説明

風呂蓋

【課題】特別な材料を用いることなく、重量の増加やコストの上昇を抑制しつつ、断熱性の高い風呂蓋の熱反りを低減し、使い勝手のよい風呂蓋を提供することを目的とする。
【解決手段】浴槽の上に載せられる風呂蓋であって、前記浴槽に面する下面側部材と、前記下面側部材と対向する上面側部材と、前記上面側部材と、前記下面側部材と、のあいだに設けられ、空気層を有する面状の樹脂袋体を含む断熱部材と、前記上面側部材及び前記下面側部材よりも大きな曲げ強さを有する骨材と、を備えたことを特徴とする風呂蓋が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、浴槽の上に載せる風呂蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境的な意識の高まりを受けて、浴槽内に張った湯の保温性を高めることが大きな課題の一つになっている。この課題に対応して、保温性に大きな影響のある風呂蓋についても、高い断熱性が求められている。
【0003】
断熱性の高い風呂蓋としては、従来から表裏の樹脂面材の間に断熱材を挟む、または充填したものなどが用いられている。
断熱性の高い風呂蓋は、特に冬場など寒い環境での浴槽保温などを行う実使用上において、必然的に蓋の上面と下面とに温度差が生じる。この温度差によって、蓋の上面及び下面の材料の熱膨張量が異なってしまい、蓋がバイメタル状に反るという事象が発生する。
【0004】
このような風呂蓋の反りを低減させるために、風呂蓋の構成素材を線膨張係数の十分小さい素材として対策する手法もある。例えば、風呂蓋の構成素材としてアルミニウムなどの金属薄板の使用や、特殊な樹脂の使用、ガラス繊維やカーボン繊維などの強化材を使った構成が挙げられる。
【0005】
特許文献1では、線膨張係数の小さいガラス繊維またはカーボン繊維を粗い目のネット状に形成して反り防止部材を構成し、この反り防止部材を断熱材の表裏面に設けた平板状の風呂蓋が開示されている。このような構成によって、使用時の風呂蓋の反りを防いでいる。
しかしながら、いずれの手段においても、重量の増加を招くとともにコストの上昇を招くという問題がある。
【0006】
また、風呂蓋自体の構造的な曲げ強さを十分高めて熱膨張による曲げ応力に対抗させる手段なども考えられる。しかし、重量増及びコスト増は回避できず、あわせて単純に曲げ強さを向上させると線膨張係数による曲げ応力も必然的に高まるという問題点も生じることになる。さらに、風呂蓋の重量の増加は、使い勝手にも大きな影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−175112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、特別な材料を用いることなく、重量の増加やコストの上昇を抑制しつつ、断熱性の高い風呂蓋の熱反りを低減し、使い勝手のよい風呂蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、浴槽の上に載せられる風呂蓋であって、前記浴槽に面する下面側部材と、前記下面側部材と対向する上面側部材と、前記上面側部材と、前記下面側部材と、のあいだに設けられ、空気層を有する面状の樹脂袋体を含む断熱部材と、前記上面側部材及び前記下面側部材よりも大きな曲げ強さを有する骨材と、を備えたことを特徴とする風呂蓋である。
【0010】
この風呂蓋によれば、下面側部材の熱膨張を、上面側部材の熱膨張よりも小さく抑えるとともに、曲げ強さの大きな骨材を上面側部材のすぐ下に配置し、その下方に骨材よりも断熱性の高い断熱部材を配置することによって、上方側にある骨材が浴槽内の湯温で暖められて線膨張することを抑え、それによって骨材に発生する曲げ応力を小さく抑えることができる。すなわち、骨材のバイメタル状の反りの抑制することができる。
これにより、特殊な素材を使わずとも上下面の温度差による風呂蓋の反りを防止するとともに、軽量性及び低コスト性を図ることができるようになる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記樹脂袋体は、少なくとも1層の気泡緩衝材により構成されたことを特徴とする風呂蓋である。
【0012】
この風呂蓋によれば、樹脂袋体として既存の緩衝材を利用することができるため、低コストで軽量な風呂蓋を提供することができるようになる。
