説明

風力発電装置の異常振動検出装置

【課題】危険な過振動が発生した場合に風力発電装置を確実に停止させる一方で、故障検出に適した設計がなされた異常振動検出装置を提供する。
【解決手段】異常振動検出装置が、第1及び第2加速度検出手段と、第1加速度検出手段から出力される第1出力信号を受け取る演算装置と、第2加速度検出手段から出力される第2出力信号を受け取るフィルタリレーと、フィルタリレーの出力端子の状態に応じて当該風力発電装置を非常停止させるための安全システムとを備えている。フィルタリレーは、第2出力アナログ信号に対してフィルタリング処理を行うフィルタ回路部分を備えている。演算装置は、第1出力アナログ信号に対してデジタル演算を行うことによってフィルタ回路部分の出力信号の予測値を生成し、フィルタリレーのから受け取ったフィルタ回路部分の出力信号の実測値と予測値とを比較して第1加速度検出手段、第2加速度検出手段又はフィルタ回路部分の故障を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置の異常振動検出装置に関し、特に、風力発電装置を停止すべき過振動の発生を検出するための異常振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置には、一般に、風力発電装置の各機器を制御する制御システムとは別に、運転を停止すべき異常が発生した場合に当該風力発電装置を非常停止させる安全システムが設けられる。ここで、制御システムと別に安全システムが設けられるのは、重大な異常事態が発生した場合には、制御システムが故障しても風力発電装置の非常停止を可能にするためである。
【0003】
タワー又はナセルの過振動は、風力発電装置の運転を停止すべき重大な異常であり得る。これは、タワー又はナセルの過振動は、その程度によってはタワーの倒壊を招き得るからである。タワーの倒壊を招き得るような過振動の発生を検知した場合には、安全システムで風力発電装置を停止させなければならない。
【0004】
このような安全システムに求められる特性の一つは、危険な過振動が発生した場合に風力発電装置を確実に停止させる一方で、危険でない振動を検出しても風力発電装置を停止させないことである。特に危険な振動はタワーの固有振動数の近傍の周波数の振動であり、タワーの固有振動数の近傍の周波数の振動は、特別に監視する必要がある。その一方で、風力発電装置の稼働率を高めるためには、危険でない振動が発生しても風力発電装置の稼働を止めないことも求められる。風力発電装置においてタワーの固有振動数の近傍の周波数の振動を監視する技術は、例えば、特表2004−530825号公報、及び、対応する国際出願の国際公表第WO2002/075153号に開示されている。また、特開2000−321121号公報は、振動を監視する対象となる機器の振動周波数近傍の振動値のみを監視するための振動検知装置を開示している。
【0005】
安全システムに求められるもう一つの特性は、安全システム自体の故障検出が可能であることである。安全システムが故障した状態で風力発電装置を運転することは、安全上、回避しなければならない。したがって、安全システムは、故障検出に適した設計がなされていることが望ましい。しかしながら、上記の公知技術は、安全システムの故障検出の容易性を考慮したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−530825号公報
【特許文献2】国際公表第WO2002/075153号
【特許文献3】特開2000−321121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、危険な過振動が発生した場合に風力発電装置を確実に停止させる一方で、危険でない振動を検出しても風力発電装置の稼働を続けるように構成された異常振動検出装置について、故障検出に適した設計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の観点においては、風力発電装置の異常振動を検出するための異常振動検出装置が、風力発電装置の特定位置の加速度を検出する第1及び第2加速度検出手段と、第1加速度検出手段から出力される第1出力アナログ信号を受け取る演算装置と、第2加速度検出手段から出力される第2出力アナログ信号を受け取るフィルタリレーと、フィルタリレーの出力端子の状態に応じて当該風力発電装置を非常停止させるための安全システムとを備えている。