説明

風力発電装置及び風力発電装置への電力ケーブル布設方法

【課題】管状のタワー構成部材が複数個直列に連結されて構成されたタワーの上端に風車と発電機を取り付けた風力発電装置において、タワー内に電力ケーブルを布設する作業を容易にする。
【解決手段】各電力ケーブル10を複数のタワー構成部材12aないし12eにそれぞれ対応する複数のセクションケーブル20aないし20eに分割して、各タワー構成部材に対応するセクションケーブルを各タワー構成部材の内側に布設し、複数のタワー構成部材内にそれぞれ布設されたセクションケーブルの対応するもの同士を隣り合うタワー構成部材の連結部近に配置した切り離しが可能なケーブル接続部21により相互に接続して各電力ケーブルを構成する複数のセクションケーブルを直列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置及び風力発電装置のタワー内に電力ケーブルを布設する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化を防止する対策の一つとして、風力発電が注目されている。風力発電装置は、直径が3〜4m、長さが12〜20mの管状のタワー構成部材を4〜5段積み上げることにより構築されたタワーと、タワーの上端に取り付けられたナセルと、ナセルに支持された回転軸に取り付けられた風車と、ナセル内に収容されて風車により増速機を介して駆動される交流発電機とを備えている。発電機の出力は、タワー内に布設された三相の電力ケーブルを通して外部に取り出されて、地上に設置された断路器及び遮断器を備えた開閉装置を通した後、変圧器により送電線の電圧と同じ電圧(特別高圧電圧)まで昇圧されて送電線に供給される。
【0003】
従来の風力発電装置において、電力ケーブルをタワー内に布設する際には、特許文献1に示されているように、タワー内に挿入された支持ワイヤにケーブル固定具を介して電力ケーブルを固定する作業と、電力ケーブルが固定された支持ワイヤを電力ケーブルと共に一定長さ引き上げる作業とを何度も繰り返すことにより、電力ケーブルをナセルまで引き上げるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−246549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年風力発電装置の発電容量は、2〜5MWと大容量化しており、風力発電装置のタワーの高さは100m以上にも達する。大容量の発電機の出力を直接電力ケーブルを通して取り出す場合、電力ケーブルとしては、電流容量が大きいものを用いる必要がある。一例として、発電容量が3MWであるとし、発電機の定格電圧が600Vであるとすると、電力ケーブルの1相当たりの導体断面積は1000mm2となり、三相の導体断面積の合計は、3000mm2となる。この場合、電力ケーブルの1m当たりの質量は約30kgとなり、ケーブル長を100mとすると、その質量は、3000kgにも達する。そのため、スペースが狭いタワー内でのケーブルの引き上げ作業は困難を伴い、作業の安全を確保することも難しくなる。
【0006】
上記の問題を解決するため、発電機の出力を特別高圧電圧まで昇圧する変圧器をナセル内に収容して、該変圧器により昇圧した発電出力を、タワー内に布設した電力ケーブルを通して外部に取り出すことが提案されている。この場合、発電容量を3MWとすると、100mのケーブルの質量は120kg程度まで軽減される。
【0007】
しかし、この場合には、電力ケーブルとして特別高圧ケーブルを用いる必要があり、その電気絶縁性能を維持するためには、電力ケーブルを引き上げる際にケーブルに大きな力が加わってケーブルの絶縁外皮が損傷するようなことがないように配慮する必要がある。殆ど完成したタワー内の狭いスベースで、120kgのケーブルを損傷することなく引き上げることは容易ではない。
【0008】
生活環境を損なうことなく、かつ安定した風を確保するために、洋上や、標高が高い山岳地帯、或いは北極圏や南極圏等に風力発電装置を設置することが検討されている。これらの地域は電力の需要家から遠く離れた遠隔地であるため、これらの地域に風力発電装置を設置する場合には、送電損失を低減するために、電圧を更に高くすることが必要になり、タワー内への電力ケーブルの布設作業がますます困難になる。また洋上や山岳地帯、或いは北極や南極といった遠隔の地は、作業環境が悪いため、タワー内に電力ケーブルを布設する作業をできるだけ容易に行い得るようにしておく必要がある。
【0009】
本発明の目的は、電力ケーブルに無理な力を加えることなく、タワー内への電力ケーブルの布設を容易に行い得るようにした風力発電装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、電力ケーブルに無理な力を加えることなく、タワー内に電力ケーブルを布設する作業を容易に行うことができる風力発電装置への電力ケーブル布設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願においては、上記の課題を解決するために第1ないし第8の発明が開示される。
第1の発明は、管状のタワー構成部材が複数個直列に連結されて構成されたタワーと、タワーの上端に取り付けられたナセルと、ナセルに設けられた回転軸に取り付けられた風車と、風車により駆動される発電機と、発電機の出力を外部に取り出すためにタワー内に布設された複数の電力ケーブルとを備えた風力発電装置に適用される。
【0012】
本発明においては、各電力ケーブルを、複数のタワー構成部材にそれぞれ対応する複数のセクションケーブルに分割して、各タワー構成部材に対応するセクションケーブルを各タワー構成部材の内側に布設しておき、複数のタワー構成部材内にそれぞれ布設されたセクションケーブルの対応するもの同士を隣り合うタワー構成部材の連結部近に配置したケーブル接続部により相互に接続することにより各電力ケーブルを構成する複数のセクションケーブルを直列に接続する。
