説明

食品中タンパク質の高感度検出法

【課題】ターゲットとする特定の食品中の食物アレルゲンタンパク質等のタンパク質を精度よく測定する方法の提供。
【解決手段】加工食品中の食物アレルゲンタンパク質を該食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法であって、測定の際の反応液に動物の筋肉組織由来タンパク質を添加して測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品中のアレルゲンタンパク質等の特定のタンパク質を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品中の特定のタンパク質を検出する際には、食品に含まれる該タンパク質以外の食品マトリックス成分の影響を強く受けるため、添加回収率ならびに希釈直線性が担保されず、正確な検出が困難な場合がある。特にターゲットが筋肉タンパク質であり、しかも食品中のマトリックスとしてさらに動物性のタンパク質が含まれている場合には、ターゲットタンパク質とそれら動物性タンパク質とが複合体を形成することがあり、そのような傾向は顕著であった。
【0003】
近年、アレルギー物質(以下、アレルゲンとする)を含む食品に起因する健康危害が多く見られるようになってきた。食物アレルギー対策検討委員会による研究報告のアンケート調査で、保育園児で12.6 %、3才児で8.6 %、小学1年生で7.4 %、中学生で6.3 %、成人でも9.3 %の人が何らかのアレルギー症状を有することが明らかになった。この結果を受け厚生労働省では、食物アレルギー患者への情報伝達を徹底し、健康被害を回避することを目的に、発症数及びその重篤度の高い特定原材料の5品目(卵、乳、そば、小麦及び落花生)について平成13年4月より加工食品への表示を義務づけた(平成14年4月施行)。同時に表示適正化を図ることを目的とした検知法が通知された。
これらのアレルゲン検知法では、測定ターゲットとなるアレルゲンを食品中から高率に抽出するために界面活性剤及び還元剤を使用するが(特許文献1、非特許文献1および2を参照)、これらタンパク質変性剤も上記複合体形成に関与しており、さらに正確な測定を困難にしていた。
以上のように様々な食品マトリックスが含まれている加工食品においては、ターゲットとする特定のタンパク質を正確に精度よく測定することは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特許第3600231号公報
【非特許文献1】Watanabe Y. et al.: Journal of Immunological Methods 300(2005) 115-123
【非特許文献2】厚生労働省医薬局食品保健部 食発第1106001号 別添1 平成14年11月6日(最終改正 平成18年6月22日食安発第0622003号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品マトリックス成分に左右されることなくターゲットとする食物アレルゲンタンパク質等の特定のタンパク質を加工食品中より精度よく測定する方法を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は食品中の特定のタンパク質を検出するための免疫学的方法であって、標準品及びサンプル抽出液を希釈する際に該タンパク質とは由来が異なる生物のタンパク質を混合することにより、正確で精度のよい測定が可能となる。具体的には、たとえば甲殻類の主要なアレルゲンであるトロポミオシンを加工食品から検出する場合、スケトウダラすり身或いは同すり身凍結乾燥粉末からタンパク質を抽出し、その抽出液を用いて標準品及びサンプルを希釈する。このような希釈液を用いて、甲殻類トロポミオシン特異的な抗体にて構築したサンドイッチELISA(enzyme-linked immunosorbent assay、酵素標識免疫測定法)を用いて測定したところ、ターゲットタンパク質であるトロポミオシンの添加回収率及び希釈直線が向上するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 加工食品中の特定のタンパク質を該タンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法であって、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加して測定する方法。
[2] 加工食品中の特定のタンパク質が食物アレルゲンタンパク質であり、該食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法であって、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加して測定する方法。
[3] 加工食品から界面活性剤及び還元剤を含む抽出液を用いて食物アレルゲンタンパク質を抽出し、抽出した食物アレルゲンタンパク質と該食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を、動物の筋肉組織由来タンパク質の存在下で反応させることにより、食物アレルゲンタンパク質を測定する、[1]又は[2]の方法。
[4] 加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、トロポミオシンである[2]又は[3]の方法。
[5] 加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、甲殻類由来のトロポミオシンである[4]の方法。
[6] 測定の際の反応液中に含まれる動物の筋肉組織由来タンパク質濃度が100〜730 μg/mLである[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7] 筋肉組織由来タンパク質が、魚類の筋肉組織由来タンパク質である[1]〜[6]のいずれかの方法。
[8] 筋肉組織由来タンパク質が、スケトウダラの筋肉組織由来タンパク質である[7]の方法。
[9] 筋肉組織由来タンパク質が、トロポミオシンを含む[1]〜[6]のいずれかの方法。
[10] 筋肉組織由来タンパク質が、ブタトロポミオシンを含む[9]の方法。
[11] 筋肉組織由来タンパク質が精製トロポミオシンである[1]〜[5]のいずれかの方法。
[12] 筋肉組織由来タンパク質が、精製ブタトロポミオシンである[11]の方法。
[13] 加工食品中の特定のタンパク質を該タンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法において、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加することにより、被検出タンパク質の添加回収率及び希釈直線性を向上させる、[1]〜[12]のいずれかの方法。
[14] 加工食品中の特定のタンパク質が食物アレルゲンタンパク質であり、該食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法において、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加することにより、被検出食物アレルゲンタンパク質の添加回収率及び希釈直線性を向上させる、[13]の方法。
