説明

風向調整装置

【課題】組み付け工数及びコストの削減が可能な風向調整装置を提供する。
【解決手段】円弧状に形成した案内部35を備え、風が通過するケース体11を備える。ケース体11の案内部に沿って移動可能なスペーサ12,12を備える。ケース体11を通過する風の向きを制御するフィン13は、スペーサ12,12が案内部に沿う移動方向と異なる方向に可動的にスペーサ12,12に対して支持するとともに、スペーサ12,12を介してケース体11に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体を通過する風の向きを制御する風向制御体を備えた風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンターコンソール部に設置された後席空調用のもの、あるいは、オーバーヘッドコンソール部、センターピラーやドアトリムなどに設置された、いわゆるミニバン車の第2列(中間列)及び第3列(最後列)の空調装置用のものなどが知られており、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置として、例えば丸型の風向調整装置が知られている。この丸型の風向調整装置は、例えば円筒状のケース本体及びこのケース本体の端部に取り付けられる円環状のフィニッシャを備えたケース体と、このケース体の内部に周方向へと回動可能に取り付けられた円筒状の枠体と、この枠体内に軸受けを介して回動可能に軸支されたドラム状などの風向制御体とを備える構成(例えば、特許文献1参照。)、あるいは複数の風向調整板をリンクによって連動及び回動させる構成(例えば、特許文献2参照。)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127658号公報 (第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開2007−55396号公報 (第5−9頁、図5−9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1記載の風向調整装置では、風向制御体の操作力を制御する部材が回動方向によって分別されているため、部品点数が多く、また、上述の特許文献2記載の風向調整装置では、リンクなどの部材が必要であるなど、組み付け工数及び製品コストの増加を抑制することが容易でないという問題点を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、組み付け工数及びコストの削減が可能な風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、円弧状に設けられた案内部を備え、風が通過するケース体と、このケース体の前記案内部に沿って移動可能に案内される可動駒と、この可動駒に対してこの可動駒が前記案内部に沿う移動方向と異なる方向に可動的に支持されるとともに、この可動駒を介して前記ケース体に支持され、このケース体を通過する風の向きを制御する風向制御体とを具備したものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、可動駒は、軸受け部を備え、案内部の相対向する位置にそれぞれ配置され、風向制御体は、前記各可動駒の軸受け部に回動可能に軸支された支持軸を備えているものである。
【0009】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項2記載の風向調整装置において、案内部は、各可動駒をケース体の風が通過する方向の周囲に沿って移動可能に案内し、前記各可動駒の軸受け部は、前記ケース体の風が通過する方向と交差する方向に風向制御体の各支持軸を回動可能に軸支するものである。
【0010】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項2記載の風向調整装置において、案内部は、各可動駒をケース体の風が通過する方向に沿って移動可能に案内し、前記各可動駒の軸受け部は、前記ケース体の風が通過する方向と交差する方向に風向制御体の各支持軸を回動可能に軸支するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、ケース体の円弧状に設けられた案内部に沿って移動可能に案内される可動駒に対して、風向制御体を、この可動駒の移動方向と異なる方向に可動的に支持することにより、可動駒のみによって風向制御体を案内部に沿う方向とこの方向に対して異なる方向とに可動的に支持できるので、部品点数を抑制でき、組み付け工数及びコストの削減が可能になる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加え、案内部の相対向する位置にそれぞれ配置された各可動駒の軸受け部に風向制御体の支持軸を回動可能に軸支することにより、案内部と各可動駒との摩擦力、及び軸受け部と風向制御体との摩擦力を適宜設定することで、風向制御体の操作トルクを容易に管理できる。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項2記載の風向調整装置の効果に加え、案内部が、各可動駒をケース体の風が通過する方向の周囲に沿って移動可能に案内するとともに、各可動駒の軸受け部がケース体の風が通過する方向と交差する方向に風向制御体の各支持軸を回動可能に軸支することにより、風向制御体により広域な配風範囲を得ることができる。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項2記載の風向調整装置の効果に加え、案内部が、各可動駒をケース体の風が通過する方向に沿って移動可能に案内するとともに、各可動駒の軸受け部が、ケース体の風が通過する方向と交差する方向に風向制御体の各支持軸を回動可能に軸支することにより、風向制御体の向きを互いに交差する二軸で管理でき、良好な操作感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の風向調整装置の第1の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】同上風向調整装置を示し、(a)は風向調整装置の斜視図、(b)は風向調整装置の平面図である。
