説明

風味持続剤及び果実含有チューインガムの風味持続方法及び果実含有チューインガム及び果実含有複層チューインガム

【課題】 チューインガム本来の粘弾性を生かした品質設計の自由度が高く、また、果実分を高濃度に含有しているチューインガムが、咀嚼中の早い段階で味抜けすることを防止できる風味持続剤、及び風味持続方法、並びに長期保存性に優れ、また、チューインガム本来の食感、フルーツ本来の風味を保持し、かつ咀嚼したときに、フルーツの風味が徐々に溶出し、長く持続する果実含有チューインガム及び果実含有複層チューインガムを提供する。
【解決手段】 乾燥果実の磨砕物からなる果実含有チューインガム用の風味持続剤により達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実を含有するチューインガムの風味持続剤及びそれを用いた風味の持続方法、及び風味持続剤を含有する果実含有チューインガム、及び果実含有複層チューインガムに関し、更に詳しくは、果実分を高濃度に含有しているチューインガムが、咀嚼中の早い段階で味抜けすることを防止できる風味持続剤、及び風味持続方法、並びに長期保存性に優れ、また、チューインガム本来の食感、フルーツ本来の風味を保持し、かつ咀嚼したときに、フルーツの風味が徐々に溶出し、長く持続する果実含有チューインガムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューインガム中に果肉果汁を高濃度に含有させるためには、粉末果汁や濃縮果汁を使用している。しかし、粉末果汁は高価であり、生のフルーツの風味には乏しく、香料による賦香が必要である。また、濃縮果汁は加熱履歴によって風味が損なわれており、フレッシュ感に乏しい。さらに、濃縮果汁を多量に用いると、チューインガム生地がべたつき、成形したときに機械に付着して製造適性が悪くなることや、製造後、保存中に吸湿して表面がべたつき保存性が悪くなることや、咀嚼したときの弾力性が低下してチューインガムの食感が損なわれることがある。また、粉末果汁や濃縮果汁を大量に入れると、チューインガムの噛み始めにはパンチのある果実風味が感じられるが、咀嚼開始から短時間で味が抜けてしまい、果実風味の持続性のあるチューインガムとすることは難しかった。
また、果肉果汁を多量に用いると、それに由来する酸成分や水分などの影響により保存性が悪くなるため、従来、チューインガムのセンターに果汁シロップを充填すること(特許文献1)や、複層構造またはサンドイッチ構造にすることが知られている。しかしながら、それでも保存安定性に限界があり、果実分(生果実固形分換算)として、せいぜい10〜20重量%程度が限界であり、例えば、果実分50重量%以上含有する旨の表示ができるチューインガムとすることは困難であった。
これらを解決する方法としては、例えば、内層部チューインガムとそれを包含する外層部チューインガムとからなる二重構造のチューインガムにおいて、内層部チューインガム中、酸成分を5〜40重量%、ガムベース量5〜12重量%、離水防止成分(天然ガム質)0.2重量%以上、とするチューインガムが提案されている(特許文献2)。この方法ではある程度の高濃度の果実分を含有させることは出来るものの、内層部チューインガムのガムベース量が少なく、その欠点を外層部チューインガムのガムベース量で補填する必要があり、チューインガムとしての粘弾性設計に制約があり、また、咀嚼を長く続けると味抜けしてくるという課題が残る。
また、他の方法としては、例えば、高水分チューインガムと低水分チューインガムとを組合せ、高水分チューインガムに還元乳糖を3〜40重量%添加する組合せチューインガムが提案されている(特許文献3)。
しかしながら、この組合せチューインガムでは、還元乳糖による保水効果により、ある程度チューインガムの保存中のベタツキは解消できるものの、高水分チューインガムのガムベース量が少なく、その欠点を低水分チューインガムのガムベース量で補填する必要があり、チューインガムとしての粘弾性設計に限界がある。また、咀嚼を長く続けると味抜けしてくるという欠点がある。
さらに別の方法としては、チューインガム顆粒の圧縮物においてフルーツ成分として凍結乾燥果実を用いる(特許文献4の[0182])圧縮チューインガムタブレットも提案されている(特許文献4)。
しかし、この方法では、チューインガムを顆粒にする必要があり、チューインガムとしての粘弾性設計に限界があり、チューインガム本来の粘弾性が発現しにくいという欠点が
