説明

風力発電用ブレード

【課題】風力発電用ブレードにおいて、ブレード重量増加や導電性材料皮膜の剥離を抑えつつ、金属製受雷部境界や内部アンカーへの落雷を抑制する。
【解決手段】ブレード本体1aと、該ブレード本体1aに設けられた金属製の受雷部(先端受雷部2)と、前記受雷部とアースとを電気的に接続するためのダウンコンダクタ4を有し、前記受雷部表面と前記ブレード本体1a表面との境界5の周囲に限定して、少なくともブレード本体1aの表面側に導電性材料6を被覆することで、雷撃が金属製受雷部から外れた位置に落ちた場合、導電性材料6で捕雷でき、雷撃電流は被覆された導電性材料6を経由して速やかに近傍の金属製受雷部に流れ、ブレード本体1aの損傷を効果的に防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製受雷部周辺のFRP(繊維強化プラスチック)への雷撃損傷を抑制する風力発電用ブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電所は、強い風が安定して吹く、いわゆる風況の良い地域に建設されることが好ましいが、このような地域は、周辺に高い山や木々が存在しない、開けた土地であることが多い。また、近年では平地の好適地が限られつつあるため、山岳地域に風力発電所を建設する例もみられる。このような開けた土地や、山岳地域にブレード先端高さが100m前後に及ぶ風車を建設した場合、雷撃を受けやすくなるのは自明であり、実際に毎年多数の風車が落雷被害をこうむっている。特に落雷の被害を受けやすいのが、形状的に電界が集中しやすく、雷雲との距離も短いブレードである。落雷によってブレードが大きな損傷を受けると、その修復に多大な時間とコストがかかる場合が多い。
【0003】
そこで、風力発電用ブレードの耐雷性を高めるため、これまで様々な工夫がなされてきた。例えば、特許文献1では、アルミニウム製のブレード先端材をブレード本体に設けることで、FRP製のブレード本体の雷撃損傷を効果的に防止できるとしている。
特許文献2、3は、ブレード本体表面の全面を導電性材料で被覆する手段が提案されており、ブレード表面のいかなる位置で雷撃を受けてもFRP製のブレード本体の損傷を軽微に抑えられるとしている。
また、特許文献4では、導電性帯をリーディングエッジ(LE、前縁部)あるいはトレーリングエッジ(TE、後縁部)の全長にわたって固着した上で、接地させたブレードを提案している。また、特許文献5では、リーディングエッジ(LE)、トレーリングエッジ(TE)の導電性帯に加え、両エッジを電気的に接続する連結帯を設けたブレードについて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−113735号公報
【特許文献2】特開2004−245174号公報
【特許文献3】特開2005−171916号公報
【特許文献4】特開2010−223147号公報
【特許文献5】特開2009−115052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々が独自に実施してきた、風車への落雷被害の記録、および、模擬試験体を供した種々の雷撃試験の結果、雷撃は金属製受雷部およびその周辺に集中することが明らかとなった。金属部に雷撃を受けた場合は、雷撃箇所の金属が若干溶損しつつも雷撃電流を安全にアースに流すことができ、FRP製のブレード本体に被害は及ばない。しかしながら、受雷部境界や埋め込まれたアンカー部に向けて落雷した場合、少なからずFRP製ブレード本体の損傷を伴う。場合によっては水分や樹脂の瞬間的な蒸発を引き起こして内圧が上昇し、ブレード接着面を引き剥がしてしまうこともある。
したがって、特許文献1のようにアルミニウムを先端に用いたブレードでは、雷撃対策として十分であるとは言いがたい。
【0006】
一方、特許文献2、3のように、導電性材料をブレード本体表面の全面にわたって被覆する考案では、FRP製のブレード本体の貫通を含め、雷撃損傷を効果的に緩和できるものと考えられる。しかし、日本海沿岸などの強雷地域でしばしば観測される大電流雷に対して、この導電性材料が十分な耐久性を保つためには、相当の被覆厚さが必要となる。ブレード表面の全域にこのような肉厚の導電性材料被覆を施すことにより、ブレードの重量が増加することはもちろんであるが、FRPと導電性材料との剛性や熱膨張率の違いのために、供用中のブレードのたわみや温度変化によって導電性材料がFRP製ブレード本体から剥離するという悪影響が考えられる。
【0007】
