説明

食品包装体

【課題】トレイやプレート紙を除去し、食品に密着した特定の吸水シートにより、食品から発生するドリップを取り除き、食品の風味、鮮度の劣化を防止することのできる食品包装体を提供する。
【解決手段】少なくとも、(1)(A)吸水性繊維および(B)熱接着性合成繊維を主体とするエアレイド不織布、または(A)’上記(A)と同一または異なる吸水性繊維を主体とするケミカルボンド不織布からなる、吸水マット、(2)食品、および(3)ラップフィルムから構成され、かつ該(1)吸水マットの上に(2)食品が載置されていて、この食品と吸水マットの空間が(3)ラップフィルムで閉鎖されている食品包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用冷蔵庫内などで生鮮食品を保管するのに適した食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
精肉や鮮魚などの生鮮食品を保存するのに適した湿度は、一般に70%(相対湿度)以上であり、この湿度で保管した生鮮食品は、味、風味が損なわれることなく長期間保存可能である。そのため、精肉や鮮魚の販売店では、食品陳列棚や食品陳列ケース内の湿度を70%以上に調整しているのが一般的である。
【0003】
ところで、消費者は、上記生鮮食品を購入して家庭用の冷蔵庫に保管するが、家庭用の冷蔵庫内の湿度は15〜20%と低いために、上記生鮮食品を家庭用の冷蔵庫に保管すると、生鮮食品が乾燥し、味や風味が低下し、さらには水分の減少による質量の目減りや、変色を引き起こしやすい。
【0004】
また、トレイに生鮮食品を設置してその上を被覆する家庭用のラップフィルムとして、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのいわゆるガスバリヤー性の樹脂を用いたものが普及しており、このラップフィルムで食品を覆うことで冷蔵庫内での食品の乾燥をわずかに防ぐことが可能である。しかし、この場合も、トレイとラップフィルムとの間の空間の湿度を70%以上の理想的な状態に維持することは難しく、長期間の保存により食品が乾燥することを避けることができない。
【0005】
特許文献1(特開2004−357644号公報)には、吸収性シート本体に、酸性またはプラスの酸化還元電位の少なくとも一方の性質を有する殺菌水が含まれた食品用シートが提案されており、このシートをトレイの上に敷設し、このシートの上に食品を載せて、トレイ上の空間をラップフィルムで閉鎖した食品包装体が提案されている。
しかしながら、このような食品包装体は、食材の形態保持性のために、下部にトレイあるいはプレート紙を配置しており、省資源とは言いがたい。また、食品の下部にトレイやプレート紙があると、食品に密着しがたく、吸収性シートにより、食品のドリップを取り除き、食品の風味、鮮度の劣化を防止しがたいという一面にある。さらに、トレイ上に敷設されるシートに殺菌水で加工すると、コストがかかり、リサイクル面やコスト面から、今次の省エネ、省コスト化に対応できる技術とは言いがたい面もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−357644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、トレイやプレート紙を除去し、食品に密着した特定の吸水シートにより、食品から発生するドリップを取り除き、食品の風味、鮮度の劣化を防止することのできる食品包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも、(1)(A)吸水性繊維および(B)熱接着性合成繊維を主体とするエアレイド不織布、または(A)’上記(A)と同一または異なる吸水性繊維を主体とするケミカルボンド不織布からなる、吸水マット、(2)食品、および(3)ラップフィルムから構成され、かつ該(1)吸水マットの上に(2)食品が載置されていて、この食品と吸水マットの空間が(3)ラップフィルムで閉鎖されていることを特徴とする食品包装体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食品包装体は、次のような効果を奏する。
(1)形が食品に密着し、トレイやプレート紙使いのような空間を多く占有することがないため、省スペースで保管することができる。
(2)トレイやプレート紙が不要なため、使用後の廃棄処分時におけるゴミの発生が少ない。
