説明

風除け出入り口装置

【課題】 従来、ホテルやビルディングのエントランスホールに設置されていた所謂回転ドアに代わる、新規で安全な風除け出入り口装置を提供する。
【解決手段】 間に中壁1を備え、この中壁1の両側に一対の平行な側壁3、3を有してなる紙面方向に長い一対のトンネル状の入り口及び出口通路5、6と、これら入り口及び出口通路5、6の人の背丈よりも上方に架設され、全体の形状が長円形であり、半円部を夫々入り口及び出口通路の両側に突出させると共に、平行部が夫々入り口及び出口通路の中心線を通るように配設された水平なレール7と、このレール上においてその長さ方向に移動可能に案内されると共に、環状の可撓体を介して一体的に連結された複数の吊下げ器11、11を有し、この吊下げ器の下方にハンガーバー16を介して吊り下げられた透明で柔軟な風除けシート17、18を通路5、6内で循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、風除け出入り口装置(以下単に出入り口装置という)に係り、特に、新規で安全性が高い出入り口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホテルやビルディングのエントランスホールには所謂回転ドアと称せられる風除け出入り口装置が設置されていた。
【0003】
この出入り口装置は、例えば後記特許文献1の図2に示されているように、大きなガラス製の円筒の前後を切欠いて人の出入り口とし、この円筒の中に例えば等角度間隔に配設された3枚の仕切り板6、6を床面に垂直な回転軸の周りで連続的に回転させ、仕切り板6、6の間に人が入り込んで仕切り板の回動に追従しながら入り口2aから室内側の出口2b、或いはその反対方向に移動するものである。
【0004】
上記のように構成された所謂回転ドアは、その構造上常時入り口2aと出口2bの間を仕切り板6、6が塞いでいるので、暖房或いは冷房されているときに建物内の暖気或いは冷気が建物外に漏れることが少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−297795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかして、上記所謂回転ドアは、一度子供が仕切り板とガラス筒との間に挟まれて死亡するという事故があり、それ以降危険だということで事実上使用禁止になっている。
【0007】
そのため、エントランスホールの冷暖房の効きが悪くなっており、安全性の高い出入り口装置の出現が望まれていた。
【0008】
この発明は、安全性の高い新規な出入り口装置を提供し、以て上記した不都合を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、間に中壁を備え、この中壁の両側に一対の平行な側壁を有してなる一対のトンネル状の入り口及び出口通路と、これら入り口及び出口通路の人の背丈よりも上方に架設され、全体の形状が長円形であり、半円部を夫々入り口及び出口通路の両側に突出させると共に、平行部が夫々入り口及び出口通路の中心線を通るように配設された水平なレールと、このレール上においてその長さ方向に移動可能に案内されると共に、環状の可撓体を介して一体的に連結された複数の吊下げ器と、各吊下げ器の下方に一体的に固設された、レールに直角で水平なハンガーバーと、各ハンガーバーに吊り下げられた透明で柔軟なシートであって、その幅が入り口或いは出口通路の幅程度で、下端が床面に届く程度の長さの風除けシートと、レールの半円形の中心を通る鉛直な出力軸を有し、室外側及び/又は室内側に設けられた駆動モータと、上記レールの長円形の幅と同じ直径の案内環、及びこの案内環の中心に関し放射状に配設され、案内環の半径より長い複数の駆動腕を一体的に結合してなる一対の駆動腕ユニットとを有してなり、これら一対の駆動腕ユニットの一方を駆動モータに同軸かつ吊下げ器と同じ高さに装着するとともに、他方を駆動モータ又はアイドル軸と同軸かつ吊下げ器と同じ高さに装着し、上記吊下げ器を連結する可撓体を駆動腕ユニットに巻き掛ける態様で、一方又は両方の駆動モータを一方向に連続的に動かし、駆動モータに装着された駆動腕ユニットの駆動腕の先端部により、レールの半円形部にある吊下げ器を半円形に沿って回動駆動し、以て、風除けシートを長円形に沿って入り口及び出口通路内を循環させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、上記風除けシートをその幅方向において分割し、各分割シートの側端縁部を相互に重合させることにより風除けシートを構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された請求項1に記載の発明による出入り口装置は、1枚の風除けシートに着目すれば、出口通路を通過してその出口から半円を描いて入り口側通路に入り、入り口側通路を今度は反対方向に通過してその出口から出口通路に入る、という動作を繰り返す。
【0012】
風除けシートが半円形を描いてトンネルの入り口又は出口に入ろうとしているときに、その風除けシートに先行して、或いは風除けシートの後を追うようにしてトンネルに入れば、従来の回転ドアより安全に、かつ余裕を持ってトンネル内に入ることができる。
【0013】
また、その構造上入り口側及び出口通路を少なくとも1枚の風除けシートが塞いでいるので、従来の回転ドアと同様にエントランスホールの暖気、或いは冷気を外に漏らすことがない、という所期の効果を奏する。
【0014】
更にまた、請求項2に記載の発明によれば、通路内で風除けシートに追いつかれ、或いは転んだりして風除けシートにまとわりつかれた場合には、シートが分かれて人の体が分割されたシートの間をすり抜ける態様でシートが人体を通過するので、引きずられたり怪我をしたりする恐れが全くない、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施例による入り口装置の線図的一部断面正面図。
【図2】その要部の構成を示す外観斜視図。
【図3】この発明の一実施例による入り口装置の線図的平面図。
【図4】吊下げ器の拡大正面図。
【図5】吊下げ器の拡大外観斜視図。
【図6】図5と同様の吊下げ器の拡大外観斜視図で可撓体で連結された状態を示す。
【図7】移動体の側面図。
【図8】図2と同様の外観斜視図で、駆動腕ユニットを駆動モータに装着した状態を示す。
【図9】駆動腕ユニットの外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
通路の天井部に設けられた半円形のレールに沿って風除けシートが通路内を循環するので、エントランスホール内の暖気又は冷気を外部に漏出させることがないし、また、柔軟な風除けシートにより暖気、冷気の遮断を行うので、通路内の人と接触しても怪我をさせることがないように構成した。
【実施例1】
【0017】
図1において符号1は中壁を示し、この中壁1は、ホテルやビルのエントランスホールに設置された例えば床面2に対する投影が長円形の建植物で、例えばコンクリート製(図2参照)、或いはガラス板を水平投影長円形に成形したもの(図示せず)とする。
【0018】
この中壁1の両側には、中壁との間に人が余裕を持って歩行できる距離を保って、一対の側壁3、3が建植されている。
【0019】
また、要すれば、これらの側壁3、3の上部を天井壁4で覆うことができる。
【0020】
このようにして、中壁1の両側にトンネル状の入り口通路5と出口通路6が形成される。
【0021】
図示の実施例は、入り口装置が上から見て反時計回りに回動するように設定したので、屋外側から見た図1において右側が入り口通路5、左側が出口通路6になるが、これは反対にしても良い。
【0022】
なお、中壁1と側壁3との間にトンネル状の通路を形成するものとしたから、当然のことながら中壁1と側壁3の図1の紙面方向の長さはほぼ同じに設定する。
【0023】
一方、図1乃至図3に示すように、入り口及び出口通路の人の背丈よりも上方には、全体の形状が長円形の水平なレール7が架設されている。
【0024】
このレール7は、図2に示すように、上下方向の幅寸法を有する例えば厚いテープ状の鋼板からなり、半円部を夫々入り口及び出口通路5、6の両側に突出させる(図2参照)と共に、平行部が夫々入り口及び出口通路の中心線を通るように(図1参照)その寸法、形状が設定されている。
【0025】
なお、上記レール7は、図2及び図3に示すように、一端を中壁1の上面に、他端をレール7の内側面に夫々リベット止めされた断面L字形の複数のレール保持アーム8、8を介して、主に中壁1によって支持されている。