ある。また、凍結乾燥果実を用いることにより、粉末果汁と同様、高価で多量に用いにくく、果実本来の風味に乏しく、凍結乾燥果実特有のぱさついた食感が加わるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3505183号公報
【特許文献2】特開平5−30914号公報
【特許文献3】特開平6−46760号公報
【特許文献4】特表2008−504828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、チューインガム本来の粘弾性を生かした品質設計の自由度が高く、また、果実分を高濃度に含有しているチューインガムが、咀嚼中の早い段階で味抜けすることを防止できる風味持続剤、及び風味持続方法、並びに長期保存性に優れ、また、チューインガム本来の食感、フルーツ本来の風味を保持し、かつ咀嚼したときに、フルーツの風味が徐々に溶出し、長く持続する果実含有チューインガム及び果実含有複層チューインガムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、乾燥果実の磨砕物からなる果実含有チューインガム用の風味持続剤により、上記目的を達成する。
【0006】
好ましくは、風味持続剤を、ガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガムの連続相中に分散することを特徴とする果実含有チューインガムの風味持続方法により、上記目的を達成する。
【0007】
好ましくは、チューインガム中に、ガムベースと糖質甘味料と風味持続剤とを含有しており、かつ、該風味持続剤が、該ガムベースと該糖質甘味料とを含む連続相中に分散してなる果実含有チューインガムにより、上記目的を達成する。
【0008】
好ましくは、果実含有チューインガム全体重量中に、風味持続剤を果実分(生果実固形分換算)として20重量%以上と、アラビアガム5〜25重量%もしくは結晶セルロース0.5〜10重量%の少なくとも一方とを含有していることを特徴とする果実含有チューインガムである。
【0009】
好ましくは、さらに果実含有チューインガム中にキシリトールもしくはマンニトールの少なくとも一方を含有してなる果実含有チューインガムである。
【0010】
好ましくは、さらに果実含有チューインガム全体重量中、風味持続剤を果実分(生果実固形分換算)として40重量%以上含有してなる果実含有チューインガムである。
【0011】
好ましくは、外層部チューインガムと内層部チューインガムとからなる果実含有複層チューインガムであって、該内層部チューインガムが、果実含有チューインガムである果実含有複層チューインガムである。
【0012】
すなわち、本発明者らは、チューインガムに用いる果実分として、従来の粉末果汁、濃縮果汁、凍結乾燥果実以外の有効材料はないかと考え、検討を行った。
その結果、従来は、チューインガムの食感を損ない、果実風味も発現しにくいとして敬遠されていた乾燥果実に着目し、試行錯誤した結果、乾燥果実をペースト状などの磨砕物としたものを、ガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガムの連続相中に分散すると、この磨砕物がガムベースに一部吸着したような状態となり、チューインガムの咀嚼初期に果実分が溶出してしまうことがなく、咀嚼を長く続けてもじわじわと果実風味が溶出し、果実の風味が長く持続するとともに、チューインガムがべたつくこともなく、保存安定性が良好であることを見出した。
さらに、チューインガムを外層部チューインガムと内層部チューインガムとの複層構造とし、内層部チューインガムに、乾燥果実の磨砕物を含有する果実含有チューインガムを用いると、さらに高濃度に果実分を含有させても長期保存安定性が良好であり、例えば、果実分(生果実固形分換算)として、「果実分50(重量)%」や「果実分100(重量)%」表示のチューインガムも可能となることを見出した。
また、アラビアガムもしくは結晶セルロースの少なくとも一方の添加により、もちもちとした果肉感のある食感と、べたつきのない保形性(製造適性)、長期保存性を有する物性に仕上げることに成功した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の風味持続剤によれば、ガムベースの含有量を制限することなく、果実含有チューインガムにおいてチューインガム本来の粘弾性を生かした品質設計とすることができる。また、果実分を高濃度に含有しているにもかかわらず、従来の粉末果汁や濃縮果汁のように、咀嚼中の早い段階で味抜けすることを防止でき、果実の香りと味を本物に近い状態で長時間咀嚼することができる。さらに、チューインガムを複層構造にすることで、より高濃度の果実分を添加することができる。例えば、従来、業界では不可能といわれていた、果実分(生果実固形分換算)として50重量%以上のチューインガムを常温で長期間流通させることが可能である。
