説明

風呂蓋

【課題】特別な材料を用いることなく、重量の増加やコストの上昇を抑制しつつ、断熱性の高い風呂蓋の熱反りを低減し、使い勝手のよい風呂蓋を提供することを目的とする。
【解決手段】浴槽の上に載せられる平板状の風呂蓋であって、前記浴槽に面する下面側部材と、前記下面側部材と対向する上面側部材と、前記上面側部材と、前記下面側部材と、のあいだに、前記上面側部材及び前記下面側部材よりも大きな曲げ強さを有する骨材と、を備え、前記浴槽の湯で前記風呂蓋が加熱されたときの前記下面側部材の熱膨張は、前記上面側部材の熱膨張よりも小さいことを特徴とする風呂蓋が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、浴槽の上に載せる風呂蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境的な意識の高まりを受けて、浴槽内に張った湯の保温性を高めることが大きな課題の一つになっている。この課題に対応して、保温性に大きな影響のある風呂蓋についても、高い断熱性が求められている。
【0003】
断熱性の高い風呂蓋としては、従来から表裏の樹脂面材の間に断熱材を挟む、または充填したものなどが用いられている。
断熱性の高い風呂蓋は、特に冬場など寒い環境での浴槽保温などを行う実使用上において、必然的に蓋の上面と下面とに温度差が生じる。この温度差によって、蓋の上面及び下面の材料の熱膨張量が異なってしまい、蓋がバイメタル状に反るという事象が発生する。
【0004】
このような風呂蓋の反りを低減させるために、風呂蓋の構成素材を線膨張係数の十分小さい素材として対策する手法もある。例えば、風呂蓋の構成素材としてアルミニウムなどの金属薄板の使用や、特殊な樹脂の使用、ガラス繊維やカーボン繊維などの強化材を使った構成が挙げられる。
【0005】
特許文献1では、線膨張係数の小さいガラス繊維またはカーボン繊維を粗い目のネット状に形成して反り防止部材を構成し、この反り防止部材を断熱材の表裏面に設けた平板状の風呂蓋が開示されている。このような構成によって、使用時の風呂蓋の反りを防いでいる。
しかしながら、いずれの手段においても、重量の増加を招くとともにコストの上昇を招くという問題がある。
【0006】
また、風呂蓋自体の構造的な曲げ強さを十分高めて熱膨張による曲げ応力に対抗させる手段なども考えられる。しかし、重量増及びコスト増は回避できず、あわせて単純に曲げ強さを向上させると線膨張係数による曲げ応力も必然的に高まるという問題点も生じることになる。さらに、風呂蓋の重量の増加は、使い勝手にも大きな影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−175112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、特別な材料を用いることなく、重量の増加やコストの上昇を抑制しつつ、断熱性の高い風呂蓋の熱反りを低減し、使い勝手のよい風呂蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、浴槽の上に載せられる平板状の風呂蓋であって、前記浴槽に面する下面側部材と、前記下面側部材と対向する上面側部材と、前記上面側部材と、前記下面側部材と、のあいだに、前記上面側部材及び前記下面側部材よりも大きな曲げ強さを有する骨材と、を備え、前記浴槽の湯で前記風呂蓋が加熱されたときの前記下面側部材の熱膨張は、前記上面側部材の熱膨張よりも小さいことを特徴とする風呂蓋である。
【0010】
この風呂蓋によれば、浴槽の湯によって加熱されやすい下面側部材の熱膨張を、上面側部材の熱膨張よりも小さくすることで、上下面で温度差があっても上下面での熱膨張力をバランスさせて、風呂蓋の反りを抑制することができる。これにより、風呂蓋の平板形状を保って、浴槽を確実に密閉することが可能となる。よって、強靭な材料を使うことなく、風呂蓋の断熱性能を十分に得ることができる。また、骨材によって、風呂蓋にかかる荷重による変形を抑制することができる。これにより、風呂蓋にかかる荷重や浴槽の熱で変形しにくい風呂蓋を提供することができる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、下面側部材の材料の線膨張係数は、上面側部材の材料の線膨張係数よりも小さいことを特徴とする風呂蓋である。
【0012】
この風呂蓋によれば、下面側部材の材料の線膨張係数を、上面側部材の材料の線膨張係数よりも小さくすることで、特殊な素材を使わずとも上下面の温度差による風呂蓋の反りを抑制することができるようになる。これにより、風呂蓋の平板形状を保って、浴槽を確実に密閉することが可能となる。