【0013】
上記のように構成すると、工場でタワー構成部材を製造する際に各セクションケーブルをタワー構成部材の内側に布設しておいて、複数のタワー構成部材を連結してタワーを構築した後に隣り合うタワー構成部材内のセクションケーブルを相互に接続することにより電力ケーブルを構成することができるため、タワー内の狭いスペースで質量が大きい電力ケーブルを引き上げる作業を行うことなくタワー内に電力ケーブルを布設することができ、電力ケーブルの布設作業を容易にすることができる。
【0014】
また上記のように構成すると、質量が大きい電力ケーブルを引き上げる作業を必要としないため、電力ケーブルに無理な力が加わってケーブルが損傷するのを防ぐことができる。
【0015】
また上記のように構成すると、万一タワー内で地絡事故が生じた際に、事故で損傷したセクションケーブルのみを交換すれば良く、電力ケーブル全体を交換する必要がないため、事故の復旧を経済的に、かつ短時間で図ることができる。
【0016】
本願に開示された第2の発明は、上記第1の発明に適用されるもので、本発明においては、ナセル内に、発電機の出力電圧を昇圧する変圧器が収納され、変圧器の二次側に電力ケーブルが接続される。
【0017】
上記のように構成すると、発電機の出力が同じである場合に電力ケーブルに流れる電流を小さく抑えることができるため、セクションケーブル同士の接続部で生じる電力損失を少なくすることができ、タワー内の電力ケーブルを複数のセクションケーブルに分割したことにより生じる電力損失を少なくすることができる。
【0018】
本願に開示された第3の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においては、セクションケーブル同士を接続するケーブル接続部が、絶縁材からなるブッシングボディと該ブッシングボディの軸心部に設けられた中心導体とを有して、ブッシングボディの軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ一方のコネクタ嵌合部及び他方のコネクタ嵌合部が形成されたブッシングと、ブッシングの一方のコネクタ嵌合部に嵌合されてケーブル接続部で接続される一方のセクションケーブルをブッシングの中心導体に電気的に接続する一方のコネクタと、ブッシングの他方のコネクタ嵌合部に嵌合されてケーブル接続部で接続される他方のセクションケーブルをブッシングの中心導体に電気的に接続する他方のコネクタとを備えている。この場合、ブッシングは、隣接する2つのタワー構成部材のいずれか一方の内面に支持部材を介して固定される。
【0019】
上記のように構成すると、コネクタをブッシングに嵌合させて接続するだけでセクションケーブル同士の接続を行うことができるため、セクションケーブル同士の接続作業を容易にすることができる。
【0020】
本願に開示された第4の発明は、第3の発明に適用される。本発明においては、ブッシングが、その軸線をタワーの軸線方向に対して直角な方向に向けた状態でタワー構成部材の内面に支持部材を介して支持される。各コネクタは、一方のセクションケーブルまたは他方のセクションケーブルの端末部に固定された基部と該基部のセクションケーブルと反対側の端部に一体に形成されたブッシング嵌合部とを有してブッシング嵌合部内にブッシングの一方のコネクタ嵌合部または他方のコネクタ嵌合部を嵌合させるブッシング嵌合穴が形成された絶縁性のコネクタボディと、コネクタボディの基部内で一方のセクションケーブルまたは他方のセクションケーブルの芯線に圧縮接続された圧縮接続部とブッシング嵌合部内でブッシングの中心導体に接続される端子部とを有する圧縮端子とを備えている。またコネクタボディの基部とブッシング嵌合部とは、それぞれの軸線を直交させた状態で設けられ、コネクタの圧縮端子の端子部は、コネクタボディのブッシング嵌合部内でブッシングの中心導体にボルトを介して接続される。
【0021】
上記のように構成すると、コネクタを横方向に移動させるだけでブッシングに接続することができ、コネクタをブッシングに接続する際にコネクタを上下方向に移動させる必要がないため、ケーブルに無理な力を加えることなく、コネクタをブッシングに接続する作業を容易に行うことができる。またコネクタ内に設けられた圧縮端子をボルトを介してブッシングの中心導体に確実に接続することができるため、セクションケーブル同士の接続部の信頼性を高めることができる。
【0022】
第5の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においては、各ケーブル接続部が、該ケーブル接続部で接続される一方のセクションケーブル及び他方のセクションケーブルの端末部にそれぞれ取り付けられたプラグ及びレセプタクルからなっている。
【0023】
第6の発明は、第5の発明に適用されるもので、本発明においては、プラグ及びレセプタクルが、それぞれが取り付けられているセクションケーブルに対して直角な方向に抜き差しし得るように構成されている。
【0024】
上記のように構成すると、プラグを横方向に移動させるだけでレセプタクルに接続することができ、プラグをレセプタクルに接続する際にプラグ及びレセプタクルを上下方向に移動させる必要がないため、コネクタをブッシングに接続する作業を容易にすることができる。
【0025】
本願に開示された第7の発明は、管状のタワー構成部材が複数個直列に連結されて構成されたタワーと、タワーの上端に取り付けられたナセルと、ナセルに設けられた回転軸に取り付けられた風車と、風車により駆動される発電機とを備えた風力発電装置のタワー内に発電機の出力を外部に取り出すための複数の電力ケーブルを布設する方法に適用される。
【0026】
