説明

風力発電用風車および風力発電装置

【課題】家屋の屋根等の上で常時回転する小型の風力発電用風車を提供する。
【解決手段】正方向に回転する回転台5と、回転台5に立てられた帆柱6と、帆柱6によって回転台5の上方に固定される第1固定点31と、回転台5の外周部に固定される第2固定点32と、前記回転台5に対して移動可能な自由点33とによって張られる三角形の帆8と、自由点33の移動範囲を制限する制限手段9とを有し、帆8が風を受けると、帆8の三角形の第2固定点32に対向する自由辺34は弧を描く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置に関し、特に、風力発電用風車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主力となっている風力発電装置は大型であり、この大型風力発電装置では、100メートルもの高さの塔の上に、水平回転軸を持つ3枚翼の風車と、この風車に回転速度を高める歯車を介して連結した可変速同期発電機とが載せられている。(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】A.E.Fitzgerald, Charles Kingsley, Jr.Stephen D.Umans, “ELECTRIC MACHINERY”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような、大型風力発電装置は、海外の広大な土地に何百機もまとめて設置することにより、数百MWの大電力を供給できるだけでなく、建設単価を低くでき、高い塔上での歯車や可変速同期発電機のブラシなどの点検・保守管理などの維持費も低く抑えることができるので、低価格で電力を供給でき、高い経済競争力を獲得することができている。
【0004】
しかしながら、日本では、大型風力発電装置を設置できる場所が、資材や大型建設機械の持ち込みが困難な狭い土地に限られ、数機ずつしか設置できず、建設単価と維持費が高くなりやすいので、経済競争力が得られにくい。
【0005】
また、暴風時には、大型風力発電装置の塔と風車に大きな水平応力が作用するため壊れやすいと考えられる。さらに、風車の翼端は、塔の高さに加えて翼の長さ分だけ高所を通過するため、落雷によって破損しやすいと考えられる。また、風車の回転数が低くても翼の長さが長いので翼端の速度が大きくなり、大きな風切音が発生すると考えられる。
【0006】
そこで、塔が不要な小型の風力発電装置が必要であると考えられる。小型化可能であれば、密集している家屋の屋根等に場所を選ばす無数に配置でき、建設単価と維持費を抑えることができる。また、小型化することで高さが低くできるので、落雷を避けることができ、暴風時にも大きな水平応力が作用せず壊れにくい。しかし、小型化すると翼の長さは短くなるが、翼の重量が軽くなり翼の回転速度が増し、風切音が発生しやすいと考えられる。風切音を小さくして静かにするには、回転速度を低速にすればよいが、発電量が低下してしまう。また、風力発電装置の小型化によっても発電量は低下してしまう。
【0007】
そこで、発電量を多くするために、風力発電装置の台数を増やすことはもちろん、風車が常時回転し常時発電できるように、弱風や風の吹く方向の定まらない乱流でも、風を捉えて回転できることが必要であると考えられる。
【0008】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、家屋の屋根等の上で常時回転する小型の風力発電用風車および風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明では、正方向に回転する回転台と、前記回転台に立てられた帆柱と、前記帆柱によって前記回転台の上方に固定される第1固定点と、前記回転台の外周部に固定される第2固定点と、前記回転台に対して移動可能な自由点とによって張られる三角形の帆と、前記自由点の移動範囲を制限する制限手段とを有し、前記帆が風を受けると、前記帆の前記三角形の前記第2固定点に対向する自由辺は弧を描く風力発電風車であることを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、帆は風を受けると、帆の前記自由辺は弧を描き、帆は風を捉えてはらみ、弱風も逃さないので、風力発電用風車は微風でも回転することができる。また、乱流により風向きが変わっても、帆の前記自由辺は弧を描き、帆は風を捉えてはらんでいるので、風向きに対して広角度に風を捉えることができ、風力発電用風車は止まることなく回転することができる。
【0011】
前記帆は、風を受けてジャイブすることが好ましい。このことによれば、前記帆は、両面で交互に風を受けることができ、風向きに対して、より広角度に風を捉えることができる。また、前記回転台の回転に伴って、前記帆が回転し、前記帆の風向きに対する相対的な向きは変化するが、この相対的な向きの変化幅に対しても、広範囲にわたり、風を捉えることができる。
【0012】
前記自由点は、前記制限手段によって、前記第2固定点より前記回転台上の前記正方向の位置に移動しないことが好ましい。このことによれば、前記帆が受けた風力を、効率的に前記回転台を回す力として利用することができる。
【0013】
前記正方向の回転に伴い前記第2固定点が風下方向に移動するとき、前記帆は風を捉えることが好ましく、前記正方向の回転に伴い前記第2固定点が風上方向に移動するとき、前記帆は前記風を捉えるかまたは前記風になびくことが好ましい。このことによっても、前記帆が受けた風力を、効率的に前記回転台を回す力として利用することができる。
【0014】
前記制限手段は、前記自由点に一端が固定され、他端が前記第2固定点の固定された前記外周部から前記正方向とは反対方向の前記外周部に一端が固定されたロープであり、前記ロープの前記一端の届く範囲によって前記移動範囲が制限されることが好ましい。このようなロープであれば、簡単な構造で、前記制限手段を構成することができる。
【0015】
