説明

風呂装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は風呂装置に関するもので、湯張り動作に必要なデータ等が停電時に消失しないようにして円滑な制御動作が確保できるようにしたものである。
【0002】
【従来技術及び課題】浴槽内が目標水位に達した際に湯張り動作を自動停止させる所謂自動湯張り機能を具備する風呂装置が広く普及し、係る風呂装置としては例えば図3に示すものがある。浴槽(1) と追焚き用熱交換器(2)を循環するように形成された追焚き回路(20)には、上記追焚き用熱交換器(2)の上流側に位置させて水流スイッチ(21),水位センサ(22)及び循環ポンプ(P) がこの順序で上流側から順次配設されており、上記追焚き用熱交換器(2)と循環ポンプ(P) の間の流路部には、給湯用熱交換器(3)から引出した給湯回路(30)が接続されている。そして、上記給湯回路(30)には、給湯用熱交換器(3)の上流側に位置させて流量カウンタ(31)が配設されていると共に、上記給湯用熱交換器(3)の下流側には湯温センサ(32)と湯張り弁(33)と更に逆流防止装置(34)がこの順序で上流側から挿入されている。
【0003】又、上記湯張り弁(33)等の各部はマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する)を組込んだ制御装置(4) で制御されるようになっており、該制御装置(4) には、浴室壁面等に配設されたリモコン装置(5)が配線接続されている。そして、該リモコン装置(5)には操作スイッチ(50)及び水位設定スイッチ(51)と、湯張り条件や湯張り進行状態を表示す表示器(52)が設けられている。
【0004】このものでは、設置する浴槽(1) 毎にその大きさや形状等が一定しないことから、器具設置直後の最初の湯張り時には上記浴槽(1) の大きさ等を判断する初期湯張り動作が実行される。即ち、器具設置後に最初に操作スイッチ(50)を操作をすると、一回当り10リットルと定められた量の温水(流量カウンタ(31)で測定する)を浴槽(1) に供給する動作が間欠的に繰返すと共に、上記一回の温水投入動作が終了する毎に循環ポンプ(P) を駆動にさせる。そして、該循環ポンプ駆動時に水流スイッチ(21)がON信号を出したときは、浴槽金具(11)(浴槽側壁に追焚き回路(20)を接続する金具)の高さまで水位上昇したと判断し、その時点に於ける水位センサ(22)の検知水位(以下、第1基準水位H1という)を制御装置(4) 内に記憶させる。次に、浴槽内水位が上記第1基準水位H1に達した後に更に20リットルの温水を浴槽(1) に投入し、その後の水位センサ(22)の検知水位(以下、第2基準水位H2という)を制御装置(4) に記憶させる。そして、上記20リットルの温水投入による浴槽内の上昇水位(ΔH=第2基準水位H2−第1基準水位H1)を演算する。そして、上記20リットルの水量を前記上昇水位ΔHで割算し、これにより、浴槽(1)内を単位水位(例えば1cm)だけ水位上昇させるのに必要な水量(以下、単位給湯量Q0 という)を演算する。これにより、形状や大きさが異なる浴槽(1) でも、単位水位の水位上昇に必要な単位給湯量Q0 が分ることとなる。
【0005】そして、リモコン装置(5)に設定した湯張り水位Hと上記単位給湯量Q0 の積を演算することにより、該湯張り水位Hまで湯張りするのに必要な湯張り必要水量Qを演算し、流量カウンタ(31)が計測した浴槽(1) への温水投入量(湯張り動作初期からの全投入量)が上記湯張り必要水量Qに達した際に初期湯張り動作を停止させる。
【0006】そして、通常の湯張り動作時には、リモコン装置(5)に設定した湯張り水位Hと上記初期湯張り動作で求めた単位給湯量Q0 の積を演算して湯張り必要水量Qを求め、流量カウンタ(31)が該湯張り必要水量Qを計測するまで浴槽(1) への湯張り動作を行なう。このものでは、初期湯張り時に浴槽を単位水位だけ水位上昇させるのに必要な単位給湯量Q0 を求めるから、浴槽(1) の形状や大きさに関わらずリモコン装置(5)に設定した湯張り水位Hの湯張りが可能になる。