【0013】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記湯から前記風呂蓋に熱が加わった際、前記骨材の変形量は、前記下面側部材の変形量よりも小さいことを特徴とする風呂蓋である。
【0014】
この風呂蓋によれば、より反りにくい風呂蓋を提供することができるようになる。
【0015】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記下面側部材及び前記上面側部材は、前記風呂蓋の表面を水密状に覆う表皮材であることを特徴とする風呂蓋である。
【0016】
この風呂蓋によれば、風呂蓋の表面を水密状に覆った表皮材である下面側部材及び上面側部材によって風呂蓋に防水性を付与することができる。
【0017】
また、第5の発明は、第1または第2の発明において、前記下面側部材の線膨張係数は、前記上面側部材の線膨張係数の半分以下であることを特徴とする風呂蓋である。
【0018】
この風呂蓋によれば、下面側部材の線膨張係数が、上面側部材の線膨張係数の半分以下になっていることで、風呂蓋の下面に熱が加わっても浴槽を風呂蓋で確実に密閉することができる。
【0019】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記風呂蓋は、上下を反転させた使用を制限する形状を有することを特徴とする風呂蓋である。
【0020】
この風呂蓋によれば、線膨張係数の大きい部材の面を浴槽側に向けて蓋がされることを回避して、誤使用による風呂蓋の変形を防ぐことができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、特別な材料を用いることなく、重量やコストを上昇させずに断熱性の高い風呂蓋の熱反りを低減することができ、使い勝手を向上させた風呂蓋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)〜(b)は、実施形態にかかる風呂蓋を例示する模式図である。
【図2】第1の具体例を説明する模式的斜視図である。
【図3】第2の具体例を説明する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1(a)〜(b)は、実施形態にかかる風呂蓋を例示する模式図である。
図1(a)は、風呂蓋110が浴槽300に置かれた状態を例示する模式的斜視図、図1(b)は、図1(a)に示すA−A線の模式的断面図である。
図1(a)に表したように、実施形態に係る風呂蓋110は、浴槽300のリム部310における上面311に載せられる平板状の蓋である。
【0024】
風呂蓋110は、浴槽300の開口301を塞いで浴槽内302に張られた湯Wの熱が外へ逃げることを防ぐ。浴槽300は、底部330及び側壁320によって浴槽内302の空間が形成され、側壁320の上端から外方にリム部310が設けられた構成になっている。
【0025】
風呂蓋110は、対向する側壁320の上端に設けられたリム部310の上面311に渡されるように配置される。浴槽300には、開口301の全体を塞ぐため、1枚または複数枚の風呂蓋110が用意される。図1(a)に表した例では、浴槽300に2つの風呂蓋110が並べて配置され、これらの風呂蓋110によって開口301の全体が覆われる。
【0026】
風呂蓋110は、浴槽300の上面311に載せたときに、浴槽300に面する下面側部材10と、下面側部材10と対向し浴槽300とは反対の側に設けられる上面側部材20と、を含む平板状の風呂蓋本体100を備える。
実施形態に係る風呂蓋110では、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成されている。
【0027】
さらに、風呂蓋110の風呂蓋本体100は、上面側部材20と、下面側部材10と、のあいだに設けられた骨材40を含む。骨材40の曲げ強さは、上面側部材20の曲げ強さ及び下面側部材10の曲げ強さよりも大きい。
ここで、曲げ強さとは、部材が曲げ変形を受けたときに破壊に至るまでの最大応力のことをいう。
【0028】
風呂蓋110を浴槽300の上面311に載せたとき、下面側部材10には湯Wの熱(42℃程度)が加わる。一方、上面側部材20には浴室の温度(例えば、5℃〜30℃)が加わる。このように風呂蓋110の上下面で温度差があっても、実施形態に係る風呂蓋110では、下面側部材10の熱膨張力と上面側部材20の熱膨張力とに大きな差が発生せず、風呂蓋110の反りが抑制される。
【0029】
