説明

飛行計画表示装置

【課題】飛行計画に基づく運航票に代わって、航空機情報と航空機の時間的な情報を表示する飛行計画表示装置を提供する。
【解決手段】管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、それ以外の情報は必要に応じて表示する。表示画面の主画面には、1航空機を1単位とする短冊形領域を表示し、それを時間順に表示する。管制空域には、飛行経路に沿ってフィックス点を設定し、管制空域内の主フィックス点を基準フィックス点として短冊形領域に表示する。短冊形領域は、電子運航票領域と予測状況表示領域とに区分表示し、電子運航票領域には、管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、予測状況表示領域は、時間軸に沿って過去から未来へと実時間で表示し、この予測状況表示領域内のボックスには、航空機の飛行経路に沿って設定した各フィックス点を航空機が通過する通過予定時間順に、フィックス点の名称と通過する時の飛行高度とを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管制業務に使用する飛行計画表示装置に関し、特に、飛行計画に基づいて作成される航空機情報を記載した運航票に代わって、航空機情報と航空機の時間的な情報を表示する飛行計画表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管制空域を飛行する航空機は、予め提出された飛行計画に基づいて飛行するが、通常、管制官の指示によるレーダ・ベクターに従った飛行形態で飛行している。これは、管制間隔を維持し、効率的に航空機を空港へ到着させ、出発させるためである。管制空域では、他の航空機との関係で管制官から高度指示などが発出され、高度を変更することも多い。
【0003】
このように、管制業務に当たっては、10分後、30分後等の管制空域内における将来の状況を予測することは非常に重要である。そのため、管制空域毎に配置されている管制卓では、レーダ管制業務を行う管制官と調整等の業務を行う管制官との2名の管制官が互いに協力して管制業務を行っている。そして、管制卓では、管制官は予め提出された航空機毎の飛行計画に基づいて作成された運航票(図4に示す)とレーダ情報が表示されているレーダ表示画面とを見ながら頭の中で自分の管制空域は勿論のこと、周囲の他の管制空域をも含めた空域の状況を把握しつつ航空機や関係機関等とも連絡を取りながら管制業務を遂行している。
【0004】
図4、図5に示すように、現在、実際に管制業務の現場で使用されている運航票52は、予め提出された飛行計画(ステップ50)を紙に印刷し、一定の長さに切り離して(ステップ51)、航空機毎にテープ状の紙の運航票が作成される。このテープ状の運航票を管制官がホルダに挟み込んで使用している。この運航票52は、管制卓上に時間順に配置され、管制官は運航票52の配置順位を手で動かしながら、管制業務を行っている。
【0005】
一方、レーダ卓上にはレーダ装置が備えられ、そのレーダ表示画面には、管制空域内の航空機の空間的な情報が表示され、監視されているとともに(ステップ53)、各航空機の位置が算出される(ステップ54)。次いで、この算出された三次元の位置情報(レーダ情報)に、予め提出された飛行計画(ステップ50)に基づく航空機情報が付加され(ステップ55)、レーダ表示画面に表示されるとともに(ステップ56)、各航空機の航行状態が予測計算され(ステップ57)、その予測計算結果が表示されている(ステップ58)。
【0006】
管制官59は、レーダ情報が表示されているレーダ表示画面と運航票52とを見ながら管制業務を行っている。管制業務中に航空機や関係機関等との連絡により確認された飛行計画の変更や追加情報が発生すると、管制官は、図4に示す運航票52の余白部分に必要事項を手書きで書き込み、修正を行うととともに、頭の中で管制空域や航空経路の構造、管制運用方式、他の管制空域から自分の管制空域内に入域する航空機の機数、間隔等の情報を認識し(ステップ60)、判断して(ステップ61)、航空機や他の管制空域を担当する管制卓への連絡、指示事項を決定し、処理し(ステップ62)、各航空機に必要な管制指示を発出する(ステップ63)。なお、図5中、破線で示す経路はレーダ卓と管制卓とは電気的には接続されておらず、管制官からレーダ卓へは、システム的な情報の授受はない。従って、ステップ60〜ステップ63迄の情報は、すべて管制官の頭の中の情報であって、必要に応じてレーダ卓に電話、口頭等の手段で伝達されている。
【0007】
管制官59から発出される管制指示の頻度は、1分間当たり7〜8回にも達する場合もあるが、平均すると3回程度であり、その時間は3秒程度である。さらに、管制官59からの管制指示に対するパイロットからの復唱もあり、この時間も含むと管制指示に要する時間は、さらに長くなる。又、空港の増加、拡張等により、さらに多くの航空機が離着陸・飛行するようになると、管制官の管制する航空機数が増加し、認識判断の頻度、発出する管制指示の頻度もさらに多くなり、管制業務が非常に煩雑になる。
【0008】
その上、もう一つの重要な管制業務である隣接する管制空域(セクタ)との間で遂行される管制移管に関する業務も当然増大するため、管制官59の負担はさらに増加する。管制移管業務においては、管制官が手書きで運航票に入力した飛行計画の変更や追加情報も同時に移管されるが、従来はこの運航票を移管する管制官へ直接手渡しで行われている。そのため、移管された管制空域の管制官は、飛行計画の変更や追加情報については、運航票を見ながら飛行計画処理装置端末からキーボード操作入力するとともに、飛行計画の変更や追加情報は、関係機関等にも伝達しなければならない。このように管制官の負担は増加する一方であり、管制業務の遅れ、誤りが生じる等の問題があった。そのため、管制官の負担を軽減するために、又、管制業務の遅れ、誤り等をなくすための何らかの対策が待たれていた。
【0009】
そこで、管制業務の効率化を図るための手段として、現場で使用されている運航票52に記載されている航空機情報や管制官が手書きで記載した情報を電子化して、表示装置に表示して管制業務を行うようにした従来技術として、電子運航票管理システムがある。
これは、図6に示すように、通信制御装置72は、FDP(Flight Data Processing System:飛行計画情報処理システム)、CADIN(Common
Aeronautical Data Interchange Network:航空交通情報システム)、ARTS(Automated Rader Terminal
