説明

顧客行動追跡型映像配信システム

【課題】 店舗や公共施設などの所定の範囲内において、個々の顧客行動を分析し、その結果をデジタルサイネージの適切な映像表示に利用する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 顔認識情報データベースおよび検出エリア履歴データベースを備えたホストシステムと、このホストシステムに映像を視聴する人物を撮影した画像データを送信しコンテンツを受信して表示する複数のカメラ付きデジタルサイネージ端末を備える。ホストシステムは、端末から送信された画像データを顔認識情報データベースに登録し、その顧客向けのコンテンツを端末に送信して表示させる。その際、データベースに登録された情報から顧客の行動履歴を分析して最適コンテンツを選択して表示させる。カメラ付きデジタルサイネージ端末は、ホストシステムから送信されたコンテンツを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗や公共施設などの所定の範囲内における顧客の行動を分析して、適切な広告等の映像を提供する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
店舗や公共施設などで、広告映像を表示するために、電子看板(digital singnage:デジタルサイネージ)が広く用いられている。最近では、施設内の各所に設置されたデジタルサイネージにカメラを備えて、そのデジタルサイネージを見る人物の顔を認識し、その人物の年齢や表情を分析して、人物毎に表示する映像を制御するシステムが普及しつつある。
【0003】
下記特許文献1には、店舗内に複数設置されたカメラで顔認識し、顧客の購買行動を記録したり、広告を見ている人と購買した人の一致をみたりする技術が提案されている。また、特許文献2には、店舗内に複数設置されたカメラで顔認識をし、人物毎の滞在時間と購入行動を記録する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−113692
【特許文献2】特開2005−267611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術は、顧客の行動を分析してマーケティングに役立つデータを収集するのに有効であるが、収集したデータを利用してリアルタイムにデジタルサイネージに表示する映像を制御するものではない。
【0006】
また、特許文献2に開示されたデジタルサイネージシステムでは、顔認識によって検出された個々に対する統計情報(例えば、1日のうちの検出回数)に基づき、適切な映像を選択し表示することで効果的な映像表示方法を提案しているが、顔認識により特定した個人の行動を追跡し収集した情報を分析して、適切な映像提供に利用する手段については言及していない。
【0007】
本発明の目的は、店舗や公共施設などの所定の範囲内において、個々の顧客行動を分析し、その結果をデジタルサイネージの適切な映像表示に利用する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の顧客行動追跡型映像配信システムは、顔認識情報データベースおよび検出エリア履歴データベースを備えたホストシステムと、このホストシステムに映像を視聴する人物を撮影した画像データを送信およびホストシステムからコンテンツを受信して表示する複数のカメラ付きデジタルサイネージ端末を備える。前記ホストシステムは、カメラ付きデジタルサイネージ端末から送信された画像データを顔認識情報データベースに登録するとともに、その顧客向けのコンテンツをその端末に表示する。その履歴情報は検出エリア履歴データベースに登録する。ホストシステムは、データベースに登録された情報から顧客の行動履歴を分析して最適コンテンツを選択して端末に送信して表示させる。前記カメラ付きデジタルサイネージ端末は、ホストシステムから送信されたコンテンツを表示する。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、ホストシステムと、該ホストシステムに接続された複数のカメラ付きデジタルサイネージ端末とを備えた顧客行動追跡型映像配信システムであって、前記ホストシステムは、検出した顔データとその顔データを分析して取得した性別および年齢層を登録する顔認識情報データベースと、顔データが検出されたエリアと、その顔データの人物向けに表示したコンテンツを示す表示コンテンツIDと、その顔データが検出された日時を示すイベント発生日時とを含む履歴情報を登録する検出エリア履歴データベースと、前記カメラ付きデジタルサイネージ端末から送信される画像データを受信する手段と、受信した画像データから顔データを検出する手段と、検出した顔データを前記顔認識情報データベースに登録されているデータと照合し、既に登録済みの人物の顔データか否かを判定する手段と、前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データで無かったときは、前記検出した顔データに基づいて性別と年齢層を判定し、その顔データとともにそれらの判定結果を前記顔認識情報データベースに登録し、判定結果の性別と年齢層に応じたコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録する手段と、前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データであったときは、その顔データに対応する前記顔認識情報データベースの登録情報と前記検出エリア履歴データベース内の履歴情報に基づいてコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録する手段とを備え、前記カメラ付きデジタルサイネージ端末は、カメラで撮影した画像データを前記ホストシステムに送信する手段と、前記ホストシステムから送信されるコンテンツを表示する手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、ホストシステムと、該ホストシステムに接続された複数のカメラ付きデジタルサイネージ端末とを備えた顧客行動追跡型映像配信システムにおける顧客行動追跡型映像配信方法であって、前記ホストシステムには、検出した顔データとその顔データを分析して取得した性別および年齢層を登録する顔認識情報データベースと、顔データが検出されたエリアと、その顔データの人物向けに表示したコンテンツを示す表示コンテンツIDと、その顔データが検出された日時を示すイベント発生日時とを含む履歴情報を登録する検出エリア履歴データベースとを設け、前記カメラ付きデジタルサイネージ端末が、カメラで撮影した画像データを前記ホストシステムに送信するステップと、前記ホストシステムが、該画像データを受信するステップと、前記ホストシステムが、受信した画像データから顔データを検出するステップと、前記ホストシステムが、検出した顔データを前記顔認識情報データベースに登録されているデータと照合し、既に登録済みの人物の顔データか否かを判定するステップと、前記ホストシステムが、前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データで無かったときは、前記検出した顔データに基づいて性別と年齢層を判定し、その顔データとともにそれらの判定結果を前記顔認識情報データベースに登録し、判定結果の性別と年齢層に応じたコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録するステップと、前記ホストシステムが、前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データであったときは、その顔データに対応する前記顔認識情報データベースの登録情報と前記検出エリア履歴データベース内の履歴情報に基づいてコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、店舗や公共施設などの所定の範囲において、顧客の行動を追跡し収集した情報を、デジタルサイネージ端末での適切な映像表示に、リアルタイムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態例を示す顧客行動追跡型映像配信システムを備えた施設の概念的な配置図である。
【図2】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図である。
【図3】縦型カメラ付きデジタルサイネージ端末の概念的な外形図である。
【図4】横型カメラ付きデジタルサイネージ端末の概念的な外形図である。
【図5】ホストシステムの顔認識情報データベースに格納されているデータの構成図である。
【図6】ホストシステムの検出エリア履歴データベースに格納されているデータの構成図である。
【図7】ホストシステムのコンテンツ管理データベースに格納されているデータの構成図である。
【図8】顔認識処理の概要を示すフローチャートである。
【図9】追跡型コンテンツ表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した顧客行動追跡型映像配信システムの一実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態の一例を示す顧客行動追跡型映像配信システムを備えた施設の概念的な配置図である。図1に示すように、施設101は、ある程度の順路を備えた施設である。例えば、美術館や博物館、イベント会場を想定している。顧客は、入口102から施設内に入場し、順路に従うか、または自由に、各施設内エリア105を徘徊したのち、出口103から退場する。104はカメラ付きデジタルサイネージ端末を示す。
