説明

食事補強剤に使用するための、又は非インシュリン依存性糖尿病、高血圧及び/又は代謝症候群の治療のための薬剤の調製のための、物質

【課題】食事補強剤、又は非インシュリン依存性糖尿病、高血圧及び/
又は代謝症候群の治療のための薬剤の調製に使用するための物質を提供すること。
【解決手段】栄養補助食品での使用、或いは非インシュリン依存性糖尿病、高血
圧及び/又は代謝症候群の治療のための薬剤の構成成分としてのビシクロ[3.2.
1]オクタンの化学構造、又はカウリンの化学構造を含んでなる物質。ビシクロ
[3.2.1]オクタンのみ、又はカウリン構造の独特な化学構造は、血漿グルコー
ス依存性の様式でインシュリンの分泌を高め又は増強する能力を有する、例えば
ステビオール、イソステビオール及びステビオサイドなどの物質を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の詳細な説明)
本発明は、非インシュリン依存性糖尿病、高血圧及び/又は代謝症候群の治療
ための新規薬剤に関する。
糖尿病は、人口の2−4%の罹患率を示す、よく知られた疾患である。非イン
シュリン依存性糖尿病は、40歳以上に最も広く発生する糖尿病の約85%を構
成する。非インシュリン依存性糖尿病の発生は増加しており、世界規模では、2
010年には2億人の患者が予想されている。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、主に心疾患及び脳卒中による死亡率の2−4倍の増加、及び増加し
た罹患率に関連している。
非インシュリン依存性糖尿病は、特にインシュリン耐性、並びに肥満、高血圧
及び異脂肪血症などの心疾患リスク因子、及び当初「代謝症候群」と認識及び命
名された症候群の患者に特別に発症する(Alberti K.G., Zimmet P.Z.;「糖尿
病及びその合併症の定義、診断及び分類」パート1:WHO会議の糖尿病の診断
及び分類に関する臨時レポート。Diabet. Med. 1998 Jul;15(7), p.539-53)。
【0003】
WHOの定義(www.idi.org.au/whoreport.htm)によると、インシュリン耐性
及び/又はグルコース不耐症が次の症状のうちの二つ以上を伴う場合、患者は代
謝症候群である。
− 減少したグルコース耐性又は糖尿病
− インシュリン感受性(広くいきわたった常識である、下位四分の一より低い
グルコース取り込みに相当する高インシュリン血症、正常血糖性症状の下)
− 増加した血圧( 140/90mmHg)
− 増加した血漿トリグリセリド( 1.7mmol/l)及び/又は低HD
Lコレステロール(男性は<0.9mmol/l、女性は<1.0mmol/l