【0013】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記下面側部材の材料の線膨張係数は、前記上面側部材の材料の線膨張係数よりも小さいことを特徴とする風呂蓋である。
【0014】
この風呂蓋によれば、下面側部材の材料の線膨張係数を、上面側部材の材料の線膨張係数よりも小さくすることで、特殊な素材を使わずとも上下面の温度差による風呂蓋の反りを抑制することができるようになる。
【0015】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記骨材は、前記上面側部材と、前記断熱部材と、のあいだに設けられたことを特徴とする風呂蓋である。
【0016】
この風呂蓋によれば、風呂蓋への平面荷重による変形を抑制することができる。
【0017】
また、第5の発明は、第2の発明において、前記断熱部材の内部に設けられ、前記断熱部材の厚さ方向に延在する柱状部材をさらに備え、前記柱状部材の圧縮強度は、前記樹脂袋体の圧縮強度よりも大きいことを特徴とする風呂蓋である。
【0018】
この風呂蓋によれば、下面側部材にかかる熱応力を、柱状部材によって上面側部材と樹脂袋体とに伝達して、これらの圧縮応力で相殺することができる。これにより、下面側部材の熱膨張を抑え、浴槽内の熱による風呂蓋の変形を抑制することができる。
また、この風呂蓋によれば、特殊な素材を使わずとも上下面の温度差による風呂蓋の反りを防止するとともに、軽量性及び低コスト性を図ることができるようになる。
また、上面側部材と下面側部材として共通の素材を用いることが可能で、表裏のない風呂蓋として使うことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、特別な材料を用いることなく、重量やコストを上昇させずに断熱性の高い風呂蓋の熱反りを低減することができ、使い勝手を向上させた風呂蓋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)〜(b)は、実施形態にかかる風呂蓋を例示する模式図である。
【図2】(a)〜(b)は、第1の具体例を説明する模式図である。
【図3】(a)〜(b)は、第2の具体例を説明する模式図である。
【図4】(a)〜(b)は、第3の具体例を説明する模式図である。
【図5】(a)〜(b)は、第4の具体例を説明する模式図である。
【図6】(a)〜(b)は、第5の具体例を説明する模式図である。
【図7】(a)〜(b)は、第6の具体例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1(a)〜(b)は、実施形態にかかる風呂蓋を例示する模式図である。
図1(a)は、風呂蓋110が浴槽300に置かれた状態を例示する模式的斜視図、図1(b)は、図1(a)に示すA−A線の模式的断面図である。
図1(a)に表したように、実施形態に係る風呂蓋110は、浴槽300のリム部310における上面311に載せられる平板状の蓋である。
【0022】
風呂蓋110は、浴槽300の開口301を塞いで浴槽内302に張られた湯Wの熱が外へ逃げることを防ぐ。浴槽300は、底部330及び側壁320によって浴槽内302の空間が形成され、側壁320の上端から外方にリム部310が設けられた構成になっている。
【0023】
風呂蓋110は、対向する側壁320の上端に設けられたリム部310の上面311に渡されるように配置される。浴槽300には、開口301の全体を塞ぐため、1枚または複数枚の風呂蓋110が用意される。図1(a)に表した例では、浴槽300に2つの風呂蓋110が並べて配置され、これらの風呂蓋110によって開口301の全体が覆われる。
【0024】
風呂蓋110は、浴槽300の上面311に載せたときに、浴槽300に面する下面側部材10と、下面側部材10と対向し浴槽300とは反対の側に設けられる上面側部材20と、を含む平板状の風呂蓋本体100を備える。
【0025】
また、風呂蓋110の風呂蓋本体100は、上面側部材20と、下面側部材10と、のあいだに設けられた断熱部材30を備える。断熱部材30は、空気層を有する面状の樹脂袋体を含む。
【0026】
また、風呂蓋110の風呂蓋本体100は、上面側部材20と、下面側部材10と、のあいだに設けられた骨材40を含む。骨材40の曲げ強さは、上面側部材20の曲げ強さ及び下面側部材10の曲げ強さよりも大きい。