フィルタリレーは、第2出力アナログ信号に対して所定の周波数成分を取り出すフィルタリング処理を行うアナログ回路を備えたフィルタ回路部分と、フィルタ回路部分の出力信号に応答して、フィルタリレーの出力端子の状態を遷移させる出力回路部分と、フィルタ回路部分の出力信号をフィルタリレーの外部に取り出すモニタ出力端子とを備えている。演算装置は、モニタ出力端子からフィルタ回路部分の出力信号を受け取ると共に、第1出力アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行って得られた値に対してフィルタ回路部分をシミュレートするデジタル演算を行うことによってフィルタ回路部分の出力信号の予測値を生成し、モニタ出力端子から受け取ったフィルタ回路部分の出力信号の実測値と予測値とを比較して第1加速度検出手段、第2加速度検出手段又はフィルタ回路部分の故障を検出する。
【0009】
フィルタリレーは、更に、テストスイッチを備え、出力回路部分は、フィルタ回路部分の出力とテストスイッチとに入力が接続されたOR回路を備えると共に、OR回路の出力信号に応答して出力端子の状態を遷移させるように構成されていることが好ましい。
【0010】
一実施形態では、演算装置が第1出力アナログ信号の入力レベルを監視し、フィルタリレーが、更に、前記第2出力アナログ信号の入力レベルを監視する入力モニタを備えている。この場合、演算装置は、第1及び第2出力アナログ信号の入力レベルに基づいて、フィルタ回路部分における故障の発生を判別することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、危険な過振動が発生した場合に風力発電装置を確実に停止させる一方で、危険でない振動を検出しても風力発電装置の稼働を続けるように構成された異常振動検出装置について、故障検出に適した設計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の風力発電装置の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における制御システムと安全システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるフィルタリレーの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態の風力発電装置の構成を示す側面図である。風力発電装置1は、基礎7に立設されるタワー2と、タワー2の上端に設置されるナセル3と、風車ロータ4とを備えている。風車ロータ4は、ナセル3に対して回転可能に取り付けられたロータヘッド5と、ロータヘッド5に取り付けられる風車翼6とを備えている。風力によって風車ロータ4が回転すると風力発電装置1は電力を発生し、風力発電装置1に接続された電力系統に電力を供給する。
【0014】
風力発電装置1には、風力発電装置1に設けられる各機器を制御するための制御システムと、異常が発生したときに風力発電装置1を非常停止させるための安全システムが設けられる。本実施形態では、安全システムが、タワー2を倒壊させ得るような過振動の発生を検出した場合には、風力発電装置1を非常停止するように構成される。図2は、制御システムと安全システムのうち、過振動を検出する異常振動検出装置を構成する部分の構成を示すブロック図である。
【0015】
本実施形態では、異常振動検出装置が、X方向加速度センサ11と、Y方向加速度センサ12と、PLC(programmable
logic controller)13と、フィルタリレー14と、リレー15と、安全リレー16とを備えている。PLC13は、制御システムに属しており、風力発電装置1に設けられる各機器を制御するために使用される。一方、フィルタリレー14、リレー15、及び安全リレー16は、安全システムに属しており、過振動が発生したときに風力発電装置1を非常停止させるために使用される。X方向加速度センサ11と、Y方向加速度センサ12とは、制御システムと安全システムに共用される。
【0016】
X方向加速度センサ11とY方向加速度センサ12とは、いずれも、ナセル3に設けられ、設けられた位置における加速度を検出する。X方向加速度センサ11とY方向加速度センサ12は、水平方向に平行な互いに直交する2方向の加速度を計測するために使用される。以下では、X方向加速度センサ11が加速度を測定する方向をX方向、Y方向加速度センサ12が加速度を測定する方向をY方向と呼ぶ。X方向は、例えば、風車ロータ4の回転中心軸を含む鉛直面と特定の水平面とが交差する直線の方向であり、Y方向は、該水平面内にあり、且つ、X方向に垂直な方向である。
