説明

風力発電船

【課題】風力発電において、発電コストを下げ、天候による影響を少なくし、低音騒音が問題とならない風力発電船を提供する。
【解決手段】喫水線より下の幅を狭く、喫水線より下の長さを長くし、喫水線より下の進行方向と平行な面の面積を広くした複数の船体24を、樹脂又は鉄骨等、あるいはそれらを併用して結合し、前記船体又は鉄骨等上に大型の風力発電機14,15,20,21を進行方向と直角に設置し、前記風力発電機によって発電した電力により化合物を電気分解し、電気分解によって作られた物質を陸上に搬送して再度結合させて発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力によって発電を行う風力発電船に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の風力発電機は、効率を上げるため、及び大きな発電電力を得るため非常に大型になっている。そのため人里離れたところに設置される。これにより、道路建設、土台建設及び大型トレーラによる遠距離の多数回の搬送等による搬送費、設置費が高価となっている。
前記により、発電コストが高くなること、さらに発電電力が天候によって不安定であること、設置するに適した場所が少ないこと、及び低音騒音があることなどの問題点があるため、実用化が進んでいない。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記問題点を解決するに、風力発電機を船上に設置するという案が考えられるが、船上に設置した場合は、風力を十分電気に変換できないこと、発電した電力を陸上に搬送するのが困難であること、及び海流及び風等によって流されるという問題点がある。
【課題を解決する為の手段】
【0004】
請求項1の風力発電船においては、喫水線より下の幅を狭く、喫水線より下の長さを長くし、喫水線より下の進行方向と平行な面の表面積を広くした複数の船体(以降「胴船」と呼ぶ)を、樹脂又は鉄骨等、あるいはそれらを併用しで結合し、前記船体又は鉄鋼等上に大型の風力発電機を進行方向と直角に設置していることを特徴とする。
【0005】
請求項2の風力発電船においては、請求項1の風力発電システムの風力発電機によって発電した電力により化合物を電気分解する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されているような効果を奏する。
【0007】
当該風力発電船は、喫水線以下の進行方向と平行な面の表面積を広くして進行方向と直角の方向の水の抵抗を非常に大きくしているので、風力発電機の向きを進行方向と直角にすれば、風による船の移動は殆どなく、さらに海上では障害物がないので、風の向きは略一定しており、変化してもゆっくりした変化であるので、船の向きを変えることによって対応できる。従って風の力を陸上の場合と略同程度の効率で電力に変換できる。また、海流及び風によって多少流されるが、進行方向の水の抵抗は非常に小さくなっているので、元の場所に、非常に少ないエネルギーで戻れることになる。また、一般に海上の方が陸上より風が強く、さらにより風の強い適切な場所に移動できるので、総合的に陸上の場合より効率が高くなっている。
【0010】
当該船は、胴船の数を多くして、幅を広くしているため、強い風及びうねりに対しても転覆せず安定している。
【0009】
当該胴船は、通常移動することがないので強力な推進機を必要とせず、人が常時居住する必要がないので、船内に人の居住設備を設ける必要もなく、また、形状もほぼ同一にでき、部品の共通化が容易となるので、船の各部品の量産が容易となり、安価に製造できる。
【0010】
風力発電機の各部品は、主に海上から搬送されるので、搬送費は、陸上の場合と比べて非常に安価となる。
【0011】
当該風力発電船の風力発電機は、船体上又は鉄骨等上に容易に据付できるように設定されており、その工事にドック又はクレーン船を使用できるため、風力発電機の据付工事費は、陸上の場合と比べて非常に安価となる。
【0012】
発電した電力により化合物例えば水(船上では水は容易に得られるので以降化合物は水として説明する)を電気分解して、水素と酸素に分解する。さらにこれらを冷却圧縮して液体水素及び液体酸素(酸素はどこでも容易に得られるので除いても良い)にし、所定の収納容器に納める。これらを船舶によって陸上に搬送して、燃料電池等により化合させ、電力を取り出す。これにより、電力の陸上への搬送は容易にできることになる。前記器の搬送費は、主に海上搬送であるので安価である。
【0013】
前記液体水素等を保管しておくことにより、天候に関係なく適宜に電力を供給できることになるとともに、送電線を必要としないので、場所の制約を受けず、電力の需要に合わせて行えるので効果的である。一方、この発電量が火力発電量に匹敵するようになれば、火力発電は、最も効率の良い状態での運転が可能となる。
【0014】
電力を陸上に搬送する手段として、蓄電池に充電して、その蓄電池を陸上に搬送すれば、電力の搬送は可能であるけれど、現在は、蓄電池が高価であるので良策でなく、将来蓄電池が安価になれば、この方法も使用できる。
【0015】
以上のような効果が得られることより、炭酸ガス等の有害物質を排出しない、しかも低音騒音の心配のない安価で天候に影響されない電力が、半永久的に得られることになる。
しかも、海は広大であるため、前記の電力が無尽蔵に得られることになり、全ての電力は、この発電による電力に切り替えられることになる。
【0016】
本案においては、電力及び海水が容易に得られるので、海水から電力によって水銀及び放射能汚染物等の有害な物質を安価に除くことができる。さらに、甲板上に空地が多いので、甲板の上に農作物工場及び養殖所を設置することができ、クリーンな農作物及び海産物が得られる。
【発明を実施する為の最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施例の胴船の正面図、図2は前記胴船の断面図、図3は本発明の実施例の平面図、図4は前記実施例の正面図、図5は前記図の断面図である。
【0018】