【0026】
なお、図2においては、図面を明瞭にするため、一部のレール保持アーム8、8の図示が省略されている。
【0027】
ちなみに、図示の実施例においては、図1及び図4に示すように、通路の天井部のレール7より外側に、図示しない環状の内側天井を支持するため、側壁3の内面に支持された複数の天井保持梁9、9が設けられているが、この内側天井は本発明の必須の構成ではない。
【0028】
他方、図1及び図3に示すように、上記レール7上には複数(図示の実施例では4個)の吊下げ器11、11がレール7上に懸架され、長円形のレールの長さ方向に沿って移動可能に支持、案内されている。
【0029】
この吊下げ器11は、図5に示すように、レール7の長さ方向に沿って配設された断面コ字形の枠体で、夫々車輪13を転動可能に軸支した一対の車輪枠12、12を有する。
【0030】
これ等の車輪枠12、12は、図4及び図5に示すように、レールの長さ方向に沿って連設されており、吊下げ板14を介して一体的に結合されている。
【0031】
この吊下げ板14は、断面略L字形に折り曲げられており、その垂直方向の板材の下端にはレール7に垂直な取付板15が一体に接続されている(図4及び図5参照)。
【0032】
そして、この取付板15には、例えばねじ止めにより、レール7に直角で水平なハンガーバー16が結合されている(図2、図5乃至図7参照)。
【0033】
また、ハンガーバー16には、図1、図2及び図7に示すように、全体を符号17で示す風除けシートがハンガーバー16から垂れ下がるように装着されている。
【0034】
この風除けシート17の材質としては、少し厚手で透明であり、しかも柔軟な材料、たとえば塩化ビニールのシートが好適である。
【0035】
また、この風除けシートの幅は、前記入り口又は出口通路5、6の幅より少し小さく(図1参照)、更にまた、その長さすなわち上下方向の寸法は、図7に示すように、下端が床面との間に少し隙間を保って届く程度に設定されている。
【0036】
なお、図示の実施例では、各風除けシート17は幅方向において分割され、一の分割シート18(図2参照)の側端縁部が隣接する他の分割シート18の側端縁部と少し重合するようにして風除けシート17を構成している。
【0037】
上記のように構成された吊下げ器11から風除けシート17に至る一連の部材は移動体19(図2参照)を構成している。
【0038】
そして、この移動体19の重心は、例えば、レール7の真下にあるように、さらに望ましくは、レール7に直角で一対の車輪13、13の間を通る鉛直面上にあるように設定するものとする。
【0039】
本願発明においては、1台の入り口装置につき複数個(図示の実施例では4個)の移動体19(吊下げ器11)が設けられている。
【0040】
そして、図3に示すように、これ等の吊下げ器11、11は、図6に示すように、ワイア咥え機構21(図5参照)に咥えこまれたワイアや合成樹脂による縒り紐等の環状の可撓体22(図3及び図6参照)によって一体的に連結されている。
【0041】
また、上記4この吊下げ器11、11は、可撓体22の長さ方向において等間隔になるように、更にまた、一の吊下げ器11とこれに隣接する他の吊下げ器
11との間隔は、図3に示すように、入り口及び出口通路5、6の両端開口を同時に風除けシート17、17で閉塞する瞬間があるように設定するものとする。
【0042】
一方、中壁1の一端部には、図2に示すように、レール7の半径の中心を通る鉛直な出力軸を有する駆動モータ23が設けられている。
【0043】
この駆動モータ23は、後述するように、可撓体22を引っ張って風除けシート17、17を入り口及び出口通路5、6内で循環させるものであり、最低1個あれば十分であるが、中壁1の他端部にもう1個設けても良い。
【0044】
上記駆動モータ23の出力軸には、図8に示すように、全体を符号24で示す駆動腕ユニットが装着されている。
【0045】
この駆動腕ユニット24は、図9に示すように、レール7の長円形の幅と同じ直径の案内環25、及びこの案内環25の中心に関し放射状に配設され、案内環の半径より長い複数(図示の実施例では8本)の駆動腕26、26を一体的に結合してなる。
【0046】
本願発明による入り口装置は上記のように構成された駆動腕ユニットの一対を装備していて、これら一対の駆動腕ユニット24、24の一方を駆動モータ23に同軸かつ吊下げ器11と同じ高さに装着している。