前記風力発電用風車は、固定端に前記第2固定点が固定され、自由端に前記自由点が固定され、前記第2固定点のまわりに回動自在である腕を有することが好ましい。このことによれば、前記第2固定点と前記自由点の間の、前記帆の一辺の長さを、風を受けても、縮まらないようにすることができるので、前記帆は、風を受ける面積を小さくすることなく大きいまま維持することができる。
【0016】
前記帆は、前記三角形の辺を軸に巻かれることが好ましい。ヨットに用いられる帆は、軽量、柔軟かつ丈夫な布であり、この帆を風力発電用風車にも用いることができる。この帆は、容易に帆柱等に巻くことができ、暴風時に巻けば、帆は風を捉えないか捉える風量を減らせるので風力発電用風車に作用する水平応力を小さくできる。そして、暴風でも風力発電用風車が壊れることない。
【0017】
前記風力発電用風車の回転によって発電した電圧の、設定された基準電圧に対する大小関係に応じて、前記帆を巻くことが好ましい。強風では、前記風力発電用風車が速く回転するので、前記風力発電用風車の回転によって発電される電圧は高くなる。したがって、発電される電圧をモニタすれば、現在吹いている風が強風か否か判定することができる。風が強風であると判定した場合には、前記帆を巻けば、風力発電用風車の回転速度を低速で静かに常時回すことができる。
【0018】
前記帆柱が、前記回転台の回転軸の延長上に立っていることが好ましい。このことによれば、前記帆柱は、1本で良い。また、前記帆は、1枚以上用いることができ、好ましくは3枚以上用いることができる。前記帆を複数枚用いることにより、前記回転台の回転に伴って、それぞれの前記帆が回転し、前記帆の風向きに対する相対的な向きは変化し、いままで風を捉えていた帆が、風を捉えられなくなっても、いままで風を捉えていなかった別の帆が、風を捉えることができるので、風力発電用風車は止まることなく回転することができる。また、乱流により風向きが変わっても、いままで風を捉えていなかった別の帆が、風を捉えるので、風力発電用風車は止まることなく回転することができる。
【0019】
前記腕は、前記固定端が前記帆柱に取り付けられ、前記帆柱のまわりに回動自在であり、前記帆柱が、前記第2固定点の近傍に立っていることが好ましい。このことによれば、前記帆柱は、前記回転台の外周部に配置でき、少なくとも2本以上で好ましくは3本以上用いることができる。また、前記帆は、前記帆柱毎に1枚ずつ用いることができる。前記帆は複数枚用いることになるので、前記回転台の回転に伴って、それぞれの前記帆が回転し、前記帆の風向きに対する相対的な向きは変化し、いままで風を捉えていた帆が、風を捉えられなくなっても、いままで風を捉えていなかった別の帆が、風を捉えることができるので、風力発電用風車は止まることなく回転することができる。また、乱流により風向きが変わっても、いままで風を捉えていなかった別の帆が、風を捉えるので、風力発電用風車は止まることなく回転することができる。
【0020】
そして、風力発電装置は、以上のような特徴を有する風力発電用風車と、前記回転台の回転によりシャフトを回転させて発電する発電機とを有する。
【発明の効果】
【0021】
このような風力発電用風車および風力発電装置によれば、家屋の屋根等の上で常時回転する小型の風力発電用風車および風力発電装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係る風力発電装置1は、風力発電用風車4と、風力発電用風車4の回転によりシャフト3を回転させて発電する発電機2とを有している。
【0024】
風力発電用風車4は、シャフト3を回転軸として一体に回転する回転台5と、この回転台5の外周部に3本立てられた帆柱6と、この帆柱6によって前記回転台5の上方に固定される第1固定点31と、前記回転台5の外周部に固定される第2固定点32と、前記回転台5に対して移動可能な自由点33とによって張られる三角形の帆8と、前記自由点33の移動範囲を制限する制限手段9とを有している。帆柱6は、帆8の第2固定点32の近傍に立てられることになる。そして、前記帆8が風を受けると、前記帆8の前記三角形の前記第2固定点32に対向する自由辺34は弧を描き、前記帆8は風をはらむことができる。帆柱6は、少なくとも2本で3本以上が好ましい。帆8は、帆柱6毎に1枚ずつ用いられる。帆8を複数枚用いることになるので、回転台5の回転に伴って、それぞれの帆8が回転し、帆8の風向きに対する相対的な向きが変化し、いままで風を捉えていた帆8が、風を捉えられなくなっても、いままで風を捉えていなかった別の帆8が、風を捉えることができるので、風力発電用風車4は止まることなく回転することができる。また、乱流により風向きが変わっても、いままで風を捉えていなかった別の帆8が、風を捉えるので、風力発電用風車4は止まることなく回転することができる。
【0025】
また、風力発電用風車4は、固定端に前記第2固定点32が固定され、自由端に前記自由点33が固定され、前記第2固定点32のまわりに回動自在である腕7を、前記帆柱6毎に有している。前記腕7は、固定端が前記帆柱6のそれぞれに取り付けられ、前記帆柱6のまわりに回動自在である。前記帆柱6は、前記第2固定点32の近傍に立っている。帆8は、前記帆柱6と前記腕7とに張られ、制限手段9は、前記腕7の回動自在の回動角度の範囲を制限している。腕7を用いることで、帆8の第2固定点32と自由点33の間の帆8の一辺の長さを、風を受けても、縮まらないようにすることができるので、帆8は風を受ける面積を小さくすることなく大きいまま維持することができる。
【0026】
図2に示すように、回転台5は、垂直軸10を回転軸に回転可能になっている。帆柱6は、回転台5の外周部に立てられている。それぞれの帆柱6と垂直軸10とを結んだ複数の直線がなす角度が均一になるように、帆柱6は配置されている。図2に示すように帆柱6が3本であれば、120°間隔で配置される。帆8は風を受けると、帆8の自由辺34は弧を描き、帆8は風を捉えてはらみ、弱風も逃さないので、風力発電用風車4は微風でも回転することができる。また、乱流により風向きが変わっても、帆8の自由辺34は弧を描き、帆8は風を捉えてはらんでいるので、風向きに対して広角度に風を捉えることができ、風力発電用風車4は止まることなく回転することができる。
