説明

風量安定化方法、風量安定化装置およびそれを備える電子機器

【課題】冷却ファンが筐体内に取り込む外気の風量を安定化する風量安定化方法、風量安定化装置およびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器筐体の外気取り込み口近傍に風量センサ11を設け、外気の流量に対応する風量電圧を求め、予め設定された基準電圧である通常電圧および下限電圧を電圧レベル比較演算装置12で比較演算し、その結果で電源13を制御して冷却ファン14の回転数を制御することにより、筐体の外気取り込み口から筐体内部へ取り込まれる外気の風量を安定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却ファンによる強制空冷技術に関し、特にコンピュータ等の電子機器筐体の内部における発熱体を冷却ファンが取り込む外気により冷却する外気の風量安定化方法、風量安定化装置およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、サーバ、プリンタ等の電子機器又は電気機器(以下、ここではこれらを総称して電子機器という)は、多数の能動電子デバイス、多数の受動電気部品、モータおよび電源装置等により構成され、全体を埃等から保護するために筐体内に収納するのが一般的である。このように構成された電子機器を動作させると、上述の如きデバイス等からの発熱で筐体内部の温度が上昇する。
【0003】
筐体内部の温度が上昇すると、電子機器の構成素子、特に半導体集積回路(IC)等の能動デバイスが破損し又は信頼性が低下する。そこで、冷却ファンを設け、強制的に電子機器の筐体内の暖められた空気を外部に排出すると共に筐体外部の比較的低温の空気を筐体の外気取り込み口から筐体内部へ取り込むことにより発熱体の温度上昇を抑える強制空気冷却(又は空冷)が一般的に行われている。
【0004】
斯かる電子機器の筐体内部の温度を冷却ファンにより強制空冷する温度制御に関する又は関連する従来技術は幾つかの技術文献に開示されている。送風ファンの風量又は風速を風速センサにより検出して、時間的変化率を求めることにより、風速センサの出力特性が変化しても自動的に補正する送風装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、温度センサを使用してフィルタの目詰まりによる冷却ファンの風量の低下を検出するフィルタ目詰検出器が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−21621号公報(第6−7頁、第2図)
【特許文献2】特開昭63−270518号公報(第2頁、第1図、第2図)
【0006】
図5は、一般的な従来の電子機器等の冷却ファンシステムのブロック図である。この冷却ファンシステム100は、冷却ファン101およびコンピュータ回路102により構成されている。冷却ファン101は、電子機器筐体の外気取り込み口から冷たい外気を取り込み、この冷却ファン101を介して筐体内の暖められた空気を筐体外へ排出する。一方、コンピュータ回路102は、筐体内部の温度を検出する温度センサ(図示せず)の検出値が予め設定した値になると、冷却ファン101へ電力を供給して冷却ファン101を回転する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術には、次の如き課題を有する。一般に、筐体の外気取り込み口にはフィルタを設け、埃や異物が筐体内部へ侵入しないようにしている。斯かるフィルタの埃等の付着による汚れ具合を確実に検知できないために、冷却ファンが取り込む風量の制御が困難である。また、フィルタの汚れ等によるマージンを考慮して、冷却ファンの回転数を必要以上に高く設定し、省エネルギー対策が困難である。
【0008】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、斯かる課題を克服又は軽減する風量安定化方法、風量安定化装置およびそれを備える電子機器を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による風量安定化方法、風量安定化装置およびそれを備える電子機器は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)冷却ファンにより筐体の外気取り込み口から取り込まれ、前記筐体内部を冷却する外気の流量を安定化する外気安定化方法において、
前記外気取り込み口から前記筐体の内部へ流入する風量を検知して対応する電圧(風量電圧)を得るステップと、前記風量電圧を予め設定された複数の基準電圧と比較して複数に区分するステップと、前記複数の区分に応じて前記冷却ファンに供給される電源を制御するステップとを備える風量安定化方法。