【図3】同上風向調整装置の一部を示す断面図である。
【図4】同上風向調整装置の風向制御体を示す斜視図である。
【図5】同上風向調整装置の可動駒を示す斜視図である。
【図6】同上風向調整装置の風向制御体の動作を示す断面図であり、(a1)は風向制御体を全開した状態を示し、(a2)は風向制御体を一方向へと全閉した状態を示し、(a3)は風向制御体を他方向へと全閉した状態を示し、(b1)は(a1)に対応する支持軸及び可動駒の相対的な位置関係を示し、(b2)は(a2)に対応する支持軸及び可動駒の相対的な位置関係を示し、(b3)は(a3)に対応する支持軸及び可動駒の相対的な位置関係を示す。
【図7】本発明の風向調整装置の第2の実施の形態のケース体を示す分解斜視図である。
【図8】同上風向調整装置の可動駒を示す斜視図である。
【図9】同上風向調整装置の風向制御体を回動させた際の可動駒及び案内部の状態を(a)ないし(c)の順に示す断面図である。
【図10】本発明の風向調整装置の第3の実施の形態の一部を示す正面図である。
【図11】本発明の風向調整装置の第4の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図12】同上風向調整装置を示す斜視図である。
【図13】同上風向調整装置の風向制御体の動作を示す断面図であり、(a)は風向制御体を中立位置とした状態を示し、(b)は風向制御体を上方向へと回動させた状態を示し、(c)は風向制御体を下方向へと回動させた状態を示す。
【図14】本発明の風向調整装置の第5の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図15】本発明の風向調整装置の第6の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図16】本発明の風向調整装置の第7の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図17】本発明の風向調整装置の第8の実施の形態の一部を示す側面図である。
【図18】本発明の風向調整装置の第9の実施の形態の一部を示し、(a)は風向制御体及び可動駒の斜視図、(b)は一方の可動駒を示す平面図、(c)は他方の可動駒を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の風向調整装置の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図5において、10はいわゆる丸型の風向調整装置を示し、この風向調整装置10は、例えば自動車などの車両に備えられた空調装置などからの風の向き、すなわち風向を調整する空調用のもので、図示しないが、自動車の内装部材、例えばインストルメントパネルやセンターコンソール、オーバーヘッドコンソール部、センターピラーあるいはドアトリムなどの被設置部に設置されている。
【0018】
そして、この風向調整装置10は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、ケース体11と、このケース体11の内部に可動駒としてのスペーサ12,12を介して取り付けられる風向制御体としてのフィン13とを備えている。そして、この風向調整装置10は、例えば合成樹脂により形成されている。
【0019】
ケース体11は、ケース本体21と、このケース本体21に嵌合される意匠部としての外郭部材であるフィニッシャ22とを別体で有している。
【0020】
ケース本体21は、例えば空調装置などからの風を受け入れる導入口である円形状の受入口24を一端側に有しこの受入口24に連通する円形状の連通口25を他端に有する円筒状の本体部26と、この本体部26の連通口25の周囲に突出する円筒状(円形枠状)の枠部27とを一体に備えている。なお、以下、ケース本体21内を受入口24側から連通口25側へと通過する風の下流側を前側、上流側を後側とし、この前後方向に対して直交する方向を水平方向あるいは幅方向である左右方向(矢印L,R方向)、及びこれら前後方向及び左右方向に対して直交する方向を上下方向(矢印U,D方向)として説明する。
【0021】
本体部26は、連通口25側である後側が後方へと拡径するように形成されている。
【0022】
また、枠部27は、本体部26よりも大きい径寸法を有しており、本体部26の後端の周囲に連続して形成されている。すなわち、この枠部27は、本体部26に対して外方へと突出する突出部としての突出板部27aと、この突出板部27aの外周から後方へと突出する外枠部27bとを一体に有している。この突出板部27aには、フィニッシャ22に対向する後側に、スペーサ12の摺動抵抗を抑制する断面半円形状の一方の突起部としての前側突起部27cが後方へと突出して連通口25の全周に亘って連続的に形成されている。さらに、外枠部27bの外周面の複数箇所には、フィニッシャ22をケース本体21に係止するための係止部である爪部27dが突設されている。
【0023】
また、フィニッシャ22は、風向調整装置10の取り付け位置の意匠面の一部をなすものであり、円形状の吹出口である通気口31を囲む円筒状の通気枠部としての円筒部32と、この円筒部32の前端部の周囲に突出する円筒状の意匠部本体としてのフィニッシャ本体33とを一体に備えている。
【0024】
通気口31は、フィン13によって向きが制御された風が乗員側(車室内)へと吹き出し可能な開口であり、連通口25と略等しい径寸法に設定されている。
【0025】