− 肥満症(男性はウェスト/ヒップ比:>0.90,そして女性は>0.85
)及び/又は肥満度指数>30kg/m
− 微量アルブミン尿 (尿中アルブミン排出: 20μg min−1 又はア
ルブミン/クレアチン比 2.0mg/mol)。
【0004】
治療は、罹患率と死亡率を減らすために血糖値、血圧、脂肪及び体重を標準化
することを目的とすべきであることがますます明かになっている。食事療法、運
動そして禁煙することが、最初に始めるべき様式である。しかしながら、薬学的
な治療法を加えることがしばしば必要であるものの、今日まで、代謝症候群の患
者にとって、高血糖、高血圧及び異脂肪血症を同時に攻撃する単一の薬剤が入手
可能ではない。代わって、患者達は、例えば食事に加えて幾つかの異なる薬剤の
組み合わせで治療し得た。この種の治療法は、患者へ適応させ実施することが困
難であり、このような治療法には、医療的な治療を必要とするであろう多くの望
ましくない副作用を結果として生じる可能性がある。
【0005】
結局のところ、代謝症候群の治療のための新規及び併用薬剤、それによって非
インシュリン依存性糖尿病を発症する人数の増加をも防ぐことに関する必要性が
長らく存在している。
そのような治療に使用される現存する経口抗糖尿病薬剤には、古典的なインシ
ュリン分泌性剤であるスルホニル尿酸が含まれる(Lebovitz H.E. 1997.
"The oral hypoglycemic agents". In: Ellenberg and Rifkin's
Diabetes Mellitus. D.J. Porte and R.S. Sherwin, Editors: Appleton
and Lange, p. 761-788)。
これら薬剤は、主に、KATP-感受性チャンネンルの閉鎖によるインシュ
リン産生ベーター細胞上にあるスルホニル尿酸レセプターを刺激することによっ
て作用する。
しかしながら、そのような作用が心臓の筋細胞にも影響を与えるならば、心不
整脈についての危険の高まりがあり得る。
また、当該分野では、血中に存在中のスルホニル尿酸が、その継続する作用に
よって、重傷で生命を脅かす高血糖症を引き起こせることが知られている。
【0006】
動物性タンパク質よりも大豆タンパク質の消費によって、血中コレステロール
が低下することが見出されている(Anderson J.W., Johnstone B.M., Cook-
Newell M.E.:Meta-analysis of the effect of soy protein intake
on serum lipid. N. Engl. J. Med. 1995; 333; p.276-282)。この知見
に加えて、最近の研究では、更に大豆タンパク質及び/又はイソフラボンが内皮機
能を向上させ、病気による組織の変形と血栓形成につながる事象を停止させ得る証
拠が示されている(Anderson J.W., Johnstone B.M., Cook-Newell M.E.:Cook-Newell M.E.:Meta-analysis of the effect of soy protein intake
on serum lipid. N. Engl. J. Med. 1995; 333; p.276-282;Protter
S.M., Soy protein and cardiovascular disease:" The impact of
bioactive components in soy". Nutrition Reviews 1998; 56, p. 231-235)。
【0007】
長年の間、新規の抗糖尿病剤、並びに例えば高血糖及び心機能に対する潜在的
に有害な作用などの上記に記した副作用を有しない治療及び予防治療のための薬
剤の開発が幾つか試みられている。
この目的のために、植物は、新規の抗糖尿病剤となる可能性のある化合物に関
する種々のリソースを提供する。
【0008】
例えば、キク科の草本のメンバーであるステビア・レバウジアナ・ベルトニ(
Stevia rebaudiana Bertoni)の葉の抽出物は、パラグアイとブラジルのインデ
ィアンの間では、長年にわたって糖尿病の治療に使われている(Sakaguchi M.,
Kan P Aspesquisas japonesas com Stevia rebaudiana(Bert) Bertoni e o
estevioside. Cienc. Cultur. 34;p. 235-248, 1982;Oviedo C.A.,
Franciani G., Moreno R., ら. "Action hipoglucemiante de la Stevia
Rebaudiana Bertoni (Kaa-he-e)". Excerpt. Med. 209, p. 92, 1979;Curi
R., Alvarez M., Bazotte R. B., ら. Effect of Stevia rebaudiana on
glucose tolerance in normal adult humans. Braz. J. Med. Biol. Res.,
19 p. 771-774, 1986;Hansson J. R., Oliveira B.H., "Stevioside and
related sweet diterpenoid glycoside". Nat. Prod. Rep. 21 p. 301-309,
1993)。
【0009】
更に、餌を乾燥したステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)の葉で補
強した場合では、抗高血糖性作用がラットに見出されている(Oviedo C.A., Fra
nciani G., Moreno R., ら."Action hipoglucemiante de la Stevia
ebaudiana Bertoni(Kaa-he-e)". Excerpt. Med. 209:92, 1979)。
Curiらは、ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)の葉の抽出物を経
口的に3日間摂取した場合、血漿グルコースの僅かな抑制があることを見出した。
さらには、Oviedoらは、葉から調製したお茶によってヒト血中グルコースの3
5%の減少が生じたことを報告した。
ステビア種の多くが調べられ、ラブダン(Labdane)、クレドラン(clerodane
)、カウレン(kaurene)及びビヤレン(beyerene)を含むことが示された(Han
sson J.R., Oliveira B.H., " Stevioside and related sweet diterpenoid
glycoside". Nat Prod. Rep. 21, p. 301-309, 1993)。葉の中の多くの
他の未同定物質のみならず任意のこれら物質は、ヒトの血中グルコースの減少にお
いて重要な役割を担う。
【0010】
Malaisse W. J. らの研究(Malaisse W.J., Vanonderbergen A.,
Louchami K, Jijakli H. 及びMalaisse-Lagae F., "Effects of
Artificial Sweeteners on Insulin Release and Cationic Fluxes in
Rat Pancreatic Islets", Cell. Signal. Vol 10, No. 10, p. 727-733,
1998)では、単離された正常なラット膵臓島からのインシュリンの遊離への、ス
テビオサイドを含む幾つかの人口甘味料の作用が研究された。この研究では、7
mmol/lのD-グルコースの存在下で、1.0mmol/l濃度のステビオ
サイドがインシュリン産出の有意な増加を引き起こすことが報告された。また、
20mmol/lのD-グルコースの増加によって、コントロールのグループが、
基礎遊離値よりも約16倍高い有意なインシュリン産出の増加を示した。従って、
インシュリン遊離作用が、増加したグルコースレベルによるのか、又はステビオ
シドの存在によるのかは定かではない。糖尿病ではない島細胞が研究されおり、
当該分野に熟練している者は、正常膵臓島細胞を刺激するメカニズムが、その最
適値で機能しないのか、又は糖尿病性の膵臓細胞ではまったく機能しないのかの
いずれであるかを知っており、そしてこの研究では、非インシュリン依存性糖尿
病、高血圧及び/又は代謝症候群におけるステビオシドの利用の可能性に関する
確かな徴候が示されなかった。
【0011】
中国人による研究(Lin Qi-Xian、Cao Hai-Xing、Xie Dong、Li Xing-Ming、
Shang Ting-Lan、Chen Ya-Sen、Ju Rui-Fen、Dong Li-Li、Wang Ye-Wen、
Quian Bao-Gong、"Experiment of Extraction of Stevioside"、Chinese
Journal og Pharmaceuticals 1991, No. 22, p389-390)には、湖南省の
Bingzzhou の起源のステビオサイドの葉からステビオサイドを抽出する方法が
