説明

風力装置の操作方法及び風力装置

【課題】風力装置が電気ネットワークに接続されている場合に生じる従来の問題を解決する。
【解決手段】電気ネットワークに電力を供給するための発電機を有する風力装置及び風力装置を操作する方法であって、
電気ネットワークのネットワーク周波数がその基準値をしきい値だけ上回れば、前記発電機によって電気ネットワークに供給される電力を、電気ネットワークのネットワーク周波数に応じて低減することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力装置が接続された電気ネットワークに電力を供給するための、ロータにより駆動される発電機を有する風力装置を操作する方法に関するものである。本発明はさらに、電気消費者(electrical consumer)、とくに電気ネットワークに電力を供給するための、ロータと、該ロータに連結された発電機とを含む風力装置に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
弱小の電気ネットワーク(島)の場合、比較的大きな消費者が電気ネットワークから切り離されたときには、ネットワーク周波数が非常に急峻(突然)に上昇する。例えばディーゼルエンジン、水車などの駆動装置は、この後それらの(機械的及び電気的な)出力(power)を低減するのにはいくらかの時間を必要とする。このようなときには、これらの発電機は電気ネットワークで用いられるよりも多くのエネルギを生成する。この後、このエネルギは発電機を加速するのに消費される。これは、回転速度が上昇し、さらにはこれに伴ってネットワーク周波数も上昇するということを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えばコンピュータ、電気モータなどの、電気ネットワークに接続された多くのアイテムの電気装置は、ネットワーク周波数の変動又はその突然の変化に対応するようになっていないので、これは電気装置に損傷を与え、その破壊に至るという結果を招くこともある。
【0004】
本発明の目的は、風力装置が電気ネットワークに接続されている場合に生じる上記の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に記載の特徴を備えた方法と、請求項5に記載された特徴を備えた風力装置とによって達成される。有用な発展形態は、従属する請求項に記載されている。即ち、上記の目的を達成するために、本発明の第1の視点により、電気ネットワークに電力を供給するための発電機を有する風力装置を操作する方法であって、
電気ネットワークのネットワーク周波数がその基準値をしきい値だけ上回れば、前記発電機によって電気ネットワークに供給される電力を、電気ネットワークのネットワーク周波数に応じて低減すること
を特徴とする方法が提供される(形態1・第1基本構成)。
(形態2) 上記の方法において、前記しきい値が0.3%であることが好ましい。
(形態3) 上記の方法において、前記しきい値が0.6%であることが好ましい。
(形態4) 上記の方法において、風力装置がマイクロプロセッサに連結されたインバータを有し、該マイクロプロセッサは、風力装置の出力周波数がネットワーク周波数に対応する周波数に変換されるよう該インバータを制御することが好ましい。
更に、上記の目的を達成するために、本発明の第2の視点により、ロータと、該ロータに連結され電気ネットワークに電力を供給する発電機とを含む風力装置であって、
電気ネットワークのネットワーク周波数を測定する周波数取出器を有する調整装置を備え、
前記周波数取出器によって測定されたネットワーク周波数がその基準値をしきい値だけ上回れば、発電機によって電気ネットワークに供給される電力が、該周波数取出器によって測定されたネットワーク周波数に応じて低減されること
を特徴とする風力装置が提供される(形態5・第2基本構成)。
(形態6) 上記の風力装置において、前記しきい値は0.3%であることが好ましい。
(形態7) 上記の風力装置において、前記しきい値は0.6%であることが好ましい。
(形態8) 上記の風力装置において、前記発電機によって生成される電力は、前記ロータに連結されたロータブレードのピッチ調整により低減されることが好ましい。
(形態9) 上記の風力装置において、前記調整装置がマイクロプロセッサを有することが好ましい。
(形態10) 上記の風力装置において、風力装置がマイクロプロセッサに連結されたインバータを有し、該マイクロプロセッサは、風力装置の出力周波数がネットワーク周波数に対応する周波数に変換されるよう該インバータを制御することが好ましい。
更に、上記の目的を達成するために、本発明の第3の視点により、ロータと、該ロータによって駆動される発電機を有する風力装置を操作する方法であって、
上記発電機で電力を生成し、
上記電力を電気ネットワークに供給し、
電気ネットワークにおける電力の周波数を測定し、
測定した周波数を基準値と比較し、
電気ネットワークにおける電力の周波数が基準値をしきい値だけ上回れば、上記発電機によって生成される電力の量を低減することによって電気ネットワークに供給される電力の量を低減することを特徴とする方法が提供される(形態1’・第3基本構成)。
