説明

食品および飲料

【課題】レトロウィルス(ヒト免疫不全ウィルス、ヒトT細胞白血病ウィルスなど)に存在し、RNAをDNAに変換する逆転写酵素の阻害活性を有する食品および飲料の提供。
【解決手段】ニレ科ウルムス・ホランディカ(Ulmus hollandica)に属する特定のニレ(ウェガタア、コメリン、グロネフェト、ベルギカ、クルシウス、コルメラ、ドドエンスおよびホメステッド)の花部またはその抽出物を含有する食品または飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレの花部に由来する逆転写酵素阻害のために用いられるものである旨の表示を付した食品または飲料に関する。より詳細には、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレの花部の粉末または抽出物を含む、逆転写酵素阻害のために用いられるものである旨の表示を付した食品または飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome,AIDS)やヒト成人T細胞白血病(human adult T cell leukemia,HALT)が世界的に広まり、これらの予防法や治療法の確立が急務とされている。
【0003】
後天性免疫不全症候群はヒト免疫不全ウィルス(human immunodeficiency virus,HIV)によって発症し、ヒト成人T細胞白血病はヒトT細胞白血病ウィルス(human T cell leukemia virus)によって発症することが知られている。これらのウィルスは、RNAをDNAに変換する逆転写酵素を有することを特徴とするレトロウィルスである。
【0004】
このため、これらのレトロウィルスに存在する逆転写酵素の活性を阻害することによって、ウィルスによるAIDS等の発症を防止する研究が種々なされてきた。その結果、今日までに、逆転写酵素阻害活性を有するさまざまな物質が開発されている。例えば、アジドチミジン、ジデオキシシチジン、ジデオキシノシンが逆転写酵素阻害活性を有するAIDS治療薬として認可されている。しかしながら、これらの治療薬は製造コストが高く、副作用が強いという問題がある。
これに対処するために、自然界に豊富に存在する植物から副作用の小さい逆転写酵素阻害活性成分を安価に取得する試みがなされている。例えば、特許文献1には、ハルニレの花部を原料として逆転写酵素阻害剤を調製することが記載されている。
【特許文献1】国際公開第95/19782号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハルニレの花部から調製した逆転写酵素阻害剤は、安全性は高いものの、逆転写酵素阻害活性は必ずしも十分でない。このため、実用化のためにはなお改善の余地がある。そこで、本発明者らは、活性が一段と高い植物由来の逆転写酵素阻害剤を開発し、それを含有する食品および飲料を提供することを目的として鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、多種多様のニレについて逆転写酵素阻害活性を検討したところ、特定のニレの花部に予期せぬ顕著な逆転写酵素阻害活性があることを偶然に見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレの花部またはその抽出物を含むことを特徴とする食品および飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の食品および飲料に含まれる活性成分は、従来知られているハルニレ由来の逆転写酵素阻害剤に比べて顕著に高い活性を示す。また、本発明の食品および飲料に含まれる活性成分は、毒性が低いことから、少量で強い活性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において原料として使用する植物種は、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するものであればその種類は制限されない。
ウルムスホランディカは、ウルムスカルピニフォラ(Ulmus carpinifolla)とウルムスグラブラ(Ulmus glabra)の交雑品種を含むものであり、比較的大型のものが多い。また、小枝表面が平滑であり、翼片の中央に実がつかないのが一般的である。ウルムスホランディカは、欧州において街路樹や公園樹として植えられており、園芸品種もある。
【0009】
ウルムスホランディカに属する具体的な植物種として、ウェガタア(Vegeta)、コメリン(Commelin)、グロネフェト(Groenveid)、ベルギカ(Belgica)、クルシウス(Clusius)、コルメラ(Columella)、ドドエンス(Dodoens)およびホメステッド(Homestead)をはじめとするニレを例示することができる。
【0010】