示されている。この論文は抽出物の純度を明らかにしていないが、抽出物中の
ステビオサイドの含量はHPLCを使用して定量された。製造されたステビオサ
イドの錠剤は、明かな理由及び医学的徴候がなく、武漢第二病院の患者へ適用さ
れた。血中グルコース、インシュリン及び/又は血圧に対するステビオシドの影
響に関するデーターは明かにされていない。この錠剤が、予備臨床観察中は糖尿
病及び高血圧に対して効果的であったことが主張されている。しかしながら、血
中グルコース、インシュリン及び/又は血圧に関する全データーの欠如、すなわ
ち試験結果による裏付けの欠如、そしてどの型の糖尿病が治療されたのかに関す
る情報が見当たらないことによって、この研究は支持されるものではなく不確か
な主張としている。
【0012】
葉の中のどの物質が可能性ある抗高血糖性効果を引き起こすのかに関する詳細
な情報は、いまだに確かなものとして明らかにされておらず、どのようなメカニ
ズムで、そしてどの程度まで血漿グルコースが減少するかは明かではない。
上記にて言及した論文及び研究は、作用の最初の発見に関するものであり、葉
の中のどの特定の成分が活性を有する可能性があるのかについては証拠を示して
いない。
【0013】
血圧に対する静脈内ステビオサイドの作用は、自然発生高血圧ラットで研究さ
れた("The Effect of Stevioside on Blood Pressure and Plasma
Catecholamines in Spontaneously Hypertensive Rats", Paul Chan,
De-Yi Xu, Ju-Chi Liu, Yi-Jen, Brian Tomlinson, Wen-Pin Huang,
Juei-Tang Cheng, Life Science, Vol. 63, No. 19, 1998, p. 1679
-1684)。この研究は、200mg/kgのステビオシドの静脈内投与の間、高
血圧作用が最高であったことを示したが、はっきりと報告されていたものの、最
高血圧の減少は僅かだけであったことを示した。観察期間中は、心拍数又は血漿
カテコールアミンのいずれも顕著に変化しなかった。この研究は、高血圧に対し
てステビオサイドを有利に使用できることを示した。
血漿グルカゴンレベルに対する作用の報告は、これまでになされていない。膵
臓の島ホルモンであるグルカゴンは、肝臓のグルコース排出量を増加させ、それ
によって血中グルコースを上昇させることで糖尿病誘発ホルモンとして作用する。
【0014】
本発明者による最近の研究及び試験は、特に、ステビア・レバウジアナ(Stev
ia rebaudiana)の葉に見出された主要な構成成分であり、含量において約10
%まで生じ得るジテルペノイドグリコシドステビオサイドに焦点を当てている(
Hansson J.R., Oliveira B.H., "Stevioside and related sweet
diterpenoid glycoside". Nat. Prod. Rep. 21, p. 301-309, 1993;Bridel
M., Lavielle R., Physiologie Vegetale:"Sur le principe sucre'de
Kaa' he'e(Stevia rebauiana Bertoni):II Les produits d'hydrolyse
diastasique du stevioside, glucose et steviol". Acad. Sci. Paris
192, p. 1123-1125, 1931;Soejarto D.D., Kinghorn A. D., Farnsworth
N. R., Potential sweetening agent of plant origin. III:
"Organoleptic evaluation of Stevia leaf herbarium sample for sweetness" . J. Nat. Prod. 45, p. 590-598, 1983;Mossetting E.,
Nes W.E. Stevioside. II:"The structure of the aglucone" ;J. Org.
Chem. 20, p. 884-899, 1955;Kohda H., Hasai R., Yamasaki K. ら.
"New sweet diterpene glucoside from Stevia rebaudiana".
Phytochemistry 15, p.981-983, 1976)。
【0015】
さらに、その無糖体であるステビオールが、甘味なグリコシド、レバウジオシ
ド(Rebaudioside)A、B、C、D及びEなどのステビオールビオシド(Stevio
lbioside)、そしてDulcoside (ズルコシド)のみならず、ステビア・レバウジ
アナ(Stevia rebaudiana)の葉にも含まれていることが見出されている(Bride
l M., Lavielle R., Physiologie Vegetale:"Sur le principle sucre'de
Kaa' he'e(Stevia rebaudiana Bertoni):II Les produits d'hydrolyse
diastasique du stevioside, glucose et steviol". Acad. Sci. Paris
192, p. 1123-1125, 1931;Soejarto D.D., Kinghorn A.D., Farnsworth
N. R., Potential sweetening agent of plant origin. III:
"Organoleptic evaluation of Stevia leaf herbarium samples for
sweetness". J. Nat. Prod. 45, p. 590-598, 1983;Mossetting E., Nes
W.E. Stevioside. II:"The structure of the aglucone";J. Org. Chem.
20 p. 884-899, 1955;Mossetting E., Nes W.E. Stevioside. II:
"The structuture of the aglucone";J. Org. Chem. 20, p. 884-899,
1955;Kohda H., Hasai R., Yamasaki K. ら. "New sweet diterpene
glucoside from Stevia rebaudiana". Phytochemistry 15, p. 981-983,
1976)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の発明者は、ステビオサイドとステビオールの双方が、ラットへ静脈内
投与すると抗高血糖、グルカゴノスタティック(glucagonostatic)及びインシ
ュリン分泌効果を有し、インビトロでマウスの島からのインシュリン分泌を刺激
する効果を有する。
はっきりと定義されていないが、今日、化学的に安定で、無毒であり、そして
副作用の無い非インシュリン依存性糖尿病の治療のためのスルホニル尿酸の代替
品が入手可能であり、これら発見は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける糖尿病
、高血圧、そして特に代謝症候群の自己制御治療のための改良及び代替薬剤を見
出すための、これら物質の類似体及び誘導体の更なる研究と試験のもとになる。
【0017】
上記にて言及したヒトにおける幾つかの代謝及び機能疾患の後遺症を防ぐ又は
遅らせるために、また、新規で有益な栄養補助食品、或いは予防のための新規の
自己管理が可能な処方箋の無い薬剤を提供することが目的とされている。
本発明の一側面によると、物質に非インシュリン依存性糖尿病の治療に使用す
る薬剤の調製のための請求項1に示した構造式Iのビシクロ[3.2.1]オクタン、
又は請求項2に示したの構造式IIのカウレン(kaurene)構造が含まれる、物
質又は物質の組成物が提供されている。
【0018】
本発明のその他の側面によると、物質に非インシュリン依存性糖尿病及び高血
圧の同時治療に使用する薬剤の調製のための請求項1に示した構造式Iのビシク
ロ[3.2.1]オクタン、又は請求項2に示したの構造式IIのカウレン(kaurene)
構造が含まれる、物質又は物質の組成物が提供されている。
本発明の三番目の側面によると、物質に、代謝症候群の治療に使用する薬剤の
調製のための少なくとも一つの大豆タンパク質、及び少なくとも一つのイソフラ
ボンとの組み合わせである、請求項1に示した構造式Iのビシクロ[3.2.1]オク
タン、又は請求項2に示したの構造式IIのカウレン(kaurene)構造が含まれ
る、物質又は物質の組成物が提供されている。
【0019】
本発明者による慎重な構造化学研究によって、ステビア・レバウジアナ(Stev
ia rebaudiana)の葉から抽出されるインシュリン分泌を刺激する可能性のある
全ての物質には、式Iのビシクロ[3.2.1]オクタンの独特で共通の骨格構造を共
有することを明かしている:
【化1】