【0015】
図2は、本実施形態の顧客行動追跡型映像配信システムの一構成例を示すシステム構成図である。この顧客行動追跡型映像配信システムは、顔認識情報データベース207と検出エリア履歴データベース208とコンテンツ管理データベース209を備えたホストシステム203と、このホストシステム203に顔データを送信し表示用映像コンテンツを受信する複数のカメラ付きデジタルサイネージ端末201,202とを備える。201は縦型の端末、202は横型の端末を示す。カメラ付きデジタルサイネージ端末201,202は、ネットワーク206によってホストシステム203と接続されている。
【0016】
図3は、縦型カメラ付きデジタルサイネージ端末201の概念的な外形図である。顧客の顔を撮影するカメラ301とディスプレイ部302を備えている。
【0017】
図4は、横型カメラ付きデジタルサイネージ端末202の概念的な外形図である。顧客の顔を撮影するカメラ401とディスプレイ部402を備えている。
【0018】
図2のホストシステム203の顔認識情報データベース207には、カメラ301,401によって撮影された顧客の顔データの認識結果が格納される。検出エリア履歴データベース208には、顧客の顔データがカメラ301,401によって撮影されたエリアの履歴と、表示した映像コンテンツの履歴が登録される。コンテンツ管理データベース209には、カメラ付きデジタルサイネージ端末201,202に表示する映像コンテンツが登録されている。
【0019】
ホストシステム203は、顔データ処理部204と、追跡型コンテンツ表示処理部205を備える。顔データ処理部204は、顔認識情報データベース207と検出エリア履歴データベース208の登録・更新処理を行う。追跡型コンテンツ表示処理部205は、コンテンツ管理データベース209の登録・更新処理と、顔認識情報データベース207のデータと検出エリア履歴データベース208のデータを参照して、カメラ付きデジタルサイネージ端末201,202に映像コンテンツを配信する処理を実行する。
【0020】
図5は、顔認識情報データベース207に格納される顔データおよび認識結果の内容例を示す。顔認識情報データベース207は、顔認識個体管理ID501、性別502、年齢層503、画像データ504、登録日時505、および、更新日時506の各フィールドを備える。顔認識個体管理ID501は、1レコードすなわち1人の人物の顔データとその顔認識結果を特定するためのIDである。レコードの登録時に登録日時505が設定され、更新時に更新日時506が設定される。
【0021】
例えば、30代男性1名が、図1の施設内エリアA(105−a)に設置されたデジタルサイネージ端末104の付近に立ち寄った場合、該デジタルサイネージ端末104は、カメラ301(または401)で撮影した画像データをホストシステム203に送信する。ホストシステム203の顔データ処理部204は、受信した画像データを分析し、図5に示すように、顔認識個体管理ID501として「af8b2F20020101224133359003」、性別502として「M」(男性を表す)、年齢層503として「30」、画像データ504として「af8b2F20020101224133359003.jpg」を登録し、そのときの日時を登録日時505として例えば「2010/12/24 13:35:59」と登録する。なお、性別502と年齢層503を推定し、登録する方法は任意である。例えば、性別・年代別に顔画像から得られる複数種類の特徴パラメータ(目、眉、頬骨、鼻、肌色)についてモデルデータを求めておき、今回受信した画像データ504から得られた特徴パラメータの組み合わせが、どのモデルデータに最も適合するかを判別し、最も適合すると判別したモデルデータに対応する性別・年齢層を選択するようにしてもよい。
【0022】
図6は、検出エリア履歴データベース208に格納される検出エリア履歴情報の内容例を示す。検出エリア履歴データベース208は、顔認識個体管理ID601、イベント連番602、検出エリアNo603、表示コンテンツID604、および、イベント発生日時605の各フィールドを備える。顔認識個体管理ID601とイベント連番602によって、1レコードすなわち一意の検出エリア履歴情報を特定する。イベント連番は、その人物がデジタルサイネージ端末104で捕捉される毎に1から順に付けた連番である。
【0023】
例えば、20代男性1名が最初にエリアBのデジタルサイネージ端末104で捕捉された場合、上記図5の顔認識情報データベース207に顔認識個体管理IDが「af8afM20020101224122134001」のレコードが登録され、さらに図6の検出エリア履歴データベース208にこの人物の検出エリア履歴のレコードが生成され、顔認識個体管理IDとして「af8afM20020101224122134001」、イベント連番602として「1」、検出エリアNo603として「B」、イベント発生日時605としてその時点の日時「2010/12/24 09:11:15」が登録される。また、この人物に対して最適なコンテンツが選択されて当該デジタルサイネージ端末104で表示されたとき、そのコンテンツID「gr3546」が、表示コンテンツID604として登録される。
