説明

風向風速計およびセンサ

【課題】本発明は、室内各所の風向および風速を三次元的に簡易に計測可能な風向風速計およびその風向風速計に用いられるセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる風向風速計用センサは、網目状の骨組みを有する球殻状の風向風速計用センサであって、骨組みを構成する経線方向の線材と緯線方向の線材との交点である絶縁部と、熱線式風速計の検出部であって、絶縁部により所定の長さ毎に区分される線材と、を備えることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に室内の風向および風速を計測する風向風速計およびその風向風速計に用いられるセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データを格納するサーバーを集中的に配置したサーバールームや、サーバーのほかにルータなどの情報通信機器を備えてデータ通信を可能としたデータセンターの利用が増加している。
【0003】
このようなサーバールームやデータセンターでは、大量の電子機器から多くの熱が発生するため、空調設備により室内の除熱が行われている。しかし、局所的には、熱だまりなどの温度が高い場所が生じる場合がある。局所的に温度が高い場所が生じると電子機器の過熱などにつながり、電子機器に悪影響を及ぼす。このため、局所的に温度が高い場所の発生の有無を確認することが重要である。
【0004】
局所的に温度が高い場所の発生の有無は、室内の各所におけるエンタルピーを求めて、熱の出入りが適切になされているかを評価することにより確認できる。室内各所のエンタルピーを求めるためには、その場所の温度とともに、風向および風速の情報が必要となる。
【0005】
風速の計測には、一般的に、熱線式、風杯型、ピトー管式、風車型、超音波式などの風速計が用いられている。このうち、風車型や超音波式の風速計は、風速のみならず風向も計測可能である。また、熱線式風速計は、小型、安価に構成することが可能であり、室内の風速計測に適する利点を有するが、単体では風向を計測することはできない。
【0006】
これに対し、熱線式風速計を用いて風速だけでなく風向も計測可能とした風向風速計が特許文献1に開示されている。特許文献1の風向風速計は、風速判定用の熱式風速計部と、風向判定用の熱式風速計部と、この熱式風速計部に目標方向に開口して取り付けられ、目標方向以外からの風を遮る円錐形又は有底円筒形等の遮蔽体とを備えた風向風速計であり、例えば自動車道トンネル等の風洞内の風向風速の計測に用いられるものである。
【0007】
また、複数の熱線式風速計を組み合わせることにより、風向を計測することも可能である。例えば、互いに直交する3軸上に、熱線式風速計の検出部をそれぞれ配置する構成により、三次元的に風向を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−288121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、室内各所の風向風速の計測に上記特許文献1の風向風速計を用いる場合は、風向を三次元的に計測するために上記風向風速計を複数用いなければならず、また、上記風向風速計は遮蔽体を有するため、装置が大がかりになる。また、風向の変化に応じて、上記風向風速計の設置方向を設定し直す必要があり手数がかかる。
【0010】
また、複数の熱線式風速計を組み合わせる方法では、風向の特定のためにベクトル演算が必要になるため、処理が複雑になるとともに、高い計測精度を得ることができない。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、室内各所の風向および風速を三次元的に簡易に、かつ、精度良く計測可能な風向風速計およびその風向風速計に用いられるセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる風向風速計に用いられるセンサの代表的な構成は、網目状の骨組みを有する球殻状の風向風速計用センサであって、骨組みを構成する経線方向の線材と緯線方向の線材との交点である絶縁部と、熱線式風速計の検出部であって、絶縁部により所定の長さ毎に区分される線材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる風向風速計に用いられるセンサの他の構成は、網目状の骨組みを有する球殻状の風向風速計用センサであって、骨組みを構成する経線方向の線材と緯線方向の線材との交点である熱線式風速計の検出部と、絶縁材であって、検出部で所定の長さ毎に区分される線材と、を備えることを特徴とする。
【0014】