【0017】
X方向加速度センサ11は、2つのチャンネルを有している。X方向加速度センサ11の第1チャンネル11aは、信号線17xを介して制御システム13のアナログ入力13aに接続されており、それが設けられた位置におけるX方向の加速度に対応する出力アナログ信号をPLC13に供給する。一方、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bは、信号線18xを介してフィルタリレー14に接続されており、それが設けられた位置における加速度に対応する出力アナログ信号をフィルタリレー14に供給する。X方向加速度センサ11の第1チャンネル11a、第2チャンネル11bは、それぞれが独立した加速度検出手段として機能する。
【0018】
Y方向加速度センサ12も同様に、2つのチャンネルを有している。Y方向加速度センサ12の第1チャンネル12aは、信号線17yを介して制御システム13のアナログ入力13aに接続されており、それが設けられた位置におけるY方向の加速度に対応する出力アナログ信号をPLC13に供給する。一方、Y方向加速度センサ12の第2チャンネル12bは、信号線18yを介してフィルタリレー14に接続されており、それが設けられた位置における加速度に対応する出力アナログ信号をフィルタリレー14に供給する。Y方向加速度センサ12の第1チャンネル12a、第2チャンネル12bは、それぞれが独立した加速度検出手段として動作する。
【0019】
なお、X方向加速度センサ11とY方向加速度センサ12は、ナセル3ではなく、タワー2(特に、タワー2の上端付近)に設けられてもよい。
【0020】
PLC13は、風力発電装置1に設けられる各機器を制御する役割を有している。PLC13は、各種のアナログ信号を受け取るアナログ入力13aと、各種のデジタル信号を受け取るデジタル入力13bとを備えており、受け取った各種信号に応答して各種の制御動作を行う。このとき、アナログ入力13aは、受け取ったアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行う。X方向加速度センサ11の第1チャンネル11a及びY方向加速度センサ12の第1チャンネル12aからPLC13に供給される出力アナログ信号に対しても、アナログ入力13aによってアナログ−デジタル変換が行われ、該アナログ−デジタル変換によって得られたデジタル値に対して所望の処理が行われる。
【0021】
フィルタリレー14は、X方向加速度センサ11及びY方向加速度センサ12から受け取った出力アナログ信号からタワー2の固有振動数の近傍の周波数領域の周波数成分を取り出すフィルタリング処理を行い、取りだした周波数成分に応答して風力発電装置1の非常停止を指示する出力を発生する。タワー2の固有振動数の近傍の周波数領域の周波数成分を選択的に取り出し、該周波数成分に応答して風力発電装置1の非常停止を行うことにより、タワー2の倒壊を招き得る危険な過振動が発生した場合に風力発電装置を確実に停止させる一方で、危険でない振動を検出しても風力発電装置の運転を継続することができる。
【0022】
詳細には、フィルタリレー14は、フィルタ14x、14yを備えている。フィルタ14xは、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bから受け取った出力アナログ信号からタワー2の固有振動数の近傍の周波数領域の周波数成分を取り出す。一方、フィルタ14yは、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bから受け取った出力アナログ信号からタワー2の固有振動数の近傍の周波数領域の周波数成分を取り出す。フィルタ14x、14yによって取りだされた周波数成分のいずれかが所定の閾値を超えている場合、フィルタリレー14は、その出力端子を開放にする。即ち、フィルタリレー14の出力端子が開放されていることは、過振動が発生している事を示している。後述のように、フィルタリレー14は、フィルタ14x、14yの出力信号が外部から取り出すことができるように構成されている。
【0023】
