説明

風船構造体およびその操作方法

【課題】故障や破損事故が発生せず、製造コストの廉価な風船構造体を提供する。
【解決手段】人形や動物などを模したものであって、軟質材製の風船本体2と、風船本体2から突出形成された軟質材製の変形部3と、風船本体2の内部に空気を連続的に供給する送風装置4と、風船本体2の空気を変形部3に断続的に供給する供給弁10と、変形部3の空気を連続的に大気中に吐き出す吐出弁20を備え、供給弁10によって変形部3に供給される単位時間あたりの空気量を、吐出弁20によって変形部3から大気中に吐き出される単位時間あたりの空気量より多く設定して、変形部3を供給弁10の開放にともなう空気の供給によって起立させ、供給弁10の閉鎖にともなう空気の供給遮断によって屈曲させるようにして、断続的に屈曲変形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅展示場などの各種の催し場において宣伝,広告の目的で使用される、人形や動物などを模した風船構造体およびその操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅展示場や自動車販売場などの各種の催し場において、人形や動物を模した多種の風船構造体が宣伝や広告の目的で多く使用されている。
こうした風船構造体には、例えば、人形を模したものでは体の一部(腕など)が動くように構成されたものがある。体の一部を動くように構成した風船構造体は、その動きによって来場者の注目を集めることができるので宣伝効果が高いといった特徴を有する。
【0003】
こうした風船構造体としては、従来、内部の骨組を金属枠で構成し、プラスチック板などを組み付けて、紐で引っ張って動かすものがある。また、近年では、その外郭を布やビニール等の軟質材で形成した風船本体の内部に、硬質材料で形成した内部構造体を設け、また、外郭形成用の送風装置の他に、体の一部を動かすための内部構造体用の送風装置、アクチュエーターおよび吐出切替弁装置などを設けたものが創案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−67033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紐を使用した風船構造体は、その紐が頻繁に絡まってしまうので、動きが止まり故障し易いといった問題がある。また、紐を使用したものおよび送風装置を使用したものは、共に、内部に大型で硬質材製の構造体を設けているので、輸送中や取付け後の破損事故が多いといった問題がある。
【0005】
さらに、送風装置を使用したものは、外郭形成用の送風装置の他に、体の一部を動かすための内部構造体用送風装置など、多くの大型な装置を必要とするので、構造が複雑で製造コストが嵩み、故障も発生し易いといった問題がある。また、構造が複雑であるので、例えば、天候や気圧の変化によって、作動中に停止することもある。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、大型の内部構造体や各種装置を不要として、故障や破損事故が発生し難く、かつ、製造コストの廉価な風船構造体およびその風船構造体の操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の風船構造体は、人形や動物などを模した風船構造体(1)であって、外郭を形成する軟質材製の風船本体(2)と、前記外郭の一部を形成し、前記風船本体(2)から突出形成された軟質材製の変形部(3)と、前記風船本体(2)の所定部分に設けられ、前記風船本体(2)の内部に空気を連続的に供給する送風装置(4)と、前記風船本体(2)と変形部(3)との境界部分に設けられ、弁の開閉動作によって前記風船本体(2)の空気を前記変形部(3)に断続的に供給する供給弁(10)と、前記変形部(3)に設けられ、前記変形部(3)の空気を連続的に大気中に吐き出す吐出弁(20)と、を備え、前記供給弁(10)によって前記変形部(3)に供給される単位時間あたりの空気量を、前記吐出弁(20)によって前記変形部(3)から大気中に吐き出される単位時間あたりの空気量より多く設定して、前記変形部(3)を、前記供給弁(10)の開放にともなう空気の供給によって起立させ、前記供給弁(10)の閉鎖にともなう空気の供給遮断によって屈曲させるようにして、断続的に屈曲変形させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の風船構造体は、前記供給弁(10)は、平板状で空気を通過させる固定孔(12a)が形成された固定弁部(12)と、円板状で、前記固定弁部に摺接しつつモーターの回転駆動によって回転するとともに、その回転よって前記固定弁部(12)の固定孔(12a)に重なり前記供給弁(10)を開放する開放位置と、前記固定弁部(12)の固定孔(12a)に重なることなく前記供給弁(10)を閉鎖する閉鎖位置との間を移動する移動孔(13a)が形成された回転弁部(13)とを備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に記載の風船構造体は、前記固定弁部(12)に形成された前記固定孔(12a)および前記回転弁部(13)に形成された前記移動孔(13a)のうち一方は円形状の孔であり、他方は略三日月状の長孔であることを特徴とする。