熱線式風速計は、その検出部である電熱線に電流を流し、その電熱線における発熱と風による冷却とが平衡したときの温度から風速を求める風速計であり、風速が変化すると、電熱線の抵抗値が変化することを利用したものである。上述した構成のセンサにおいては、網目状の骨組みが、熱線式風速計の検出部と、絶縁部との組み合わせで構成されている。かかる構成のセンサを、熱線式風速計による風速計測に用いることにより、その位置の風速が計測できる。
【0015】
いま、一様な風の流れを想定すれば、外観が球殻状の構造体である風向風速計用センサの仮想表面において、仮想表面の法線と風の流れの方向が一致する点が2点存在し、その一方の点の近傍における熱線式風速計の計測値が、球殻状の構造体を構成するすべての熱線式風速計の中で最大になる。その点と球殻状の構造体の中央部を結ぶ方向、すなわち、仮想表面上のその点における法線の方向が、球殻状の構造体に向かって吹いてくる風の方向になる。
【0016】
熱線式風速計の検出部から構成される上述した構造体は球殻状であるため、かかる構造体単体で、全方向の風に対して三次元的に風向を計測するセンサとして適用可能である。また、構造体の網目を細かくして風向の検出単位を小さくすることにより、計測の精度を高めることができる。従って、上記構成のセンサを熱線式風速計のセンサとして用いて風向風速を計測することにより、室内各所の風向および風速を三次元的に簡易に、かつ、精度良く計測することができる。
【0017】
上記の骨組みの中央部に熱線式風速計の球状の検出部を配置してもよい。かかる構成によれば、中央部の熱線式風速計の検出部をその点の風速を計測するセンサとして用いるとともに、球殻状の構造体を構成する熱線式風速計の検出部を、風向を計測するセンサとして用いることができる。従って、上記構成のセンサを熱線式風速計のセンサとして用いて風向風速を計測することにより、室内各所の風向および風速を三次元的に簡易に、かつ精度良く計測することができる。
【0018】
特に、中央部に配置された検出部に高精度のセンサを用いることにより、球殻状の構造体を構成する経線方向および緯線方向の検出部に高精度のセンサを用いることなく、安価にかつ高精度に風向風速の計測を行うことができる。
【0019】
上記の検出部にて検出された信号を処理して風向風速を計測する計測部を備えた風向風速計として構成してもよい。かかる風向風速計によれば、室内各所の風向および風速を三次元的に簡易に、かつ精度良く計測することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、室内各所の風向および風速を三次元的に簡易に、かつ精度良く計測可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施形態にかかる風向風速計用センサの概略構成図である。
【図2】第二の実施形態にかかる風向風速計用センサを説明する図である。
【図3】風向の第一の計測方法を説明する図である。
【図4】風向風速計用センサの検出部の位置に応じた抵抗値の変化を説明する図である。
【図5】風向の第二の計測方法を説明する図である。
【図6】計測部の構成とセンサとの接続を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明にかかる風向風速計およびセンサの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、第一の実施形態にかかる風向風速計用センサの概略構成図である。風向風速計用センサ10は、網目状の骨組みを有する球殻状の構造体11を形成する経線方向の線材12と緯線方向の線材13の各交点を絶縁部14とし、絶縁部14で区分される各線材をそれぞれ熱線式風速計の検出部12,13とした構成である。すなわち、球殻状の構造体11は、線状の検出部12、13と絶縁部14とにより構成されている。また、球殻状の構造体11の中央部Oには熱線式風速計の検出部15が支持部材16により支持されている。球殻状の構造体11は、支柱17により支持されている。
【0024】
経線方向の検出部12および緯線方向の検出部13には、線状の検出部を用いて、中央部Oの検出部には、例えば球状の無指向性の検出部を用いることができる。いずれの検出部も、熱線式風速計の検出部(センサ)として機能するため、抵抗温度係数の大きな金属が適しており、例えば、白金、タングステン、ニッケルが好適に用いられる。
【0025】
いずれの検出部によっても風速を計測することが可能であるが、例えば、中央部Oの検出部15により風速を計測して、経線方向の検出部12および緯線方向の検出部13は主に風向の計測に用いることとしてもよい。かかる場合、中央部Oの検出部15に高精度のセンサを用いる場合には、経線方向および緯線方向の検出部12,13に高精度のセンサを用いなくても、安価に風向風速の高精度計測を行うことができる。
【0026】