リレー15は、フィルタリレー14の出力に応答して非常停止信号を発生し、発生した非常停止信号をPLC13のデジタル入力13bと安全リレー16とに供給する。具体的には、フィルタリレー14の出力端子が開放状態になると、非常停止信号がアサートされる。安全リレー16は、リレー15から供給された非常停止信号がアサートされると、風力発電装置1を非常停止する。一方、PLC13は、リレー15から受け取った非常停止信号がアサートされたことを認識すると、風力発電装置1を非常停止すべき過振動が発生した事を認識する。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態のフィルタリレー14の構成を示す回路図である。本実施形態のフィルタリレー14は、入力端子21x、21yと、入力モニタ22x、22yと、電流−電圧変換回路23x、23yと、LPF(low pass filter)24x、24yと、HPF(high pass
filter)25x、25yと、比較回路26x、26yと、遅延回路27x、27yと、OR回路28と、ホールド回路29、リレー30と、電源モニタ31と、テストスイッチ32と、出力端子33a、33bと、モニタ出力端子34x、34yとを備えている。
【0025】
入力端子21xは、信号線18xを介してX方向加速度センサ11の第2チャンネル11bから出力アナログ信号を受け取り、同様に、入力端子21yは、信号線18yを介してY方向加速度センサ12の第2チャンネル12bから出力アナログ信号を受け取る。本実施形態では、受け取った出力アナログ信号は、電流信号(即ち、電流レベルがX方向又はY方向の加速度に対応した信号)である。
【0026】
入力モニタ22x、電流−電圧変換回路23x、LPF24xと、HPF25xと、比較回路26x及び遅延回路27xは、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bから受け取った出力アナログ信号に基づいてX方向の過振動を検出するための回路部分であり、これらの回路は、いずれもアナログ回路として構成されている。
【0027】
詳細には、入力モニタ22xは、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bから受け取った出力アナログ信号の入力レベルを監視する。入力モニタ22xは、出力アナログ信号の入力レベルが異常である場合(例えば、入力レベルが所定の閾値よりも小さい場合)、警報を出力する。これにより、X方向加速度センサ11の故障を検出することができる。ここで、X方向加速度センサ11の故障には、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bと入力端子21xとを接続する信号線18xの断線も含まれる。電流−電圧変換回路23xは、電流信号である出力アナログ信号を電圧信号(即ち、電圧レベルがX方向の加速度に対応した信号)に変換する。
【0028】
LPF24xとHPF25xとは、出力アナログ信号からタワー2の固有振動数fの近傍の周波数領域の周波数成分を取り出すフィルタ14xを構成している。LPF24xは、特定の周波数fより低い成分を通過させ、HPF25xは、特定周波数fより高い成分を通過させる。LPF24xとHPF25xとは、fをタワー2の固有振動数であるとして、下記式:
<f<f
が成立するように構成されている。これにより、HPF25xからは、タワー2の固有振動数fの近傍の周波数領域の周波数成分が出力される。比較回路26xは、HPF25xの出力信号の信号レベルを監視し、該信号レベルの絶対値が所定値より大きい場合、その出力信号をアサートする。遅延回路27xは、比較回路26xの出力信号を所定時間だけ遅延させる。遅延回路27xの出力信号は、X方向の過振動の発生の有無を示す信号である。即ち、X方向の過振動が発生すると、遅延回路27xの出力がアサートされる。
【0029】
同様に、入力モニタ22y、電流−電圧変換回路23y、LPF24yと、HPF25yと、比較回路26y及び遅延回路27yは、Y方向加速度センサ12の第2チャンネル12bから受け取った出力アナログ信号に基づいてY方向の過振動を検出するための回路部分であり、その動作は、X方向の過振動を検出するための回路部分と同様である。遅延回路27yの出力信号は、y方向の過振動の発生の有無を示す信号であり、Y方向の過振動が発生すると、遅延回路27yの出力がアサートされる。
【0030】
OR回路28、ホールド回路29、リレー30及び電源モニタ31は、フィルタリレー14の出力を生成する回路部分であり、X方向、Y方向の少なくとも一方の過振動が発生すると、フィルタリレー14の出力端子33a、33bの間を開放状態にする。詳細には、OR回路28は、遅延回路27x、27yの出力信号の論理和に対応する出力信号を出力する。ホールド回路29は、OR回路28の出力信号がアサートされると、所定時間、その出力信号をアサートする。リレー30は、ホールド回路29の出力がアサートされると、その2つの出力端子の間を開放状態にする。電源モニタ31は、リレー30の出力端子を監視し、リレー30の出力端子の間が開放状態になると、フィルタリレー14の出力端子33a、33bの間を開放状態にする。加えて、電源モニタ31は、フィルタリレー14への電源供給が遮断されると、出力端子33a、33bの間を開放状態にする。