また、フィニッシャ本体33は、ケース本体21の後方から枠部27の外周に嵌着される部分であり、円筒部32の前端の周囲に連続して形成されている。すなわち、このフィニッシャ本体33は、円筒部32に対して外方へと突出する対向突出部としての対向突出板部33aと、この対向突出板部33aの外周から前方へと突出する意匠部外枠としてのフィニッシャ外枠33bとを一体に有している。この対向突出板部33aには、ケース本体21の突出板部27aに対向する前側に、スペーサ12の摺動抵抗を抑制する断面半円形状の他方の突起部としての後側突起部33cが前方へと突出して通気口31の全周に亘って連続的に形成されている。さらに、フィニッシャ外枠33bは、外枠部27bの外周に嵌着される部分であり、外枠部27bの外径寸法よりも大きい内径寸法を有している。また、このフィニッシャ外枠33bの外周面の複数箇所には、ケース本体21の爪部27dが挿入係合される角孔状の爪孔部33dが開口されている。
【0026】
そして、ケース本体21とフィニッシャ22とが互いに係止固定されることにより、突出板部27aと外枠部27bと対向突出板部33aとによって、各スペーサ12をケース体11の周方向に360°移動可能に案内する円環溝状の案内部35が形成されている。すなわち、この案内部35は、ケース体11を風が通過する方向であるケース体11の軸方向を中心軸とする円周状(円弧状)に形成されている。
【0027】
なお、以下、ケース体11の周方向とは、ケース体11の中心軸に対して直交する平面上の、この中心軸を中心とする円弧に沿った方向、すなわち通気口31の外周に沿う方向を言うものとする。
【0028】
また、各スペーサ12は、平坦な直方体状となっており、案内部35の相対向する位置、換言すれば案内部35の中心(通気口31の中心)に対して点対称な位置に配置されている。さらに、これらスペーサ12は、一主面12a及び他主面12bのそれぞれの四隅に、断面半円形状の突起12cが突設されているとともに、これら一主面12a及び他主面12bの中央部を貫通して、軸受け部としての通孔12dが穿設されている。
【0029】
そして、通孔12dは、円弧状(円周面状)の一方及び他方の摺動面12e,12fを互いに対向して有しているとともに、これら摺動面12e,12fの両端間に連続する一方及び他方のストッパ面12g,12hを有している。
【0030】
一方の摺動面12eは、中心角が例えば90°に設定されている。また、他方の摺動面12fは、一方の摺動面12eよりも径寸法が大きく形成されており、中心角が例えば270°に設定されている。そして、これら一方及び他方の摺動面12e,12fは、一主面12a(他主面12b)の中央部を中心として互いに同心状に位置している。
【0031】
また、一方及び他方のストッパ面12g,12hは、各スペーサ12に対するフィン13の回動角度を規制するものであり、一方の摺動面12eの一端及び他端と他方の摺動面12fの一端及び他端との間に亘って連続する直線状(平面状)に形成されており、互いに例えば90°離間されている。
【0032】
さらに、一主面12aに突設された突起12cは、案内部35を構成する外枠部27bと先端側が点状(線状)に当接する部分であり、他主面12bに突設された突起12cは、フィン13側と当接する部分である。すなわち、これら突起12cは、案内部35(ケース体11)及びフィン13に対してスペーサ12の摺動抵抗を抑制するものである。
【0033】
そして、このスペーサ12の前後に位置する側面12i,12iには、ケース体11の前側突起部27c及び後側突起部33cの先端側が点状(線状)に当接している。
【0034】
また、フィン13は、羽根体、ハウジング、あるいはルーバなどとも呼ばれ、風向調整装置10から吹き出す風向及び風量を制御するもので、例えば互いに略同径に形成され略平行に離間された対をなす円板状の整流部である羽根部13a,13bと、これら羽根部13a,13b間に略平行に位置しこれら羽根部13a,13bよりも径寸法が大きい円板状の中央羽根部13cとを有し、これら羽根部13a〜13cが連結部13d,13dにより互いに対向する位置、例えば上下の位置で連結されて一体となっている。したがって、羽根部13a,13bと中央羽根部13cとの間には、通気孔13e,13fが形成されており、各羽根部13a〜13cに沿う方向が、このフィン13により制御される風の向きである風軸となっている。さらに、連結部13d,13dのそれぞれには、支持軸としての軸部13g,13gが突設されている。
【0035】
中央羽根部13cは、外径寸法が連通口25及び通気口31の径寸法と略等しく設定されている。
【0036】
また、各軸部13gは、平面視で円形状の軸本体部13hと、この軸本体部13hから平面視で扇形状に突出する突出軸部13iとを一体に有している。そして、軸本体部13hの外周面が、各スペーサ12の一方の摺動面12eと摺接する円周面状の一方の軸部摺動面13jとなっており、突出軸部13iの外周面が、各スペーサ12の他方の摺動面12fと摺接する円周面状の他方の軸部摺動面13kとなっているとともに、この突出軸部13iの軸本体部13hの一方の軸部摺動面13jから突出する側面がそれぞれ一方及び他方のストッパ面12g,12hと当接可能な平面状の一方及び他方の当接面13l,13mとなっている。
【0037】
一方の軸部摺動面13jは、他方の軸部摺動面13kよりも径寸法が大きく、中心角が例えば270°に設定されている。また、他方の軸部摺動面13kは、中心角が例えば90°に設定されている。そして、これら一方及び他方の軸部摺動面13j,13kは、軸本体部13hの中央部を中心として互いに同心状に位置している。
【0038】
また、一方及び他方の当接面13l,13mは、一方及び他方のストッパ面12g,12hとともに、各スペーサ12に対するフィン13の回動角度を規制するものであり、一方の軸部摺動面13jの一端及び他端と他方の軸部摺動面13kの一端及び他端との間に亘って連続する直線状(平面状)に形成されており、互いに例えば90°離間されている。したがって、フィン13は、各スペーサ12とともにケース体11の周方向に360°回動可能となっているとともに、各スペーサ12に対して、回動方向と異なる(交差(直交)する)方向、すなわちこの回動方向の回動軸に対して回動軸が交差(直交)する方向である左右方向(ケース体11の円筒直方向)に180°回動可能となっている。