(3)余分な材料を使用しないため、初期のコスト低減と廃棄で発生する費用の削減になる。
(4)食品を包装しやすく、作業性が向上する。
(5)食品の保管日数の面からは、単にトレイ上での保管より、本発明の真空パックでは保管日数が大幅に向上する。
(6)通常の保冷状態でも、ドリップが垂れない。
(7)熱湯での加熱調理時にも、食品と密着しているため、ドリップが垂れず、風味が維持できる。
(8)冷蔵・冷凍室内での解凍や電子デンジの解凍でもドリップが垂れない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)吸水マット
本発明に用いられる(1)吸水マットは、(A)吸水性繊維および(B)熱接着性合成繊維を主体とするエアレイド不織布、または(A)’上記(A)吸水性繊維と同一または異なる吸水性繊維を主体とするケミカルボンド不織布から構成されている。
以下、(1)吸水マットを構成するエアレイド不織布、ケミカルボンド不織布について説明する。
【0011】
<エアレイド不織布>
エアレイド不織布は、(A)吸水性繊維および(B)熱接着性合成繊維を主体とし、通常のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン系繊維などのその他の繊維を50重量%以下程度含有していてもよい。
【0012】
(A)吸水性繊維
ここで、上記エアレイド不織布を構成する(A)吸水性繊維としては、パルプのほか、レーヨン繊維、コットン、麻などの天然繊維などが挙げることができるが、エアレイド不織布の場合は、パルプが好ましい。
パルプとしては、長さが0.2mm〜5mmの粉砕パルプが好ましい。パルプは、吸水性を確保するための素材であり、性能、価格の観点から最も好ましい。なお、エアレイド不織布の場合、パルプ以外に、コットン、麻などの天然繊維、レーヨンなどの化繊を50重量%未満含有していてもよい。50重量%以上では、吸水性能が悪化し、実用的でない。
また、多量の水分を吸収する必要のあるときは、高吸収性の繊維やポリマー体を用いても差し支えない。
【0013】
(B)熱接着性合成繊維:
(B)熱接着性合成繊維としては、芯鞘型や偏芯サイドバイサイド型の複合繊維が好適である。鞘あるいは繊維外周部を構成するポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。芯成分あるいは繊維内層部を構成するポリマーとしては、鞘より高融点であり、加熱接着処理温度で変化しないポリマーが好ましい。このような組み合わせとして、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエステル、共重合ポリエステル/ポリエステルなどが挙げられる。これらのポリマーは、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で変性されていても差し支えがない。さらに、フィブリル状繊維であっても良い。例えば、三井化学株式会社のSWPなどが挙げられる。
【0014】
(B)熱接着性合成繊維は、繊度が細いと構成繊維の本数が多くなるので、脱落繊維が少なくなり、太い場合は、繊維間の空隙が大きくなり、嵩高い不織布となる。好ましい繊度は、0.5dt〜5dtexである。5dtexを超えるとパルプの脱落が抑え切れず好ましくない。一方、0.5dt未満では不織布の生産性に欠けるので実用的でない。
【0015】
また、(B)熱接着性合成繊維の長さは、1〜15mmが好ましい。繊維が短いとパルプとの混合性がよくなり、より均一な不織布となりやすいが、1mm未満になると粉末状に近づき、繊維間結合による網目構造が作りにくくパルプの脱落を抑えきれなくなるばかりか、不織布としての強力が低くなり、実用性に欠けるので好ましくない。一方、15mmより長くなると不織布の強力は上がるが、不織布製造時の繊維の空気輸送において繊維どうしが絡まりやすくなり、繊維塊状欠点を増大させるので好ましくない。特に、好ましいのは、3〜10mmである。
【0016】
なお、(B)熱接着性合成繊維は、捲縮していても、していなくてもよい。捲縮している場合、ジグザグ型の二次元捲縮繊維およびスパイラル型やオーム型などの三次元(立体)捲縮繊維の何れも使用できる。また、抗菌性や消臭性の性能を付与するための無機物や有機物を添加してもよい。
【0017】