ウェガタア(Vegeta)は、複数の主枝からなり、非常に頑丈なニレである。若木の主枝は斜めに伸びようとするが、生長するにつれて横に広がって垂れてくるのが一般的である。このため、枝はまとまりがなく勝手な方向に伸びているものが多い。幹には長い裂けめが多く見受けられ、灰色をしている。ウェガタア(Vegeta)の葉は、後述するベルギカ(Belgica)の葉よりも大きく、コメリン(Commelin)の葉より平たい。葉の根元は幅広であり、形状は逆卵型や楕円形など様々である。また、芽は一般に大きくて光沢のある赤茶色をしている。ウェガタア(Vegeta)には、ハンティンドン(Huntingdon)ニレも含まれる。
【0011】
コメリン(Commelin)は、樹冠が開いた頑丈なニレである。幹はやや螺旋状になりながら比較的まっすぐに伸びているものが多い。ウェガタア(Vegeta)に比べると枝はまばらで細い。枝の色は赤味を帯びた茶色であるのが一般的である。樹冠は下から透けて見えることが多い。また、葉は薄緑色で小さく、葉脈は明るい色を呈しているのが一般的である。葉序はまばらであり、ウェガタア(Vegeta)よりもかなり後に落葉する。葉は楕円形で先端が短くて尖っているものが多い。コメリン(Commelin)は、一般に風に強くて落葉が遅い。
【0012】
グロネフェト(Groenveid)は、大型で風に強いニレである。樹高は約15〜20mで頂点が複数に分かれており、樹冠が細くて整った形をしているのが一般的である。葉は小さくて非常に密であり、濃緑色をしているが秋には完全に黄色になる。葉の裏面には産毛があり、少し鈍い色をしている。生長が遅いために、花と実が比較的多くつく。このため、本発明で必要な花部を1本のニレから多量に取得することができるという利点がある。
【0013】
クルシウス(Clusius)は、形が整った樹冠を有しており、風に強い特徴を有するニレである。コルメラ(Columella)は、樹体が小さなニレである。ドドエンス(Dodoens)は、葉が艶のある濃緑色であって、太枝が上に伸びている頑丈なニレである。ホメステッド(Homestead)は、米国において栽培されているニレである。ドドエンス(Dodoens)とホメステッド(Homestead)は、ともにウェガタア(Vegeta)に似ている点が多い。
【0014】
本発明で使用するウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)の中には、ウルムスカルピニフォラ(Ulmus carpinifolla)とウルムスグラブラ(Ulmus glabra)の交雑品種が含まれる。
ウルムスカルピニフォラ(Ulmus carpinifolla)は、樹高が約25〜30mで、幅広で楕円状の樹形をしているのが一般的である。樹齢を重ねるに従って樹肌は荒くなる。小枝は比較的細くて、毛は生えていないものが多い。また、種によっては、生長の早い若枝にコルク層が明瞭に形成されることがある。葉は、逆卵型をしていて、8cm未満の小さいものが多い。左右には12組前後の葉脈がある。
ウルムスカルピニフォラ(Ulmus carpinifolla)に属するニレの種類は豊富であり、例えば、ダンピエリ(Dampieri)、ホエルショルミエンシス(Hoersholmiensis)、サルニエンシス(Sarniensis)、ウレデイ(Wredei)を例示することができる。
【0015】
一方、ウルムスグラブラ(Ulmus glabra)は、幅広で丸い樹冠を有する大型のニレである。根はあまり発達しておらず、樹皮は灰色ではじめは平滑であるが後に浅い溝ができる。一般に、厚ぼったい茶色の太枝が密に生えており、冠部分の皮は桃色を呈している。葉は8〜16cmであり、ウルムスカルピニフォラ(Ulmus carpinifolla)よりも荒いものが多い。葉柄は短く、斜めになった葉脚が全体を覆っているのが一般的である。左右に伸びる葉脈は12〜18組であり、花序は大きめである。また、種子を飛ばすための翼片は逆卵型をしており、実は中央についている。
ウルムスグラブラ(Ulmus glabra)に属するニレの具体例として、カンペルドウニ(Camperdownii)、エキソニエンシス(Exoniensis)、ホリゾンタリス(Horizontalis)を例示することができる。
【0016】
本発明では、これらの具体例以外のウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種を使用することもできる。
また、本発明では、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種を他の植物種と交配させた植物種を使用することもできる。交配させる他の植物種は、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する他の植物種であってもよいし、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属しない植物種であってもよい。また、交配させる植物種は、1種類のみであってもよいし、複数種であってもよい。さらに、交配させて得た品種をさらに交配させて得た品種であってもよい。このように、本発明の逆転写酵素阻害剤には、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に由来する植物種を利用したものがすべて包含される。