本発明においては、各電力ケーブルを、複数のタワー構成部材にそれぞれ対応する複数のセクションケーブルに分割して、各タワー構成部材に対応するセクションケーブルを各タワー構成部材の内側に予め布設しておき、複数のタワー構成部材を連結してタワーを構築した後に、複数のタワー構成部材内にそれぞれ布設されたセクションケーブルの対応するもの同士を隣り合うタワー構成部材の連結部近で相互に接続することにより各電力ケーブルを構成する複数のセクションケーブルを直列に接続する。
【0027】
上記の方法によると、工場でタワー構成部材を製造する際に各セクションケーブルをタワー構成部材の内側に予め布設しておいて、複数のタワー構成部材を連結してタワーを構築した後に隣り合うタワー構成部材内のセクションケーブルを相互に接続することにより電力ケーブルを構成するため、タワー内の狭いスペースで質量が大きい電力ケーブルを引き上げる作業を行うことなくタワー内に電力ケーブルを布設することができ、電力ケーブルの布設作業を容易にすることができる。
【0028】
第8の発明は、第7の発明に適用されるもので、本発明においては、セクションケーブル同士の接続を、タワーの軸線に対して直角な方向に抜き差しが可能なコネクタを用いて行う。
【0029】
上記の方法によると、コネクタを横方向に移動させるだけでセクションケーブル同士を接続することができ、セクションケーブル同士を接続する際にコネクタを上下方向に移動させる必要がないため、セクションケーブル同士を接続する作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、工場でタワー構成部材を製造する際に各セクションケーブルをタワー構成部材の内側に布設しておいて、複数のタワー構成部材を連結してタワーを構築した後に隣り合うタワー構成部材内のセクションケーブルを相互に接続することにより電力ケーブルを構成することができるため、タワー内の狭いスペースで質量が大きい電力ケーブルを引き上げる作業を行うことなくタワー内に電力ケーブルを布設することができ、電力ケーブルの布設作業を容易に行うことができる。
【0031】
また本発明によれば、タワー内の狭いスペースで質量が大きい電力ケーブル全体を引き上げる作業を必要としないため、電力ケーブルに無理な力が加わってケーブルが損傷するのを防ぐことができる。
【0032】
特に第4の発明によれば、コネクタをブッシングに接続する際にコネクタを横方向に移動させるだけでよく、ブッシングにコネクタを嵌合させた後、コネクタを上下方向に移動させる必要がないため、コネクタをブッシングに接続する作業を容易に行うことができる。第6の発明または第9の発明によった場合にも同様の効果を得ることができる。
【0033】
本発明によればまた、万一タワー内で地絡事故が生じた際には、事故で傷ついたセクションケーブルのみを交換すれば良く、電力ケーブル全体を交換する必要がないため、事故の復旧を経済的に、かつ短時間で図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係わる風力発電装置の全体的な構成を概略的に示した構成図である。
【図2】本発明の一実施形態で用いるケーブル接続部の構成を示した正面図である。
【図3】同ケーブル接続部の側面図である。
【図4】同実施形態でケーブル接続部を構成するために用いるブッシングとコネクタとを示した断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態で用いるケーブル接続部の正面図である。
【図6】同実施形態で用いるケーブル接続部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係わる風力発電装置の全体的な構成を模式的に示した構成図である。同図において、1は、基礎2の上に建てられたタワー、3はタワー1の上端に支持されたナセルである。ナセル3とタワー1の上端との結合部は、風向きに応じて、ナセル3が鉛直方向に伸びる軸線の回りを回動するのを許容するように構成されている。ナセル3には、回転軸4が支持され、この回転軸に所定枚数(例えば3枚)のブレード5aを有する風車5が取り付けられている。ナセル3内には、三相交流発電機6が収容され、風車の回転軸4が増速機7を介して発電機6の回転軸に連結されている。ナセル3内にはまた、発電機6の三相交流出力電圧(例えば600V)を7000Vを超える特別高圧電圧まで昇圧する三相変圧器8が収容され、変圧器8の二次側に、タワー1内を上下に伸びる三相の電力ケーブル10の上端が接続されている。三相の電力ケーブル10の下端10Aは、タワー1の下端に設けられたケーブル導出口から外部に導出されて、断路器と遮断器とを有する開閉装置11を通して特別高圧の送電線(図示せず。)に接続されている。ナセル3の回動を許容するため、電力ケーブル10の上端寄りの部分には、Jの字形に弛まされた弛み部10Bが形成されている。
【0036】
タワー1は、直径が3ないし4m,長さが12ないし20mの複数(図示の例では5個)の管状のタワー構成部材12aないし12eを順次直列に連結して積み上げることにより構成される。図示のタワー構成部材は断面が円形を呈するように構成されていて、各タワー構成部材の軸線方向の両端にはフランジ状の連結部13(図3参照)が設けられ、隣り合うタワー構成部材の連結部同士が連結されることにより、一連のタワー構成部材12a,12b,…,12eが直列に連結されている。隣接するタワー構成部材相互間には、作業用のフロアーが設けられ、各タワー構成部材の内面には、作業者が昇降する際に用いるステップが設けられている。
【0037】
三相の電力ケーブル10は、複数のタワー構成部材12a,12b,…12eにそれぞれ対応する複数のセクションケーブル20a,20b,…,20eに分割されて、各タワー構成部材に対応するセクションケーブルが、各タワー構成部材の内側に布設されている。
【0038】
最下部に配置されるタワー構成部材12a内に布設されるセクションケーブル20aは、タワーから外部に引き出す電力ケーブル10の下端10Aを構成するために必要な分だけタワー構成部材12aの長さ(高さ)よりも長く形成されている。
【0039】