特許文献4、5では、リーディングエッジ(LE)やトレーリングエッジ(TE)の外表面に固着させた導電性帯で雷撃を受け、さらにこの導電性帯を通じて雷撃電流をハブまで流す考案を開示している。しかしながら、このように導電性帯を外表面に敷設してしまうと、落雷の衝撃や供用中のブレード変形によって導電性帯が破損、脱落する可能性があり、瞬時的に数百kAにも達する雷撃電流を流す用途には不向きである。
【0008】
本発明は、ブレード重量増加や導電性材料皮膜の剥離を最小限に抑えながら、金属製受雷部境界や内部アンカーを有する場合は該アンカーへの落雷を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の風力発電用ブレードのうち、第1の本発明は、ブレード本体と、該ブレード本体に設けられた金属製の受雷部と、前記受雷部とアースとを電気的に接続するためのダウンコンダクタと、を有し、前記受雷部表面と前記ブレード本体表面との境界周囲に限定して、少なくとも前記ブレード本体の表面側に導電性材料が被覆されていることを特徴とする。
【0010】
第2の本発明の風力発電用ブレードは、前記第1の本発明において、前記受雷部としてブレード本体の先端に設けられた先端受電部を有することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明の風力発電用ブレードは、前記第1または第2の本発明において、前記受雷部として、前記ブレード本体の基端側と先端側との間に設けられた1個以上の中間受雷部を有することを特徴とする。
【0012】
第4の本発明の風力発電用ブレードは、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記導電性材料の被覆範囲が、前記受雷部表面と前記ブレード本体表面の境界から前記ブレード本体側に0.1m以上、2m以下であることを特徴とする。
【0013】
第5の本発明の風力発電用ブレードは、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記導電性材料が、前記境界の全長に亘って前記受雷部に接触していることを特徴とする。
【0014】
第6の本発明の風力発電用ブレードは、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記導電性材料の被覆範囲が、前記受雷部表面と前記ブレード本体表面の境界から前記受雷部側に0.1m以上であることを特徴とする。
【0015】
第7の本発明の風力発電用ブレードは、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記導電性材料の被覆厚さが、0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする。
【0016】
第8の本発明の風力発電用ブレードは、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記導電性材料表面に塗装が施されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、雷撃が金属製受雷部から外れた位置に落ちた際に、導電性材料で捕雷され、雷撃電流は被覆された導電性材料を経由して速やかに近傍の金属製受雷部に流れる。
金属製受雷部は、ブレード本体に設けられており、ブレード本体の先端に設けられた先端受雷部やブレード本体の基端部と先端部との間に設けられた中間受雷部が示される。中間受雷部は、1個の他、複数個であってもよい。本発明においては、先端受雷部の配置を必須として、中間受雷部の有無およびその数を問わないものが代表的である。ただし、これに限定されない。
境界周囲に導電性材料を被覆する対象となる受雷部としては、ブレード本体に設けられた全部を対象としてもよく、特に電撃を受けやすい先端受雷部を優先するなどして一部を対象とするものであってもよい。したがって、先端受雷部と中間受雷部とを有する場合、先端受雷部側にのみ導電性材料による被覆を設けるものであってもよい。
【0018】
ブレード本体は、金属以外の材質であり、通常はFRP(繊維強化プラスチック)で構成される。また、FRPを主成分とし、一部に木材や発泡体などを用いた複合体とするものであってもよい。
ブレード本体の形状は本発明としては特に限定されるものではなく、適宜形状を採択することができる。
【0019】
金属製受雷部の形状も本発明としては特に限定されるものではなく、アンカー部の有無も特に限定されるものではない。