【0017】
本発明では、これらのウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明では、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種の花部を利用する。一般に、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に由来する植物種は、冬から初春にかけて莟をつけ、春に花を咲かせる。花芽の大きさは小さくても逆転写酵素阻害活性を有している。このため本発明では、莟の段階から花が散るまでの間に花部を取得して利用するのが好ましい。
【0018】
ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種の花部には、強力な逆転写酵素阻害活性が認められる。その活性は、ハルニレ(Ulmus davidiana var.japonica)よりもかなり強い。ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種の中でも、特にウェガタア(Vegeta)、コメリン(Commelin)およびグロネフェト(Groenveid)は、特に顕著な逆転写酵素阻害活性を示す。多種多様なニレ植物の中で特にウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種に限って、このような高い活性が認められることは、まったく予期していなかったことである。
【0019】
ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に由来する植物種の花部は、逆転写酵素阻害剤として使用しやすい状態にして利用することができる。例えば、細片状または粉末状にしたうえで適当な成分と混合することによって使用してもよいし、適当な溶媒を用いて抽出した抽出物を使用してもよい。
花部を細片状または粉末状にするときには、採取した花部をそのままカッター、細断機、コロイドミルなどを用いて処理してもよいが、いったん乾燥してから細断、粉末化処理を行うのが好ましい。花部の乾燥は、水分含量が10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満になるまで行うのが一般的である。乾燥は、自然乾燥でも機械乾燥でもよい。また、乾燥を行う場合は、花部採取から30分以内に行うのが好ましい。
【0020】
花部の乾燥温度は特に制限されない。このため、加圧式ドラム加熱装置や電磁波などを用いて急速加熱乾燥してもよい。加圧式ドラム加熱装置を用いる場合は、80〜140℃の範囲内で加熱乾燥するのが好ましい。乾燥時間は、通常2分以内にし、好ましくは1分以内、より好ましくは40〜50秒程度にする。また、電子レンジなどの電磁波を使用する場合には、例えば600Wで20〜50秒程度加熱乾燥することができる。このような条件下で加熱乾燥することによって、花部原料中に含まれている望ましくない酵素の活性を抑制または失活させ、逆転写酵素阻害活性成分の分解をある程度防ぐことができる。
【0021】
急速加熱乾燥したものは、そのまま使用してもよいし、さらに低温乾燥させてから使用してもよい。低温乾燥を行う場合には、−5℃〜10℃の範囲内で行うのが好ましい。低温乾燥は、遠赤外線乾燥装置などの熱風乾燥装置、通風乾燥装置、氷温乾燥装置などを単独または組み合わせて用いることによって行うことができる。例えば、遠赤外線乾燥を行った後に氷温乾燥することができる。このような低温乾燥を行えば、逆転写酵素阻害活性成分の分解を防止することができる。
【0022】
花部の細断や粉末化は、目的にあった装置や道具を用いて行うことができる。例えば、コロイドミルを用いて50〜100μmの粉末にすることができる。このような細断や粉末化は、乾燥前、高温乾燥後、低温乾燥後のいずれであってもよい。
【0023】
花部はこのようにして細片状または粉末状にする他に、抽出物として使用することもできる。抽出の対象となる花部は、採取した花部そのもの、採取した花部を細片化したもの、高温乾燥したもの、低温乾燥したものなどのいずれであってもよい。抽出効率を上げるために、花部はある程度細片化しておくのが好ましい。抽出溶媒は、水またはアルコールであるのが好ましいがこれ以外の抽出溶媒も使用することができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノールなどを例示することができる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。例えば、30〜50%のエチルアルコールまたはメチルアルコール水溶液を用いることができる。