また、アラビアガムもしくは結晶セルロースの少なくとも一方の添加により、もちもちとしていながら歯につきにくく、好ましい食感の、チューインガムに設計することができ、例えばネクター様の濃厚感のある食感に設計したり、バナナ様のねっとりした食感にしたり、果実の種類に応じた食感に設計することができる。さらに果実の本物感を味わうことができる果実含有チューインガムとすることができる。
また、チューインガムを複層構造にすることで、特殊な包装や、流通時期、温度条件の制限を受けることなく、通常のチューインガム包装により常温で長時間流通することが可能である。
また、本発明の風味持続剤は、従来のチューインガム製造装置を用いて、磨砕することが出来るので、従来のチューインガムの製法を利用して果実含有チューインガムを製造することができる汎用性の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の風味持続剤は、乾燥果実の磨砕物からなる。
乾燥果実の原料となる果実は、一般に「果実」「果肉」と呼称されるもの全般を用いることが出来る。例えば、ぶどう、いちご、かんきつ類(みかん、レモン、オレンジ、グレープフルーツなど)、キィウイ、モモ類(水蜜桃、ネクタリン、黄桃、蟠桃(はんとう)など)、すもも、杏、梅、さくらんぼ、バラの実、栗などの種実類、バナナ、アセロラ、メロン、トマト、りんご、梨、柿、すいか、マンゴーやパッションフルーツやパパイヤなどの熱帯系フルーツ、ベリー類(ラズベリー、ブルーベリーなど)、羅漢果、サンザシ、パイナップル、いちじく、びわ、パラミツなどが挙げられる。また、果実ではないが、アロエの葉なども、本発明の果実に含まれる。
これらは単独でも複数組合せて用いても良い。
また、用いる部位は、果実全体、果皮、果肉、種皮のいずれでも良い。
上記果実を用いた乾燥果実は、適宜の方法で所定の水分値(5%〜25%程度)、および水分活性(AW=0.5〜0.75程度)まで乾燥させたものであれば良い。乾燥方法は、例えば、天日乾燥、自然換気及び人工通風による加熱乾燥、真空乾燥、乾燥剤による乾燥など、またはこれらの組合せ乾燥が挙げられる。ただし、凍結乾燥は、水分5%未満、AW=0.2以下程度まで過乾燥されているため、風味、食感的にも好ましくない。
なお、この乾燥の前後に適宜浸漬(水や果汁などの水性媒体やアルコール類に浸漬するか、もしくはこれらに糖、酸味料、香料などの溶質を添加したものに浸漬する)や、褐変防止処理などを施しても良い。
【0015】
次に、本発明の風味持続剤である、乾燥果実の磨砕物は、乾燥果実をすり鉢、ニーダー、ライカイ機、粉砕機などの磨砕機能を有する機器類を用いて磨砕することにより得られる。
あるいは、後述する本発明の果実含有チューインガムの工程中において、乾燥果実を直接ガムベースなどの他のチューインガム原料とともに、混練することにより磨砕物としても良い。
また、磨砕の状態も、磨砕物を掬ったときに、連続一体化した生地となっていればよく、たとえば、完全なペースト状態から、若干果実の砕片が残存する状態のものまで、さまざまな状態のものを用いることかできる。
【0016】
次に、上記の風味持続剤を用いた果実含有チューインガムの風味持続方法について説明する。
まず、チューインガムの原料として、ガムベースと糖質甘味料とを含む原料を準備する。チューインガムの原料は、ガムベースと糖質甘味料だけでも良いが、香料、着色料などの副原料を適宜、品質設計に応じて用いればよい。
そして、上記チューインガム原料からなるガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガムの生地を準備し、ニーダーなどの混合装置を用いて風味持続剤とともに混合し、ガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガムの連続相中に風味持続剤が分散する状態に調整することにより、風味持続方法となる。また、適宜成形、包装などを行えばよい。
本発明に係る果実含有チューインガムは、上記の風味持続方法によって咀嚼時に少しずつ風味持続剤が溶出し、長時間、果実本来の香りと食感を楽しむことができる。
【0017】
なお、本発明の果実含有チューインガム中、風味持続剤の含有量は特に限定するものではないが、果実分(生果実固形分換算)を20重量%以上、さらに好ましくは20〜75重量%、さらに好ましくは40〜75重量%含有していることが望ましい。