[15] 加工食品中の特定のタンパク質の測定の際に加工食品から抽出した特定のタンパク質を希釈調製するための試薬組成物であって、測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を含む加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[16] 加工食品中の特定のタンパク質が食物アレルゲンタンパク質であり、該加工食品中の食物アレルゲンタンパク質の測定の際に加工食品から抽出した食物アレルゲンタンパク質を希釈調製するための試薬組成物であって、動物の筋肉組織由来タンパク質を含む食物アレルゲンタンパク質希釈調製用試薬組成物である、[15]の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[17] 加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、トロポミオシンである[16]の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[18] 加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、甲殻類由来のトロポミオシンである[17]の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[19] 測定の際の反応液中に含まれる動物の筋肉組織由来タンパク質濃度が100〜730 μg/mLになるように調製された[15]〜[18]のいずれかの加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[20] 筋肉組織由来タンパク質が、魚類の筋肉組織由来タンパク質である[15]〜[19]のいずれかの加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[21] 筋肉組織由来タンパク質が、スケトウダラの筋肉組織由来タンパク質である[20]の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[22] 筋肉組織由来タンパク質が、トロポミオシンを含む「15]〜[19]のいずれかの加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[23] 筋肉組織由来タンパク質が、ブタトロポミオシンを含む[22]の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[24] 筋肉組織由来タンパク質が精製トロポミオシンである[15]〜[18]のいずれかの加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[25] 筋肉組織由来タンパク質が、精製ブタトロポミオシンである[24]の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
[26] [15]〜[25]のいずれかの加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物及び前記加工食品中タンパク質に対する抗体を含む加工食品中タンパク質測定用キット。
[27] 加工食品中タンパク質が食物アレルゲンである、[26]の加工食品中タンパク質測定用キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法により、加工食品中のアレルゲン等のタンパク質を正確に測定することができ、加工食品中のアレルゲン等のタンパク質の含有量を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明において、被測定対象食品として、動物由来の肉を含む食品や植物を含む加工食品が挙げられる。動物としては、哺乳類、鳥類、魚類、甲殻類、軟体類等に属する動物が挙げられる。また、乳や食用鳥卵を含む食品も対象となる。植物としては米穀類、小麦等の麦類、そば等の雑穀類、大豆等の豆類、穀粉・豆粉等の粉類、でん粉類、果実類、野菜類等が対象となる。
【0010】
加工食品としては、日本標準商品分類が定めるところの農産加工食品(分類コード72、野菜加工品、めん・パン類、穀類加工品、菓子類等)、畜産加工食品(同73、肉製品、酪農製品、加工卵製品等)、水産加工食品(同74、加工魚介類、加工海藻類)、その他の食料品(同75、調味料及びスープ、調理食品)、飲料、氷及び製造たばこ(同76、アルコールを含まない飲料等)が挙げられる。特に、エビ、カニ等の加工食品、より適した例として例えばエビシュウマイ、エビグラタン、エビ入りスナック菓子、エビピラフ、カニカマボコ、カニクリームコロッケ等の食品が対象となり得る。
【0011】
測定対象となる加工食品中の特定のタンパク質としては、限定されないが、例えば、上記食品に含まれる筋肉タンパク質、あるいはヒトに対してアレルゲンとなり得るタンパク質などが挙げられる。このような、タンパク質として、例えば筋肉タンパク質ならば、アクチン、ミオシン、トロポニン、トロポミオシン、M-タンパク質、C-タンパク質、F-タンパク質、I-タンパク質、アクチニン、フィラミン、Zタンパク質、デスミンといった筋原繊維タンパク質、クレアチンキナーゼ、パルブアルブミン、ミオグロビンといった筋形質タンパク質、コラーゲン、エラスチンといった筋基質タンパク質がある。また、ヒトに対してアレルゲンとなり得るタンパク質ならば、エビ、カニ等の甲殻類や軟体動物に含まれるトロポミオシンがある。また、その他、卵に含まれるオバルブミン及びオボムコイド等、牛乳に含まれるカゼイン(αs1、αs2、β、γ、)及びラクトアルブミン等、小麦に含まれるグルテニン及びグリアジン等、果実や野菜に含まれるアクチニジン等、落花生に含まれるAra h1及びAra h2等、牛肉に含まれるウシ血清アルブミン(BSA)等、ゴマに含まれるSes i 1等、魚類に含まれるパルブアルブミン等、大豆に含まれるGiym Bd 30K等、ゼラチン等が挙げられるが、これらには限定されない。食物アレルギーとして、ヒトにアレルギー症状を引き起こすあらゆる食品成分が対象となり得る。
【0012】
測定対象となる食品から、タンパク質を抽出し、測定する。タンパク質の抽出は、ブレンダー、ホモジナイザー、フードカッター等を用いて食品をホモジナイズし、抽出用試薬を添加し、数時間から十数時間静置するか、又は振盪することにより行なう。用いる抽出用試薬は限定されないが、例えば、生理食塩水、緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液を用いればよく、さらに、NaClやBSA等の血清アルブミンを含んでいてもよい。また、効率的な抽出のためには、SDS (Sodium dodecyl sulfate、ドデシル硫酸ナトリウム)、Tween20等の界面活性剤、メルカプトエタノール(2-ME)、ジチオトレイトール(DTT)等の還元剤を含んでいることが好ましい。この際、食品1 gに対して、5〜50 mL、好ましくは10〜30 mL、さらに好ましくは15〜25 mLの抽出用試薬を添加すればよい。さらに、アレルゲン抽出用試薬である市販の特定原材料抽出用試薬(森永生科学研究所、FASPEK/Extraction Reagent For Specified Ingredient、Watanabe et al., Journal of Immunological Methods 300(2005) 115-123、組成:トリス緩衝液に BSA, SDS及び2-MEを含む)を用いてもよい。この際、食品1 gに対して、19 mLの特定原材料抽出用試薬を添加すればよい。抽出後、遠心分離を行い上清を回収し、得られた上清を測定に用いる。この際、上清はろ紙を用いてろ過するのが好ましい。
【0013】
上清中のタンパク質の測定は、被測定タンパク質に対する抗体を用いた免疫学的測定法により測定すればよい。例えば、被測定タンパク質がトロポミオシンの場合、抗トロポミオシン抗体を用い、被測定タンパク質が甲殻類トロポミオシンの場合、甲殻類のトロポミオシンに特異的な抗体を用いればよい。この場合、特異性を向上させるためにポリクローナル抗体を特定の抗原で吸収した吸収抗体を用いてもよいし、高い特異性を有するモノクローナル抗体を用いてもよく、あるいは両者を組み合わせてもよい。
【0014】