【0024】
抽出は、常温で行っても還流下で行ってもよい。また、ソックスレー抽出器などの抽出装置を使用してもよい。具体的には、50%エタノール水溶液を用いて還流温度でソックスレー抽出器によって30〜60分間抽出する方法を例示することができる。
抽出した抽出液は、そのまま逆転写酵素阻害剤として使用に供してもよいが、効果を高めるために濃縮して使用するのが好ましい。濃縮の程度は使用環境によって異なる。例えば、濃度10%程度にして液剤として使用してもよいし、粉末状になるまで溶媒を除去してもよい。
【0025】
本発明では、植物種由来の成分として、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種の花部から得られた上記材料のみを使用してもよいし、これを他の植物種から得られた材料と組み合わせて使用してもよい。そのような他の植物種由来の材料として、逆転写酵素阻害活性を有する材料を広く使用することができる。
【0026】
本発明では、特にウルシ葉部またはその抽出物と組み合わせて使用するのが好ましい。使用するウルシは、ウルシ科に属するものの中から選択することができる。特に好ましいのは、ウルシ科ウルシ属に属する植物種の葉部である。例えば、ウルシ(Rhus vernicitlua)、ヤマウルシ(Rhus trichocarpa)、シタウルシ(Rhus ambigna)、ヌルデ(Rhus javanica)、ヤマハゼ(Rhus sylvestris)を例示することができる。また、使用するウルシは葉が柔らかい若葉であるのが好ましい。特に8週令以下のものが好ましく、中でも4週令以下のものがより好ましい。
【0027】
これらのウルシ葉部は、ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属する植物種の花部と同じように、上記方法にしたがって乾燥、粉末化、細片化、抽出することができる。ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)花部の成分とウルシ葉部由来の成分の混合比率は適宜決定することができるが、一般に1:0.1〜10の範囲内、中でも1:0.5〜2の範囲内にするのが好ましい。特に好ましいのは、1:2程度の比率で混合した場合である。
【0028】
本発明の逆転写酵素阻害剤は、目的に応じて様々な態様で使用することができる。例えば、医薬品、食品、飲料として安全かつ有効に使用することができる。
たとえば、本発明の逆転写酵素阻害剤を医薬品として使用する場合には、その投与経路によって様々な剤型を選択することができる。本発明の逆転写酵素阻害剤は、経口的または非経口的に投与することができる。例えば、直腸投与、鼻内投与、頬側投与、舌下投与、膣内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与を行なうことが可能である。中でも、本発明の逆転写酵素阻害剤は、経口投与、皮下投与または経皮投与するのが好ましい。
【0029】
経口投与に適した製剤として、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤などを挙げることができ、非経口投与に適した製剤として、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などを挙げることができる。注射剤は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、点滴などのいずれに用いるものであってもよい。本発明の逆転写酵素阻害剤は、特に経口用製剤、注射剤、貼付剤のいずれかであるのが好ましい。
【0030】
本発明の逆転写酵素阻害剤には、必要に応じて薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物を添加することができる。例えば、賦形剤、崩壊剤または崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤または溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、粘着剤、湿潤剤などを使用することができる。
これらの添加剤を適宜組み合わせて使用することによって、本発明の逆転写酵素阻害剤にさまざまな付加的機能を持たせることができる。例えば、必要に応じて活性成分が徐放されるように設計することができる。また、体内の必要な個所において活性成分が集中的に放出されるように設計することもできる。このような徐放性製剤やドラッグデリバリーシステムは、製剤業界において周知の方法にしたがって設計のうえ製造することができる。
【0031】