【0031】
フィルタリレー14の過振動を検出するための回路部分(即ち、入力モニタ22x、22yと、電流−電圧変換回路23x、23yと、LPF(low pass filter)24x、24yと、HPF25x、25yと、比較回路26x、26yと、遅延回路27x、27y)が、全てアナログ回路で構成されていることに留意されたい。これは、フィルタリレー14の信頼性を高めるためである。アナログ回路は、簡素な構成を採用すれば、故障を少なくできる。このような特性は、安全システムに適用するために好適である。
【0032】
加えて、フィルタリレー14は、X方向加速度センサ11、Y方向加速度センサ12及びフィルタリレー14に含まれている回路の故障検出を容易化するための構成を有している。具体的には、第1に、フィルタリレー14には、モニタ出力端子34xと、34yとが設けられている。モニタ出力端子34xは、HPF25xの出力端子に接続されており、HPF25xの出力信号を外部に出力する。モニタ出力端子34xから出力される出力信号を監視することにより、X方向加速度センサ11又は入力端子21xとモニタ出力端子34xの間に設けられた回路部分のいずれかにおける故障の発生を検出することができる。同様に、モニタ出力端子34yは、HPF25yの出力端子に接続されており、HPF25yの出力信号を外部に出力する。モニタ出力端子34yから出力される出力信号を監視することにより、Y方向加速度センサ12又は入力端子21yとモニタ出力端子34yの間に設けられた回路部分のいずれかにおける故障の発生を検出することができる。
【0033】
本実施形態では、X方向加速度センサ11、Y方向加速度センサ12、及び、フィルタリレー14の故障検出がPLC13によって行われる。以下では、PLC13によって行われる故障検出の例について説明する。
【0034】
モニタ出力端子34x、34yは、信号線19x、19yを介してPLC13のアナログ入力13aに接続され、モニタ出力端子34x、34yの出力信号(フィルタ14x、14yの出力信号)がPLC13に供給される。一方で、PLC13には、電流−電圧変換回路23x、23yとフィルタ14x、14yの動作をシミュレートするためのソフトウェアプログラム13cが組み込まれている。詳細には、ソフトウェアプログラム13cは、X方向加速度センサ11の第1チャンネル11aの出力アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換をして得られた値に対してデジタル演算を行い、フィルタ14xの出力信号の予測値を算出する。更にソフトウェアプログラム13cは、モニタ出力端子34xから得られたフィルタ14xの出力信号の実測値とフィルタ14xの出力信号の予測値とを比較し、その比較結果から、X方向加速度センサ11又は入力端子21xとモニタ出力端子34xの間に設けられた回路部分のいずれかにおける故障の発生を検出する。例えば、フィルタ14xの出力信号の実測値とフィルタ14xの出力信号の予測値とが、所定時間の間、フィルタ14xの出力信号の実測値とフィルタ14xの出力信号の予測値との差が所定値よりも大きい場合、ソフトウェアプログラム13cは、X方向加速度センサ11又は入力端子21xとモニタ出力端子34xの間に設けられた回路部分のいずれかに故障があると判断する。
【0035】
同様に、ソフトウェアプログラム13cは、Y方向加速度センサ12の第1チャンネル12aの出力アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換をして得られた値に対してデジタル演算を行い、フィルタ14yの出力信号の予測値を算出する。更にソフトウェアプログラム13cは、モニタ出力端子34yから得られたフィルタ14yの出力信号の実測値とフィルタ14yの出力信号の予測値とを比較し、その比較結果から、Y方向加速度センサ12又は入力端子21yとモニタ出力端子34yの間に設けられた回路部分のいずれかにおける故障の発生を検出する。
【0036】