本発明において、上記の特定の被測定対象食品から抽出した上記の被測定対象タンパク質を測定する際に、該被測定対象タンパク質に筋肉組織由来のタンパク質を添加する。筋肉組織由来のタンパク質は、動物由来筋肉組織タンパク質を用いる。動物は、被測定対象タンパク質の由来動物とは異なる種の動物が好ましい。動物由来筋肉組織タンパク質は、硬骨魚類及び軟骨魚類を含む魚類、哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類等の脊椎動物由来筋肉組織タンパク質であってもよいし、また軟体動物、原索動物、棘皮動物、腔腸動物、節足動物等の無脊椎動物であってもよい。ただし、被測定対象タンパク質とは異なる動物のものである必要がある。
【0015】
例えば、甲殻類由来タンパク質を測定する場合にはスケトウダラ等の魚類やブタ等の哺乳動物由来の筋肉組織タンパク質が挙げられる。この際、被測定対象タンパク質を測定する際に添加する筋肉組織由来のタンパク質に被測定対象タンパク質と相同のタンパク質が含まれる場合、ELISA等の免疫学的測定法による測定で、交差反応が起こる可能性がある。従って、この場合は、異なる動物種由来の筋肉組織タンパク質であって、その測定対象タンパク質について免疫学的に交差反応を起こさない、すなわち抗原交差性を持たないものを添加する。また、例えば、添加する筋肉組織由来のタンパク質と測定対象タンパク質を異なるものとするなど、添加する筋肉組織由来のタンパク質に被測定対象タンパク質の相同タンパク質が含まれないようにしてもよい。上記筋肉組織由来タンパク質は、上記の動物から筋肉組織を採取し、抽出すればよい。例えば、スケトウダラ等の魚類由来の筋肉組織タンパク質を用いる場合、魚すり身抽出液や魚すり身乾燥粉末抽出液等を用いることができる。
【0016】
本発明で用いる筋肉組織由来のタンパク質は、必ずしも単離精製する必要はなく筋肉組織抽出物として添加してもよいし、アクチン、ミオシン、トロポニン、トロポミオシン、M-タンパク質、C-タンパク質、F-タンパク質、I-タンパク質、アクチニン、フィラミン、Zタンパク質、デスミン、クレアチンキナーゼ、パルブアルブミン、ミオグロビン、コラーゲン、エラスチンといった筋肉タンパク質を精製したものであってもよい。なお、筋肉組織由来タンパク質を添加する場合、他のタンパク質、例えば血液タンパク質等が混入したとしても、添加物に主に筋肉組織由来のタンパク質が含まれていればよい。従って、動物の肉からタンパク質を抽出し、それを添加すればよい。
【0017】
筋肉組織由来のタンパク質の抽出は、ブレンダー、ホモジナイザー、フードカッター等を用いてホモジナイズした筋肉組織、或いは凍結乾燥後粉末化した筋肉組織を、抽出用試薬に添加し、数時間から十数時間静置するか、又は振盪することにより行なう。抽出時の温度は特に限定されないが、例えば4℃、室温、37℃で行うことができる。用いる抽出用試薬は限定されないが、例えば、生理食塩水、緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液を用いればよく、さらに、NaClやBSA等の血清アルブミンを含んでいてもよい。その他、EGTA(ethyleneglycol bis ( 2-aminoethylether ) tetraacetic acid、エチレングリコールビス2アミノエチルエーテル四酢酸)やEDTA(Ethylenediamine tetraacetic acid、エチレンジアミン四酢酸)といったキレート剤、あるいは防腐剤を含んでいてもよい。また、効率的な抽出のためには、SDS、Tween20等の界面活性剤、2-ME、DTT等の還元剤を含んでいてもよい。この際、ホモジナイズした筋肉組織ならホモジネート1 gに対して、30〜300 mL抽出用試薬を添加すればよい。また、凍結乾燥粉末なら粉末1 gに対して200〜2000 mLの抽出用試薬を添加すればよい。抽出後、遠心分離を行い上清を回収し、得られた上清を用いる。さらに、アレルゲン抽出用試薬である市販の特定原材料抽出用試薬(森永生科学研究所、FASPEK/Extraction Reagent For Specified Ingredient)を用いてもよい。この際、ホモジナイズした筋肉組織ならホモジネート1 gに対して、5〜50 mL、好ましくは10〜30 mL、さらに好ましくは15〜25 mLの特定原材料抽出用試薬を添加すればよい。また、凍結乾燥粉末なら粉末0.2 gに対して5〜50 mL、好ましくは10〜30 mL、さらに好ましくは15〜25 mLの特定原材料抽出用試薬を添加すればよい。抽出後、遠心分離を行い上清を回収し、得られた上清を用いる。得られた上清を被測定対象となる特定のタンパク質を測定する際の検体希釈液に混合すればよい。この際、いずれの抽出方法においてもアッセイ反応時の検体希釈液に含まれる筋肉組織タンパク質の総濃度は100〜730 μg/mLである。また、未精製の筋肉組織由来タンパク質の代わりに精製した筋肉組織由来タンパク質を用いる場合は、該精製タンパク質を被測定対象となる特定のタンパク質を測定する際の検体希釈液に混合すればよい。例えば、精製トロポミオシンを用いる場合には、0.001〜0.040%となるように該タンパク質を検体希釈液に添加するのが好ましい。
【0018】
本発明は、被検出物質である食物アレルゲンタンパク質等の特定のタンパク質を免疫学的測定法により測定する際に、該特定のタンパク質を希釈調製するための上記の筋肉組織由来タンパク質を含む希釈調製用試薬組成物をも包含する。該試薬組成物は、トリス緩衝液、リン酸緩衝液等をベースに調製され、BSA等の血清アルブミン、Tween20等の界面活性剤、NaCl、防腐剤等を含んでいてもよい。さらに、本発明は前記試薬組成物を含む被検出物質である食物アレルゲンタンパク質等の特定のタンパク質を免疫学的測定法により測定するためのキットをも包含する。該キットは、被検出物である特定のタンパク質に対する抗体、標準品等を含んでいてもよい。用いる標準品は、測定対象となる特定のタンパク質の精製品でもよいが、該特定のタンパク質が由来する原材料動物の総タンパク質抽出物であってもよい。
【0019】
被測定対象となる特定のタンパク質の測定は、ELISA、RIA(radioimmunoassay、放射免疫測定法)、ラテックス凝集測定法、ウエスタンブロッティング等の免疫学的測定法により行なえばよい。この際、測定対象となる特定のタンパク質に対する抗体を用いればよい。
本発明の測定法は、例えば以下のようにして行なう。
【0020】
検体希釈液の調製
トリス緩衝液(20 mM Tris/154 mM NaCl(pH 7.4)(TBS), 0.05 % Tween20, 0.05 % Proclin 200, 2.75 mM EDTA, pH 7.4)に2 g/L程度となるようにプロバイン(スケトウダラすり身凍結乾燥粉末:マルハ株式会社製)を加え、室温にて15時間スターラーで攪拌する。得られた抽出液を3500 rpmで30分間遠心し、その上清をろ過して得られたろ液に1 %程度となるようにBSA(Bio-Rad社製)を添加し検体希釈液(希釈調製用試薬組成物)とする。
【0021】
被検出物である特定のタンパク質を含む食品抽出液の調製
ブレンダー等でホモジナイズした食品1 gに対して、特定原材料抽出用試薬(森永生科学研究所製、FASPEK/ Extraction Reagent For Specified Ingredient)19 mlを加えよく分散させた後、室温にて12時間、振盪抽出する。得られた抽出液を3,000×gで20分間遠心し、その上清をろ過して得られたろ液を食品抽出液とする。
【0022】
測定