・上記の方法において、上記しきい値が0.3%であることが好ましい(形態2’)。
・上記の方法において、上記しきい値が0.6%であることが好ましい(形態3’)。
更に、上記の目的を達成するために、本発明の第4の視点により、
周囲の風にさらされるロータブレードと、
ロータブレードに連結されたロータと、
ロータによって駆動され、電気ネットワークに供給するための電力を生成する発電機と、
電気ネットワークの電圧の周波数を測定する周波数センサを有する調整装置と、
周波数センサによって測定される電気ネットワークの電圧の周波数が基準値をしきい値だけ上回れば、上記発電機によって生成される電力の量を低減することによって電気ネットワークに供給される電力の量を低減する電力調整装置と
を備えていることを特徴とする風力装置が提供される(形態4’・第4基本構成)。
・上記の風力装置において、上記調整装置がマイクロプロセッサを有することが好ましい(形態5’)。
・上記の風力装置において、マイクロプロセッサに連結されたインバータを有し、該マイクロプロセッサは、風力装置の出力周波数がネットワーク周波数に対応する周波数に変換されるよう該インバータを制御することが好ましい(形態6’)。
・上記の風力装置において、上記電力調整装置は、風に対してロータブレードのピッチを調整することにより、該ロータブレードに連結されたロータによって駆動される発電機によって生成される電力の量を低減することが好ましい(形態7’)。
・上記の風力装置において、ネットワーク周波数があらかじめ設定された基準値を0.3%より多く上回れば、電気ネットワークに供給される電力を低減することが好ましい(形態8’)。
・上記の風力装置において、ネットワーク周波数があらかじめ設定された基準値を0.6%より多く上回れば、電気ネットワークに供給される電力を低減することが好ましい(形態9’)。
・上記の風力装置において、ネットワーク周波数があらかじめ設定された基準値を2%より多く上回れば、電力を0まで低下させて電気ネットワークへの電力の供給を停止するようになっていることが好ましい(形態10’)。
更に、以下の態様も可能である:
(態様1) 電気ネットワークに電力を供給するための発電機を有する風力装置を操作する方法であって、
発電機によって電気ネットワークに供給される電力を、電気ネットワークのネットワーク周波数に応じて調整又は調節するとともに、
電気ネットワークのネットワーク周波数があらかじめ設定された値を超えれば、上記発電機によって供給されて電気ネットワークに供給される電力を低減することが好ましい。
(態様2) 上記の方法において、ネットワーク周波数がその基準値を0.3%より多く上回れば、上記風力装置の供給電力を低減することが好ましい。
(態様3) 上記の方法において、ネットワーク周波数がその基準値を0.6%より多く上回れば、上記風力装置の供給電力を低減することが好ましい。
(態様4) ロータと、該ロータに連結され電気ネットワークに電力を供給する発電機とを含む、上記の方法を実施するための風力装置であって、
電気ネットワークでの電圧又は電流の周波数を測定する周波数取出器を有する調整装置を備えていて、発電機によって電気ネットワークに供給される電力が周波数取出器によって測定されたネットワーク周波数に応じて調整可能であることが好ましい。
(態様5) 上記風力装置において、上記調整装置がマイクロプロセッサを有することが好ましい。
(態様6) 上記風力装置において、該風力装置がマイクロプロセッサに連結されたインバータを有することが好ましい。
(態様7) 上記風力装置において、該風力装置の機械的出力が、風に向かって配置されている調整可能なロータブレードにより低減されることが好ましい。
(態様8) 上記風力装置において、上記ネットワーク周波数がその基準値を所定値だけ超えれば、該風力装置が電気ネットワークへの電力の供給を停止することが好ましい。
(態様9) 上記風力装置において、上記所定値が上記基準値の2%であることが好ましい。
(態様10) 電気ネットワークに電力を供給するための発電機を有する風力装置を操作する方法であって、
風力装置で電力を生成し、
上記電力を電気ネットワークに供給し、
電気ネットワークにおける電力の周波数を測定し、
測定した周波数を基準値と比較し、
電気ネットワークにおける電力の周波数が基準値をしきい値だけ上回れば、風力装置によって電気ネットワークに供給される電力の量を低減することが好ましい。
(態様11) 上記の方法において、上記しきい値が0.3%であることが好ましい。
(態様12) 上記の方法において、上記しきい値が0.6%であることが好ましい。
(態様13) 電気ネットワークに電力を供給するための発電機を有する風力装置を操作する方法であって、
発電機によって電気ネットワークに供給される電力を、電気ネットワークのネットワーク周波数に応じて調整又は調節するとともに、
電気ネットワークのネットワーク周波数があらかじめ設定された値を0.3%より多く上回れば、上記発電機によって供給されて電気ネットワークに供給される電力を低減することが好ましい。
