説明

風呂ふた及びこれを用いた浴室装置

【課題】断熱機能を持ち、しかも浴槽に貯留した湯の熱を風呂ふたから放熱することで、浴室全体、特に周囲の壁表面及び天井表面を素早く乾燥させることを目的とする。
【解決手段】浴槽5の湯6の放熱量を切替可能な構成とすることにより、入浴前及び入浴中は浴槽5の湯6の放熱量を最小設定することで浴槽5の断熱機能を保ち、入浴後は浴槽5の湯6の放熱量を最大設定することで浴槽5の湯6の熱を周囲に放熱することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱機能と放熱機能を備え、浴槽に貯留した湯の保温と余熱を利用する風呂ふた及びこれを用いた浴室装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の風呂ふたは、断熱材料と蓄熱材料からなる板状のふたを、蓄熱材料を下にして浴槽の開口部に載置し、浴槽の熱を蓄熱材料に蓄熱した後、ふたを反転して蓄熱材料を上にした状態で浴室の洗い場上に敷き床暖房機能を備えた浴室マットとして使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、前記公報に記載された従来の風呂ふたを示すものである。図6において、浴槽1の上面に載置したふた2は上部が断熱材2aで下部が蓄熱材2bの2層構造となっており、反転して洗い場上に敷き浴室マットとしても使用できる構成である。
【特許文献1】特開昭59−57623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、蓄熱材料に蓄熱し床暖房機能として使用する熱は、本来浴槽内の湯として有効に使用される熱であり、床暖房を有効にするためには浴槽の湯に余分な熱エネルギーを供給する必要があり、トータルとして熱エネルギーを無駄にしているという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、入浴後に浴槽に貯留した湯の余熱を有効活用して風呂ふたから放熱することで、浴室全体、特に周囲の壁表面及び天井表面を素早く乾燥させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の風呂ふたは、浴槽の湯の放熱量を切替可能な構成とした風呂ふたとしたものである。
【0007】
これによって、入浴前及び入浴中は浴槽の湯の放熱量を最小設定することで浴槽の断熱機能を保ち、入浴後は浴槽の湯の放熱量を最大設定することで浴槽の湯の熱を周囲に放熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、請求項1から8のいずれか一項記載の発明によれば、入浴前及び入浴中は浴槽の湯の熱を冷まさず暖かさを保つことができ、入浴後は浴槽の湯の熱を放熱することで周囲温度を上げ、同時に周囲の湿度を下げ浴室全体、特に周囲の壁表面及び天井表面を素早く乾燥させることができ、しかも浴槽に貯留した湯を再利用することで効率的にエネルギーを活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は浴槽の湯の放熱量を切替可能な構成とすることにより、入浴前及び入浴中は浴槽の湯の放熱量を最小設定することで浴槽の断熱機能を保ち、入浴後は浴槽の湯の放熱量を最大設定することで浴槽の湯の熱を周囲に放熱するとなり、入浴前及び入浴中は浴槽の湯の熱を冷まさず暖かさを保つことができ、入浴後は浴槽の湯の熱を放熱することで周囲温度を上げ、同時に周囲の湿度を下げ浴室全体、特に周囲の壁表面及び天井表面を素早く乾燥させることができ、しかも浴槽に貯留した湯を再利用することで効率的にエネルギーを活用することができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の浴槽の開口部を密閉可能な構成とすることにより、浴槽に貯留した湯の熱が浴槽内の空気を介して伝わる際、湯の蒸気は浴槽の中に完全に閉じ込められ、外部に蒸気が漏れることなく周囲に放熱するとなり、周囲に蒸気が漏れないことで周囲の湿度の上昇を抑え、浴室全体、特に放熱手段周囲の壁表面及び天井表面を素早くしかも効率的に乾燥させることができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の多層に重ねた一部の層を開放可能な構成とすることにより、入浴前及び入浴中は多層に重ね、入浴後は一部の層を開放するとなり、放熱量の切り替えが容易にでき、しかも確実に放熱量の切り替えを行なうことができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の多層に重ねた一部の層を着脱可能な構成とすることにより、入浴前及び入浴中は多層に重ね、入浴後は一部の層を着脱するとなり、放熱量の切り替えが容易にでき、しかも確実に放熱量の切り替えを行なうことができ、着脱した層の取り扱い及びメンテナンスがしやすくなる。
【0013】
第5の発明は、特に、第3の発明または第4の発明の熱伝導率の異なる材料を多層に重ねる構成とすることにより、入浴前及び入浴中は熱伝導率の異なる材料を多層に重ね、入浴後は一部の層を開放または着脱するとなり、放熱量の切り替えを容易にすることができる。