(2)前記複数の基準電圧は、予め設定された正常動作時の通常電圧および限界時の下限電圧である上記(1)の風量安定化方法。
(3)前記風量電圧が前記下限電圧を下回る状態のとき、アラームを発生するステップを備える上記(1)又は(2)の風量安定化方法。
(4)発熱体を含む電子回路を覆う筐体に冷却ファンを設け、前記発熱体を冷却するため前記筐体の外気取り込み口から取り込まれる外気の流量を安定化する風量安定化装置において、
前記外気取り込み口近傍に配置され前記外気取り込み口から前記筐体内部へ取り込まれる外気の風量に対応する電圧(風量電圧)を出力する風量センサと、該風量センサの風量電圧を予め設定された基準電圧と比較して複数に区分する電圧レベル比較演算手段と、該電圧レベル比較演算手段の比較結果により前記冷却ファンの回転数を制御する電源とを備える風量安定化装置。
(5)前記基準電圧は、正常動作時に対応する通常電圧および限界動作時に対応する下限電圧であり、前記電圧レベル比較演算手段に記憶されている上記(4)の風量安定化装置。
(6)筐体内部に実装されたコンピュータ回路等の本体回路の発熱体を冷却ファンにより前記筐体の外気取り込み口から外気を取り込むことにより冷却する強制空冷型の電子機器において、
前記筐体の外気取り込み口から流入する空気流に対応する電圧(風量電圧)を得る風量センサと、該風量センサが検知した風量電圧を予め設定された複数の基準電圧と比較する電圧レベル比較演算手段と、該電圧レベル比較演算手段の結果に基づき異なる電圧を前記冷却ファンへ供給する電源とを含む風量安定化装置を備える電子機器。
(7)前記筐体の前記外気取り込み口には、外気に含まれる埃や異物を除去するフィルタが設けられている上記(6)の電子機器。
(8)前記電圧レベル比較演算手段は、前記風量電圧が前記予め設定した複数の基準電圧のうち限界電圧を下回るとき、前記本体回路へアラームを発生する上記(6)又は(7)の電子機器。
(9)前記電圧レベル比較演算手段および前記本体回路間にタイマ回路を更に設け、前記本体回路の起動から所定時間の経過前に前記電圧レベル比較演算手段からのアラームを遮断する上記(8)の電子機器。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、次の如き実用上の顕著な効果が得られる。即ち、筐体内へ流入する風量を筐体の内側で測定し、この測定結果に基づき風量を安定化しているので、外気取り込み口およびフィルタの汚れ具合に依存することなく筐体内の風量の安定化が可能である。また、下限電圧を設定しているので、外気取り込み口やフィルタの汚れ具合の限度を検知して、コンピュータ回路にアラームを上げることが可能である。更に、筐体内へ必要以上に外気が流入した場合に、冷却ファンの回転数を抑えることにより、消費電力を抑えることが可能である。
【実施例】
【0012】
以下、本発明による風量安定化方法、風量安定化装置およびそれを備える電子機器の好適実施例の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
先ず、図1は、本発明による風量安定化装置を備える電子機器の好適実施例の構成を示す機能ブロック図である。この風量安定化装置10は、風量センサ11、電圧レベル比較演算装置(電圧レベル比較演算手段)12、電源13および冷却ファン14により構成される。そして、この風量安定化装置10を搭載する電子機器は、その本体回路であり且つ冷却ファン14により取り込まれる外気により冷却される発熱体を含む、例えばコンピュータ回路15を備えている。
【0014】
ここで、風量センサ11は、電子機器筐体(図示せず)内の外気取り込み口(図示せず)付近に配置されており、冷却ファン14が空気取り込み口から取り込む風量を検知して、風量に対して単調増加する電圧(以下、風量電圧という)に変換する。尚、外気取り込み口には、外気中に含まれる埃や異物を除去するフィルタ(図示せず)が設けられている。電圧レベル比較演算装置12は、風量センサ11の風量電圧を、ユーザ設定により予め記憶されている複数の基準電圧である通常電圧および下限電圧と比較する。そして、風量センサ11の風量電圧が通常電圧よりも高い場合には、電源13に対し現在よりも低い回転数を実現する電力を冷却ファン14に供給するよう指示する。一方、風量電圧が下限電圧よりも高く、通常電圧よりも低い場合には、電源13に対して、現在よりも高い回転数を実現する電力を冷却ファン14に供給するように指示する。更に、風量電圧が下限電圧よりも低い場合には、冷却ファン14の回転数を最大にする電力を供給するよう電源13に指示すると共に、コンピュータ回路15に対しアラームを上げる。
【0015】