このビシクロ[3.2.1]オクタンは、例えばステビオール、イソステビオール及
びステビオサイドに見出すことができる。また、式Iの構造は、グルコソルステ
ビオール(glucosilsteviol)、ギムネマ酸(gymnemic acid)、ステビオールビ
オシド(Steviolbioside)、レバウジオシドA(Rebaudioside A)、レバウジオ
シドB(Rebaudioside B)、レバウジオシドC(Rebaudioside C)、レバウジオ
シドD(Rebaudioside D)、レバウジオシドE(Rebaudioside E)及びDulcosi
de A (ズルコシドA)に認められている。
【0020】
これら全ての物質は、式IIの共通構造をも共有し:
【化2】


それは、kaur-16-en-18-oic acidの基本構造である。
【0021】
式I又はIIのこれら特異的構造は、幾つかの化学物質に認められており、そ
れらは単離したマウス膵臓β-細胞に対して高くて強力なインシュリン刺激作用
を有することが示されていて、そして式I及びIIのこれら構造は、明らかに刺
激作用を引き起こす分子の活性部分である。
この仮説は、最も小さな骨格構造を有するステビオールが、例えばより大きな
骨格構造を有するグリコシドステビオサイドよりもより大量にインシュリン分泌
を刺激することを示した試験の事実によって更に確かめられている。また、本発
明の発明者は、ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)から異なるレバ
ウジオシド(Rebaudioside )を精製することに成功し、臨床前動物研究では、
インシュリン分泌に対する同じ刺激作用が示されている。
【0022】
結果として、このことは、上記にて言及した化合物の類似体、誘導体及び代謝
物のような式I又はIIの構造を含む他の化合物が、代替物として使用できるこ
とを示している。 ラットでの研究と試験では、これら物質の作用を刺激するイ
ンシュリンは、血漿グルコースの濃度に依存することが明らかにされている。
式I又はIIを含む化学構造を含む物質は、血漿グルコース濃度が約6mmo
l/lより低い限りは、インシュリンの放出を引き起こさなかった。6mmol
/lより血漿グルコース濃度が高いと、この化合物の刺激作用は血漿インシュリ
ンの上昇を引き起こし、それは血漿グルコース濃度の急速な抑制結果として引き
起こして、血漿グルコース濃度を正常値レベルに保持される。
【0023】
上記の発見に加えて、本発明者達は、驚くことに、式I又はIIを含む化学構
造から成る物質が、血中のグルカゴン濃度を減少させる能力をも有していること
を見出した。
前記物質のこの特徴的な性質及び特質によって、これら物質は、特に非インシ
ュリン依存性糖尿病(NIDDM)の治療のための薬剤の成分の疑う余地の無い
選択物となる。
【0024】
例えば、静脈投与されたステビオサイドが、正常ラットではなく、NIDDM
ラット(GKラット)の静脈内グルコースに対する血中グルコース応答を阻害す
るという発見は、この事実を支持する。この発見は、新規なのものであり、驚く
べきことに、正常な膵臓島細胞のみを対象とした早期の研究には、予想又は提示
のいずれもなされていない。
本発明に記載のこの物質の独特な作用のさらなる例のように、正常血中グルコ
ース値でのステビオサイドの注入は、ボーラスとして又は定期的な静脈内注入で
注入されたに関わらず、高血糖を少しも引き起こさなかった。
【0025】
僅かに上昇した血漿グルコース濃度、同時血漿グルカゴン減少作用、及び阻害
された化血中グルコース応答によって誘導されるインシュリン分泌刺激作用のた
めに、これら物質は、NIDDM患者の血漿グルコースレベルを正常レベルへ制
御し調節することができる。
グルコース依存性の結果、例えば食後に患者の血中グルコースが増大した後の
ように、この物質は必要な時のみに作用する。これら物質を含む薬剤によって治
療されるNIDDMの患者では高血糖が起こらず、高血糖は防げる。
従って、この物質は、上昇した血漿グルコース濃度においてのみ応答する自己
制御システムを提供する。
【0026】
この物質は、好ましくは、経口投与の薬剤として使用される。経口的に摂取さ
れた場合には、グリコシル化された物質は部分的に代謝されるが、式I又はII
の基本骨格構造は変化せず、上記にて言及した異なる特徴的作用が保持される。
これら物質を含む薬剤による治療は、入手可能であり、今現在はNIDDMの
治療のために使用されている異なる型の薬剤、例えばインシュリン分泌を刺激す
るための薬剤(スルフホニル尿酸又はレパグリンジ(repaglinide))、インシュリ
ン感受性を改善するための薬剤(ビグアニド(biguanides)及びチアゾリジンジ
オン(thiazolidinedione))或いは胃腸の炭水化物吸収を遅らせるための薬剤
(α-グリコシダーゼ阻害剤)の魅力的な代替品を提供する。
【0027】
これら新規物質の潜在力は、最初に、ヒトNIDDM研究でも試験され、本発
明に記載の単一の物質のヒトにおける有益で有利に組み合わされた複合的な作用
が示され、後に本明細書文と実施例に記載される。
上記にて言及のヒトによる試験は、この物質を経口的に投与することでおこな
われるが、本発明の範囲内では、この物質は、静脈、皮下又は筋肉注射用薬物療
法のための薬剤の調製に選択的に使用されることができる。
この物質は、更に、血圧を低下させる効果をもたらす。長期にわたる実験では
、ステビオサイドは、糖尿病のラットにおいて、急に血圧を抑制する。この重要
な発見は、患っている疾患に関連する、又はそれとは別の高血圧を発症している
糖尿病患者にとって有益である。
【0028】
本発明に記載の少なくとも一つの物質が、同じく少なくとも一つの大豆タンパ
ク質を含んでなる薬剤と混合されるか、又は少なくとも一つのイソフラボンと混
合される場合には、前出での定義による代謝症候群の患者の治療のための薬剤の
混合調製物を製造することは可能である。そのような薬剤は、危険なグループに
ある患者の予防的治療に有利に使用され得る。例えば、上記にて言及した基礎組
成物に基づくゆっくりと遊離される薬剤は、代謝症候群の患者に対して都合の良
い治療法を提供する。
【0029】
本発明の発明者は、本発明に記載の物質と少なくとも一つの大豆タンパク質の
組み合わせが、単一の成分の薬剤の相加作用をしのぐ新規で予想外で驚くほどに
相乗効果を有し、それによって代謝症候群の治療上又は予防的治療にとって全く
新規であり非常に重要な薬剤を提供することを示す。
本発明の発明者は、本発明に記載の物質と少なくとも一つの大豆タンパク質の
組み合わせを、ヒトでの研究における栄養補助食品として使用した。この試験の
結果は、後続の実施例に示されているように、そのような組み合わせがII型糖
尿病被験者の心血管の危険マーカーに対して有益な影響を有することをはっきり
と示している。
【0030】
15g/kg体重と同じ投与量のステビオサイドは、マウス、ラット、又はハ
ムスターのいずれにとっても致死的ではなかった(Toskulkao C., Chaturat
L., Temcharoen P., Glinsukon T. "Acute toxicity of stevioside,
a natural sweetener, and its metabolite, steviol, in several
animal species". Drug Chem. Toxiocol. 1997 Feb - May;20(1-2),
p. 31-44)。ラット及びマウスでは、ステビオールのLD50値は、ハムスター
のLD50値が5−6g/kg体重であるのに、15g/kg体重よりも高かった。