絶縁部14に用いられる絶縁材は、絶縁機能を有するものであれば、どのようなものでもよいが、例えば、エポキシ樹脂が好適に用いられる。エポキシ樹脂は、電気絶縁性が高いとともに、寸法安定性、耐水性および耐薬品性が高く、接着剤としての機能も有するため、室内の風向風速の計測に適するばかりでなく、経線方向の検出部12および緯線方向の検出部13の接続部として用いるのにも優れる。
【0027】
中央部Oの検出部15、経線方向および緯線方向の検出部12,13のそれぞれにおいて風速を計測し、互いに計測値を比較して、誤計測を排除することなどにより、計測値の信頼性を高めたり、中央部Oの検出部15の計測値で、経線方向および緯線方向の検出部12,13の計測値を補正することにより、計測値の正確性を増すことができる。中央部Oに検出部を設置せずに、経線方向および緯線方向の検出部12,13のみにより風向風速を計測することも可能であるし、中央部Oに検出部を設置する代わりに、別の温度計測手段により検出部周囲の温度を計測して、検出部12,13において計測された抵抗値の変化を補正することにより、計測値の正確性を増してもよい。
【0028】
風向風速計用センサは、例えば、サーバールームやデータセンターの局所的な温度上昇の有無を確認するため、室内の風向風速を計測すべき場所に設置される。室内に風の流れがあると、中央部Oの検出部15により風速が計測され、経線方向の検出部12および緯線方向の検出部13により風向が計測される。風向の計測方法については、後述する。熱線式風速計の性質から、室内の風速が0.1m/s〜5m/sの風の流れに好適に用いられる。風向風速計用センサ10は、球殻状の構造体11の形状を有するため、全方向の風の流れに対して、風向風速を三次元的に簡易に、かつ精度良く計測することが可能である。大きさは例えば直径が約10cmであり、支柱17を備えることにより、持ち運びおよび設置が簡単にできる。
【0029】
また、かかる構成の風向風速計用センサ10は、直交する3軸上に複数の検出部を組み合わせて配置して構成した熱線式風速計用センサなどに比べて、ベクトル演算などの複雑な処理を必要としないため、風向風速を三次元的に簡易に、かつ精度良く計測することができる。
【0030】
図2は、第二の実施形態にかかる風向風速計用センサを説明する図である。図2では、本実施形態にかかる風向風速計用センサの一部を示している。本実施形態にかかる風向風速計用センサは、図1に示す第一の実施形態にかかる風向風速計用センサの経線方向および緯線方向の線材を絶縁材により構成することにより絶縁部22,23とし、経線方向の線材と緯線方向の線材との交点を熱線式風速計の検出部24としたものである。
【0031】
絶縁部22、23を構成する絶縁材には、第一の実施形態と同様に、絶縁機能を有するものであれば、どのようなものを用いてもよいが、例えば、エポキシ樹脂が好適に用いられる。熱線式風速計の検出部24には、例えば、球状の無指向性の検出部を用いることができる。検出部24には、第一の実施形態と同様に、抵抗温度係数の大きな金属が適する。
【0032】
本実施形態では、経線方向の線材22と緯線方向の線材23との交点に設けられた熱線式風速計の検出部24により風向が計測される。中央部Oの検出部はあってもなくてもよいし、熱線式風速計の検出部24により風速が計測可能であることは、第一の実施形態と同様である。本実施形態にかかる風向風速計用センサにより、風向風速を三次元的に簡易に、かつ精度良く計測することができる。
【0033】
図3は、風向の第一の計測方法を説明する図である。図3(a)は、風が流れる方向に平行で球殻状の構造体11の中央部Oを通る平面により、網目状の骨組みを有する球殻状の構造体11を切り取った断面図である。室内の風の流れが一様である場合、球殻状の構造体11の仮想表面の法線と風の流れの方向が一致する点が2点存在し、これらの点は、図3(a)に示す通り、A1およびA2で示される。
【0034】
風がA1から球殻状の構造体11の中央部Oを通り、A2に向かう方向に吹いている場合は、A1の近傍の熱線式風速計の検出部に生じる温度変化により、A1近傍の検出部の抵抗値(抵抗率)が、同一の経線方向の線材12を構成するすべての検出部の中で最も大きく変化する。A1近傍の検出部では、風の流れの方向に直交する面に投影される面積が全ての検出部の中で最大となるからである。なお、経線方向の線材12は絶縁部14により、等しい長さに区分されているとする。
【0035】
このとき、球殻状の構造体11を構成する各交点にそれぞれ接続される4本の線材の抵抗値の変化の合計値を比較した場合、図3(b)に示す通り、点A1の近傍の点P1に接続される線材ア1、イ1、ウ1およびエ1の抵抗値の変化の合計値がすべての線材の中で最大となる。なお、点P2は、点A1に対する点P1と同様、点A2に対応する点A2近傍の点である。
【0036】
