説明

食品包装および健康管理用途向けの強化ポリアミド

本発明は、包装用のフィルム、パウチおよびチューブを二次加工するのに有用な、エチレン酸共重合体/ポリアミドのブレンドを含むフィルムまたはシートである。本明細書に記載する組成物から得られるフィルム、パウチおよびチューブは強靭であり、低温であっても良好な機械的性質および良好な光学的性質を示す。さらに詳細には、本発明のエチレン共重合体およびポリアミドの組成物は、食料および医療用溶液の包装に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年11月8日出願の米国仮特許出願第60/626,165号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、高い光学的透明度を有するフィルム、シート、パウチ、ボトルおよびチューブなどの単一層または多層構造を二次加工するのに有用な、ポリアミドおよび特定のエチレン酸共重合体の組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、無水物イオノマーまたは無水物イオノマーと他のポリマーのブレンドで改質されたナイロンを含む、優れた耐屈曲性および低温での靭性を示しかつ最も重要な点として良好な光学的性質を保持するフィルムおよび構造体に関する。本発明の変性ポリアミドのフィルムおよび構造体は、食品包装および健康管理の用途に適している。
【背景技術】
【0003】
ポリアミド(ナイロン)、および特にナイロン6は、食品包装用途に広く使用されている。多くの場合、ナイロンの機能は機械的強度および靭性を提供することである。産業界では、ナイロンフィルムの、特に低温における靭性をさらに改良することが必要とされている。例えば、ナイロン6ベースの多層フィルムは肉の包装に使用されるが、肉はフリーザー温度で保存され輸送されることが多い。乾燥状態のフリーザー温度下では、ナイロンはもろくなる傾向がある。低温での靭性を改良するためにナイロンを加湿する種々の手段が用いられてきた。それらの方法では、品物を低温保存するのに適した包装用フィルムの生産が複雑になり望ましくない。さらに、処理条件、保存条件および取り扱い条件がナイロンフィルムの水分含有量に影響を与えるので、信頼できる結果を実現するのが困難になる。
【0004】
種々の高分子改質剤によってナイロンを強化する取り組み方もあるが、その結果は様々である。望ましい靭性および剛性もたらすことができるような典型的な改質剤を添加すると、光学的透明度が低下する傾向があり、ナイロン6が不透明なフィルムになる。ナイロンと改質剤のブレンドは、典型的には、ある種のポリマーの微視的な粒子が別の種類のポリマーの連続相中に分散しているものから構成される。分散が不十分であるかまたは粒子が大きいと(あるいはその両方であると)、光を透過するよりも散乱させる傾向がある。その結果、ポリマーブレンドは不透明になりがちである。例えば、マレイン酸化(maleated)ポリエチレンを使用するとナイロンを改質して靭性を与えることができるが、光学的透明度が犠牲にされる。多くの食品包装用途および健康管理用途では、フィルムまたは構造体(単一層また多層のいずれか)の透視鮮明度および/または接触透明度(contact clarity)が重要である。
【0005】
Surlyn(登録商標)という商標でDuPontから入手可能なイオノマーなどのイオノマーも、水のような透明度および高い靭性のゆえに、ナイロンを改質するのに使用されてきた。イオノマーは、有機鎖状分子のほかに金属イオンを含む熱可塑性樹脂である。イオノマーは、架橋ポリマーに特有の固体状態の特性および非架橋熱可塑性ポリマーに特有の溶融二次加工適性の特性を有する(例えば、米国特許第3,264,272号明細書を参照)。米国特許第3,264,272号明細書に開示されているように、1種類の金属イオンのみをイオノマーの形成に使用することは絶対に必要なことではなく、ある特定用途で2種以上の金属イオンが好ましいことがある。典型的には、Surlyn(登録商標)などの市販のイオノマーは、1種類の金属イオン(普通は亜鉛またはナトリウム)で中和されている。しかし、ポリアミドを強化する面での改良は十分満足のゆくものではない。米国特許第3,317,631号明細書に記載されているようなポリアミドおよびイオノマーの混合では、良好な靭性、耐引掻性およびその他の表面特性を有するブレンドが得られるが、光学的性質は極めて不十分である(例えば、不透明性)。軟質のイオノマーは、かなり改良された靭性をナイロンに付与するが、この場合もやはり光学的透明度が著しく犠牲にされる。
【0006】
上記のナイロン強化の問題を克服する方法に欠点がある。高水分のナイロンフィルムを生産および維持する際に本質的な問題があるため、かなりのコストまたは実現性の問題が加工業者および/または最終使用者にもたらされる。ポリマー改質剤を使用すると、フィルムの透明度が低下し、包装用途における有用性も著しく低下する。
【0007】
最近になって、米国特許第5,700,890号明細書に新しいイオノマーのファミリーが開示されたが、その中では、典型的なイオノマーで使用されるモノカルボン酸に加えて、ジカルボン酸またはその誘導体をモノマーとして用いて、中和されたエチレン酸共重合体が調製されている。それらのイオノマーは、典型的なイオノマーよりもポリアミドとの相溶性がよくなっていることが見出された(米国特許第5,859,137号明細書を参照)。それらのイオノマー共重合体は、アルキルアクリレートコモノマーをさらに含むことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ジカルボン酸誘導体を含有するイオノマー(それ自体か、あるいは従来のイオノマーまたは無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン共重合体などの他のポリマーとのブレンドの形)で改質されたナイロンは、望ましい光学的透明度を維持すると同時に、大幅に改良された低温での靭性を示すことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって本発明は、
(a)約65から約90重量%のポリアミド;および
(b)(1)エチレンと、
(2)約5重量%から約15重量%のC3〜C8のα,β−不飽和カルボン酸と、
(3)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、およびマレイン酸のC1〜C4のアルキルハーフエステルよりなる群から選択されるエチレン性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体である、約0.5重量%から約12重量%の少なくとも1種のコモノマーと、
(4)アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1個から12個の炭素原子を有する)から選択される0重量%から約30重量%のモノマーとの共重合体を含むイオノマー組成物を含む
約5から約35重量%の改質剤
を含む熱可塑性組成物から得られるフィルムであって、
(i)存在するカルボン酸官能基が、1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオンによって少なくとも部分的に中和されており、(ii)−10℃未満の温度に保たれた前記フィルムが、前記フィルムの66cm上の高さから少なくとも約165グラムの重りが前記フィルム上に落下させられたときにその落下回数の少なくとも50%その重りを支えることができ;さらに(iii)前記フィルムが、ASTM D1003に従って測定した場合に約4%未満の曇り度を有する、フィルムを提供する。
【0010】
本発明はまた、成分(2)の改質剤が、少なくとも1種の追加の熱可塑性ポリマーを熱可塑性組成物全体の約30重量%までの量をさらに含むような物品も提供する。
【0011】
前記物品は、単一層または多層のフィルムまたはシート、パウチまたはバッグ、あるいはチューブの形態であってよい。
【0012】
本発明はまた、上述の組成物を含む単一層または多層のフィルムまたはシートを含む、製品を入れるためのパッケージも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ここに開示する文献はすべて本願明細書に援用される。
【0014】