System:ターミナルレーダ情報処理システム)、SMGCS(Surface Movement Guidance Control System:地上走行誘導管制システム)などの外部システムから得た航空機情報を情報管理装置73に送信する。情報管理装置73では、通信制御装置72から受信した航空機情報から、航空機の到達予定時刻または出発予定時刻、航空機の位置情報、飛行形式等の情報を、管制卓端末装置71に最初に表示させる航空機情報として送信するとともに、この航空機情報と管制情報を基に電子運航票を作成し管理している。又、情報管理装置73は、管制卓端末装置71から転送処理、終了処理が発出された情報を受け取り、更新処理した後、転送先へ送信する。
【0010】
航空機の運航情報と管制情報の変更・追加は、情報管理装置73にオンライン接続されている電子ペン入力部で実行される。管制卓端末装置71は、複数装置から構成されており、いずれの装置も情報管理装置73からの情報と他の管制卓端末装置からの情報で自分の航空機の運航情報と管制情報を更新作成する端末データファイル作成手段710と、この自分の更新された運航情報と管制情報を表示する電子運航票表示部とを備えている。
【0011】
管制卓端末装置71には、電子運航票表示/変更機構711が備えられており、その表示部の表示形式は、予め登録されており、キーワード対応テーブルによりその範囲で任意の項目を任意の順に必要な情報のみを選択表示する機構(ライン表示項目選択機構)となっている。そして、これらの表示項目の選択は、管制官が交通状況などを勘案して選択するように構成されている。
【0012】
そして、新しい運航票は、発生の度毎に管制官席に伝えられ、一行が運航の単位情報となっており、指示により一回毎に表示位置を変えて、上から現在表示中のラインのすぐ上まで、流れ落ちるような(ラインフォール)表示形式で表示している。これは初期表示の位置から垂直座標値を表示毎に順次変えて表示位置を指定するように構成されている。又、キーワード対応の表示項目以外にも関連データが収納されており、端末データファイル作成手段710への電子ペンによる起動入力で、これらの全項目が表示されるように構成されている。
【特許文献1】特開平10−105899号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この電子運航票管理システムでは、現在、実際の管制業務で使用されている紙の運航票、即ち、手渡しで転送されていた運航票52による問題点は多く解決することが出来るが、従来から管制官が運航票52に筆記具で記入していた指示や承認、確認、メモ等の情報は、この電子運航票管理システムでは、手書き情報入力機構713により電子ペンで入力するように構成されている。
【0014】
一方、忙しい管制業務の現場では、管制官が運航票に記載する文字は、管制官独自の略号、略字、殴り書き文字等でなされる。そのため、管制官が電子ペンで入力したこれらの文字も同様であり、この電子運航票管理システムでは、文字認識が不可能であったり、文字認識するのに時間を要する等の問題が発生し、管制業務に支障を来すという大きな問題が発生した。そのため、実際の管制現場でこの電子運航票管理システムを使用するには不適当であった。
【0015】
さらに、電子運航票表示/変更機構711の表示部の表示形式は、従来の紙の運航票に準じた表現で表示されているため、管制業務に当たって非常に重要である10分後、20分後に、航空機はどこにいるか等の管制空域内における航空機の状況予測する手段はなく、従来通り管制官は自分の頭の中で予測している。
【0016】
又、電子運航票表示/変更機構711の表示部の表示形式は、予め登録されており、キーワード対応テーブルにより、その範囲で任意の項目を任意の順に必要な情報のみを選択表示する機構(ライン表示項目選択機構)となっている。そして、これらの表示項目の選択は、管制官が管制空域における航空機の交通状況などを勘案して任意に選択するように構成されているので、表示項目が個々の管制官で異なったものとなり、実際の現場が混乱することとなった。その上、管制移管された管制官は、不必要な情報を削除するとともに、自分にとって必要な項目を再入力しなければならず、余分の手間がり、管制官にさらなる負担をかけることになる等の問題もあった。このように、多くの問題点が発生し、実際の管制現場でこの電子運航票管理システムを使用するには不適当であった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る発明は、飛行計画に基づいて作成された航空機情報を、航空機毎にそれぞれ表示する運航票と管制空域内の航空機の空間的な情報を表示するレーダ装置とにより航空機の管制業務を行う管制装置において、前記運航票に代わって、航空機情報と航空機の時間的な情報とを表示する飛行計画表示装置を設け、この飛行計画表示装置は、少なくとも航空機情報と管制業務遂行中に発生する飛行計画の変更や追加による情報とを入力する入力機能と、飛行計画表示装置の表示画面に、1航空機を1単位とする短冊形領域を表示するとともに、入力した航空機情報と時間的な情報とを短冊形領域に表示する表示機能と、表示画面に表示する航空機情報は、表示画面には管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、管制業務に必要な最小限の航空機情報以外の情報を必要に応じて表示する表示機能とを有する飛行計画表示装置である。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、(3)表示画面を、主画面と副画面とに区分表示するとともに、主画面には管制業務遂行中の各航空機の航空機情報を表示し、副画面にはその他の航空機情報を表示する表示機能を有する飛行計画表示装置である。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項1〜請求項2に記載の発明において、管制空域に飛行経路に沿って設定されているフィックス点を、短冊形領域に表示する表示機能と、短冊形領域を、時間順に前記表示画面のY軸方向に順次表示するとともに、各短冊形領域をラインフォール表示あるいはラインアップ表示する表示機能と、管制業務遂行中の航空機に対応する短冊形領域を主画面に表示する表示機能と、航空機が次の管制空域に移管されるとともに、この移管された管制空域において管制業務遂行中の航空機となったことを確認した時、前の管制空域の短冊形領域を、手動あるいは自動で表示画面から消去する機能を有する飛行計画表示装置である。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の発明において、現在時刻を0とする位置が基準であることを示す基準フィックス点を設定表示する機能を有する飛行計画表示装置である。