【0027】
前記制限手段9には、ロープを用いることができる。ロープは、前記自由点33に一端が固定され、他端が前記第2固定点32の固定された前記回転台5の外周部から時計回りの方向の外周部に固定されている。このロープの前記一端の届く範囲によって前記自由点33の移動範囲11が制限されている。具体的には、ロープは、前記回転台5の前記帆柱6の立てられた位置から時計回りの方向の地点に一端が固定され、他端が腕7の固定端から離れた地点の腕7に固定されている。できるだけ離れている方がロープに掛かる張力が小さくなるので、図2に示すように、ロープは腕7の固定端の反対側の自由端に接続することが好ましい。ロープは、繰り返し、曲がったり、ピンと張ったりすることができる。ロープが曲がればロープの両端間の距離は短くなり、張ればロープはそれ以上伸びずロープの両端間の距離は一定に保たれる。このことにより、腕7は帆柱6の回りを回動自在であるが、ロープによって、ロープの前記他端の届く範囲に限られ、腕7の回転できる回動角度が移動範囲11に制限されている。移動範囲11は、帆柱6を回転軸とするほぼ半回転分にしている。
【0028】
なお、図2では、全てのロープの一端は、前記回転台5のそれぞれ対応する前記帆柱6の立てられた位置から時計回りの方向の地点に固定したが、この方向に固定すれば、風力発電用風車4が風を受けると、回転台5は、反時計回りの方向に回転する。全てのロープの一端を、前記回転台5のそれぞれ対応する前記帆柱6の立てられた位置から反時計回りの方向の地点に固定してもよく、この方向に固定すれば、風力発電用風車4が風を受けると、回転台5は、時計回りの方向に回転する。
【0029】
図3(a)と(b)に示すように、腕7は、腕保持部12によって、帆柱6のまわりを回動自在に保持されている。腕保持部12としては、具体的には、回転ベアリングを用いることができる。帆8は三角形をしており、一辺は、帆柱6に固定されている。その固定された一辺に対向する自由点33には帆牽引索15が取り付けられている。帆牽引索15は、腕7の先端に取り付けられた滑車16に引き回されて、腕7の下に配置された帆展開機構部14に接続している。帆柱6の根元には、帆巻き機構部13が、配置されている。
【0030】
図4(a)と(b)に示すように、帆巻き機構部13は、帆柱6を回転させて帆柱6の外周に帆8を巻くことができる。帆8は、帆8の三角形の一辺を軸に巻かれる。帆8が帆柱6の外周に巻かれると、帆牽引索15は、帆8を牽引しながら、帆展開機構部14から引き出される。このことにより、帆8は、巻かれながらもピンと張られた状態を維持できる。また、帆展開機構部14は、巻かれた前記帆8の反対側の端から前記帆8を引き出して展開することにより、帆8を帆柱6と腕7とに張ることができる。帆8が帆柱6から引き出されると、帆巻き機構部13は、帆8に張りを持たせながら巻き戻す。
【0031】
図5に示すように、風力発電用風車4は、さらに、風力発電用風車4の回転によって発電した出力電圧を検出する出力電圧検出部21と、出力電圧判定部24と、巻き・展開指示部26とを有している。
【0032】
出力電圧判定部24は、検出された出力電圧を表す信号を入力し、所定の基準電圧との大小関係を判定する。出力電圧が基準電圧以上であれば、巻き・展開指示部26に巻き指示が出力される。巻き・展開指示部26は、巻き指示を受信すると、帆巻き機構部13、さらには、帆展開機構部14に、帆8をピンと張ったまま帆8を帆柱6に巻くような制御信号を出力する。一方、出力電圧が基準電圧未満であれば、巻き・展開指示部26に展開指示が出力される。巻き・展開指示部26は、展開指示を受信すると、帆展開機構部14、さらには、帆巻き機構部13に、帆8をピンと張ったまま帆8を帆柱6から引き戻して展開するような制御信号を出力する。回転台5の回転により発電した電力の出力電圧は、回転台5の回転速度と相関関係があると考えられるので、回転台5の回転速度に応じて、帆8を帆柱6に巻いたり、巻かれた帆8を帆柱6から展開したりすることができることになる。回転速度に合わせて帆8を帆柱6に巻き込むことにより、帆8の有効面積が調節できるので広い風速領域での低速回転での運転が可能である。
【0033】
例えば、微風であれば、この微風を捉えるために大きく帆8を張って低速回転可能にし、強風であれば、帆8を小さく張って低速回転可能にする。さらに、暴風時には、帆8を完全に帆柱6に巻き込み、風力発電用風車4の損傷を防ぐことができる。また、帆8が帆柱6に巻かれているので、暴風時には、帆柱6と帆8を取り除くことも容易にできる。なお、回転台5の回転速度としては、毎分1回転から2回転する程度でよく、風切音が発生しない範囲で基準回転速度を設定することで、回転速度が基準回転速度になるように、帆8の有効面積を調節することができる。風がはらんだ帆8は美しいものであるが、この美しい帆を静かに優雅に低速回転させて、弱風でも風力発電ができるようになる。帆の有効面積を制御して強風でも発電できるようになる。また、回転速度が増加すれば帆を巻き、回転速度が減少すれば帆を展開することにより、回転速度を低速のまま一定にすることができる。
【0034】
次に、風力発電用風車4が、風を受けて回転する機構を説明する。
【0035】
図6に示すように、風が方向31aのみから吹いているとする。回転台5の回転中心となる垂直軸10から、風上方向に引いた直線を風基線27とする。風基線27を基準として垂直軸10の回りの反時計回りの方向を正(+)方向とする。帆柱61と垂直軸10とを結んだ直線が風基線27となす帆柱角θ1が、0°以上180°以下の範囲内にある場合を考える。帆81の自由点33は、制限手段91aによって、第2固定点32より回転台5上の正方向の位置に移動できなくなっている。帆81は風になびき風下方向を向こうとするが、帆81を張った腕71aが、制限手段91aに引かれて風下方向を向けないので、帆81は風下方向を向けず風をはらんで風を捉える。このように、帆81の第2固定点32が風下方向に移動するとき、帆81は風を捉え、帆81の三角形の第2固定点32に対向する自由辺34は弧を描く。