【0014】
第6の発明は、特に、第3〜5のいずれか1つの発明の前記多層構成を上下2層構成とし、下層側を熱伝導率の良い金属とした構成とすることにより、入浴前及び入浴中は2層に重ね、入浴後は上層側を開放または着脱し、浴槽の湯の熱を下層側の熱伝導率の良い金属に伝え放熱するとなり、放熱量の切り替えが容易にでき、しかも確実に放熱量の切り替えを行なうことができる。
【0015】
第7の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の下面をフラット形状とし、上面を凹凸形状とし、上下を180度回転させることで放熱量を切り替える構成とすることにより、入浴前及び入浴中は浴槽の開口部に下面を凹凸形状側、上面をフラット形状側で置くことで放熱面積を小さくし、入浴後は上下を180度回転させて設置することで放熱面積大きくするとなり、放熱面積を変えることで放熱量を容易にしかも確実に切り替えることができる。
【0016】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の風呂ふたを用いた浴室装置とすることにより、風呂ふたを浴槽の上に載せるとなり、入浴前及び入浴中は浴槽の湯の熱を冷まさず暖かさを保つことができ、入浴後は浴槽の湯の熱を放熱することで周囲温度を上げ、同時に周囲湿度を下げ浴室全体、特に周囲の壁表面及び天井表面を素早く乾燥させることができ、しかも浴槽に貯留した湯を再利用することで効率的にエネルギーを活用することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における風呂ふたの斜視図を示すものである。
【0019】
また、図2は、本発明の第1の実施の形態における風呂ふたの断面図を示すのもであり、(a)は入浴前及び入浴中の風呂ふたの使用状態を示す断面図、(b)は入浴後の風呂ふたの使用状態を示す断面図である。
【0020】
また、図3は本発明の第1の実施の形態における風呂ふたを用いた浴室装置の断面図を示すものである。
【0021】
図に示すように、浴槽5の開口部7を完全に密閉できる大きさの断熱性能の高いウレタン断熱材3と熱伝導率の高い銅板4の一端を可動固定具11で開閉可能に接続し、もう一端はキャッチ機構としてマジックテープ(登録商標)12にて止める構成とする。
【0022】
また、銅板4の側端面4箇所全てにサイド断熱材18が貼られていて、熱は銅板の上下面方向のみに移動する。
【0023】
図2(a)に示すように、銅板4とウレタン断熱材3をマジックテープ(登録商標)12にて重ねて止め、重ねたままで浴槽5の開口部7を完全に密閉するように浴槽5の上縁部に置く。浴槽5の中には湯6を貯留している。
【0024】
また、図2(b)に示すように、銅板4とウレタン断熱材3のマジックテープ(登録商標)12を外して、ウレタン断熱材3を銅板4に対して90度起こし、浴槽5の開口部7を覆完全に密閉するように銅板4のみを浴槽5の上縁部に置く。
【0025】
また図3に示すように、浴室13の天井14に換気扇15を設置し、湯6を貯留させた浴槽5の上に風呂ふた8の銅板4を載せ、ウレタン断熱材3は開放させる。ドア16の下方部には吸入口17がある。
【0026】
以上のように構成された風呂ふたについて、以下その動作、作用を説明する。
【0027】
まず、入浴前及び入浴中は銅板4の上に断熱性の高いウレタン断熱材3を重ねているため、浴槽5の湯6の熱が風呂ふたの上面および側面から逃げず、浴槽5の湯6は保温される。
【0028】
入浴後は浴槽5の中に湯6を貯めた状態でマジックテープ(登録商標)12を外して図2(b)および図3に示すように断寝る剤3を起こした状態にすると、浴槽5の開口部7を完全に密閉するように銅板4を載せているため、浴槽5の湯6の熱が浴槽中の空気を介して銅板4に熱伝導し、熱伝導した熱エネルギーは銅板4の上面から浴室13内に放熱される。
【0029】
この状態で、換気扇15の運転をすると、浴室外からの乾燥した空気が吸気口17を通って、浴室内部に吸い込まれ、浴室13の下方から上方へ空気が流れるときに銅板4から放熱された熱を取り込んだあと、浴室13の中の水分を含み、天井14に設置した換気扇15により浴室外へ排気される。
【0030】
以上のように、本実施の形態においてはウレタン断熱材3を銅板4の上に重ねて使用するか、もしくは開放して使用するかを選択することで、入浴前及び入浴中は浴槽の断熱機能を保ち、入浴後は浴槽5の湯6の熱が外部へ蒸気漏れがない状態で周囲に放熱する。結果、入浴前及び入浴中は浴槽5の湯6の熱を冷まさず暖かさを保つことができ、入浴後は浴槽5の湯6の熱を放熱することで周囲温度を上げ、同時に周囲の湿度を下げ浴室全体、特に周囲の壁表面及び天井表面を素早く乾燥させることができ、しかも浴槽に貯留した湯を再利用することで効率的にエネルギーを活用することができる。
【0031】