すなわち、20重量%未満だと、本発明の果実含有チューインガムは果実本来の風味に乏しく、本発明の効果を発揮できない傾向にあり、また、風味持続剤の果実分を40重量%以上含有させると、濃厚な果汁感を長時間味わうことが出来る。
逆に75重量%を超えると、チューインガム生地のべたつきが大きくなり製造適性が悪くなることがある。また、本発明の果実含有チューインガムを咀嚼したときにチューインガム本来の粘弾性が得られにくい傾向があり、常温での長期保存性の点で劣る傾向がある。
なお、本発明において、果実分(生果実分固形分換算)とは、風味持続剤である乾燥果実を乾燥する前の、生の果実の状態の固形分(重量)から果実分(重量)として換算した数値(重量%。水分量を含む果実成分全体)を示す。
【0018】
本発明の果実含有チューインガムについて詳しく説明する。
まず、果実含有チューインガムは、ガムベースと糖質甘味料と風味持続剤とを含有しており、かつ、該風味持続剤が、該ガムベースと該糖質甘味料とを含む連続相中に分散している。
【0019】
ガムベースは、通常、チューインガムに用いられ、ガムベース用食品添加物として認められた物質を用いればよく、例えば、天然チクル、酢酸ビニル樹脂、ワックス、乳化剤、エステルガム、ポリイソブチレン、ポリブテンなどが挙げられ、これらを単独もしくは複数組み合わせて、混練したものが挙げられる。
【0020】
次に、糖質甘味料は、単糖類(ブドウ糖、ガラクトース、マンノース、フルクトースなど)、少糖類(オリゴ糖など)、二糖(乳糖、ショ糖、麦芽糖など)、糖アルコール(キシリトール、マンニトールなど)、還元水あめ、異性化糖などの液糖などが挙げられる。これらは単独でも複数組み合わせても良く、無水物でも含水物でも良い。
特に、キシリトールは果実のような瑞々しく、やわらかいが粘弾性に富んだ食感を付与する点で好適である。
また、マンニトールは果実のような瑞々しく、やわらかいが粘弾性に富んだ食感を付与するとともに、果実含有チューインガム生地の成形時のべたつきを抑制し、製造適性を向上する点で好適である。
糖質甘味料の含有量は、特に限定するものではなく、適宜設定すれば良いが、甘味の質やチューインガムの食感の点で、例えば果実含有チューインガム全体重量中、砂糖30〜80重量%、キシリトール0〜40重量%、マンニトール0〜5重量%の範囲で設定することが好適である。
【0021】
また、本発明の果実含有チューインガムには、副原料を用いても良い。
副原料としては、例えば、高感度甘味料(アスパルテーム、アセスルファムKなど)、油脂(バターなどの乳脂肪、植物油脂、これらの加工油脂など)、乳製品、着色料、香料、食塩、酸成分(有機酸(クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸など)やこれらを主体とする醸造酢、梅酢、果実酢、果汁などの粉末)、濃縮果汁、安定剤、ゲル化剤、乳化剤、調味料、カルシウム類、ビタミンやミネラルなどの栄養強化剤を添加しても良い。
ただし、粉末果汁や濃縮果汁は、味抜けしやすく、また、長期保存安定性を悪くするので、チューインガムの噛み始めの風味強度を上げる目的で補助的に用いることが望ましい。
また、本発明の果実含有チューインガムには、香料を用いなくても果実本来の風味を味わうことができるが、チューインガムの噛み始めの風味強度を上げる目的で補助的に用いてもよい。
【0022】
次に、上記ガムベースと糖質甘味料と、本発明の風味持続剤と、必要に応じ副原料とを用いて、果実含有チューインガムは例えば次のようにして製造される。
まず、ガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガムの原料を準備し、ニーダーなどの混合装置を用いて風味持続剤とともに混合し、ガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガム生地の連続相中に風味持続剤が分散する状態に調整することにより果実含有チューインガムは得られる。
このとき、風味持続剤は、ガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガム生地の連続相中に分散し、ガムベース、糖質甘味料などを介して適度に相互結着している。
【0023】
また、果実含有チューインガム中にアラビアガムもしくは結晶セルロースの少なくとも一方を含有することがさらに望ましい。
【0024】
アラビアガムは、もちもちとした濃厚果汁を添加したような食感を助長するとともに、果実分添加に由来するチューインガム生地の表面がべたついて製造適性が悪くなったり、チューインガムの成形時・包装時あるいは成形後の保管・流通における保形性、保存性が悪くなったりすることを改善する効果が得られる点で好適である。