また最上部に配置されるタワー構成部材12e内に布設されたセクションケーブル20eは、弛み部10Bを構成するために必要な分と、一つ下のタワー構成部材内のセクションケーブル12dとの接続部を構成するために必要な分だけ、タワー構成部材12eの長さよりも長く形成されている。
【0040】
他のタワー構成部材12bないし12d内にそれぞれ布設されたセクションケーブル20bないし20dは、それぞれの下端を、それぞれが布設されるタワー構成部材12bないし12dの一つ下に配置されるタワー構成部材12aないし12c内のセクションケーブル20aないし20cの上端に接続するためのケーブル接続部を構成するために必要な分だけ、タワー構成部材12bないし12dの長さよりも長く形成されている。
【0041】
各セクションケーブルは、各タワー構成部材を現地に出荷するまでの間に、専門の工場内で予め対応するタワー構成部材内に布設される。各セクションケーブルは、対応するタワー構成部材の内部にケーブルクリートなどにより位置決め固定されていて、各タワー構成部材を現地に輸送する際には、各セクションケーブルの余長部分が、タワー構成部材から外部にはみ出すことがないように、ゆるく曲げられた状態で、対応するタワー構成部材の内部に収められている。
【0042】
本発明に係わるケーブル布設方法では、上記のように、予め工場で内部にセクションケーブルが敷設されたタワー構成部材12aないし12eを現地に輸送した後、これらのタワー構成部材を基礎2の上に順に連結して積み上げることにより、タワー1を構築する。タワー1を構築した後、タワー構成部材12aないし12e内にそれぞれ布設された複数のセクションケーブル20aないし20eの対応するもの同士を隣り合うタワー構成部材の連結部付近に配置されたケーブル接続部21により相互に接続することにより、各電力ケーブル10を構成する複数のセクションケーブル20aないし20eを直列に接続する。本実施形態では、発電機が三相交流発電機であるので、発電機の出力を外部に取り出すための電力ケーブル10が3本設けられ、これらの電力ケーブルを構成するために、各タワー構成部材内には3本のセクションケーブルが布設されている。
【0043】
次に図2ないし図4を参照して、本実施形態で用いる各ケーブル接続部21の構成を説明する。図2ないし図4においては、タワー構成部材12a内に布設されたセクションケーブル20aと、タワー構成部材12b内に布設されたセクションケーブル20bとを接続するケーブル接続部21を示しているが、他のケーブル接続部21も同様に構成されている。
【0044】
図示のケーブル接続部21は、軸線を水平方向に(タワーの軸線と直角な方向に)向けて配置された3個のブッシング23(図4参照)と、上下に隣り合う2つのタワー構成部材のうちの下側に配置されたタワー構成部材12aに3個のブッシング23を並べて支持する架台24と、各ブッシング23を架台24に固定するブラケット25と、各セクションケーブル20aの上端の端末部に接続されて各ブッシング23の一端に嵌合接続された一方のT型コネクタ26と、各セクションケーブル20bの下端の端末部に接続されて各ブッシング23の他端に嵌合接続された他方のT型コネクタ27と、セクションケーブル20aをタワー構成部材12aに固定するケーブルクリート28及び29と、セクションケーブル20bをタワー構成部材12bに固定するケーブルクリート30及び31とにより構成されている。図示の例では、3個のブッシング23と、3個のブッシングにそれぞれ接続されたT型コネクタ26及び27とによりそれぞれ三相のケーブル接続具21uないし21wが構成されている。
【0045】
更に詳細に説明すると、ブッシング23は、図4に示されているように、絶縁材からなるブッシングボディ32と、ブッシングボディ32の軸心部に設けられた中心導体33とを有し、ブッシングボディ32の軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ一方のコネクタ嵌合部23A及び他方のコネクタ嵌合部23Bが形成されている。
【0046】
図3に示したように、ブッシング23を支持する架台24は、上下方向に伸びる基部24Aと、基部24Aから水平方向に張り出したブッシング固定部24Bと、ブッシング固定部24Bを基部24Aに対して支える傾斜したステー24Cとを有している。架台24は、上下に隣り合う2つのタワー構成部材12b,12aの連結部よりもやや下方の位置に(下側のタワー構成部材12aの上端寄りの位置に)配置されて、その基部24Aが下側のタワー構成部材12aの内面に溶接されている。
【0047】
三相のブッシング23は、それぞれの軸線を水平方向に向け、かつ下側のタワー構成部材12aの径方向に平行に並べた状態で配置されて、架台24のブッシング固定部24Bの上にブラケット25を介して固定されている。各ブラケット25には、各ブッシング23を覆う保護カバー34が取り付けられている。
【0048】
各ブッシング23の一方のコネクタ嵌合部23Aには、下側のタワー構成部材12a内に布設された各セクションケーブル20aの芯線20a1を各ブッシング23の中心導体33に電気的に接続する一方のT型コネクタ26が接続される。セクションケーブル20Aへのコネクタ26の取り付けは、タワー構成部材を現地に輸送する前に専門工場で予め行っておく。
【0049】
各T型コネクタ26は、絶縁材料から成るコネクタボディ37と、コネクタボディ37内に配置された圧縮端子38とを備えている。コネクタボディ37は、セクションケーブル20aの端末部の外周に固定された基部35と、基部35のセクションケーブル20aと反対側の端部に一体に形成されたブッシング嵌合部36とを有し、ブッシング嵌合部36の内側に、ブッシング23の一方のコネクタ嵌合部23Aを嵌合させるブッシング嵌合孔が形成されている。
【0050】