【0047】
また、他方の駆動腕ユニット24を中壁1の他端部における駆動モータ又はアイドル軸と同軸かつ吊下げ器と同じ高さに装着する。
【0048】
そして、図8に示すように、前記可撓体22(図6参照)を駆動腕ユニットの案内環25に巻き掛ける態様で、可撓体22を介して4この吊下げユニット11、11を一体的に連結している。
【0049】
上記のように構成されたこの発明による入り口装置は、一方または両方の駆動モータを一方向に連続的に動かし、駆動腕ユニットの駆動腕26の先端部により、レールの半円形部にある吊下げ器11を半円形に沿って回動駆動する(図3参照)。
【0050】
このとき、駆動腕ユニット24における他の駆動腕26の先端部が、案内環25(図9参照)に巻き掛けられた可撓体22が案内環から外れ落ちることを防止する。
【0051】
そして、4枚の風除けシート17、17が入り口及び出口通路5、6を一方向に循環するので、その移動を追いかけるように歩行すれば、入場者は安全にエントランスホールに入場でき、或いは退場ができる。
【0052】
また、上記した構成の入り口装置の構成により、風除けシートの少なくとも1枚が入り口及び出口通路5、6常時閉塞するので、エントランスホール内の暖気又は冷気が外部空間に漏洩することがない。
【符号の説明】
【0053】
1 中壁
2 床面
3 側壁
4 天井壁
5 入り口通路
6 出口通路
7 レール
8 レール保持アーム
9 天井保持梁
11 吊下げ器
12 車輪枠
13 車輪
14 吊下げ板
15 取付板
16 ハンガーバー
17 風除けシート
18 分割シート
19 移動体
21 ワイア咥え機構
22 可撓体
23 駆動モータ
24 駆動腕ユニット
25 案内環
26 駆動腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間に中壁を備え、この中壁の両側に一対の平行な側壁を有してなる一対のトンネル状の入り口及び出口通路と、これら入り口及び出口通路の人の背丈よりも上方に架設され、全体の形状が長円形であり、半円部を夫々入り口及び出口通路の両側に突出させると共に、平行部が夫々入り口及び出口通路の中心線を通るように配設された水平なレールと、このレール上においてその長さ方向に移動可能に案内されると共に、環状の可撓体を介して一体的に連結された複数の吊下げ器と、各吊下げ器の下方に一体的に固設された、レールに直角で水平なハンガーバーと、各ハンガーバーに吊り下げられた透明で柔軟なシートであって、その幅が入り口或いは出口通路の幅程度で、下端が床面に届く程度の長さの風除けシートと、レールの半円形の中心を通る鉛直な出力軸を有し、室外側及び/又は室内側に設けられた駆動モータと、上記レールの長円形の幅と同じ直径の案内環、及びこの案内環の中心に関し放射状に配設され、案内環の半径より長い複数の駆動腕を一体的に結合してなる一対の駆動腕ユニットとを有してなり、これら一対の駆動腕ユニットの一方を駆動モータに同軸かつ吊下げ器と同じ高さに装着するとともに、他方を駆動モータ又はアイドル軸と同軸かつ吊下げ器と同じ高さに装着し、上記吊下げ器を連結する可撓体を駆動腕ユニットに巻き掛ける態様で、一方又は両方の駆動モータを一方向に連続的に動かし、駆動モータに装着された駆動腕ユニットの駆動腕の先端部により、レールの半円形部にある吊下げ器を半円形に沿って回動駆動し、以て、風除けシートを長円形に沿って入り口及び出口通路内を循環させるようにしたことを特徴とする風除け出入り口装置。
【請求項2】
上記風除けシートをその幅方向において分割し、各分割シートの側端縁部を相互に重合させることにより風除けシートを構成したことを特徴とする請求項1記載の風除け出入り口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−168979(P2011−168979A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31667(P2010−31667)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(500394111)株式会社ヨドバシカメラ (2)
【Fターム(参考)】