【0036】
帆柱61と垂直軸10とを結んだ直線が腕71aとなす帆角θ11は、略0°になり、腕71aの自由端は、垂直軸10の方向を向き、垂直軸10に最も近くなる。帆81が風を捉えると、帆81は風下方向に力を受ける。この力は、帆柱61と制限手段91aを介して回転台5に伝達され、回転台5は、反時計回りに回転する。回転台5上の反時計回りの回転において、帆柱6が風下方向に回転移動するとき、帆81は風を捉えることができる。
【0037】
一方、帆柱62と垂直軸10とを結んだ直線が風基線27となす帆柱角θ2が、180°を超え360°未満の範囲内である場合を考える。帆82の第2固定点32が風上方向に移動するとき、帆82は風になびく。すなわち、帆82が風になびき風下方向を向こうとすると、帆82と腕72aとは制限手段91aに引かれることなく風下方向を向けるので、帆82は風にたなびき風を捉えることはできない。帆82は風を捉えないので、帆82は風から力を受けず、したがって、帆柱62、制限手段92aと回転台5も風から力を受けることはない。回転台5上の反時計回りの回転において、帆柱6が風上方向に回転移動するとき、帆82は風になびく。帆82が風になびくとき、すなわち、帆柱角θ2が180°を超え360°未満の範囲内であれば、腕72aと風基線27とは平行になるので、帆柱62と垂直軸10とを結んだ直線が腕72aとなす帆角θ12は、360°から帆柱角θ2を引いた角度に等しくなる。
【0038】
帆柱61乃至63が3本以上あれば、少なくとも1本以上は、風基線27となす帆柱角θ1、θ2、θ3が、0°以上180°以下の範囲内に入るので、少なくとも1枚以上の帆81、82、83a1は風を捉えて、回転台5を回すことができる。
【0039】
なお、帆柱63において、帆83a1が風を捉えながら回転台5が回転し、帆柱63と垂直軸10とを結んだ直線が風基線27となす帆柱角θ3が、180°前後を通過する場合を考える。帆83a1は、今まで風を受けていた面とは反対の面から風を受けるので、帆83a1と腕73a1は、帆83a2と腕73a2の位置まで帆柱63を回転中心として回動する、いわゆる、帆83a1と腕73a1は風を受けてジャイブする。このジャイブ(回動)の後、帆83a2は風にたなびくようになる。帆柱角が180°になると腕73a1と帆83a1が帆柱63を軸としてほぼ半回転し、腕73a2と帆83a2の位置に移動し、帆尾が最も風下になる。帆角θ13は0°から180°となる。帆柱角が180°から360°に至る回転台5の風に向かって右側半分では帆角θ13、θ12は180°から徐々に減少してゆき、帆柱角θ1乃至θ3が360°(0°)で帆角θ11乃至θ13は0°となる。右側半分では帆尾は帆柱62の風下直下に位置し無駄な抵抗を生み出さない。
【0040】
このように、風に向かって回転台5の左側半分にある帆柱61に張られた帆81で風を捉えて、風の抗力で回転台5を回転させ、一方で、風に向かって右側半分にある帆柱62に張られた帆82に働くその回転を押し戻す方向の風の抗力は、セールヨットの帆の原理を利用し、帆82を風になびかせることで、極力小さくしている。風に向かって左側半分にある帆柱61に張られた帆81では、「風と捉える帆」として機能させ、風に向かって右側半分にある帆柱62に張られた帆82では、「風になびく帆」として機能させ、風に対する回転台5上の位置関係により帆81、82等の機能を変化させている。そして、「風と捉える帆」から「風になびく帆」への機能の切り替えに帆8にジャイブを起こさせている。
【0041】
次に、風が、風の方向31aから吹いた後に、風向きが変わり、風の方向31bから吹き始めたとする。風の方向31bに向かって右側に位置する帆柱61と63では、帆柱61と63の風下方向の腕71bと73bで示す位置に腕が移動し、帆81、83a2は風になびくようになる。一方、風の方向31bに向かって左側に位置する帆柱62では、制限手段92bで示す位置に移動した制限手段よって、腕が腕72bで示す位置に保持され、帆82が風を捉えることができる。乱流により風向きが変わり、風が、風の方向31bから吹いても、回転台5は、常に反時計回りに回り続けることができる。
【0042】
次に、風が、風の方向31aから吹いた後に、風向きが変わり、風の方向31cから吹き始めたとする。風の方向31cに向かって右側に位置する帆柱61では、帆柱61の風下方向の腕71cで示す位置に腕が移動し、帆81は風になびくようになる。一方、風の方向31cに向かって左側に位置する帆柱62と63では、制限手段92cと93cで示す位置に移動した制限手段よって、腕が腕72cと73cで示す位置に保持され、帆82と83a2が風を捉えることができる。ここで、注目すべきは、垂直軸10から腕73cまでの距離が、垂直軸10から帆柱63までの距離より、大きくなっている点である。風の抗力に起因する回転モーメントを大きくすることができ、弱い風でも回転台5を回転させることができるようになる。そして、乱流により風向きが変わり、風が、風の方向31cから吹いても、回転台5は、常に反時計回りに回り続けることができる。
【0043】
以上、第1の実施形態によれば、美しい帆8を静かに優雅に低速回転させて、弱風乱流でも風力発電ができるようになる。また、帆8の有効面積を制御して、強風等の風速によらず、低速回転させて、発電できるようになる。暴風時には帆8を帆柱に巻き込み損傷を防ぐことが可能になる。小型なので大量生産による経済効果を求めることが可能である。また、小型で機械的構造が簡単なので設置が容易で、屋根の上にも設置でき、建設単価を低くすることができる。