また、本発明の逆転写酵素阻害剤には、有機物または無機物の担体を使用することができる。そのような担体として、乳糖、でんぷん、植物性および動物性脂肪や油脂を例示することができる。本発明の逆転写酵素阻害剤には、ウルムスホランディカ由来の活性物質を0.01〜100重量%の範囲内で使用することができる。本発明の逆転写酵素阻害剤は、後天性免疫不全症候群やヒト成人T細胞白血病の予防および治療剤として有用である。
【0032】
さらに、本発明の逆転写酵素阻害剤は、他の逆転写酵素阻害剤と組み合わせて使用することもできる。とくにウルシ葉部に由来する組成物と組み合わせれば、相乗効果が期待できるため好ましい。このため、本発明には、(1)ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレの花部またはその抽出物と(2)ウルシ葉部またはその抽出物が、キットを構成する複数の組成物のいずれかに含まれていることを特徴とする逆転写酵素阻害キットが含まれる。
【0033】
成分(1)と成分(2)は、本発明の逆転写阻害キットを構成する複数の組成物のいずれかに含まれていればよい。例えば、成分(1)を含む組成物と成分(2)を含む組成物からなるキットであってもよいし、成分(1)と成分(2)の存在比が異なる複数の組成物からなるキットであってもよい。使用する際には、これらの組成物を適宜組み合わせて投与する。例えば、複数の組成物を同時または連続して投与してもよいし、場合によっては一定の間隔をおいて投与してもよい。
【0034】
本発明の逆転写酵素阻害剤の投与量は、治療または予防の目的、患者の性別、体重、年齢、疾患の種類や程度、剤型、投与経路、投与回数などの種々の条件に応じて適宜決定する。例えば、経口投与する場合には、0.1μg〜100mg(活性成分乾燥重量)/kg体重/日で、一日一回から数回に分けて投与することができるが、投与量はこの範囲に限定されるものではない。
【0035】
本発明の逆転写酵素阻害剤は、各種食品や飲料に含ませることによって、機能性食品および機能性飲料にすることができる。例えば、紅茶、清涼飲料水、ジュース、あめ、澱粉質食品、各種加工食品等に添加することができる。ウルムスホランディカ由来の活性物質の添加量は、約0.1〜99重量%の範囲内に設定することができる。また、必要に応じて、ゲル化剤などを添加して食感を改良してもよい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す成分、割合、操作順序等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下の実施例に示す具体例に制限されるものではない。
【0037】
(参考例1)
本実施例において、本発明の逆転写酵素阻害剤(粉剤)の具体例を例示する。
ウルムスホランディカ(ulmus hollandica)に属するウェガタア(Vegeta)、コメリン(commelin)およびグロネフェト(Groenveid)の花の莟を、オランダ国アムステルダム市内にて3月に採取した。採取した莟をそれぞれミキサーを用いて粉砕し、110〜120℃にて水分量1〜5%になるまで乾燥した。得られた乾燥粉末に脱酸素剤を入れて密封し、常温で保存した。
1週間保存した後、乾燥粉末を取り出して乳糖と0.1%青色1号アルミニウムレーキ乳糖とともに、以下の表に示す割合で混合した。これによって、逆転写酵素阻害活性を有する本発明の粉剤を得た。
【0038】
【表1】

【0039】
(参考例2)
本実施例において、ウルシ若葉粉末と組み合わせた本発明の逆転写酵素阻害剤(粉剤)の具体例を例示する。
ウルシ若葉を石川県にて3月に採取し、ミキサーを用いて粉砕した後、110〜120℃にて水分量が1〜5%になるまで乾燥した。得られた乾燥粉末に脱酸素剤を入れて密封し、常温で保存した。1週間保存後、実施例1で得たウェガタア(Vegeta)、コメリン(commelin)またはグロネフェト(Groenveid)の乾燥粉末とデンプンを加えて混合した。各乾燥粉末とデンプンはそれぞれ以下の表に示す量で混合した。これによって、逆転写酵素阻害活性を有する本発明の混合粉剤を得た。
【0040】
【表2】

【0041】
(参考例3)
本実施例において、本発明の逆転写酵素阻害剤(カプセル剤)の具体例を例示する。
実施例1で製造したウェガタア(Vegeta)、コメリン(commelin)またはグロネフェト(Groenveid)粉末を含有する各粉剤を、ゼラチンカプセルに充填することによって逆転写酵素阻害活性を有するカプセル剤を製造した。
また、実施例2で製造したウェガタア(Vegeta)、コメリン(commelin)またはグロネフェト(Groenveid)粉末とウルシ粉末を含有する各粉剤を、ゼラチンカプセルに充填することによって逆転写酵素阻害活性を有するカプセル剤を製造した。
【0042】
(参考例4)
本実施例において、本発明の逆転写酵素阻害剤(注射剤)の具体例を例示する。
ウルムスホランディカ(ulmus hollandica)に属するウェガタア(Vegeta)、コメリン(commelin)およびグロネフェト(Groenveid)の花の莟を、オランダ国アムステルダム市内にて3月に採取した。採取した莟をそれぞれミキサーを用いて粉砕し、110〜120℃にて水分量が1〜5%になるまで乾燥した。得られた乾燥粉末に脱酸素剤を入れて密封し、常温で保存した。1週間保存後、各乾燥粉末を80℃の水で抽出して溶媒を減圧留去した。得られた抽出物を塩化ナトリウムとともに蒸留水に溶解した。乾燥粉末、塩化ナトリウムおよび蒸留水は、それぞれ以下の表に示す量で混合した。得られた水溶液を濾過することによって、逆転写酵素阻害活性を有する注射剤を製造した。
【0043】
【表3】

【0044】
(実施例1)
本実施例において、本発明の逆転写酵素阻害活性を有する機能性飲料の具体例を例示する。
ウルムスホランディカ(ulmus hollandica)に属するウェガタア(Vegeta)、コメリン(commelin)およびグロネフェト(Groenveid)の花の莟を、オランダ国アムステルダム市内にて3月に採取した。採取した莟を直ちに細片化して60℃の水で抽出した。得られた抽出液を固形分重量が10%になるまで濃縮した後、以下の成分と混合した。各成分はそれぞれ以下の表に示す割合で混合した。これによって、逆転写酵素阻害活性を有する機能性飲料を得た。
【0045】
【表4】

【0046】
(試験例1)
本試験例において、表5に記載される種々のニレの抽出物を含む組成物の逆転写酵素阻害活性を比較した。
ニワトリ骨髄芽球症ウィルス(avian myeloblasosis virus)由来の逆転写酵素を用いて、表5の各ニレを原料として実施例4の方法で製造した逆転写酵素阻害剤のIC50(μg/ml)を求めた。結果は以下の表5に示すとおりであった。
【0047】
【表5】

【0048】
上記表に記載したもの以外の広範なニレの花部についても逆転写酵素阻害活性を測定したが、IC50が10以下であるものはなかった。この試験結果から、ウルムスホランディカに属するニレの花部に由来する組成物は、著しく高い逆転写酵素阻害活性を有することが明らかになった。中でも、ウェガタア(Vegeta)、コメリン(commelin)およびグロネフェト(Groenveid)の3種には極めて強い活性が確認された。
また、ウルムスホランディカに属するニレの花部を、ウルシ若葉と重量比1:0.5〜2で混合すると、逆転写酵素阻害活性がさらに2〜5倍程度高まることも確認されている。特に重量比1:2で混合した組成物の活性が高かった。なお、これらの逆転写酵素阻害活性試験において、毒性は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレの花部またはその抽出物を含有し、逆転写酵素阻害作用を有するものであることを特徴とし、逆転写酵素阻害のために用いられるものである旨の表示を付した食品または飲料。
【請求項2】
ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレが、ウェガタア(Vegeta)、コメリン(Commelin)、グロネフェト(Groenveid)、ベルギカ(Belgica)、クルシウス(Clusius)、コルメラ(Columella)、ドドエンス(Dodoens)およびホメステッド(Homestead)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の食品または飲料。
【請求項3】
ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレが、ウェガタア(Vegeta)、コメリン(Commelin)およびグロネフェト(Groenveid)からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の食品または飲料。
【請求項4】
ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレの花部を乾燥した粉末を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の食品または飲料。
【請求項5】
ウルムスホランディカ(Ulmus hollandica)に属するニレの花部の抽出物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の食品または飲料。
【請求項6】
ウルシ葉部またはその抽出物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の食品または飲料。

【公開番号】特開2006−265260(P2006−265260A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134739(P2006−134739)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【分割の表示】特願平9−290665の分割
【原出願日】平成9年10月23日(1997.10.23)
【出願人】(594031428)
【Fターム(参考)】