【0024】
さらに、この人物が施設内を移動し、次にエリアDのデジタルサイネージ端末104で捕捉されると、同じ顔認識個体管理ID601で、イベント連番602が「2」のレコードが生成され、検出エリアNo603として「D」、イベント発生日時605として「2010/12/24 12:21:36」が登録される。また、この人物に対して最適なコンテンツが選択されて当該デジタルサイネージ端末104で表示されたとき、そのコンテンツID「ht0025」が、表示コンテンツID604として登録される。このような検出エリア履歴情報により、履歴の管理をおこなう。
【0025】
図7は、コンテンツ管理データベース209に格納されるコンテンツ管理情報の内容例を示す。コンテンツ管理データベース209は、コンテンツID701、対象性別702、年齢層MIN703、年齢層MAX704、表示エリアNo705、コンテンツグループ706、キーワード707、データ形式708、有効期限FROM709、有効期限TO710、データパス711、および、ファイルサイズ712の各フィールドを備える。
【0026】
コンテンツID701は、1レコードすなわちコンテンツ情報を一意に特定するIDである。対象性別702、年齢層MIN703、および年齢層MAX704は、当該コンテンツが対象とする性別、年齢層の最小値、および年齢層の最大値を示す。表示エリアNo705は、当該コンテンツをどの表示エリアのデジタルサイネージ端末に出力するかを示す。コンテンツグループ706、キーワード707、およびデータ形式708は、当該コンテンツが属するグループ、当該コンテンツに関するキーワード、および当該コンテンツのデータ形式を示す。有効期限FROM709および有効期限TO710は、当該コンテンツをいつからいつまで出力するかの期間を示す。データパス711およびファイルサイズ712は、当該コンテンツのファイルが存在するパスとそのファイルサイズを示す。
【0027】
例えば、自動車メーカーのCMコンテンツを登録する場合、コンテンツID701として「fx0033」、対象性別702として「M」、年齢層MIN703として「20」、年齢層MAX704として「50」、表示エリアNo705として「A,D,E」、コンテンツグループ706として「販促CM」、キーワード707として「車」、データ形式708として「MPEG4」、有効期限FROM709として「2010/02/01」、有効期限TO710として「2010/04/30」、データパス711として「CONTENT/sales/fx0033.mp4」、ファイルサイズ712として「1,463,213,156」というように登録する。
【0028】
以下、以上のように構成された顧客行動追跡型映像配信システムの動作を説明する。
【0029】
図8は、ホストシステム203の顔認識処理の概要を示すフローチャートである。ホストシステム203は、カメラ付きデジタルサイネージ端末201,202のカメラで撮影した画像データを受信すると、本処理を起動する。
【0030】
まず、受信した画像データから「人の顔」を検出する(ステップ801)。検出した顔データが複数存在する場合、最も画像データ内の占有率が高い顔データ(すなわちカメラの近くに居る人物)を特定して、過去に分析済みの顔データか否かを顔認識情報データベース207(図5)と照合判定する(ステップ802)。新規の顔データである場合(ステップ802:NO)、その顔データに顔認識個体管理IDを付与する(ステップ803)。また、その顔データに基づいて性別を判定し(ステップ804)、年齢層を推定する(ステップ805)。次に、顔認識情報データベース207(図5)に1レコードを確保し、ステップ803〜805で取得した顔認識個体管理ID501、性別502、年齢層503を登録するとともに、その顔の画像データ504と登録日時505を登録する(ステップ806)。さらに、初めて捕捉した人物の顔であるので、検出エリア履歴データベース208(図6)に1レコードを確保し、顔認識個体管理ID601、イベント連番602、検出エリアNo.603、およびイベント発生日時605を登録する(ステップ807)。初めて捕捉した人物の顔であるので、イベント連番602は「1」を設定する。検出エリアは、当該画像データの送信元がどのエリアの端末であったかに応じて取得できる。
【0031】