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の発明において、基準フィックス点を複数設定した場合、主画面を基準フィックス点の数に応じて分割表示する表示機能を有する飛行計画表示装置である。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1、請求項3〜請求項5に記載の発明において、短冊形領域を、電子運航票領域と予測状況表示領域とに区分表示するとともに、電子運航票領域には、管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、予測状況表示領域は、現在時刻を0とする時間軸に沿って過去から未来へと実時間で表示するとともに、この予測状況表示領域内にボックスを表示し、このボックスには、航空機の飛行経路に沿って設定した各フィックス点を、航空機が通過する通過予定時間順に、フィックス点の名称とこのフィックス点を通過する時の飛行高度とを表示する表示機能と、各フィックス点に対応する各ボックスを、時間軸に沿って移動可能に表示する表示機能とを有する飛行計画表示装置である。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、電子運航票領域に、航空機の現在高度とこの航空機が現在上昇中あるいは下降中であることを表示するとともに、航空機が水平飛行中には、上昇中あるいは下降中の表示を消去する機能を有する飛行計画表示装置である。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の発明において、航空機が管制空域内を通過する所要時間により、予測状況表示領域の時間軸の長さを、通過所要時間に応じて増減可能に表示する機能を有する飛行計画表示装置である。
【0025】
請求項9に係る発明は、請求項6〜請求項7に記載の発明において、ポイントアウトの発出及び終了を、自動あるいは手動で短冊形領域に表示するポイントアウト機能を有する飛行計画表示装置である。
【0026】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の発明において、前の管制空域からポイントアウトが発出された時、あるいは次の管制空域にポイントアウトを発出した時、当該航空機の短冊形領域を、設定時間後に自動あるいは手動で消去する機能を有する飛行計画表示装置である。
【0027】
請求項11に係る発明は、請求項6〜請求項7に記載の発明において、ハンドオフ発出及びハンドオフアクセプトの完了を、自動あるいは手動で前記短冊形領域に表示するハンドオフ機能を有する飛行計画表示装置である。
【0028】
請求項12に係る発明は、請求項11記載の発明において、管制官が自分の管制空域から次の管制空域にハンドオフ発出をした時、当該航空機の短冊形領域3aを、設定時間後に自動あるいは手動で消去することが出来る機能を有する飛行計画表示装置である。
【0029】
請求項13に係る発明は、請求項4に記載の発明において、航空機に高度指示が発出された時、この航空機の通過予定のフィックス点に指示高度を入力するとともに、この指示高度に達する迄、その数値を判別可能に表示する機能と、航空機に直行指示が発出された時、この航空機の変更されたフィックス点を指示するとともに、直行先に接続する新しい飛行経路上にフィックス点名を入力する機能と、を有する飛行計画表示装置である。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に係る発明は、上記のように構成したので、表示画面には、航空管制業務に必要な最低限度の情報しか常時表示されていないので、表示画面がシンプルになり、管制官の目の疲労を軽減することが出来るとともに、情報を誤って視認する危険も従来に比べて格段に少なくなり、管制官の負担を大幅に軽減することが出来る。
【0031】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、現在管制中の航空機に関する情報と過去の管制終了機と将来の管制予定機とを一目瞭然に表示画面上で視認することが出来る。
【0032】
請求項3に係る発明は、請求項1〜請求項2に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、請求項1及び請求項2に記載の効果に加えて、管制中の航空機や管制移管された航空機を確実に認識することが出来る。管制官は自分の管制空域にある航空機を確実に認識することが出来る。
【0033】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、上記効果に加えて、すべての航空機について、現在時刻を基準にして将来の状況を予測することが出来る。
【0034】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、基準フィックス点の数に応じて主画面が明確に区分されるから、分割された主画面の情報が混同したり、誤視認されることはない。
【0035】
請求項6に係る発明は、請求項1、請求項3〜請求項5に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、上記効果に加えて、自分の管制空域内のすべての航空機を、現在時刻を0とする時間軸に沿って過去から未来へと実時間で把握確認することが出来る。従って、管制ミス、誤認等の問題は、完全に防止することが出来る。
【0036】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、上記効果に加えて、各航空機について現在時刻及び現在高度における飛行状態を視認することが出来る。
【0037】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、上記効果に加えて、予測状況表示領域の長さから各航空機が管制空域を通過するに要する飛行時間を把握することが出来る。
【0038】
請求項9に係る発明は、請求項6〜請求項7に記載の発明において、さらに上記のように構成したので、上記効果に加えて、短冊形領域の表示状態からポイントアウトの発出及び終了を目視出来る。
【0039】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の発明において、さらに、上記のように構成したので、上記効果に加えて、ポイントアウトの終了状態を、手動化あるいは自動化することが出来る。
【0040】