ここで、曲げ強さとは、部材が曲げ変形を受けたときに破壊に至るまでの最大応力のことをいう。
【0027】
実施形態に係る風呂蓋110では、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成されている。
【0028】
風呂蓋110を浴槽300の上面311に載せたとき、下面側部材10には湯Wの熱(42℃程度)が加わる。一方、上面側部材20には浴室の温度(例えば、5℃〜30℃)が加わる。このように風呂蓋110の上下面で温度差があっても、実施形態に係る風呂蓋110では、下面側部材10の熱膨張力と上面側部材20の熱膨張力とに大きな差が発生せず、風呂蓋110の反りが抑制される。
【0029】
一般に、均一な線膨張係数を有する平板状の構造体において、表面と裏面とに温度差が生じると、表面及び裏面のそれぞれの膨張量に差(以下、「差Δ」という。)が発生する。この膨張量の差Δの一部は構造体の内部応力として変換及び吸収され、変換及び吸収されない分は構造体に曲げ応力を発生させ、熱反りというかたちで現れる。
【0030】
実施形態に係る風呂蓋110では、例えば、下面側部材10の材料の線膨張係数を、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくしている。すなわち、下面側部材10の材料として、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する材料が用いられる。これにより、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成される。
【0031】
下面側部材10の材料の線膨張係数を、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくすることにより、風呂蓋110の下面側部材10の温度が上面側部材20の温度よりも高くなる温度差が発生しても、下面側部材10の線膨張量と上面側部材20の線膨張量との差は、上記の差Δよりも小さくなり、風呂蓋110の熱反りを抑制することができる。
【0032】
例えば、下面側部材10の線膨張係数を、上面側部材20の線膨張係数の半分以下にする。これにより、風呂蓋110の下面に熱が加わっても、浴槽300の密閉性に大きな影響を与えず、浴槽300を風呂蓋110で確実に密閉することができる。
上記の構成では、線膨張係数の異なる材料を用いることで、風呂蓋110の反りを抑制することができるようになる。
【0033】
また、実施形態に係る風呂蓋110では、下面側部材10及び上面側部材20の線膨張係数を同じにして、下面側部材10よりも上面側部材20の機械的な曲げ強さを高くしてもよい。例えば、下面側部材10の厚さを、上面側部材20の厚さよりも薄くして、下面側部材10よりも上面側部材20の機械的な曲げ強さを大きくする。これにより、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成される。
上記の構成では、下面側部材10及び上面側部材20の厚さを調整することにより、風呂蓋110の反りを抑制することができるようになる。
【0034】
また、実施形態に係る風呂蓋110では、下面側部材10の材料の線膨張係数を、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくし、さらに、下面側部材10よりも上面側部材20の機械的な曲げ強さを大きく(例えば、下面側部材10の厚さを、上面側部材20の厚さよりも薄く)するようにしてもよい。線膨張係数及び曲げ強さの両方を調整することによっても、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成される。
【0035】
実施形態に係る風呂蓋110では、風呂蓋本体100に骨材40が含まれているため、より反りにくい風呂蓋110を提供することができる。
例えば、風呂蓋110を浴槽300の上に置いた場合、浴槽内302の湯Wの熱が風呂蓋本体100に加わる。この熱によって生じる骨材40の変形量は、下面側部材10の変形量よりも小さい。
例えば、湯Wの熱が下面側部材10に加わると、下面側部材10の内部には熱応力が生じる。この熱応力の一部または全部が歪みとなって骨材40に曲げ変形を与えた場合でも、下面側部材10の変形量より骨材40の変形量のほうが小さいため、風呂蓋110に大きな反りは発生しないことになる。