本発明のエアレイド不織布(吸水マット)全体において、(A)パルプと(B)熱接着性合成繊維との重量比率は、10〜70/90〜30、好ましくは25〜60/75〜40である。(B)熱接着性合成繊維が30重量%未満では、吸水マット中のパルプの固定化が困難であり、一方、90重量%を超えると、相対的にパルプの含量が少なすぎて吸水性が悪化するうえに、コストもアップするので実用的でなく、好ましくない。
【0018】
本発明の吸水マットは、エアレイド法による不織布である。エアレイド法で製造された不織布は、不織布を形成している繊維が、不織布の長手方向、幅方向および厚み方向にランダムに3次元配向されているので好ましい。
【0019】
ここで、エアレイド法による不織布は、以下のようにして得ることができる。
所定量のパルプおよび解繊された熱接着性合成繊維を主体とする繊維を空気流に均一分散させながら搬送し、吐出部に設けた細孔を有するスクリーンから吹き出した該繊維を、下部に設置された金属またはプラスチックのネットに落としネット下部で空気をサクションしながら、上記繊維をネット上に堆積させる。必要に応じて、この工程を複数回繰り返して、パルプおよび熱接着性合成繊維を主体とするウエブをシート上に堆積させる。
次に、この熱接着性合成繊維が充分その接着効果を発揮する温度に全体を加熱処理して、本発明のパルプおよび熱接着性合成繊維を主成分とする吸水シートを得ることができる。接着効果を十分発揮させるには、熱接着性合成繊維の接着成分の融点より15〜40℃高い温度での加熱処理が必要である。
【0020】
このように、エアレイド法で製造された不織布は、不織布の流れ方向、幅方向および厚み方向へ繊維をランダムに3次元配向させることが可能である。そして、これらが熱接着するので、層間剥離を起こすことがない。また、エアレイド法で製造した不織布は、均一性が良好なので、性能のバラツキも少なくなる。
【0021】
本発明に用いられるエアレイド不織布は、タテとヨコの強力の比率が、乾燥時および湿潤時ともに、通常、0.7〜1.1であり、好ましくは0.75〜1.05である。どちらか一方の強度が低ければ実用上の支障を生じ易い。
また、乾燥時と湿潤時における引っ張り強力の比率は、通常、0.6〜1.1であり、好ましくは0.7〜1.1である。0.6未満のものは、乾燥時に比べて湿潤時の強力が大きく低下する、すなわち、濡れると弱くなる不織布であり、本発明の意図するところから外れ、実用上問題が生じる。また、湿潤時には水分の存在による繊維間の表面張力で強力が上昇し、1を超える場合があり、これも本発明の範囲であるが、なんらかの水分の存在で結合する別の手段が存在しない限り1.1を超えることは通常はない。
【0022】
<ケミカルボンド不織布>
本発明に用いられる(1)吸水マットは、上記のようなエアレイド不織布のほか、ケミカルボンド不織布で構成されていてもよい。
ケミカルボンド不織布の場合は、エアレイド不織布に用いられる上記(A)吸水性繊維と同一または異なる(A)’吸水性繊維を主体とし、通常のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維などのその他の繊維を50重量%以下程度含有していてもよい。
ここで、(A)’吸水性繊維としては、エアレイド不織布に用いられる(A)吸水性繊維と同様のものが用いられるが、好ましくはレーヨン繊維である。
ケミカルボンド不織布に用いられるレーヨン繊維の繊度は、1.7dt〜5.5dtexが好ましい。また、レーヨン繊維の長さは、38〜76mmが好ましい。
【0023】
ケミカルボンド法による不織布は、解繊、混綿装置によって、レーヨン繊維、あるいはレーヨン繊維およびその他の異種の繊維からなる原料繊維を均一に混合したものをカードによってシート化してウエブにし、このウエブをアクリル系エマルジョンのようなケミカルバインダー液にディッピングして所定量の樹脂をウエブに付着させ、さらに乾燥、熱処理することにより、製造することができる。
【0024】
なお、本発明に用いられるエアレイド不織布あるいはケミカルボンド不織布からなる(1)吸水マットは、適度な水分吸収性が必要であり、水分の吸収性は、通常、5〜50g/g、好ましくは6〜30g/gである。5g/g未満では、吸収性が不充分であり、一方、50g/gを超えると不織布が破れやすくなり実用的でない。
【0025】
以上の本発明に用いられるエアレイド不織布あるいはケミカルボンド不織布からなる(1)吸水マットの全体の目付は、通常、20〜300g/m、好ましくは30〜150g/mである。20g/m未満では、保持する水分量が不十分であり、一方、300g/mを超えると保持する水分量が食品用吸水マットとしては過剰である。