請求項11に係る発明は、請求項6〜請求項7に記載の発明において、さらに、上記のように構成したので、上記効果に加えて、短冊形領域の表示状態からハンドオフ発出及びハンドオフ完了を目視出来る。
【0041】
請求項12に係る発明は、請求項11に記載の発明において、さらに、上記のように構成したので、上記効果に加えて、ハンドオフ完了の状態を、手動化あるいは自動化することが出来る。
【0042】
請求項13に係る発明は、請求項4に記載の発明において、さらに、上記のように構成したので、上記効果に加えて、航空機に高度指示や直行指示を発出した場合の管制官の入力動作が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
この飛行計画表示装置の表示画面には、管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、管制業務に必要な最小限の航空機情報以外の情報は必要に応じて表示する。表示画面の主画面には、1つの航空機を1単位とする短冊形領域を表示し、この短冊形領域を時間順に表示する。短冊形領域には、管制空域の飛行経路に沿って設定されているフィックス点を表示するとともに、管制空域の主フィックス点は基準フィックス点として表示し、時間軸には、現在時刻を0とする相対的な時間目盛りを過去から未来へと表示する。
【0044】
さらに、詳細には、短冊形領域は、電子運航票領域と予測状況表示領域とに区分表示するとともに、電子運航票領域には、管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、予測状況表示領域は、現在時刻を0とする時間軸に沿って過去から未来へと実時間で表示するとともに、この予測状況表示領域内にボックスを表示し、このボックスには、航空機の飛行経路に沿って設定した各フィックス点を、航空機が通過する通過予定時間順に、フィックス点の名称とこのフィックス点を通過する時の飛行高度とを表示する。各フィックス点に対応する各ボックスは、時間の経過とともに、時間軸に沿って移動可能となっている。
【0045】
航空機が当該管制空域に入域する前の管制空域内の最後のフィックス点に達した時、航空機に対応する短冊形領域を主画面に表示する。航空機が次の管制空域に移管されるとともに、この次の管制空域の最初のフィックス点に達したことを確認した時、前の管制空域の短冊形領域は、手動あるいは自動で表示画面から消去する。
【実施例1】
【0046】
この発明の実施例を、図1〜図3に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明による飛行計画表示装置1の表示画面2の構成図で、大きく分けて主画面3と副画面4とに区分表示されており、主画面3には、1航空機を1単位とする短冊形領域3aが表示されている。図2は、図1に示す表示画面2の主画面3の詳細な説明図で、図2(a)は管制空域20、20a、20b・・・の飛行経路21に沿って設定したフィックス点を示す図で、それぞれフィックス点には、・・・BBB、CCC、DDD、・・・GGG、・・・等のフィックス点名が付され、フィックス点を飛行中の航空機のコールサインが表示されている。図2(b)〜図2(d)は、主画面3に表示されている横長の短冊形領域3aを示し、この短冊形領域3aは、1つの航空機の飛行計画情報を1単位として表示されており、図2(b)は、JL1235便、図2(c)はJL6633便、図2(d)はANA345便を例として、各航空機情報と各航空機がフィックス点を通過する時間的な予測状況を示している。図3はこの発明のシステム構成図である。
【0047】
航空管制業務において必要不可欠な情報は、上述したように、航空機の正確な現在位置と10分後、20分後等の将来時間には、各航空機はどこをどの高度で飛行しているかの正確な予測である。即ち、管制する航空機の空間的な情報と時間的な情報である。現在、実際の管制現場では、空間的な情報は、レーダ卓のレーダ装置から得られ、航空機情報と時間的な情報は、予め提出された飛行計画に基づいて作成され、紙に印刷された運航票52から得られている。従って、管制官はレーダ卓(レーダ装置)からのレーダ情報と管制卓上の運航票52を用いて管制業務を行っている。一方、この発明では、運航票52に代わって、航空機情報と時間的な情報を表示する装置として、飛行計画表示装置が用いられている。なお、この実施例では、ME(Moving Expression of Rout Information)式の飛行計画表示装置が用いられている。
【0048】
この発明による飛行計画表示装置1は、少なくとも航空機情報と管制業務遂行中に発生する飛行計画の変更や追加による情報とを入力する入力機能と、飛行計画表示装置1の表示画面2に、1航空機を1単位とする短冊形領域3aを表示するとともに、入力した航空機情報と時間的な情報とを短冊形領域3aに表示する表示機能とを備えている。まず、飛行計画表示装置1の表示画面2へ表示する各種の表示機能について説明する。
【0049】
図1に示すように、飛行計画表示装置1は、表示画面2には、主画面3と数カ所の副画面4とに区分表示するとともに、主画面3には、管制業務遂行中の各航空機の航空機情報が表示され、副画面4には、その他の航空機情報を表示する表示機能を有している。この実施例の場合には、主画面3には、管制業務を遂行中の各航空機にそれぞれ対応する数の横長の短冊形領域3aが表示されており、この短冊形領域3aは、後述するように、2つの領域(電子運航票領域5と予測状況表示領域6)に区分表示されている。なお、管制業務遂行中の航空機には、管制下機とまもなく管制移管(ハンドオフ)される管制下機を含んでいる。又、短冊形領域3aは、1つの航空機の飛行計画等の情報を表示したものを1単位とする。
【0050】
通常、管制官は、自分の管制空域内では、管制下機は10機程度であるが、表示画面2の主画面3には、この管制下機と、まもなく管制移管されて管制下機との合計数に対応する数の短冊形領域3aが表示される。なお、管制下機を、まもなく管制移管される航空機として表示するタイミングは、管制空域の境界から少なくとも管制移管するに必要な距離として指定した点(例えば、20マイル程度の距離)に達するまでに表示させる方法、あるいは管制空域毎にある決められた時間に表示させる方法等がある。現状では、管制空域や航空機の混み具合等によって違いがあるが、次の管制空域に入域する前に、10マイルないし20マイル程度の点で管制移管が行われている。