金属製受雷部は、導電性と耐食性を有した金属、合金から選択する。中でも、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金が好ましい。また、先端受雷部と中間受雷部との間で材質を異にするなど、受雷部間で材質を変えるようにしてもよい。
【0020】
受雷部表面とブレード本体表面との境界周辺に配置される導電性材料は、金属メッシュ、金属箔、金属メッキ、金属溶射、導電性塗料などの形態でブレード本体表面に被覆される。
境界周辺への被覆は、本発明としては境界全長のうちの一部を対象にすることも可能であるが、境界の全長において対象とするのが望ましい。
導電性材料には、導電性と耐食性を有した金属、合金から選択する。中でも、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金が好ましい。受雷部および導電性材料の材質は同じもの異なるもののいずれであってもよい。但し受雷部と導電性材料とのイオン化傾向が大きく異なる場合、一般に腐食を生じやすくなるため、受雷部材質と導電性材料材質との組み合わせを考慮するのが望ましい。
導電性塗料のフィラーとしては、アルミニウム、銅、銀、タングステン、ニッケル、炭素などが考えられるが、本発明では特に指定しない。上記の導電性材料から、複数を選んで組み合わせても良い(例:金属メッシュの上に導電性塗料を塗装)。
【0021】
導電性材料の被覆厚さは本発明としては特定の範囲に限定しないが、雷撃に対する耐久性と、接着強度との観点から決定することができる。例えば、0.1mm以上10mm以下が望ましい。
0.1mm未満であると雷撃に対する耐久性の点で充分と言えない。また、10mmを越えると接着強度が低下し、剥離などがしやすくなる。このため、導電性材料の被覆厚さは上記範囲が望ましい。また、同様の範囲で下限を0.5mm、上限を3mmとするのが一層望ましい。
【0022】
また、雷撃試験の結果から、導電性材料の被覆範囲は、受雷部とブレード本体との境界からブレード本体側へ0.1m以上2m以下とするのが好ましいことを見出した。
0.1m未満であると、雷撃が金属製受雷部から外れた位置に落ちた際に、充分に捕雷することができない。一方、導電性材料の被覆範囲が2mを越えても効果が飽和するのみであり、風力発電用ブレード全体の重量が増してしまう。
また、同様の理由で上記被覆範囲の下限を0.2m、上限を1mとするのが一層望ましい。
【0023】
また、被覆した導電性材料と金属製受雷部との接触面積が小さいと、大電流の負荷に耐えられず、焼損してしまう可能性がある。したがって、境界の全長に亘って導電性材料と金属製受雷部とが接触しているのが望ましい。さらに電流に対して十分な耐久性を得るため、受雷部とブレード本体との境界から受雷部側に0.1m以上の範囲を導電性材料で被覆することが好ましい。上限は規定しないため、受雷部全面に亘って導電性材料による被覆を行うものであってもよい。
さらに、美観を向上させるため、被覆した導電性材料の上にパテや塗料による塗装を施してもよい。塗装はその他のブレード本体と同一色とすることで一体性をだすことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、雷撃が誘導されやすい金属製受雷部の周囲のブレード本体表面側に導電性材料を被覆しているため、雷撃が金属製受雷部から外れた位置に落ちたとしても、導電性材料上にて捕雷できる。雷撃電流は被覆された導電性材料を経由して速やかに近傍の金属製受雷部に流れていき、ブレード本体の損傷を効果的に防ぐことができる。
また、導電性材料の被覆範囲は金属製受雷部の周囲に限定されているため、ブレードの重量増加は最小限に抑えられる。同時に、被覆範囲が狭いため、供用中にたわみや温度差が生じても導電性材料の皮膜はブレード本体の変形に追従しやすく、剥離の可能性は非常に少ない。
【0025】
また、雷撃電流をアースに流すためのメインの経路としてダウンコンダクタを設けているため、特許文献4、5で懸念されるような導電経路の喪失は起こらない。
以上より、本発明により、ブレード重量増加と導電性材料の剥離を抑制しながら、ブレードの耐雷性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】先端受雷部を有した風力発電用ブレードの全体を示す図である。
【図2】チップ型先端受雷部を用いたブレード先端部を示す図であり、(a)は、導電性材料の被覆をしていない説明図、(b)は導電性材料を被覆した説明図、(c)は導電性材料の被覆の変更例の説明図である。