なお、(1)吸水マットの厚みは、通常、0.2〜3.0mm、好ましくは0.3〜2.0mm程度である。
【0026】
<(C)ポリオレフィン系フィルム>
本発明に用いられる(1)吸水マットには、その上面、あるいは上面および下面に、(C)多数の微小な孔を有するポリオレフィン系フィルムが積層一体化されてなる複合吸水マットであってもよい。
(C)ポリオレフィン系フィルムを構成するポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂が、耐水性、成形性、価格などの実用性の観点から好適である。このポリオレフィン系樹脂には、消臭剤、抗菌剤、着色剤、親水剤などの添加剤が配合されていてもよい。特に、添加剤として、二酸化チタンは、フィルムが不透明になるため、隠蔽性が高く、表面側から吸収されたドリップを視認し難くなるので、好ましい。
【0027】
(C)ポリオレフィン系フィルムの厚さは、好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは10〜40μmである。5μm未満では、薄すぎて開孔を設けるのが困難になるうえ、食品が、直接、吸収シートに吸液された液体に接触する可能性が大きく、不衛生である。しかも、薄すぎると柔らか過ぎて取り扱い性も悪化する。一方、80μmを超えると、厚すぎて液体透過速度が遅くなり、吸液性能に悪影響が出る。
【0028】
本発明に用いられる(C)ポリオレフィン系フィルムには、多数の微小な孔が穿設されている。この孔は、機械的針方式、熱針方式、微細孔からの熱風吹出し方式などの手段により、適宜、穿設することができ、必要とする孔の大きさ、孔径の差に応じて任意に選択できる。
ここで、孔の形状は、円形、楕円形、四角形(長方形、正四角形)、三角形のいずれであっても良い。
【0029】
ここで、孔の数は、好ましくは2〜200個/cm、さらに好ましくは4〜150個/cmである。2個/cm未満では、ドリップ透過性が悪く、一方、200個/cmを超えると、フィルムの強度が弱くなり、また隠蔽性も悪化するので、好ましくない。
なお、本発明に用いられるポリオレフィン系フィルムは、上記の条件を満たす範囲であれば、異なる孔径のものが混在していても良い。
【0030】
このような多数の微小な孔を有するポリオレフィン系フィルムは、例えば通常のポリオレフィン系フィルムを熱針ロール、受けロール間に通すことで加工できる。熱針ロールの温度は、180〜350℃が好ましい。熱針ロールの最適温度は、材質や加工温度によって変える必要がある。例えば、ポリプロピレンフィルムを加工する場合には、180℃未満では孔開け不良や接着不良が発生し、350℃を超えると熱ロールへの融着取られなどのトラブルの原因となる。さらに好ましくは、220〜330℃である。
熱針ロールと受けロールの隙間は、0.1〜2mmが好適である。この間隔が0.1mm未満では嵩が潰れて保水性能が低下し、一方、2mmを超えると孔開け不良や接着不良の発生原因となる。好ましくは0.2〜1.5mmである。
【0031】
<ポリオレフィン系フィルムと吸水マットの積層一体化>
本発明に用いられる複合タイプの(1)吸水マットは、上記の(C)ポリオレフィンフィルムを、吸水マットの上面、あるいは、上面および下面に貼り合わせて、2層構造、あるいは、3層構造に積層一体化されているものである。これらを一体化するには、ホットメルト、熱圧エンボス、熱接着性樹脂のパウダーを用いる方法など公知の方法が適用できる。吸収マットの性能を阻害しないためには、ホットメルト法が好ましい。この場合、ホットメルト樹脂は、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、合成ゴム系などを選択できる。接着剤の付与量は、好ましくは1〜20g/m、さらに好ましくは2〜15g/mである。
また、熱接着性樹脂を用いずに高周波ウェルダー、超音波接合による方法も利用できる。
【0032】
このようにして得られた本発明の複合吸水マットは、熱接着、あるいはホットメルト系接着剤により点接着しているだけで、乾燥時の強度だけでなく、湿潤時の強度にも優れている。また、吸水性もよい。
また、複合吸水マットは、(C)ポリオレフィン系フィルム中に含有される二酸化チタンなどの顔料によって、吸水マット中に吸収される血のりなどの色を遮蔽することができる。