次に、図2は、図1に示す電圧レベル比較演算装置12の詳細構成を示すブロック図である。電圧レベル比較演算装置12は、第1の比較器121、第2の比較器122および演算器123により構成される。第1の比較器121は、ユーザが設定する通常電圧と風量センサ11から出力される風量電圧を比較する。この比較の結果、風量センサ11の風量電圧が通常電圧より大きければ、H(高)レベルを演算器123へ出力する。反対に、風量電圧が通常電圧より小さければ、L(低)レベルを演算器123へ出力する。
【0016】
一方、第2の比較器122は、ユーザが設定する下限電圧と風量センサ11から出力される風量電圧を比較する。風量センサ11の出力電圧が下限電圧より大きければHレベルを、小さければLレベルを演算器123へ出力する。演算器123は、第1の比較器121からの出力がHレベルならば、電源13に対して冷却ファン14への供給電力を減少するよう指示する。第1の比較器121からの出力がLレベルで、第2の比較器122からの出力がHレベルの場合には、冷却ファン14への供給電力を増加するよう指示する。第2の比較器122からの出力がLレベルの場合には、演算器123は電源13に対して冷却ファン14が許容する最大の電力を供給すると共にコンピュータ回路15に対してアラームを上げる。
【0017】
以上詳細に実施例の構成を述べたが、図1中のコンピュータ回路15は、当業者に周知であり、また本発明とは直接関係しないので、ここではその詳細構成の説明を省略する。
【0018】
次に、図1に示す風量安定化装置10およびそれを備える電子機器の動作を図3に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。先ず、風量センサ11が、筐体内の外気取り込み口付近で、取り込む風量を測定する(ステップS1)。そして、風量センサ11は、測定した風量に対して単調増加する電圧(風量電圧)を出力する。次に、風量電圧レベルを比較して場合分けする(ステップS2)。即ち、(1)風量電圧>通常電圧の場合、(2)風量電圧≧下限電圧且つ風量電圧≦通常電圧の場合および(3)風量電圧<下限電圧の場合に分ける。
【0019】
上述した(1)の場合には、取り込み風量が過剰な状態なので、冷却ファン14の回転数を下げるように電源13へ指示する(ステップS3−1)。(2)の場合には、取り込み風量が不足しており、取り込み口又はフィルタが少し汚れていることが想定されるため、冷却ファン14の回転数を上げるよう電源13に指示する(ステップS3−2)。(3)の場合には、取り込み口又はフィルタの汚れが限度を超えていることが想定されるため、冷却ファン14の回転数を最大とすると共にコンピュータ回路15に対してアラームを上げる(ステップS3−3)。
【0020】
上述したステップS3−1乃至ステップS3−3の後に、この風量安定化装置10を導入しているコンピュータ、プリンタ等の使用を続けるか否かを判断する(ステップS4)。使用を続ける場合(ステップS4:NO)には、上述したステップS1へ戻る。他方、使用を終了する場合(ステップS4:YES)には、処理を終了する。
【0021】
次に、図4を参照して、本発明の他の実施例について説明する。図4は、本発明による風量安定化装置の構成を示す機能ブロック図である。この風量安定化装置40は、風量センサ41、電圧レベル比較演算装置42、電源43、冷却ファン44およびタイマ回路49により構成される。また、この風量安定化装置40を搭載する電子機器は、その本体である例えばコンピュータ回路45を備えている。
【0022】
この風量安定化装置40は、電圧レベル比較演算装置42およびコンピュータ回路45間にタイマ回路49を備えている点で、図1を参照して上述した風量安定化装置10と相違する。
【0023】
図4に示す風量安定化装置40は、上述の如く構成することにより、図1に示す風量安定化装置10に対して、コンピュータ、プリンタ等の電源投入時の動作について更に改善している。即ち、図4において、電圧レベル比較演算装置42およびコンピュータ回路45の間に設けられたタイマ回路49は、コンピュータ回路45の電源をONしたとき、コンピュータ回路45から電源ON信号を受け取る。そして、その時点からユーザ設定の時間後に電圧レベル比較演算装置42とコンピュータ回路45の信号を接続する。換言すると、この設定時間が来るまでは、電圧レベル比較演算装置42とコンピュータ回路45は絶縁される。
【0024】
上述の如く構成することにより、風量安定化装置40では、コンピュータ、プリンタ等の電源投入直後は、アラーム信号がマスクされている。そこで、ユーザがタイマ回路49の時間を適切に設定することにより、電源投入直後に予想される不安定な取り込み風量から生じるアラームを上げないので、動作が一層安定になる。
【0025】