【図3】ディスク型先端受雷部を用いたブレード先端部を示す図であり、(a)は、導電性材料の被覆をしていない説明図、(b)は導電性材料を被覆した説明図である。
【図4】ロッド型先端受雷部を用いたブレード先端部を示す図であり、(a)は、導電性材料の被覆をしていない説明図、(b)は導電性材料を被覆した説明図である。
【図5】先端受雷部と中間受雷部を有した風力発電用ブレードの全体を示す図である。
【図6】中間受雷部を用いたブレード中間部を示す図であり、(a)は、導電性材料の被覆をしていない説明図、(b)は導電性材料を被覆した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態の風力発電用ブレードについて説明する。
図1は、風力発電用ブレード1の全体図を示すものである。
風力発電用ブレード1は、全体形状を形成し、FRPで構成されたブレード本体1aを有しており、先端に金属製先端受雷部2が設けられている。金属製先端受雷部2は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。先端受雷部2とブレード本体1aとは表面が面一に形成されている。先端受雷部2には、ダウンコンダクタ4が接続されており、ダウンコンダクタ4は、先端受雷部2に電気的に接続し、ブレード本体1aの根元まで配線した後、図示しないハブ、ナセル、タワー等を経由し、接地している。ダウンコンダクタ4は十分大きな断面積を有した導線により構成することで、人身傷害や機器損傷をともなわずに雷撃電流をアースに流すことができる。
【0028】
次に、風力発電用ブレードの先端部を拡大した部分について、以下に説明する。
図2(a)は、先端受雷部2の接続構造を示している。先端受雷部2は図に示すように先端受雷部の一類型であるチップ型先端受雷部を適用したものである。
この先端受雷部2は、遠心力による脱落を防ぐため、基部にアンカー部20を有しており、該アンカー部20をブレード本体1a内に埋め込むことで先端受雷部2を確実にブレード本体1a固定している。該アンカー部20に前記したダウンコンダクタ4が電気的に接続されている。
【0029】
本発明の実施形態としては、上記図2(a)で示す風力発電用ブレードの先端部において、図2(b)(c)に示すように、導電性材料による被覆が行われている。
図2(b)の形態では、先端受雷部2の表面全体および、先端受雷部2の表面とブレード本体1aの表面との境界5を越えた所定範囲のブレード本体1a側に亘って導電性材料6が被覆されている。
導電性材料6は、金属メッシュ、金属箔、金属メッキ、金属溶射、導電性塗料などの形態で被覆がなされるが、本発明としては特定の方法に限定されるものではない。被覆は、好適には0.1mm以上10mm以下の範囲で行われる。
【0030】
導電性材料6は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。
導電性材料6は、先端受雷部2全体に亘ることで、好適には、境界5から先端受雷部2側に0.1m以上の範囲で被覆がなされている。また、導電性材料6は、ブレード本体1a側の表面に好適には0.1m以上、2m以下の範囲で被覆がなされている。
【0031】
図2(c)の形態では、先端受雷部2の先端側を除いた一部領域で、先端受雷部2の表面とブレード本体1aの表面との境界5を越えた所定範囲のブレード本体1a側に亘って導電性材料6が被覆されている。
ブレード本体1a側では、上記と同様にブレード本体1a側で好適には0.1m以上、2m以下の範囲で被覆がなされている。また、先端受電部2側では、好適には、境界5から先端受雷部2側に0.1m以上の範囲で、かつ先端受雷部2の先端に至らない範囲で被覆がなされている。
【0032】
次に、先端受雷部の一類型であるディスク型先端受雷部21を適用したブレード1について説明する。
図3(a)は、ブレード本体1aにおけるディスク型先端受雷部21の配置構成を示す図である。
すなわち、ブレード本体1aの先端側に、金属製の円柱形状のディスク型先端受雷部21が埋め込まれて表面が露出するように配置されている。ディスク型先端受雷部21は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。
ディスク型先端受雷部21の表面とブレード本体1aの表面とは面一になっており、ディスク型先端受雷部21の周縁にディスク型先端受雷部21表面とブレード本体1a表面との境界5aを有している。また、ディスク型先端受雷部21には、ダウンコンダクタ4が電気的に接続されている。
【0033】