前記食品抽出液を前記検体希釈液にて20倍に希釈し測定に供する。さらに希釈が必要な場合には検体希釈液に1/20容量となるように特定原材料抽出用試薬を加えた検体希釈液にて希釈を行い測定に供する。測定は、甲殻類トロポミオシンをターゲットとした場合、トロポミオシンに特異的な抗体にて構築したサンドイッチELISAを用いる。即ち、捕捉用抗体をELISA用96ウエルプレート等に固相化し、その後BSA等でブロッキングを行う。適当な緩衝液でウエル内を洗浄した後、上記希釈サンプル液を添加する。所定のインキュベーション後、ウエル内を洗浄し酵素標識を施した検出用抗体を添加する。所定のインキュベーション後、ウエル内を洗浄し基質(3,3’, 5,5’−テトラメチルベンジジン等)を添加し、所定のインキュベーション後吸光度を検出し、標準曲線から食品中のターゲットタンパク量を算出する。
【実施例】
【0023】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0024】
実施例1 モデル加工食品の調製、ELISA用標準品原液の調製
(1)モデル加工食品の調製作製
以下の方法で、各種加工食品にエビ(ブラックタイガー)肉を含むモデル加工食品検体を調製した。
(i)魚肉ソーセージ
魚肉ソーセージの主な原料であるすり身をフードカッター等でホモジナイズし、食塩等調味料を添加する。この原料3 kgに対してブラックタイガー尾部可食部の凍結乾燥粉末品を44 mg又は220 mg添加し、よく攪拌後、フィルムにケーシングし、121℃で15分間レトルト処理をした。
(ii)フリーズドライ卵スープ(FD卵スープ)
95℃に加熱した水502 gに対して10 gの水に溶いた11.2 gの馬鈴薯澱粉を加えた溶液に、溶卵224 gを加え95℃で維持した(溶卵液)。食塩等を添加した調味料液864 gにブラックタイガー尾部可食部の凍結乾燥粉末品を6 mg又は30 mg添加しよく攪拌した。溶卵液に調味料液を加えよく攪拌し、室温に冷ました後、凍結乾燥用トレイに10 gずつ分注した。-80℃で予備凍結した後、18時間凍結乾燥を行った。凍結乾燥終了後、標品は真空パックで個別に包装した。凍結乾燥後の重量を測定したところ6 mg添加品は約20 %、30 mg添加品は約25 %まで重量が減少した。
(iii)鶏肉団子
鶏肉団子の主原料である鶏肉ささみをフードカッター等でホモジナイズし、食塩等調味料を添加する。この原料1 kgに対してブラックタイガー尾部可食部の凍結乾燥粉末品を14.7 mg添加し、よく攪拌後凍結した。
【0025】
(2)モデル加工食品抽出液の調製
上記(1)の方法でモデル加工食品として調製した魚肉ソーセージ、FD卵スープ及び鶏肉団子を均一になるようにミキサー等で粉砕した。粉砕物の1 gをプラスティック製遠心管に取り、特定原材料抽出用試薬19 mLを加えてよく振り混ぜて混合し、固形分を均等に分散させた。遠心管を横にして振とう機で一晩(12時間、室温)振とうしながら抽出した(90〜100 rpm、振とう幅3 cm程度)。抽出後3,000×gで20分間遠心分離し、得られた上清をろ紙でろ過したものをモデル加工食品抽出液とした。
【0026】
(3)ELISA用標準品原液の調製
健康危害の観点から、食物アレルギーを誘発する量を考える場合には、原材料中のアレルゲン量ではなく、加工食品中に含まれる原材料の総タンパク質量が重要であると一般的に考えられている。従って、エビ原材料の総タンパク質を標準品とすることにした。
10 mM Na-Phosphate/154 mM NaCl(pH 7.4)(PBS)に0.5 % SDS、2 % メルカプトエタノールとなるよう溶解し、さらにプロテアーゼ阻害剤カクテル(Pierce社製 Halt Inhibitor Cocktail Kit Cat. No.78410)を10 μL/mLとなるように添加し、また終濃度5 mMとなるように EDTAを添加したものを標準品抽出用液とした。標準品抽出用液をプラスティック製遠心管などに20 mL取り、被検体としてブラックタイガー尾部可食部の凍結乾燥粉末品を0.1 g添加した。遠心管を横にして振とう機で15時間、室温にて振とう(90〜100 rpm、振とう幅3 cm程度)しながらタンパク質を抽出した。抽出後10,000×gで30分間遠心分離し、上清を0.8 μmミクロフィルター(アドバンテック社製、DISMIC-25cs Cat. No. 25CS080AN)でろ過した。ろ過した液を、100℃で10分間加熱し、ELISA用標準品原液とした。ELISA用標準品原液の総タンパク質濃度を2-D Quant Kit(Amersham Biosciences社製 Cat.No.80-6483-56)で定量し、ELISA標準品原液の値付けを行った(3.42 mg/mL)。
【0027】
(4)モデル加工食品のエビタンパク質含量の測定について
上記ELISA用標準品原液作製の結果より、ブラックタイガー尾部可食部の凍結乾燥粉末品から上記特定原材料抽出用試薬を用いて抽出される総タンパク質は粉末1 g当たり684 mgであることが明らかになった。従って、上記の各モデル加工食品の食品抽出液中に抽出されてくるエビ総タンパク質含量は、魚肉ソーセージのブラックタイガー尾部可食部の凍結乾燥粉末44 mg添加分が500 ng/mL(元の食品中で10 ppm)、FD卵スープの粉末6 mg添加分が595 ng/mL(元の食品中で11.9 ppm)、鶏肉団子の粉末14.7 mg添加分が500 ng/mL(元の食品中で10 ppm)、魚肉ソーセージの粉末220 mg添加分、FD卵スープの粉末30 mg添加分が2500 ng/mL(各々元の食品中で50 ppm)と計算された。
【0028】
実施例2 すり身抽出液(筋肉組織タンパク質含有物)を添加した検体希釈液を使った測定
(1)検体希釈液(すり身)の調製
スケトウダラすり身(マルハ株式会社製)を乳鉢等で十分にホモジナイズした。ホモジナイズしたスケトウダラすり身1 gに対して、上記特定原材料抽出用試薬19 mLを加え、一晩(17時間)室温で振とう抽出した。抽出後、抽出液を3,000×gで20分間遠心分離し、得られた上清をろ紙でろ過したものをすり身抽出液原液とした。このすり身抽出液原液に等量の特定原材料抽出用試薬を加えた。これを1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200(Supelco社製、Cat. No. 500380)/ 20 mM TBS, pH 7.4で20倍希釈したものを検体希釈液(すり身)とした。
【0029】
(2)すり身抽出物添加希釈用液を使った測定
実施例1で作製したモデル加工食品の測定を行い、モデル加工食品に含まれるエビ総タンパク質含量に対する測定値の割合(回収率)及びサンプルの希釈直線性〔回帰係数(R2)〕で測定系の評価を行った。
【0030】
(i)標準品の調製
(試験群)
実施例1-(3)のELISA用標準品原液を上記(1)のすり身抽出液原液にて3420倍希釈し(1 μg/mL)、さらに1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4にて20倍希釈した(50 ng/mL)。さらに、上記検体希釈液(すり身)を用いて50 ng/mLから0.78125 ng/mLまで2倍段階希釈し、スケトウダラすり身抽出物を含む試験標準品を調製した。
(対照群)
実施例1-(3)のELISA用標準品原液を上記特定原材料抽出用試薬にて3420倍希釈し、さらに1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4にて20倍希釈した(50 ng/mL)。さらに、1/20量の上記特定原材料抽出用試薬を添加した1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4を用いて50 ng/mLから0.78125 ng/mLまで2倍段階希釈し、スケトウダラすり身抽出物を含まない対照標準品を調製した。
【0031】
(ii) モデル加工食品抽出液希釈液の調製
(試験群)
実施例1-(2)で作製したモデル加工食品抽出液と上記(1)のすり身抽出液原液を等量混合し(2倍希釈液)、さらに1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4にて20倍希釈した(40倍希釈液)。さらに上記(1)の検体希釈液(すり身)を用いて、40倍希釈液を原液とし1/32(1280倍)まで2倍段階希釈し、スケトウダラすり身抽出物を含むモデル加工食品抽出液試験希釈液を調製した。