ハムスターの数値は、血中尿素の窒素及びクレアチンの増加に相関する近位尿細
管細胞の退化に関連した。ステビオサイドは尿によって排出され(Melis M.S.
"Renal excreation of stevioside in rats". J. Nat. Prod. 1992
May;55(5), p. 688-90)、そして単離した灌流ラット肝臓では代謝されない
(Ishii-Iwamoto E.L., Bracht A. "Stevioside is not metabolised
in the isolated perfused rat liver". Res. Commun. Mol. Pathol.
Pharmacol. 1995 Feb;87(2), p. 167-75)。
【0031】
ステビオサイド及びステビオールは、幾つかのサルモネラ・ティフィムリウム
(Salmonella Typhimurium)株に対して変異性作用を示さなかった(Klongpanichp
ak S., Temcharoen P., Toskulkao C., Apibal S., Glinsukon T.
"Lack of mutagenicity of stevioside and steviol in Salmonella
typhimurium TA 98 and TA 100". J. Med. Assoc. Thai 1997 Sep;80
Suppl. 1, p. 121-128;Suttajit M., Vinitketkaumnuen U., Meevatee U.,
Buddhasulh D. " Mutagenicity and human chromosomal effect of
stevioside, a sweetener from Stevia rebaudiana Bertoni" . Environ
Health Perspect 1993 Oct.;101 Suppl. 3, p.53-56)。その他の研究では、
ステビオサイドには変異原性がないものの、しかしながらステビオールが幾つかの
変異原性試験において投与量に相関するポジティブ応答を産したことが確かめられ
た(Matsui M., Matsui K., Kawasaki Y., Oda Y., Noguchi T.,
Kitagawa Y., Sawada M., Hayashi M., Nohmi T., Yoshihira K.,
Ishidate M., Jr., Sofuni T. " Evaluation of the genotoxicity
of stevioside and steviol using six in vitro and one in vivo
mutagenicity assays". Mutagenesis 1996 Nov., 11(6), p. 573-579)。
【0032】
ステビオサイドは、F344ラットでは発ガン性はなかった(Toyoda K., Mat
sui H., Shoda T., Uneyama C., Takada K., Takahashi M. "Assessment
of the carcinogenicity of stevioside in F344 rats". Food Chem.
Toxicol. 1997 Jun.;35(6), p. 597-603)。2.5g/kg/日と同じ投
与量は、ハムスターの成長又は繁殖に対して影響を与えなかった(Yodyingyuad
V., Bunyawong S. "Effect of stevioside on growth and reproduction".
Hum. Reprood. 1991 Jan.; 6(1), p.158-165)。
本発明者の知識によると、ヒトへの潜在的な毒性作用を示す観察又は報告は公
表されていない。
【0033】
再構成された式IIの構造が本発明の範囲内にありることは当該分野の熟練者
には明かなことであり、そのような再構成は、胃腸路において自然に生じ得る。
再構成は、C16で起こってC15と二重結合を形成し、それによって位置17
での置換のために単結合を開いたままにし得ることを例として言及できる。式I
Iの構造の任意の位置で幾つかの置換が提供できるように、位置18のCOOH
基は、アルコールとの反応のような幾つかの反応のために開いてる。また、種々
のC原子及び構造において、糖類のような他の置換を見込むことができる。
本発明は、以下の実施例及び添付の図によって更に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ステビオール、イソステビオール及びステビオサイドの化学構造を示す。
【図2a】正常なウィスターラットでの、静脈内グルコース耐性試験中の血中グルコースに対する、ステビオサイドの効果を示す。
【図2b】GKラットでの静脈内グルコース耐性試験中の血中グルコースに対する、ステビオサイドの効果を示す。
【図3a】正常なウィスターラットでの、静脈内グルコース耐性試験中のグルコース誘導遊離に対する、ステビオサイドの効果を示す。
【図3b】GKラットでの静脈内グルコース耐性試験中のグルコース誘導遊離に対する、ステビオサイドの効果を示す。
【図4a】単離されたマウス島からのグルコース刺激インシュリン分泌に対する、ステビオサイドの効果を示す。
【図4b】単離されたマウス島からのグルコース刺激インシュリン分泌に対する、ステビオールの効果を示す。
【図5a】GKラットでの静脈内グルコース耐性試験中の血漿グルカゴンレベルに対する、グルコースの静脈内ボーラス注射の効果を示す。
【図5b】GKラットでのグルコース耐性試験中の血漿グルカゴンレベルに対する、グルコース及びステビオサイドの静脈内ボーラス注射の効果を示す。
【図6a】ステビオサイドによるGKラット6週間の治療の間の最高血圧を示す。
【図6b】ステビオサイドによって治療したGKラットの最低血圧を示す。
【図7a】0から16.7mmol/lの範囲のグルコースの存在下における、単離されたマウス島からのインシュリン分泌に対する10−3mmol/lのステビオサイドの効果。
【図7b】0から16.7mmol/lの範囲のグルコースの存在下における、単離されたマウス島からのインシュリン分泌に対する10−6mmol/lのステビールの効果。
【図8a】II型糖尿病の患者に対するステビオサイドの急性効果を示す。
【図8b】II型糖尿病の患者に対するステビオサイドの急性効果を示す。
【図8c】II型糖尿病の患者に対するステビオサイドの急性効果を示す。
【図8d】II型糖尿病の患者に対するステビオサイドの急性効果を示す。
【図9a】糖尿病のGKラットでの、ステビオサイド及び大豆を基礎とする栄養補助食品の組み合わせによる作用の効果を示す。
【図9b】糖尿病のGKラットでの、ステビオサイド及び大豆を基礎とする栄養補助食品の組み合わせによる作用の効果を示す。
【図9c】糖尿病のGKラットでの、ステビオサイド及び大豆を基礎とする栄養補助食品の組み合わせによる作用の効果を示す。
【図9d】糖尿病のGKラットでの、ステビオサイド及び大豆を基礎とする栄養補助食品の組み合わせによる作用の効果を示す。
【図9e】糖尿病のGKラットでの、ステビオサイド及び大豆を基礎とする栄養補助食品の組み合わせによる作用の効果を示す。
【図9f】糖尿病のGKラットでの、ステビオサイド及び大豆を基礎とする栄養補助食品の組み合わせによる作用の効果を示す。
【図9g】糖尿病のGKラットでの、ステビオサイド及び大豆を基礎とする栄養補助食品の組み合わせによる作用の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施例)