一般に、均一な線膨張係数を有する平板状の構造体において、表面と裏面とに温度差が生じると、表面及び裏面のそれぞれの膨張量に差(以下、「差Δ」という。)が発生する。この膨張量の差Δの一部は構造体の内部応力として変換及び吸収され、変換及び吸収されない分は構造体に曲げ応力を発生させ、熱反りというかたちで現れる。
【0030】
実施形態に係る風呂蓋110では、例えば、下面側部材10の材料の線膨張係数を、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくしている。すなわち、下面側部材10の材料として、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する材料が用いられる。これにより、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成される。
【0031】
下面側部材10の材料の線膨張係数を、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくすることにより、風呂蓋110の下面側部材10の温度が上面側部材20の温度よりも高くなる温度差が発生しても、下面側部材10の線膨張量と上面側部材20の線膨張量との差は、上記の差Δよりも小さくなり、風呂蓋110の熱反りを抑制することができる。
【0032】
例えば、下面側部材10の線膨張係数を、上面側部材20の線膨張係数の半分以下にする。これにより、熱によって風呂蓋110に変形が生じても、浴槽300の密閉性に大きな影響を与えず、浴槽300を風呂蓋110で確実に密閉することができる。
上記の構成では、線膨張係数の異なる材料を用いることで、風呂蓋110の反りを抑制することができるようになる。
【0033】
また、実施形態に係る風呂蓋110では、下面側部材10及び上面側部材20の線膨張係数を同じにして、下面側部材10よりも上面側部材20の機械的な曲げ強さを高くしてもよい。例えば、下面側部材10の厚さを、上面側部材20の厚さよりも薄くして、下面側部材10よりも上面側部材20の機械的な曲げ強さを大きくする。これにより、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成される。
上記の構成では、下面側部材10及び上面側部材20の厚さを調整することにより、風呂蓋110の反りを抑制することができるようになる。
また、骨材40は、上面側部材10や下面側部材20よりも曲げ強さが大きいから、風呂蓋110にかかる荷重による変形を骨材40によって抑制することができる。
【0034】
また、実施形態に係る風呂蓋110では、下面側部材10の材料の線膨張係数を、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくし、さらに、下面側部材10よりも上面側部材20の機械的な曲げ強さを大きく(例えば、下面側部材10の厚さを、上面側部材20の厚さよりも薄く)するようにしてもよい。線膨張係数及び曲げ強さの両方を調整することによっても、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成される。
【0035】
実施形態に係る風呂蓋110では、風呂蓋本体100に骨材40が含まれているため、より反りにくい風呂蓋110を提供することができる。
例えば、風呂蓋110を浴槽300の上に置いた場合、浴槽内302の湯Wの熱が風呂蓋本体100に加わる。この熱によって生じる骨材40の変形量は、下面側部材10の変形量よりも小さい。
例えば、湯Wの熱が下面側部材10に加わると、下面側部材10の内部には熱応力が生じる。この熱応力の一部または全部が歪みとなって骨材40に曲げ変形を与えた場合でも、下面側部材10の変形量より骨材40の変形量のほうが小さいため、風呂蓋110に大きな反りは発生しないことになる。
【0036】
次に、実施形態に係る風呂蓋の具体例を説明する。
なお、以下の説明において、各具体例に係る風呂蓋及び風呂蓋本体を示す場合には各具体例の説明でそれぞれ付した符号を用い、区別しないで総称する場合には風呂蓋110及び風呂蓋本体100ということにする。
【0037】
図2は、第1の具体例を説明する模式的斜視図である。
図2の一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。
第1の具体例に係る風呂蓋120は、下面側部材10と、上面側部材20と、を含む風呂蓋本体100を備える。風呂蓋本体100Aは、下面側部材10と、上面側部材20と、のあいだに設けられた骨材40をさらに含む。
【0038】
第1の具体例に係る風呂蓋120においても、上記と同様に、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100が加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成されている。