本発明の実施形態としては、上記図3(a)で示す風力発電用ブレードの先端部において、図3(b)に示すように、導電性材料による被覆が行われている。
すなわち、ディスク型先端受雷部21を有するブレード1の形態では、図3(b)に示すように、ディスク型先端受雷部21の表面を含めてブレード本体1aの先端から基端側にかけて所定の範囲に導電性材料7が被覆されている。導電性材料7は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。導電性材料7は、金属メッシュ、金属箔、金属メッキ、金属溶射、導電性塗料などの形態で被覆がなされ、好適には0.1mm以上10mm以下の厚さとする。
【0034】
ディスク型先端受雷部21は、面方向において0.2m以上の径を有しており、この結果、ディスク型先端受雷部21は、境界5aから受雷部側に.0.1m以上の範囲で導電性材料7が被覆されていることになる。また、境界5aからブレード本体1a側の表面には、いずれの位置でも導電性材料7が0.1m以上2m以下の範囲で被覆されている。
【0035】
次に、先端受雷部の一類型であるロッド型先端受雷部22を適用したブレード1について説明する。
図4(a)は、ブレード本体1aへのロッド型先端受雷部22の装着構成を示す図である。
すなわち、ロッド型先端受雷部22は、ブレード本体1aの先端からブレード本体1aの長手方向に向けてブレード本体1a内に埋設されており、先端部のみがブレード本体1aから露出している。ロッド型先端受雷部22が露出した部分の周縁部とブレード本体1a表面との境が本発明の境界5bとなる。
ロッド型先端受雷部22は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。ロッド型先端受雷部22の基端部側にはダウンコンダクタ4が電気的に接続されている。
【0036】
ロッド型先端受雷部22を有するブレード1の形態では、本発明の実施形態では、図4(b)に示すように、ブレード本体1aの先端から基端側にかけて所定の範囲で導電性材料8によって被覆がなされている。導電性材料8は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。導電性材料8は、金属メッシュ、金属箔、金属メッキ、金属溶射、導電性塗料などの形態で被覆がなされ、好適には0.1mm以上10mm以下の厚さとする。
【0037】
この結果、ロッド型先端受雷部22が0.2m以上の径を有していれば、境界5bから受雷部側に、0.1m以上の範囲で導電性材料8が被覆されていることになる。
また、導電性材料8は、境界5bを越えてブレード本体1aの基端側に向かう範囲に被覆されており、境界5bからはブレード本体1a表面に基端側に向けて0.1m以上2m以内の範囲で導電性材料8が被覆されている。
【0038】
次に、図5は、中間受雷部を有する風力発電用ブレード10の全体を示している。
この風力発電用ブレード10においても、全体形状を形成し、FRPで構成されたブレード本体10aを有しており、先端に金属製先端受雷部23が設けられている。先端受雷部23は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されており、先に説明したようにチップ型先端受雷部、ディスク型先端受雷部、ロッド型先端受雷部などの種々の類型の先端受雷部を選択することができる。
【0039】
また、ブレード本体10aの基端部と先端部との間において、ブレード本体10aのフラップ面に長手方向に所定の間隔(例えば等間隔)で複数の金属製中間受雷部3が設けられている。金属製中間受雷部3は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。
先端受雷部23および中間受雷部3は、それぞれダウンコンダクタ14に電気的に接続されている。ダウンコンダクタ14は、風力発電用ブレード1の根元まで配線した後、ハブ、ナセル、タワーを経由し、接地している。
【0040】
次に、上記風力発電用ブレードのブレード本体10aにおける中間部を拡大した部分について、図6(a)(b)に基づいて説明する。
図6(a)は、中間受雷部3の配置構造を示している。
すなわち、ブレード本体10aの表面にチップ状で表面円形状の中間受雷部3が表面を露出させて埋設されている。
中間受雷部3表面とブレード本体10a表面との境界5cは、中間受雷部3の周縁に沿っている。ここでは、中間受雷部3の形状を表面形状で円形としているが、表面形状で多角形や楕円形としてもよい。
【0041】