しかも、換気扇を運転することにより、浴室内に吸い込まれた空気が銅板4から放熱された熱を取り込み、換気扇15にて浴室13の隅々まで空気が行渡り、浴室外へ排気するため浴室全体を素早くしかも効率良く乾燥させることができる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、銅板4とウレタン断熱材3の片側一端を可動固定具11にて固定する構成としたが、すべての面をマジックテープ(登録商標)12による固定として、ウレタン断熱材3を着脱可能として取り扱い性及びメンテナンス性を向上させてもよい。
【0033】
なお、本実施の形態においては、風呂ふたを一枚ものとしたが、取り扱いを良くするために風呂ふたを分割構成としてもよい。
【0034】
また、本実施例においては銅板とウレタン断熱材を使用したが、熱伝導の良い材料としてはアルミやステンレス等の耐蝕性を備えた他の金属や樹脂材料を使用することが可能であり、断熱材料としては他の樹脂材料や木材等を使用することが可能である。
【0035】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における風呂ふたの斜視図を示すものである。
【0036】
また、図5は、本発明の第2の実施の形態における風呂ふたの断面図を示すのもであり、(a)は入浴前及び入浴中の風呂ふたの使用状態を示す断面図、(b)は入浴後の風呂ふたの使用状態を示す断面図である。
【0037】
図4に示すように、ABS樹脂を材料とした板状のフラット板9の上面に凹凸部10を一体に成形した構成とする。
【0038】
図5(a)は入浴前の風呂ふたの使用状態を示すものであり、浴槽5の中には湯6を貯留している状態で、凹凸部10を下側にフラット板9を上側にし、浴槽5の開口部7を完全に密閉するように浴槽5の上縁部に置いて使用する。
【0039】
入浴後は、図5(b)に示すように、フラット形状10を下側に凹凸形状9を上側にし、浴槽5の開口部7を完全に密閉するように浴槽5の上縁部に置いて使用する。
【0040】
以上のように構成された風呂ふたについて、以下その動作、作用を説明する。
【0041】
入浴前は凹凸部を下面にして使用することにより、浴槽の湯の放熱抑制することができ、入浴後は凹凸部10を上にして使用することにより、凹凸部が放熱板の役割を果たし、凹凸部を下面にしたときに比べて浴室内への放熱量が増す。
【0042】
以上のように、本実施の形態においては入浴前及び入浴中は浴槽の開口部に下面を凹凸形状側、上面をフラット形状側で置くことで放熱面積を小さくし、入浴後は上下を180度回転させて設置することで放熱面積大きくするとなり、放熱面積を変えることで放熱量を容易にしかも確実に切り替えることができる。
【0043】
なお、本実施の形態においては、ABS樹脂としたがこれに限るものではなく他の樹脂や金属材料等熱伝導性能、耐食性、重量等の条件を考慮して選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明にかかる風呂ふたは浴室内部全体を素早くしかも効率良く乾燥させることが可能となるため、洗面空間、脱衣空間、台所空間の乾燥等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1における風呂ふたの斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における風呂ふたの断面図
【図3】本発明の実施の形態1における風呂ふたを用いた浴室装置の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における風呂ふたの斜視図
【図5】本発明の実施の形態2における風呂ふたの断面図
【図6】従来の風呂ふたの断面図
【符号の説明】
【0046】
4 銅板(熱伝導率の良い金属)
5 浴槽
6 湯
7 開口部
8 風呂ふた
9 フラット板(フラット形状)
10 凹凸部(凹凸形状)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の湯の放熱量を切替可能な構成とした風呂ふた。
【請求項2】
浴槽の開口部を密閉可能な構成とし、浴槽の湯の蒸気漏れを防ぐ請求項1に記載の風呂ふた。
【請求項3】
多層に重ねた一部の層を開放可能とした請求項1または2に記載の風呂ふた。
【請求項4】
多層に重ねた一部の層を着脱可能とした請求項1または2に記載の風呂ふた。
【請求項5】
熱伝導率の異なる材料を多層に重ねる構成とした請求項3または4に記載の風呂ふた。
【請求項6】
前記多層構成を上下2層構成とし、下層側を熱伝導率の良い金属とした請求項3〜5のいずれか1項に記載の風呂ふた。
【請求項7】
下面をフラット形状とし、上面を凹凸形状とし、上下を180度回転させることで放熱量を切り替える請求項1または2に記載の風呂ふた。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の風呂ふたを用いた浴室装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−34315(P2006−34315A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214045(P2004−214045)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】