特に記載のない限り、百分率、部、比率などはすべて重量に基づいている。さらに、量、濃度、またはその他の値またはパラメーターを、範囲、好ましい範囲または好ましい上側値と好ましい下側値のリストのいずれかで示してある場合、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、これは、任意の上側の範囲の限界または好ましい値および任意の下側の範囲の限界または好ましい値の任意の対によって示されるすべての範囲を明確に開示していると理解すべきである。数値の範囲が本明細書に記載されている場合、特に記載のない限り、その範囲はその両端、およびその範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図している。本発明の範囲は、範囲が定められているときに記載されている特定の値に限定されることを意図していない。成分が、0から始まる範囲内で存在することが示されている場合、そのような成分は任意の(すなわち、存在しても存在しなくてもよい)成分である。
【0015】
「共重合体」は、2種類以上の異なるモノマーを含むポリマーを意味する。「二元共重合体」および「三元共重合体」という用語は、それぞれ2種類の異なるモノマーのみおよび3種類の異なるモノマーのみを含むポリマーを意味する。「種々のモノマーの共重合体」という言葉は、その単位が種々のモノマーから得られる共重合体を意味する。
【0016】
熱可塑性樹脂は、圧力下で加熱すると流動可能になる高分子材料である。メルトインデックス(MI)は、温度と熱を制御した状態で、指定された毛管中を流れるポリマーの質量流量である。これは、典型的にはASTM 1238に従って測定される。
【0017】
本発明は、高い光学的透明度と低温での靭性が必要とされる用途に極めて適した新規の物質を提供するために、ナイロン6などのポリアミドと、イオノマーの特別なファミリー(無水物イオノマーまたは無水物Surlyn(登録商標)として示されている)から選択されたイオノマーとを融合させたポリマーブレンドを提供する。基本的に言って、この新規の物質は、ポリアミドおよびイオノマーの両方の主な欠陥の幾つかを克服し、同時に望ましい属性のほとんどを引き続き保っている。前述のとおり、本発明に使用するイオノマーは、ジカルボン酸部分またはその誘導体を含むイオノマーのファミリーから選択される。本明細書で使用されている「無水物イオノマー」という用語は、ジカルボン酸部分、その誘導体(酸無水物など)または他の公知のカルボン酸誘導体を含む本発明のイオノマーを表すのに使用できる。イオノマー中にジカルボン酸部分が存在すると、ポリアミド(特に高いレベルの)との相溶性が向上し、非常に良好な透明度を有するブレンドが提供される。ジカルボン酸部分の量が多くなると、そのようなイオノマーとポリアミド(ナイロン6など)のブレンドに2つの独特な特徴がもたらされる。第一に、無水物イオノマーはポリアミド中に極めて微細な粒子として分散し、第二に、粒度分布が非常に狭くなる。
【0018】
上記のように、本発明は、熱可塑性組成物を含む光学的透明度の高い物品を提供するものであり、前記組成物は、(i)ポリアミド、(ii)エチレンの共重合体を含むイオノマー組成物、(iii)C3〜C8のα、β−不飽和カルボン酸、(iv)エチレン性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体である少なくとも1種のコモノマー、および(v)任意選択的に、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートから選択される少なくとも1種のコモノマーを含む。
【0019】
イオノマー樹脂(「イオノマー」)は、エチレン(E)などのオレフィンと、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、および/または他の酸などの不飽和カルボン酸の金属塩とのイオン共重合体であり、任意選択的に軟化コモノマーがこれに含まれる。少なくとも1種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオン(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、あるいはそのようなカチオンの組合わせなど)を使用して、共重合体中の酸性基の一部を中和すると、向上した特性を示す熱可塑性樹脂が得られる。それで、例えば、エチレンとアクリル酸の共重合体は、1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオンによって少なくとも部分的に中和させてイオノマーを形成できる。共重合体は、オレフィン(エチレンなど)、不飽和カルボン酸および他のコモノマー(アルキル(メタ)アクリレートなど)からも作ることができ、中和してより軟質のイオノマーを形成させることができる「より軟質の」樹脂が提供される。
【0020】
本発明において有用なイオノマーは、1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオンによって少なくとも部分的に中和された、ジカルボン酸のエチレン性不飽和誘導体コモノマー(無水マレイン酸およびマレイン酸水素エチル(ethyl hydrogen maleate)など)から得ることができる、ジカルボン酸部分を含むイオノマーのファミリーから構成される(無水物イオノマーとして示す)。それらは、エチレンと、C3〜C8のα,β−不飽和カルボン酸と、約0.5重量%から約12重量%または約3重量%から約12重量%の量のエチレン性不飽和ジカルボン酸である少なくとも1種のコモノマーとの共重合体である。ジカルボン酸コモノマーは、約4重量%から約10重量%の量で存在することが好ましい。不飽和ジカルボン酸コモノマーまたはその誘導体は、例えば、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸水素エチル(マレイン酸モノエチルエステル(MAME)とも呼ばれる)、およびイタコン酸(ITA)から選択できる。より好ましくは、本発明の組成物は、エチレン/メタクリル酸/マレイン酸モノメチルエステル共重合体中に4から8重量%のマレイン酸モノメチルエステルコモノマーが含まれるものであって、前記共重合体中の酸根が20から70パーセント中和されているものを含む。
【0021】
含まれているエチレン性不飽和ジカルボン酸コモノマーの量が少ない、中和されていない幾つかのエチレン酸共重合体が知られており(米国特許第5,902,869号明細書を参照)、そのイオノマー誘導体も同様である(米国特許第5,700,890号明細書を参照)。
【0022】
前述のとおり、アルキル(メタ)アクリレートなどのコモノマーは、エチレン酸共重合体に組み込んで、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属のカチオンで中和できる共重合体イオノマーを形成させることができる。アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1個から8個の炭素原子を有する)から選択されるコモノマーが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソブチルアクリレート(iBA)、およびn−ブチルアクリレート(nBA)から選択されるコモノマーがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、任意選択的に0から約30重量%の量でアルキル(メタ)アクリレートが含められ、好ましくは0から約15重量%の量で含められる。
【0023】
本発明において有用な共重合体の例としては、エチレン、メタクリル酸およびマレイン酸水素エチル(E/MAA/MAME)の共重合体、およびエチレン、アクリル酸および無水マレイン酸(E/AA/MAH)の共重合体がある。
【0024】
エチレン酸共重合体の中和は、まずエチレン酸共重合体を作り、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属のカチオンを持つ無機塩基でその共重合体を処理することにより実施できる。共重合体は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、スズ、亜鉛、アルミニウムから、またはそれらのカチオンの組合わせから選択される少なくとも1種の金属イオンで約10から約99.5%まで中和できる。典型的には、約10から約70%まで中和を行う。好ましくは、共重合体は、利用可能なカルボン酸基の約20%から(あるいは約35%から)約70%までが、ナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択された少なくとも1種の金属イオンによる中和によってイオン化されており、より好ましくは亜鉛またはマグネシウムから選択された金属イオンによる中和によってイオン化されている。特に注目すべきものは、中和カチオンとして亜鉛を含むイオノマーである。酸根が亜鉛イオンとマグネシウムイオンの組合わせによって中和されている共重合体も注目すべきものである。共重合体からイオノマーを調製する方法は、当該技術分野において周知である。