(対照群)
実施例1-(2)で作製したモデル加工食品抽出液と特定原材料抽出用試薬を等量混合し(2倍希釈液)、さらに1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4にて20倍希釈した(40倍希釈液)。さらに、1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4により40倍希釈液を原液とし1/32(1280倍)まで2倍段階希釈し、スケトウダラすり身抽出物を含まないモデル加工食品抽出液対照希釈液を調製した。
【0032】
(iii)測定
ブラックタイガー由来トロポミオシンに対する捕捉用抗体を96ウエルマイクロタイタープレート等に固相化し、その後BSA等でブロッキングを行った。ウエル内のブロッキング液を除去した後、上記試験標準品(50 ng/mL〜0.78125 ng/mL)、対照標準品(50 ng/mL〜0.78125 ng/mL)、モデル加工食品抽出液試験希釈液(40倍〜1280倍)及びモデル加工食品抽出液対照希釈液(40倍〜1280倍)を100 μL/ウエル添加した。1時間、25℃にてインキュベーション後、ウエル内を洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識を施したブラックタイガー由来トロポミオシンに対する検出用抗体を100 μL添加した。1時間、25℃にてインキュベーション後、ウエル内を洗浄し基質(3,3’, 5,5’−テトラメチルベンジジン)を100 μL添加し、25℃で20分インキュベーション後、0.1 N硫酸を100 μL添加し酵素反応を停止させ、プレートリーダーで主波長450 nm、副波長600〜650 nmの各ウエルの吸光度を測定した。
【0033】
上記試験標準品及び対照標準品の結果に基づき標準曲線を作成し、該標準曲線から、それぞれモデル加工食品抽出液試験希釈液(40倍〜1280倍)及びモデル加工食品抽出液対照希釈液(40倍〜1280倍)中のタンパク質濃度を算出した。
【0034】
(iv)結果
魚肉ソーセージ(50 ppm)及びFD卵スープ(50 ppm)を測定した結果を図1及び表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
検体希釈液にスケトウダラすり身抽出物を添加しない溶液を用いた場合(対照群)(図1A〜図1Bの●及び表1)、魚肉ソーセージの回収率は152.4〜466.0 %、回帰係数はR2 = 0.9374であった。FD卵スープの回収率は37.5〜68.1 %、回帰係数はR2 = 0.997であった。
【0037】
一方、検体希釈液にスケトウダラすり身抽出物を添加した溶液を用いた場合(試験群)(図1A〜図1Bの▲及び表1)、魚肉ソーセージの回収率は64.9〜69.1 %、回帰係数はR2 = 0.9999、FD卵スープの回収率は50.8〜55.4 %、回帰係数はR2 = 0.9992であり、いずれのモデル加工食品においても回収率及び希釈直線性が改善された。従って、試験群においては食品マトリックスの影響を受けずに正確に測定できることが判明した。
【0038】
実施例3 すり身乾燥粉末(プロバイン)抽出物を添加した試験1
(1)検体希釈液(プロバイン)1の調製
プロバイン(スケトウダラすり身凍結乾燥粉末:マルハ株式会社製)0.2 gに対して、特定原材料抽出用試薬19.8 mLを加え、一晩(17時間)室温で振とう抽出した。抽出後、抽出液を3,000×gで20分間遠心分離し、得られた上清をろ紙でろ過したものをプロバイン抽出液原液とした。このプロバイン抽出液原液に等量の特定原材料抽出用試薬を加えた。これを1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4で20倍希釈したものを検体希釈液(プロバイン)1とした。
【0039】
(2)プロバイン抽出物添加希釈用液を使った測定
(i)標準品の調製
実施例1記載の方法で調製したELISA用標準品原液を上記(1)のプロバイン抽出液原液にて3420倍希釈し(1 μg/mL)、さらに1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4にて20倍希釈した(50 ng/mL)。さらに検体希釈液(プロバイン)1を用いて50 ng/mLから0.78125 ng/mLまで2倍段階希釈し、プロバイン抽出物を含む試験標準品を調製した。
(ii)モデル加工食品抽出液希釈液の調製
実施例1記載の方法で調製したモデル加工食品抽出液(魚肉ソーセージ及びFD卵スープ)をプロバイン抽出液原液と等量混合し(2倍希釈液)、さらに1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4にて20倍希釈した(40倍希釈液)。さらに検体希釈液(プロバイン)1を用いて40倍希釈液を原液とし1/32まで2倍段階希釈し、プロバイン抽出物を含むモデル加工食品抽出液試験希釈液を調製した。
対照群には実施例2と同様のものを設定した。
測定は、実施例2と同じ方法で行なった。
(iii) 結果
魚肉ソーセージ(50 ppm)及びFD卵スープ(50 ppm)を測定した結果を図2及び表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
検体希釈液にプロバイン抽出物を添加しない溶液を用いた場合(対照群)(図2A〜図2Bの●及び表2)、魚肉ソーセージの回収率は152.4〜466.0 %、回帰係数はR2 = 0.9239であった。FD卵スープの回収率は37.5〜68.1 %、回帰係数はR2 = 0.997であった。
一方、検体希釈液にプロバイン抽出物を添加した溶液を用いた場合(試験群)(図2A〜図2Bの▲及び表2)、魚肉ソーセージの回収率は62.1〜68.1 %、回帰係数はR2 = 0.9997、FD卵スープの回収率は55.6〜67.7 %、回帰係数はR2 = 0.9991であり、いずれのモデル加工食品においても回収率及び希釈直線性が改善された。従って、試験群においては食品マトリックスの影響を受けずに正確に測定できることが判明した。
【0042】
実施例4 すり身乾燥粉末(プロバイン)抽出物を添加した試験2
(1)検体希釈液(プロバイン)2の調製
トリス緩衝液(20 mM Tris/154 mM NaCl(pH 7.4)(TBS), 0.05 % Tween20, 0.05 % Proclin 200, 2.75 mM EDTA, pH 7.4)に2.3 g/Lとなるようにプロバインを加え、室温にて15時間スターラーで攪拌した。得られた抽出液を9,110×gで30分間遠心し、その上清を0.22 μmのフィルター(Corning社製、500 mL Bottle Top Filter .22μm PES, Cat. No.431118)にてろ過して得られたろ液に1 %となるようにBSAを添加し検体希釈液(プロバイン)2とした(試験群)。
また、コントロールとして1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4を検体希釈液(対照)とした(対照群)。
【0043】
(2)測定
(i)標準品の調製
実施例1記載の方法で調製したELISA用標準品原液を特定原材料抽出用試薬で1 μg/mLまで希釈(3420倍)し標準品とした。
標準品を検体希釈液(プロバイン)2又は検体希釈液(対照)にて20倍に希釈した。さらに、1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した検体希釈液(プロバイン)2又は検体希釈液(対照)を用いて50 ng/mLから0.78125 ng/mLまで2倍段階希釈して試験標準品を調製した。