【0039】
そして、風向調整装置10を組み立てる際には、まず、フィン13の軸部13g,13gにスペーサ12,12を取り付ける(図1)。このとき、各軸部13gの軸部摺動面13j,13kが各スペーサ12の摺動面12e,12fに保持されるように、軸部13gを通孔12dに挿入する。この状態で、各スペーサ12の他主面12bに形成された各突起12cの先端側がフィン13の連結部13dに線状(点状)に当接する。
【0040】
次いで、このスペーサ12,12を取り付けたフィン13を、ケース本体21とフィニッシャ22とによって前後から挟持することで(図3)、各スペーサ12,12が案内部35に位置して前側突起部27cと後側突起部33cとの先端側に前後で線状(点状)に当接するとともに、各スペーサ12の一主面12aの各突起12cの先端側が枠部27の内周面27eと線状(点状)に当接する。この結果、各スペーサ12を介して案内部35に沿ってフィン13がケース体11の周方向に回動可能で、かつ、各スペーサ12に対してフィン13が回動可能な風向調整装置10が完成する。
【0041】
そして、自動車の内装部材の被設置部に設置された風向調整装置10は、図6(a1)及び図6(b1)に示すように、フィン13を中立(ニュートラル)位置、すなわち全開状態としたとき、フィン13は、ケース体11の中心軸に対して風軸が平行となっている。このとき、各軸部13gは、各軸部摺動面13j,13kが各スペーサ12の摺動面12e,12fに保持され、各当接面13l,13mがストッパ面12g,12hから離間された位置であり、通気口31から風が乗員の正面方向へと流れる。
【0042】
また、図6(a2)及び図6(b2)に示すように、フィン13を中立位置から左方向(矢印A方向)に回動させた場合には、フィン13は、ケース体11の中心軸に対して羽根部13a,13b及び中央羽根部13c、すなわち風軸が交差する位置となる。このとき、各軸部13gは、一方の当接面13lが一方のストッパ面12gに当接する位置まで、すなわち90°回動可能であり、これら一方の当接面13lと一方のストッパ面12gとが当接する位置で回動不能となるとともに、ケース体11の中心軸に対して風軸が略直交し、羽根部13aが連通口25を閉塞し、通気口31から風が吹き出さなくなる(全閉状態)。
【0043】
さらに、図6(a3)及び図6(b3)に示すように、フィン13を中立位置から右方向(矢印B方向)に回動させた場合には、フィン13は、ケース体11の中心軸に対して羽根部13a,13b及び中央羽根部13c、すなわち風軸が交差する位置となる。このとき、各軸部13gは、他方の当接面13mが他方のストッパ面12hに当接する位置まで、すなわち90°回動可能であり、これら他方の当接面13mと他方のストッパ面12hとが当接する位置で回動不能となるとともに、ケース体11の中心軸に対して風軸が略直交し、羽根部13bが連通口25を閉塞し、通気口31から風が吹き出さなくなる(全閉状態)。
【0044】
なお、フィン13の軸部13gの当接面13l,13m及びスペーサ12のストッパ面12g,12hを設けずに、フィン13を左右方向に360°回動可能に構成してもよい。
【0045】
また、フィン13をこれら左右方向に回動させるだけでなく、ケース体11の周方向(矢印C方向)、すなわち風が通過する方向の周囲に沿って適宜回動させる動作を組み合わせることで、通気口31から吹き出す風の向きを三次元的に自在に可変することができる。すなわち、フィン13を周方向に捻ることにより、一方のスペーサ12が一方向へと移動するのに対して、他方のスペーサ12が中心に対して一方のスペーサ12の移動方向と反対方向へと移動することで、フィン13が周方向に回動する。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、ケース体11の円弧状に形成された案内部35に沿って移動可能に案内されるスペーサ12に対して、フィン13を、このスペーサ12の移動方向と異なる方向に可動的に支持することにより、スペーサ12のみによってフィン13を案内部35に沿う方向(周方向)とこの方向に対して異なる方向(左右方向)とに可動的に支持できる。したがって、これらの方向それぞれに対応して可動的にフィンを支持する部品を備える構成と比較して、部品点数を抑制でき、組み付け工数を抑制できるとともに、組み付けの作業性及び金型製作費用などを含めたトータルコストの削減が可能になる。
【0047】
また、案内部35が、各スペーサ12をケース体11の風が通過する方向である前後方向の周囲、すなわちケース体11の周方向に沿って移動可能に案内するとともに、各スペーサ12の通孔12dがケース体11の風が通過する方向と交差(直交)する方向(左右方向)にフィン13の各軸部13gを回動可能に軸支することにより、これらを組み合わせることでフィン43により広域な配風範囲を得ることができる。
【0048】
さらに、フィン13は、左方向、あるいは右方向へと最大に回動させることにより、通気口31から吹き出す風を遮断する全閉状態とすることが可能、すなわち、フィン13の閉動作が双方向に可能であるため、広域な配風性能を得ることができるとともに、フィン13を左方向及び右方向のいずれの方向に回動させても全閉位置とすることができるので、快適な閉動作を得ることができる。
【0049】
そして、スペーサ12の一主面12a及び他主面12bに案内部35及びフィン13と接触させる突起12cを設けるとともに、案内部35を構成するケース本体21とフィニッシャ22とにスペーサ12の側面12i,12iと接触させる前側突起部27c及び後側突起部33cを設けることにより、これら突起12c及び突起部27c,33cの突出量を調整することで、スペーサ12の案内部35への組み付け状態でのがたつきを全方向で防止しつつスペーサ12の案内部35に対する摺動抵抗を適切に設定でき、より確実な配風性能を得ることができる。
【0050】
