説明

食品からのタンパク質の分離方法

【課題】高い歩留まりでタンパク質を分離することができるタンパク質分離方法を提供する。
【解決手段】原料食品を媒質中のpHを調節してタンパク質を抽出させるタンパク質抽出液獲得段階と、前記タンパク質抽出液のpHを、分離を所望するタンパク質の等電点に調整してタンパク質を沈殿させるタンパク質等電点沈殿段階と、前記沈殿されたタンパク質を遠心分離してタンパク質沈殿濾液を分離し、沈殿タンパク質を回収するタンパク質回収段階とを含む、等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法において、前記タンパク質抽出液または前記タンパク質沈殿濾液を60〜145℃に加熱してタンパク質を沈殿させるタンパク質加熱沈殿段階をさらに含む。前記方法によって高い歩留まりで得られたタンパク質は、食品の栄養強化剤または食品添加剤として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品からタンパク質を分離する方法に関するものであって、さらに詳しくは、食品からタンパク質を分離する際にタンパク質の回収率を高めるための食品からタンパク質を分離する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全世界的にタンパク質素材の市場は約2兆円以上と予測されている。タンパク質素材は現在、多様な目的で食品産業などに利用されており、主に使用されるタンパク質素材は、牛乳タンパク質(カゼインタンパク、乳清タンパク)、単細胞タンパク質、豆タンパク質、魚肉タンパク質、グルテン、エンドウタンパク質、米タンパク質(米糠タンパク、玄米タンパク、米タンパク)などに区分されて広範囲な用途に使用されている。
【0003】
タンパク質固有の特性によって、タンパク質は食品の栄養強化剤、増量剤、増粘剤、乳化剤のような多様な食品添加剤として使用されており、実際にも製菓、製パン、肉加工、麺類、デザート、機能性食品などの様々な製品群に使用されている。
【0004】
食品からこのようなタンパク質を分離する方法は、乳清タンパク分離に主に利用される膜分離方法と、他のほとんどの食品用タンパク質分離に利用される等電点沈殿を利用した分離方法がある。その中でも、等電点沈殿を利用してタンパク質を分離する方法は、簡単でありながらも、様々な種類のタンパク質の分離に使用することができるため、広く利用されており、図1に示したような工程によって行われる。
【0005】
図1に示した等電点沈殿によるタンパク質分離方法は、原料食品を媒質中のpHを調節してタンパク質を抽出させる(1)タンパク質抽出液獲得段階(2);前記タンパク質抽出液(2)を、分離を所望するタンパク質の等電点にpHを調整してタンパク質を沈殿させるタンパク質等電点沈殿段階(4);及び前記沈殿されたタンパク質を遠心分離してタンパク質沈殿濾液(5)を分離し、沈殿タンパク質を回収するタンパク質回収段階(6)を含む。
【0006】
このような等電点沈殿によるタンパク質分離方法の例として、大豆から大豆分離タンパク(SPC: Soy protein concentrate, ISP: isolate soy protein)を分離する方法は次のようである。大豆に加水し、pHを6.8〜11に調整して豆タンパク質を抽出(1:タンパク質抽出)し、これを遠心分離することによって得た上澄液(2:タンパク質抽出液)に塩酸または硫酸のような酸を付加してpHを等電点(豆タンパクの場合、pH4.5)に調整し、豆タンパク質を沈殿させた後(4:等電点沈殿)、遠心分離などによって沈殿濾液(5)を捨てて、分離されたタンパク沈殿物を回収し(6:分離タンパク質回収)、その回収物を水洗、乾燥することによって、分離されたタンパク質製品を完成する(US2008/0096243A1)。現在Fuji Oilグループ、Solaeなどの大企業だけでなく、小規模の企業でも分離大豆タンパクを一般的な等電点沈殿方式で分離して販売している。
【0007】
前記等電点沈殿によるタンパク質分離方法でタンパク質を抽出するとき(1:タンパク質抽出)のpHは、原料および所望する最終製品の性質によってpH2〜11まで非常に相違している。高pH抽出後等電点沈殿方法は、牛乳からカゼインタンパク分離、豆タンパク質分離(ISP: isolate soy protein(大豆分離タンパク), SPC:Soy protein concentrate)、エンドウタンパク質分離、米(米糠)タンパク質分離、魚肉タンパク質分離など、様々な分野で使用されており、低pH抽出後等電点沈殿方法は、特定用途の豆タンパク質分離(飲料用)、魚肉タンパク質分離(FPI:Fish protein concentrate)などに用いられる。このように、各種原料及び最終製品に応じて行なわれる等電点沈殿によるタンパク質分離の具体的な方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0008】