【0025】
本発明で使用するポリアミドは、当業者によく知られている。一般に、本発明に好適なポリアミドは、ラクタムまたはアミノ酸から調製されたり(例えば、ナイロン6またはナイロン11)、あるいはジアミン(ヘキサメチレンジアミンなど)と二塩基酸(コハク酸、アジピン酸、またはセバシン酸など)との縮合によって調製されたりする。これらのポリアミドの共重合体および三元共重合体も含まれる。本発明において有用な好ましいポリアミドとしては、ポリε−カプロラクタム(polyepsiloncaprolactam)(ナイロン6);ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6);ナイロン11;ナイロン12、ナイロン12,12および共重合体および三元共重合体(ナイロン6/6,6など);ナイロン6,10;ナイロン6,12;ナイロン6,6/12;ナイロン6/6,6/6,10およびナイロン6/6Tがある。より好ましいポリアミドは、ポリε−カプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)であり、もっとも好ましいものはナイロン6である。上記のようなポリアミドが好ましいポリアミドであるが、非晶質ポリアミドのような他のポリアミドが明確に除外されるわけではない。
【0026】
本発明で使用する組成物は、任意選択的に、成分(2)の無水物イオノマーとブレンドした追加の熱可塑性物質をさらに含むことができる。追加の成分をブレンドする場合、エチレン酸共重合体中のモノマーの比率を変えることに加えて、組成物中に存在する追加の成分の量および種類を操作することにより、本発明の組成物の特性をさらに容易に改質することができる。さらに、追加の熱可塑性物質をブレンドする場合、後で改質して所望の特性を得られるベース樹脂を少なく調製することができ、ポリマー組成物の製造がより簡単に、より低コストで行えるようになる。例えば、無水物イオノマーと追加の熱可塑性物質とのブレンドを、ポリアミド改質剤組成物で使用すれば、単一の物質を含む改質剤組成物で達成できるよりも高い透明度および優れた靭性の両方を併せ持つことができるようになる。したがって、本発明は、成分(2)の改質剤が、無水物イオノマーと一緒に、熱可塑性組成物全体の約30重量%までの量で第2熱可塑性ポリマーをさらに含む物品も提供する。
【0027】
無水物イオノマーのほかに使用できる他の熱可塑性物質の例としては、非イオノマー(nonionomeric)熱可塑性共重合体および/またはイオノマー熱可塑性共重合体がある。追加の非イオノマー熱可塑性ポリマー成分は、マレイン酸化ポリマー、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、エラストマーポリオレフィン、スチレン−ジエンブロック共重合体、熱可塑性ポリウレタンなどの中から選択でき、これらの部類のポリマーは当該技術分野において周知である(これらの物質の詳細な説明については、以下を参照)。好ましいポリマーとしては、従来のイオノマー(すなわち、ジカルボキシルコモノマー(dicarboxylic comonomer)を含まないイオノマー)、特に軟質のイオノマー、またはマレイン酸化ポリマー、特に無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン共重合体がある。
【0028】
従来のイオノマーをさらに含む成分(1)および成分(2)のブレンドは、特に注目すべきものである。したがって、本発明の組成物には、1種または複数種のE/X/Y共重合体を(無水物イオノマーと一緒に)さらに含む成分(1)と成分(2)のブレンドであって、Eがエチレン、XがC3〜C8のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、およびYがアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1個から8個の炭素原子を有する)から選択されたコモノマーであり、XがE/X/Y共重合体の約2から約30重量%だけ存在し、YがE/X/Y共重合体の0から約40重量%だけ存在し、存在するカルボン酸官能基は少なくとも部分的に1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオンによって中和されているブレンドが含まれる。好ましいα,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸およびメタクリル酸がある。説明のための従来のイオノマーの例としては、E/15MAA/Na、E/19MAA/Na、E/15AA/Na、E/19AA/Na、E/15MAA/Mg、E/19MAA/Li、およびE/15MAA/60Zn(ここで、Eはエチレンを示し、MAAはメタクリル酸を示し、AAはアクリル酸を示し、数字は共重合体中に存在するコモノマーの重量%または利用可能なカルボン酸基の中和の量のいずれかを示し、原子記号は中和カチオンを示す)が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1種のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートコモノマー、例えば、E/9MAA/10iBA/70ZnおよびE/9MAA/23nBA/50Znなどを含む従来の軟質のイオノマーは、特に注目すべきものである。
【0029】
そうした従来のイオノマーまたは従来のイオノマーと成分(2)の無水物イオノマーを一緒にした混合物は、特定用途の必要に応じて、透明度、靭性および低温での衝撃強度のバランスを適切なものにするために操作することができる。例えば、従来のイオノマーの量を比較的多くし、無水物イオノマーの量を少なくする(例えば、従来のイオノマーを30重量%、無水物イオノマーを5重量%にする)ことにより、透明度を向上させた高い靭性を持つポリアミド組成物を実現できる。高い透明度の強化ポリアミドフィルムは、無水物イオノマーの量を比較的多くし、従来のイオノマーの量を少なくする(例えば、無水物イオノマーを30重量%、従来のイオノマーを5重量%にする)ことにより、調製できる。含まれている無水物イオノマーと従来のイオノマーが同量(例えば、無水物イオノマーが15重量%、従来のイオノマーが15重量%)の改質剤ブレンドは注目に値する。
【0030】
無水マレイン酸でグラフト化されたポリマー(マレイン酸化ポリマー)をさらに含むブレンドも、特に注目すべきものである。無水マレイン酸でグラフト化されたポリマーとしては、マレイン酸化ポリエチレン、マレイン酸化ポリプロピレン、マレイン酸化ポリエチレン/ポリプロピレンゴム、マレイン酸化スチレン−エチレン−ブテン−スチレントリブロック共重合体、およびマレイン酸化ポリブタジエンがある。マレイン酸化ポリエチレンの調製および使用に関する補足的な詳細は、米国特許第6,545,091号明細書に記載されている。無水マレイン酸変性の線状高密度ポリエチレンの例としては、Polybond(登録商標)3009という商標で販売されていて、Crompton Corporationから入手可能な製品がある。類似のマレイン酸化ポリオレフィンは、Fusabond(登録商標)という商標で販売されており、DuPontから入手可能である。好ましいマレイン酸化ポリエチレンとしては、密度が0.90g/cm3未満のものが挙げられる。これらの低密度マレイン酸化ポリエチレンは、「より軟質の」改質剤と考えられる。
【0031】
成分(2)の無水物イオノマーと組み合わせたそうしたマレイン酸化ポリマーの量は、特定用途の必要に応じて、透明度、靭性および低温での衝撃強度のバランスを適切なものにするために操作することができる。例えば、マレイン酸化ポリマーの量を比較的多くし、無水物イオノマーの量を少なくする(例えば、マレイン酸化ポリマーを30重量%、無水物イオノマーを5重量%にする)ことにより、透明度を向上させた高い靭性を持つポリアミド組成物を実現できる。高い透明度の強化ポリアミドフィルムは、無水物イオノマーの量を比較的多くし、マレイン酸化ポリマーの量を少なくする(例えば、無水物イオノマーを30重量%、マレイン酸化ポリマーを5重量%にする)ことにより、調製できる。含まれている無水物イオノマーとマレイン酸化ポリマーが同量(例えば、無水物イオノマーが15重量%、マレイン酸化ポリマーが15重量%)の改質剤ブレンドは注目に値する。