しかも、案内部35の相対向する位置にそれぞれ配置した各スペーサ12の通孔12dにフィン13の各軸部13gを回動可能に軸支することにより、各スペーサ12と案内部35との摩擦力、すなわち摺動抵抗(合わせ)を適宜設定することでフィン13の周方向への回動の操作トルクを管理でき、かつ、通孔12dと各軸部13gとの摩擦力、すなわち摺動抵抗(合わせ)を適宜設定することでフィン13の左右方向への回動の操作トルクを管理できるので、フィン13の操作トルクを確実かつ容易に管理できる。換言すれば、各スペーサ12の製造精度の管理により、フィン13の操作トルクを確実に管理できる。
【0051】
次に、第2の実施の形態を図7ないし図9を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
この第2の実施の形態は、上記の第1の実施の形態において、図8に示すように、各スペーサ12が、突起12cの外方に一主面12aから他主面12bに亘って貫通する溝部12j,12jを備えるとともに、前後に位置する側面12i,12iに、それぞれ接触部としての凸部12k,12kを備えるものである。
【0053】
各溝部12jは、各スペーサ12の側面12i,12i側が前後方向の中心に向けて弾性的に変形可能とするものである。
【0054】
また、各凸部12kは、一主面12aから他主面12bに亘って連続して形成されており、断面半円形状に形成されている。
【0055】
さらに、図7に示すように、ケース体11には、ケース本体21の枠部27の突出板部27aの後面に、(一方の)接触突出部としての複数の前側リブ27fが突設されているとともに、フィニッシャ22の対向突出板部33aの前面に、(他方の)接触突出部としての複数の後側リブ33eが突設されている。すなわち、これらリブ27f,33eは、案内部35の前後に位置しており、案内部35の径方向に沿って放射状、換言すれば案内部35によるスペーサ12の案内方向に対して交差する方向に沿って形成されて、互いにケース体11の周方向、換言すれば案内部35によるスペーサ12の案内方向に、凸部12kの幅寸法と略等しい寸法分、離間されている。また、これらリブ27f,33eは、断面半円形状に形成されており、それぞれ互いに前後に対向する位置となっている。
【0056】
そして、風向調整装置10を組み立てた状態で、図9に示すように、前側リブ27f及び後側リブ33eに対してそれぞれスペーサ12の側面12i,12iが対向するとともに、隣接する前側リブ27f,27f間に及び隣接する後側リブ33e,33e間に凸部12k,12kが嵌合された位置でスペーサ12が半固定されている。すなわち、スペーサ12及びフィン13のケース体11の周方向への回動位置が半固定されている。
【0057】
この状態で、フィン13をケース体11の周方向に回動させると、図9(a)ないし図9(c)に示すように、凸部12k,12kが前側リブ27f及び後側リブ33eを乗り越えようとすることでスペーサ12は各溝部12jによって側面12i,12iが前後方向の中央側へと弾性的に撓み、前側リブ27f及び後側リブ33eを凸部12k,12kが乗り越えて隣の前側リブ27f,27f間及び後側リブ33e,33e間に嵌合したときに復帰変形することにより、クリック感が生じる。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、スペーサ12の前後の側面12i,12i側を前後方向に弾性的に変形可能とし、これら側面12i,12iに凸部12k,12kを突設するとともに、ケース体11の案内部35に、この凸部12k,12kをケース体11の周方向に挟持する前側リブ27f,27f及び後側リブ33e,33eを突設することにより、フィン13の回動位置をケース体11の周方向に多段階に調整でき、使用者が意図した位置でフィン13を安定的に半固定することが可能になるとともに、フィン13をケース体11の周方向に操作する度にクリック感を生じさせることができ、操作性がより良好になる。
【0059】
なお、上記の各実施の形態において、図10に示す第3の実施の形態のように、フィン13の一方の軸部13gを球状(ピボット状)としてもよい。
【0060】
次に、第4の実施の形態を図11ないし図13を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この第4の実施の形態の風向調整装置10は、ケース体41と、このケース体41の内部に可動駒としてのスペーサ42,42を介して取り付けられる風向制御体としてのフィン43とを備えている。そして、この風向調整装置10は、例えば合成樹脂により形成されている。
【0062】
ケース体41は、一方及び他方のケース構成体である上ケース本体51及び下ケース本体52により構成されるケース本体53と、このケース本体53に嵌合される意匠部としての外郭部材であるフィニッシャ54とを別体で有している。
【0063】
ケース本体53は、例えば空調装置などからの風を受け入れる導入口である円形状の受入口55を一端側に有しこの受入口55に連通する円形状の連通口56を他端に有する円筒状の本体部57と、この本体部57の連通口56から後方へと突出する球面状の収容部58とを一体に備えている。
【0064】
収容部58は、本体部57の後端部に連続して、この本体部57の径寸法よりも最大径寸法が大きい球面状に形成されている。また、この収容部58の互いに対向する部分である上部と下部とには、一方及び他方の案内溝部61,62が、前後方向に沿って長手状で、かつ、収容部58の周方向に沿う円弧状にそれぞれ形成されている。これら案内溝部61,62は、収容部58の内周面よりも外方の位置に形成されている。また、これら案内溝部61,62の前端部の位置には、収容部58と本体部57とが連続する位置に、フィン43の前方への回動位置を規制する段差状の一方及び他方の規制部としての一方及び他方のストッパ面61a,62aが形成されている。さらに、この収容部58の外周面には、ケース本体53とフィニッシャ54とを互いに位置決めするとともに係止するための係止部である係止凹部58aが前後方向に沿って直線状に形成されており、この係止凹部58aの内部には、爪部58bが突出形成されている。これら係止凹部58aは、ケース体41の周方向に互いに略等間隔に離間されている。