図1において、推進機1は、本船により発電した電力により作動する。船本体の方向を変える場合と、風力が適切な場所に移動する場合等に使用する。進行方向と直角の方向からの力に対して、水の抵抗が大きくなるように、通常の船(点線で外形を表示している)に比べて進行方向と平行な面の面積が非常に大きくなっている。これにより、陸の場合とほぼ同程度に風力を電力に変換できる。2点鎖線は、水面の位置(喫水線に相当)を表示している。当該船は、積荷もなく、乗客もないので船の重量は略一定である。従って、喫水線の位置は略一定である。
【0019】
図2において、喫水線の位置の幅は、通常の船(点線で表示)より狭くして、進行方向の水の抵抗を小さくしている。本案は、薄い板を面と平行な方向で水を切る場合の水の抵抗は非常に小さいが、面と直角の方向で水を切る場合の水の抵抗は非常に大きく、その差が非常に大きいことを利用している。これを実現するため、喫水線の位置の幅を通常の船(点線で表示)より狭くし、深さを非常に深くしている。また、甲板が傾くと、発電効率が落ちる。甲板が傾く原因としては、うねりと風がある。うねりは、船の長さを長くし胴船の数を多くして幅を広くすることで、影響を少なくすることが出来る。風の場合は、風下の方の胴船に下方の力が加わるが、胴船の喫水線から上の体積が急に大きくなることで、浮力が急激に大きくなり、それを防ぐように働くので、発電に影響があるような大きな甲板の傾きは起こりにくくなっている。さらに発電機のブレードの角度を調整して船への作用を少なくするようになっている。うねり又は風により、甲板の傾きが発電に大きく影響する場合は、船を適切な場所に移動させる。また、天気予報により、前記の状況が予測される場合は、前もって、船を適切な場所に移動させて対応する。
【0020】
図3において、胴船24,25,26は、甲板19によって結合されている。本例においては3隻の胴船24,25,26から構成されているが、船の幅が広い場合は、胴船の数はその広さに応じて多くなる。外部(通常指令局)からの信号をアンテナ11によって受信し、その信号によって推進機22、23(推進機22は胴船26に装備され、図に表示がない。)を作動させ、本船の位置を変えるとともに、自船の種々のデータを外部(通常指令局)に送信する。また、自船において風向きを測定して、常時、船の向きを風の向きと直角になるように推進機22,23を調整する。
【0021】
甲板19上に搭載された風力発電機12,13,14,15,20,21によって発電する。
【0022】
発電した電力によって電気分解を行う工場16、で、水素と酸素を製造する。さらに前記工場16で、前記水素及び酸素を圧縮冷却して、液体水素及び液体酸素とし、所定の容器に充填する。
【0023】
甲板上に空地が多いので、農作物工場17,18を設置しても良い。又は、太陽光発電パネルを設置しても良い。
【実施例】
【0024】
ここで、図1〜5を参照して、実施例の詳細を説明する。
【0025】
図1において、胴船の長さは200m、喫水線から上の高さは20m、喫水線から下の高さは80mである。
【0026】
図2において、一番上部の幅は40m、喫水線の位置の幅は12mである。
【0027】
図3において、本案風力発電船の幅は100m、長さは200mである。甲板19の上に設置された風力発電機12、13,14,15,20,21の直径は60m、各風力発電機の発電定格は3MWである。当該船の発電定格は18MWとなる。当該船は、常時適切な場所に移動して発電を行うので、その効率は陸上の場合より高くなるが、ここでは、陸上と同じ30%として算出すれば、18×0.3=5.4MWとなる。前記電力を、海水を電気分解する工場16で液体水素に変換し、さらに前記液体水素を陸上に搬送して、陸上で水素発電又は燃料電池等にて電力に変換する。
【0028】
当該船は、通常10隻程度を一組として運用される。定期的に前記船を巡回して陸上に前記容器を搬送する船によって、液体水素が充填された容器と空の容器との交換を行う。前記容器は、液体水素を運搬する車両でも良い。船上での発電、電気分解、陸上での水素発電等総合の発電効率は、約20%となり、実効の発電電力は約3.6MWとなる。従って、年間の発電電力は、1隻あたり約3150万kWとなる。売価を20円/kWhとすれば、約63億円となる。これで、設備の減価償却は1年で可能であり、人手は殆ど掛らないため、ランニングコストは非常に安価となり、低価格の電力を安定に供給できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
全ての電力需要に利用できる。主な利用内容は下記の通り。
【0030】
電力会社の送電線に接続して、現在の火力発電、原子力発電等の代替。
【0031】
山間僻地等の配電線が行っていないところへの電力供給。
【0032】
停電時の補償用電力。
【0033】
自動車等の燃料電池の燃料。
【0034】
各家庭及び各事業者等各個別向けの電力
【図面の簡単な説明】
【図1】 風力発電船の胴船の正面図
【図2】 図1の断面図
【図3】 風力発電船の正面図
【図4】 風力発電船の平面図
【図5】 風力発電船の断面図
【符号の説明】
1,23 推進機
11 アンテナ及び表示灯
12,13,14,15、20、21 風力発電機
16 水素及び酸素の製造工場
17,18 農作物工場
19 甲板
24,25,26 胴船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫水線より下の幅を狭く、喫水線より下の長さを長くし、喫水線より下の進行方向と平行な面の表面積を広くした複数の船体を、樹脂又は鉄骨等、あるいはそれらを併用して結合し、前記船体又は鉄骨等上に大型の風力発電機を進行方向と直角に設置していることを特徴とする風力発電船。
【請求項2】
請求項1の風力発電船において、風力発電機によって発電した電力により化合物を電気分解する手段を有することを特徴とする風力発電船。
【請求項3】
請求項1及び請求項2の風力発電船において、太陽光発電パネルを設置していることを特徴とする風力発電船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−71726(P2013−71726A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227366(P2011−227366)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(501259190)
【Fターム(参考)】