説明

食品の真空マイクロ波乾燥のための改良された装置及び方法

本発明は、商業規模で真空マイクロ波調理食品の製造を行うための改良された装置及び方法を開示する。本発明は、食品を真空マイクロ波装置に配置するための環状領域を有する回転ラックを開示する。イチゴ又はチーズ等の食品は、環状領域に配置して、真空マイクロ波装置内で乾燥させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空マイクロ波調理スナック食品の改良された製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工されたスナック食品は、一般的に、すぐに食べられる形態で消費者に提供される。これらスナック食品には、ポテトチップス、コーンチップス、パフ生地、クッキー及びクラッカー等の多様な食品を含む。加工されたスナック食品は、高脂肪の油で揚げられた小麦、とうもろこし、ジャガイモ、又は他の澱粉含有材料から作られることが多い。例えば、ポテトチップスは、生の新鮮なジャガイモの薄片を揚げることにより調理される。
【0003】
見識ある消費者は、益々健康への関心を持つようになっており、その結果、より健康的であり、且つあまり加工されておらず、且つより天然のスナック食品への要求が高まっている。最近の世論調査では、消費者が自らの食生活における脂肪摂取量の制御を試みようとしていることが示されている。更に、消費者は益々、脂肪含有量を知るために栄養表示を定期的に又は時折確認するようになっている。多くの場合において、より多量のスナック食品を食する人々の最大の障害は、スナック食品は不健康であるとの見識である。これは、約11パーセントの消費者が油で揚げられた食品が健康的であると信じているのに対し、約59パーセントの消費者がオーブンで焼かれた食品が健康的であると信じているという事実によって裏付けられる。その結果、消費者がより健康的であると考えるより低脂肪のスナック食品が必要とされている。
【0004】
スナック食品の脂肪含有量を減少させるために、人工的な又は非天然の材料が使用されているが、多くの消費者はまた、このような材料も嫌悪している。例えば、消費者は自然食品を好む傾向が強くなっており、多くの人が人工的な成分又は保存料を多く含む製品を避けると述べている。人工的な食品が自らの健康に良いと信じている消費者とは対照的に、殆どの消費者は、天然由来の食品が健康に良いと信じている。その結果、人工的な材料又は保存料をほとんど又は全く含まない低脂肪スナック食品が必要とされている。
【0005】
残念ながら、所望されるような低脂肪の、且つ保存のきくスナック食品を天然の未加工材料から商業規模で製造することは困難であることが判明している。より天然の、保存がきくスナック食品を提供するために提案された解決法の幾つかは、特許文献1乃至3に例示されており、これらは全て、食品の真空マイクロ波調理に関するものである。しかしながら、これらの特許は、これらの食品を商業規模で製造する方法を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,676,989号明細書
【特許文献2】米国特許第5,962,057号明細書
【特許文献3】米国特許第6,312,745号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロータリー式真空マイクロ波装置が、非食品用途で使用されている。図1は、食品ではない顆粒状材料を収容した従来のロータリー式真空マイクロ波装置の概略断面図である。マイクロ波装置キャビティ内の回転ドラムが矢印方向18へ回転しているときに、製品12は、重力が製品をドラムの底へ向けて落下させる地点に到達するまで、ドラム壁を上方へ移動する傾向にある。相対的に大容量のロータリー式タンブラー真空マイクロ波乾燥機は、この回転工程中の衝突により、果物や野菜等の食材に損傷を与える。更に、乾燥中に食材の表面に生じる水分が原因で食材が粘着性になるおそれがあり、塊状化もまた問題である。したがって、真空マイクロ波調理される食品は、一般的には、単層形態で配置される。しかしながら、単層形態は、特にバッチ処理形態において、製品の生産量及び処理能力を著しく低下させるため、効率が悪く且つ不経済であることが多い。食材へのマイクロ波の限定的な透過深さに起因して、ドラム内における製品の層厚は、マイクロ波エネルギーの吸収にさえも影響を及ぼしかかねず、結果的に乾燥速度が変化しかねない。よって、食品の真空乾燥効率を上げる改良された方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