【0065】
なお、以下、ケース体41の周方向とは、ケース体41の中心軸に対して直交する平面上の、この中心軸を中心とする円弧に沿った方向を言うものとする。
【0066】
そして、上ケース本体51及び下ケース本体52は、本体部57及び収容部58を例えば上下に略均等に二分割するように構成されている。すなわち、上ケース本体51は、本体部57の上側半分を構成する一方の本体部構成部としての半筒状の上本体部51aと、収容部58の上側半分を構成する半球状の一方の収容部構成部としての上収容部51bとを前後に一体に有しており、下ケース本体52は、本体部57の下側半分を構成する他方の本体部構成部としての半筒状の下本体部52aと、収容部58の下側半分を構成する他方の収容部構成部としての半球状の下収容部52bとを前後に一体に有している。さらに、例えば上本体部51aの両側及び下本体部52aの両側には、これら上本体部51aと下本体部52aとを互いに係止固定する係止固定部としての側部係止腕部51c,51c及び側部係止凹部52c,52cが形成されている。そして、各側部係止腕部51cは、各側部係止凹部52cに挿入される部分であり、上本体部51aの両側の下端から下方に向けて直線状に突出し、これら側部係止腕部51cの先端側に、係止孔部51dが形成されている。また、各側部係止凹部52cは、下本体部52aの両側の上端から下方に向けて直線状に形成されており、これら側部係止凹部52cの内部には、係止孔部51dに挿入係止される係止爪部52dが突出形成されている。
【0067】
また、フィニッシャ54は、風向調整装置10の取り付け位置の意匠面の一部をなすものであり、円形状の吹出口である通気口64が中央に開口された円板状となっている。さらに、このフィニッシャ54の前側の通気口64の周囲には、ケース本体53の係止凹部58aに挿入される係止腕部54aが前方に向けて突出形成されており、これら係止腕部54aの先端側には、爪部58bが挿入係合される爪孔部54bが開口されている。
【0068】
そして、ケース本体53とフィニッシャ54とが互いに係止固定されることにより、案内溝部61,62の後端がフィニッシャ54により閉塞されて、各スペーサ42をケース体41(通気口64)の周方向に移動可能に案内する(一方及び他方の)案内凹部66,67が形成され、これら案内凹部66,67により案内部68が構成されている。これら案内凹部66,67は、ケース本体53の収容部58に沿う円弧状(円形状の一部に沿う形状)で、かつ、前後方向に長手状に形成されている。すなわち、これら案内凹部66,67(案内部68)は、ケース体41を風が通過する方向、すなわちこのケース体41の軸方向に沿って形成されており、各スペーサ42を案内することでフィン43の仰角を設定するように構成されている。
【0069】
また、各スペーサ42は、フィン43側と当接する可動駒本体としての平板状のスペーサ本体42aと、このスペーサ本体42aに対して垂直状に突出して案内凹部66,67へと先端側が挿入される平板状の被挿入部42bとを一体に有している。すなわち、各スペーサ42は、案内部68の相対向する位置に配置されている。そして、スペーサ本体42aの被挿入部42bと反対側であるフィン43に対向する側には、フィン43を左右方向に回動可能に支持するための軸受け部としての丸孔状の軸受凹部42cが形成されている。
【0070】
また、フィン43は、ハウジング、あるいはルーバなどとも呼ばれ、風向調整装置10から吹き出す風向及び風量を制御するもので、例えば互いに径寸法が異なる円筒状に形成された複数、例えば3つの羽根部43a,43b,43cを同心状(同軸状)に一体に有するとともに、これら羽根部43a〜43cを互いに連結する側面視で円弧状に形成された平板状の羽根部43d,43eを互いに十字状に一体に有している。羽根部43d,43eは、羽根部43a〜43cの中心軸位置で互いに直交状に交差している。したがって、各羽根部43a〜43eの間に、前後方向に貫通する通気孔43fがそれぞれ形成されており、このフィン43の中心軸が、このフィン43により制御される風の向きである風軸となっている。さらに、羽根部43aの外部には、支持軸としての軸部43g,43gが突設されている。
【0071】
これら軸部43gは、円筒状に形成されており、スペーサ42の軸受凹部42cに挿入されている。
【0072】
そして、風向調整装置10を組み立てる際には、まず、フィン43の軸部43g,43gをスペーサ42,42の軸受凹部42c,42cに挿入し、このスペーサ42,42を取り付けたフィン43を、上ケース本体51と下ケース本体52とにより上下から挟持する。このとき、各スペーサ42の被挿入部42b,42bの先端側を案内溝部61,62に挿入するように位置合わせしつつ、上ケース本体51の各側部係止腕部51cを下ケース本体52の各側部係止凹部52cに沿って挿入し、係止孔部51dに係止爪部52dが係合する位置まで押し込むことで、上ケース本体51と下ケース本体52とが、収容部58にフィン43を収容した状態で互いに係止固定される。
【0073】
そして、このフィン43を収容したケース本体53に対して後方からフィニッシャ54を、各係止腕部54aを各係止凹部58aと位置合わせしつつこれら係止凹部58aに挿入し、爪孔部54bに爪部58bが係合する位置まで押し込むことで、ケース本体53とフィニッシャ54とが互いに係止固定される。この結果、各スペーサ42を介して案内凹部66,67に沿ってフィン43が上下方向に回動可能で、かつ、各スペーサ42に対してフィン43が回動可能な風向調整装置10が完成する。
【0074】
そして、自動車の内装部材の被設置部に設置された風向調整装置10は、フィン43を中立(ニュートラル)位置としたとき、図13(a)に示すように、フィン43は、ケース体41の中心軸に対して風軸が平行となっている。このとき、通気口64から風が乗員の正面方向へと流れる。