【0007】又、浴槽金具(11)が水没した時点とこれから20リットルの温水補充をした後における水位センサ(22)の検知水位の差を利用して単位給湯量Q0 を演算するから、器具(A) の設置高さの如何んに関わらず、上記単位給湯量Q0 を求めることができる。しかしながら、上記従来のものでは、前記単位給湯量Q0 や基準水位H1,H2等の基本データが制御装置(4) を構成するマイコンのRAM内に記憶せしめられていることから、停電時にはこれらのデータが消失し、該停電終了時には再び初期湯張り動作を行わなければ所定水位までの自動湯張りができないという問題があった。尚、上記RAMがバックアップ電源でバックアップされている場合でも、該バックアップ時間を越える長時間停電が発生したときは、これと同様の問題が生じる。又、上記RAM内の基本データをクリアしてこれを改めて設定し直す必要が生じた場合は、器具内の制御基盤に設けられたクリアスイッチ(図示せず)を操作する必要があり、かかる場合は、前記器具のケーシングを開放しなければならないことから、その作業が煩雑化するという問題があった。さらに、基本データをクリアした場合、その旨が明示されないと、初期湯張り動作の必要性が不明となり湯張り時間の予想が困難となる。
【0008】本発明は上記の点に鑑みて成されたもので、『設置した浴槽(1) の形状や大きさに基づいて定められる自動湯張りのための基本データを初期湯張り動作時に求めて記憶し、該基本データに基づいて後の湯張り動作を行う一方、前記基本データがクリアされている場合は前記初期湯張りを実行する風呂装置』於いて、初期湯張り時に得られた上記基本データが停電で消失しないようにし、これにより、停電終了時に於ける再度の初期湯張り動作を不要ならしめ、停電の有無に関わらず常に正確な湯張り動作を可能にすることを第1の課題とし、又、基本データを設定し直す為にこれをクリアする作業が煩雑化しないようにすると共に、リモコン装置側で器具本体側の記憶データを消去でき、しかもこのことが、リモコン装置側で認識できるようにすることを第2の課題とする。
【0009】
【手段】上記課題を解決するための本発明の技術的手段は、『風呂装置の器具本体に設けた制御装置(4) をリモコン装置(5) によって操作可能にし、前記制御装置(4) は、前記初期湯張り時の動作時に前記基本データを求める制御装置であって、前記基本データを格納するための、電気的書き込み消去可能な不揮発性メモリとしてのEEPROMを有し、前記リモコン装置(5) には、前記制御装置(4) が求めて記憶された基本データを強制的にクリアするクリアスイッチ(55)を設けると共に、前記EEPROMに格納した前記基本データを強制的にクリアした時にこのことを表示する表示器(52)を設けた』ことである。
【0010】
【作用】上記技術的手段は次のように作用する。風呂装置の器具本体に設けた制御装置(4) は、前記初期湯張り時の動作時に前記基本データを求める制御装置であって、前記基本データを格納するための、電気的書き込み消去可能な不揮発性メモリとしてのEEPROMを有し、初期湯張り動作が始まると、既述従来のものと同様に、浴槽形状や大きさに基づいて湯張りに必要な基本データを求め、これを制御装置(4) に具備させたEEPROM(電気的書き込み消去可能な不揮発性メモリ:Electrically ErasableProgrammable Read Only Memory )に格納する。その後既述従来のものと同様にして初期湯張り動作を終了させる。
【0011】すると、上記初期湯張りの後の各湯張り動作に必要な基本データはEEPROMに書き込まれているから、長時間の停電が発生しても該基本データが消失することはない。そして、通常の湯張り動作時には、上記EEPROMに格納した浴槽形状や大きさに関する前記基本データを利用して湯張り動作を行なう。一方、EEPROMに格納された基本データを設定し直す必要が生じたときは、浴室壁面等のリモコン装置(5) に設けられたクリアスイッチ(55)を操作して、器具本体に設けた制御装置(4) によって初期湯張り時に求められEEPROMに格納されている前記基本データを消去し、これにより、上記した基本データを求める初期湯張り動作が実行される状態にすれば良い。このとき、器具本体(4) 側の基本データが消去されたことがリモコン装置(5)の表示器(52)によって表示される。
【0012】
【効果】本発明は次の特有の効果を有する。長時間の停電が発生しても各湯張り動作に必要な浴槽形状や大きさに基づいて定められた基本データが消失しないから、停電復帰後に上記基本データを再度求める初期湯張り動作を行なう必要がなく、停電の有無に関わらず常に正確な水位の湯張り動作を行うことができる。基本データを設定し直す為にこれをクリアするときは、浴室壁面等のリモコン装置(5) に設けられたクリアスイッチ(55)を操作するだけで、器具本体の制御装置(4) が初期湯張り時に求めて前記EEPROMに格納した前記基本データを強制的にクリアされるから、具本体側のケーシングを開放してその内部のクリアスイッチを操作する場合のように煩雑な作業が不要となる。しかも、クリアスイッチ(55)が操作されて基本データが強制消去された旨がリモコン装置(5) で表示される。従って、初期湯張り動作の必要性が判断できるので、湯張りに要する時間が予想できる。