この故障検出の際に、X方向加速度センサ11、Y方向加速度センサ12からPLC13及びフィルタリレー14に入力される出力アナログ信号の入力レベルを参照すれば、故障個所を特定する事も可能である。例えば、フィルタ14xの出力信号の実測値とフィルタ14xの出力信号の予測値の差が大きい場合について考える。この場合、X方向加速度センサ11の第1チャンネル11aの出力アナログ信号の入力レベル(即ち、該出力アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換をして得られた値)が過剰に小さければ、PLC13は、X方向加速度センサ11の第1チャンネル11aに故障があると判断することができる。また、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bから入力端子21xに供給される出力アナログ信号の入力レベルが過剰に小さければ、PLC13は、X方向加速度センサ11の第2チャンネル11bに故障があると判断することができる。ここで、入力モニタ22xにより監視されていることに留意されたい。X方向加速度センサ11の第1チャンネル11a、第2チャンネル11bから供給される出力アナログ信号の両方の入力レベルが正常範囲にあれば、PLC13は、フィルタリレー14の入力端子21xとモニタ出力端子34xの間に設けられた回路部分に故障があると判断することができる。フィルタ14yの出力信号の実測値とフィルタ14yの出力信号の予測値の差が大きい場合についても、同様の手法によって故障個所を特定することができる。
【0037】
もう一つの故障検出を容易化するための構成は、OR回路28の入力に接続されたテストスイッチ32である。本実施形態では、テストスイッチ32がOR回路28の入力に接続されていることにより、OR回路28、ホールド回路29、リレー30及び電源モニタ31の故障を検出することができる。詳細には、OR回路28は、3つの入力を備えており、遅延回路27x、27yの出力とテストスイッチ32に接続されている。したがって、本来的には、テストスイッチ32がオンになると、OR回路28の出力信号及びホールド回路29の出力信号がアサートされ、フィルタリレー14の出力端子33a、33bの間が開放状態になる。仮にテストスイッチ32がオンされてもフィルタリレー14の出力端子33a、33bの間が開放状態にならなければ、OR回路28、ホールド回路29、リレー30及び電源モニタ31のいずれかに故障があると判断できる。即ち、テストスイッチ32をオンすることにより、OR回路28、ホールド回路29、リレー30及び電源モニタ31の故障を検出できる。
【0038】
このように、本実施形態のフィルタリレー14は、その大部分(比較回路26x、26y、遅延回路27x、27y以外の回路部分)の故障を検出可能に構成されている。これは、異常振動検出装置の信頼性の向上に好適である。
【0039】
以上に説明されているように、本実施形態の異常振動検出装置では、フィルタリレー14のフィルタ14x、14yによってタワー2の固有振動数の近傍の周波数領域の周波数成分が選択的に取り出され、該周波数成分に応答して風力発電装置1の非常停止が行われる。これにより、タワー2の倒壊を招き得る危険な過振動が発生した場合に風力発電装置を確実に停止させる一方で、危険でない振動を検出しても風力発電装置の運転を継続することができる。加えて、本実施形態の異常振動検出装置は、過振動の検出に使用されるX方向加速度センサ11、Y方向加速度センサ12、及び、フィルタリレー14の故障検出を容易化する構成を有しており、これは、信頼性の向上に好適である。
【符号の説明】
【0040】
1:風力発電装置
2:タワー
3:ナセル
4:風車ロータ
5:ロータヘッド
6:風車翼
11:X方向加速度センサ
11a:第1チャンネル
11b:第2チャンネル
12:Y方向加速度センサ
12a:第1チャンネル
12b:第2チャンネル
13:PLC
13a:アナログ入力
13b:デジタル入力
14:フィルタリレー
14x、14y:フィルタ
15:リレー
16:安全リレー
17x、17y、18x、18y、19x、19y:信号線
21x、21y:入力端子
22x、22y:入力モニタ
23x、23y:電流−電圧変換回路
24x、24y:LPF
25x、25y:HPF
26x、26y:比較回路
27x、27y:遅延回路
28:OR回路
29:ホールド回路
30:リレー
31:電源モニタ
32:テストスイッチ
33a、33b:出力端子
34x、34y:モニタ出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置の異常振動を検出するための異常振動検出装置であって、
前記風力発電装置の特定位置の加速度を検出する第1及び第2加速度検出手段と、