(ii)モデル加工食品抽出液希釈液の調製
実施例1に記載の方法で調製したモデル加工食品抽出液を検体希釈液(プロバイン)2又は検体希釈液(対照)にて20倍に希釈した(20倍希釈液)。さらに、20倍希釈液を、1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した検体希釈液(プロバイン)2又は検体希釈液(対照)を用いて試験群は1/16まで対照群は1/32まで2倍段階希釈した。
測定は、実施例2と同じ方法で行なった。
【0044】
(3)結果
測定に検体希釈液(対照)を用いた場合(対照群)と検体希釈液(プロバイン)2を用いた場合(試験群)の魚肉ソーセージ(10 ppm)、FD卵スープ(11.9 ppm)、鶏肉団子(10 ppm)の希釈直線を図3A〜図3Cに示す。
また、上記各モデル加工食品の回収率を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
検体希釈液(対照)を用いた場合(対照群)(図3A〜図3Cの●及び表3)、魚肉ソーセージの回収率は139.3〜405.0 %、回帰係数はR2 = 0.9414であった。FD卵スープの回収率は112.5〜196.5 %、回帰係数はR2 = 0.9857、鶏肉団子の回収率は157.0〜333.7 %、回帰係数はR2 = 0.9659であり、いずれも正確に測定されているとはいい難かった。
【0047】
一方、検体希釈液(プロバイン)2を用いた場合(試験群)(図3A〜図3Cの▲及び表3)、魚肉ソーセージの回収率は108.2〜130.7 %、回帰係数はR2 = 0.9953、FD卵スープの回収率は94.4〜124.6 %、回帰係数はR2 = 0.9977、鶏肉団子の回収率は101.2〜109.0 %、回帰係数はR2 = 0.9996であり、いずれのモデル加工食品においても検体希釈液(プロバイン)2を用いた場合、非常に良好な回収率と希釈直線性が認められた。また、実施例3と比べ回収率の向上が認められた。
【0048】
実施例5 すり身乾燥粉末(プロバイン)抽出物を添加した試験3
(1)検体希釈液(プロバイン)3の調製
100 mM Tris/0.77 M NaCl(pH 7.4)(5×TBS)に0.25 % Tween20、0.25 % Proclin 200を混合した緩衝液に10 g/Lとなるようにプロバインを加え、室温にて15時間スターラーで攪拌した。得られた抽出液を蒸留水にて5倍に希釈し、さらに終濃度2.5 mMとなるように0.5 M EDTA(pH 7.4)を添加した。その後、9,110×gで30分間遠心し、その上清を0.2 μmのフィルターにてろ過して得られたろ液に1 %となるようにBSAを添加し検体希釈液(プロバイン)3とした(試験群)。
また、コントロールとして1 % BSA/ 0.05 % Tween20/ 0.05 % Proclin 200/ 20 mM TBS, pH 7.4を検体希釈液(対照)とした(対照群)。
【0049】
(2)測定
(i)標準品の調製
実施例1に記載の方法で調製したELISA用標準品原液を特定原材料抽出用試薬で1 μg/mLまで希釈(3420倍)し標準品とした。
標準品は検体希釈液(プロバイン)3又は検体希釈液(対照)にて20倍に希釈し、さらに1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した検体希釈液(プロバイン)3又は検体希釈液(対照)を用いて0.78125 ng/mLまで2倍段階希釈して調製した。
(ii)モデル加工食品抽出液希釈液の調製
実施例1に記載の方法で調製したモデル加工食品抽出液は検体希釈液(プロバイン)3又は検体希釈液(対照)にて20倍に希釈したものと、20倍希釈液をさらに1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した検体希釈液(プロバイン)3又は検体希釈液(対照)を用いて5倍希釈(100倍希釈)したものを測定に供した。
測定は、実施例2と同じ方法で行なった。
【0050】
(3)結果
測定に検体希釈液(対照)を用いた場合(対照群)と検体希釈液(プロバイン)3を用いた場合(試験群)の魚肉ソーセージ(10 ppm)、FD卵スープ(11.9 ppm)、鶏肉団子(10 ppm)の20倍希釈、100倍希釈における回収率を表4に示す。検体希釈液(対照)を用いた場合、魚肉ソーセージでは20倍希釈における回収率が139.7 %であったのに対し、100倍希釈では258.0 %であった。FD卵スープでは20倍希釈における回収率が112.5 %、100倍希釈が161.6 %、鶏肉団子では20倍希釈における回収率157.0 %、100倍希釈では252.5 %でありいずれのモデル加工食品においても、食品マトリックスの影響を強く受け、正確に測定できているとは言い難かった。一方、検体希釈液(プロバイン)3を用いた場合魚肉ソーセージでは20倍希釈における回収率が100.3 %であったのに対し、100倍希釈では116.6 %であった。FD卵スープでは20倍希釈における回収率が106.5 %、100倍希釈が109.7 %、鶏肉団子では20倍希釈における回収率97.4 %、100倍希釈では96.2 %であり、検体希釈液(プロバイン)3を用いた場合、いずれのモデル加工食品においても、食品マトリックスの影響を受けず非常に良好な回収率と希釈直線性を示すことが判明した。
【0051】
【表4】

【0052】
実施例6 検体希釈液のタンパク質濃度の検証
各種検体希釈液中のタンパク質濃度を変化させて、モデル加工食品を測定した際の回収率について検討を行った。
(1)各種検体希釈液の作製
実施例2、3で示す方法に従って検体希釈液(すり身)及び検体希釈液(プロバイン)1を作製した。また、プロバイン添加量を0.5、1、2.3、2.5、3及び5 g/Lとし、実施例4-(1)に示す方法に従って各種濃度の検体希釈液(プロバイン)を作製した。なお、すり身及びプロバインを添加した検体希釈液中のタンパク質濃度はBSAを添加する前に測定した。
【0053】
(2)測定
(1)で作製した検体希釈液(すり身)、検体希釈液(プロバイン)1を用いて、実施例1で作製したモデル加工食品である魚肉ソーセージ(50 ppm)、FD卵スープ(50 ppm)を対象に測定を行った(20倍希釈のみ。実施例2〜5参照)。また、各種濃度の検体希釈液(プロバイン)を用いて、実施例1で作製したモデル加工食品である魚肉ソーセージ(10 ppm)、FD卵スープ(11.9 ppm)を対象に測定を行った。測定は実施例2と同じ方法で行った。
【0054】
(3)結果
検体希釈液(すり身)及び検体希釈液(プロバイン)1を用いた場合のモデル加工食品(魚肉ソーセージ、FD卵スープ)の回収率を表5に、各種検体希釈液(プロバイン)を用いた場合のモデル加工食品(魚肉ソーセージ、FD卵スープ)の回収率を表6に示す。また、各検体希釈液のタンパク質濃度も表5及び6に併せて示す。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
表5及び6に示すとおり、検体希釈液中のタンパク質濃度100〜730 μg/mLの範囲におけるモデル加工食品の回収率は55〜129 %の範囲であり、このタンパク質濃度範囲においては良好な回収率が得られることが判明した。
【0058】
実施例7 精製トロポミオシンを用いた検討
(1)精製トロポミオシンの調製
甲殻類のトロポミオシンとはアミノ酸配列上の相同性が低い哺乳類のトロポミオシンを、ブタ筋肉組織より調製した。ブタ筋肉組織をブレンダーでホモジナイズし、Greaserら(The Journal of Biological Chemistry Vol. 216, No. 13, 4226-4233, 1971)の方法に従ってアセトンで脱脂後1M KClで抽出した。筋肉組織抽出液を硫安分画後、等電点沈殿に供した。この沈殿を溶解した溶液をSuperdex 200pgカラムに供し、ゲルろ過クロマトグラフィーを行った。トロポミオシンを含む画分を回収し、20 mM TBS, pH 7.4に対して透析を行い、精製トロポミオシンとした。