【0013】
【実施例】次に、上記した本発明の実施例を図面に従って詳述する。図1に示すように、本発明実施例の風呂装置はで制御装置(4) にEEPROM(6) が接続されていると共に、該EEPROM(6) の内容を消去するクリアスイッチ(55)が浴室壁面のリモコン装置(5)に設けられている。そして、これらの点を除いて本発明実施例の風呂装置は既述図3のものと同様に構成されている。
【0014】このものでは、図2のフローチャートに示すように湯張り動作が制御されるようになっており、以下、制御動作の実際を同図に従って説明する。
■.電源接続すると、制御装置(4) を構成するマイコンのRAM内をクリアする(図面符合(70)のステップ参照)。
■.次に、操作スイッチ(50)又はクリアスイッチ(55)が操作されるのを監視し、操作スイッチ(50)が投入されると浴槽形状や大きさに関する基本データがEEPROM(6) に格納されているか否かを示すフラグ(F) (EEPROM内に格納されている)の内容を調べる(図面符合(73)のステップ参照)。
【0015】上記フラグ(F)は、EEPROM(6)内に基本データが格納されている場合には「1」にセットされるようになっており、器具設置後に最初に操作スイッチ(50)を投入したときは上記フラグ(F)が「0」になっている。従って、器具設置後に最初に操作スイッチ(50)が投入されたときは上記フラグ(F)の内容を判断して初期湯張り動作を行なう。このため、先ず結湯バーナ(36)を燃焼させると共に湯張り弁(33)を開放させて浴槽(1)に給湯する(図面符合(74)のステップ参照)。■.浴槽(1)への給湯量を測定する流量カウンタ(31)の計測値が10リットルに達すると、浴槽(1)への給湯動作を停止させると共に循環ポンプ(P)を駆動させて水流スイッチ(21)の信号を調べ(図面符合(75)〜(78)参照)、水流スイッチ(21)からON信号が出ないときは循環ポンプ(P)を停止させ(図面符合(79)のステップ参照)、該水流スイッチ(21)がON信号を出すまで浴槽内に10リットルづつ温水供給を繰返す。循環ポンプ(P)を駆動させた際に水流スイッチ(21)がON信号を出すと、該循環ポンプ(P)を停止させ、水圧計から成る水位センサ(22)が検出する第1基準水位H1(水圧)をEEPROMに書き込む(図面符合(80)のステップ参照)。■.次に、再び給湯用バーナ(36)を燃焼させると共に湯張り弁(33)を開弁して浴槽(1)に給湯すると共に該給湯時に於ける流量カウンタ(31)の計測水量が20リットルに達すると、前記給湯動作を停止させると共にその時点で水位センサ(22)が検知した第2基準水位H2をEEPROMに書き込む(図面符合(81)〜(84)のステップ参照)。■.次に、上記20リットルの温水投入による浴槽内の上昇水位(ΔH=第2基準水位H2−第1基準水位H1)を演算すると共に、上記20リットルの水量を前記ΔHで割算し、これにより、浴槽(1)内を単位水位(例えば1cm)だけ水位上昇させるのに必要な基本データとしての単位給湯量Q0を演算する。そして、該単位給湯量Q0をEEPROMに書き込むと共に、該単位給湯量Q0や上記した第1基準水位H1等のデータがEEPROMに書き込まれていることを示すフラグ(F)を「1」にセットしてこれもEEPROMに格納する(図面符合(85),(86)のステップ参照)。これにより、浴槽の形状や大きさによって変化する単位給湯量Q0が決定される。■.次に、リモコン装置(5)に設けた水位設定スイッチ(51)で設定した湯張り水位Hまで湯張りするのに浴槽(1)に投入する必要のある湯張り必要水量Qを演算する。即ち、「湯張り必要水量Q=単位給湯量Q0×湯張り水位H」を演算するのである。そして、浴槽(1)への給湯を再開して該給湯量が上記Qに達したことが流量カウンタ(31)の出力(湯張り動作初期からの全給湯量を示す出力)から判断できると、給湯動作を停止させて湯張り動作を完了させる(図面符合(87)〜(90)のステップ参照)。その後、制御動作は再び操作スイッチ(50)やクリアスイッチ(55)の操作を監視する図面符合(71)及び(72)のステップに移行する。