【0044】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。図7(a)と(b)に示すように、第1の実施形態との相違点は、帆8は、帆柱6に巻かれるのではなく、腕7の外周に巻かれている点である。この相違点により、帆8の一辺は、腕7に固定されている。固定された一辺に対向する頂点の第1固定点31には帆牽引索15が取り付けられているが、この帆牽引索15は、帆柱6の先端に取り付けられた滑車16に引き回されて、帆柱6の側面に配置された帆展開機構部14に接続している。腕7の固定端の近傍には、帆巻き機構部13が、配置されている。帆巻き機構部13は、腕7を回転させて腕7に帆8を巻くことができる。帆8が腕7に巻かれると、帆牽引索15は、帆8を牽引しながら、帆展開機構部14から引き出される。また、帆展開機構部14は、巻かれた前記帆8の反対側の端から前記帆8を引き出して展開することにより、帆8を帆柱6と腕7とに張ることができる。第1の実施形態の変形例によっても、第1の実施形態と同様に、帆8の有効面積を制御できるので、強風等の風速によらず、低速回転させて、発電することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図8に示すように、第2の実施形態に係る風力発電装置1は、風力発電用風車4と、風力発電用風車4の回転によりシャフト3を回転させて発電する発電機2とを有している。
【0046】
風力発電用風車4は、シャフト3を回転軸として一体に回転する回転台5と、この回転台5の回転軸の延長上に1本立てられた帆柱6と、この帆柱6によって前記回転台5の上方に固定される第1固定点31と、前記回転台5の外周部に固定される第2固定点32と、前記回転台5に対して移動可能な自由点33とによって張られる三角形の4枚の帆8と、前記自由点33の移動範囲を制限する制限手段9とを有している。そして、前記帆8が風を受けると、前記帆8の前記三角形の前記第2固定点32に対向する自由辺34は弧を描き、前記帆8は風をはらむことができる。固定手段35は、第1固定点31を帆柱6の上方に固定し、第2固定点32を回転台5の外周部に固定している。帆8は風を受けると、帆8の自由辺34は弧を描き、帆8は風を捉えてはらみ、弱風も逃さないので、風力発電用風車4は微風でも回転することができる。また、乱流により風向きが変わっても、帆8の自由辺34は弧を描き、帆8は風を捉えてはらんでいるので、風向きに対して広角度に風を捉えることができ、風力発電用風車4は止まることなく回転することができる。帆8は4枚に限らず、1枚以上であればよい。
【0047】
図9に示すように、帆柱6は、回転台5の回転軸上に立てられている。回転台5は、帆柱6上の回転軸の回りを回転可能になっている。図9は4枚帆の例を示しており、帆柱6の上部から回転台5の外周部へ、4本のワイヤ状の固定手段35が張られている。隣接する固定手段35とのなす角度が均一になるように、固定手段35は配置されている。図9に示すように固定手段35が4本であれば、90°間隔で配置される。
【0048】
前記制限手段9には、第1の実施形態と同様に、ロープを用いることができる。ロープは、前記自由点33に一端が固定され、他端が前記第2固定点32の固定された前記回転台5の外周部から時計回りの方向の回転台5の外周部に固定されている。このロープの前記一端の届く範囲によって前記自由点33の移動範囲11が制限されている。
【0049】
なお、図9では、全てのロープの回転台5の外周部に固定される一端は、前記回転台5のそれぞれ対応する前記固定手段35が固定された位置から時計回りの方向の地点に固定している。この方向に固定することにより、風力発電用風車4が風を受けると、回転台5は、反時計回りの方向に回転する。全てのロープの回転台5の外周部に固定される一端を、前記回転台5のそれぞれ対応する前記固定手段35が固定された位置から反時計回りの方向の地点に固定してもよく、この方向に固定すれば、風力発電用風車4が風を受けると、回転台5は、時計回りの方向に回転する。
【0050】
次に、風力発電用風車4が、風を受けて回転する機構を説明する。なお、説明を容易にするために、まずは、図10に示すように、帆8が1枚の場合について説明する。
【0051】
図11の(a)から(i)の9個の図は、帆8が1枚の場合の風力発電用風車4の上面図であり、帆8が紙面上方から風を受けてはらみ、回転台5と帆8が反時計回りに回転する様子を示している。帆底が第2固定点32と自由点33の間に描く孤と、制限手段9、回転台5、帆柱6を示して、回転台5と帆8が、順次回転してゆく様子を表している。回転台5は、反時計回りに回転している。
【0052】
図11(a)では、第2固定点32が最も風上に位置しているときをとらえている。帆8の自由点33は、制限手段9によって、第2固定点32より回転台5上の反時計回りの方向の位置に移動できなくなっている。帆8は風に押され風下方向に移動しようとするが、帆8は制限手段9に引かれて移動できずに、帆8は風をはらんで風を捉える。そして、帆8の三角形の第2固定点32に対向する自由辺34(図10参照)は弧を描く。このとき、図11(a)に示すように、帆底の描く孤の第2固定点32における接線は風向とほぼ平行になっていることから、紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の右方向へ方向を変えて流れる。このように風向きを変えることで、帆8には紙面左方向への力が働き、第2固定点32が帆柱6の風上に位置しているので、回転台5には反時計回りの加速トルクが発生する。回転台5は、反時計回りに回転することになる。
【0053】
図11(b)では、図11(a)のときから、回転台5が反時計回りに少し回転して、自由点33を基点として第2固定点32へ向かう方向と風上に向かう方向とを見込んだ角度が鋭角をなすときをとらえている。図11(a)の状態と同様に紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の右方向へ方向を変えて流れるので帆8には紙面左方向への力が働き、回転台5には反時計回りの加速トルクが発生する。回転台5は、反時計回りに加速しながら回転する。
【0054】