以下の実施例では、II型糖尿性Goto-Kakizaki(GK)ラットは、Takeda Chemic
al Ind., Tokyo, Japan 起源のものであり、直接に飼育した。
正常なウィスターラットとNMRIマウスは、Bomholtgard Breeding and Res
earch Centre Ltd., Ry, Denmark より入手可能である。
ラットは、300−350gの体重を、そしてマウスは22−25gの体重で
あった。動物を、無制限の標準的な固形飼料と生水で生存させた。
ステビオサイドは、日本の会社であるWAKO-TriCHEMから得た。
略字IAUCは、曲線下の増加領域を意味する(上が基礎)。
【0036】
実施例1:
式IIの化学式を含む化合物の効果の例のように、ステビオサイドを正常なウ
ィスターラット及びGKラットで試験した。2.0g/グルコースkg体重及び
0.2g/ステビオサイド/kg体重量を0.9%生理的食塩水に溶かし、静脈
注入した。血漿グルコース及びインシュリンのレベルを2時間にわたって測定し
た。
その結果は、figs.2a、2b、3a及び3bに示されていて、○−○シ
リーズ(n=6はウィスター、そしてn=16はGK)はグルコースのみの注入
を示し、●−●シリーズ(n=6はウィスター、そしてn=12はGK)はグル
コースとステビオサイドの混合物の注入を示す。データーは、平均±SEMで示
されている。
【0037】
グルコース負荷の投与後、血漿グルコースがただちに上昇し、血漿インシュリ
ンが急激に上昇した。ステビオサイドをグルコースとともに添加すると、弱まっ
たグルコース応答がGKラットに見出され、有意な減少が既に30分後に観察さ
れた。GKラットでは、ステビオサイドでは、ウィスターラットに比べて、ステ
ビオサイドがインシュリン応答の明白な増加を引き起こした。ステビオサイド誘
導によるインシュリン応答は遅れ、試験の全般にわたって増加した。このインシ
ュリン応答は単相性であった。
II型糖尿病ラットにおいて、ステビオサイドが血中グルコースを減少させる
効果を有するという発見は、ステビオサイド及び類似の化学構造を有する化合物
を、ヒトのNIDDMの治療のための薬剤として使用できることを示している。
【0038】
実施例2:
6−10のNMRIマウスの島を単離し、16.7mmol/l及び10−9
−10−3mol/lステビオサイド又は10−9−10−3mol/lステビ
オールの存在下でインキュベートした。
これら試験の結果は、figs.4a及び4bに示されており、その各カラム
は、単一の島の24のインキュベーションの平均±SEMを表す。fig.4a
の黒棒はステビオサイドが存在することを示し、斜線はステビオサイドが存在し
ないことを示す。
fig.4bの黒棒はステビオールが存在し、斜線はステビオールが存在しな
いことを示す。
図面は、ステビオサイドとステビオールがグルコース刺激によるインシュリン
分泌を増強することができることを示している。さらなる試験は、刺激効果が既
に非常に低い濃度において見出されたことを確かなものにした(0.1nMより
上)。
【0039】
実施例3:
グルコース耐性試験の間、0.2g/kg体重のステビオサイドの静脈内ボー
ラスを、GKラットへ注入した(●−●シリーズ(n=6))。静脈内に0.9
%生理的食塩水を注入されたGKラットを、コントロールとした(○−○(n=
6))。グルコースの2.0g/kg体重をボーラスとしてタイムポイント0分
において投与した。血漿グルカゴン応答は、figs.5a(コントロール)及
び5b(GK)において平均±SEMとして示されている。血漿グルカゴンは、
ステビオサイドで治療したGKラットで抑制された。
【0040】
実施例4:
GKラットを、6週間にわたって、0.025g/kg体重/24時間のステ
ビオサイドで治療した。ステビオサイドは、飲料水で投与した。0.111g/
D-グルコース/kg体重を含む飲料水を摂取したGKラットをコントロールと
した。最高(fig.6a、コントロール:○−○シリーズ、ステビオサイドで
治療:●−●シリーズ)及び最低(fig.6b、コントロール:○−○シリー
ズ、ステビオサイドによる治療●−●シリーズ)血圧を尾部で測定した。
図面は、2週間の治療後に検出可能であった血圧の10−15%の低下を示し
、その後の効果は、研究の期間を通して安定で一定していた。
【0041】
実施例5:
10−3mol/lステビオサイド及び10−6mol/lステビオールの最
高促進分量の影響は、0から16.7mmol/lグルコースの範囲にわたって
NMRIマウス島で研究された。ステビオサイド(fig.7a)及びステビオ
ール(fig.7b)の双方は、8.3mmol/lとそれより高い値でインシ
ュリン分泌を増強し、インシュリン分泌を促進する初期レベルは、3.3mmo
l/lから8.3mmol/lの間のグルコースである。fig.7aの黒棒は
ステビオサイドが存在することを示し、斜線棒はステビオサイドが存在しないこ
とを示す。fig.7bの黒棒はステビオールが存在し、斜線棒はステビオール
が存在しないことを示す。
【0042】
実施例6:
平均年齢が63.6±7.5歳の20名のII型糖尿病患者(6名の女性/1
4名の男性)が無作為化制御二重盲検交差試験(controlled randomised double
blind crossover trial)に参加した。参加者らへは、6週間にわたって大豆タ
ンパク質(50g/日)を、3日間にわたる洗浄によって分離した高レベルのイ
ソフラボン(最低165mg/日)及び子葉繊維(20g/日)又はプラセボ(
カゼイン50g/日)及びセルロース(20g/日)とともに補充した。
この栄養補助食品は顕著に、LDL-コレステロールを10%(p<0.05
)、LDL/HDL比を12%(p<0.05)、ApoB-100を30%(
p<0.01)、トリグリセリドを22%(p<0.05)そしてホモシステイ
ンを14%(p<0.01)減少させた。HDL-コレステロール、因子VII
c、フォン・ヴィレブランド因子、フィブリノーゲン、PAI-1、HbA1c
又は24時間にわたる血圧には変化が観察されなかった。
この結果は、II型糖尿病患者の心血管危険マーカーに対する大豆タンパク質
の栄養補助食品の有益な効果を示す。改善は、正常な脂質値に近い個体にも見ら
れた。大豆産物の消化は、非糖尿病被験者の低脂肪食事の有効性をさらに向上さ
せることが示され、II型糖尿病患者の栄養補助食品は、血中脂質コントロール
のための許容可能で有効な選択肢を提供し得るものであり、これによって薬物療
法を遅らせ、回避さえし得る。
【0043】
実施例7:
平均年齢が65.8±1.6歳、糖尿病の期間が6.0±1.3年、平均肥満
度指数が28.5±1.0、そして糖化ヘモグロビン HbAlcが7.4±0.4パ
ーセントである20名のII型糖尿病患者(4名の女性/8名の男性)を、この
研究に含めた。
この実験は、実験中に二つの試験用の食事を出す、急性で、対の、交差研究で
あった(A:1gのステビオサイドで補った標準的な食事を経口的に与えた;B
:1gのゼラチン(プラセボ)とともに与えられる標準的な食事を経口的に与え
た。試験用の食事の全エネルギー量は1725kJ(タンパク質が16E%、脂
質が30E%、炭水化物54E%))。
血液試料を、試験用食事の消化の30分前、そして240分後に肝前静脈から
取り出した。実験の間、動脈血圧を継続してモニターした。スチューデントの対
応のあるt-検定を、測定されたパラメーターに対するステビオサイドの効果をプ
ラセボと比較するために使用した。データーは、平均±SEMとして与えられる