提案される本発明は、低脂肪であり、且つ保存性があり、且つすぐに食べられるスナック食品を未加工食材から製造するための方法及び装置を含む。一実施形態において、本方法は、未加工の植物系食材を提供する工程と、同食材を回転ラックの環状領域に配置する工程と、ラックが回転するにつれて、同食材を真空マイクロ波装置内で乾燥させる工程とを含む。
【0009】
一実施形態において、本発明は、スナック食品を製造するために、未加工食品を真空マイクロ波装置内で乾燥させるために使用可能な装置に関する。該装置は、食品を配置するための環状領域を有する回転ラックを備える。回転ラックは、真空状態にあるマイクロ波装置内に配置することができ、マイクロ波装置の動作中に回転させることができる。本発明の上述した及び付加的な特徴及び効果については、以下に記載される詳細な説明において明らかになるであろう。
【0010】
本発明の特徴と考えられる新規の構成は、添付の特許請求の範囲に記載される。しかしながら、本発明、並びに本発明の好適な使用形態、更なる目的及び効果については、添付の図面と併せて以下の例示的な実施形態の詳細な説明を参照することにより、最良に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】製品を収容した従来のロータリー式真空マイクロ波装置の概略断面図。
【図2】本発明の一実施形態による、環状領域に複数の隔室を有する回転ラック及び真空マイクロ波装置の一部切り欠き分解斜視図。
【図3】本発明の一実施形態による、真空マイクロ波装置ドラムの横軸を中心に回転する回転ラックを有する真空マイクロ波装置の一部切り欠き側面図。
【図4】本発明の一実施形態による、真空マイクロ波装置ドラムの横軸を中心に回転可能な真空マイクロ波装置回転ラックの一部切り欠き部分分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2は、本発明の一実施形態による、真空マイクロ波装置200のキャビティに配置するための回転ラック100の分解斜視図である。一実施形態において、回転ラック100は、外径を有する第1同心円筒体101と、内径を有する第2同心円筒体102との間に配置される複数の仕切片105を備え、仕切片105は環状領域103内に配置される複数の隔室110を画定する。一実施形態において、「仕切片」という用語は、環状領域103内で食品を周方向に配置するように、環状領域103を複数の隔室110に分割する物体を指す。仕切片は、真っ直ぐな形状、弓形、又は蛇行形であり得る。仕切片はまた、中実体であってもよく、あるいは有孔体であってもよい。一実施形態において、仕切片105は、第1同心円筒体101及び第2同心円筒体102の間の環状領域103において、ラック100の長手軸の周りにおいて径方向に配向される。本明細書で使用される「環状領域」という用語は、回転ラック100の外周の内側における食品の周方向への配置を提供する領域として定義される。一実施形態において、図2に示されるように、環状領域103は、第1同心円筒体101及び第2同心円筒体102の間の回転ラック100内部の領域を含む。一実施形態において、マイクロ波装置キャビティ200は、マイクロ波装置キャビティ200の外周の内側の領域として画定される周縁領域202を含む。
【0013】
図4は、本発明の代替実施形態による、(図2において符号200として示される)真空マイクロ波装置ドラムの横軸を中心に回転する回転ラック400の一部切り欠き分解斜視図である。図4に示されるように、環状領域403を有する回転ラックは、ラック内に複数の隔室を備える。図示される実施形態においては、各隔室410は更に、回転ラック100の外周の内側に配置される管を備える。本明細書で使用される「隔室」及び「管」という用語は、置換可能に使用される。ラック400が(図2に示される)マイクロ波装置キャビティ200内に配置されると、隔室410は、マイクロ波装置キャビティ200の周縁領域の周りに配向される。
【0014】