なお、本発明に用いられるこのような複合吸水マットの全体の目付は、通常、25〜400g/m、好ましくは40〜200g/m程度である。
【0033】
(2)食品
本発明に適用される(2)食品は、特に限定されるものではなく、海老、サバ、アジ、タイなどの生の海産物をはじめ、豚肉、鶏肉、牛肉などの鮮魚や生肉や、これらの加工品など、その種類を限定するものではない。
【0034】
(3)ラップフィルム
本発明に用いられる(3)ラップフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィンフィルムや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、あるいは、ポリブタジエンフィルムや、これらの複合フィルムなどが使用可能であるが、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)やエチレン・ビリルアルコール共重合体(EVOH)などのいわゆるガスバリヤー性樹脂を含む樹脂フィルムや、これらの複合フィルムを使用すると、食品包装体内の空間の湿度を高い状態に長期間維持しやすくなり、好ましい。
(3)ラップフィルムの厚さは、好ましくは0.5〜60μm、さらに好ましくは1.0〜50μmである。
【0035】
本発明に係わる食品包装体は、例えば、一方の口のみが開口し、ほぼ袋状に製袋された(3)ラップフィルム中に、(1)食品用複合吸水マット上に、生えび、鮮魚、あるいは生肉などの適宜量の(2)食品を載置し、これらを、該フィルム中に挿入し、(3)ラップフィルムの開口部から吸引機で空気を吸引して、当該開口部を熱融着などの手段で密封しつつ切断することにより、真空包装し、食品包装体とすればよい。本発明の食品包装体の包装方法は、上記に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
参考例1
<孔あきポリオレフィン系フィルムの作製>
厚さ30μmのポリプロピレン製フィルム(SUTTON社製、STCパールフィルム、遮蔽用の二酸化チタンを5重量%含有)を用いた。このフィルムに、300℃に加熱された熱針をもちい熱針方式で、開孔径が0.6mm、孔数が15個/cmの円形孔を穿設したものを用いた。
【0038】
参考例2
<エアレイド不織布(吸水マット)の作製、その1>
熱接着性合成繊維として、芯がポリプロピレンで、鞘がポリエチレンの複合繊維(チッソ社製、インタック、1.7dt、長さ3mm)と、木材粉砕パルプ(Weyerhaeuser社製、NF405)をそれぞれ80重量%、20重量%の割合で混合したもので、目付けが80g/mを用い、これらの積層一体化は、エアレイ法により、熱オーブンで138℃で加熱一体化した。厚さは1.2mmであった。
【0039】
参考例3
<ケミカルボンド不織布(吸水マット)の作製、その2>
レーヨン繊維(オーミケンシ製、NWD3.3dt、長さ51mm)60重量%とポリエチレンテレフタレート繊維(帝人ファイバー製、3.3dt、長さ51mm)40重量%を混合し、ウエブを作成し、アクリル酸共重合体のエマルジョン(日本合成製、モビニール842)の濃度5%溶液に含浸後、乾燥機で160℃で乾燥・キュアリングを実施した。シートの目付は60g/m、厚さは0.6mmであった。
【0040】
参考例4
<ポリオレフィン系フィルムと吸水シートの一体化(複合吸水マット1の作製)>
(株)松村石油研究所製のポリオレフィン系ホットメルト接着剤であるモレスコメルトTN715を200℃で溶融し、圧空とともに多数のノズルから参考例2で得られたエアレイド法による吸水マットに噴射した。付与量は、4g/mとした。ただちに、参考例1で得られた孔あきポリオレフィン系フィルムを重ねて一体化し、複合吸水マット1を作製した。
得られた複合吸水マットの目付は、114g/m、厚さは1.5mmであった。
【0041】
参考例5
<ポリオレフィン系フィルムと吸水シートの一体化(複合吸水マット2の作製)>
参考例3で得られたケミカルボンド不織布からなる吸水マットを用いる以外は、参考例4と同様にして複合吸水マット2を得た。
得られた複合吸水マットの目付は94g/m、厚さは0.9mmであった。
【0042】
実施例1