【0059】
(2)検体希釈液(トロポミオシン)の調製
上記精製トロポミオシンを20 mM TBS, pH 7.4で所定の濃度に希釈した後、終濃度1%となるようBSAを添加し、また終濃度0.05%となるようTween 20およびProclin 200を添加した。得られた溶液を検体希釈液(トロポミオシン)とした。
【0060】
(3)測定
(i)標準品の調製
実施例1に記載の方法で調製したELISA用標準品原液を特定原材料抽出液で1μg /mLまで希釈し(3420倍)、標準品とした。
標準品は検体希釈液(トロポミオシン)にて20倍に希釈し、さらに1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した検体希釈液(トロポミオシン)を用いて0.78125 ng/mLまで2倍段階希釈して調製した。
(ii)モデル加工食品抽出液希釈液の調製
実施例1に記載の方法で調製したモデル加工食品抽出液を検体希釈液(トロポミオシン)にて20倍に希釈した。さらに、1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した検体希釈液(トロポミオシン)を用いて1/16まで2倍段階希釈した。
測定は、実施例2と同じ方法で行い、モデル加工食品に含まれるエビ総タンパク質含量に対する測定値の割合(回収率)およびサンプルの希釈直線性〔回帰係数(R2)〕より測定系の評価を行った。
【0061】
(4)結果
0.02%のトロポミオシンを含む検体希釈液(トロポミオシン)、あるいは実施例5に示した検体希釈液(プロバイン)3を用いて測定を行った場合の標準曲線を図4に示す。いずれの検体希釈液を用いた場合でも、タンパク質濃度50 ng/mLにおける吸光度はほぼ同じであった。しかしながら、検体希釈液(プロバイン)3を用いた場合のバックグラウンド(タンパク質濃度0 ng/mLにおける吸光度)が0.17と高値であったのに対し、検体希釈液(トロポミオシン)を用いた場合のバックグラウンドは0.06と低い値を示した。
次いで、0.02%のトロポミオシンを含む検体希釈液(トロポミオシン)を用いた場合の魚肉ソーセージ(10 ppm)、FD卵スープ(11.9 ppm)、鶏肉団子(10 ppm)の希釈直線を図5A〜5Cに示す。
魚肉ソーセージの回収率は97.3〜132.6%、希釈直線の回帰係数はR2=0.9964、FD卵スープの回収率は107.3〜124.2%、希釈直線の回帰係数はR2=0.9995、鶏肉団子の回収率は92.0〜132.5%、希釈直線の回帰係数はR2=0.9922と、いずれのモデル加工食品においても良好な回収率と希釈直線性が得られ、本検体希釈液を用いることによって食品マトリックスの影響を受けずに正確な測定が行えることが明らかとなった。
【0062】
以上の結果より、プロバインなどの未精製筋肉組織由来タンパク質の代わりに精製トロポミオシンを添加した検体希釈液を用いることによって、未精製の筋肉組織由来タンパク質を添加した検体希釈液を用いた場合と同様の良好な回収率と希釈直線性は保たれたまま、バックグラウンドの低減化が可能であることが判明した。
【0063】
実施例8 精製トロポミオシン添加濃度の検討
検体希釈液に含まれる精製トロポミオシン濃度を変化させて、モデル加工食品を測定した際の回収率と希釈直線性について検討を行った。
(1)検体希釈液の調製
実施例7に示す方法に従って調製した精製トロポミオシンを20 mM TBS, pH 7.4で所定の濃度に希釈した後、終濃度1%となるようBSAを添加し、また終濃度0.05%となるようTween 20およびProclin 200を添加した。得られた各種濃度のトロポミオシンを含む検体希釈液を用いて、モデル加工食品の測定を行った。
【0064】
(2)測定
(i)標準品の調製
実施例1に記載の方法で調製したELISA用標準品原液を特定原材料抽出液で1μg /mLまで希釈し(3420倍)、標準品とした。
標準品は各種濃度のトロポミオシンを含む検体希釈液にて20倍に希釈し、さらに1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した同検体希釈液を用いて0.78125 ng/mLまで2倍段階希釈して調製した。
(ii)モデル加工食品抽出液希釈液の調製
実施例1に記載の方法で調製したモデル加工食品抽出液を各種濃度のトロポミオシンを含む検体希釈液にて20倍に希釈した。さらに、1/20量の特定原材料抽出用試薬を添加した同検体希釈液を用いて1/16まで2倍段階希釈した。
測定は、実施例2と同じ方法で行い、モデル加工食品に含まれるエビ総タンパク質含量に対する測定値の割合(回収率)およびサンプルの希釈直線性〔回帰係数(R2)〕を評価した。
【0065】
(3)結果
各種濃度のトロポミオシンを含む検体希釈液を用いてモデル加工食品の測定を行った結果を表7に示す。
【0066】
【表7】

【0067】
このように、トロポミオシン濃度0.001〜0.040%の範囲におけるモデル加工食品の回収率は79.0〜149.1%の範囲であり、このトロポミオシン濃度範囲においては良好な回収率が得られることが判明した。また、トロポミオシン濃度0.001〜0.040%の範囲におけるモデル加工食品測定時の希釈直線性も、回帰係数R2=0.9903〜0.9999と良好であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の方法は、加工食品に含まれるアレルゲン等の特定のタンパク質の測定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1A】筋肉組織由来タンパク質としてスケトウダラすり身抽出液を用いた試験において、魚肉ソーセージの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図1B】筋肉組織由来タンパク質としてスケトウダラすり身抽出液を用いた試験において、FD卵スープの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図2A】筋肉組織由来タンパク質としてスケトウダラすり身乾燥粉末抽出液を用いた試験において、魚肉ソーセージの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図2B】筋肉組織由来タンパク質としてスケトウダラすり身乾燥粉末抽出液を用いた試験において、FD卵スープの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図3A】筋肉組織由来タンパク質としてスケトウダラすり身乾燥粉末抽出液を用いた試験において、魚肉ソーセージの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図3B】筋肉組織由来タンパク質としてスケトウダラすり身乾燥粉末抽出液を用いた試験において、FD卵スープの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図3C】筋肉組織由来タンパク質としてスケトウダラすり身乾燥粉末抽出液を用いた試験において、鶏肉団子の検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図4】0.02%のトロポミオシンを含む検体希釈液(トロポミオシン)、あるいは検体希釈液(プロバイン)3を用いて測定を行った場合の標準曲線を示す図である。
【図5A】筋肉組織由来タンパク質として精製トロポミオシンを用いた試験において、魚肉ソーセージの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図5B】筋肉組織由来タンパク質として精製トロポミオシンを用いた試験において、FD卵スープの検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。