中間受雷部3の周囲では、図6(b)に示すように中間受雷部3の表面を含め、境界5cを越えて外周側に拡がるようにブレード本体10a表面に導電性材料9が被覆されている。導電性材料9は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ステンレス、あるいはこれらの合金で構成されている。導電性材料9は、金属メッシュ、金属箔、金属メッキ、金属溶射、導電性塗料などの形態で被覆がなされ、好適には0.1mm以上10mm以下の厚さとする。
なお、中間受雷部3は、0.2m以上の径を有していれば、境界5cから受雷部側に、0.1m以上の範囲で導電性材料9が被覆されていることになる。
また、導電性材料9は、境界5cを越えてブレード本体1a側に拡がるように被覆されており、境界5cからは0.1m以上2m以内の範囲でブレード本体1a側に導電性材料9が被覆されている。
【0042】
なお、先端受雷部23については上記で詳細に説明していないが、先に説明した先端受雷部2、ディスク型先端受雷部21、ロッド型先端受雷部22と同様に、先端受雷部23とブレード本体10aの境界周囲に限ってブレード本体10a表面側と先端受雷部23表面側とに、好適には0.1mm以上10mm以下の厚さで導電性材料が被覆されている。この場合、先端受雷部23側では、先端受雷部23とブレード本体1aとの境界から0.1m以上の範囲で導電性材料が被覆され、ブレード本体1a側では、先端受雷部23とブレード本体1aとの境界から0.1m以上2m以下の範囲で導電性材料が被覆されている。
【0043】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲が上記で説明された内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 風力発電用ブレード
1a ブレード本体
2 先端受雷部
21 ディスク型先端受雷部
22 ロッド型先端受雷部
3 中間受雷部
4 ダウンコンダクタ
5 境界
5a 境界
5b 境界
5c 境界
6 導電性材料
7 導電性材料
8 導電性材料
9 導電性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード本体と、該ブレード本体に設けられた金属製の受雷部と、前記受雷部とアースとを電気的に接続するためのダウンコンダクタと、を有し、前記受雷部表面と前記ブレード本体表面との境界周囲に限定して、少なくとも前記ブレード本体の表面側に導電性材料が被覆されていることを特徴とする風力発電用ブレード。
【請求項2】
前記受雷部としてブレード本体の先端に設けられた先端受電部を有することを特徴とする請求項1記載の風力発電用ブレード。
【請求項3】
前記受雷部として、前記ブレード本体の基端側と先端側との間に設けられた1個以上の中間受雷部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の風力発電用ブレード。
【請求項4】
前記導電性材料の被覆範囲が、前記受雷部表面と前記ブレード本体表面の境界から前記ブレード本体側に0.1m以上、2m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の風力発電用ブレード。
【請求項5】
前記導電性材料が、前記境界の全長に亘って前記受雷部に接触していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の風力発電用ブレード。
【請求項6】
前記導電性材料の被覆範囲が、前記受雷部表面と前記ブレード本体表面の境界から前記受雷部側に0.1m以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の風力発電用ブレード。
【請求項7】
前記導電性材料の被覆厚さが、0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の風力発電用ブレード。
【請求項8】
前記導電性材料表面に塗装が施されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の風力発電用ブレード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−246812(P2012−246812A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118264(P2011−118264)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】