格に対する反応に基づいて評価される。この評価においては、値下げに対する需要家の反応を、アンケート調査等を行うことにより把握しなければならず、調査のためのコストや分析のための労力を要する。一方、図13に示すように、顧客価値は、需要家が1ヶ月当りに支払う電気料金と関連性が高いことが明らかになっている。ここで、需要家が1ヶ月当りに支払う電気料金xと顧客価値yとの関係は、次式(7)で表される。
y=1.445+0.00437x ・・・(7)
この場合の相関係数Rは、0.39となっており、ある程度の相関が存在することが分る。需要家の調査に基づく顧客価値評価が理想的であることは言うまでもないが、その実施が困難な場合には、単に1ヶ月当りに支払う電気料金に基づいて家庭用需要家をセグメンテーションしても、ある程度近似的な評価が得られるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、企業が有するブランド価値の中でも、顧客がそのブランドをどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法及びシステムにおいて利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る顧客価値評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る顧客価値評価方法を示すフローチャートである。
【図3】アンケート結果を分析することにより得られる3つの選択要因のウエイトを示す図である。
【図4】電力会社を変更するために必要な値下げ率の分布を示す図である。
【図5】電力会社を変更するために必要な価格差継続期間の分布を示す図である。
【図6】アンケート結果を分析することにより得られるテーブルを示す図である。
【図7】値下げ額と価格差継続時間との関係において顧客価値を示す図である。
【図8】日本の複数の電力会社に対して家庭用需要家の顧客価値を算出した結果を示す図である。
【図9】米国における値下げ額と顧客が変更意思を示す割合との関係を表す図である。
【図10】米国における価格差継続時間と顧客が変更意思を示す割合との関係を表す図である。
【図11】米国の複数の電力会社に対して家庭用需要家の顧客価値を算出した結果を示す図である。
【図12】米国の複数の電力会社に対して全体の総顧客価値を算出した結果を示す図である。
【図13】需要家が1ヶ月当りに支払う電気料金と顧客価値との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 入力部
20 表示部
30 インタフェース
40 メモリ
50 CPU
51 データベース作成部
52 選択要因分析部
53 値下げ率分析部
54 継続期間分析部
55 顧客価値算出部
56 表示処理部
60 格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法であって、
それぞれの顧客が企業を選択する際に考慮する価格と顧客サービスと企業イメージとのウエイトに関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを作成するステップ(a)と、
それぞれの顧客について、当該企業の顧客サービスに対する第1の重み付け係数と、当該企業の企業イメージに対する第2の重み付け係数とを求めるステップ(b)と、
それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、前記第1の重み付け係数との積に比例する第1の値の相加平均を算出することにより、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(c)と、
それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、前記第2の重み付け係数との積に比例する第2の値の相加平均を算出することにより、当該企業の企業イメージに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(d)と、
第1の値の相加平均と第2の値の相加平均とに基づいて、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(e)と、
を具備する顧客価値評価方法。
【請求項2】
ステップ(c)が、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、前記第1の重み付け係数との積の半分に相当する第1の値の相加平均を算出することを含み、
ステップ(d)が、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、前記第2の重み付け係数との積の半分に相当する第2の値の相加平均を算出することを含み、
ステップ(e)が、第1の値の相加平均と第2の値の相加平均とを加算することにより、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めることを含む、
請求項1記載の顧客価値評価方法。
【請求項3】
ステップ(a)が、所定数の需要家に対してアンケート調査を行うことによって、複数の企業に関する情報を含むデータベースを作成することを含み、
ステップ(e)が、複数の企業について顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めてグラフィック表示することを含む、
請求項1又は2記載の顧客価値評価方法。
【請求項4】
ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するための方法であって、
それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを作成するステップ(a)と、
ステップ(a)において作成されたデータベースに基づいて、顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ額に対して顧客の変更意思の割合を表す第1の式を対数ロジスティック曲線として求めるステップ(b)と、
ステップ(a)において作成されたデータベースに基づいて、顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に対して顧客の変更意思の割合を表す第2の式を対数ロジスティック曲線として求めるステップ(c)と、