等電点沈殿によるタンパク質分離方法は以前から広く利用されており、関連した更なる研究がなされてきた。分離されたタンパク製品の水溶化増加のための研究(韓国特許公開2003−0087184)、分離された豆タンパク製品の機能性を増加させるための研究(韓国特許公開2004−0097222)、酸性を帯びた食品に使用することが可能となるようにタンパク質を製造する方法(US 7,465,470)など、製造されたタンパク質の用途を増加させるための研究が多くなされてきた。また、豆の場合、異臭(off-flavor)を減らしながらタンパク質を製造する方法などに関する研究もなされてきたが、等電点を用いたタンパク質分離方式においてタンパク質の歩留まりを向上させるための研究は殆どなされていない。
【0009】
等電点を用いたタンパク質分離方式は歩留まりが低い問題があり、低い歩留まりのため、タンパク質分離工程後に発生する廃水の中にタンパク質含有量が高く、廃水処理費用が多くかかる。従って、等電点を用いたタンパク質分離方式で低い 歩留まりを改善する方法や技術が必要である。等電点を用いたタンパク質分離方式の根本的な問題である低い歩留まりを改善する方法に対する研究が足りない理由は、多くの会社が既に工場にセッティングされている方法(基本等電点沈殿を用いた分離方式)によって製品を生産しており、大々的な工程変化を通じて製品を生産するか、工程を完全に新しい形式に変えるには余りにも大きなリスクが伴うためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに、本発明者らは、ほとんどの食品用タンパク質分離に利用される等電点沈殿を用いた分離方法で、分離されたタンパク質の歩留まりを高めるとともに、既存の工程を大きく変えずに若干の追加工程だけで歩留まりを高めることができる、簡便かつ低コストに改善させる方法について研究した結果、本発明を完成した。
【0011】
従って、本発明の目的は、従来の等電点沈殿を用いたタンパク質分離方法を変形して、高い歩留まりでタンパク質を分離することができるタンパク質分離方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、前記本発明によるタンパク質分離方法によって分離されたタンパク質を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記本発明によるタンパク質分離方法によって分離されたタンパク質を含む食品添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、
原料食品を媒質中のpHを調節してタンパク質を抽出させるタンパク質抽出液獲得段階と、
前記タンパク質抽出液のpHを、分離を所望するタンパク質の等電点に調整してタンパク質を沈殿させるタンパク質等電点沈殿段階と、
前記沈殿されたタンパク質を遠心分離してタンパク質沈殿濾液を分離し、沈殿タンパク質を回収するタンパク質回収段階とを含む等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法において、
前記タンパク質抽出液または前記タンパク質沈殿濾液を60〜145℃に加熱してタンパク質を沈殿させるタンパク質加熱沈殿段階をさらに含むことを特徴とするタンパク質分離方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、前記本発明の方法によって分離されたタンパク質を提供する。
【0016】
本発明はまた、前記本発明の方法によって分離されたタンパク質を含む食品添加剤を提供する。
【0017】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
本発明では、従来の等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法で、タンパク質の歩留まりをさらに簡便かつ経済的に高める方法について研究した結果、等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法で、タンパク質抽出液や捨てられるタンパク質沈殿濾液を、さらに分離しようとするタンパク質が沈殿できる温度に加熱する段階を追加すれば、多くの費用や努力なしでも食品から分離されるタンパク質の歩留まりを向上させることができることに注目した。