一方、過去に分析済みの顔データである場合(ステップ802:YES)、顔認識情報データベース207(図5)へのレコードの登録は行う必要がないので、ステップ807へ進み、検出エリア履歴データベース208(図6)に、イベント連番602が「2」以降のレコードを追加する。ステップ807の後、追跡型コンテンツ表示処理(図9)を実行する(ステップ900)。つづいて、受信した画像データ内に未分析の顔データが存在するか否かを判定し、未分析の顔データが存在する場合(ステップ808:YES)、受信した画像データからその未分析の顔データを抽出し、ステップ802に戻って、その未分析の顔データについての処理を行う。受信した画像データ内における顔データの占有率順に、未分析の顔データが無くなるまで、以上の処理を繰り返す。受信した画像データ内に未分析の顔データが無くなったら(ステップ808:NO)、顔認識処理を終了する。ホストシステム203は、以上の処理を画像データを受信する度に実行する。
【0032】
図9は、ステップ900の追跡型コンテンツ表示処理部205の処理の概要を示すフローチャートである。
【0033】
まず、ホストシステム203は、ステップ807で登録されたデータに紐付く顔データのパラメータを取得する。すなわち、ステップ807で検出エリア履歴データベース208に登録されたレコードの顔認識個体管理ID601をキーに、顔認識情報データベース207よりパラメータとして性別502と年齢層503を取得し、また検出エリア履歴データベース208よりパラメータとしてイベント連番602と検出エリアNo603を取得する(ステップ901)。
【0034】
つづいて、その顔認識個体管理IDで特定される顔データが2箇所以上のエリアで検出されたものか判定する。この判定は、取得パラメータのイベント連番602から判定できる。取得パラメータのイベント連番602が「1」なら、初めて検出された顔データであるので、ステップ903に進む。取得パラメータのイベント連番602が「2」以上なら、ステップ904に進む。なお、ステップ902の「2箇所以上のエリア」は、同じエリアで複数回の別イベントでの検出が為された場合(すなわち、その人物が1つのエリアで複数回検出された場合)も含むものとする。
【0035】
検出エリアが1箇所のみの顔データである場合(ステップ902:NO)、前記取得パラメータのうち、性別502と年齢層503と検出エリアNo603をキーに、コンテンツ管理データベース209(図7)を検索し、その性別と年齢層と検出エリアを対象とする最適コンテンツを選択する(ステップ903)。例えば、顔認識個体管理ID501・601「af8b2F20020101224133359003」に紐付く取得パラメータの値について、性別502「M」、年齢層503「30」、検出エリア504「A」であった場合、コンテンツ管理データベース209のコンテンツID701が「hk9887」であるコンテンツが選択される。
【0036】
一方、2箇所以上で検出された顔データである場合(ステップ902:YES)、前記取得パラメータの性別502と年齢層503とイベント連番602と検出エリアNo603と表示コンテンツID604に基づいて、最適コンテンツを選択する(ステップ904)。
【0037】
ステップ904の最適コンテンツの選択の手法として、本実施形態では、いま検出された顔データの人物に対して過去に表示実績のあるコンテンツは除外し、それ以外のコンテンツを選択する手法を採用している。例えば、顔認識個体管理ID501・601「af8afM20020101224122134001」に紐付く取得パラメータの値が、性別502「M」、年齢層503「20」、イベント連番602「1」および「2」および「3」、検出エリア504「B」および「D」、表示コンテンツID604「gr3546」および「ht0025」であった場合、取得パラメータのうち、性別502「M」および年齢層503「20」に該当するレコードをコンテンツ管理データベース209より検索すると、コンテンツID701「fx0033」、「gr3546」、「ht0025」の3レコードが対象となる。ここで、イベント連番602「1」および「2」および「3」、検出エリア504「A」および「D」、表示コンテンツID604「gr3546」および「ht0025」より、対象の3レコードのうち、コンテンツID701「gr3546」と「ht0025」は過去に表示実績があるものとして除外し、コンテンツ管理データベース209のコンテンツID601「fx0033」を選択する。
【0038】
これにより、過去に表示実績があるコンテンツを除外することで、ターゲットに対しては常に新しいコンテンツを提供することが出来る。広告主にとっては、効率的な表示が可能なため、費用対効果を得られやすい。
【0039】
つづいて、最新のイベントの検出エリアに設置されたカメラ付きデジタルサイネージ端末104へ、選択したコンテンツを送信して表示させる(ステップ905)。このとき、検出エリア履歴データベース208の、いま処理中である顔認識個体管理ID601およびイベント連番602(そのID601の最新のイベント連番である)のレコードの表示コンテンツID604に、上記選択して表示させたコンテンツのIDを登録するものとする。その後、処理を終了する。