ステップ(b)において求められた第1の式と、ステップ(c)において求められた第2の式とに基づいて、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求めるステップ(d)と、
を具備する顧客価値評価方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、それぞれの顧客が企業を選択する際に考慮する価格と顧客サービスと企業イメージとのウエイトに関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを作成することを含み、
ステップ(d)が、データベースに基づいて、当該企業の顧客サービスに対する第1の重み付け係数と、当該企業の企業イメージに対する第2の重み付け係数とを求め、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額と前記第1及び第2の重み付け係数とに基づいて、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額と、当該企業の企業イメージに関する顧客1人当りの顧客価値とを求めることを含む、請求項4記載の顧客価値評価方法。
【請求項6】
ステップ(d)が、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額に顧客数を乗じることにより、当該企業の顧客全体に対する顧客価値を表す金額を求めることを含む、請求項4記載の顧客価値評価方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、所定数の需要家に対してアンケート調査を行うことによって、複数の企業に関する情報を含むデータベースを作成することを含み、
ステップ(d)が、複数の企業について顧客1人当り又は顧客全体に対する顧客価値を表す金額を求めてグラフィック表示することを含む、
請求項4〜6のいずれか1項記載の顧客価値評価方法。
【請求項8】
ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するためのシステムであって、
それぞれの顧客が企業を選択する際に考慮する価格と顧客サービスと企業イメージとのウエイトに関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを格納するための格納部と、
それぞれの顧客について、当該企業の顧客サービスに対する第1の重み付け係数と、当該企業の企業イメージに対する第2の重み付け係数とを求め、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、前記第1の重み付け係数との積に比例する第1の値の相加平均を算出することにより、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求め、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金と、前記第2の重み付け係数との積に比例する第2の値の相加平均を算出することにより、当該企業の企業イメージに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求め、第1の値の相加平均と第2の値の相加平均とに基づいて、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求める演算部と、
を具備する顧客価値評価システム。
【請求項9】
ある企業の複数の顧客が当該企業をどのように見ているかを表す顧客価値を客観的に評価するためのシステムであって、
それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを格納するための格納部と、
格納部に格納されているデータベースに基づいて、顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ額に対して顧客の変更意思の割合を表す第1の式を対数ロジスティック曲線として求めると共に、顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に対して顧客の変更意思の割合を表す第2の式を対数ロジスティック曲線として求め、第1及び第2の式に基づいて、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額を求める演算部と、
を具備する顧客価値評価システム。
【請求項10】
前記格納部が、それぞれの顧客が企業を選択する際に考慮する価格と顧客サービスと企業イメージとのウエイトに関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な値下げ率に関する情報と、それぞれの顧客が当該企業を変更するために必要な価格差継続期間に関する情報と、それぞれの顧客が単位期間当りに当該企業に支払っている料金に関する情報とを含むデータベースを格納しており、
前記演算部が、データベースに基づいて、当該企業の顧客サービスに対する第1の重み付け係数と、当該企業の企業イメージに対する第2の重み付け係数とを求め、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額と前記第1及び第2の重み付け係数とに基づいて、当該企業の顧客サービスに関する顧客1人当りの顧客価値を表す金額と、当該企業の企業イメージに関する顧客1人当りの顧客価値とを求める、請求項9記載の顧客価値評価システム。
【請求項11】
前記演算部が、当該企業の顧客1人当りの顧客価値を表す金額に顧客数を乗じることにより、当該企業の顧客全体に対する顧客価値を表す金額を求める、請求項9記載の顧客価値評価システム。
【請求項12】
前記格納部が、複数の企業に関する情報を含むデータベースを格納し、
前記演算部が、複数の企業について顧客1人当り又は顧客全体に対する顧客価値を表す金額を求めて表示部にグラフィック表示させる、
請求項8〜11のいずれか1項記載の顧客価値評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−216008(P2006−216008A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145571(P2005−145571)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)