これにより、風の流れの方向は点A1の近傍の線材ア1、イ1、ウ1およびエ1の交点P1と中央部Oを通る方向であると計測できる。実際の風向である点A1と中央部Oを結ぶ方向と、計測により求めた点P1と中央部Oを結ぶ方向は異なるが、この相違の範囲は、図3(c)に示す通り、交点P1を中心として一辺の長さが一区分の線材の長さである略四角形で表される。球殻状の構造体11の網目を小さくして略四角形の面積を小さくし、風向の検出単位を小さくすることにより、実際の風向と計測による風向との相違を小さくし、風向計測の精度を高めることができる。
【0037】
なお、抵抗値の変化の大きさを比較するために、線材を選択する際には、経線方向の線材12と緯線方向の線材13から少なくとも1辺を選択する必要がある。すなわち、交点P1に接続される直交する2辺、例えば、線材ア1とエ1や、線材ウ1とエ1の組み合わせを少なくとも選択する。交点P1に接続される平行な2辺、例えば、線材ア1とウ1の組み合わせを選択した場合は、その抵抗値の変化の大きさが、線材カ1とク1の組み合わせにおける抵抗値の変化の大きさと同じか、差違があっても小さい値となり、風の流れの方向は、点P1を含む緯線上の任意の点と中央部Oとを結ぶ方向に平行であることまでしか特定できない。
【0038】
図4は、風向風速計用センサの検出部の位置に応じた抵抗値の変化を説明する図である。ある方向から風の流れがあるときに、球殻状の構造体11の同一の経線を構成する線材(検出部)は、風の方向に対する線材の位置に応じて抵抗値の変化が異なることを示すものである。図4(a)は、風が流れる方向に平行で、球殻状の構造体11の任意の経線を含み、球殻状の構造体11の中央部Oを通る平面により、球殻状の構造体11を切り取った断面図であり、P1およびP2は、図3(a)に示されるP1およびP2と同じ点である。網目状の骨組みを有する球殻状の構造体11の経線方向の線材(熱線式風速計の検出部)12は等しい長さで区分されている。線材が等しい長さであれば、その長さを基準として抵抗値の変化を比較することができる。線材が等しい長さで区分されていない場合は、実際の長さを基準とする長さに合わせる補正を行えばよい。線材(検出部)の抵抗値の変化は、風の方向に直交する面に投影される線材の面積(以下、投影面積という)と、その線材における風の強さにより決まり、投影面積が大きく風の強さが強いほど抵抗値の変化は大きい。
【0039】
図4(b)に示すように、角度θ=0°に位置する線材(検出部)は、風の方向と略平行な位置関係にあって、風の方向に直交する面への投影面積は最小となるため、抵抗値の変化は最小になる。角度θが増すに従い、風の方向に直交する面への投影面積が増すため、抵抗値の変化は大きくなる。そして、線材がP1(θ=90°)に位置するとき、風の方向に直交する面への投影面積は最大となり、抵抗値の変化も最大となる。θ=90°を越えると抵抗値の変化の大きさは減少し始め、θ=180°で再び最小となる。その後、風の方向に直交する面への投影面積が増すに従い、抵抗値の変化も大きくなりθ=270°で再びピークを示す。
【0040】
θ=270°における値がθ=90°における値よりも小さいのは、P2における風の強さが、P1に比べて小さいためである。すなわち、風は一様な強さで吹いているが、P1とP2を結ぶ方向の風の流れを考えると、風はP1に存在する線材(検出部)により流れを妨げられるため、P2ではその強さを弱める。このため、P2における抵抗値の変化は、P1における抵抗値の変化よりも小さくなる。
【0041】
図5は、風向の第二の計測方法を説明する図である。図3では、ある交点に接続される4本の線材の抵抗値の変化を比較することにより、風の流れの方向を決定したが、図5に示す方法では、ある面を構成する4本の線材の抵抗値の変化を比較することにより風の流れの方向を決定するものである。すなわち、面を構成する4本の線材の抵抗値の変化に着目する本計測方法では、図3に示すのと同じ点A1に関して、点A1を囲む線材ア1、イ1、カ1およびキ1の検出部の抵抗値(抵抗率)が、すべての検出部の中で最も大きく変化する。従って、面Qと中央部Oとを結ぶ方向が、風の流れの方向であると決定することができる。この場合、4本の線材で構成される面の面積を小さくして風向の検出単位を小さくすることにより、風向計測の精度を高めることができる。
【0042】
図6は、計測部の構成とセンサとの接続を説明する図である。球殻状の構造体11を構成する経線方向および緯線方向の各検出部12,13は、絶縁部14により互いに電気的に絶縁されてそれぞれ単体として電気的に独立している。各検出部12、13は、その両端にそれぞれリード線が接続され、計測部30に接続されている。計測部30は、各検出部12,13からのリード線が接続されたマルチプレクサ31,マルチプレクサ31からの信号が入力される抵抗計32、抵抗計32からの出力が入力される演算部33,および演算部33の演算結果を表示する表示部34とから構成される。