以上、本発明による電子機器、風量安定化方法および装置の好適実施例の構成および動作を詳述した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。例えば、冷却ファンは、筐体の外気を取り込み口近傍に設けても又は空気排出口近傍に設けてもよい。また、冷却ファンは、1個に限定されず、筐体内部の発熱体の個数又は発熱量に応じて複数個併置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による風量安定化装置を備える電子機器の第1実施例の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1中の電圧レベル比較演算装置の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す風量安定化装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明による風量安定化装置を備える電子機器の第2実施例の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】一般的な電子機器の強制空冷装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
10、40 風量安定化装置
11、41 風量センサ
12、42 電圧レベル比較演算手段
13、43 電源
14、44 冷却ファン
15、45 本体回路(コンピュータ回路)
49 タイマ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンにより筐体の外気取り込み口から取り込まれ、前記筐体内部を冷却する外気の流量を安定化する外気安定化方法において、
前記外気取り込み口から前記筐体の内部へ流入する風量を検知して対応する電圧(風量電圧)を得るステップと、前記風量電圧を予め設定された複数の基準電圧と比較して複数に区分するステップと、前記複数の区分に応じて前記冷却ファンに供給される電源を制御するステップとを備えることを特徴とする風量安定化方法。
【請求項2】
前記複数の基準電圧は、予め設定された正常動作時の通常電圧および限界時の下限電圧であることを特徴とする請求項1に記載の風量安定化方法。
【請求項3】
前記風量電圧が前記下限電圧を下回る状態のとき、アラームを発生するステップを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の風量安定化方法。
【請求項4】
発熱体を含む電子回路を覆う筐体に冷却ファンを設け、前記発熱体を冷却するため前記筐体の外気取り込み口から取り込まれる外気の流量を安定化する風量安定化装置において、
前記外気取り込み口近傍に配置され前記外気取り込み口から前記筐体内部へ取り込まれる外気の風量に対応する電圧(風量電圧)を出力する風量センサと、該風量センサの風量電圧を予め設定された基準電圧と比較して複数に区分する電圧レベル比較演算手段と、該電圧レベル比較演算手段の比較結果により前記冷却ファンの回転数を制御する電源とを備えることを特徴とする風量安定化装置。
【請求項5】
前記基準電圧は、正常動作時に対応する通常電圧および限界動作時に対応する下限電圧であり、前記電圧レベル比較演算手段に記憶されていることを特徴とする請求項4に記載の風量安定化装置。
【請求項6】
筐体内部に実装されたコンピュータ回路等の本体回路の発熱体を冷却ファンにより前記筐体の外気取り込み口から外気を取り込むことにより冷却する強制空冷型の電子機器において、
前記筐体の外気取り込み口から流入する空気流に対応する電圧(風量電圧)を得る風量センサと、該風量センサが検知した風量電圧を予め設定された複数の基準電圧と比較する電圧レベル比較演算手段と、該電圧レベル比較演算手段の結果に基づき異なる電圧を前記冷却ファンへ供給する電源とを含む風量安定化装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
前記筐体の前記外気取り込み口には、外気に含まれる埃や異物を除去するフィルタが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記電圧レベル比較演算手段は、前記風量電圧が前記予め設定した複数の基準電圧のうち限界電圧を下回るとき、前記本体回路へアラームを発生することを特徴とする請求項6又は7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記電圧レベル比較演算手段および前記本体回路間にタイマ回路を更に設け、前記本体回路の起動から所定時間の経過前に前記電圧レベル比較演算手段からのアラームを遮断することを特徴とする請求項8に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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