副画面4は、管制予定機リスト画面4a、管制終了機リスト画面4b、入力メッセージ/リスト画面4c、インフォメーション画面4d等がある。管制予定機リスト画面4aには、管制予定機の内、未だ主画面3に表示されていない航空機のコールサインと離陸時間(又は到達予定時間)、飛行予定高度等が表示される。入力メッセージ/リスト画面4cには、高度変更等の調整事項に関する情報が表示され、自分の管制卓の副画面4(入力メッセージ/リスト画面4c)から入力すれば、他の管制区域を担当する管制卓の副画面(入力メッセージ/リスト画面4c)へ表示することが出来る。インフォメーション画面4dには、気象情報や到着あるいは出発空港に関する情報等も表示される。
【0051】
又、管制官の負担を軽減するために、飛行計画表示装置1の表示画面2の短冊形領域3aに表示する航空機情報は、常時表示する項目と必要に応じて表示する項目とに分類して表示するように設定して、表示画面2上には必要最小限の情報が表示されるように構成されている。常時表示する項目は、主画面3に表示される。常時表示する項目としては、管制業務に必要な最小限の航空機情報が表示されればよく、例えば、表1に示すように、コールサイン(航空機の便名)、航空機型式、目的空港とETA(Estimated time of arrival)、航空機の速度、高度、上昇あるいは下降中の表示等の項目1〜項目8に示す航空機情報が表示され、副画面4には、管制予定機リスト、管制終了機リスト等の項目1〜項目4に示す項目が表示されるように設定されている。
【0052】
【表1】

【0053】
又、必要に応じて表示する項目としては、飛行中の航空機には必要のない情報で、例えば、表2に示すように、主画面3の電子運航票領域5には、出発空港やポイントアウト情報等が表示され、副画面4には、管制予定機の詳細情報や管制終了機の詳細情報などが表示される。そして、情報の種類によりその表示方法をそれぞれ変え、見落としや間違って認識しないように、又、容易に表示可能にするとともに、表示された情報が不必要に画面に残らないように表示方法が設定されている。
【0054】
例えば、1回目のクリックで表示し、2回目のクリックで消去されるように構成しても良く、あるいは、1回目のクリックで数秒間表示するように構成しても良く、あるいはカーソルを合わせている間だけ表示するように構成しても良く、その表示方法としては、必要な場合のみ表示出来れば如何なる方法でもよい。なお、常時表示項目及び必要に応じて表示する項目は、いずれも表1及び表2に記載されている項目に限定されるものではなく、最終的には、現場の管制官が管制業務を遂行する際の意見を勘案して決定される。
【0055】
【表2】

【0056】
又、図2に示すように、管制空域20(20a、20b、・・・)の飛行経路に沿って設定されているフィックス点及びこの管制空域の主フィックス点を基準フィックス点として短冊形領域3aに表示する表示機能を備えている。管制空域20(20a、20b、・・・)の飛行経路に沿って設定されているフィックス点には、それぞれ名称、例えば、AAA、BBB、・・・EEE等のフィックス点名が付されており、短冊形領域3aに表示されたフィックス点には、このフィックス点名が表示され、主フィックス点には、基準フィックス点であるとの表示がなされている。さらに、短冊形領域3aの時間軸には、現在時刻を0とする相対的な時間目盛りを、過去から未来へと表示する機能を有している。この基準フィックス点(この実施例ではEEE)におけるボックスを目立つように強調した色等で表示するように設定する。なお、基準フィックス点は、複数設定することも可能で、この場合には、主画面3を基準フィックス点の数に応じて分割表示する機能をも有している。
【0057】
さらに、図1に示す短冊形領域3aは、管制業務遂行中の航空機の数に対応する数だけ現用の運航票の配列に似せて、表示画面2(主画面3)のY軸方向下から上に時間順に順次表示されているとともに、各短冊形領域3aはラインフォール表示あるいはラインアップ表示するように設定している。従って、短冊形領域3aが消去すると、その上方に表示されている他の短冊形領域3aが一段ずつフォールダウンして表示される。
【0058】
それぞれの短冊形領域3aが主画面3に表示されるタイミングは、当該航空機が移管する予定の前の管制空域における特定の点に達した時であり、短冊形領域3aは、自動で主画面3に表示するように設定されている。また、それぞれの短冊形領域3aが主画面3から消去されるタイミングは、当該航空機が次の管制空域に移管されるとともに、この移管された次の管制空域において管制業務遂行中の航空機となったことを確認した時であり、短冊形領域3aは、手動あるいは自動で表示画面2から消去するように設定されている。従って、この実施例の場合には、短冊形領域3aが主画面3に表示されるタイミングは、航空機が当該管制卓の管制空域に入域する前の管制空域内の最後のフィックス点に達した時と、入域する管制空域の境界から指定した点(例えば20マイルの点)に達した時の早いほうの時であり、すでに短冊形領域3aが表示されている当該航空機の上側に表示される。短冊形領域3aが主画面3から消去されるタイミングは、次の管制空域に移管したことを確認後、手動あるいは自動で消去される。
【0059】
なお、管制空域におけるフィックス点の設定には何等制約はなく、例えば、各短冊形領域3aの表示時間が大体同じ時間となるように、フィックス点を設定しても良い。短冊形領域3aが消去すると、その上方に表示されている他の短冊形領域が一段ずつフォールダウンするように設定されている。又、基準フィックス点(後述する)が複数必要な場合には、主画面3を分割することも可能である。
【0060】
この実施例の場合には、表示画面2上の短冊形領域3aの左手方向には、常時表示項目を表示する電子運航票領域5が設定され、短冊形領域3aの右手方向には、現在時刻を0とする時間軸に沿って過去から未来へと実時間で表示した予測状況表示領域6が設定されている。電子運航票領域5に表示する項目は、表1に示す常時表示項目のうち、例えば、図1では、航空機のコールサイン「JL5234」、航空機型式「B772」、目的空港「RJTT」、ETA「1455」、飛行速度「320kt」、飛行高度「330」が、航空機情報として表示されている。又、副画面4(入力メッセージ/リスト画面4c)には、各航空機へ管制官が発出したメッセージ等が入力され表示され、副画面4(インフォメーション4d)には、気象情報や到着あるいは出発空港に関する情報等も表示される。
【0061】
飛行計画表示装置1は、短冊形領域3aの予測状況表示領域6には、図2(b)〜図2(d)に示すように、フライトプラン/アサイン高度(指示された高度)等の経路情報が表示される。即ち、飛行経路に沿って設定されたフィックス点の名称、例えば、DDD、EEE等のフィックス点名と、そのフィックス点におけるアサイン高度、例えば、390、390等の数値がそれぞれフィックス点毎に、1つのボックス6a、6b、6c・・・に表示される。そして、このボックス6a、6b、6c・・・が、航空機の通過予定時間順に配置され、現在時刻を0とする時間軸(X軸方向)に沿って過去から未来へと移動するように設定されている。