一実施形態において、タンブリングを更に促進するために、複数のフライト405を管410内に配置することができる。このようなタンブリングは、食材片が隣り合う食材片や管410の一部に付着することを回避するように、十分な運動を付与し得る。本願に示される図面は、例示を目的として提供されるものであって、本発明を限定することを意図するものではない。他の実施形態を、本発明の主旨及び範囲に従って用いることができる。図2に示される実施形態において、食材片120を載せたり降ろしたりしやすくする取り外し可能なカバー142,152は、第2同心円筒体102を形成する。(図示されていない)一実施形態においては、第1同心円筒体及び第2同心円筒体の各々が取り外し可能なカバーを備える。(図示されていない)一実施形態においては、第1同心円筒体のみが取り外し可能なカバーを備える。
【0015】
図2に示される同心円筒体101,102、及び図4に示される管410は、マイクロ波装置での使用に適した任意の材料から選択され得る。材料は、有孔性であっても無孔性であってもよいが、有孔材料であれば、乾燥工程中に形成される水蒸気が、隔室110からより容易に除去され得る。したがって、一実施形態において、円筒体101,102の一方又は両方が、複数の孔を備える。一実施形態において、円筒体101,102の一方又は両方が、有孔ポリプロピレンからなる。一実施形態において、(図4に示されるように)一個以上の管410は、有孔の又は溝付きのポリプロピレンからなる。
【0016】
一実施形態において、第2同心円筒体102の一部が取り除かれ(例えば、第1の取り外し可能なカバー152が取り外され)、食材片120が各隔室110に配置され、隔室に食材片120が充填された後に第2同心円筒体102の取り外された部分が元に戻される(例えば、取り外し可能なカバー152が再度取り付けられる)。この工程は、所望数の隔室110が食品を収容するまで、他の隔室110を覆う第2同心円筒体102の他の部分で繰り返すことができる。次に、ラック100を真空マイクロ波装置200内に配置することができる。
【0017】
マイクロ波エネルギーは、基本的に、食品を容積加熱する。食材片120が真空マイクロ波装置200内で乾燥させられると、食材片120の内部から境界へ移動する水分が原因で、食材片の表面が粘着性を有するようになる場合がある。このため、一実施形態においては、同心円筒体101,102及び仕切片105は、食材片120が円筒体101,102及び仕切片105に付着することを防止するために、フルオロポリマー等の非粘着性材料を含む。
【0018】
一実施形態において、ラック100が回転させられたときに食材片120が移動できるように、隔室に十分な間隙量を残す食材容量を形成すべく、隔室110に食材片120が充填される。本発明の一実施形態において、円筒体101,102及び仕切片105を含むラック100の一部への付着を回避し、且つ隣り合う食材片120への付着を回避するために、ラック回転中に食材片120が隔室110内で十分に移動するように、隔室110が充填される。食材片120が十分に移動することにより、食材片120の外面の任意の部分が、隣り合う食材片又はラック100の一部と接触する時間を好適に制限する。その結果、十分な移動をすることで、食材片120の外周縁全体から水分が逃げることを許容し、粘着性を低減する。
【0019】
一実施形態において、食材片の粘着は更に、食材片120の外面に対して且つ/又はラック100の円筒体101,102及び仕切片105の隔室側部に対して、油を吹き付ける等して非粘着性被膜を適用することにより、最小限にされる。
【0020】
本発明において使用され得る食品片120には、丸ごとの又はカット片にされたリンゴ、イチゴ、ブルーベリー、及びメロンを含むが、これらに限定されるものではない。本発明において使用される粒イチゴは、きわめて望ましい低水分の保存食品を生み出した。本明細書で使用される場合、保存食品という用語には、約8重量パーセント未満、より好適には約2重量パーセント〜約5重量パーセントの水分含有量のものを含む。一実施形態において、食品は、水分含有量が約2重量パーセント未満である。一実施形態において、食材片120は、丸ごとの状態から半分又は四つにカットされた食材片からなる。一部の食品は、ラック100内への配置に先立って、処理を必要としてもよい。例えば、ぶどうを含むベリー類等の一部の果物は、蒸発による水分損失を遅らせるために、表皮上にろう状の外皮を元々有している。このため、一部の食品は、マイクロ波装置内に配置されたときに、表皮を越える水蒸気の蒸散がより早い速度で起こるように、ろう状の外皮を改質すべく、当該技術分野において周知の方法(例えば、米国特許第7、119,261号明細書第1列第48〜60行参照)によって処理することができる。一実施形態においては、ブルーベリーには、ろう状外皮表面を脱脂(de−lipify)しやすくするために、PAMブランドの油が吹き付けられた。