【0032】
本発明の組成物は、以下のものを含め、高分子材料で使用される従来の添加剤などの任意の物質をさらに含むことができる:可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、難燃剤、滑剤、補強剤(ガラス繊維およびガラスフレークなど)、加工助剤、粘着防止剤、離型剤、および/またはそれらの混合物。これらの従来の成分は、本発明による組成物中に、0.01から20重量%、好ましくは0.1から15重量%だけ存在してよい。存在する場合、これらの従来の添加剤の量は、「課題を解決するための手段」に定められている組成物の成分の重量%とは別に含められるものである。
【0033】
本発明の組成物は、当業者に知られている種々の方法で物品に形成することができる。例えば、本発明の組成物は、種々のフィルム形成方法で(同時)押出ししてフィルムに形成すること、または異形材押出しでチューブに形成することができる。強化組成物を含むシートは、熱成形によってさらに加工して造形品にすることができる。例えば、本明細書に記載する強化ポリアミド組成物を含むシートは、包装の際に含めることができる造形品に形成することができる。本発明のフィルムは、本発明のパウチに形成されるウェブストック(web stock)として使用できる。パウチは、ウェブストックの別々の部分を切断およびヒートシールし、かつ/または切断を伴うヒートシールと折りたたみとを組合わせることにより、ウェブストックから形成される。ボトルは(同時)押出吹込成形によって作製できる。本明細書に記載する組成物を含む本発明の物品の例としては、肉や他の食料の包装用のフィルムおよびパウチ;健康管理溶液や他の液体を入れたり小分けしたりするために使用するパウチおよびボトル;および健康管理溶液または他の液体を輸送するためのチューブがある。
【0034】
エチレン酸共重合体−ポリアミドのブレンドを含む組成物を含む本発明の物品は、他の構成部分をさらに含んでよい。例えば、本発明の組成物は、多層高分子構造体の1つまたは複数の層として含めることができ、その構造体では、熱可塑性樹脂の追加の層を含めてさらなる機能を物品に与える機能層を提供できる。少なくとも1つの追加層にイオノマー物質を含む多層構造体は、注目に値するものである。本発明の組成物の層および他のポリマー層は、別々に形成し、その後互いに離れないようにくっつけて本発明の物品を形成してよい。本発明の物品は、層の一部または全部を基材に押出しコーティングするかまたは積層させることにより製造してもよい。本発明の物品の構成部分の一部は、特に構成部分が比較的同一平面上にあるような場合、同時押出によって一緒に形成できる。かくして本発明の物品は、本発明の組成物の1つの層と、別の熱可塑性物質の1つまたは複数の追加層とを多層の同時押出フィルムまたはシートの形で含むフィルムまたはシートであってよい。
【0035】
複数構成部分または多層の構造体(例えば、フィルムまたはシート)において、本発明の組成物から形成される構成部分のほかに、物品の構成部分を形成するのに使用できる他の熱可塑性物質の例は、非イオノマー熱可塑性共重合体および/または従来のイオノマー熱可塑性共重合体から選択できる。
【0036】
非イオン熱可塑性樹脂には、説明のための非限定的な例として挙げれば、熱可塑性エラストマーがあり、例えば、ポリウレタン、ポリ−エーテル−エステル、ポリ−アミド−エーテル、ポリエーテル−尿素、PEBAX(Atochemから市販されている、ポリエーテル−ブロック−アミドに基づくブロック共重合体のファミリー)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロック共重合体など、ポリアミド(オリゴマーおよびポリマー)、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体などを含む)、種々のコモノマー(酢酸ビニル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エポキシ官能基化されたモノマー、COなど)とのエチレン共重合体、無水マレイン酸やエポキシ化などによって(共重合またはグラフト化のいずれかによる)官能基化されたポリマー、エラストマー(EPDMなど)、メタロセンで触媒されたPEおよび共重合体、熱硬化性エラストマーを粉砕した粉末などがある。
【0037】
追加の熱可塑性ポリマーの成分は、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、エラストマーポリオレフィン、スチレン−ジエンブロック共重合体、熱可塑性ポリウレタンなどの中から選択でき、これらの部類のポリマーは当該技術分野において周知である。
【0038】
コポリエーテルエステルは、米国特許第3,651,014号明細書、同第3,766,146号明細書、および同第3,763,109号明細書などの特許で詳しく説明されている。好ましいコポリエーテルエステルのポリマーは、ポリエーテルセグメントが、テトラヒドロフランの重合によって得られ、ポリエステルセグメントがテトラメチレングリコールとフタル酸との重合によって得られるようなポリマーである。コポリエーテルエステルに組み込まれているポリエーテル単位が多ければ多いほど、ポリマーは軟質になる。
【0039】
コポリエーテルアミドも、例えば、米国特許第4,331,786号明細書に記載されているように当該技術分野において周知である。それらは、硬質のポリアミドセグメントおよび柔軟なポリエーテルセグメントの規則的な線状鎖(linear and regular chain)から構成されている。
【0040】
エラストマーポリオレフィンは、エチレンおよび第一高級オレフィン(プロピレン、ヘキセン、オクテンなど)および、任意選択的に1,4−ヘキサジエンおよび/またはエチリデンノルボルネンまたはノルボルナジエンから構成されるポリマーである。エラストマーポリオレフィンは、無水マレイン酸で官能基化することができる。
【0041】
熱可塑性ポリウレタンは、ハードブロックおよびソフトエラストマーブロックからなる、線状またはいくらか枝分かれのある鎖状のポリマーである。それらは、軟質のヒドロキシ末端エラストマーポリエーテルまたはポリエステルを、ジイソシアネート(メチレンジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)など)と反応させて作る。これらのポリマーは、グリコール類、ジアミン、二酸、またはアミノアルコールで鎖延長させることができる。イソシアネートとアルコールの反応生成物はウレタンと呼ばれ、それらのブロックは比較的堅く、高融点である。これらの堅くて高融点のブロックが、ポリウレタンの熱可塑性の主な理由となっている。
【0042】
スチレン−ジエンブロック共重合体は、ポリスチレン単位とポリジエン単位から構成される。ポリジエン単位は、ポリブタジエン、ポリイソプレンの単位またはこれら2つの共重合体から得られる。共重合体の場合、ポリオレフィンを水素化して飽和ゴム主鎖セグメントを得ることができる。これらの物質は、普通は、SBS、SISまたはSEBS熱可塑性エラストマーと呼ばれ、これらも無水マレイン酸で官能基化することができる。
【0043】
従来のイオノマーは上述のとおりである。
【0044】
本発明は、上述の組成物から作製されるインフレートフィルム、キャストフィルム、ラミネートフィルム、押出吹込成形品、チューブ、パウチなどに関する。「シート」という用語は、本発明の加工済み組成物を表すのに同じように用いることができる。加工方法および/または厚さが、「シート」または「フィルム」という用語を本明細書で用いているどうかに影響していることがあるが、本発明の目的に関して言えば、どちらの用語も本明細書で権利請求の対象とする発明を表すのに本明細書で使用できる。
【0045】
本発明のラミネートフィルムは、次のようにして同時押出によって作製できる:種々の成分の粒質物を押出機内で溶融させる。その溶融ポリマーを金型または一組の金型を通過させて、層流として処理される溶融ポリマーの層を形成させる。溶融ポリマーを冷却して、層状の構造体を形成させる。溶融押出ポリマーは、好適な変換手法を用いてフィルムに変換させることができる。例えば、本発明のフィルムは、同時押出を行った後に、1つまたは複数の他の層の上に積層させることによって作製することもできる。その他の好適な変換手法としては、例えば、インフレート法、キャストフィルム押出、キャストシート押出(cast sheet extrusion)および押出しコーティングがある。
【0046】