【0062】
なお、図2(b)〜図2(d)に示すように、飛行高度(現在高度)を示す数値の先頭に、航空機の上昇中↑あるいは下降中↓を示す矢印が表示され、航空機が水平飛行になると、矢印は消去されるように設定されている。又、管制卓が担当する管制空域の大小により、この空域を通過する航空機の最大通過所要時間が異なるので、短冊形領域3aの予測状況表示領域6の時間軸の長さは、増減可能に設定されている。
【0063】
又、フィックス点名とそのフィックス点における飛行高度とは、この実施例の場合には、ボックス6a、6b、・・・に表示されているが、これに限定されるものではなく、ボックスの形状、表示文字の明度、色相、彩度の相違あるいは点滅表示等の方法で表示するように設定しても良い。
【0064】
時間の経過とともに各フィックス点への到達所要時間は減少し、これにつれて各ボックス(フィックス名)6a、6b、・・・は、それぞれ左手方向に移動する。現在時刻を示す0の地点には、航空機の現在位置のボックスが表示される。このように、飛行計画表示装置1の表示画面2から、管制官は各航空機が基準フィックス点に到達するまでの時間と航空機同士の相対的な位置関係を一目で判別することが出来る。
【0065】
次に、管制官により自分の管制空域から次ぎの管制官の管制空域へと管制移管が行われた場合について説明する。管制移管の形態としては、主としてハンドオフ及びポイントアウトがある。なお、基本的には、管制移管に関する情報は、必要に応じて表示すればよい。図2(b)〜図2(d)に示すように、主画面3の表示されている短冊形領域3aの電子運航票領域5には、ハンドオフ発出ボタン32、ポイントアウト発出・受諾ボタン33、消去ボタン31等が配置されている。
【0066】
まず、ハンドオフについて説明する。
この発明の飛行計画表示装置1では、ハンドオフ発出及びハンドオフアクセプトの完了を、自動あるいは手動で短冊形領域3aに表示することが出来るハンドオフ機能と、管制官が自分の管制空域から次の管制官の管制空域にハンドオフ発出をした時、ハンドオフ発出がされた当該航空機の短冊形領域3aを、設定時間後に自動あるいは手動で消去することが出来る機能とを備えている。
【0067】
即ち、この発明の実施例では、管制官が自分の管制空域20から次の管制空域20bへハンドオフを行う場合、ハンドオフ発出ボタン32をクリックすると、ハンドオフ発出がされ、次の管制卓(例えば管制空域20b)のハンドオフ発出ボタンが点滅するとともに、自分の管制卓(例えば、管制空域20)の該当する航空機の短冊形領域3aのハンドオフ発出ボタンが点灯し、電子運航票領域5に表示されているコールサイン(例えば、JL1235、ANA345等)を点滅させるように設定されている。
【0068】
前の管制卓(例えば管制空域20a)の管制官から自分の管制空域20へハンドオフが行われた場合、管制官は自分の管制卓(管制空域20)のハンドオフ発出ボタン32をクリックすることで、ハンドオフ発出がされた当該航空機のハンドオフアクセプトを行う。当該航空機のハンドオフアクセプトによりハンドオフが完了すると、自分の管制卓の電子運航票領域5に表示されているコールサインの背景色が変わり、管制官は自分の管制下に置かれた航空機(管制下機)と認識出来るように設定されている。
【0069】
また、管制官は自分の管制空域20から次の管制空域20bへハンドオフを行う場合、自分の管制卓(管制空域20)のハンドオフ発出ボタン32をクリックすることでハンドオフ発出がされる。次の管制空域の管制官が、当該航空機のハンドオフアクセプトを行うとハンドオフが完了する。ハンドオフが完了すると、次の管制卓(管制空域20b)の記号がハイライトで表示され、当該航空機のコールサインの背景色が変わり、当該航空機が自分の管制下から外れた航空機であると認識出来るように設定されている。そして、ハンドオフを行うことにより自分の管制下から外れた航空機に対応する短冊形領域3aは、手動あるいは自動で主画面3から消去するように設定されている。消去された航空機の情報は、管制終了機リスト4bに表示される。なお、管制終了機リスト4b画面に表示された航空機の情報は、設定した時間後、自動あるいは手動で消去される。
【0070】
なお、この実施例では、ハンドオフ発出及びハンドオフアクセプトは、レーダ卓からも起動及び入力することが出来るように設定されている。例えば、管制官が自分の管制空域20から次ぎの管制空域20bへハンドオフを行う場合、自分のレーダ卓からハンドオフ発出をすると、同様に、ハンドオフ発出ボタン32が点灯し、ハンドオフ完了をすると、次の管制卓(例えば、管制空域20b)の記号がハイライトで表示され、コールサインの背景色が変わるように設定されている。そして、ハンドオフを行うことにより自分の管制下から外れた航空機に対応する短冊形領域3aを、手動で消去する場合には消去ボタン31により、又、自動的に消去する場合には次の管制卓(管制空域20b)の最初のフィックス点に当該航空機が到達した際に、主画面3から消去するように設定されている。
【0071】
次に、ポイントアウトについて説明する。
この発明の飛行計画表示装置1は、ポイントアウトの発出及び終了を、自動あるいは手動で短冊形領域に表示することの出来るポイントアウト機能と、前の管制空域からポイントアウトが発出された時、あるいは次の管制空域にポイントアウトを発出するとともに、当該航空機のハンドオフ完了をした時、当該航空機の短冊形領域を、設定時間後に自動あるいは手動で消去する機能とを備えている。
【0072】
即ち、この発明の実施例では、管制官が自分の管制卓(管制空域20)からポイントアウトを次ぎの管制卓(管制空域20b)に発出した場合、ポイントアウト発出・受諾ボタン33をクリックすると、ポイントアウトが起動され、次の管制卓(管制空域20b)のポイントアウト発出・受諾ボタンが点滅するとともに、自分の管制卓(管制空域20)の該当する航空機の短冊形領域3aのポイントアウト発出・受諾ボタンが点灯し、電子運航票領域5に表示されているコールサイン(例えば、JL1235、ANA345等)を点滅させるように設定されている。このポイントアウトでネグレクトされる管制卓(例えば、管制空域20b)の該当する航空機の短冊形領域のポイントアウト発出・受諾ボタンやレーダ卓の該当する航空機の表示情報が、点滅等で表示することにより、ネグレクトされたことが表示されるように設定されている。
【0073】