【0036】
また、曲げ強さの大きな骨材40を上面側部材20のすぐ下(浴槽300側)に配置し、その下方に骨材40よりも断熱性の高い断熱部材30を配置することによって、下面側部材10よりも上側にある骨材40が浴槽内302の湯Wの温度で暖められて線膨張することを抑える。これにより、骨材40に発生する曲げ応力を小さく抑え、骨材40がバイメタル状に反ることを抑制することができる。
また、骨材40は、上面側部材10や下面側部材20よりも曲げ強さが大きいから、風呂蓋110にかかる荷重による変形を骨材40によって抑制することができる。
【0037】
次に、実施形態に係る風呂蓋の具体例を説明する。
なお、以下の説明において、各具体例に係る風呂蓋及び風呂蓋本体を示す場合には各具体例の説明でそれぞれ付した符号を用い、区別しないで総称する場合には風呂蓋110及び風呂蓋本体100ということにする。
【0038】
図2(a)〜(b)は、第1の具体例を説明する模式図である。
図2(a)は模式的斜視図であり、その一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。図2(b)には、図1(a)に表したA−A線に沿った模式的断面図が表されている。
【0039】
第1の具体例に係る風呂蓋120は、下面側部材10と、上面側部材20と、を含む風呂蓋本体100を備える。風呂蓋本体100は、下面側部材10と、上面側部材20と、のあいだに設けられた骨材40及び断熱部材30Aをさらに含む。
すなわち、風呂蓋本体100は、下面側部材10と、上面側部材20と、のあいだに骨材40及び断熱部材30Aを挟んだ構造を有する。骨材40は、上面側部材20と、断熱部材30Aと、のあいだに配置される。
【0040】
第1の具体例に係る風呂蓋120においても、上記と同様に、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成されている。
例えば、下面側部材10の材料の線膨張係数が、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくなっている。
【0041】
風呂蓋120において、上面側部材20の材料としては、例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、PP(polypropylene)、PE(Polyethylene)のうちの少なくとも1つが用いられる。
風呂蓋120では、上面側部材20の材料としてPPが用いられた場合、上面側部材20の厚さは、例えば0.5ミリメートル(mm)以上、1.0mm以下である。
【0042】
風呂蓋120において、下面側部材10の材料としては、例えば、PS(polystyrene)、PC(Polycarbonate)、PPO(Polyphenyleneoxide)、ABS、PVC(polyvinyl chloride)のうち少なくとも1つが用いられる。
風呂蓋120では、下面側部材10の材料としてPSが用いられた場合、下面側部材10の厚さは、例えば0.5mm以上、1.0mm以下である。
【0043】
骨材40には、上面側部材20及び下面側部材10の曲げ強さよりも大きい曲げ強さを有する材料が用いられる。骨材40には、合板、プラスチック製段ボールを含む各種樹脂材料、ハニカム成形板など、各種の材料が用いられる。
骨材40の厚さは、例えば5mm以上、10mm以下である。
【0044】
風呂蓋120において、断熱部材30Aには、筒状の空気袋ABを備えた樹脂袋体が含まれる。樹脂袋体には、複数本の空気袋ABが設けられている。複数本の空気袋ABはそれぞれ一方向に延在し、延在する方向と直交する方向に並列に配置されている。
樹脂袋体の材料としては、例えば、PE(polyethylene)、PVC(polyvinyl chloride)、ゴム、ウレタンのうち少なくとも1つが用いられる。樹脂袋体は、この材料のフィルムを袋状にして、複数の空気袋ABを構成し、複数の空気袋ABに空気を封入した構成になっている。
【0045】
風呂蓋120では、風呂蓋本体100に断熱部材30Aが含まれるため、断熱性をより高めることができるうえ、浴槽300の湯Wによる上面側部材20の熱膨張を小さく抑えることができ、風呂蓋120の熱膨張を小さくすることができるようになる。