【0075】
また、フィン43の左右方向の上側を中立位置から前方に押し込んだ場合には、図13(b)に示すように、上側のスペーサ42が一方の案内凹部66に沿って前方へと移動する一方で、上側のスペーサ42と下側のスペーサ42との距離が一定となるように、下側のスペーサ42が他方の案内凹部67に沿って後方へと移動する。すなわち、フィン43は、上側の軸部43gが相対的に前方へと移動し、下側の軸部43gが相対的に後方へと移動する、すなわち互いに反対方向に移動することにより、収容部58の中心部を中心として回動し、ケース体41の中心軸に対して風軸が交差状となって、通気口64から風が乗員の上方向へと流れる。なお、上側の軸部43gは、一方のストッパ面61aに当接する位置(下側の軸部43gがフィニッシャ54の前面に当接する位置)まで回動可能であり、この位置で、風軸の上方向への傾斜が最大となる。
【0076】
同様に、フィン43の左右方向の下側を中立位置から前方に押し込んだ場合には、図13(c)に示すように、下側のスペーサ42が他方の案内凹部67に沿って前方へと移動する一方で、上側のスペーサ42と下側のスペーサ42との距離が一定となるように、上側のスペーサ42が一方の案内凹部66に沿って後方へと移動する。すなわち、フィン43は、下側の軸部43gが相対的に前方へと移動し、上側の軸部43gが相対的に後方へと移動する、すなわち互いに反対方向に移動することにより、収容部58の中心部を中心として回動し、ケース体41の中心軸に対して風軸が交差状となって、通気口64から風が乗員の下方向へと流れる。なお、下側の軸部43gは、他方のストッパ面62aに当接する位置(上側の軸部43gがフィニッシャ54の前面に当接する位置)まで回動可能であり、この位置で、風軸の下方向への傾斜が最大となる。
【0077】
なお、フィン43は、左右方向の上側、あるいは下側を押すだけでなく、例えば左右方向成分を有するように回動させる、換言すれば左上部、左下部、右上部、右下部などを押すことで、各スペーサ42が案内凹部66,67に沿って移動するだけでなく、フィン43がスペーサ42,42に対して回動するので、通気口64から吹き出す風の向きを三次元的に自在に可変することができる。
【0078】
このように、本実施の形態によれば、ケース体41の円弧状に形成された案内部68の案内凹部66,67に沿って移動可能に案内されるスペーサ42,42に対して、フィン43を、各スペーサ42の移動方向と異なる方向に可動的に支持することにより、各スペーサ42のみによってフィン43を案内部68の案内凹部66,67に沿う方向(前後方向)とこの方向に対して異なる方向(左右方向)とに可動的に支持できる。したがって、これらの方向それぞれに対応して可動的にフィンを支持する部品を備える構成と比較して、部品点数を抑制でき、組み付け工数を抑制できるとともに、組み付けの作業性及び金型製作費用などを含めたトータルコストの削減が可能になる。
【0079】
また、案内部68の案内凹部66,67が、スペーサ42,42をケース体11の風が通過する方向である軸方向(前後方向)に沿って移動可能に案内するとともに、各スペーサ42の軸受凹部42cがフィン43の各軸部43gをケース体11の軸方向に対して交差(直交)する方向(左右方向)に回動可能に軸支することにより、フィン43の向きを上下方向と左右方向との互いに交差(直交)する二軸で管理でき、使用者がフィン43を所望する風向き方向に押すだけでその方向に風向きを変えることができるなど、使用感及び操作感がより良好になる。すなわち、本実施の形態では、風向きを変える際に、フィン43を押すだけで済み、風向きを例えば左右方向から上下方向に向ける際などに、例えばフィンの捻り及び角度調整の2アクションが必要でないため、良好な使用感及び操作感を得ることができる。
【0080】
しかも、案内部68の相対向する案内凹部66,67にそれぞれ配置した各スペーサ42の軸受凹部42cにフィン43の各軸部43gを回動可能に軸支することにより、案内部68の案内凹部66,67と各スペーサ12との摩擦力、すなわち摺動抵抗(合わせ)を適宜設定することでフィン43の上下方向への回動の操作トルクを管理できるとともに、フィン43の各軸部43gと各スペーサ42の軸受凹部42cとの摩擦力、すなわち摺動抵抗(合わせ)を適宜設定することでフィン43の左右方向への回動の操作トルクを管理できるので、フィン43の操作トルクを確実かつ容易に管理できる。換言すれば、各スペーサ42の製造精度の管理により、フィン43の操作トルクを確実に管理できる。
【0081】
なお、上記の第4の実施の形態において、図14に示す第5の実施の形態のように、スペーサ42に代えて、例えば摺動性が良好なシリコーンゴム(シリコーンラバー)などの合成樹脂製の部材によりフィン43と別体、あるいはフィン43の軸部43gに二色成形された可動駒71を用いて、スペーサ42と同様に案内部68の案内凹部66,67に沿って移動可能に案内する構成としてもよい。
【0082】
また、図15に示す第6の実施の形態のように、ケース体41は、例えば下本体部52aとフィニッシャ54とを一体に形成してもよいし、図示しないが、上本体部51aとフィニッシャ54とを一体に形成してもよい。
【0083】
さらに、図16に示す第7の実施の形態のように、ケース体41は、例えば収容部58の最大径位置、換言すれば収容部58の前後方向の中心位置(案内凹部66,67の長手方向の中央位置)を境界として、前後に分割してもよい。すなわち、ケース体41は、例えば一方及び他方のケース構成体である前ケース体73及び後ケース体74によって構成してもよい。この場合、例えば前ケース体73は、本体部57、及び、収容部58の前側を構成する一方の収容部構成部である前収容部76を一体に有し、後ケース体74は、収容部58の後側を構成する他方の収容部構成部である後収容部77、及び、フィニッシャ54を一体に有するようにするとともに、爪孔部54bを有する係止腕部54aを後収容部77の外周部から前方へと突出形成し、爪部58bを有する係止凹部58aを前収容部76の外周部に前後方向に沿って形成することにより、上記の第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