(態様14) 上記の方法において、あらかじめ設定された値が0.6%であることが好ましい。
(態様15) 風力装置であって、
周囲の風にさらされる風力タービンブレードと、
風力タービンブレードに連結されたロータと、
ロータに連結され、電力を生成して電気ネットワークに供給する発電機と、
電気ネットワークの電圧の周波数を測定する周波数センサを有する調整装置と、
周波数センサによって測定されしきい値によって異なるネットワーク周波数に基づいて、発電機によって電気ネットワークに供給される電力を低減する電力調整装置とを備えていることが好ましい。
(態様16) 上記の風力装置において、上記調整装置がマイクロプロセッサを有することが好ましい。
(態様17) 上記の風力装置において、マイクロプロセッサに連結されたインバータを有することが好ましい。
(態様18) 上記の風力装置において、該風力装置の機械的出力が、風に対して調整される調整可能なロータブレードにより低減されることが好ましい。
(態様19) 上記の風力装置において、ネットワーク周波数があらかじめ設定された基準値を0.3%より多く上回れば、電気ネットワークに供給される電力を低減することが好ましい。
(態様20) 上記の風力装置において、ネットワーク周波数があらかじめ設定された基準値を0.6%より多く上回れば、電気ネットワークに供給される電力を低減することが好ましい。
(態様21) 上記の風力装置において、ネットワーク周波数があらかじめ設定された基準値を2%より多く上回れば、電力を0まで低下させて電気ネットワークへの電力の供給を停止するようになっていることが好ましい。
【0006】
本発明によれば、風力装置がこのような弱小ネットワークで操作される場合に、それらの(機械的な)電気的な出力(power)を、上昇するネットワーク周波数に応じて制御するようにしたものが提供される。すなわち、本発明は、ネットワーク周波数のさらなる上昇を防止し、又はネットワーク周波数の低下を達成することをもくろんでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】風力装置の周波数/出力のタイムチャートである。
【図2】風力装置の側面図である。
【図3】マイクロプロセッサによって制御される、風力装置のインバータのブロック 回路図である。
【図4】風力装置の調整装置の模式図である。
【図5】風力装置の電気ネットワークへの連結を示す図である。
【図6】図3に示す装置に代わる装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、実施の形態により、添付の図面を参照しつつ、以下で非常に詳細に説明される。
【0009】
図1は、ネットワークの電気周波数fに応じて低減されるべき出力電力Pについての風力装置への要求(demand)を示している。ここで、100%の値は、電気ネットワークの基準周波数(50Hz、60Hz)を示している。100.6%及び102%の値は、それぞれ、ネットワーク周波数fの、より高い値を示している。
【0010】
風力装置の電力は、例えばネットワーク周波数が0.6%上昇しても(すなわち100.6%となる)、まだ低下方向には調整されない。この後、ネットワーク周波数がさらに上昇した場合、風力装置の電力は低下する方向に調整される。図示された実施の形態においては、ネットワーク周波数が102%に上昇すれば風力装置の電力が0まで低下するように調整されている。
【0011】
図2及び図3は、このような要求を満たす風力装置の実施の形態を示している。風力装置は、調整可能なロータブレード(ロータブレードに対するピッチの調整)を有し、これにより風力装置の機械的出力を下降方向に調整することができる。例えば、風に対するロータブレードの迎え角が調整される場合、ロータブレードにかかる力が所望の値まで低減されることができる。ロータブレードを担持しているロータに接続された発電機(図示せず)の交流電流は、整流器2により整流され、コンデンサ3により平滑化される。この後、インバータ4は、直流電圧をネットワークL1、L2、L3に供給される交流電流に変換する。この出力電流の周波数は、ネットワークによりあらかじめ決められている。マイクロプロセッサを含む調整装置5は、ネットワーク周波数を測定し、出力周波数がネットワーク電圧(ネットワーク周波数)に対応するような仕様で、インバータのパワースイッチを制御する。前記の通り、この後、ネットワーク周波数が上昇すれば、電力は図1に示すように低下方向に調整される。
【0012】
図4は、本発明にかかる調整装置を示している。風力装置の図示されたロータ4は、風速ひいては風力に応じた電力を供給する発電機Gに連結されている。発電機Gにより生成される交流電圧は、まず整流され、この後インバータによりネットワーク周波数に対応する周波数の交流電圧に変換される。ネットワーク電圧は、ネットワーク周波数取出器により、ネットワークのネットワーク導入点(feed-in point)で確認される。ネットワーク周波数があらかじめ設定された値を超えれば(図1参照)、直ちに供給される電力がネットワーク周波数のさらなる上昇を防止するために低減される。したがって、ネットワークのネットワーク周波数は、調整装置により、所望のネットワーク周波数値に調整され、又は少なくともさらなる上昇が防止される。