【0010】
さらにまた、請求項4に記載の風船構造体は、前記固定弁部(12)は、円板状で、その中心部に形成した挿通孔(12b)に前記モーター(11)の回転軸(11b)を回転自在に挿通するとともに、下面をモーター(11)の駆動部(11a)に固定し、前記固定孔(12a)を前記固定弁部(12)の中心部から外れた位置に形成したものであり、前記回転弁部(13)は、その中心部が前記モーター(11)の回転軸(11b)に固定され、下面が前記固定弁部(12)の上面に摺接するものであり、前記移動孔(13a)を前記回転弁部(13)の中心部から外れた位置に形成したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の風船構造体は、前記変形部(3)の所定部分に、前記供給弁(10)の閉鎖にともなう空気の供給遮断によって前記変形部(3)を屈曲させるときに前記変形部(3)を所定方向に屈曲変形させるように収縮する弾性部材(5)を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に記載の風船構造体の操作方法は、請求項4または5に記載の風船構造体を操作する方法であって、前記回転弁部(13)は、前記モーター(11)の回転軸(11b)に対して脱着自在で、前記回転弁部(13)の移動孔(13a)の形成箇所および/または形状が異なる複数の回転弁部(13)のうちいずれか一つを適宜選択することによって、空気が前記移動孔(13a)を通過して前記変形部(3)に供給されるタイミングを決定し、前記変形部(3)の屈曲変形を制御してなることを特徴とする。
【0013】
なお、カッコ内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の風船構造体によれば、風船本体と、風船本体から突出形成された変形部と、風船本体に空気を連続的に供給する送風装置と、弁の開閉動作によって風船本体の空気を変形部に断続的に供給する供給弁と、変形部の空気を連続的に吐き出す吐出弁とを備え、供給弁によって変形部に供給される単位時間あたりの空気量を、吐出弁によって変形部から大気中に吐き出される単位時間あたりの空気量より多く設定し、これによって、変形部を、供給弁の開放にともなう空気の供給によって起立させ、供給弁の閉鎖にともなう空気の供給遮断によって屈曲させるようにして、断続的に屈曲変形させるので、故障や破損事故が発生し難い。また、製造コストを廉価に抑えることができる。
【0015】
すなわち、この風船構造体は、従来技術のように紐を引っ張って動かすものではないので、紐が絡まるといったことがなく、よって故障が発生し難い。また、内部構造体やアクチュエーターなどのような大型で複雑な装置を設けていないので、構造が簡易である。従って、故障が発生し難く、また、輸送中や取付け後における破損事故もなくすことができる。また、製造コストも廉価に抑えることができる。
【0016】
なお、変形部の断続的な屈曲変形は、変形部の空気を吐出弁から連続的に吐き出しながら、この変形部に、供給弁から断続的に空気を供給することによって行う。すなわち、供給弁から空気を供給している状態では、その空気量が、吐出弁から吐き出される空気量より多いので、変形部はその内部圧力が上昇して膨らみ、起立姿勢を形成する。また、供給弁からの空気の供給を遮断している状態では、吐出弁から空気が吐き出されるので、変形部はその内部圧力が減少して縮み、屈曲変形する。なお、この際、風船本体の空気は流出せず、かつ、送風装置から新たな空気が連続的に供給されるので、充分な膨らみを保つことができる。
【0017】
また、請求項2に記載の風船構造体によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、供給弁を、平板状で固定孔が形成された固定弁部と、円板状で移動孔が形成された回転弁部で構成したので、全体構造が極めて簡易であり強度も高い。従って、故障が発生し難く、また、輸送中や取付け後の破損事故も未然に防ぐことができる。