例えば、下面側部材10の材料の線膨張係数が、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくなっている。
【0039】
風呂蓋120において、上面側部材20の材料としては、例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、PP(polypropylene)、PE(Polyethylene)のうちの少なくとも1つが用いられる。
風呂蓋120では、上面側部材20の材料としてPPが用いられた場合、上面側部材20の厚さは、例えば0.5ミリメートル(mm)以上、1.0mm以下である。
【0040】
風呂蓋120において、下面側部材10には断熱性を備えた材料が用いられる。下面側部材10の材料としては、例えば、ビーズ系発泡材(EPS(expanded polystyrene)、EPP(expanded polypropylene)等)、押し出し系発泡材(XPS(extruded polystyrene)、XPE(extruded polyethylene)等)、綿状断熱材(ガラスウール、ポリエステル、綿等)、低強度発泡材(発泡ウレタン、発泡EVA(Ethylene Vinyl Acetate)等)のうち少なくとも1つが用いられる。
風呂蓋120では、下面側部材10の材料として低強度発泡材が用いられた場合、下面側部材10の断熱性としては、熱抵抗値(R値)で0.2(mK/W)以上のものが望ましい。
熱抵抗値(R値)は、部材の厚さを、部材の熱伝導率で除した値である。
【0041】
骨材40には、上面側部材20及び下面側部材10の曲げ強さよりも大きい曲げ強さを有する材料が用いられる。骨材40には、合板、プラスチック製段ボールを含む各種樹脂材料、ハニカム成形板など、各種の材料が用いられる。
骨材40の厚さは、例えば5mm以上、10mm以下である。
【0042】
骨材40は、上面側部材20と、下面側部材10と、のあいだに挟持される。骨材40は、上面側部材20及び下面側部材10の少なくとも一方と、接着剤等によって接続されていてもよい。
このような構成により、特殊な素材を用いることなく、上下面の温度差による風呂蓋120の熱反りが十分に抑制されるとともに、風呂蓋120の軽量性及び低コスト性が達成される。
【0043】
図3は、第2の具体例を説明する模式的斜視図である。
図3の一部には、図1(a)に表したA−A線に沿った断面が表されている。
第2の具体例に係る風呂蓋130は、下面側部材10と、上面側部材20と、を含む風呂蓋本体100Aを備える。風呂蓋本体100Aは、下面側部材10と、上面側部材20と、のあいだに設けられた骨材40及び断熱部材30をさらに含む。
すなわち、風呂蓋本体100Aは、下面側部材10と、上面側部材20と、のあいだに骨材40及び断熱部材30を挟んだ構造を有する。骨材40は、上面側部材20と、断熱部材30と、のあいだに配置される。
【0044】
第2の具体例に係る風呂蓋130においても、上記と同様に、浴槽300の湯Wで風呂蓋本体100Aが加熱されたときの下面側部材10の熱膨張量が、上面側部材20の熱膨張量よりも小さくなるよう構成されている。
例えば、下面側部材10の材料の線膨張係数が、上面側部材20の材料の線膨張係数よりも小さくなっている。
【0045】
風呂蓋130において、上面側部材20の材料としては、例えば、ABS、PP、PEのうちの少なくとも1つが用いられる。
風呂蓋130では、上面側部材20の材料としてPPが用いられた場合、上面側部材20の厚さは、例えば0.5mm以上、1.0mm以下である。
【0046】
風呂蓋130において、下面側部材10の材料としては、例えば、PS(polystyrene)、PC(Polycarbonate)、PPO(Polyphenyleneoxide)、ABS、PVC(polyvinyl chloride)のうち少なくとも1つが用いられる。
風呂蓋130では、下面側部材10の材料としてPSが用いられた場合、下面側部材10の厚さは、例えば0.5mm以上、1.0mm以下である。
【0047】
風呂蓋130において、骨材40には、上面側部材20及び下面側部材10の曲げ強さよりも大きい曲げ強さを有する材料が用いられる。骨材40には、合板、プラスチック製段ボールを含む各種樹脂材料、ハニカム成形板など、各種の材料が用いられる。
骨材40の厚さは、例えば5mm以上、10mm以下である。
【0048】