【図5C】筋肉組織由来タンパク質として精製トロポミオシンを用いた試験において、鶏肉団子の検体抽出液を2倍段階希釈した際の、希釈倍率と測定値の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工食品中の特定のタンパク質を該タンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法であって、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加して測定する方法。
【請求項2】
加工食品中の特定のタンパク質が食物アレルゲンタンパク質であり、該食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法であって、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加して測定する方法。
【請求項3】
加工食品から界面活性剤及び還元剤を含む抽出液を用いて食物アレルゲンタンパク質を抽出し、抽出した食物アレルゲンタンパク質と該食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を、動物の筋肉組織由来タンパク質の存在下で反応させることにより、食物アレルゲンタンパク質を測定する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、トロポミオシンである請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、甲殻類由来のトロポミオシンである請求項4記載の方法。
【請求項6】
測定の際の反応液中に含まれる動物の筋肉組織由来タンパク質濃度が100〜730 μg/mLである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
筋肉組織由来タンパク質が、魚類の筋肉組織由来タンパク質である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
筋肉組織由来タンパク質が、スケトウダラの筋肉組織由来タンパク質である請求項7記載の方法。
【請求項9】
筋肉組織由来タンパク質が、トロポミオシンを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
筋肉組織由来タンパク質が、ブタトロポミオシンを含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
筋肉組織由来タンパク質が精製トロポミオシンである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
筋肉組織由来タンパク質が、精製ブタトロポミオシンである請求項11記載の方法。
【請求項13】
加工食品中の特定のタンパク質を該タンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法において、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加することにより、被検出タンパク質の添加回収率及び希釈直線性を向上させる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
加工食品中の特定のタンパク質が食物アレルゲンタンパク質であり、該食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を用いて免疫学的に測定する方法において、測定の際の反応液に測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を添加することにより、被検出食物アレルゲンタンパク質の添加回収率及び希釈直線性を向上させる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
加工食品中の特定のタンパク質の測定の際に加工食品から抽出した特定のタンパク質を希釈調製するための試薬組成物であって、測定しようとする前記特定のタンパク質と抗原交差性を持たない動物の筋肉組織由来タンパク質を含む加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項16】
加工食品中の特定のタンパク質が食物アレルゲンタンパク質であり、該加工食品中の食物アレルゲンタンパク質の測定の際に加工食品から抽出した食物アレルゲンタンパク質を希釈調製するための試薬組成物であって、動物の筋肉組織由来タンパク質を含む食物アレルゲンタンパク質希釈調製用試薬組成物である、請求項15記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項17】
加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、トロポミオシンである請求項16記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項18】
加工食品中の食物アレルゲンタンパク質が、甲殻類由来のトロポミオシンである請求項17記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項19】
測定の際の反応液中に含まれる動物の筋肉組織由来タンパク質濃度が100〜730 μg/mLになるように調製された請求項15〜18のいずれか1項に記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項20】
筋肉組織由来タンパク質が、魚類の筋肉組織由来タンパク質である請求項15〜19のいずれか1項に記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項21】
筋肉組織由来タンパク質が、スケトウダラの筋肉組織由来タンパク質である請求項20記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項22】
筋肉組織由来タンパク質が、トロポミオシンを含む請求項15〜19のいずれか1項に記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項23】
筋肉組織由来タンパク質が、ブタトロポミオシンを含む請求項22記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項24】
筋肉組織由来タンパク質が精製トロポミオシンである請求項15〜18のいずれか1項に記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項25】
筋肉組織由来タンパク質が、精製ブタトロポミオシンである請求項24記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物。
【請求項26】
請求項15〜25のいずれか1項に記載の加工食品中タンパク質希釈調製用試薬組成物及び前記加工食品中タンパク質に対する抗体を含む加工食品中タンパク質測定用キット。
【請求項27】
加工食品中タンパク質が食物アレルゲンである、請求項26記載の加工食品中タンパク質測定用キット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2008−170411(P2008−170411A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101121(P2007−101121)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000003274)株式会社マルハニチロ水産 (13)
【出願人】(597128004)国立医薬品食品衛生研究所長 (22)