圧縮端子38は、コネクタボディ37の基部35内で一方のセクションケーブル20aの芯線に圧縮接続された圧縮接続部38Aと、コネクタボディのブッシング嵌合部36内でブッシング23の中心導体33に接続される羽子板端子部38Bとを一体に有している。圧縮端子38は、その圧縮接続部38Aがセクションケーブル20aの芯線に圧縮接続された後、コネクタボディの基部35の内側に挿入されて、その羽子板端子部38Bがコネクタボディのブッシング嵌合部36の内側に(ブッシング嵌合孔内に)挿入される。
【0051】
コネクタボディ37の基部35とブッシング嵌合部36とは、それぞれの軸線を直交させた状態で設けられていて、コネクタボディ37のブッシング嵌合部36の内側のブッシング嵌合孔にブッシング23の一方のコネクタ嵌合部23Aを嵌合させた際に、圧縮端子38の羽子板端子部38Bが、ブッシングの中心導体33の一端に当接されるとともに、ブッシング23の中心導体33にねじ込まれたボルト39が、羽子板端子部38Bに設けられたボルト嵌合孔に嵌合されるようになっている。
【0052】
コネクタボディのブッシング嵌合部36の内側に設けられたブッシング嵌合孔は、ブッシング23と反対側にも開口するように設けられていて、この開口部を通してボルト39に螺合されたナット41がトルクレンチで一定の締め付けトルクで締め付けられることにより、羽子板端子部38Bがブッシングの中心導体33に締結されている。ブッシング嵌合孔のブッシング23と反対側の開口部から該ブッシング嵌合孔内に栓40が挿入されている。栓40とブッシング嵌合孔との嵌合はテーパ嵌合となっていて、栓40の内側に固定された金具に設けられた雌ネジ部がボルト39に螺合され、栓40が回転させられて一定のトルクで締め付けられることにより、栓40がコネクタボディ37締結されている。
【0053】
各ブッシング23の他方のコネクタ嵌合部23Bには、上側のタワー構成部材12b内の各セクションケーブル20bの芯線20b1を各ブッシング23の中心導体33に電気的に接続する他方のT型コネクタ27が接続される。このコネクタ27も、タワー構成部材を現地に輸送する前に、専門の工場でセクションケーブル20bに予め取り付けておく。
【0054】
各T型コネクタ27は、コネクタ26と同様に、絶縁材料から成るコネクタボディ47と、コネクタボディ47内に配置された圧縮端子48とを備えている。コネクタボディ47は、セクションケーブル20bの端末部の外周に固定された基部45と、基部45のセクションケーブル20bと反対側の端部に一体に形成されたブッシング嵌合部46とを有し、ブッシング嵌合部46の内側に、ブッシング23の他方のコネクタ嵌合部23Bを嵌合させるブッシング嵌合孔が形成されている。圧縮端子48は、コネクタボディ47の基部45内でセクションケーブル20bの芯線に圧縮接続された圧縮接続部48Aと、コネクタボディ47のブッシング嵌合部46内でブッシング23の中心導体33に接続される羽子板端子部48Bとを一体に有している。圧縮端子48は、その圧縮接続部48Aがセクションケーブル20bの芯線に圧縮接続された後、コネクタボディ47の基部45の内側に挿入されて、その羽子板端子部48Bがコネクタボディのブッシング嵌合部46の内側に(ブッシング嵌合孔内に)挿入される。
【0055】
コネクタボディ47の基部45とブッシング嵌合部46とは、それぞれの軸線を直交させた状態で設けられていて、コネクタボディ47のブッシング嵌合部46の内側のブッシング嵌合孔にブッシング23の他方のコネクタ嵌合部23Bを嵌合させた際に、圧縮端子48の羽子板端子部48Bがブッシングの中心導体33の他端に当接されるとともに、ブッシング23の中心導体33にねじ込まれたボルト49が、羽子板端子部48Bに設けられたボルト嵌合孔に嵌合される。
【0056】
コネクタボディ47のブッシング嵌合部46の内側に設けられたブッシング嵌合孔は、ブッシング23と反対側にも開口するように設けられ、この開口部を通してボルト49に螺合されたナット51が一定の締め付けトルクで締め付けられることにより、羽子板端子部48Bがブッシングの中心導体33に締結されている。ブッシング嵌合孔のブッシング23と反対側の開口部から該ブッシング嵌合孔内に栓50が挿入されている。栓50とブッシング嵌合孔との嵌合もテーパ嵌合となっていて、栓50の内側に固定された金具に設けられた雌ネジ部がボルト49に螺合され、栓50が回転させられて一定のトルクで締め付けられることにより、栓50がコネクタボディ47に締結されている。
【0057】
下側のタワー構成部材12aの内側には、3本のセクションケーブル20aを相互間に間隔を保った状態で保持するケーブルクリート28が、ブッシング23の下方に位置させた状態で取り付けられ、このケーブルクリート28により、3本のセクションケーブル20aのコネクタ26に近い部分がタワー構成部材20aに対して支持されている。ケーブルクリート28は、3本のセクションケーブル20aのコネクタ26に接続された部分に曲げを生じさせないようにするために設けられている。
【0058】
タワー構成部材12a内にはまた、3本のセクションケーブル20aを俵積みした状態で保持するケーブルクリート29が架台24の直下に位置させた状態で取り付けられ、このケーブルクリート29により、3本のセクションケーブル20aが一括してタワー構成部材12aに対して支持されている。
【0059】
セクションケーブル20aのケーブルクリート29により支持された部分より更に下方に位置する部分は、上下方向に適宜に間隔をあけて設けられたケーブルクリート29と同様の他の複数のケーブルクリートにより三相一括してタワー構成部材12aに支持されている。
【0060】
下側のタワー構成部材12aの内面にはまた、該タワー構成部材12aの上端に近い位置に位置させて、3本のセクションケーブル20bを相互間に間隔を保った状態で保持するケーブルクリート30が取り付けられ、このケーブルクリート30により、3本のセクションケーブル20bのコネクタ27に近い部分がタワー構成部材12aに対して支持されている。
【0061】