図11(c)では、回転台5が反時計回りにさらに回転して、第2固定点32と自由点33を結ぶ直線が風向と直角になるときをとらえている。紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の左右両方向へ向きを変えて分流する際に風は帆8を紙面下方の方向に押すので帆8には紙面下方の方向への力が働き、第2固定点32が帆柱6の紙面の左側に位置しているので、回転台5には反時計回りの加速トルクが発生する。帆8に働く力の回転台5の円周接線成分が大きいので、このとき発生する加速トルクは大きい。回転台5は、反時計回りに加速しながら回転する。
【0055】
図11(d)では、回転台5が反時計回りにさらに回転して、帆底の描く孤の自由点33における接線が風向とほぼ平行となっているときをとらえている。図11(c)の直後から、図11(d)のときまでは、紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の左方向へ方向を変えて流れるので、帆8には紙面右下方向への力が働き、第2固定点32が帆柱6の左側に位置しているので、反時計回りの加速トルクが発生する。回転台5は、反時計回りに加速しながら回転する。
【0056】
図11(e)では、回転台5が反時計回りにさらに回転する間に帆8が風に流されてジャイブしたのち、図11(d)のときとは異なった面で風を受けているときをとらえている。風を受ける帆面が表面から裏面へ変わっている。紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の右方向へ方向を変えて流れるので帆8には紙面左下方向への力が働き、第2固定点32が帆柱6の左側に位置しているので、反時計回りの加速トルクが発生する。回転台5は、反時計回りに加速しながら回転する。なお、帆8は、ジャイブすることにより、両面で交互に風を受けることができ、回転台5の回転に伴って、帆8が回転し、帆8の風向きに対する相対的な向きが変化しても、広範囲にわたり風を捉えることができる。また、風向きそのものの変化に対してもより広角度に風を捉えることができる。
【0057】
図11(f)では、回転台5が反時計回りにさらに回転して、第2固定点32と自由点33を結ぶ直線が再度風向と直角になるときをとらえている。図11(e)のときから、図11(f)の直前までは、紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の右方向へ方向を変えて流れるので帆8には紙面左下方向への力が働き反時計回りの加速トルクが発生する。この間、帆底の描く孤が回転台5の円周に沿うので、帆8に働く力の回転台5の円周接線成分が小さく、発生する加速トルクは小さいが、回転台5は、反時計回りに加速しながら回転する。
【0058】
図11(f)のときには、紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の左右両方向へ向きを変えて分流するので帆8には紙面下方向への力が働くが、回転台5の径方向の成分が大きく円周接線成分が小さいので回転台5には回転トルクはほとんど発生しない。回転台5は、慣性により継続して反時計回りに回転する。
【0059】
図11(g)では、回転台5が反時計回りにさらに回転して、帆底の描く孤の第2固定点32における接線が紙面上方から吹く風の風向とほぼ平行となっているときをとらえている。図11(f)の直後から、図11(g)のときまでは、紙面上方から吹く風は帆8にあたり紙面の左方向へ方向を変えて流れるので帆8には紙面右下方向への力が働き、第2固定点32が帆柱6の右側に位置しているので、時計回りの回転台5を減速させる回転トルクが発生する。この間、帆底の描く孤が回転台5の円周に沿うので、帆8に働く力の回転台5の円周接線成分が小さく、発生する回転トルクは小さい。回転台5は、慣性により継続して反時計回りに回転する。
【0060】
図11(h)では、回転台5が反時計回りにさらに回転して、第2固定点32の風下の方向に、自由点33が位置しているときをとらえている。このときには、制限手段9がたるみ、紙面上方からの風は帆8をはらませることができず、帆8は風にたなびく。回転台5に回転トルクはほとんど発生しない。回転台5は、慣性により継続して反時計回りに回転する。
【0061】
図11(i)では、回転台5が反時計回りにさらに回転して、固定点32が最も風上に位置しているときをとらえている。図11(g)の直後から、図11(i)の直前までは、図11(h)のときと同様に固定点32の風下の方向に、自由点33が位置しているので、制限手段9がたるみ、紙面上方からの風は帆をはらませることができず、帆は風にたなびく。トルクはほとんど発生しない。回転台5は、慣性により継続して反時計回りに回転する。
【0062】
図11(i)のときになって、帆底の描く孤の第2固定点32における接線は風向とほぼ平行となり、帆は風をはらむ。風の当たる帆面が、裏面から表面へ変わっている。図11(i)のときは図11(a)のときと同じなので、回転台5は1回転したことになる。回転台5は風が吹くあいだこの回転を繰り返すことができる。
【0063】
回転台5には、1回転の間に、反時計回り方向の加速トルクと時計回りの方向の回転トルクが発生するが、それでも、回転台5が反時計回りするのは、1回転の間において、減速トルクによる仕事量より、加速トルクによる仕事量の方がはるかに大きいからである。そして、帆8が1枚であっても、この風力発電用風車4は反時計回りの方向に回転し続けることがわかる。
【0064】
図11では、紙面上方から風が吹いて来るとしたが、回転台5と帆8は、360°回転するので、紙面上方に限らずどの方向から風が吹いても、紙面上方から吹くのと同様に帆8は風を捉え回転台5と帆8は回転する。
【0065】
帆8の形とその大きさや制限手段9を変えることにより風車のトルク特性を変えることが出来る。
【0066】
次に、図8と図9に示すように、帆8が4枚の場合に戻って、風力発電用風車4が、風を受けて回転する機構を説明する。帆8が複数枚になると、帆8の少なくとも1枚は、風上に向かって帆柱6(回転台5の中心)の左側に位置しているので、その帆8によって回転台5には反時計回りの方向の回転トルクが作用し、回転台5は、反時計回りに回転することになる。なお、複数の帆8のなかの、風上に向かって帆柱6(回転台5の中心)の右側に位置している帆8のなかには、回転台5に時計回りの方向の回転トルクを作用させるものがあるが、複数の帆8から回転台5に作用する回転トルクの総和としては、常に、反時計回りの回転トルクが時計回りの回転トルクより大きくなり、回転台5は反時計回りに回転する。