【0021】
同様に、オレンジは乾燥に先立って皮が剥かれることが好ましい。バナナスライスはねばねばすることが多いため、バナナをボール形状にカットして、ボール形状片同士の、またボール形状片とラック100との間における有効な接触表面積を最小にすることができる。乾燥中にラック100内で十分な移動が行われることにより、バナナ片が互いにくっつくことを防止することができる。桃、ネクタリン、ぶどう、パイナップル、マンゴー、アボガド、及びラズベリーを含む食品を使用することについても企図されるが、食品はこれらに限定されるものではない。チーズ、下ごしらえされたサイコロ肉、及びさつまいもの小片を含むがそれに限定されない野菜等の食品もまた、本発明において乾燥させることができる。バナナと同様に、チーズ、桃、ネクタリン、及びマンゴー等の一部の食品もまた、ラック100に挿入される前に球形片にカットされることで利益を得ることができる。
【0022】
一実施形態において、マイクロ波装置内におけるラック100の回転方向は一方向性であり、例えば、ラック100が真空マイクロ波装置200内に配置されているときに、常に右回り又は左回りである。一実施形態において、ラックの回転は、第1方向と第2方向とに交互に切り替わる。例えば、ラック100は、第1方向(例えば右回り方向)に第1の度数(例えば120度、360度)だけ、次に第2方向(例えば左回り方向)に第2の度数(例えば30度、60度)だけ回転させることができる。一実施形態において、ラック100は、右回り及び左回りの両方向へ、同じ度数だけ回転する。
【0023】
ラック100の環状領域103に配置された隔室110は、食品の周方向への配置を提供する。食品を環状領域103に配置する利点の一つは、真空マイクロ波装置の全周の一部のみを使用し、且つその半円形状に起因する一様でない層厚を有する図1に示される製品12とは異なり、本発明では、真空マイクロ波装置ドラム200の全外周縁を使用することができることにある。その結果、マイクロ波電力密度が径方向において均一である限り、食材片120が真空マイクロ波オーブンの複数の隔室110内においてほぼ同じマイクロ波電力密度を受けるため、図2に示される食材片120の加熱がより均一である。更に、隔室110が食材片120の層厚を均一にするため、加熱がより均一である。
【0024】
食品を環状領域103の隔室110に配置する別の利点は、ラック100の回転に際して、食材片120を静かに移動させることができることにある。ラック100は、食材片120が互いに又は環状隔室110の一部に付着することを防止するように、食材片120を十分に移動させる速度で回転させられることが好ましい。しかしながら、食材片120をあまりにも高速で移動させると、食材片120に望ましくない衝突による損傷を生じさせる可能性があり、結果的に、望ましくない圧縮が起こりかねない。望ましくない圧縮は、食材片120の微細構造が壊れたときに生じ、乾燥工程の終わりに真空状態から解放されたときに食材片120を砕けさせかねない。したがって、食材片120は、望ましくない圧縮を防止するように、静かに移動させられる必要がある。望ましい回転速度は、加工される食材の種類、加工される食材の粘着性、加工される食材がより小さな小片にカットされているか否か、マイクロ波装置の出力、及び予備乾燥や油の添加等の粘着性低減処理を含む、幾つかの要因に左右される。本開示を考慮すれば、当業者であれば、対応する食品に適切な隔室寸法及び回転速度を決定することができるであろう。
【0025】
食品は、赤外線カメラ又は他の好適な測定機器によって供給されるドラム内部温度の上昇、食品の種類及び食品の重量に応じた所定時間、湿度レベル、及び/又は真空マイクロ波装置ドラムで測定される反射エネルギー量を含む1つ以上の要因に基づいて、真空マイクロ波装置から取り出すことができるが、要因はこれらに限定されるものではない。これにより、本発明は、真空マイクロ波調理食品の改良された製造装置及び製造方法を提供する。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態による、真空マイクロ波装置ドラム200の横軸を中心に回転するラック100を有する真空マイクロ波装置200の一部切り欠き側面図である。本実施形態は、ラック100が使用され得る別の形態を説明しているが、図4に示されるラック400を含む他のラックも使用できる。環状隔室110に食品を収容したラック100は、真空マイクロ波装置200の無端コンベアベルト300上に載置される。ベルト300の動作によって、ラック100を連続的に回転させることができる。無端ベルト300の移動方向は、ラック100の回転方向を変更するために、必要に応じて変更することができる。