また上側のタワー構成部材20bの内面に、3本のセクションケーブル20bを俵積みした状態で保持するケーブルクリート31が、タワー構成部材20bの下端寄りに位置させた状態で取り付けられ、このケーブルクリート31により、3本のセクションケーブル20bの下端寄りの部分が一括してタワー構成部材12bに対して支持されている。
【0062】
セクションケーブル20bのケーブルクリート31により支持された部分より更に上方に位置する部分は、上下方向に適宜に間隔をあけて設けられたケーブルクリート31と同様の他の複数のケーブルクリートにより三相一括してタワー構成部材12bに支持されている。
【0063】
上側のタワー構成部材12b内に布設されたセクションケーブル20bの上端は、タワー構成部材12bの上端寄りに設けられた、上記したケーブル接続部21と同様なケーブル接続部により、更に上側のタワー構成部材12c内に布設されたセクションケーブル20cの下端に接続される。同様にして一連のタワー構成部材内の対応するセクションケーブル同士が順次直列に接続されて、三相の電力ケーブル10が構成される。
【0064】
本実施形態においては、上下に隣り合う各2つのタワー構成部材のうち、下側のタワー構成部材へのブッシング23の取り付け、下側のタワー構成部材12a内に布設されたセクションケーブルの上端へのコネクタ26の取り付け、該コネクタ26とブッシング23との接続及びケーブルクリート28,29による下側のセクションケーブルの固定は、各タワー構成部材を製造する専門の工場で予め行っておくが、上側のタワー構成部材内に布設されたセクションケーブルの下端の端末部に取り付けられたコネクタ27とブッシング23との接続及び該セクションケーブルの下端寄りの部分のケーブルクリート30,31による固定は、現地でタワー1を構築した後に行う。例えば、図2ないし図4において、下側のタワー構成部材12a内へのブッシング23の取り付け、下側のタワー構成部材12a内に布設されたセクションケーブル20aの上端に取り付けられたコネクタ26とブッシング23との接続及びケーブルクリート28,29によるセクションケーブル20aの固定は、各タワー構成部材を製造する専門の工場で予め行っておくが、上側のタワー構成部材12b内に布設されたセクションケーブル20bの下端に取り付けられたコネクタ27とブッシング23との接続、及びケーブルクリート30及び31によるセクションケーブル20bの固定は、現地でタワー1を構築した後に行う。
【0065】
また各タワー構成部材を現地に輸送する際には、各タワー構成部材内に布設されたセクションケーブルの各部うち、後で各タワー構成部材の下端から下方に引出される部分(現地で下側のタワー構成部材内のセクションケーブルに接続される部分)、及び最上部のタワー構成部材12e内に布設されたセクションケーブル20eのうち弛み部10Bを形成する部分及び弛み部よりも上方の部分を、ゆるく曲げた状態で各タワー構成部材の中に収めておく。
【0066】
図2ないし図4に示すように各ケーブル接続部21が構成される場合、現地での風力発電装置の組立は例えば下記のようにして行う。
先ずタワー構成部材12aないし12eを順次連結して積み上げることにより、タワー1を構築し、タワー1の上端にナセル3を取り付ける。次いで一連のタワー構成部材のうち、下から2番目に配置されたタワー構成部材12b内からセクションケーブル20bの下端を下方に引出して、該セクションケーブルの下端に取り付けられたT型コネクタ27をブッシング23の他方のコネクタ嵌合部23Bに嵌合させ、栓50を取り付けることにより、上側のセクションケーブル20bの下端をブッシング23の中心導体33に電気的に接続する。その後、上側のセクションケーブル20bの下部のコネクタ27に接続された部分に曲げを生じさせないように、セクションケーブル20bの下部をケーブルクリート30によりタワー構成部材12bに固定し、更にセクションケーブル20bのクリート30により保持された部分よりも上方の部分を俵積みにしてケーブルクリート31によりタワー構成部材12bに固定する。
【0067】
同様にして、更に上方のタワー構成部材内に布設されたセクションケーブルの下端に取り付けられたコネクタ27を下方に隣接して配置されたタワー構成部材内のブッシング23に接続していくことにより、一連のタワー構成部材内に布設されたセクションケーブル20aないし20eを順次直列に接続して各相の電力ケーブル10を構成する。
【0068】
最上部のタワー構成部材12e内の各セクションケーブル20eの下端を下側に隣接するタワー構成部材12e内に保持された各ブッシング23に接続した後、タワー構成部材12e内のセクションケーブル12eを弛ませて電力ケーブル10の弛み部10Bを形成し、各セクションケーブル20eの上端をナセル3内に引込んで、変圧器8の二次側に接続する。
【0069】
なお最上部のタワー構成部材12e内のセクションケーブル20eの上端と変圧器8の二次側との接続は、タワー1の上端にナセル3を取り付ける際に行ってもよい。
【0070】
本実施形態では、セクションケーブルの下端をブッシングに接続するコネクタとしてT型コネクタを用いているため、各セクションケーブルの下端のコネクタ27をブッシング23の他方のコネクタ嵌合部23Bに嵌合接続する作業を簡単に行うことができる。例えば、図4に鎖線で示したように、上側のタワー構成部材の下端から引出したセクションケーブル20bの下部を振り子のように水平方向に移動させるだけでコネクタ27をブッシング23に嵌合させることができる。コネクタ27をブッシング23に接続する際には、コネクタを上下方向に変位させる必要がないため、セクションケーブルに無理な力を加えることなく、コネクタ27をブッシング23に接続することができ、タワー内の狭いスペースでのコネクタの接続作業を容易にすることができる。
【0071】
また本実施形態のように構成すると、万一タワー1内で地絡事故が生じた際には、事故で損傷したセクションケーブルのみを交換すれば良く、電力ケーブル全体を交換する必要がないため、事故の復旧を経済的に、かつ短時間で図ることができる。