参考例4で得られた複合吸水マット1を、タテ20cm、ヨコ30cmに切り出して試験片を作製した。次に、この試験片上に一尾約20gのブラックタイガーの生えびを16匹載置し、これらを、タテ25cm、ヨコ35cmの一端部が開口したエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(クラレ社製、エバール)に収納し、この端部を真空吸引するとともに、熱溶断して、真空パックとし、保存性(保存状態)を調べた。
【0043】
なお、試験法は、以下のとおりである。
(1)厚さ:
JIS-L-1913「一般短繊維不織布試験方法」6.1.2 A法に準じた。ただし、測定端子30mmφ・荷重2.75g/cm(測定器;尾崎FFA-8型)
(2)保存性
作製された食品包装体を用いて、急速冷凍を施し、冷凍庫(温度:−20℃)で、4ヶ月保管し、その後、開封し外観の評価を行った。「良好」とは、「解凍したときにドリップが出ていない」や「解凍後に食材の臭みが増していない」状態を示している。
【0044】
実施例2
参考例5で得られた複合吸水マット2を用いる以外、実施例1と同様にして、食品包装体を作製して評価した。
【0045】
実施例3
熱接着性合成繊維として、芯がポリエチレンテレフタレートで、鞘がポリエチレンの芯鞘型複合繊維(帝人ファイバー株式会社製、2.2dt、長さ3mm)を用いる以外は、参考例2および参考例4と同様にして、複合吸水マットを作製した。
得られた複合吸水マットは、全体目付が84g/m、厚さが0.9mmであった。
次に、このマットを用い、実施例1と同様にして、食品包装体を作製し、保存状態を調べた。
【0046】
実施例4
レーヨン繊維(オーミケンシ製、NWD3.3dt、長さ51mm)を100重量%用いる以外は、参考例3および参考例4と同様、複合吸水マットを作製した。
得られた複合吸水マットは、全体目付が74g/m、厚さが0.7mmであった。
次に、このマットを用い、実施例1と同様にして、食品包装体を作製し、保存状態を調べた。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の食品包装体は、生えび、鮮魚、生肉、貝類などの生鮮食品およびハム・ソーセージ、魚肉練り製品、干物などの加工食品を新鮮な状態で保存する包装体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(1)(A)吸水性繊維および(B)熱接着性合成繊維を主体とするエアレイド不織布、または(A)’上記(A)と同一または異なる吸水性繊維を主体とするケミカルボンド不織布からなる、吸水マット、(2)食品、および(3)ラップフィルムから構成され、かつ該(1)吸水マットの上に(2)食品が載置されていて、この食品と吸水マットの空間が(3)ラップフィルムで閉鎖されていることを特徴とする食品包装体。
【請求項2】
エアレイド不織布を構成する、(A)吸水性繊維がパルプであり、該(A)パルプと(B)熱接着性合成繊維の割合が10〜70/90〜30重量%、(B)熱接着性合成繊維の単糸繊度が0.5〜5dtex、吸水マット全体の目付が20〜300g/mである、請求項1記載の食品包装体。
【請求項3】
ケミカルボンド不織布を構成する、(A)’吸水性繊維がレーヨン繊維であり、該レーヨン繊維の単糸繊度が1.7〜5.5dtex、吸水マット全体の目付が20〜300g/mである、請求項1記載の食品包装体。
【請求項4】
(1)吸水マットの上面、または上面および下面に、(C)多数の微小な孔を有するポリオレフィン系フィルムが積層一体化されてなる、請求項1〜3いずれかに記載の食品包装体。
【請求項5】
(C)ポリオレフィン系フィルムの孔の個数が50〜200個/cm、該フィルムの厚さが5〜80μmである、請求項4記載の食品包装体。
【請求項6】
(2)食品が、海産物または肉製品である、請求項1〜5いずれかに記載の食品包装体。
【請求項7】
(3)ラップフィルムが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、またはエチレン・ビニルアルコール共重合体からなるフィルム、あるいはこれらの複合フィルムである、請求項1〜6いずれかに記載の食品包装体。





【公開番号】特開2011−178432(P2011−178432A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43810(P2010−43810)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(591196315)金星製紙株式会社 (36)
【Fターム(参考)】