【0040】
なお、ステップ904の最適コンテンツ選択の手法としては、上述したものの他、あるいは上述した手法に加えて、下記のような手法を採ることもできる。
【0041】
第1に、検出エリア履歴データベース208の情報から、その人物が立ち寄っていない「表示エリアNo」を持つコンテンツを選択してもよい。例えば、検出エリア履歴がイベント連番の順に「B」→「D」→「E」だとした場合、図1でのエリアAが一番遠い(つまり、ターゲットの人物はエリアAに表示されるコンテンツは未視聴の可能性がある)と判断して、図7のコンテンツ管理データベース209より表示エリアNo705に「A」が登録されているコンテンツを選択する。この場合、選択されたコンテンツはエリアEの端末104に表示されるので、表示エリアNo705には「E」も登録されている必要がある。ただし、このケースでは、その人物に見せたいコンテンツを選択したいので、通常はエリアEを対象としないコンテンツであっても例外的にエリアEの端末104に表示させるように選択するようにしてもよい。
【0042】
第2に、検出エリア履歴の検出回数から、表示コンテンツを選択する手法を採ってもよい。例えば、ターゲットの人物の検出エリア履歴が2回程度の場合、その人物は施設内に入場して間もないと判断し、インフォメーション系のコンテンツ(コンテンツグループ706に「info」が登録されているもの)を選択する。また、検出エリア履歴が10回以上の場合、その人物は施設内に十分滞在していると判断し、「レア」なコンテンツを選択する。「レア」なコンテンツとは、例えば、履歴データベース208を参照して表示回数が所定値以下のコンテンツなどである。
【0043】
第3に、検出エリア履歴と「イベント発生日時」から、表示コンテンツを選択する手法を採ってもよい。例えば、ターゲットの人物の検出エリア履歴から、検出エリアが重複しており、かつ「イベント発生日時」間隔が短い履歴のレコードが複数あった場合、その人物はそのエリア内に非常に興味があると判断し、過去に表示実績のあるコンテンツに類似するコンテンツを表示する。
【0044】
第4に、順番で見せたい複数のコンテンツの場合は、前回表示したコンテンツの次に見せるべきコンテンツを表示する手法を採ってもよい。
【0045】
上記実施形態では、図8の処理で、受信した画像データ中に複数の人物の顔が検出された場合は、占有率が高い顔データから順に処理している。従って、占有率が高い順に、第1の人物向けのコンテンツを表示し、次に第2の人物向けのコンテンツを表示し、…というように表示を切り替えていくことになる。この場合、コンテンツの表示の切り替えは、そのコンテンツに対応する所定時間だけ表示して、次のコンテンツに切り替える、というように処理を進めればよい。あるいは、端末104の画面(図3の302、図4の402)が大きければ、画面を分割して、複数のコンテンツを各分割画面で表示するようにしてもよい。
【0046】
以上のように、本実施の形態の顧客行動追跡型映像配信システムによれば、次のような効果がある。
【0047】
(1)蓄積された検出エリアの履歴により、同一人物が複数回に亘り同じカメラ付きデジタルサイネージ端末を視聴した場合でも、その人物に対して表示した過去のコンテンツなどに応じて次のコンテンツを選択するので、表示コンテンツを変化させることができる。
【0048】
(2)カメラ付きデジタルサイネージ端末は同一施設内に設置する例を挙げて説明したが、複数の施設に設置されたものであっても同様に適用できることは言うまでもない。また、ホストシステムとカメラ付きデジタルサイネージ端末との間を有線回線で接続する例を挙げて説明したが、無線回線で接続されるものであっても同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
101…施設、102…入口、103…出口、104…カメラ付きデジタルサイネージ端末、105−a…施設内エリアA、105−b…施設内エリアB、105−c…施設内エリアC、105−d…施設内エリアD、105−e…施設内エリアE、201…縦型カメラ付きデジタルサイネージ端末、202…横型カメラ付きデジタルサイネージ端末、203…ホストシステム、204…顔データ処理部、205…追跡型コンテンツ表示処理部、206…ネットワーク、207…顔認識情報データベース、208…検出エリア履歴データベース、209…コンテンツ管理データベース、301,401…カメラ、302,402…ディスプレイ部、501…顔認識個体管理ID、502…性別、503…年齢層、504…画像データ、505…登録日時、506…更新日時、601…顔認識個体管理ID、602…イベント連番、603…検出エリア、604…表示コンテンツID、605…イベント発生日時、701…コンテンツID、702…対象性別、703…年齢層MIN、704…年齢層MAX、705…表示エリアNO、706…コンテンツグループ、707…キーワード、708…データ形式、709…有効期限FROM、710…有効期限TO、711…データパス、712…ファイルサイズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストシステムと、該ホストシステムに接続された複数のカメラ付きデジタルサイネージ端末とを備えた顧客行動追跡型映像配信システムであって、