固定弁部に形成された固定孔と回転弁部に形成された移動孔の形状を様々に、例えば、請求項3に記載のように、固定孔および移動孔のうち一方を円形状の孔とし他方を略三日月状の長孔にするといったようにすることによって、変形部に空気を供給するタイミングを変えることができ、変形部の屈曲変形の動きを様々にすることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の風船構造体によれば、請求項2または3に記載の発明の作用効果に加えて、固定弁部,回転弁部とも円板状で、回転弁部は、モーターの駆動部に固定された固定弁部の上面に摺接しつつモーターの回転軸に固定されモーターの回転とともに回転するものであり、モーターの回転によって固定孔に対する移動孔の位置関係を両者が重なる位置にしたり、両者が重ならない位置にしたりするので、構造が簡単である。
【0019】
また、請求項5に記載の風船構造体によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加えて、変形部の所定部分に弾性部材を設けたので、変形部の屈曲変形を大きく、かつ安定させることができる。
【0020】
すなわち、この弾性部材は、吐出弁から空気を吐き出すことによる圧力減少によって、変形部を所定方向に屈曲させるように収縮するので、変形部の自然収縮に加えて、この収縮力によって変形部を、大きくかつ常に同一方向に安定して屈曲させることができる。
【0021】
また、請求項6に記載の風船構造体の操作方法によれば、回転弁部は、モーターの回転軸に対して脱着自在で、回転弁部の移動孔の形成箇所や形状が異なる複数の回転弁部のうちいずれか一つを適宜選択することによって、空気が移動孔を通過して変形部に供給されるタイミングを決定し、変形部の屈曲変形を制御するので、変形部に様々な動きを与えることができる。
例えば、移動孔が一つの長孔で構成されている回転弁部を選択すると、変形部を、回転弁部が一回転する間に、一つのゆったりとした屈曲変形を行わせることができ、また、二つの丸孔で構成されているものを選択すると速い屈曲変形を二回行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1乃至図4を参照して、本発明の実施形態に係る風船構造体1について説明する。図1は、風船構造体1を示す背面図である。図2は、変形部3が起立姿勢にある状態を示す側面図であり、図3は、変形部3が屈曲姿勢にある状態を示す側面図である。図4は、図2の要部拡大断面図である。
【0023】
この風船構造体1は、住宅展示場において宣伝の目的で使用されるもので、人形や動物の形状、ここではうさぎの形状を模しており、風船本体2、変形部3、送風装置4、供給弁10、吐出弁20および弾性部材5を備える。風船本体2の底面には複数のキャスター6を設け、移動自在としている。なお、送風装置4と供給弁10は、商用電源などの電源部7に接続し、この電源部7から供給される電力によって作動させる。
【0024】
風船本体2は、外郭の殆ど(変形部3を除く部分)を形成するものであり、送風装置4によって供給される空気によって容易に膨れる布やビニールなどの軟質材で製造されている。
【0025】
変形部3は、外郭の一部(風船本体2を除く部分)を形成し、風船本体2から突出形成されたもので、供給弁10から供給される空気によって、風船本体2と同様に容易に膨れる布やビニールなどの軟質材製である。なお、本実施形態では、うさぎの2本の耳部分を変形部3としている。
【0026】
送風装置4は、風船本体2の底面部分に設けられ、風船本体2の内部に空気を連続的に供給するものであり、モーターとファンで構成している。
【0027】
供給弁10は、風船本体2と変形部3との境界部分に、その境界部分を塞いだ状態で設けられ、弁の開閉動作によって、風船本体2の空気を変形部3に断続的に供給するものである。
【0028】
この供給弁10は、図5乃至図7に示すように、固定弁部12と回転弁部13を備えている。
固定弁部12は、円板状でその中心部に形成した挿通孔12bに、モーター11の駆動部11aから突出した回転軸11bを回転自在に挿通するとともに、下面をモーター11の駆動部11aの上部に固定している。そして、固定弁部12の中心部(挿通孔12bの位置)から外れた外周端部側の位置に、空気を通過させる円形状の孔をした固定孔12aを一つ形成している(図7参照)。ここでは、固定孔12aの大きさと挿通孔12bの大きさを同一にした。
【0029】
回転弁部13は、固定弁部12の上面に固定弁部12に摺接した状態で配置された同じく円板状で、その中心部にモーター11の回転軸11bが嵌入して回転軸11bに固定される組付孔13bを形成している。そして、回転弁部13の中心部(組付孔13bの位置)から外れた外周端部側の位置に固定孔12aからの加圧空気を断続的に通過させる略三日月状の長孔をした移動孔13aを一つ形成している(図6参照)。
【0030】