そして、これら第6及び第7の実施の形態は、上記の第5の実施の形態に適用してもよい。
【0085】
また、上記の第3ないし第7の実施の形態において、図17に示す第8の実施の形態のように、一方の軸部43gを球状(ピボット状)としてもよい。
【0086】
さらに、風向調整装置10は、いわゆる丸型のものに限定されず、フィン13,43に代えて、例えば図18(a)ないし図18(c)に示す第9の実施の形態のように、箱型の風向制御体としてのフィン81を備える構成などとしてもよい。
【0087】
すなわち、このフィン81は、例えば略平行に離間された対をなす四角形板状の整流部である羽根部81a,81b,81cと、これら羽根部81a〜81cを上下の位置で連結する四角形板状の連結部81d,81eとを備える角筒状に形成されている。したがって、羽根部81a,81b,81c間には、通気孔81f,81gが形成されており、各羽根部81a〜81cに沿う方向が、このフィン81により制御される風の向きである風軸となっている。さらに、連結部81d,81eのそれぞれには、(一方及び他方の)支持軸としての軸部81h,81iが突設されている。
【0088】
一方の軸部81hは、先端側が球状に形成されている。また、他方の軸部81iは、円柱状に形成されている。そして、一方及び他方の軸部81h,81iは、(一方及び他方の)可動駒としてのスペーサ83,84により可動的に支持されている。
【0089】
一方のスペーサ83は、球面状の軸受け部としての軸受凹部83aを中央部に備え、一方の軸部81hを360°回動可能に軸支している。
【0090】
また、他方のスペーサ84は、前後方向に沿う長孔状に形成された軸受け部としての通孔84aを備えており、他方の軸部81iを左右方向に回動可能で、かつ、前後方向に移動可能に軸支している。
【0091】
そして、一方のスペーサ83及び他方のスペーサ84は、ケース体11の上部及び下部に左右方向に沿って円弧状に形成された(一方及び他方の)案内凹部86,87により左右方向に移動可能に案内される。これら案内凹部86,87により、案内部88が構成されている。
【0092】
この結果、フィン81を左右方向へと回動させることにより、スペーサ83,84が案内部88の案内凹部86,87に沿って左右方向に移動するとともに、フィン81がスペーサ83,84に対して左右方向に回動することで、フィン81はケース体11の中心軸に対して羽根部81a〜81c、すなわち風軸が交差する位置となり、この風軸の方向に沿って風が吹き出される。
【0093】
また、フィン81を上下方向へと回動させることにより、フィン81が一方の軸部81hを中心として上下方向に回動することで、風軸の仰角が設定される。
【0094】
したがって、これらの動作を適宜組み合わせることで、吹き出す風の向きを三次元的に自在に可変することができる。
【0095】
このように、本実施の形態によれば、箱型のフィン81であっても、案内部の案内凹部86,87に沿って移動可能なスペーサ83,84に対して、これらスペーサ83,84が案内部88の案内凹部86,87に沿う移動方向と交差する方向に可動的にフィン81を支持することで、上記の各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
また、上記の各実施の形態において、案内部35,68,88は、溝状ではなく、レール状に突出させてもよい。
【0097】
そして、風向調整装置10は、車両用に限らず、任意の空調装置などの風向の調整に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0099】
10 風向調整装置
11,41 ケース体
12,42,83,84 可動駒としてのスペーサ
12d,84a 軸受け部としての通孔
13,43,81 風向制御体としてのフィン
13g,43g,81h,81i 支持軸としての軸部
35,68,88 案内部
42c,83a 軸受け部としての軸受凹部
71 可動駒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に設けられた案内部を備え、風が通過するケース体と、
このケース体の前記案内部に沿って移動可能に案内される可動駒と、
この可動駒に対してこの可動駒が前記案内部に沿う移動方向と異なる方向に可動的に支持されるとともに、この可動駒を介して前記ケース体に支持され、このケース体を通過する風の向きを制御する風向制御体と
を具備したことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
可動駒は、軸受け部を備え、案内部の相対向する位置にそれぞれ配置され、
風向制御体は、前記各可動駒の軸受け部に回動可能に軸支された支持軸を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
案内部は、各可動駒をケース体の風が通過する方向の周囲に沿って移動可能に案内し、
前記各可動駒の軸受け部は、前記ケース体の風が通過する方向と交差する方向に風向制御体の各支持軸を回動可能に軸支する
ことを特徴とする請求項2記載の風向調整装置。
【請求項4】
案内部は、各可動駒をケース体の風が通過する方向に沿って移動可能に案内し、
前記各可動駒の軸受け部は、前記ケース体の風が通過する方向と交差する方向に風向制御体の各支持軸を回動可能に軸支する
ことを特徴とする請求項2記載の風向調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−71616(P2013−71616A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212590(P2011−212590)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】