【0044】
ステビオサイドは、fig.8aに示すように、食後の血中グルコースをプラ
セボ(絶対IAUC 638±55 vs.522±64 mmol/l x2
40分;p<0.02)と比較して18±5%(p<0.004)減少させた。
ステビオサイドは、II型糖尿病患者のインシュリン応答を刺激する傾向があっ
た(インシュリン応答曲線下の領域を増大させる(IAUC)、しかしながら違
いは、統計的な有意性を(p=0.09)に達しなかった(fig.8b)。
ステビオサイドは、プラセボ(348±46 vs.281±33 p=0.
02)と比較して、食後のグルカゴンレベルを顕著に減少させた(fig.8c)。
ステビオサイドは、プラセボ(2208±253 vs.1529±296 p
<0.045)と比較して、食後のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)レベ
ルを顕著に減少させた(fig.8c)。
【0045】
実施例8:
4つの試験用の食餌(A:標準的な炭水化物に富んだ研究室用動物食(アルト
ロミン(Altromin));n=12(Alt).B:ステビオサイドで補強したアル
トロミン(Altromin)(アルトロミン(Altromin)+ステビオサイド);n=1
2;(Alt+Ste).C:大豆と20%アルトロミン(Altromin)を加えたもの;
(Soy).D:大豆と20%アルトロミン(Altromin)とステビオサイドを加え
たもの;n=12;(Soy +Ste))を、成人ラットの4つのグループへ4週間に
わたって投与した。各実験グループは、年齢が9週齢である12匹の雌のGoto-K
akizakiで構成されている。このラットは、飲料水とともにステビオサイド(0
.025g/kg体重/日)を摂取した。実験の第3週の終了時までには、動脈
内カテーテルを頸動脈に埋め込み、それによって実験の第4週の終了時までにお
こなった240分間のブドウ糖負荷試験の間に血液の採取が可能になるようにし
た。2.0g D-グルコース/kg体重のボーラス注入の後に血液試料を採取し
た。グルコース、インシュリン、及びグルカゴンの血漿濃度は、ブドウ糖負荷試
験の間に測定した。ブドウ糖負荷試験の直前に、トリグリセリド及びコレステロ
ールの空腹時レベルを測定した。同時に、最高血圧を非観血式圧計を使用して測
定した。
【0046】
血漿グルコースに対する効果:
下記のfig.8及び表Iに示されているように、ステビオサイドは、アルト
ロミン(Altromin)(p<0.05)と大豆+20%アルトロミン(Altromin)
グループ(Soy)(p<0.001)の双方におけるブドウ糖負荷試験中のグル
コース応答曲線下の増大領域(IAUC)を減少させた。ステビオサイドの相対
効果は、アルトロミン(Altromin)を摂取するグループに比べて、大豆+20%
アルトロミン(Altromin)を摂取するグループにおいてより明白である。アルト
ロミン(Altromin)のグループ(p<0.0001)と比較して、大豆とステビ
オサイドの組み合わせは、相乗的にグルコース応答曲線下の領域を減少させた(
fig9a)。
[血漿グルコースは、Boehringer Mannheim のMPR 3、166 391、
グルコース/GOD-PAP法を使用して測定した]
【0047】
血漿インシュリンに対する影響:
下記のfig9及び表Iに示すように、大豆+ステビオサイド(Soy+Ste)を
摂取するグループは、アルトロミン(Altromin)+ステビオサイドグループ(Al
t+Ste)と比較して、インシュリン応答曲線下の増大領域を減少させた。同時に
生じる血中グルコース応答を考慮すると、これは、大豆がインシュリン感受性を
増加させることを示す。0から240分の全応答曲線を研究すると、ステビオサ
イドは、アルトロミン(Altromin)及び大豆の食餌におけるインシュリン応答を
改善しなかった。しかしながら、両グループでの食餌へのステビオサイドの補強
は、第一段階のインシュリン応答を顕著に改善した−それは、II型糖尿病の特
性として抑制される。大豆+ステビオサイドの組み合わせは、相乗的にインシュ
リン応答の第一段階を改善した(p<0.05)(fig9b)。
[血漿インシュリンは、LIncoのSensitive Rat Insulin RIA, Cat #
SRI-13Kを使用して測定した]
【0048】
血漿グルカゴンに対する効果:
ステビオサイドは、アルトロミン(Altromin)(p<0.003)及び大豆(
p<0.01)を摂取する両グループにおけるブドウ糖負荷試験中の血漿グルカ
ゴン応答曲線下の領域を顕著に減少させた。
[血漿グルカゴンは、LIncoのGlucagon RIA, Cat # GL-32Kを使用して
測定した]
【0049】
血圧に対する効果:
最高血圧の際だって有意な抑制(p<0.05)(表I)は、fig.9dに
示されているように、ステビオサイドのアルトロミン(Altromin)(Δ=−28
mmHg)又は大豆(Δ=−21mmHg)のいずれかとの組み合わせによって
導き出せる。
[血圧は、Techical Scientific Equiment GmbHのTSE Non-Invasive
Blood Pressure Monitoring System を使用して測定した]
【0050】
体重に対する効果:
4つグループの初期体重には、相違がなかった(Fig5)。fig.9eに
示されているように、明らかに、大豆とステビオサイドの組み合わせによって体
重の増加が防がれた。
【0051】
トリグリセリド及びコレステロールに対する効果:
ステビオサイドは、アルトロミン(Altromin)(p<0.05)又は大豆(p
<0.02)の何れかとの組み合わせによって、空腹時トリグリセリドレベルの
有意な抑制を引き起こした(表I)。大豆は、ステビオサイドの補強があっても
又は無くても(各々p<0.05及びp<0.002)、空腹時のトリグリセリ
ドレベルを顕著に減少させた(表I)。大豆との組み合わせで与えられたステビ
オサイドは、アルトロミン(Altromin)(p<0.0001)のみを含む食餌と
比較して、空腹時の全コレステロールレベルを相乗的に減少させた。大豆のみで
も、アルトロミン(Altromin)(p<0.002)のみの場合と比較して全コレ
ステロールレベルを減少させた(fig.9f及びfig.9g)(表I)。
[血漿コレステロールは、RocheのGHOD-PAPを使用して測定した]
【0052】
ステビオサイドは、II型糖尿病に対して有益な効果を発揮する:すなわち血
中グルコースを減少させ、グルカゴンを抑制し、そして第一段階のインシュリン
分泌を改善した。又、この結果は、大豆がインシュリン感受性、代謝症候群の特
性を改善することを示した。ステビオサイドは、大豆が無い場合もある場合の双
方で、目立った血圧減少を発揮した。ステビオサイド及び大豆の組み合わせは、
血中グルコースレベルに対する相乗的な抑制効果を有し、第一段階のインシュリ
ン分泌を増強し、空腹時の血漿トリグリセリド及び全コレステロールを抑制し、
そして大豆とステビオサイドの組み合わせは、体重増加を防ぐと思われる。ステ
ビオサイドと大豆の組み合わせは、代謝症候群の幾つかの特性、すなわちII型
糖尿病、高血圧、異脂肪血症、そして肥満の効果的治療法の可能性を有すると思
われる。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1) 薬剤として構造式I:
【化3】