【0046】
風呂蓋120において、骨材40は、上面側部材20と、断熱部材30と、のあいだに配置される。すなわち、骨材40は、上面側部材20のすぐ下側、断熱部材30に対して浴槽300から離れた側に設けられる。
【0047】
風呂蓋120を浴槽300の上に置いた場合、風呂蓋本体100の浴槽300側(下側)は、浴槽300とは反対側(上側)よりも高温になる。断熱部材30と骨材40との配置に関して、より高温になる側に断熱部材30を配置することで、湯Wの熱を断熱部材30で吸収し、その上の骨材40に与える熱の影響を抑制する。
したがって、骨材40自体の曲げ応力及び熱変形を小さく抑えることができ、風呂蓋120の全体の大きな熱反りを抑制することができる。
このような構成により、特殊な素材を用いることなく、上下面の温度差による風呂蓋120の熱反りが十分に抑制されるとともに、風呂蓋120の軽量性及び低コスト性が達成される。
【0048】
図3は、第2の具体例を説明する模式図である。
図3(a)は模式的断面図であり、その一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。図3(b)には、図1(a)に表したA−A線に沿った模式的断面図が表されている。
第2の具体例に係る風呂蓋130には、第1の具体例に係る風呂蓋120の断熱部材30Aに代えて、断熱部材30Bが用いられている。
【0049】
風呂蓋130で適用される断熱部材30Bは、空気が充填された面状の樹脂袋体(気泡緩衝材)を含む。気泡緩衝材は、略円筒形状の空気袋ACが支持フィルムFB上に複数配置されたものである。気泡緩衝材の材料としては、例えばPE、PPのうち少なくとも1つが用いられる。
【0050】
風呂蓋本体100Bは、下面側部材10と上面側部材20との間に断熱部材30Bを挟んだ構成である。断熱部材30Bは、複数層の気泡緩衝材を積層した構造にしてもよい。
このような断熱部材30Bを用いることで、風呂蓋130では、断熱部材30Bに含まれる空気層での断熱性とともに風呂蓋130の軽量化が達成される。また、既存の緩衝材を利用することができ、低コストが達成される。
【0051】
図4は、第3の具体例を説明する模式的斜視図である。
図4(a)は模式的断面図であり、その一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。図4(b)には、図1(a)に表したA−A線に沿った模式的断面図が表されている。
第3の具体例に係る風呂蓋140では、第1の具体例に係る風呂蓋120の断熱部材30Aに代えて、断熱部材30Cが用いられている。
【0052】
風呂蓋140で適用される断熱材30Cは、連泡ウレタン(連続気泡体)を含む。すなわち、風呂蓋140の風呂蓋本体100Cは、下面側部材10と、上面側部材20と、のあいだに骨材40及び断熱部材30Cを挟んだ構造を有する。
断熱部材30Cは、上部断熱部31と、下部断熱部32と、を有する。骨材40は、上部断熱部31と、下部断熱部32と、のあいだに設けられる。
【0053】
風呂蓋140では、骨材40を間にして上下(表裏)がほぼ対称に設けられている。風呂蓋140においては、上面側部材20及び下面側部材10の材料として共通の素材を用いるようにしてもよい。これにより、表裏のない風呂蓋140として使うことが可能になる。
【0054】
風呂蓋140を製造するには、連泡ウレタン(連続気泡体)を含む上部断熱材31と下部断熱材32とのあいだに骨材40を挟み、これらの各界面を接着剤でそれぞれ固定して構造体を形成する。そして、構造体を上面側部材20及び下面側部材10で覆い、連泡ウレタン(連続気泡体)の内部に高圧空気を封入した状態で、上面側部材20及び下面側部材10の周縁部分の全周を、例えばヒートシール(熱溶着)によって気密シールする。
これにより、平面形状を保ったまま、連泡ウレタン(連続気泡体)の内部に封入した空気の圧力によって風呂蓋140の面剛性を得ることができる。
【0055】
図5は、第4の具体例を説明する模式的斜視図である。
図5(a)は模式的断面図であり、その一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。図5(b)には、図1(a)に表したA−A線に沿った模式的断面図が表されている。