この回転弁部13は、モーター11によって回転軸11bとともに回転しながら、供給弁10を開放する開放位置と供給弁10を閉鎖する閉鎖位置との間を移動する。つまり、図8(a)に示すように、移動孔13aが固定弁部12の固定孔12aに重なり供給弁10を開放する開放位置において空気を通す状態と、図8(b)に示すように、移動孔13aが固定弁部12の固定孔12aに重なることなく供給弁10を閉鎖する閉鎖位置において空気を遮断する状態とを繰り返す。
その際、回転弁部13の下面は固定弁部12の上面に摺接した状態で回転する。
ナット14は、回転軸11bに螺合して組付き、回転弁部13が回転軸11bから抜け出すのを防止するはたらきを担う。ナット14によって回転弁部13は回転軸11bに対して脱着自在に固定され、ナット14を緩めることで回転軸11bから回転弁部13を容易に取外することができる。
【0031】
なお、回転弁部13の形状は限定されるものではなく、例えば、図9(a)に示すように、円形状(丸孔状)のものを複数(ここでは4個)設けたり、図9(b)に示すように、長孔状のものと丸孔状のものを混在させることによって構成することもできる。
【0032】
吐出弁20は、変形部3に設けられ、変形部3の空気を連続的に大気中に吐き出す。
この吐出弁20は、図10乃至図12に示すように、円板状の固定板21と回転板22を、摘み部23を有する皿ネジ24と雌ネジ25で重ねた状態で固定して構成している。この固定板21と回転板22には、その外周端部側に対向して三つの通孔21aと三つの孔部22aを形成しており、図13に示すように、この通孔21aと孔部22aの重なり具合を調整することによって、変形部3から大気中へ吐き出す空気の量を設定する。なお、固定板21と回転板22の中心部には、それぞれ皿ネジ24を通すための嵌合孔21bと貫通孔22bが形成されている。
【0033】
図13(a)は、固定板21の通孔21aと回転板22の孔部22aを完全に重ねた状態を示す。この状態では最も多量の空気を吐き出すことができる。
また、図13(b)は、通孔21aと孔部22aを部分的に重ねたものを示す。この状態では、空気の吐き出し量を減少させることができる。
さらに、図13(c)は、通孔21aと孔部22aを完全にずらした状態を示す。この状態では、吐出弁20からの空気の吐き出しを停止することができる。
通孔21aと孔部22aの重なり具合の調整は、摘み部23を回して皿ネジ24と雌ネジ25の螺合を緩め、回転板22を手動で回転させることによって行うことができる。
【0034】
なお、この風船構造体1は、供給弁10から変形部3に供給される短時間あたりの空気量を、吐出弁20によって大気中に吐き出される単位時間あたりの空気量より、充分に多くなるように設定している。この設定は、供給弁10の固定孔12aと移動孔13a、および吐出弁20の通孔21aと孔部22aの大きさ、形状、数などを調整することによって行うことができる。また、送風装置4から風船本体2に供給される空気量も、吐出弁20から吐き出される空気量よりも充分に多くなるように設定している。この設定は、送風装置4のファンの回転数を調節することによって行うことができる。
【0035】
弾性部材5は伸縮自在なゴム製の紐片で構成しており、変形部3の前側下部に縫い付けや接着によって固定している。この弾性部材5は、空気の圧力減少によって、変形部3を前方向に屈曲させるように収縮する。なお、この弾性部材5は、変形部3の内面側に設けているが、外面側に設けることもできる。また、弾性部材5は、ゴム製の紐片に限定されるものではなく、例えば、渦巻きバネなどのバネ類を使用することもできる。
【0036】
この風船構造体1は、次のように作動する。まず、送風装置4を作動させ、風船本体2の内部に空気を連続的に供給する。これによって、風船本体2はその内部圧力が上昇して膨らみ、うさぎの外郭(耳部分を除く)を形成する。
【0037】
次に、供給弁10を作動させる。この供給弁10は、モーター11の回転軸11bが回転することによって、回転弁部13が回転し、回転弁部13の移動孔13aが固定弁部12の固定孔12aと重なった状態で、風船本体2の空気をこの固定孔12aと移動孔13aを通して変形部3に供給する。
変形部3に空気が供給されると、その内部圧力が上昇して膨らみ起立姿勢を形成する。これにより、図2に示すように、うさぎの耳が立ち上がる。この際、供給弁10から変形部3に供給される短時間あたりの空気量は、吐出弁20によって大気中に吐き出される単位時間あたりの空気量より多く設定しているので、変形部3は容易に膨らむ。また、風船本体2には、送風装置4によって連続的に空気が供給されているので、変形部3には、供給弁10から充分な量の空気を供給することができる。
【0038】