アラビアガムの含有量は、果実含有チューインガム全体重量中、5〜25重量%に設定
することが望ましい。すなわち、アラビアガムが5重量%未満だと、食感、製造適性、保形性、保存性の改良効果が得られにくい傾向にあり、逆に25重量%を超えると、チューインガム本来の食感が悪くなることがあり、風味の発現性が悪くなる傾向にある。
【0025】
結晶セルロースはチューインガムの成形時・包装時あるいは成形後の保管・流通における保形性の悪さや風味、食感を改善する効果がさらに得られる点で好適である。
結晶セルロースは、植物の細胞壁を構成する天然セルロース(例えば高純度の木材パルプ)を酸で加水分解して非結晶部分を除いたものを機械的に摩砕、精製して微結晶化し乾燥したものである。
製剤としては、例えば、旭化成工業株式会社製のアビセル(登録商標)PH、FD、PH−M、RC、RC−N、同社製のセオラス(登録商標)FD101、VF−F702、DX−2などが挙げられる。
また、結晶セルロースの含有量は、果実含有チューインガム全体重量中、0.5〜10重量%とすることが望ましい。すなわち、結晶セルロースが0.5重量%未満だと、チューインガム生地の表面がべたついて、製造適性が悪くなる傾向にある。逆に、10重量%を超えると、チューインガム本来の食感が損なわれることがあり、風味の発現性が悪くなる傾向にある。
【0026】
なお、本発明の風味持続剤を用いた果実チューインガムは、果実の風味持続性に優れたものであるが、外層部チューインガムと、本発明の果実含有チューインガムからなる内層部チューインガムとで構成された果実含有複層チューインガムの形態にすると、さらに長期保存性、製造適性が向上し、さらに果実分(生果実固形換算)を75重量%以上の高濃度としても安定的に含有させることが出来る点で好適である。
すなわち、果実含有チューインガムが単層の場合は、風味持続剤を高濃度に含有させた場合、長期保存の観点からは、冷蔵保管するか、密閉包装するか、冬季限定販売するなどが望ましい。一方、複層にした場合にはそれらを考慮することなく、通常のチューインガム包装で、常温で1年以上の流通が可能である点で好適である。
【0027】
まず、内層部チューインガムは、上述の果実含有チューインガムからなる。
【0028】
次に、外層部チューインガムは、特に限定するものではなく、上記内層部チューインガムや従来用いられているチューインガムの原料全般を用いることができる。
また、外層部チューインガムに、風味持続剤を添加しても良い。
好ましくは、長期保存性の観点から、風味持続剤の含有量は、外層部チューインガム全体重量中、果実分(生果実固形分換算)として、15重量%未満とすることが望ましい。
また、外層部チューインガムの調製方法も、従来のチューインガムまたは内層部の果実含有チューインガムと同様にして調製すればよい。
なお、内層部である果実含有チューインガムの風味持続剤の果実分(生果実固形分換算)として130重量%以上とすると、複層チューインガム全体では果実分(生果実固形分換算)として50重量%以上とすることができ、ほとばしるような濃厚な果実風味と果肉のような濃厚な食感を味わうことができる。
【0029】
次に、上記の内層部チューインガムと外層部チューインガムとを用いて、本発明の果実含有複層チューインガムは例えば次のようにして製造される。
まず、果実含有チューインガムからなる内層部チューインガムと、外層部チューインガムとを準備する。
次に、内層部チューインガムが外層部チューインガムに内包されるように接合する。
なお、内包の状態は、内層部チューインガムがセンターに入った完全被覆状態や、内層部チューインガムを外層部チューインガムで巻いて、一部外層部側に内層部チューインガムが露出したものや、内層部チューインガムを外層部チューインガムで挟着したサンドイ
ッチ状態のものなどが挙げられる。
長期保存安定性の点では、内層部チューインガムがセンターに入った完全被覆状態の態様が最も好ましい。
上記完全被覆状態の複層チューインガムの製造方法としては、例えば次の方法が挙げられる。
まず、2重ノズルを準備し、外層ノズルに2軸エクストルーダーから外層部チューインガム生地を供給し、内層ノズルに、別の2軸エクストルーダーから内層部チューインガム生地を供給し、押し出して、所定の形状に成形しながら上下2段ローラーなどで延伸し、所定のサイズに成形する。そして、カッターで切断すれば、ブロック形状の複層チューインガムとなる。
また、サンドイッチ形状の複層チューインガムとする場合は、例えば、特開平6−78680号公報記載の方法で製造すればよい。