ポイントアウトは、当該航空機がネグレクトされた管制卓(例えば管制空域20b)の管制空域を通過して、次の管制卓に当該航空機のハンドオフを行うことにより終了し、又は、ポイントアウト中に再度ポイントアウト発出・受諾ボタンをクリックすることにより終了する。例えば、管制空域20にある航空機が、管制空域20bをかすめ(ネグレクトされる管制空域)、管制空域20dへ飛行する場合について説明する。この場合には、管制空域20の管制官は、次ぎの管制卓(管制空域20b)の管制官に対して、当該航空機のポイントアウトを発出する。管制空域20の管制官からポイントアウトを発出された当該航空機が、ネグレクトされた管制空域20bを通過して、次の管制空域(管制空域20d)に達した時、管制空域20の管制官は、管制空域20dの管制官に対して、前述の方法で当該航空機のハンドオフを行う。すると、自分の管制卓(管制空域20)では、該当する航空機の短冊形領域3aのポイントアウト発出・受諾ボタン33が消灯するとともに、ネグレクトされた管制卓(管制空域20b)では、該当する航空機の短冊形領域のポイントアウト発出・受諾ボタンが消灯し、ポイントアウトが終了する。
【0074】
また、ポイントアウト中に、再度ポイントアウト発出・受諾ボタン33をクリックすると、ポイントアウト発出・受諾ボタンが消灯し、ポイントアウトが終了する。ポイントアウト終了は、レーダ卓からも起動できるように設定されている。管制空域20の管制官が、次の管制空域20dの管制官に対してハンドオフを行うことにより、自分の管制下から外れた航空機に対応する短冊形領域3aや、ネグレクトされた管制空域20bの管制卓では、当該航空機の短冊形領域は、手動あるいは自動で主画面から消去するように設定されている。
【0075】
なお、ポイントアウト発出・受諾ボタン33の代わりに、ポイントアウト発出ボタンとポイントアウト受諾ボタンとの2個のボタンを設けてもよい。この場合には、管制空域20の管制官が、次ぎの管制空域(例えば、管制空域20bの管制官)にポイントアウトを発出した場合には、ポイントアウト発出ボタンをクリックしてポイントアウトを起動し、次の管制卓(管制空域20b)のポイントアウト発出ボタンを点滅させるとともに、自分の管制卓(管制空域20)の該当する航空機の短冊形領域3aのポイントアウト発出ボタンや、電子運航票領域5に表示されているコールサイン(例えば、JL1235、ANA345等)を点滅させ、次の管制卓(管制空域20b)の該当する航空機の短冊形領域の点滅しているポイントアウト発出ボタンをクリックすることにより、ポイントアウト受諾ボタンを点滅させるとともに、自分の管制卓(管制空域20)の該当する航空機の短冊形領域3aのポイントアウト発出ボタンを点灯させて、ポイントアウトを受諾したというように設定してもよい。
【0076】
次いで、ポイントアウトを終了するには、管制官は、前述と同様にハンドオフを行うか、ポイントアウト中に点灯している自分の管制卓(管制空域20)の該当する航空機の短冊形領域3aのポイントアウト発出ボタンをクリックすることにより、次の管制卓(例えば、管制空域20b)の該当する航空機の短冊形領域のポイントアウト受諾ボタンと自分の管制卓(管制空域20)の該当する航空機の短冊形領域3aのポイントアウト発出ボタンを消灯させて終了させるように設定してもよい。
【0077】
次に、飛行計画表示装置1の有する入力機能及び入力した情報を表示する機能について説明する。図3に示すように、管制官59が飛行計画表示装置1に入力する必要のある項目としては、管制官59が発出する高度指示、直行指示がある。
【0078】
そこで、この実施例では、管制官59から高度指示が発出された時、ボックス6a、6b、・・・に表示されている将来通過する予定のフィックス点の高度を示す数値をクリックし、そのまま直接数値を入力すれば、アサイン高度を表示出来るように設定されており、さらに、高度指示された当該航空機が、実際にこのアサイン高度に達する迄、その数値の点滅が続行されるように設定されている。
【0079】
管制官が直行指示を発出する時は、変更されたフィックス点を、例えば、変更されたフィックス点に対応するボックスをクリックする等の手段で、指示するとともに、直行先に接続する新たな飛行経路21上のフィックス点名を該当するボックスに入力する。
【0080】
飛行計画表示装置1の管制予定機リスト画面4aに表示されている管制予定機が、離陸した時は、この管制予定機の離陸時間をクリックしてその情報の更新を行うとともに、アサイン高度も同様に入力する。なお、これらの入力情報は、レーダ卓に送信され、必要な表示がなされる。又、他の関連装置、機関にも送信される。
【0081】
管制移管した航空機やポイントアウトした航空機の短冊形領域やボックス等は、点滅表示等の手段で、明確に表示される。なお、これに限定されるものではなく、短冊形領域やボックスの表示文字の明度、色相、彩度の相違あるいは点滅表示等の方法で表現しても良い。
【0082】
管制官は、管制業務中に航空機や関係機関等との連絡により確認された飛行計画の変更や追加情報が発生すると、図3に示すように、飛行計画表示装置1に必要事項を入力するとともに(ステップ40)、主画面3上の短冊形領域3aの画面に表示されている管制空域における必要最小限の航空機情報、飛行経路上のフィックス点、管制運用方式、他の管制空域から自分の管制空域内に入域する航空機の機数、間隔、各フィックス点における航空機の通過予定時間及び飛行高度等の情報を目で実際に認識し(ステップ41)、判断して(ステップ42)、航空機や他の管制空域を担当する管制卓への連絡、指示事項を決定し、処理し(ステップ43)、各航空機に必要な管制指示を発出することが出来る(ステップ44)。従来は管制官の頭の中にあった情報は、この発明による飛行計画表示装置1では、その表示画面2に表示することが出来るとともに、必要に応じてレーダ卓にも伝送し、あるいは必要な情報をレーダ卓から受領することが出来る。
【0083】
なお、他の管制空域を担当する管制卓への連絡、指示事項等の調整事項に関する情報は、副画面4からも入力することの出来る機能と、この入力した情報を他の管制区域を担当する管制卓の副画面へ伝送する機能とを有している。この実施例の場合には、高度変更等の調整事項に関する情報は、自分の管制卓の副画面4(入力メッセージ/リスト画面4c)から入力すれば、他の管制区域を担当する管制卓の副画面(入力メッセージ/リスト画面4c)へ表示することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明の飛行計画表示装置1は、航空管制装置のサブシステムとして運航票の代わりに、実際の航空管制装置に組み込むことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】この発明の実施例を示すもので、飛行計画表示装置の表示画面の画面構成図である。