【0043】
マルチプレクサ31には各検出部12,13からの信号が入力し、マルチプレクサ31内のスイッチ(図示せず)による選択制御により選択された信号がマルチプレクサ31から出力される。抵抗計32では、入力されたマルチプレクサ31からの信号をもとに、各検出部12,13の抵抗値が算出される。
【0044】
抵抗計32にて測定された各検出部12,13の抵抗値は演算部33に入力され、演算部33では、例えば、図3に示したように、ある交点に接続される4本の検出部12,13の抵抗値の変化の合計値を算出し、これらを各交点について比較して、抵抗値の変化が最大となる交点を特定する。そして、表示部34では、各検出部12,13の抵抗値の変化の値や、その値が最大となる交点の情報などの演算部33における演算結果が表示される。
【0045】
なお、図6では、それぞれ2辺ずつの検出部12,13からの信号がマルチプレクサ31に入力する様子を示しているが、実際には、球殻状の構造体11を構成するすべての検出部12,13からの信号がマルチプレクサ31に入力される。検出部12,13からの信号数がマルチプレクサ31の入力数の上限を超える場合は、マルチプレクサ31を複数設けて、検出部12,13からの信号を、複数のマルチプレクサ31に適宜振り分けて入力するなどすればよい。
【0046】
実際の風向風速の計測は次の通りとなる。各検出部12,13は熱線式風速計の検出部であるから、ある時間における温度に応じた抵抗値を有し、風の流れにより時々刻々とその抵抗値は変化している。マルチプレクサ31を介して構成された各検出部12、13を含む電気回路に抵抗計32から電流が供給されることにより、検出部12,13に通電される。マルチプレクサ31により回路を切替選択して検出部12,13毎の電圧を測定することにより、各検出部12、13の抵抗値が抵抗計32にて測定される。
【0047】
演算部33では、測定された各検出部12、13の時間毎の抵抗値から、時間経過に応じた抵抗値の変化を演算することにより、風の流れにより生じた温度変化による各検出部12,13における抵抗値の変化を算出する。そして抵抗値の変化の最大の位置が特定され、その位置と球殻状の構造体11の中央部Oとを結ぶ方向が風の流れる方向と決定される。なお、中央部Oの検出部15も別の計測部(図示せず)に接続され、独自に風速が計測される。かかる構成の風向風速計を室内に設置することにより、室内各所の風向および風速を三次元的に簡易に、かつ精度良く計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は,主に室内の風向および風速を計測する風向風速計およびその風向風速計に用いられるセンサに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 …風向風速計用センサ
11 …球殻状の構造体
12、32 …経線方向の線材(熱線式風速計の検出部)
13 …緯線方向の線材(熱線式風速計の検出部)
14、34 …絶縁部
15 …中央部の熱線式風速計の検出部
16 …支持部材
17 …支柱
22 …経線方向の線材(絶縁部)
23 …緯線方向の線材(絶縁部)
24 …熱線式風速計の検出部
30 …計測部
31 …マルチプレクサ
32 …抵抗計
33 …演算部
34 …表示部
O …球殻状の構造体の中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目状の骨組みを有する球殻状の風向風速計用センサであって、
前記骨組みを構成する経線方向の線材と緯線方向の線材との交点である絶縁部と、
熱線式風速計の検出部であって、前記絶縁部により所定の長さ毎に区分される前記線材と、
を備えることを特徴とする風向風速計用センサ。
【請求項2】
網目状の骨組みを有する球殻状の風向風速計用センサであって、
前記骨組みを構成する経線方向の線材と緯線方向の線材との交点である熱線式風速計の検出部と、
絶縁材であって、前記検出部で所定の長さ毎に区分される前記線材と、
を備えることを特徴とする風向風速計用センサ。
【請求項3】
前記骨組みの中央部に熱線式風速計の球状の検出部を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の風向風速計用センサ。
【請求項4】
前記検出部にて検出された信号を処理して風向風速を計測する計測部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の風向風速計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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