【0019】
従って、本発明の一側面は、
原料食品を媒質中のpHを調節してタンパク質を抽出させるタンパク質抽出液獲得段階と、
前記タンパク質抽出液のpHを、分離を所望するタンパク質の等電点に調整してタンパク質を沈殿させるタンパク質等電点沈殿段階と、
前記沈殿されたタンパク質を遠心分離してタンパク質沈殿濾液を分離し、沈殿タンパク質を回収するタンパク質回収段階とを含む等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法において、
前記タンパク質抽出液または前記タンパク質沈殿濾液を60〜145℃に加熱してタンパク質を沈殿させるタンパク質加熱沈殿段階をさらに含むことを特徴とするタンパク質分離方法を提供する。
【0020】
前記本発明のタンパク質分離方法は、従来の等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法を用いることができる全ての食品に利用することができ、例えば、牛乳、豆、米糠、または魚肉などからのタンパク質分離に利用することができる。
【0021】
前記等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法は先に説明したように、当該技術分野で広く知られている技術(US 2008/0096243 A1, Liu, KeShun (1997-05-01) (Hardcorver). Soybeans: Chemistry, Technology, andUtilization, Springer, p.532. ISBN 0-8342-1299-4, “Citation on p.391 fromWatanabe, et al., 1971)であり、このような方法は、本発明にそのまま適用することができる。
【0022】
本発明は、このように公知された等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法において、等電点で沈殿されずに水溶化状態にあるタンパク質のうち、熱によって沈殿されるタンパク質をさらに沈殿させることを特徴とする。等電点で沈殿されないタンパク質は、全工程に亘って水溶化状態で存在し続けるため、タンパク質抽出液獲得段階(1)で得られたタンパク質抽出液(2)や、タンパク質等電点沈殿段階(4)で得られた沈殿濾液(5)を加熱することによって、熱によって沈殿されるタンパク質をさらに沈殿させることができる。 前記加熱温度は60〜145℃にすることができ、原料食品の種類および分離しようとするタンパク質の種類に応じて、タンパク質がさらに沈殿される適切な温度を選択することができる。
【0023】
前記タンパク質抽出液(2)やタンパク質沈殿濾液(5)を加熱する方法のうち、タンパク質抽出液(2)を加熱する方法の一具現例を図2のフロー図に示した。タンパク質抽出液(2)を加熱する場合、沈殿されたタンパク質を回収した後、濾液をタンパク質等電点沈殿段階(4)を行うこともできるが、図2に示したように、加熱されたタンパク質抽出液をそのまま、前記タンパク質等電点沈殿段階(4)及び分離タンパク質回収段階(6)を行うことができる。
【0024】
図2によると、pH調節によってタンパク質抽出段階(1)を経た後、遠心分離によって遠心分離残渣を捨てて得られたタンパク質抽出液(2)を、等電点沈殿段階(4)を経る前に60〜145℃に加熱する過程を行う。この過程により、所定の温度での加熱によって沈殿されるタンパク質の沈殿がなされる。その後、加熱によって沈殿されたタンパク質を含むタンパク質抽出液(2)に酸を付加して等電点沈殿段階(4)を行う。その後、加熱および等電点沈殿によって沈殿されたタンパク質を遠心分離によって沈殿濾液を捨て、分離タンパク質を回収する分離タンパク質回収段階(6)を行う。その後、得られた分離タンパク質を水洗、乾燥などの仕上げ工程を経て、分離タンパク質製品として完成させる。
【0025】