■.そして、クリアスイッチ(55)がON操作されると、上記単位給湯量Q0等の基本データがEEPROMに格納されているか否かを示すフラグ(F)を「0」に設定し、これをEEPROMに書き込む(図面符合(91)のステップ参照)。これにより、EEPROMに格納された基本データが実質的にクリアされた状態にする。上記基本データをクリア可能にするのは、水位設定スイッチ(51)で設定した湯張り水位Hと実際の湯張り完了水位にズレが生じ始めた場合や浴槽の交換を行った場合等に既述した第1基準水位H1,第2基準水位H2を検知して単位給湯量Q0を設定し直す為の初期湯張り動作を実行させ得るようにする為である。次に、上記ステップ(92)の実行に続けて、単位給湯量Q0等の基本データがEEPROMに格納されていないことを示すクリア表示、例えば「湯張りデータ無し」等の表示をリモコン装置(5)の表示器(52)に出力し、クリアスイッチ(55)の操作を受け付けたことを表示する(図面符合(92)のステップ参照)。そして、上記のものでは、リモコン装置(5)にクリアスイッチ(55)を設けていることから、器具本体器具(A)に設ける場合に比べて基本データのクリア操作が簡便に行えると共に、クリア表示をリモコン装置(5)に出力するようにしたから、次の湯張り操作時に初期湯張りが実行されるか否かが一見して判断できる利点がある。
【0016】上記実施例では、フラグ(F) が「0」のときにのみ、即ち、基本データが求まるまでの1回だけ、初期湯張り動作を行うようにしたが、毎湯張り時に、基本データを求める湯張り動作を行い、該データに基づいて基本データを補正して更新しても良い。この場合、EEPROMを格納しているため、停電復帰後の最初の湯張り時に、基本データを使用した正確な湯張りが可能となり、従来のように、基本データの消失により、停電復帰後の初回の自動湯張りができないという不都合が生じない。
【0017】尚、上記実施例では、給湯バーナを燃焼させて設置温度の湯を設定水位まで湯張りするもので説明したが、給湯バーナを燃焼させず、供給水をそのまま浴槽内の設定水位まで満たすものでも良い。その場合、その後、追焚き用熱交換器で設定温度まで循環して使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の風呂装置の回路図
【図2】制御動作を示すフローチャート
【図3】従来例の説明図
【符合の説明】
(1) ・・・浴槽
(4) ・・・制御装置
(5)・・・リモコン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 設置した浴槽(1) の形状や大きさに基づいて定められる自動湯張りのための基本データを初期湯張り動作時に求めて記憶し、該基本データに基づいて後の湯張り動作を行う一方、前記基本データがクリアされている場合は前記初期湯張りを実行する風呂装置であって、風呂装置の器具本体に設けた制御装置(4) をリモコン装置(5) によって操作可能にし、前記制御装置(4) は、前記初期湯張り時の動作時に前記基本データを求める制御装置であって、前記基本データを格納するための、電気的書き込み消去可能な不揮発性メモリとしてのEEPROMを有し、前記リモコン装置(5) には、前記制御装置(4) が求めて記憶された基本データを強制的にクリアするクリアスイッチ(55)を設けると共に、前記EEPROMに格納した前記基本データを強制的にクリアした時にこのことを表示する表示器(52)を設けた風呂装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【特許番号】第2955783号
【登録日】平成11年(1999)7月23日
【発行日】平成11年(1999)10月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−236472
【出願日】平成3年(1991)9月17日
【公開番号】特開平5−79693
【公開日】平成5年(1993)3月30日
【審査請求日】平成5年(1993)5月14日
【審判番号】平8−5468
【審判請求日】平成8年(1996)4月17日
【出願人】(999999999)リンナイ 株式会社
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 平2−290459(JP,A)
【文献】特開 平3−187515(JP,A)
【文献】実開 昭63−137244(JP,U)
【文献】実開 平2−72933(JP,U)