【0030】
なお、上記の例では、2層の複層チューインガムの例で説明したが、3層や4層に重ねた複層チューインガムにしても良く、また、糖衣やキャンディコーティングなどの被覆を行っても良い。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を、実施例に基づき具体的に説明する。
【0032】
<内層部チューインガムの調製>
表1の組成に基づき、各原料をニーダーで混練して、風味持続剤がガムベースと糖質甘
味料とを含む連続相中に分散した果実含有チューインガムからなる内層部チューインガムを調製した。
【0033】
(実施例12)
<果実含有チューインガムの調製>
表1の内層部チューインガムの生地のみでブロック状(1個3g)に成形し、果実チューインガムを得た。
【0034】
<外層部チューインガムの調製>
表1の組成に基づき、各原料をニーダーで混練して、風味持続剤がガムベースと糖質甘
味料とを含む連続相中に分散した外層部チューインガムを調製した。
【0035】
<果実含有複層チューインガムの調製>
(実施例1〜11、13、14)
エクストルーダーを用いて、[0029]の製法で果実含有複層チューインガム(プロック状成形、1個3g)を調製した。
【0036】
(比較例1、2)
風味持続剤を使用せず、粉末果汁を用いる他は、実施例1及び実施例12と同様にして果汁含有チューインガムを得た。
【0037】
<評価>
上記の、果実含有チューインガム、果実含有複層チューインガム、果汁含有チューインガムの、製造適性(チューインガム生地を調製したときの表面のべたつきや機械への付着
性、成形したときの保形性など)、長期保存性(40℃における経日試験による吸湿性)、
咀嚼したときの果実の風味持続性、食感、風味について専門パネラー5名で評価した結果を合わせて表1に示す。
【0038】
評価の結果、実施例では、製造適性、長期保存性、風味持続性、食感及び風味についておおむね良好であった。特に、実施例1は製造適性、長期保存性のみならず、風味(果汁
感)、食感(果実のようなもちもちとした濃厚な食感)及び風味持続性の点で最良の結果を
得ることが出来た。
【0039】
これに対し、比較例は製造適性、長期保存性、風味持続性、食感または風味のいずれかが悪かった。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥果実の磨砕物からなる果実含有チューインガム用の風味持続剤。
【請求項2】
請求項1記載の風味持続剤を、ガムベースと糖質甘味料とを含むチューインガムの連続相
中に分散することを特徴とする果実含有チューインガムの風味持続方法。
【請求項3】
チューインガム中に、ガムベースと糖質甘味料と請求項1記載の風味持続剤とを含有して
おり、かつ、該風味持続剤が、該ガムベースと該糖質甘味料とを含む連続相中に分散してなる果実含有チューインガム。
【請求項4】
果実含有チューインガム全体重量中に、風味持続剤を果実分(生果実固形分換算)として20重量%以上と、アラビアガム5〜25重量%もしくは結晶セルロース0.5〜10重量%の少なくとも一方とを含有していることを特徴とする請求項3記載の果実含有チューインガム。
【請求項5】
さらにキシリトールもしくはマンニトールの少なくとも一方を含有してなる請求項3または4記載の果実含有チューインガム。
【請求項6】
さらに果実含有チューインガム全体重量中、風味持続剤を果実分(生果実固形分換算)として40重量%以上含有してなる請求項3乃至5のいずれか1項に記載の果実含有チューインガム。
【請求項7】
外層部チューインガムと内層部チューインガムとからなる果実含有複層チューインガムであって、該内層部チューインガムが、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の果実含有チューインガムである果実含有複層チューインガム。

【公開番号】特開2013−106548(P2013−106548A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252871(P2011−252871)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年11月8日 インターネットアドレス「http://www.kracie.co.jp/release/10014416_3833.html」に発表
【出願人】(393029974)クラシエフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】