【0072】
本実施形態では、ナセル3内に発電機6の出力電圧を昇圧する変圧器8を収納して、発電機の出力電圧を特別高圧電圧まで昇圧して電力ケーブル10に送り込むので、電力ケーブルを通して流れる電流を小さく抑えて、セクションケーブル同士の接続部で生じる電力損失を少なくすることができ、タワー内の電力ケーブルを複数のセクションケーブルに分割したことにより生じる電力損失を少なくすることができる。
【0073】
上記の実施形態では、三相のセクションケーブル同士を接続するケーブル接続具21uないし21wをタワー構成部材の径方向に並べて配置したが、図5及び図6に示したように、三相のケーブル接続具21uないし21wをタワー構成部材の内周面上に並べて配置するようにしても良い。図5及び図6に示した例では、ケーブル接続部21の相間の距離を短くするために、三相のケーブル接続具21uないし21wが、順次タワーの軸線方向に位置をずらして、タワー構成部材の周方向に対して傾斜した方向に並べて配置されていて、ケーブル接続具21uないし21wのそれぞれのコネクタ26に接続された三相のセクションケーブル20aと、ケーブル接続具21uないし21wのそれぞれのコネクタ27に接続された三相のセクションケーブル20bとが、タワー構成部材の周方向に1相分位置をずらした状態で配置されている。本実施形態では、三相のケーブル接続具21uないし21wのそれぞれのブッシング23が個別に設けられた架台24′によりタワー構成部材12aに支持されている。また下側に配置されたタワー構成部材12a内に布設されてコネクタ26に上端が接続されたセクションケーブル20aがコネクタ26に近い位置でケーブルクリート28′により個別に支持され、上側に配置されたタワー構成部材12b内に布設されてコネクタ27に下端が接続されたセクションケーブル20bがコネクタ27に近い位置でクリート30′により個別に支持されている。その他の点は図2ないし図4に示した実施形態と同様に構成されている。
【0074】
上記の各実施形態では、上下方向に隣り合う各2つのタワー構成部材の内、下側に配置されたタワー構成部材の内側にケーブル接続具21uないし21wを配置している。このように構成すると、コネクタ27を振り子のように移動させることにより、ブッシング23に嵌合させることができ、コネクタをブッシングに接続する際にコネクタを上下方向に移動させる必要がないため、コネクタをブッシングに接続する作業を容易にすることができる。しかしながら、本発明においては、複数のタワー構成部材内にそれぞれ布設されたセクションケーブルの対応するもの同士が隣り合うタワー構成部材の連結部近に配置されたケーブル接続部により相互に接続されていれば良く、上記の各実施形態に示したようにケーブル接続具21uないし21wを配置する場合に限定されない。
【0075】
例えば、上下方向に隣り合う各2つのタワー構成部材の内、上側に配置されたタワー構成部材の内側にケーブル接続具21uないし21wを配置するようにしても良い。この場合は、上下方向に隣り合う各2つのタワー構成部材の内、上側に配置されるタワー構成部材の下端寄りの位置にブッシング23を取り付け、上側のタワー構成部材内に布設されたセクションケーブルの下端の端末部に取り付けたコネクタ27を工場でブッシング23に接続しておく。現地では、タワー1が完成した後に、下側のタワー構成部材内に布設されたセクションケーブルの上端の端末部に取り付けられたコネクタ26を上側のタワー構成部材の下端寄りに取り付けられたブッシング23に接続する作業と、該下側のセクションケーブルの上端寄りの部分をケーブルクリートにより固定する作業とを行う。
【0076】
上記のように構成した場合には、下側のコネクタ27の上端に取り付けられたコネクタ26をブッシングに接続する際に、下側のセクションケーブルの上端を上側のタワー構成部材内に引き上げる必要があるが、コネクタ26としてT型コネクタを用いれば、コネクタ26とブッシング23とを接続する際には、コネクタ26を横方向にのみ動かせばよいため、コネクタ26とブッシング23との接続を容易に行うことができる。
【0077】
上記の各実施形態のように、ブッシングと、セクションケーブルの芯線に接続された圧縮導体をコネクタボディ内に有して該圧縮導体がブッシングの中心導体にボルトにより締結される構造のT型コネクタとによりケーブル接続具を構成すると、ケーブル接続部での接続を確実にして信頼性を高めることができる。しかしながら本発明はこのようなケーブル接続具を用いる場合に限定されるものではなく、各ケーブル接続部を、該ケーブル接続部で接続される一方のセクションケーブル及び他方のセクションケーブルの端末部にそれぞれ取り付けられたプラグ及びレセプタクルにより構成することもできる。
【0078】
この場合、プラグ及びレセプタクルは、それぞれが取り付けられているセクションケーブルに対して直角な方向に抜き差しし得るように構成することが好ましい。
【0079】
本発明においては、セクションケーブル同士を接続するケーブル接続部が切り離し可能に構成されていることが好ましく、セクションケーブル同士の接続はコネクタを介して行うことが好ましいが、コネクタを用いずに、タワー内でセクションケーブル同士を接続するケーブル接続部を構成する処理を行って、該ケーブル接続部によりセクションケーブル同士を接続するようにしてもよい。
【0080】
上記の説明では、複数のタワー構成部材内にそれぞれ布設されたセクションケーブルの対応するもの同士を隣り合うタワー構成部材の連結部近で相互に接続する作業を、タワーの下部から上部に向けて順次行うとしたが、対応するセクションケーブル同士の接続を行う順序は上記の例に限定されるものではない。例えば、タワーの上部から下部に向って順次隣り合うタワー構成部材内の対応するセクションケーブル同士を接続する作業を行うようにしてもよく、タワー構成部材の複数の連結部付近での対応するセクションケーブル同士の接続作業を同時に並行して進めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 タワー