【0027】
本発明の2つの実施形態は、以下に記載される例において例証されており、例1について図2に示されるラックへの言及、及び例2について図4に示されるラックへの言及は、例証を目的としており、本発明を限定するものではない。
【0028】
例1−イチゴ
約3.6キログラム(約8ポンド)の粒イチゴを洗浄し、水気を切った。完成製品においてより熟した風味をもたらすために、25パーセントの糖溶液が使用された。しかしながら、本工程は任意であり、熟したイチゴが使われるならば、糖溶液は不要である。イチゴ同士が互いに付着し合うことを防止するために、円筒体101,102の隔室側部及びイチゴには、PAMブランドの油が吹き付けられた。ラックの第1同心円筒体101は、約38センチメートル(約15インチ)の外径を有し、第2同心円筒体102は、29センチメートル(約11.5インチ)の内径を有していた。各同心円筒体101,102は、約38センチメートル(約15インチ)の長さを有していた。ラック100は、6個の均等に離間された隔室を有していた。6個の隔室110は、第1同心円筒体101及び第2同心円筒体102の間の環状領域103において、ラック100の長手軸の周りで径方向に配向される仕切片105によって画定されていた。室のうち5個にはそれぞれ、約680グラム(約1.5ポンド)のイチゴが充填され、第1同心円筒体101及び第2同心円筒体102は、有孔ポリプロピレンで構成されていた。ラック100は、ドイツ国シュヴァネヴェーデ(Schwanewede)に所在するピュシュナー社(Pueschner)によって販売された型番0650μWaveVac真空マイクロ波オーブン200の内部に配置された。
【0029】
次にイチゴは、真空下で乾燥させられた。当初、約4キロワットのマイクロ波電力で乾燥させられたが、これは、イチゴによって吸収される約2.7キロワットに対応していた。ラック100は交互切替式で回転させられ、つまり、ラックは、約5.0回転/分の速度設定を使用して、各方向へ約120度回転させられた。マイクロ波装置内部の圧力は、約4kPa(約30トル)に維持された。利用可能な赤外熱加熱の約100パーセントが、乾燥工程の間中使用された。マイクロ波装置ドラム内部の温度を知るために取り付けられた赤外線カメラが摂氏約41度(華氏105度)〜摂氏約43度(華氏110度)の温度範囲を示したときに、マイクロ波電力は、内部温度が摂氏約41度(華氏105度)〜摂氏約43度(華氏110度)の範囲に達するまでは約3キロワットに低下させられて維持され、内部温度が摂氏約43度(華氏110度)の時点においてマイクロ波電力は約2キロワットまで低下させられ、次いで、ドラム内部温度が摂氏約43度(華氏110度)〜摂氏約54度(華氏130度)の範囲に到達するまでは約1.0キロワットに低下させられ、最後に、ドラム内部温度が摂氏約66度(華氏150度)を示すまで約0.5キロワットに低下させられ、真空マイクロ波オーブンが停止させられた。乾燥時間の合計は約50分であり、完成した乾燥イチゴは、約363グラム(0.8ポンド)の重さがあり、且つ約4重量パーセントの保存水分含有量を有していた。手持ち式の赤外線放射温度計は、加工後にドラムが開放されたときに、イチゴ表面温度が摂氏約78度(華氏172度)であることを示した。イチゴとドラム内部温度との温度差は、ドラムの内部温度を測定するために取り付けられた赤外線カメラが、おそらく第1同心円筒体101の温度を測定していることに起因していると考えられる。イチゴは真空下で乾燥されたため、体積は幾分小さくなっているが、各イチゴの完成形状は処理開始時の形状と類似している。完成したイチゴはまた、色調がわずかに暗くなったが、新鮮なイチゴのような良好な色を呈した。続いて、イチゴは、管内部でフライトを使用することによって、より効果的にタンブリングされ得ることが判明した。各円筒体410は、円筒体410の外周の周りで径方向に配向されると共に、内方に延出する3個のフライト405を有していた。各フライトは、およそ1.27センチメートル(1/2インチ)の高さと、60.96センチメートル(24インチ)の長さを有していた。