前記タンパク質抽出液(2)に代わって、タンパク質沈殿濾液(5)を加熱する方法の一具現例を図3及び図4のフロー図に示した。前記タンパク質沈殿濾液(5)を加熱する場合、加熱によって沈殿されたタンパク質(7)を追加遠心分離によって追加沈殿タンパクを回収(8)することができる。図3は、回収された(8)追加沈殿タンパク質を前記タンパク質等電点沈殿後、回収された(6)タンパク質に加えることを特徴とする過程のフロー図であり、図4は前記加熱によって追加沈殿された(7)タンパク質沈殿濾液を、前記タンパク質回収段階(6)のための遠心分離ユニットに加えて追加の遠心分離工程を行わないことを特徴とする過程のフロー図である。
【0026】
図3によると、pH調節によってタンパク質抽出段階(1)を経た後、遠心分離を行い、遠心分離残渣を捨てて得られたタンパク質抽出液(2)を酸付加によって等電点沈殿段階(4)を経た後、遠心分離して沈殿されたタンパク質を回収(6)し、捨てられる沈殿濾液(5)に対して加熱する過程を行う。この過程により、所定の温度での加熱によって沈殿されるタンパク質の沈殿がなされる。加熱によって追加沈殿された(7)タンパク質を遠心分離によって回収(8)した後、前記等電点沈殿によって回収(6)されたタンパク質に加える。そのようにして集められたタンパク質を水洗、乾燥などの仕上げ工程を経て、分離タンパク質製品として完成させる。
【0027】
図4のフロー図によると、図3での加熱によって沈殿(7)されたタンパク質を別途の遠心分離工程を行わずに等電点沈殿段階(4)後の遠心分離ユニットに再循環させることによって、別途の遠心分離過程を省略したものである。このような方法によると、別途の遠心分離過程を行わずに更なるタンパク質の分離を行うことができ、さらに経済的かつ高い歩留まりでタンパク質分離方法がなされる。
【0028】
前記タンパク質加熱沈殿段階での加熱は、熱交換器またはスチーム直射法によりなされる。
【0029】
前記本発明によるタンパク質分離方法は、従来の等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法において、タンパク質抽出液またはタンパク質沈殿濾液を加熱することにより、等電点で沈殿されずに水溶化状態にあるタンパク質のうち、熱によって沈殿されるタンパク質をさらに沈殿させる簡単な工程の導入により、タンパク質の分離歩留まりを向上させることができる。前記本発明の方法は、従来広く使用されている等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法をそのまま利用しながら、タンパク質加熱沈殿工程をさらに導入するだけで全体的な分離歩留まりを高めることができるという点で好ましい。また、等電点沈殿によるタンパク質分離方法において、沈殿濾液(5)部分が廃水に行くとき、沈殿濾液(5)部分のタンパク質の含量が高くて廃水処理費用が高くなるが、本発明の方法によると、捨てられる廃水中のタンパク含量が低くなるため、廃水処理費用も減少させることができる。
【0030】
また、更なる沈殿のために加熱に使用した熱は、熱交換器によって再活用(recycle)させることができるため、更なるプロセス費用は非常に少ない。その理由は、一般的にタンパク質抽出工程では中温の熱を用いて抽出を進行する場合が多いが、本発明の方法により更なる沈殿のために加熱に使用した熱は、熱交換器などによって先段の工程で再使用が可能であるためである。
【0031】
前記本発明の方法によって分離されたタンパク質は、等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法で得られるタンパクに加えて、加熱によって沈殿されるタンパク質をさらに含む新しい組成のタンパク質である。
【0032】
従って、本発明の他の側面は、前記本発明のタンパク質分離方法によって分離されたタンパク質を提供する。
【0033】
前記分離方法によって高い歩留まりで得られたタンパク質は、各種食品の栄養強化、及び食品の物性改良、または品質改良のための添加剤分野への適用が可能である。
【0034】
従って、本発明はさらに他の側面で、前記本発明の分離方法によって得られたタンパク質を含む食品添加剤を提供する。
【0035】
前記食品添加剤とは、加工食品の栄養および風味を向上させるか、保存期間を延すために添加する物質を意味し、このような食品添加剤は、栄養強化剤、増量剤、増粘剤、または乳化剤を含むが、これに限定されるものではない。本発明の分離方法によって得られたタンパク質は前記食品添加剤として、ドレッシング、マヨネーズ、プリン、豆腐、離乳食、お菓子、およびパンからなる群から選ばれた食品の加工に利用することができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0036】