風呂蓋130において、断熱部材30の材料としては、例えば、ビーズ系発泡材(EPS、EPP等)、押し出し系発泡材(XPS、XPE等)、綿状断熱材(ガラスウール、ポリエステル、綿等)、低強度発泡材(発泡ウレタン、発泡EVA等)のうち少なくとも1つが用いられる。
風呂蓋130では、断熱部材30の材料として低強度発泡材が用いられた場合、断熱部材30の断熱性としては、熱抵抗値(R値)で0.2(mK/W)以上のものが望ましい。
【0049】
風呂蓋130では、風呂蓋本体100Aに断熱部材30が含まれるため、断熱性をより高めることができるうえ、浴槽300の湯Wによる上面側部材20の熱膨張を小さく抑えることができ、風呂蓋130の熱膨張を小さくすることができるようになる。
【0050】
風呂蓋130において、骨材40は、上面側部材20と、断熱部材30と、のあいだに配置される。すなわち、骨材40は、上面側部材20のすぐ下側、断熱部材30に対して浴槽300から離れた側に設けられる。
【0051】
風呂蓋130を浴槽300の上に置いた場合、風呂蓋本体100の浴槽300側(下側)は、浴槽300とは反対側(上側)よりも高温になる。断熱部材30と骨材40との配置に関して、より高温になる側に断熱部材30を配置することで、湯Wの熱を断熱部材30で吸収し、その上の骨材40に与える熱の影響を抑制する。
したがって、骨材40自体の曲げ応力及び熱変形を小さく抑えることができ、風呂蓋130の全体の大きな熱反りを抑制することができる。
【0052】
風呂蓋130のより具体的な一例は次のようになる。
上面側部材20には、厚さ約1mmのPPを用いる。PPの線膨張係数は、11×10−5/℃である。上面側部材20には複数の溝20aを設けたリブ構造を適用し、平面曲げ剛性をできるだけ高める。
断熱部材30には、熱抵抗値(R値)が0.2(mK/W)以上の低強度発泡材を用いる。
下面側部材10には、厚さ約0.5mmのPSまたはPCを用いる。PSの線膨張係数は、5×10−5/℃である。PCの線膨張係数は、6×10−5/℃である。
【0053】
上記の下面側部材10と、上面側部材20と、のあいだに骨材40及び断熱部材30を挟んだ風呂蓋本体100Aを構成する。骨材40及び断熱部材30の厚さを調整することで、風呂蓋本体100Aの厚さを約15mm以上、30mm以下にする。
このような構成により、特殊な素材を用いることなく、上下面の温度差による風呂蓋130の熱反りが十分に抑制されるとともに、風呂蓋130の軽量性及び低コスト性が達成される。
【0054】
実施形態に係る風呂蓋110においては、下面側部材10及び上面側部材20を表皮材として用いるようにしてもよい。下面側部材10及び上面側部材20を表皮材として用いる場合、下面側部材10と上面側部材20との接続部分を水密状に接合する。これにより、下面側部材10及び上面側部材20は、風呂蓋本体100の表面を水密状に覆う表示材になり、風呂蓋110に防水性を付与することができる。
【0055】
また、実施形態に係る風呂蓋110においては、上下を反転させた使用を制限する形状が設けられていてもよい。
例えば、図1(b)に表したように、風呂蓋110の断面形状を上下で非対称にする。下面側部材10の一部に下向き(浴槽300側)に凸となる凸部10aを設ける。凸部10aの側面には、例えば湾曲部10rが設けられる。この湾曲部10rは、浴槽300のリム部310と側壁320との間に設けられた曲面311rに倣う形状になっている。
【0056】
また、凸部10aの大きさ(例えば、幅)を開口301の大きさ(例えば、幅)に合わせておく。これにより、下面側部材10の凸部10aを浴槽内302に向けて風呂蓋110をリム部310の上面311に置くと、凸部10aの湾曲部10rが浴槽300の曲面311rに密着するように接触し、風呂蓋110の位置がしっかりと定まる。
【0057】
一方、下面側部材10を浴槽内302とは反対に上側に向け、上面側部材20を浴槽内302に向けて風呂蓋110をリム部310の上面311に置いた場合、上面側部材20の表面と浴槽300の曲面311rとはフィットしない。
【0058】
これにより、線膨張係数の大きい部材の面を浴槽側に向けて蓋がされることを回避して、誤使用による風呂蓋110の変形を防ぐことができるようになる。
【0059】
なお、上面側部材20を浴槽内302に向けて風呂蓋110を置いた際、積極的に上下が反対であることを使用者に気付かせる形状にしてもよい。例えば、上面側部材20の表面(上面)を平坦にしたり、開口301の大きさ(例えば、幅)よりも大きな凸領域を設けておく。このような形状にすると、風呂蓋110を上下反対に載せた場合、風呂蓋110の位置が決まらないことから、使用者に上下反対であること容易に気付かせることができる。
【0060】