第4の具体例に係る風呂蓋150では、第1の具体例に係る風呂蓋120の断熱部材30Aに代えて、断熱部材30Dが用いられる。
【0056】
風呂蓋150で適用される断熱部材30Dは、断熱材料体35と、断熱材料体35の内部に設けられた柱状の空気袋36と、を含む。断熱材料体35の材料としては、例えば、ビーズ系発泡材(EPS、EPP等)、押し出し系発泡材(XPS、XPE等)、綿状断熱材(ガラスウール、ポリエステル、綿等)、低強度発泡材(発泡ウレタン、発泡EVA等)のうち少なくとも1つが用いられる。空気袋36は、樹脂フィルムの袋に空気を封入して柱状にしたものである。断熱材料体35には、複数本の空気袋36が設けられている。複数本の空気袋36はそれぞれ一方向に延在し、延在する方向と直交する方向に所定の間隔で並列に配置されている。
【0057】
柱状の空気袋36は、断熱材料体35に設けられた穴35hに挿入されている。風呂蓋150では、断熱材料体35に設ける穴35hの数や位置によって断熱材料体35と空気袋36との位置関係やバランスを任意に調整することができる。
このような風呂蓋150では、風呂蓋150の全体の熱反りを抑制し、風呂蓋150の軽量化、低コスト化が達成される。
【0058】
図6は、第5の具体例を説明する模式的斜視図である。
図6(a)は模式的断面図であり、その一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。図6(b)には、図1(a)に表したA−A線に沿った模式的断面図が表されている。
【0059】
第5の具体例に係る風呂蓋160では、第4の具体例に係る風呂蓋150の断熱部材30Dの内部に、柱状部材50が設けられている。
柱状部材50は、断熱部材30Dの厚さ方向に延在する。断熱部材30Dには、複数の柱状部材50が設けられている。柱状部材50の圧縮強度は、樹脂袋体の圧縮強度よりも大きい。複数の柱状部材50は、空気袋36の位置を避けて配置されてる。柱状部材50は、例えば、断熱部材30Dを厚さ方向に貫通し、下面側部材10と、骨材40と、のあいだを連結するように設けられる。
【0060】
このような柱状部材50が設けられていることで、下面側部材10にかかる熱応力を、柱状部材50によって上面側部材10及び樹脂袋体に伝達して、これらの圧縮応力で相殺することができる。これにより、下面側部材10の熱膨張を抑え、浴槽内の熱による風呂蓋160の変形を抑制することができる。
【0061】
また、この風呂蓋160によれば、特殊な素材を使わずとも上下面の温度差による風呂蓋160の反りを防止するとともに、軽量性及び低コスト性を図ることができるようになる。
なお、風呂蓋160では、断熱部材30Dを用いているが、他の断熱部材30A、30B及び30Cであっても適用可能である。
【0062】
図7は、第6の具体例を説明する模式的斜視図である。
図7(a)は模式的断面図であり、その一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。図7(b)には、図1(a)に表したA−A線に沿った模式的断面図が表されている。
【0063】
第6の具体例に係る風呂蓋170では、第5の具体例に係る風呂蓋140の断熱部材30Cの内部に、柱状部材50が設けられている。
柱状部材50は、断熱部材30Cの厚さ方向に延在する。断熱部材30Dには、複数の柱状部材50が設けられている。柱状部材50の圧縮強度は、樹脂袋体の圧縮強度よりも大きい。複数の柱状部材50は、骨材40よりも上側の上部断熱部35と、骨材40よりも下側の下部断熱部36と、のそれぞれに設けられる。
骨材40よりも上側に設けられた柱状部材50は、例えば、上部断熱部31を厚さ方向に貫通し、上面側部材20と、骨材40と、のあいだを連結するように設けられる。また、骨材40よりも下側に設けられた柱状部材50は、例えば、下部断熱部32を厚さ方向に貫通し、下面側部材10と、骨材409と、のあいだを連結するように設けられる。
【0064】
風呂蓋170では、風呂蓋140の作用効果に加え、柱状部材50が設けられていることで、下面側部材10にかかる熱応力を、柱状部材50によって上面側部材10と樹脂袋体とに伝達して、これらの圧縮応力で相殺することができる。これにより、下面側部材10の熱膨張を抑え、浴槽内の熱による風呂蓋の変形を抑制することができる。
【0065】