本発明のフィルムは、フィルムを即座に急冷または注型することのほかにさらに延伸することができる。その方法は、溶融ポリマーの層流を(同時)押出する工程、(同時)押し出し物を急冷する工程および急冷された(同時)押し出し物を少なくとも一方向に延伸する工程を含む。フィルムは、一軸延伸してもよく、あるいはフィルムの平面内で互いに直行する二方向に引っ張ることにより二軸延伸して、機械的特性および物理的特性の組合わせが満足のゆくものとなるようにすることもできる。
【0047】
フィルムを一軸延伸または二軸延伸するための配向および延伸装置は当該技術分野で公知であり、当業者はそれを応用して本発明のフィルムを作製することができる。そのような装置および方法の例としては、例えば、米国特許第3,278,663号明細書;同第3,337,665号明細書;同第3,456,044号明細書;同第4,590,106号明細書;同第4,760,116号明細書;同第4,769,421号明細書;同第4,797,235号明細書および同第4,886,634号明細書に開示されているものがある。
【0048】
本発明の一実施態様では、本発明のフィルムは、二重バブル押出し法(double bubble extrusion process)を使用して延伸される。この方法では、一次チューブを押し出し成形し、これを続いて急冷し、再加熱した後、内部ガス圧によって膨張させて横方向延伸を引き起こし、さらに縦方向延伸を引き起こすような速度で差速ニップローラー(differential speed nip rollers)または送りローラー(conveying rollers)によって絞ることによって、同時二軸延伸を実施することができる。
【0049】
延伸インフレートフィルムを得る処理は、二重バブル手法として当技術分野において公知であり、Pahlkeが米国特許第3,456,044号明細書で記載しているようにして実施できる。さらに詳細には、一次チューブは環状金型から溶融押し出し成形される。この押し出し成形された一次チューブは、結晶化を最小にするために急冷され、それから圧潰される。その後、(例えば、水浴によって)加熱して延伸温度にされる。フィルム二次加工装置の延伸ゾーンにおいて、二次チューブがインフレート法で形成され、それによってフィルムはある温度で横方向に放射状に膨張し、流れ方向に引っ張られて(または延伸されて)両方向への膨張が、好ましくは同時に起こる。このチューブの膨張と共に、ドローポイントで厚さが大幅に突然減少する。管状フィルムはその後再びニップロールによって平らにされる。フィルムは、再び膨張させて、アニール工程(熱固定(thermofixation))に回すことができるが、その工程では、もう一度加熱されて収縮性が調整される。用途によっては、フィルムを管状の形態に保つことが望ましい場合がある。フラットフィルムを作製するには、管状フィルムの長さに沿って切れ目を入れ、開いてフラットシートにすることができる。このシートを巻き、かつ/またはさらに加工することができる。
【0050】
本明細書に記載する組成物から得られるフィルムは、他のフィルム層とさまざまに組み合わせて使用して多層フィルムを形成させることができ、あるいは単一層フィルムとして使用することもできる。本発明の多層構造体(特にフィルムの形態)の例としては、(フィルムの最も外側の層から製品に接触する最も内側の層の順に)以下のものもがある:
改質ポリアミド/タイ/シーラント;
改質ポリアミド/タイ/EVOH/タイ/シーラント;および
改質ポリアミド/タイ/EVOH/改質ポリアミド/タイ/増量層(bulking layer)/シーラント。
【0051】
これらの構造体の改質ポリアミドは、耐乱用性(abuse resistance)、耐熱性(ヒートシーリング時の)、遮断層、耐破壊性、熱成形性、および/または印刷可能表面を提供する。EVOHを追加の遮断層として含めてもよい。シーラントは、さまざまなポリマーであってよいが、好ましくは、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体またはイオノマーである。これらは、多種多様な食品およびその他の品物(医療用具など)を包装するのに好適である。
【0052】
上述のフィルムまたはシートの幾つかは、熱成形作業における成形用ウェブ(forming webs)として使用して、包装用の造形品を提供できる。本発明のフィルムは、本発明のものではないポリアミドのガラス転移温度より典型的には低い温度で熱成形することができる。このことにより、典型的には本発明のものではないポリアミドに要求される高温に耐えることができない構成部分を有する物品を熱成形することができ、有利である。本発明のポリアミドは、約100℃〜約180℃の範囲内の温度で熱成形できる。熱成形される物品は、典型的には、パッケージ内に入れられる製品の形状にしっくり合うような形状にされる。熱成形されたパッケージは、ホットドッグ、ソーセージなどのような加工肉を入れるのに使用できる。
【0053】
多層フィルム構造体の別の例として次のものがある:
ポリエチレン/タイ/改質ポリアミド/タイ/ポリエチレン。
このフィルムは、肉包装用のチャブフィルム(chub film)、および収縮フィルムとして有用である。
【0054】
本発明はまた、上述の組成物を含む単一層または多層フィルムまたはシートを含む、製品を入れるためのパッケージも提供する。好ましいパッケージおよび注目に値するパッケージは、上述の好ましい組成物および注目に値する組成物を含む。本発明のパッケージは、低温で保存される肉や他の食料を包装するのに有用である。
【0055】
本発明のパッケージには、飲料または医療用溶液(medical solution)などの液体の、包装、小分けおよび/または投与に好適な単一層または多層のフィルムを含むパッケージも含まれる。本発明はまた、上述の組成物および多層構造体を含むパウチおよび/またはボトル、ならびに特に医療用溶液の保存および輸送用のパウチおよび/またはボトルに関する。本明細書で使用される「ボトル」および「パウチ」という用語は、液体の小分けおよび/または投与のための容器を指すのに同じように使用できる。
【0056】
現在、非経口的(例えば、静脈内への(またはIV))投与用の医療用液体または溶液は、使い捨ての柔軟なパウチの形態で供給するのが慣例となっている。そうしたパウチの一部類は一般に「IVバッグ」と呼ばれる。そうしたパウチは、圧潰性、光学的透明度および透明性、耐高温性(蒸気滅菌適性(steam sterilizable))、および過酷な使用環境に耐えられる十分な機械的強度を含め、多数の性能基準を満たさなければならない。医療用溶液パウチはまた、その中に含まれている溶液の酸化および濃度変化を防ぐために、水蒸気や他の気体の通過を十分に遮断するものでなければならない。
【0057】
圧潰性は、パウチの適正かつ完全な排液を行えるようにするために必要である。パウチから排液されるにつれ、排液の速度に比例した速度で大気圧によりパウチはつぶれてゆく。このように、パウチは実質的に一定した速度で完全に排液を行うことができる。したがって、パウチの材料となるフィルムは、結果として得られる医療用パウチが圧潰するように十分に柔軟でなければならない。
【0058】
パウチに入れられている溶液を目視検査して、投与される医療用溶液が適正な種類のものであること、また劣化したり汚染されたりしていないことを大まかに判断できるようにするために、光学的透明度および透明性は重要である。以下にさらに十分に説明するが、溶液を含む医療用パウチを加熱滅菌するという業界全体の慣行のため、そうしたパウチの光学的性質を良好なものに保つという問題は一段と難しくなっている。
【0059】
耐高温性があると、溶液を含む医療用パウチを加熱滅菌できるので、フィルムの耐高温性は望ましいものとなる。加熱滅菌は、典型的には約116〜130℃(240〜266゜F)の蒸気加熱オートクレーブ中で15〜30分間にわたって行われる。医療用溶液の製造業者および/または包装業者は、通常、包装された医療用溶液を最終使用者(例えば、病院)へ発送する前に加熱滅菌を行うものである。そのようにすれば、医療用溶液パウチで包装された医療用溶液を実質的に汚染されないようにするのに役立つ。
【0060】