3 ナセル
10 電力ケーブル
12aないし12e タワー構成部材
20aないし20e セクションケーブル
21 ケーブル接続部
21uないし21w ケーブル接続具
23 ブッシング
26 一方のコネクタ
27 他方のコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のタワー構成部材が複数個直列に連結されて構成されたタワーと、前記タワーの上端に取り付けられたナセルと、前記ナセルに設けられた回転軸に取り付けられた風車と、前記風車により駆動される発電機と、前記発電機の出力を外部に取り出すために前記タワー内に布設された複数の電力ケーブルとを備えた風力発電装置において、
各電力ケーブルは、前記複数のタワー構成部材にそれぞれ対応する複数のセクションケーブルに分割されて、各タワー構成部材に対応するセクションケーブルが各タワー構成部材の内側に布設され、
前記複数のタワー構成部材内にそれぞれ布設されたセクションケーブルの対応するもの同士が隣り合うタワー構成部材の連結部近に配置されたケーブル接続部により相互に接続されることにより各電力ケーブルを構成する複数のセクションケーブルが直列に接続されていること、
を特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記ナセル内には、前記発電機の出力電圧を昇圧する変圧器が収納され、前記変圧器の二次側に前記電力ケーブルが接続されている請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記ケーブル接続部は、
絶縁材からなるブッシングボディと該ブッシングボディの軸心部に設けられた中心導体とを有して、前記ブッシングボディの軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ一方のコネクタ嵌合部及び他方のコネクタ嵌合部が形成されたブッシングと、
前記ブッシングの一方のコネクタ嵌合部に嵌合されて前記ケーブル接続部で接続される一方のセクションケーブルを前記ブッシングの中心導体に電気的に接続する一方のコネクタと、
前記ブッシングの他方のコネクタ嵌合部に嵌合されて前記ケーブル接続部で接続される他方のセクションケーブルを前記ブッシングの中心導体に電気的に接続する他方のコネクタとを備え、
前記ブッシングは、隣接する2つのタワー構成部材のいずれか一方の内面に支持部材を介して固定されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記ブッシングはその軸線をタワーの軸線方向に対して直角な方向に向けた状態で前記タワー構成部材の内面に支持部材を介して支持され、
各コネクタは、前記一方のセクションケーブルまたは他方のセクションケーブルの端末部に固定された基部と該基部のセクションケーブルと反対側の端部に一体に形成されたブッシング嵌合部とを有して前記ブッシング嵌合部内に前記ブッシングの一方のコネクタ嵌合部または他方のコネクタ嵌合部を嵌合させるブッシング嵌合穴が形成された絶縁性のコネクタボディと、前記コネクタボディの基部内で前記一方のセクションケーブルまたは他方のセクションケーブルの芯線に圧縮接続された圧縮接続部と前記ブッシング嵌合部内で前記ブッシングの中心導体に接続される端子部とを有する圧縮端子とを備え、
前記コネクタボディの基部とブッシング嵌合部とは、それぞれの軸線を直交させた状態で設けられ、
前記コネクタの圧縮端子の端子部は、前記コネクタボディのブッシング嵌合部内で前記ブッシングの中心導体にボルトを介して接続されること、
を特徴とする請求項3に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記ケーブル接続部は、該ケーブル接続部で接続される一方のセクションケーブル及び他方のセクションケーブルの端末部にそれぞれ取り付けられたプラグ及びレセプタクルからなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記プラグ及びレセプタクルは、それぞれが取り付けられているセクションケーブルに対して直角な方向に抜き差しし得るように設けられていること、
を特徴とする請求項5に記載の風力発電装置。
【請求項7】
管状のタワー構成部材が複数個直列に連結されて構成されたタワーと、前記タワーの上端に取り付けられたナセルと、前記ナセルに設けられた回転軸に取り付けられた風車と、前記風車により駆動される発電機とを備えた風力発電装置の前記タワー内に前記発電機の出力を外部に取り出すために複数の電力ケーブルを布設する方法であって、
各電力ケーブルを、前記複数のタワー構成部材にそれぞれ対応する複数のセクションケーブルに分割して、各タワー構成部材に対応するセクションケーブルを各タワー構成部材の内側に予め布設しておき、
前記複数のタワー構成部材を連結して前記タワーを構築した後に、前記複数のタワー構成部材内にそれぞれ布設されたセクションケーブルの対応するもの同士を隣り合うタワー構成部材の連結部近で相互に接続することにより各電力ケーブルを構成する複数のセクションケーブルを直列に接続すること、
を特徴とする風力発電装置の電力ケーブル布設方法。
【請求項8】
前記セクションケーブル同士の接続は、前記タワーの軸線に対して直角な方向に抜き差しが可能なコネクタを用いて行うことを特徴とする請求項7に記載の風力発電装置の電力ケーブル布設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−268595(P2010−268595A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117718(P2009−117718)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】