【0067】
次に、第2の実施形態の変形例について図12、図13、図14、図15を用いて説明する。図12は、第2の実施形態の変形例に係る風力発電装置の上面図であり、図13は、図12のB−B方向の断面図であり、図14は、図12のA−A方向の断面図であり、図15は、図14のC−C方向の断面図である。第2の実施形態との相違点は、第1の実施形態と同様の帆巻き機構部13と帆展開機構部14を有している点である。
【0068】
帆巻き機構部13は、第2固定点32の近傍の回転台5に配置されている。帆巻き機構部13は、帆巻き機構部13に連結された第2ギヤ46とローラ39に連結された第1ギヤ45を介して、ローラ39を回転させてローラ39の外周に帆8を巻くことができる。ローラ39は、上端と下端を軸受け41によって回動自在に固定手段35に固定されている。固定手段35の1つは帆柱6の上端に固定され、固定手段35のもう1つは第2固定点32の近傍の回転台5に固定されている。
【0069】
帆8は、帆8の三角形の一辺を軸にローラ39の外周に巻かれると、制限手段9は帆牽引索15として、帆8を牽引しながら、巻き込まれた帆8の長さと同じ長さだけ、帆展開機構部14から引き出される。三角形の帆8のローラ39に固定され巻かれる一辺に対向する自由点33に帆牽引索15(制限手段9)が取り付けられている。帆牽引索15(制限手段9)は、回転台5の外周部に設けられた貫通孔47を通り、貫通孔47の直下に設けられた滑車16に引き回されて向きを変え、回転台5の裏面に配置された帆展開機構部14に接続している。帆展開機構部14が帆牽引索15(制限手段9)を引っ張りながら繰り出すことにより、帆8は、巻かれながらもピンと張られた状態を維持できる。所定の長さの巻き込みが完了したら帆巻き機構部13と帆展開機構部14とをロックする。
【0070】
また、帆展開機構部14は、巻かれた帆8の反対側の端である自由点33から帆8を引き出して展開することにより、帆8を張ることができる。帆8がローラ39から引き出されると、帆巻き機構部13は、帆8に張りを持たせながら帆8を繰り出し巻き戻す。詳細には、まず、帆展開機構部14が、所定の張力になるまで帆牽引索15(制限手段9)を引き込み、帆8を所定の張力で張る。この所定の張力を維持したまま、帆展開機構部14が帆8を引き出し、帆巻き機構部13が帆8を送り出す。所定の長さの帆8の引き出しが完了したら、帆巻き機構部13は帆8の送り出しをロックする。帆展開機構部14は、維持されてきた所定の張力を緩め、帆8が風をはらみやすいように所定の長さだけ帆8を繰り出して、その後、繰り出しをロックする。このことにより、帆8が風をはらんだときの弧の形状を調整することができる。
【0071】
図15に示すように、ローラ39の円周上に、帆8の自由点33に対向する辺が固定されている。ローラ39は、時計回りと反時計回りのどちらの方向にも回転可能であり、帆8を巻き取ったり展開したりすることができる。ローラ39を覆うように円筒状のケーシング38が設けられている。帆8がケーシング38の貫通溝を通る。ケーシング38によれば、帆8が巻かれる際に他のものも一緒に巻き込まれるのを防止することができる。
【0072】
そして、第2の実施形態の変形例によっても、第1の実施形態と同様に、図5の出力電圧検出部21と、出力電圧判定部24と、巻き・展開指示部26とを有することにより、帆8の有効面積を制御できるので、強風等の風速によらず、低速回転させて、発電することができる。
【0073】
以上、第2の実施形態によれば、美しい帆8を優雅に回転させて、弱風乱流でも風力発電ができるようになる。また、帆8の有効面積を制御して、強風等の風速によらず、低速回転させて、発電できるようになる。暴風時には帆8を帆柱に巻き込み損傷を防ぐことが可能になる。小型なので大量生産による経済効果を求めることが可能である。また、小型で機械的構造が簡単なので設置が容易で、屋根の上にも設置でき、建設単価を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1の実施形態に係る風力発電装置の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る風力発電装置の上面図である。
【図3】(a)は展開された帆の周辺の詳細な上面図であり、(b)は展開された帆の周辺の詳細な正面図である。
【図4】(a)は巻かれた帆の周辺の詳細な上面図であり、(b)は巻かれた帆の周辺の詳細な正面図である。
【図5】第1の実施形態に係る風力発電用風車の制御部周りの構成図である。
【図6】風を受けて回転する風力発電用風車の上面図である。
【図7】(a)は第1の実施形態の変形例に係る風力発電装置の展開された帆の周辺の詳細な上面図であり、(b)は第1の実施形態の変形例に係る風力発電装置の巻かれた帆の周辺の詳細な上面図である。
【図8】第2の実施形態に係る風力発電装置(4枚帆)の斜視図である。
【図9】第2の実施形態に係る風力発電装置(4枚帆)の上面図である。
【図10】第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の斜視図である。