実施形態に係る風呂蓋110においては、下面側部材10及び上面側部材20を表皮材として用いるようにしてもよい。下面側部材10及び上面側部材20を表皮材として用いる場合、下面側部材10と上面側部材20との接続部分を水密状に接合する。これにより、下面側部材10及び上面側部材20は、風呂蓋本体100の表面を水密状に覆う表示材になり、風呂蓋110に防水性を付与することができる。
【0066】
ここで、実施形態に係る風呂蓋110の断熱性について説明する。
実施形態において、風呂蓋110の断熱性は熱抵抗値(R値)によって表される。
熱抵抗値であるR値(mK/W)は、部材(風呂蓋)の厚さ(t)を、部材の熱伝導率(λ)で除した値である。
実施形態に係る風呂蓋110のR値は、0.22(mK/W)以上、好ましくは0.25(mK/W)以上である。
ここで、R値の一例を示す。
アルミ複合材(樹脂の心材をアルミニウム板で挟んだ複合材)のR値は、厚さ6mmで0.15(mK/W)である。
合板(木材)のR値は、厚さ9mmで0.16(mK/W)である。
中空層を持つ樹脂製シャッター風呂蓋のR値は、厚さ20mmで0.17(mK/W)である。
樹脂中空ブロー成形による風呂蓋のR値は、上限で0.22(mK/W)である。
したがって、十分な断熱性を得るためには、実施形態に係る風呂蓋110のR値として、0.22(mK/W)以上、好ましくは0.25(mK/W)以上にするとよい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、特殊な素材を用いることなく、風呂蓋110の熱反りを抑制することができる。また、このような工夫によって、非常に軽くて使い勝手の良い風呂蓋110を低コストで提供できるようになる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、実施形態では、平面外形が略四角形の風呂蓋110を例示したが、風呂蓋110の外形は略四角形にかぎらず、略円形、略楕円形など、浴槽300の開口形状に対応して各種の形状にすることができる。
また、風呂蓋110においては、風呂蓋本体100を外側を覆う外装(フィルム、塗装、防汚・防かび等のコーティングなど)が設けられていてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0069】
10…下面側部材、20…上面側部材、30,30A,30B,30C,30D…断熱部材、40…骨材、100,100A,100B,100C,100D…風呂蓋本体、110,120,130,140,150,160,170…風呂蓋、300…浴槽、301…開口、302…浴槽内、310…リム部、311…上面、311r…曲面、320…側壁、330…底部、W…湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の上に載せられる風呂蓋であって、
前記浴槽に面する下面側部材と、
前記下面側部材と対向する上面側部材と、
前記上面側部材と、前記下面側部材と、のあいだに設けられ、空気層を有する面状の樹脂袋体を含む断熱部材と、
前記上面側部材及び前記下面側部材よりも大きな曲げ強さを有する骨材と、
を備えたことを特徴とする風呂蓋。
【請求項2】
前記樹脂袋体は、少なくとも1層の気泡緩衝材により構成されたことを特徴とする請求項1記載の風呂蓋。
【請求項3】
前記下面側部材の材料の線膨張係数は、前記上面側部材の材料の線膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の風呂蓋。
【請求項4】
前記骨材は、前記上面側部材と、前記断熱部材と、のあいだに設けられたことを特徴とする請求項3記載の風呂蓋。
【請求項5】
前記断熱部材の内部に設けられ、前記断熱部材の厚さ方向に延在する柱状部材をさらに備え、
前記柱状部材の圧縮強度は、前記樹脂袋体の圧縮強度よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の風呂蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75054(P2013−75054A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217134(P2011−217134)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】