【0030】
上記の例は、単一のラックの6個の隔室のうちの5個のみを使用して試験規模で行われたが、このような原理の証明は、規模の拡張が可能であることを示している。例えば、バッチ毎に約59キログラム(130ポンド)の生の果物を処理し得るより大型のラックを使用して、約9キログラム(20ポンド)の完成製品を得ることができる。1バッチあたりにこれらのラックを8個使用することにより、あるいは半連続的な動作により、毎時約73キログラム(160ポンド)の乾燥粒イチゴが得られ、これは約2590 28グラムを超える供給である。
【0031】
例2−チーズ
全体で約3357グラム(7.4ポンド)のクラフト社ツイストチーズ(Twist Cheese)スティックは、それぞれ約50パーセントの水分を有する約1.9センチメートル(3/4インチ)角の小片に分けられた。この小片は、6個の管410に充填され、各管の約1/4に詰め込まれた。各管410は、約11センチメートル(4.5インチ)の内径を有していた。各円筒体410は、61センチメートル(24インチ)の長さを有していた。管の内部にフライトは使用されなかった。6個の円筒体410を有するラック400は、ドイツ国シュヴァネヴェーデ(Schwanewede)に所在するピュシュナー社(Pueschner)によって販売された型番0650μWaveVac真空マイクロ波オーブン200の内部に配置された。
【0032】
次にチーズキューブは、ラックを20RPMで回転させることにより移動させられ続け、次いで真空下で乾燥させられた。乾燥は約6キロワットのマイクロ波電力で行われたが、これはチーズによって吸収される約5.3キロワットに対応していた。マイクロ波装置内部の圧力は、約4kPa(約30トル)に保たれた。利用可能な赤外線加熱の約100パーセントが、乾燥工程の間中使用された。乾燥は約17.5分後に完了し、約4重量パーセントの保存水分含有量を有する1.6キログラム(3.6ポンド)のチーズパフが産出された。乾燥中におけるチーズ片の極度な膨張に起因して、乾燥工程終了時には、各管の容積のほぼ全部をチーズパフが占めていた。これらのチーズキューブは、乾燥工程の間に凝集しなかった。乾燥速度は、1時間あたり約5.6キログラム(12.3ポンド)の完成チーズパフを得られる速度であった。低脂肪チーズ小片を同様の方法で乾燥させることも可能である。上記の例は、各円筒体410の容積の25パーセントのみを使用して試験的規模で行われたが、この原理の証明は、規模の拡張が可能であることを示している。
【0033】
本発明は、従来技術では得られない幾つかの効果を奏する。一実施形態において、本発明は、衝突力を最小限にし、且つ均一な層厚を確立し、且つ真空マイクロ波装置ドラムにおいて利用可能な収容能力を増大させるように、真空マイクロ波乾燥が環状領域の複数の隔室で行われることを許容する。一実施形態において、本発明は、食材片の塊状化を回避し、マイクロ波への曝露を増大させる。本発明は、真空マイクロ波食品の大量処理を可能にし、より簡易な自動化の機会を提供する。
【0034】
本発明は、好適な実施形態を参照して図示及び説明してきたが、当業者であれば、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更を加えることができることが理解されよう。例えば、一実施形態においては、マイクロ波エネルギがー食品に適用される前、適用される間、又は適用された後に、赤外線加熱等の別の熱源を適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の乾燥方法であって、
環状領域を有するラックを提供する工程と、該環状領域は更に複数の隔室を含むことと、
前記隔室に食品を充填する工程と、
前記食品を真空マイクロ波装置において前記隔室で乾燥させる工程と、前記ラックが該乾燥工程中に回転することと
を含む方法。
【請求項2】