本実施形態の風呂蓋110では、上下を正しく(下面側部材10を下、上面側部材20を上にして)風呂蓋110を浴槽300上に被せることで、しっかりと位置が定まるとともに、風呂蓋110と浴槽300との密着性が高く、浴槽内302の湯Wの保温効果を十分に発揮させることができる。
【0061】
ここで、実施形態に係る風呂蓋110の断熱性について説明する。
実施形態において、風呂蓋110の断熱性は熱抵抗値(R値)によって表される。
熱抵抗値であるR値(mK/W)は、部材(風呂蓋)の厚さ(t)を、部材の熱伝導率(λ)で除した値である。
実施形態に係る風呂蓋110のR値は、0.22(mK/W)以上、好ましくは0.25(mK/W)以上である。
ここで、R値の一例を示す。
アルミ複合材(樹脂の心材をアルミニウム板で挟んだ複合材)のR値は、厚さ6mmで0.15(mK/W)である。
合板(木材)のR値は、厚さ9mmで0.16(mK/W)である。
中空層を持つ樹脂製シャッター風呂蓋のR値は、厚さ20mmで0.17(mK/W)である。
樹脂中空ブロー成形による風呂蓋のR値は、上限で0.22(mK/W)である。
したがって、十分な断熱性を得るためには、実施形態に係る風呂蓋110のR値として、0.22(mK/W)以上、好ましくは0.25(mK/W)以上にするとよい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、下面側部材10の熱膨張を、上面側部材20の熱膨張よりも小さくすることで、特殊な素材を用いることなく、風呂蓋110の熱反りを抑制することができる。また、このような工夫によって、非常に軽くて使い勝手の良い風呂蓋110を低コストで提供できるようになる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、実施形態では、平面外形が略四角形の風呂蓋110を例示したが、風呂蓋110の外形は略四角形にかぎらず、略円形、略楕円形など、浴槽300の開口形状に対応して各種の形状にすることができる。
また、風呂蓋110においては、風呂蓋本体100を外側を覆う外装(フィルム、塗装、防汚・防かび等のコーティングなど)が設けられていてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0064】
10…下面側部材、10a…凸部、10r…湾曲部、15…補強部材、20…上面側部材、20a…溝、20b…凸部、30…断熱部材、40…骨材、100,100A…風呂蓋本体、110,120,130…風呂蓋、300…浴槽、301…開口、302…浴槽内、310…リム部、311…上面、311r…曲面、320…側壁、330…底部、W…湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の上に載せられる平板状の風呂蓋であって、
前記浴槽に面する下面側部材と、
前記下面側部材と対向する上面側部材と、
前記上面側部材と、前記下面側部材と、のあいだに、前記上面側部材及び前記下面側部材よりも大きな曲げ強さを有する骨材と、を備え、
前記浴槽の湯で前記風呂蓋が加熱されたときの前記下面側部材の熱膨張は、前記上面側部材の熱膨張よりも小さいことを特徴とする風呂蓋。
【請求項2】
前記下面側部材の材料の線膨張係数は、前記上面側部材の材料の線膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の風呂蓋。
【請求項3】
前記湯から前記風呂蓋に熱が加わった際、前記骨材の変形量は、前記下面側部材の変形量よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の風呂蓋。
【請求項4】
前記下面側部材及び前記上面側部材は、前記風呂蓋の表面を水密状に覆う表皮材であることを特徴とする請求項3記載の風呂蓋。
【請求項5】
前記下面側部材の線膨張係数は、前記上面側部材の線膨張係数の半分以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の風呂蓋。
【請求項6】
前記風呂蓋は、上下を反転させた使用を制限する形状を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の風呂蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75057(P2013−75057A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217137(P2011−217137)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】