【0013】
ネットワーク周波数の変動は、上記のように調整された、風力装置によってネットワークに供給される電力の供給により回避され、又はかなり低減される。
【0014】
図5は、風力装置の電気ネットワークへの接続を示している。ここでは、風力装置によって生成される電力は、ネットワーク導入点でネットワークに供給される。電気ネットワークには、図示された例では家の形態で示されている複数の消費者に接続されている。
【0015】
図6は、図3に示すものとはやや異なる制御−調整装置の基本的な(必須の)部品を示している。制御・調整装置は、発電機で生成された交流電圧を整流する整流器を有している。整流器に接続された周波数変換器は、まず中間回路で整流された直流電圧を、配線L1、L2及びL3によりネットワークに3相交流電圧の形態で供給される交流電圧に変換する。周波数変換器は、全体としての調整装置の一部をなすマイクロコンピュータにより制御される。このため、マイクロプロセッサは周波数変換器に連結されている。風力装置2によって供給される電力がネットワークに供給されるところでの電圧を調整するための入力パラメータは、現在のネットワーク電圧と、ネットワーク周波数fと、発電機の電力Pと、無効電力率(reactive power factor)cosψと、電力勾配dP/dtとである。マイクロプロセッサは、本発明にかかる、その所望のネットワーク周波数で供給されるべき電圧の調整を行う。
【符号の説明】
【0016】
1 風力装置
2 整流器
3 コンデンサ
4 インバータ
5 調整装置(レギュレータ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ネットワークに電力を供給するための発電機を有する風力装置を操作する方法であって、
電気ネットワークのネットワーク周波数がその基準値をしきい値だけ上回れば、前記発電機によって電気ネットワークに供給される電力を、電気ネットワークのネットワーク周波数に応じて低減すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記しきい値が0.3%であること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記しきい値が0.6%であること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
風力装置がマイクロプロセッサに連結されたインバータを有し、該マイクロプロセッサは、風力装置の出力周波数がネットワーク周波数に対応する周波数に変換されるよう該インバータを制御すること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
ロータと、該ロータに連結され電気ネットワークに電力を供給する発電機とを含む風力装置であって、
電気ネットワークのネットワーク周波数を測定する周波数取出器を有する調整装置を備え、
前記周波数取出器によって測定されたネットワーク周波数がその基準値をしきい値だけ上回れば、発電機によって電気ネットワークに供給される電力が、該周波数取出器によって測定されたネットワーク周波数に応じて低減されること
を特徴とする風力装置。
【請求項6】
前記しきい値は0.3%であること
を特徴とする請求項5に記載の風力装置。
【請求項7】
前記しきい値は0.6%であること
を特徴とする請求項5に記載の風力装置。
【請求項8】
前記発電機によって生成される電力は、前記ロータに連結されたロータブレードのピッチ調整により低減されること
を特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の風力装置。
【請求項9】
前記調整装置がマイクロプロセッサを有すること
を特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載の風力装置。
【請求項10】
風力装置がマイクロプロセッサに連結されたインバータを有し、該マイクロプロセッサは、風力装置の出力周波数がネットワーク周波数に対応する周波数に変換されるよう該インバータを制御すること
を特徴とする請求項9に記載の風力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−90523(P2012−90523A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272687(P2011−272687)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【分割の表示】特願2006−198344(P2006−198344)の分割
【原出願日】平成13年3月31日(2001.3.31)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】