場合によっては、パウチ中の医療用液体は低温で保存される。したがって、パウチは十分な低温での靭性も有していなければならない。本明細書で使用する「低温」という用語は、約0℃未満、好ましくは−5℃未満を指す。さらにより好ましくは、低温は−15℃未満の温度を指す。低温での靭性は、低温での脆性(つまり靭性の不足)に関するフィルムの試験を行って測定できる。有益な情報を与えることができる靭性の尺度となる1つの試験は、落槍衝撃試験であり、この試験では吊下げ状態のフィル上に重りが落とされて、その結果を観察し、記録する。本発明のフィルムの許容される落槍衝撃が観察されるのは、−10℃の温度において、50%破損率が165グラム以上で観察されるとき、好ましくは50%破損が250グラム以上で観察されるとき、より好ましくは50%破損が350グラム以上で観察されるとき、さらにより好ましくは500グラム以上のときである。フィルムの靭性は、フィルムの厚さの影響を受けることがあり、したがって落槍衝撃の結果は、同様の厚さのフィルムを基準にして解釈し比較すべきである。
【0061】
医療用溶液パウチは、使用環境において一般的に直面する乱用に耐えるほどの十分な機械的強度も有していなければならない。例えば、状況によっては、プラスチック袋またはゴム袋を医療用溶液が入れられたパウチの周囲に配置して、パウチから溶液を押し出して患者へ入れるために最大約400mmHgまで(例えば、300〜400mmHg)加圧する。そのような袋は一般には「圧力バンド(pressure−cuff)」と呼ばれ、これは、例えば、患者がおびただしく出血しているとき、失われる液体をすばやく元に戻すために使用したり、あるいは患者の血圧が高いとき、医療用溶液を患者の静脈に導入するためパウチ内にもっと大きな対抗する圧力を発生させなければならない場合に使用したりする。医療用溶液のパウチは、そのような処置の間漏れがないままであるほど十分な耐久性を有しているべきである。
【0062】
医療用溶液のパウチを形成するのに使用する場合、本発明の多層フィルムは、医療用溶液の入っているパウチが上述のように加熱滅菌された後でも、優れた光学的性質(すなわち、透過性、透明度、および曇り度)を有する。
【0063】
優れた光学的性質を提供することに加えて、本発明の多層フィルムは、医療用溶液のパウチにとって必要とされるその他のあらゆる性能基準を示す。すなわち、この多層フィルムは良好な柔軟性/圧潰性および機械的強度を有しており、高温滅菌に耐えることができる。加えて、このフィルムは良好な遮断特性を提供する。こうした理由から、本発明の多層フィルムは、医療用溶液の包装および投与用のパウチを作製するのに理想的に適したものである。このように包装および投与される医療用溶液の例としては、食塩水、ブドウ糖溶液、および透析用途の溶液がある。しかし、本発明のフィルムおよびパウチは、強靭で透明度の高いフィルムまたはパウチが必要とされるその他の任意の用途にも使用できる。例えば、血液や血液製剤などの体液、発酵ブロス、バイオ医薬品などのも、本発明のパウチに保存することができる。
【0064】
本発明のパウチで包装できる他の液体として飲料がある。飲料は、水、果物または野菜のジュースまたはジュース飲料、大豆を原料とした(soy−based)製品、乳製品、他のフレーバー飲料(flavored drink)など任意の飲用の液体であってよく、これらは任意に、人が摂取するのに適した栄養素、電解質、ビタミン、繊維、香料、着色剤、防腐剤、酸化防止剤などの追加の成分を含む。
【0065】
典型的には、パウチのようなパッケージで使用する場合、多層高分子シートは少なくとも3種類に分けられる層を含むことになる。それらの層は、最も外側の構造層または乱用層、内側の遮断層、および最も内側の層および任意選択的にそれらの間に1つまたは複数の接着層またはタイ層を含むが、これらに限定されない。また、パウチの目的内容物と接触しそれと適合性のある最も内側の層は、パッケージの内容物を封じ込めるための閉鎖周辺シールを形成できること(すなわち、シール強度が典型的には1,500グラム/インチより大きい)が好ましい。最も内側の層はヒートシール可能でもあることが、最も好ましい。
【0066】
最も外側の構造(すなわち乱用)層は、延伸ポリエステル、延伸ポリプロピレンまたは本発明の延伸強化ナイロンを含むことができる。この層は、好ましくは裏面印刷可能であり、パッケージの作製で用いるシーリング温度の影響を受けないのが有利である。それは、パッケージが多層構造体の厚さ全体にわたってシールされるためである。この層の厚さの選択は、典型的には、パッケージの剛性を制御するために行い、その厚さは約10から約60μm、好ましくは約10から約50μmの範囲にすることができる。
【0067】
内側層は、パウチの内部の製品に潜在的に影響する可能性がある大気条件(酸素、湿気、光など)に応じて、1つまたは複数の遮断層を含むことができる。遮断層は、金属化されたポリプロピレン(PP)またはポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、アルミニウム箔、ナイロン、それらのブレンドまたは複合物ならびにそれらに関連した共重合体にすることができる。遮断層の厚さは、製品の感受性および所望の保存寿命によって異なることになる。
【0068】
パッケージの最も内側の層はシーラントである。シーラントを選択する場合、内容物の味、色または安定性への影響が最小となるもの、製品の影響を受けないもの、さらに(液滴、油、ほこりなどのような)シーリング条件に耐えるものを選択する。シーラントは、典型的には、最も外側の層の外観がシーリング作業の影響を受けないように、またシーリングバー(sealing bar)のつかみ具にくっつかないように、実質的に最も外側の層の溶融温度より低い温度でそれ自体に結合(シール)できる樹脂である。多層パウチで使用する典型的なシーラントとしては、エチレン共重合体があり、それには、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン(mPE)、またはエチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸メチルとの共重合体あるいはエチレンとアクリル酸(EAA)またはメタクリル酸(EMAA)との共重合体(任意選択的に、イオノマー化(ionomerized)されている(すなわち、部分的にNa、Zn、Mg、またはLiなどの金属イオンで中和されている))などが挙げられる。典型的なシーラントとして、ポリプロピレン共重合体を挙げることもできる。シーラントの層は、典型的には25〜100μmの厚さである。
【0069】
本発明のパウチは、フィルムがU形またはV形のトラフ状に調整された連続した包装フィルムのウェブを用意することにより作製できる。本発明のスタンドアップパウチ(stand−up pouch)は、W形のトラフとなるようにフィルムがガセットまたは折りひだを含む連続した包装フィルムのウェブを用意することにより作製できる。
【0070】
本発明に有用な、柔軟なパウチを作製するのに使用する包装フィルムの連続ウェブは、上述のようにトラフ状に調整された単一のフィルムシートを含んでいてよい。あるいはまた、ウェブは、例えばトラフの下部のシームをヒートシールすることにより結合して一緒にする、2または3枚の包装フィルムシートを含むことができる。この代替の方法では、複数のシートは同じであっても異なっていてもよい。スタンドアップパウチの特定の形態は、3枚の包装フィルムシートを含み、その1枚はパウチの下部を形成し、ひだが付けられ、2枚はパウチの側面を形成する。シートは、トラフの下部で2つのシームで接合して一体にされる。シームは、十分な剛性をパウチに与えて、パウチはまっすぐ立った状態になることができる。
【0071】
トラフ形のウェブは、典型的にはヒートシールによって作製される横断シールによって個々のパウチのサイズに分割して入れ物に入れられる。パウチは、任意選択的に、充填後にパウチの内容物を利用できるようにするための取付物を含んでよい。その取付物はフィルムウェブの縁と縁の間に挿入され、パウチの最上部のシールは、ウェブの縁に取付物をシールし縁を互いにシールすることにより作られる。個々のパウチは、横断カッターによってウェブから切断される。パウチの形成、充填およびシーリングの作業は、上述の工程を同時にかつ/または順次に実行することにより、処理できる。
【0072】
特定の実施態様では、パウチを作製し、取付物を挿入し、その後パウチに充填することができる。この実施態様の「予備成形」パウチは、概ね上述のように作製される。つまり、柔軟な包装フィルムがパウチの形状に形成され、取付物がフィルムの端部と端部の間に挿入され、フィルムに(例えば、ヒートシールで)接合される。この実施態様では、フィルムの縁の部分はシールして一緒にされることはなく、後でパウチに充填するための開口部が設けられる。例えば、取付物が挿入され、横断シールとパウチの開口端の接点でパウチに接合され、開口端の残りの部分はシールされないまま残される。パウチは、取付物がパウチの開口端の対角部に挿入されてシールされるような形状にしてもよい。この実施態様で作製されたパウチは、集めてから別個の充填作業へ移して内容物を充填することができる。充填作業では、パウチの所望の量の内容物を開口部を通じてパウチへ、典型的には絞り弁を用いて入れる。開口部を形成しているフィルムの縁を(例えば、ヒートシールで)接合して上部シールを形成して、開口部をシールする。