この状態から、モーター11の回転軸11bおよび回転弁部13の回転によって移動孔13aが固定孔12aからずれて空気の供給が停止すると、変形部3の空気が吐出弁20から大気中に吐き出されて内部圧力が減少する。これによって、変形部3が縮んで屈曲し、それに加えて弾性部材5が収縮するので、その収縮力によって前方に屈曲して傾倒姿勢を形成する。これにより、図3に示すように、うさぎの耳が倒れる。なお、この際、風船本体2の空気は変形部3に流出せず、かつ、新たな空気が送風装置4から供給されているので、充分に膨らんで、その外郭を正常に保つことができる。
【0039】
続いて、モーター11の回転軸11b等の回転によって、移動孔13aが固定孔12aに再び重なると、変形部3に空気が供給されて膨らみ起立姿勢を形成する。こうした動作を繰り返すことによって、変形部3は断続的に起立姿勢と傾倒姿勢を交互に形成する。
【0040】
本実施形態に係る風船構造体1は、変形部3を、送風装置4、供給弁10および吐出弁20によって、その内部圧力を増減させて屈曲変形させるので、故障が発生し難い。
すなわち、供給弁10は風船本体2と変形部3との境界部分に設けられ、また、吐出弁20は変形部3に設けられるものであり、共に、小型で構造が簡易であり、それに伴い強度も高い。また、内部構造体やアクチュエーターなどのような大型の装置も設けていない。従って、故障が発生し難く、また、輸送中や取付け後における破損事故もなくすことができる。さらに、構造が簡易であるため、製造コストを抑えることもできる。
【0041】
また、この風船構造体1は、変形部3に、ゴム製の紐片で構成した弾性部材5を設けているので、その収縮力によって変形部3の屈曲変形を大きくすることができる。また、弾性部材5は常に所定方向に収縮するので、屈曲変形を安定させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る風船構造体1は、うさぎの形状を模したものに限定されるものではなく、例えば、図14に示すような象を模したものや、図15に示すような招き猫を模したものとすることもできる。
【0043】
象を模したものでは、鼻部分を変形部3とし、その根元部分(風船本体2と変形部3との境界部分)に供給弁10を設けると共に、その先端寄りに吐出弁20を設けて、鼻に屈曲変形を与えている(図14(a)は変形部3が起立した姿勢を示し、図14(b)は屈曲した姿勢を示す)。
また、招き猫を模したものでは、手を変形部3として、その根元部分に供給弁10を設けると共に、その先端寄りに吐出弁20を設けて、手招きする動作を与えている(図15(a)は変形部3が起立した姿勢を示し、図15(b)は屈曲した姿勢を示す)。
【0044】
このいずれの風船構造体1も、内部構造体を設けることなく、変形部3の内部圧力の増減によって屈曲変形するように形成しているので、故障が発生し難く、輸送中や取付け後の破損事故もなくすことができる。また、構造が簡易であるので、製造コストも廉価である。
【0045】
本発明の実施形態に係る風船構造体1の操作方法について説明する。この操作方法は、上記実施形態に係る風船構造体1を操作するものであり、移動孔13aの形成箇所や形状が異なる複数の回転弁部13のうちの一つを、適宜選択することによって、加圧空気の移動孔13aからの吐き出しのタイミングを決定し、屈曲部位の屈曲動作を制御するものである。
【0046】
これによって、屈曲部位にあらゆる動きを与えることができる。例えば、移動孔13aが、一つの長孔で構成されている回転弁部13を選択することによって、変形部3を単位時間内に一つのゆったりとした屈曲変形を行わせることができる。
また、二つあるいはそれ以上の丸孔で構成されているものを選択することによって、速い屈曲変形を二回あるいはそれ以上行わせることができる。
【0047】
なお、弾性部材5は、供給弁10の閉鎖にともなう空気の供給遮断によって変形部3を屈曲させるときに変形部3を所定方向に屈曲変形させるように収縮するもので、本実施形態では、変形部3の所定部分に設けたが、空気の供給遮断によって変形部3が重力によって変形する場合には特に設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る風船構造体を示す背面図である。
【図2】図1に示す風船構造体において、変形部が起立姿勢にある状態を示す側面図である。
【図3】図1に示す風船構造体において、変形部が屈曲姿勢にある状態を示す側面図である。
【図4】図2の要部拡大断面図である。
【図5】図1に示す風船構造体の供給弁を示す拡大断面図である。
【図6】図5に示す供給弁の回転弁部を示す平面図である。
【図7】図5に示す供給弁の固定弁部を示す平面図である。
【図8】図5に示す供給弁の固定弁部と回転弁部の組付き姿勢を示す平面図であり、(a)は固定孔と移動孔が重なった状態、(b)は両者の重なりがずれた状態を示す。
【図9】回転弁部の他の態様を示す平面図である。
【図10】図1に示す風船構造体の吐出弁を示す断面図である。
【図11】図10に示す吐出弁の回転板を示す拡大平面図である。