のビシクロ[3.2.1]オクタンを含む物質。
(項目2) 該物質が、さらなる二重環式をさらに含み、構造式II:
【化4】


を持つカウレン構造の基本化学骨格を形成する、項目1に記載の物質。
(項目3) 該ビシクロ[3.2.1]オクタンがインシュリンの分泌を促進し又は
増強する能力を持つ物質を提供する項目1に記載の物質。
(項目4) 該構造式IIを持つ化学構造がインシュリンの分泌を促進し又は
増強する能力を持つ物質を提供する項目1に記載の物質。
(項目5) 該物質が植物原料から単離される項目1〜4のいずれか一項に記載の物質。
(項目6) 非インシュリン依存性糖尿病、高血圧症、及び/又は代謝症候
群の治療用薬剤の製造のための、構造式I:
【化5】


のビシクロ[3.2.1]オクタンを含む物質の使用。
(項目7) 該物質が、さらなる二重環式をさらに含み、構造式II:
【化6】


を持つカウレン構造の基本化学骨格を形成する、項目6に記載の物質の使用。
(項目8) 該物質がステビオール、イソステビオール、グルコシルステビ
オール、ギムネマ酸、ステビオールビオシド、ステビオサイド、レバウジオシド
A、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシド
E又はズルコシドA、それらの製薬的に受容可能な類似体又はそれらの製薬的に
受容可能な誘導体からなる群から選択される、項目6または項目7のいずれか一項に記載の物質の使用。
(項目9) インシュリン分泌の刺激が6mmol/l又はそれ以上のプラ
ズマグルコース濃度の存在によって開始される、非インシュリン依存性糖尿病に冒され
ている哺乳類において、インシュリン分泌を刺激するための薬剤の製造のための
項目6、項目7または項目8のいずれか一項に記載の物質の使用。
(項目10) 血中のグルカゴン濃度を減少させるための薬剤の製造のための
項目6から9のいずれか一項に記載の物質の使用。
(項目11) 血圧を低下させるための薬剤の製造のための項目6から9の
いずれか一項に記載の物質の使用。
(項目12) 薬剤として項目1から5のいずれか一項に記載の物質を少な
くとも1つ含む組成物。
(項目13) 非インシュリン依存性糖尿病、高血圧症、及び/又は代謝症
候群の治療用薬剤の製造のための項目12に記載の組成物の使用。
(項目14) 少なくとも1つの大豆タンパク質のみと組合わせて、又は少
なくとも1つのイソフラボンと組合わせて、項目1から5のいずれか一項に記
載の物質の少なくとも1つを含む組成物。
(項目15) 薬剤の製造のための、少なくとも1つの大豆タンパク質のみ
と組合わせた、又は少なくとも1つのイソフラボンと組合わせた項目14に記
載の組成物の使用。
(項目16) 非インシュリン依存性糖尿病、高血圧症、及び/又は代謝症
候群の治療用薬剤の製造のための項目14に記載の組成物の使用。
(項目17) 肥満、過体重又は異脂肪血症の治療用薬剤の製造のための請
求項14に記載の組成物の使用。
(項目18) 栄養補助食品における使用のための、構造式I:
【化7】


のビシクロ[3.2.1]オクタンを含む物質の使用。
(項目19) 該物質が、さらなる二重環式をさらに含み、構造式II:
【化8】


を持つカウレン構造の基本化学骨格を形成する、項目18に記載の物質の使用。
(項目20) 栄養補助食品が少なくとも1つの大豆タンパク質及び/又は
少なくとも1つのイソフラボンをさらに含む項目18又は19に記載の物質。
(項目21) 該物質が植物原料から単離される項目18又は19に記載の物質。
(項目22) 該物質が、ステビオール、イソステビオール、グルコシルス
テビオール、ギムネマ酸、ステビオールビオシド、ステビオサイド、レバウジオ
シドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオ
シドE又はズルコシドA、それらの製薬的に受容可能な類似体又はそれらの製薬
的に受容可能な誘導体から構成される群から選択される、栄養補助食品における
項目18から21のいずれか一項に記載の物質の使用。
(項目23) 非インシュリン依存的糖尿病、高血圧、異脂肪血症、肥満及
び/又は代謝症候群の治療のための経口的に投与される薬剤の調製における使用
のための、前述の項目のいずれかに記載の物質又は組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図8c】
image rotate

【図8d】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate

【図9c】
image rotate

【図9d】
image rotate

【図9e】
image rotate

【図9f】
image rotate

【図9g】
image rotate


【公開番号】特開2012−153721(P2012−153721A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−112329(P2012−112329)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2001−556812(P2001−556812)の分割
【原出願日】平成13年2月1日(2001.2.1)
【出願人】(502281323)
【Fターム(参考)】