前記ホストシステムは、
検出した顔データとその顔データを分析して取得した性別および年齢層を登録する顔認識情報データベースと、
顔データが検出されたエリアと、その顔データの人物向けに表示したコンテンツを示す表示コンテンツIDと、その顔データが検出された日時を示すイベント発生日時とを含む履歴情報を登録する検出エリア履歴データベースと、
前記カメラ付きデジタルサイネージ端末から送信される画像データを受信する手段と、
受信した画像データから顔データを検出する手段と、
検出した顔データを前記顔認識情報データベースに登録されているデータと照合し、既に登録済みの人物の顔データか否かを判定する手段と、
前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データで無かったときは、前記検出した顔データに基づいて性別と年齢層を判定し、その顔データとともにそれらの判定結果を前記顔認識情報データベースに登録し、判定結果の性別と年齢層に応じたコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録する手段と、
前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データであったときは、その顔データに対応する前記顔認識情報データベースの登録情報と前記検出エリア履歴データベース内の履歴情報に基づいてコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録する手段と
を備え、
前記カメラ付きデジタルサイネージ端末は、
カメラで撮影した画像データを前記ホストシステムに送信する手段と、
前記ホストシステムから送信されるコンテンツを表示する手段と
を備えることを特徴とする顧客行動追跡型映像配信システム。
【請求項2】
ホストシステムと、該ホストシステムに接続された複数のカメラ付きデジタルサイネージ端末とを備えた顧客行動追跡型映像配信システムにおける顧客行動追跡型映像配信方法であって、
前記ホストシステムには、
検出した顔データとその顔データを分析して取得した性別および年齢層を登録する顔認識情報データベースと、
顔データが検出されたエリアと、その顔データの人物向けに表示したコンテンツを示す表示コンテンツIDと、その顔データが検出された日時を示すイベント発生日時とを含む履歴情報を登録する検出エリア履歴データベースと
を設け、
前記カメラ付きデジタルサイネージ端末が、カメラで撮影した画像データを前記ホストシステムに送信するステップと、
前記ホストシステムが、該画像データを受信するステップと、
前記ホストシステムが、受信した画像データから顔データを検出するステップと、
前記ホストシステムが、検出した顔データを前記顔認識情報データベースに登録されているデータと照合し、既に登録済みの人物の顔データか否かを判定するステップと、
前記ホストシステムが、前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データで無かったときは、前記検出した顔データに基づいて性別と年齢層を判定し、その顔データとともにそれらの判定結果を前記顔認識情報データベースに登録し、判定結果の性別と年齢層に応じたコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録するステップと、
前記ホストシステムが、前記検出した顔データが前記顔認識情報データベースに登録済みの顔データであったときは、その顔データに対応する前記顔認識情報データベースの登録情報と前記検出エリア履歴データベース内の履歴情報に基づいてコンテンツを選択して前記カメラ付きデジタルサイネージ端末に送信して表示させ、その履歴情報を前記検出エリア履歴データベースに登録するステップと
を備えることを特徴とする顧客行動追跡型映像配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−252613(P2012−252613A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125877(P2011−125877)
【出願日】平成23年6月4日(2011.6.4)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】