前記に説明したように、本発明による食品のタンパク質分離方法は、食品用タンパク質分離に従来広く利用されている等電点沈殿を利用した分離方法に、加熱によるタンパク質沈殿工程をさらに付加することにより、分離されたタンパク質の歩留まりを高めることができる。また、等電点沈殿による食品用タンパク質分離装置を大きく変えずに若干の追加工程を付加するだけで歩留まりを高めることができ、簡便かつ低コストでタンパク質の分離歩留まりを高めることができ、好ましい。さらには、本発明によると、タンパク質分離工程後に捨てられる廃水中のタンパク含量が低くなるため、廃水処理費用も減少させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これらの実施例は本発明を理解するのに役立つためのものであるだけで、本発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0038】
実施例1:等電点沈殿および加熱工程による米糠からのタンパク質分離
脱脂米糠5,000g(粗タンパク含量:990g)を原料にして等電点沈殿によるタンパク質分離を行った。脱脂米糠5,000gを5倍加水し、pH9に維持しながら、30℃条件で1時間攪拌しながらタンパク質を抽出した。このようにして得られたタンパク質抽出液を遠心分離8,000rpm条件で10分間遠心分離して、上澄液と残渣(pellet)部分に分離した。上澄液を取ってpH4に維持し、30分間攪拌しながらタンパク質を沈殿させた(酸沈殿過程)。再び遠心分離8,000rpm条件で10分間遠心分離した。このように生成された遠心分離残渣部分(pellet:白色タンパク質凝固物)を取り(タンパク質凝固物A)、残りの遠心分離上澄液(タンパク質沈殿濾液)を60〜145℃で加熱を進行した。30分程度攪拌しながら加熱を進行させると、再び白色凝固物(タンパク質)が出るが、これを遠心分離(8,000rpm、10分)によって分離し、タンパク質部分(残渣)を取った(タンパク質凝固物B)。タンパク質凝固物AとBを混合し、ここに10倍数の水を加水して遠心分離した(水洗過程)。残渣部分(タンパク質凝固物)を取って凍結乾燥により水分5%以下に乾燥した後、乾燥された最終生成物のタンパク質含量を測定した。タンパク質含量測定は一般的に粗タンパク質含量を測定する方法のKjeldahl法を利用した。
【0039】
タンパク質含量測定の結果、米糠5kgからタンパク499.2gが得られたことが確認された。
【0040】
比較例1:等電点沈殿による米糠からのタンパク質分離
前記実施例1のタンパク質沈殿濾液を加熱してタンパク質凝固物Bを獲得する段階を省略したことを除いては、実施例1と同一な方法で米糠からタンパク質を分離した。そのように得られた最終生成物のタンパク質の含量をKjeldahl法を利用して測定した。その結果、米糠5kgからタンパク466gが得られたことが確認された。
【0041】
前記結果から、本発明の分離方法による実施例1が、従来方法による比較例1と比べて、歩留まりが9%高いことが分った。
【0042】
実施例2:等電点沈殿および加熱工程による大豆からのタンパク質分離
脱脂大豆5,000g(粗タンパク含量:2250g)を原料にして等電点沈殿によるタンパク質分離を行った。脱脂大豆5,000gを10倍加水し、pH9に維持しながら、30℃条件で1時間攪拌しながらタンパク質を抽出した。このようにして得られたタンパク質抽出液を遠心分離8,000rpm条件で10分間遠心分離して、上澄液と残渣(pellet)部分に分離した。上澄液を取ってpH4に維持し、30分間攪拌しながらタンパク質を沈殿させた(酸沈殿過程)。pH4条件で白色に変わったタンパク質液を再び遠心分離8,000rpm条件で10分間遠心分離した。このように生成された遠心分離残渣部分(pellet:白色タンパク質凝固物)を取り(タンパク質凝固物A)、残りの遠心分離上澄液を60〜145℃の間で加熱を進行した。30分程度攪拌しながら加熱を進行させると、再び白色凝固物(タンパク質)が出るが、これを遠心分離(8,000rpm、10分)によって分離し、タンパク質部分(残渣)を取った(タンパク質凝固物B)。タンパク質凝固物AとBを混合し、ここに10倍数の水を加水して遠心分離した(水洗過程)。残渣部分(タンパク質凝固物)を取って凍結乾燥により水分5%以下に乾燥した後、乾燥された最終物の量とタンパク質含量を測定した。タンパク質含量測定は一般的に粗タンパク質含量を測定する方法のKjeldahl法を利用した。
【0043】
タンパク質含量測定の結果、大豆5kgからタンパク1.72kgが得られたことが確認された。