【図11】(a)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(風が紙面上方から吹いているところ、第2固定点が最も風上に位置しているとき)であり、 (b)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(風が紙面上方から吹いているところ、自由点を基点として第2固定点へ向かう方向と風上に向かう方向とを見込んだ角度が鋭角をなすとき)であり、 (c)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(風が紙面上方から吹いているところ、第2固定点と自由点を結ぶ直線が風向と直角になるとき)であり、 (d)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(風が紙面上方から吹いているところ、帆底の描く孤の自由点における接線が風向とほぼ平行となっているとき)であり、 (e)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(ジャイブしたのち)であり、 (f)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(風が紙面上方から吹いているところ、第2固定点と自由点を結ぶ直線が再度風向と直角になるとき)であり、 (g)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(風が紙面上方から吹いているところ、帆底の描く孤の第2固定点における接線が紙面上方から吹く風の風向とほぼ平行となっているとき)であり、 (h)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(風が紙面上方から吹いているところ、第2固定点の風下の方向に、自由点が位置しているとき)であり、 (i)は、風を受けて回転する第2の実施形態に係る風力発電装置(1枚帆)の上面図(1回転して(a)に戻ってきたとき)である。
【図12】第2の実施形態の変形例に係る風力発電装置の上面図である。
【図13】図12のB−B方向の断面図である。
【図14】図12のA−A方向の断面図である。
【図15】図14のC−C方向の断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 風力発電装置
2 発電機
3 シャフト
4 風力発電用風車
5 回転台
6 帆柱
7 腕
8 帆
9 制限手段(ロープ)
10 垂直軸
11 回動角度範囲
12 腕保持部(回転ベアリング)
13 帆巻き機構部
14 帆展開機構部
31 第1固定点
32 第2固定点
33 自由点
34 自由辺
35 固定手段
38 ケーシング
39 ローラ
41 軸受け
45 第1ギヤ
46 第2ギヤ
47 貫通孔
61、62、63 帆柱
71a、71b、71c、72a、72b、72c 腕
73a1、73a2、73b、73c 腕
81、82、83、83a1、83a2、84 帆
91a、91b、91c 制限手段(ロープ)
92a、92b、92c 制限手段(ロープ)
93a1、93a2、93b、93c 制限手段(ロープ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方向に回転する回転台と、
前記回転台に立てられた帆柱と、
前記帆柱によって前記回転台の上方に固定される第1固定点と、前記回転台の外周部に固定される第2固定点と、前記回転台に対して移動可能な自由点とによって張られる三角形の帆と、
前記自由点の移動範囲を制限する制限手段とを有し、
前記帆が風を受けると、前記帆の前記三角形の前記第2固定点に対向する自由辺は弧を描くことを特徴とする風力発電風車。
【請求項2】
前記帆は、前記風を受けてジャイブすることを特徴とする請求項1に記載の風力発電用風車。
【請求項3】
前記帆は、両面で交互に前記風を受けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の風力発電用風車。
【請求項4】
前記自由点は、前記制限手段によって、前記第2固定点より前記回転台上の前記正方向の位置に移動しないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の風力発電用風車。
【請求項5】
前記正方向の回転に伴い前記第2固定点が風下方向に移動するとき、前記帆は風を捉え、
前記正方向の回転に伴い前記第2固定点が風上方向に移動するとき、前記帆は前記風を捉えるかまたは前記風になびくことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の風力発電用風車。
【請求項6】
前記制限手段は、前記自由点に一端が固定され、他端が前記第2固定点の固定された前記外周部から前記正方向とは反対方向の前記外周部に固定されたロープであり、前記ロープの前記一端の届く範囲によって前記移動範囲が制限されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の風力発電用風車。
【請求項7】
固定端に前記第2固定点が固定され、自由端に前記自由点が固定され、前記第2固定点のまわりに回動自在である腕を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の風力発電風車。
【請求項8】
前記帆は、前記三角形の辺を軸に巻かれることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の風力発電用風車。
【請求項9】
前記風力発電用風車の回転によって発電した電圧の、設定された基準電圧に対する大小関係に応じて、前記帆を巻くことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の風力発電用風車。
【請求項10】
前記帆柱が、前記回転台の回転軸の延長上に立っていることを特徴とする請求項1乃至請求項9にいずれか1項に記載の風力発電用風車。
【請求項11】
前記腕は、前記固定端が前記帆柱に取り付けられ、前記帆柱のまわりに回動自在であり、
前記帆柱が、前記第2固定点の近傍に立っていることを特徴とする請求項3乃至請求項7にいずれか1項に記載の風力発電用風車。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の風力発電用風車と、
前記回転台の回転によりシャフトを回転させて発電する発電機とを有することを特徴とする風力発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate