説明

飛散防止板付き洋式便器

【課題】尿の飛散を防止することができる飛散防止板付き洋式便器を提供する。
【解決手段】便器本体50と、便座20と、蓋部30からなる洋風便座において、便器本体50の上端面と便座20との間に設けられた三日月型の2枚の彎曲した長板を拡張移動する可動式飛散防止板40を装備し、また、便座20先端の内側裏面に便器本体50の上端面に達する凸片壁を設けることにより、尿の飛散の防止、便器本体と便座の間から飛沫を防止することができる飛散防止板付き洋式便器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋式便器に関し、特に、便器本体の上端面と便座との間に三日月型の2枚の長板を便器の側壁方向に拡幅移動させ、または、便座先端の内側裏面に便器本体の上端面に達する凸片壁を設けることにより尿の飛散を防止し、便器本体と便座の間から飛沫の飛散を防止する飛散防止板付き洋式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の便器用の飛散防止具としては、着座して排尿した場合に便器本体と便座との隙間から飛び散るシャワートイレの水や排尿した際の尿が便器本体の外側に飛散するのを防止する為に、隙間を埋める壁体または鍔(つば)が形成されているものが多く提案されている。それらの壁体等は便器本体または便座自体に取付けるものが多く、壁体等を便座裏面等に接着し、汚れたり臭いが拡散するようになった時に取り換えるべく離脱することが可能に形成されているものが多く開発されている。
また、男性用として、洋式便器に向かって立って排尿する場合に、便器本体の両サイドの床への尿の飛散を防止する為に、便座を上げた際に便器本体の上端面と持ち上げられる便座の裏とを連結して両サイドに扇形に開く蛇腹状シートを立ち上げる構造の飛散防止具も提案されている。
【0003】
特に幼児や高齢者には飛び散らないように繊細に気を配って排尿するのは大変難しく、また成人男性が立った状態で排尿した場合の便器までの落差や、女性が着座して排尿した場合にも便器本体や便座や着衣を汚すことが多いのが実情である。便器本体から飛び跳ねて両サイドに飛散し、または便器本体と便座の隙間から床へ飛散した尿は、短時間に悪臭を放つため不潔であり、使用する人に不快感を与える為、清潔さを保つためには頻繁に掃除をする必要が生じている。特に、利用者が多い公共のトイレではその必要性が顕著である。そこで清掃方法が容易で、簡易に便器本体や便器を清潔に保つ便利な飛散防止機能付きの便器本体の開発が要請されている。
【0004】
【特許文献1】実開平02−139984号公報
【特許文献2】実開平05−077373号公報
【特許文献3】特開平11−061938号公報
【特許文献4】特開2006−141949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、洋式便器の便器本体の上端面と便座との間に設けられた三日月型の2枚の彎曲した長板を便器の側壁方向に拡幅移動させることにより尿の飛散を防止することができる飛散防止板付き洋式便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明にかかる飛散防止板付き洋式便器は、便器本体と、便座と、蓋部からなる洋式便器であって、便器本体の上端面と便座との間に、前記便器本体の上端面の湾曲に沿って上端面を覆う幅からなる円環状平板を便器本体の基部の最奥端と便器本体の先端とを結ぶ線で2分割して形成した三日月型の2枚の対向した彎曲長板を便器の側壁方向に拡幅移動可能に係合した可動式飛散防止板を装備した構成である。
また、可動式飛散防止板は、便器本体の上端面の幅より大きく、かつ、便座の幅より小さくおよび/または便座の幅と同一幅に形成されている。
さらに、拡幅移動可能に係合した2枚の彎曲長板からなる可動式飛散防止板は、便器本体の上端面上を便器の中心から側壁方向に便器本体の側壁から外れない幅で2枚が互いに反対方向に拡幅移動する構成である。
【0007】
また、拡幅移動可能に係合した2枚の彎曲長板からなる可動式飛散防止板は、便器本体の上端面上を便器の最奥端となる基部を中心に彎曲長板の先端が便器本体の側壁から外れない幅で扇形に開口移動する構成である。
さらに、飛散防止板付き洋式便器は、便器本体と便座の間から飛沫が飛散することを防止するために便座先端の内側裏面に便器本体の上端面に達する凸片壁を1.5センチから3.0センチの厚さで延設(凸設)した構成でもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る飛散防止板付き洋式便器は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果を奏する。
1.三日月型の2枚の可動式飛散防止板を装備したことにより、飛散防止板を便器本体の側壁方向に移動拡幅することにより、簡単な構造でありながら便器本体の両サイドへの尿の飛散が容易に防止できる。
2.可動式飛散防止板は、便器本体の上端面の幅より大きく、かつ、便座の幅より小さくおよび/または便座の幅と同一幅に形成されており、便座と略同一幅で飛散が防止できるので、床を汚す心配がない。
【0009】
3.可動式飛散防止板を2枚の彎曲長板として、便器本体の上端面上を便器の中心から側壁方向に便器本体の側壁から外れない幅で2枚を互いに反対方向に拡幅移動する構成である為、便器本体の幅と便座とほぼ同一幅の壁ができるので、排尿の飛沫が床に飛散せずにすむ。
4.2枚の彎曲長板からなる可動式飛散防止板を、便器本体の最奥端となる基部を中心に扇形に開口移動することにより、男性が立って排尿する場合に、便器本体の手前部分に便器本体の幅と略同幅の開口部があるので、排尿の方向を上手くコントロールできない小児であっても飛散を防止できる。
【0010】
5.便器に着座して排尿する場合であっても、便座先端の内側裏面に便器本体の上端面に達する凸片壁を1.5センチから3.0センチの厚さで延設(凸設)したことにより、便器本体と便座の間から飛沫が飛散することを防ぐことが可能で、床や着衣を汚すことを回避し、衣服への飛沫の付着を防止する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る飛散防止板付き洋式便器を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る飛散防止板付き洋式便器10は、図1に示すように、便座20と、蓋部30と、便器本体50と、可動式飛散防止板40とからなる。
図2は、本発明に係る可動式飛散防止板40が互いに反対方向に拡幅移動した場合の構成図であり、図3は、本発明に係る可動式飛散防止板40が扇形に開口移動した場合の構成図であり、図4は、便器本体50と可動式飛散防止板40が可動した後の使用時の構成図であり、図5は、本発明に係る便器本体と便座の間から飛沫が飛散することを防止するために設けられた凸片壁60を示す便座を裏面図である。
【0012】
便器は、便器本体50と、便座20と、蓋体30とからなる。
便座20は、セラミック等で形成された便器本体の上端面に装備される円環状の厚みのある部材で断面蒲鉾形であるが、必ずしも円環状である必要はない。 便器本体50は、セラミック等の無機質の素材で形成されるものが多いが、便座20は、着座にした時の温度差を考慮して、熱伝導率を配慮した人工樹脂等の素材が用いられており、ヒータ等の熱源が装備されているもの多く存在する。
蓋体30は、便座の上に装着される便器の上部を覆う円形平板からなる。
便器本体50の形状、便座の形式、蓋体の形状については様々なものが市販されているが、その形状や形態は特定されるものではなく、多様な形状を用いることが出来る。
【0013】
本発明の実施例では便座20は円環形状を使用した場合が図示されているが、U型形状のものでも可動式飛散防止板40は装着可能である。
ただし、本発明の別の実施例で開示している便座の本体裏面に設けられる凸片壁60は円環状の便座に装着する形式が開示されている(図5参照)。U型形状の便座に円環状の凸型壁を装着することも可能であるが、U型の先端の空間に橋渡しをする補助部材を装備する必要がある。
【0014】
可動式飛散防止板40は、便器本体50のセラミック素材からなる円形の上端面52と便座20との間に装備される2枚の三日月型の薄板の彎曲長板からなる。可動式飛散防止板40は、便器本体50の上端面52の湾曲に沿って三日月型に形成される。横幅は、便器本体の上端面52を覆う横幅からなり、円環状平板を半分に分割した三日月型に形成される。分割は、便器本体50の長手方向の中心線で分割しているが、詳細には、便器本体の基部の最奥端と便器の先端とを結ぶ線で2分割している。三日月型の2枚の対向した彎曲長板を基部で連結した構成であり、便器本体50の横壁である側壁54方向に拡幅移動するように移動可能な構造に形成されている。
図面で示す実施例では三日月型の薄板の彎曲長板の先端をやや細目に形成しているが、形状はこれに限定されるものではない。形状および大きさには便器の大きさや形状によって変更可能である。
【0015】
使用しない場合で蓋部30を閉めた状態では、洋式便器全体の外観を損なわないように可動式飛散防止板40が便座20より横にはみ出さない形状であることが望ましい。このため、可動式飛散防止板40の幅は、便器本体50の上端面52の幅より大きく形成され、かつ、便座20の幅より小さくおよび/または便座20の幅と同一幅に形成される。
【0016】
2枚の彎曲長板からなる可動式飛散防止板40は、拡幅移動可能に係合されており、便器本体50の上端面52の上を便器の中心から側壁54の方向に拡幅移動する。移動した状態で便器本体の側壁から外れない程度の幅で移動する構造であり、2枚が互いに反対方向に拡幅移動する構成である。
【0017】
本発明の別の実施例として、可動式の彎曲長板からなる2枚の可動式飛散防止板40は、便器の最奥端となる基部で軸着されており、該軸を中心に回動して扇形に広がる構成である。先の実施例では便器本体50の側壁54方向に平行移動して拡幅する構造であったが、この実施例では、基部を軸に2枚の長板が開いて飛沫の飛散部分を広い範囲でキャッチ出来るようにしている。
広がる範囲は、便器本体の形状によるが、彎曲長板の先端が便器の横幅である側壁に到達する程度、またはこれを外れない範囲に限定される。ただし、拡がる角度は限定されるものではない。
【0018】
凸片壁60は、便座の裏面に下向き方向に延設された凸条であり、便器本体と便座の隙間から飛沫が飛散することを防止するために設けられている。凸片壁60は、便座20の先端部の内側裏面に便器本体50の上端面に達する長さで延設された凸片壁(凸条)であり、これを便器の先端の曲面形状に沿って壁状に一定の幅を持って延設している。その厚さは、図面に示した実施例では、1.5センチから3.0センチの厚さに形成されている。便器本体50の上端面に達していることが必要であるが、適宜に変更可能であり特にこの数値に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る飛散防止板付き洋式便器の全体図。
【図2】本発明に係る可動式飛散防止板が互いに反対方向に拡幅移動した場合の構成図。
【図3】本発明に係る可動式飛散防止板が扇形に開口移動した場合の構成図。
【図4】本発明に係る便器本体と可動式飛散防止板が可動した後の使用時の構成図。
【図5】本発明に係る便器本体と便座の間から飛沫が飛散することを防止するために設けられた凸片壁を示す便座の裏面図。
【符号の説明】
【0020】
10 飛散防止板付き洋式便器
20 便座
30 蓋部
40 可動式飛散防止板
50 便器本体
52 上端面
54 側壁
60 凸片壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、便座と、蓋部からなる洋式便器において、
便器本体の上端面と便座との間に、前記便器本体の上端面の湾曲に沿って上端面を覆う幅からなる円環状平板を便器本体の基部の最奥端と便器本体の先端とを結ぶ線で2分割して形成した三日月型の2枚の対向した彎曲長板を便器の側壁方向に拡幅移動可能に係合した可動式飛散防止板を装備したことを特徴とする飛散防止板付き洋式便器。
【請求項2】
前記可動式飛散防止板は、便器本体の上端面の幅より大きく、かつ、便座の幅より小さくおよび/または便座の幅と同一幅に形成されていることを特徴とする請求項1記載の飛散防止板付き洋式便器。
【請求項3】
前記拡幅移動可能に係合した2枚の彎曲長板からなる可動式飛散防止板は、便器本体の上端面上を便器の中心から側壁方向に便器本体の側壁から外れない幅で2枚が互いに反対方向に拡幅移動することを特徴とする請求項1記載の飛散防止板付き洋式便器。
【請求項4】
前記拡幅移動可能に係合した2枚の彎曲長板からなる可動式飛散防止板は、便器本体の上端面上を便器の最奥端となる基部を中心に彎曲長板の先端が便器本体の側壁から外れない幅で扇形に開口移動することを特徴とする請求項1記載の飛散防止板付き洋式便器。
【請求項5】
前記飛散防止板付き洋式便器は、便器本体と便座の間から飛沫が飛散することを防止するために便座先端の内側裏面に便器本体の上端面に達する凸片壁を1.5センチから3.0センチの厚さで延設(凸設)したことを特徴とする請求項1記載の飛散防止板付き洋式便器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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