【0044】
比較例2:等電点沈殿による大豆からのタンパク質分離
前記実施例2のタンパク質沈殿濾液を加熱してタンパク質凝固物Bを獲得する段階を省略したことを除いては、実施例2と同一な方法で大豆からタンパク質を分離した。そのように得られた最終生成物のタンパク質の含量をKjeldahl法を利用して測定した。その結果、大豆5kgからタンパク1.6kgが得られたことが確認された。
【0045】
前記結果から、本発明の分離方法による実施例2が、従来方法による比較例2と比べて、歩留まりが7.5%高いことが分った。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来の等電点沈殿によるタンパク質分離方法のフロー図である。
【図2】本発明によるタンパク質分離方法のうち、タンパク質抽出液を加熱する方法の一具現例を示したフロー図である。
【図3】本発明によるタンパク質分離方法のうち、タンパク質沈殿濾液を加熱する方法の一具現例を示したフロー図である。
【図4】本発明によるタンパク質分離方法のうち、タンパク質沈殿濾液を加熱する方法の他の一具現例を示したフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料食品を媒質中のpHを調節してタンパク質を抽出させるタンパク質抽出液獲得段階と、
前記タンパク質抽出液のpHを、分離を所望するタンパク質の等電点に調整してタンパク質を沈殿させるタンパク質等電点沈殿段階と、
前記沈殿されたタンパク質を遠心分離してタンパク質沈殿濾液を分離し、沈殿タンパク質を回収するタンパク質回収段階とを含む、等電点沈殿による食品のタンパク質分離方法において、
前記タンパク質抽出液または前記タンパク質沈殿濾液を60〜145℃に加熱してタンパク質を沈殿させるタンパク質加熱沈殿段階をさらに含むことを特徴とするタンパク質分離方法。
【請求項2】
前記食品は、牛乳、豆、米糠、または魚肉であることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質分離方法。
【請求項3】
前記タンパク質抽出物を加熱する場合、加熱されたタンパク質抽出液をそのまま、前記タンパク質等電点沈殿段階およびタンパク質回収段階を行うことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質分離方法。
【請求項4】
前記タンパク質沈殿濾液を加熱する場合、加熱によって沈殿されたタンパク質を追加遠心分離して追加沈殿されたタンパク質を回収することを特徴とする請求項1に記載のタンパク質分離方法。
【請求項5】
前記回収された追加沈殿タンパクを前記タンパク質等電点沈殿後、回収されたタンパク質に加えることを特徴とする請求項4に記載のタンパク質分離方法。
【請求項6】
前記タンパク質沈殿濾液を加熱する場合、前記加熱されたタンパク質沈殿濾液を前記タンパク質回収段階の遠心分離ユニットに加えて、追加の遠心分離工程を行わないことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質分離方法。
【請求項7】
前記タンパク質加熱沈殿段階での加熱は、熱交換器またはスチーム直射方法によりなされることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質分離方法。
【請求項8】
第1項乃至第7項のいずれか1項の方法によって分離されたタンパク質。
【請求項9】
第8項のタンパク質を含む食品の添加剤。
【請求項10】
栄養強化剤、増量剤、増粘剤、または乳化剤であることを特徴とする請求項9に記載の食品添加剤。
【請求項11】
前記食品は、麺類、デザート、お菓子、パン、および機能性食品からなる群から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の食品添加剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110(P2012−110A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130840(P2011−130840)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(511023598)シージェイ チェイルジェダン コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】