前記食品は、イチゴ、リンゴ、及びブルせーベリーから選択された1つ以上の食材を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食品は、桃、バナナ、ネクタリン、パイナップル、マンゴー、アボガド、ラズベリー、ブルーベリー、ぶどう、皮が剥かれたオレンジ、及びメロンから選択された1つ以上の食材を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食品はチーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記隔室は前記ラックに取り外し可能に取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記隔室は孔を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各隔室は管を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ラックは交互切替式で回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記食品が油で被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記隔室が油が被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記食品は、保存可能な水分含有量となるように乾燥させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記食品は更に複数の食材片を含み、前記ラックは、前記食材片を移動させる回転速度にて回転させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ラックは、環状領域を画定する第1同心円筒体及び第2同心円筒体を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1又は第2同心円筒体は孔を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の隔室を画定するために、前記第1同心円筒体及び前記第2同心円筒体の間に配置される複数の仕切片を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ラックは交互切替式で回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
周縁領域を有するキャビティを備えた真空マイクロ波装置と、
複数の隔室を有する回転ラックと、該ラックが前記キャビティ内に配置されたときに、前記隔室は該キャビティの周縁領域の周りに配置されることと、前記回転ラックは、前記真空マイクロ波装置のキャビティ内で回転可能であることと
を備える真空マイクロ波装置。
【請求項18】
前記隔室のうち少なくとも1個は管状隔室を備える、請求項17に記載の真空マイクロ波装置。
【請求項19】
前記隔室のうち少なくとも1個は取り外し可能な管を備える、請求項17に記載の真空マイクロ波装置。
【請求項20】
前記隔室のうち少なくとも1個は孔を備える、請求項17に記載の真空マイクロ波装置。
【請求項21】
前記回転ラックは更に、環状領域を間に画定する第1同心円筒体及び第2同心円筒体と、前記環状領域に配置される複数の仕切片と、これにより前記複数の隔室を画定することとを備える、請求項17に記載の真空マイクロ波装置。
【請求項22】
前記第1同心円筒体は取り外し可能なカバーを備える、請求項21に記載の真空マイクロ波装置。
【請求項23】
前記第2同心円筒体は取り外し可能なカバーを備える、請求項21に記載の真空マイクロ波装置。
【請求項24】
前記第1同心円筒体は孔を備える、請求項21に記載の真空マイクロ波装置。
【請求項25】
前記第2同心円筒体は孔を備える、請求項21に記載の真空マイクロ波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−502468(P2011−502468A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548363(P2009−548363)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/051864
【国際公開番号】WO2008/094806
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(500208519)フリト−レイ ノース アメリカ インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】FRITO−LAY NORTH AMERICA,INC.
【Fターム(参考)】