前記第1加速度検出手段から出力される第1出力アナログ信号を受け取る演算装置と、
前記第2加速度検出手段から出力される第2出力アナログ信号を受け取るフィルタリレーと、
前記フィルタリレーの出力端子の状態に応じて前記風力発電装置を非常停止させるための安全システム
とを備え、
前記フィルタリレーは、
前記第2出力アナログ信号に対して所定の周波数成分を取り出すフィルタリング処理を行うアナログ回路を備えたフィルタ回路部分と、
前記フィルタ回路部分の出力信号に応答して、前記フィルタリレーの前記出力端子の状態を遷移させる出力回路部分と、
前記フィルタ回路部分の出力信号を前記フィルタリレーの外部に取り出すモニタ出力端子
とを備え、
前記演算装置は、前記モニタ出力端子から前記フィルタ回路部分の出力信号を受け取ると共に、前記第1出力アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行って得られた値に対して前記フィルタ回路部分をシミュレートするデジタル演算を行うことによって前記フィルタ回路部分の出力信号の予測値を生成し、前記モニタ出力端子から受け取った前記フィルタ回路部分の出力信号の実測値と前記予測値とを比較して前記第1加速度検出手段、前記第2加速度検出手段又は前記フィルタ回路部分の故障を検出する
異常振動検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常振動検出装置であって、
前記フィルタリレーは、更に、テストスイッチを備え、
前記出力回路部分は、前記フィルタ回路部分の出力と前記テストスイッチとに入力が接続されたOR回路を備えると共に、前記OR回路の出力信号に応答して前記出力端子の状態を遷移させるように構成された
異常振動検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の異常振動検出装置であって、
前記演算装置は、前記第1出力アナログ信号の入力レベルを監視し、
前記フィルタリレーが、更に、前記第2出力アナログ信号の入力レベルを監視する入力モニタを備えており、
前記演算装置は、前記第1及び第2出力アナログ信号の前記入力レベルに基づいて、前記フィルタ回路部分における故障の発生を判別する
異常振動検出装置。
【請求項4】
風力発電装置であって、
前記風力発電装置の特定位置における加速度を検出する第1及び第2加速度検出手段と、
前記第1加速度検出手段から出力される第1出力アナログ信号を受け取る演算装置と、
前記第2加速度検出手段から出力される第2出力アナログ信号を受け取るフィルタリレーと、
前記フィルタリレーの出力端子の状態に応じて当該風力発電装置を非常停止させるための安全システム
とを備え、
前記フィルタリレーは、
前記第2出力アナログ信号に対して所定の周波数成分を取り出すフィルタリング処理を行うアナログ回路を備えたフィルタ回路部分と、
前記フィルタ回路部分の出力信号に応答して、前記フィルタリレーの前記出力端子の状態を遷移させる出力回路部分と、
前記フィルタ回路部分の出力信号を前記フィルタリレーの外部に取り出すモニタ出力端子
とを備え、
前記演算装置は、前記モニタ出力端子から前記フィルタ回路部分の出力信号を受け取ると共に前記第1出力アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行って得られた値に対して前記フィルタ回路部分をシミュレートするデジタル演算を行うことによって前記フィルタ回路部分の出力信号の予測値を生成し、前記モニタ出力端子から受け取った前記フィルタ回路部分の出力信号の実測値と前記予測値とを比較して前記第1加速度検出手段、前記第2加速度検出手段又は前記フィルタ回路部分の故障を検出する
風力発電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の風力発電装置であって、
前記フィルタリレーは、更に、テストスイッチを備え、
前記出力回路部分は、前記フィルタ回路部分の出力と前記テストスイッチとに入力が接続されたOR回路を備えると共に、前記OR回路の出力信号に応答して前記出力端子の状態を遷移させるように構成された
風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−52445(P2012−52445A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194468(P2010−194468)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】