【0073】
Totani Corporation,Kyoto,JapanまたはKlockner Barlelt Co.,Gordonsville,VAで製作されているようなパウチ作製装置が、本発明を実施する際に有利に使用できる。
【0074】
本発明のボトルは、Bekum,Sigなどによって製作された装置など標準的なブロー成形装置を用いて作製できる。無菌環境下でWeilerまたはRommelagのブロー成形充填(blow form filled)(BFF)装置でボトルを製造するのが特に好適である。本発明のボトルは、少なくとも1つの本発明の層を含む単層構造体または多層構造体のいずれかであってよい。
【0075】
本発明の別の物品は異形材である。異形材は、特定の形状を有し、また異形押出として知られる製造方法によるものであると定義される。異形材はフィルムでもシートでもなく、したがって異形材の製造方法はカレンダー加工や冷却ロールの使用を含まない。異形材は、射出成形法で作製されることもない。異形材は、所望の形状を維持できる押し出し物を形成する金型のオリフィスを通して熱可塑性溶融物を押し出し成形することから開始する、溶融押出法で二次加工される。押し出し物は、典型的には、所望の形状を維持しながら最終寸法になるように絞り、その後空気中または水中で急冷して形状を固定し、このようにして異形材を製造する。単純な異形材の形成では、押し出し物は、構造を支えるようなものがなくても形状を維持することが好ましい。非常に複雑な形状の場合、形状を保つ助けとして支持手段を使用することがよくある。
【0076】
異形材の一般的な形状はチューブである。液体および蒸気を輸送するためのチューブ組立品は、当該技術分野において周知である。チューブは、医療用途または飲料などの液体の輸送における流体輸送に使用される。これらの用途では、良好な湿気遮断特性、耐化学薬品性、靭性および柔軟性が必要とされる。チューブの透明度は、輸送される液体を目視観測するのに重要なものとなる。さらに、チューブの用途によっては、非常な低温および/または非常な高温に曝されることがある。本明細書に記載する組成物は、靭性、柔軟性および透明度の優れた組合わせを提供し、チューブなどの異形材の作製に好適なものとなる。
【0077】
本発明を、その好ましい実施態様を参照しながら詳細に示し説明してきたが、形態および詳細の種々の変更は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行いうることは当業者なら理解するであろう。
【実施例】
【0078】
以下の実施例は単なる説明のためのものであり、本明細書で記載および/または権利請求の対象とする本発明の範囲を制限するものと解釈すべきでない。
【0079】
物質の処理および試験に関する説明:
本発明の強化透明物質のフィルムまたはシートを作製するための熱可塑性組成物の例は、モノカルボン酸およびジカルボン酸をモノマーとして持つ中和されたエチレン酸共重合体とブレンドされた、ポリアミドを含む。具体例については、以下の表1を参照のこと。表1は、ポリアミド(すなわち、ナイロン6)と、従来のイオノマー(比較例C2)、マレイン酸化ポリマー(比較例C3)、およびモノマーとしてモノカルボン酸およびジカルボン酸を有する中和されたエチレン酸共重合体(すなわち、無水物イオノマー)(実施例1)から選択された20重量%の改質剤とをブレンドしたものの特性を報告している。表1は、各実施例と同様にして作製された、改質されていないナイロン6を含むフィルムの特性も報告している(比較例C1)。表1にあるポリマーは次のとおりである:
ポリアミド−1:Ultramid B3として(BASFから)入手可能なナイロン6。
イオノマー1:エチレン、10重量%のイソブチルアクリレートおよび10重量%のメタクリル酸を含む軟質のイオノマー三元共重合体であって、名目上は利用可能なカルボン酸部分の70%が亜鉛カチオンによって中和されており、MIが1.0であるもの(E/10MAA/10i−BA/70Zn)。
グラフト−1:無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン/プロピレンゴムで、密度が0.87およびメルトフローインデックスが23(280℃において2.16kgの重りで測定)のもの。Fusabond(登録商標)416DとしてDuPontから入手可能。
AI−1:エチレン、13重量%のアクリル酸および4重量%の無水マレイン酸モノエチルエステルを含む無水物イオノマー三元共重合体で、名目上は利用可能なカルボン酸部分の50%が亜鉛カチオンによって中和されているもの(E/13AA/4MAME/50Zn)。
【0080】
使用した試験方法:
引張り強さは、ASTM D882を用いて測定した。
透過の曇り度(transmittance haze)はASTM D1003に従って測定した。
エルメンドルフ引裂強さはASTM D−1922を用いて測定した。
スペンサー耐衝撃性(Spencer Impact Resistance)はASTM 3420を用いて測定した。
ピンホール屈曲試験:フィルム試料を気密チューブに形成し、その後破損して試験機が自動的に停止するまで、軸方向に屈曲と緩和を交互に行う。給気オリフィスの面積より大きな面積の1個のピンホールまたは一連のピンホールが発生して、試験システム全体の圧力低下が生じると、破損が知らされる。580回/分のストローク速度および3.175mmのストローク長さで屈曲作用を生じさせる。この試験により、1つまたは複数の点において折り曲げて広げるという操作を繰り返したときの薄いフィルムの耐久力を調査できる。この試験は、屈曲の動きが起こる可能性のあるような包装またはその他の用途での応用を目的とした一組のフィルムの相対的挙動を予測するのに役立つ。
【0081】
表1:改質ナイロン6のインフレートフィルムの特性1

1周囲温度(約25℃)で測定した特性。
【0082】
表1に示すように、実施例1(20重量%の無水物イオノマーAI−1で改質されたナイロン6)は、優れた光学的透明度(低い曇り度)を維持しながら、対照標準のナイロン6フィルム(比較例1)と比較してピンホール耐屈曲性が非常に向上していることを示している。実施例1を比較例C2と比較すると、耐屈曲性(ピンホール)が高くなっていることや曇価が低くなっていることに示されるように、無水物イオノマーは、ナイロン6を改質し、高い靭性および高い光学的透明度の両方を付与する点で、従来の軟質のイオノマー(イオノマー1)よりも性能が優れていることも分かる。無水マレイン酸グラフト共重合体では、優れた耐屈曲性が付与されているが、フィルムの曇り度は容認しがたいほど高い(比較例C3)。
【0083】
表2で報告されているキャストフィルムは、キャストフィルムドラムを備えた28mmの二軸スクリュー押出機でポリマー成分を溶融ブレンドすることにより作製した。フィルムは、作製後、落槍衝撃試験で試験するまで乾燥した状態に保った。
表2にあるポリマーは次のとおりである:
ポリアミド−2:Ultramid B35として(BASFから)入手可能なナイロン6。
イオノマー2:エチレン、23重量%のn−ブチルアクリレートおよび9重量%のメタクリル酸を含む軟質のイオノマー三元共重合体であって、名目上は利用可能なカルボン酸部分の50%が亜鉛カチオンによって中和されており、MIが0.6であるもの(E/9MAA/23n−BA/50Zn)。
AI−2:エチレン、11重量%のメタクリル酸および6重量%の無水マレイン酸モノエチルエステルを含む三元共重合体で、名目上は利用可能なカルボン酸部分の60%が亜鉛カチオンによって中和されているもの(E/11MAA/6MAME/60Zn)。
イオノマー3:エチレンおよび15重量%のメタクリル酸を含む共重合体で、名目上は利用可能なカルボン酸部分の60%が亜鉛カチオンによって中和されており、MIが1.0であるもの(E/15MAA/60Zn)。
グラフト−2:MAHでグラフト化されたエチレン−オクテン共重合体で、密度が0.87g/ccおよびメルトフローインデックスが1.6(ASTM D1238(190℃,2.16kg)に従って測定)のもの。Fusabond(登録商標)493DとしてDuPontから入手可能。
試験方法は次のとおりである:
落槍衝撃試験:この試験は耐衝撃性および/または耐破壊性の尺度となるものであり、ASTM D1709に従って、10°F(−12.2℃)において直径3.8cm(1.5インチ)の槍を66cm(26インチ)の高さから落下させて試験する。使用した試験では、槍質量を変えて、試験対象フィルムのフィルム破損に関して破損率が50%となる槍質量を求めた。所定の槍質量に関して、10回の落下試験を行った。表2は、破損率が50%となった槍質量をグラム数で報告している。槍質量が軽くなると、フィルムは10回の落下すべてに合格することがあるが、槍質量が重くなると、フィルムは10回の落下すべてで破損することがある。
【0084】
表2:改質ナイロン6のフィルム(キャストフィルム)の特性

【0085】
表2に示されているように、無水物イオノマーAI−2または無水物イオノマーを含むブレンドで改質されたフィルムすべてにおいて、改質されていないフィルムと比較して、10°Fで行われた落槍衝撃試験の結果が非常に向上していることが示されている。改質されていないナイロン6のフィルム(比較例C4)は、10°Fでの落槍衝撃試験で性能が劣っていた。例えば、26インチの高さから160グラムの槍質量が落とされた場合、10回の落下のうち9回で破損した。実施例3のフィルム(無水物イオノマーAI−2を含む)では、落槍衝撃試験で向上していることが示され、定性目視観測(qualitative visual observation)によると、フィルムの光学的透明度は優れたものだった。
【0086】
軟質のイオノマーであるイオノマー−2を含む比較例C5は、改質されていないフィルムと比較して優れた耐落槍衝撃性(dart impact resistance)を示している。しかし、フィルムの曇り度が望ましくないほど高くなっている。実施例4に示されるように、無水物イオノマーと軟質のイオノマーを組み合わせると、改質されていないフィルムと比べて著しく向上した靭性が保持され、同時に向上した光学的透明度が示されている。同様に、実施例5(無水物イオノマーと軟質のマレイン酸化PEなどの軟質改質剤との組合わせ)は、優れた耐落槍衝撃性と良好な光学的透明度(目視観測による)の両方を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)約65から約90重量%のポリアミド;および
(2)(a)エチレンと、
(b)約5重量%から約15重量%のC3〜C8のα,β−不飽和カルボン酸と、
(c)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、およびマレイン酸のC1〜C4のアルキルハーフエステルよりなる群から選択されるエチレン性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体である、約0.5重量%から約12重量%の少なくとも1種のコモノマーと、
(d)アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1個から12個の炭素原子を有する)から選択される0重量%から約30重量%のモノマーとの共重合体を含むイオノマー組成物を含む
約5から約35重量%の改質剤
を含む熱可塑性組成物から得られるフィルムであって、
(i)存在するカルボン酸官能基が、1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオンによって少なくとも部分的に中和されており、さらに(ii)−10℃未満の温度に保たれた前記フィルムが、前記フィルムの66cm上の高さから少なくとも約165グラムの重りが前記フィルム上に落下させられたときにその落下回数の少なくとも50%その重りを支えることができる、
熱可塑性組成物から得られるフィルム。
【請求項2】
前記ポリアミドが、ナイロン6;ナイロン6,6;ナイロン11;ナイロン12;ナイロン12,12;ナイロン6/6,6;ナイロン6,10;ナイロン6,12;ナイロン6,6/12;ナイロン6/6,6/6,10およびナイロン6/6Tよりなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記ポリアミドが、ナイロン6およびナイロン6,6よりなる群から選択される、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリアミドがナイロン6である、請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
成分(2)(c)が3〜12重量%の範囲内で存在する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
成分(2)(c)が4〜10重量%の範囲内で存在する、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
成分(2)(c)がマレイン酸のC1〜C4のアルキルハーフエステルである、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
成分(2)の改質剤が、少なくとも1種の追加の熱可塑性ポリマーを熱可塑性組成物全体の約30重量%までの量でさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
前記少なくとも1種の追加のポリマーはE/X/Y共重合体であって、ここで、Eはエチレンであり、XはC3〜C8のエチレン性不飽和カルボン酸であり、Yはアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は1個から8個の炭素原子を有する)から選択されるコモノマーであり、XはE/X/Y共重合体の2〜30重量%の範囲内で存在し、YはE/X/Y共重合体の0〜40重量%の範囲内で存在し、存在するカルボン酸官能基は少なくとも部分的に1種または複数種のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオンによって中和されている、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記少なくとも1種の追加のポリマーが、マレイン酸化ポリマー、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、エラストマーポリオレフィン、スチレン−ジエンブロック共重合体および熱可塑性ポリウレタンよりなる群から選択される、請求項8に記載のフィルム。
【請求項11】
前記少なくとも1種の追加のポリマーが、マレイン酸化ポリエチレン、マレイン酸化ポリプロピレン、マレイン酸化スチレン−エチレン−ブテン−スチレントリブロック共重合体、マレイン酸化ポリブタジエンよりなる群から選択される、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
多層フィルムまたはシートである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、
(a)フィルムを加熱する工程;(b)加熱したフィルムを横断方向および/または流れ方向に膨張させる工程;および(c)任意選択的に前記フィルムをアニールする工程を含む方法によって延伸される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項14】
請求項1に記載のフィルムを含む物品。
【請求項15】
前記物品がパウチ、ボトルまたはバッグである、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記物品がチューブである、請求項14に記載の物品。
【請求項17】
前記物品がパッケージである、請求項14に記載の物品。
【請求項18】
前記パッケージが肉を入れるためのものである、請求項17に記載のパッケージ。
【請求項19】
前記パッケージが400mmHgまでの内部圧を保つことができる、請求項17に記載のパッケージ。
【請求項20】
前記パッケージが医療用溶液パウチとしての使用に適している、請求項19に記載のパッケージ。
【請求項21】
前記物品が熱成形されたものである、請求項14に記載の物品。

【公表番号】特表2008−519147(P2008−519147A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540428(P2007−540428)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/041183
【国際公開番号】WO2006/053297
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】