【図12】図10に示す吐出弁の固定板を示す平面図である。
【図13】図10に示す吐出弁の固定板と回転板の組付き姿勢を示すもので、(a)は通孔と孔部が重なった状態、(b)は部分的に重なった状態、(c)は完全に重なりがずれた状態を示す。
【図14】本発明に係る風船構造体の他の実施形態を示すもので、(a)は変形部が起立姿勢にある状態、(b)は屈曲姿勢にある状態を示す側面図である。
【図15】本発明に係る風船構造体のさらに他の実施形態を示すもので、(a)は変形部が起立姿勢にある状態、(b)は屈曲姿勢にある状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 風船構造体
2 風船本体
3 変形部
4 送風装置
5 弾性部材
6 キャスター
7 電源部
10 供給弁
11 モーター
11a 駆動部
11b 回転軸
12 固定弁部
12a 固定孔
12b 挿通孔
13 回転弁部
13a 移動孔
13b 組付孔
14 ナット
20 吐出弁
21 固定板
21a 通孔
21b 嵌合孔
22 回転板
22a 孔部
22b 貫通孔
23 摘み部
24 皿ネジ
25 雌ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形や動物などを模した風船構造体であって、
外郭を形成する軟質材製の風船本体と、
前記外郭の一部を形成し、前記風船本体から突出形成された軟質材製の変形部と、
前記風船本体の所定部分に設けられ、前記風船本体の内部に空気を連続的に供給する送風装置と、
前記風船本体と変形部との境界部分に設けられ、弁の開閉動作によって前記風船本体の空気を前記変形部に断続的に供給する供給弁と、
前記変形部に設けられ、前記変形部の空気を連続的に大気中に吐き出す吐出弁と、を備え、
前記供給弁によって前記変形部に供給される単位時間あたりの空気量を、前記吐出弁によって前記変形部から大気中に吐き出される単位時間あたりの空気量より多く設定して、前記変形部を、前記供給弁の開放にともなう空気の供給によって起立させ、前記供給弁の閉鎖にともなう空気の供給遮断によって屈曲させるようにして、断続的に屈曲変形させることを特徴とする風船構造体。
【請求項2】
前記供給弁は、
平板状で空気を通過させる固定孔が形成された固定弁部と、
円板状で、前記固定弁部に摺接しつつモーターの回転駆動によって回転するとともに、その回転よって前記固定弁部の固定孔に重なり前記供給弁を開放する開放位置と、前記固定弁部の固定孔に重なることなく前記供給弁を閉鎖する閉鎖位置との間を移動する移動孔が形成された回転弁部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の風船構造体。
【請求項3】
前記固定弁部に形成された前記固定孔および前記回転弁部に形成された前記移動孔のうち一方は円形状の孔であり、他方は略三日月状の長孔であることを特徴とする請求項2に記載の風船構造体。
【請求項4】
前記固定弁部は、円板状で、その中心部に形成した挿通孔に前記モーターの回転軸を回転自在に挿通するとともに、下面をモーターの駆動部に固定し、前記固定孔を前記固定弁部の中心部から外れた位置に形成したものであり、
前記回転弁部は、その中心部が前記モーターの回転軸に固定され、下面が前記固定弁部の上面に摺接するものであり、前記移動孔を前記回転弁部の中心部から外れた位置に形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の風船構造体。
【請求項5】
前記変形部の所定部分に、前記供給弁の閉鎖にともなう空気の供給遮断によって前記変形部を屈曲させるときに前記変形部を所定方向に屈曲変形させるように収縮する弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の風船構造体。
【請求項6】
請求項4または5に記載の風船構造体を操作する方法であって、
前記回転弁部は、前記モーターの回転軸に対して脱着自在で、前記回転弁部の移動孔の形成箇所および/または形状が異なる複数の回転弁部のうちいずれか一つを適宜選択することによって、空気が前記移動孔を通過して前記変形部に供給されるタイミングを決定し、前記変形部の屈曲変形を制御してなることを特徴とする風船構造体の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−86467(P2009−86467A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258179(P2007−258179)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(507325781)
【出願人】(508105201)