【図2】この発明の実施例を示すもので、図1に示す表示画面の主画面の詳細を示す説明図で、図2(a)は管制空域内に設定されている飛行経路のフィックス点を示す図、図2(b)はJL1235便、図2(c)はJL6633便、図2(d)はANA345便を例として、各航空機がフィックス点を通過する時間的な予測状況を示す構成図である。
【図3】この発明の実施例を示すシステム構成図である。
【図4】従来例を示すもので、運航票の平面図である。
【図5】従来例を示すシステム構成図である。
【図6】従来例を示すもので、電子運航票システム構成図である。
【符号の説明】
【0086】
1 飛行計画表示装置
2 飛行計画表示装置の表示画面
3 表示画面2の主画面
3a 短冊形領域
4 表示画面2の副画面
4a 管制予定機リスト画面
4b 管制終了機リスト画面
5 短冊形領域3aの電子運航票領域
6 短冊形領域3aの予測状況表示領域
6a、6b、6c ・・・ ボックス
20、20a、20b・・・ 管制空域
21 飛行経路
AAA、・・・EEE、・・・ フィックス点名

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行計画に基づいて作成された航空機情報を、航空機毎にそれぞれ表示する運航票と、
管制空域内の航空機の空間的な情報を表示するレーダ装置と、
により航空機の管制業務を行う管制装置において、
前記運航票に代わって、前記航空機情報と航空機の時間的な情報とを表示する飛行計画表示装置を設け、
この飛行計画表示装置は、少なくとも前記航空機情報と管制業務遂行中に発生する飛行計画の変更や追加による情報とを入力する入力機能と、
前記飛行計画表示装置の表示画面に、1航空機を1単位とする短冊形領域を表示するとともに、入力した前記航空機情報と前記時間的な情報とを前記短冊形領域に表示する表示機能と、
前記表示画面に表示する前記航空機情報は、前記表示画面には管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、管制業務に必要な最小限の航空機情報以外の情報を必要に応じて表示する表示機能と、を有すること
を特徴とする飛行計画表示装置。
【請求項2】
前記表示画面を、主画面と副画面とに区分表示するとともに、主画面には、管制業務遂行中の各航空機の航空機情報を表示し、副画面にはその他の航空機情報を表示する表示機能を有すること
を特徴とする請求項1に記載の飛行計画表示装置。
【請求項3】
管制空域に飛行経路に沿って設定されているフィックス点を、前記短冊形領域に表示する表示機能と、
前記短冊形領域を、時間順に前記表示画面のY軸方向に順次表示するとともに、前記各短冊形領域をラインフォール表示あるいはラインアップ表示する表示機能と、
管制業務遂行中の航空機に対応する短冊形領域を主画面に表示する表示機能と、
航空機が次の管制空域に移管されるとともに、この移管された管制空域において管制業務遂行中の航空機となったことを確認した時、前の管制空域の短冊形領域を、手動あるいは自動で前記表示画面から消去する機能を有すること
を特徴とする請求項1〜請求項2に記載の飛行計画表示装置。
【請求項4】
管制空域内の主フィックス点を基準フィックス点として前記短冊形領域に表示する機能を有すること
を特徴とする請求項3に記載の飛行計画表示装置。
【請求項5】
前記基準フィックス点を複数設定した場合、前記主画面を基準フィックス点の数に応じて分割表示する表示機能を有すること
を特徴とする請求項3に記載の飛行計画表示装置。
【請求項6】
前記短冊形領域を、電子運航票領域と予測状況表示領域とに区分表示するとともに、前記電子運航票領域には、前記管制業務に必要な最小限の航空機情報を常時表示し、前記予測状況表示領域は、現在時刻を0とする時間軸に沿って過去から未来へと相対的な時間目盛りで表示するとともに、この予測状況表示領域内にボックスを表示し、このボックスには、航空機の飛行経路に沿って設定した各フィックス点を、前記航空機が通過する通過予定時間順に、前記フィックス点の名称とこのフィックス点を通過する時の飛行高度とを表示する表示機能と、
各フィックス点に対応する各ボックスを、前記時間軸に沿って移動可能に表示する表示機能と、を有すること
を特徴とする請求項1、請求項3〜請求項5に記載の飛行計画表示装置。
【請求項7】
前記電子運航票領域に、航空機の現在高度とこの航空機が現在上昇中あるいは下降中であることを表示するとともに、前記航空機が水平飛行中には、前記上昇中あるいは下降中の表示を消去する機能を有すること
を特徴とする請求項6に記載の飛行計画表示装置。
【請求項8】
航空機が管制空域内を通過する所要時間により、前記予測状況表示領域の時間軸の長さを、通過所要時間に応じて増減可能に表示する機能を有すること
を特徴とする請求項6に記載の飛行計画表示装置。
【請求項9】
ポイントアウトの発出及び終了を、自動あるいは手動で前記短冊形領域に表示するポイントアウト機能を有すること
を特徴とする請求項6〜請求項7に記載の飛行計画表示装置。
【請求項10】
前の管制空域からポイントアウトが発出された時、あるいは次の管制空域にポイントアウトを発出した時、当該航空機の短冊形領域を、設定時間後に自動あるいは手動で消去する機能を有すること
を特徴とする請求項9に記載の飛行計画表示装置。
【請求項11】
ハンドオフ発出及びハンドオフアクセプトの完了を、自動あるいは手動で前記短冊形領域に表示するハンドオフ機能を有すること
を特徴とする請求項6〜請求項7に記載の飛行計画表示装置。
【請求項12】
管制官が自分の管制空域から次の管制空域にハンドオフ発出をした時、当該航空機の短冊形領域3aを、設定時間後に自動あるいは手動で消去することが出来る機能と、を有すること
を特徴とする請求項11に記載の飛行計画表示装置。
【請求項13】
航空機に高度指示が発出された時、この航空機の通過予定のフィックス点に前記指示高度を入力するとともに、この指示高度に達する迄、その数値を判別可能に表示する機能と、
航空機に直行指示が発出された時、変更されたフィックス点を指示するとともに、直行先に接続する新しい飛行経路上にフィックス点名を入力する機能と、を有すること
を特徴とする請求項4に記載の飛行計画表示装置。
【請求項14】
他の管制区域の管制官との調整事項の情報を前記副画面へ入力する機能と、
この入力した情報を他の管制区域の副画面へ伝送する機能と、を有すること
を特徴とする請求項2に記載の飛行計画表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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