説明

食品包装用シート

【課題】吸水性が高く、透明で外部からの視認が可能で、電子レンジでの加熱が可能で、かつカット性に優れ、各種食品に対して多目的に利用できる食品包装用シートを提供する。
【解決手段】セロハンよりなる中間層14と、前記中間層14の一の面に、接着部分15を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる外層13と、前記中間層14の他の一の面に、接着部分を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる内層11とを具備し、前記内層11には貫通孔12が形成されており、前記接着部分15の面積が、層間界面の面積の5〜50%である食品包装用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の結露防止用の食品包装用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、家庭でおにぎりを作る場合、温かいご飯を素手もしくはラップ等を介して握った後、ラップもしくはアルミホイル等の包装材で包装する場合が多いが、温かいご飯から発生する水蒸気が前記包装材の内表面で結露し、水滴がおにぎりや海苔等の表面に付着することでベタベタし、食味を著しく損なう。
このような包装材内表面での結露を防止する機能を有する包装材として、従来から各種提案がなされている。例えば、特許文献1においては、アルミニウム箔と紙を部分的に積層したシートが提案されている。また、特許文献2では、合成樹脂製フィルム、セロハン、貫通孔を有する合成樹脂製フィルムの3層からなる吸湿性包装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2882591号公報
【特許文献2】特開平8−52841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されている包装材は、包装材の内表面の結露の低減化が図られ、食品の食味が大きく損なわれることを防止できるが、不透明であり外部から包装された食品を見ることができず、またアルミホイルを用いているため、電子レンジでの再加熱ができないという問題を有している。
また、特許文献2で開示されている包装材は、吸水能力が不十分であり、当該吸水量を上げるためにはセロハン層を厚くする必要がありコスト高を招来し、包装に必要な柔軟性を損なう等の問題が発生する。また、セロハンの両面を一般的な合成樹脂で積層しているため、ロール状に巻回してカット刃の付いた化粧箱に収納した場合、カット性が悪いという問題を有している。
【0005】
そこで本発明においては、上述した従来の問題に鑑み、吸水性が高く、透明で外部からの視認が可能で、電子レンジでの加熱が可能で、かつカット性に優れ、各種食品に対して多目的に利用できる食品包装用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、複数層構成を有し、かつ各層の構成を特定した食品包装用シートが上述した従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
〔1〕
セロハンよりなる中間層と、
前記中間層の一の面に、接着部分を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる外層と、
前記中間層の他の一の面に、接着部分を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる内層と、
を具備し、
前記内層には貫通孔が形成されており、
前記接着部分の面積が、接着されている部材の面積(層間界面の面積)の5〜50%である食品包装用シート。
〔2〕
片面に防水処理が施されているセロハンよりなる外層と、
前記外層の、非防水処理面側に、接着部分を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる内層と、
を具備し、
前記内層には貫通孔が形成されており、
前記接着部分の面積が、接着されている部材の面積(層間界面の面積の5〜50%である食品包装用シート。
〔3〕
前記架橋ポリエチレンフィルムが、ゲル分率10〜50質量%の延伸フィルムである前記〔1〕又は〔2〕に記載の食品包装用シート。
〔4〕
前記貫通孔の孔径が0.1〜2.0mmであり、当該貫通孔の開孔率が0.3〜4%である前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の食品包装用シート。
〔5〕
カット刃を具備する収納箱に、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の食品包装用シートが、ロール状に巻回された状態で収納されている食品包装用材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸水性が高く、透明で外部からの視認が可能で、電子レンジでの加熱が可能で、かつカット性に優れる食品包装用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の形態の食品包装用シートの概略断面図を示す。
【図2】本発明の第2の形態の食品包装用シートの概略断面図を示す。
【図3】接着剤の接着パターンを示す概略平面図を示し、図中のA、B、Cは実施例で採用した寸法を示す。
【図4】貫通孔を示す有孔パターンの概略平面図を示し、図中のD、E、Fは実施例で採用した寸法を示す。
【図5】実施例で用いたおにぎりの概略斜視図を示し、図中のG、H、Iは実施例で採用した寸法を示す。
【図6】実施例で行ったおにぎりの概略包装方法の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、図を参照して詳細に説明する。本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
各図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0011】
〔食品包装用シート〕
本実施形態の食品包装用シートは、セロハンの層と架橋ポリエチレンフィルムの層とが接着部分を介して積層されており、前記架橋ポリエチレンフィルムには、貫通孔が形成されており、前記接着部分の面積が、層間界面の面積の5〜50%である。本実施形態の食品包装用シートには、後述する第1の形態と第2の形態とがある。
【0012】
(第1の形態の食品包装用シート)
図1に第1の形態における食品包装用シートの概略断面図を示す。
食品包装用シート10は、セロハンよりなる中間層14と、前記中間層14の一の面に、接着部分15を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる外層13と、前記中間層14の他の一の面に、接着部分15を介して積層されている架橋ポリエチレンフィルムよりなる内層11とを具備している。
前記内層11には貫通孔12が形成されており、前記接着部分15の面積は、層間界面の面積の5〜50%である。
【0013】
<中間層>
中間層14はセロハンよりなり、普通セロハンが好ましい。また、5〜20質量%のグリセリンを含むものが柔軟化付与の観点から好ましい。セロハンは、親水性を有するとともに湿潤強度に優れ、直線カット性にも優れることから、食品包装用シートの構成材料として好適な材料である。
中間層14の厚みは10〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。中間層の厚みを10μm以上にすることにより実用的な吸水量が得られ、50μm以下にすることにより剛性が高くなりすぎず、容易に食品を包むことが可能になる。
【0014】
中間層14を構成するセロハンは、通常、綿花、パルプ、古紙等から得られる繊維質をアルカリ下、二硫化炭素と反応させてビスコースに調整し、スラリー状物となったビスコースを、硫酸、硫酸ナトリウムを含む凝固浴中に、ホッパー等により製膜されながら放出することによりセルロースに転化させ、その後、水洗、脱硫、漂白、柔軟仕上げ等が行うことにより得られる。
【0015】
第1の形態の食品包装用シートにおいては、セロハンである中間層14に、後述する外層13を設けることにより、防湿効果を付与した構成となっている。これにより第1の形態の食品包装用シートは、透湿度が低く抑制されている。具体的な透湿度(WVTR)としては、500g/m2・24hr以下が好ましく、100g/m2・24hr以下がより好ましい。
透湿度は、後述する実施例に記載するように、JIS−K7194に準拠し、40℃−90%Rhの条件下で測定することができる。
上記構成にすることにより、食品を包装した時に食品から発生する水蒸気が、後述する内層11の架橋ポリエチレンフィルムに施された貫通孔を通過し、セロハン層のみでなく、セロハンと架橋ポリエチレンフィルムの未接着部分に拡散されることで、高い吸水性を発現し、開封後の食品のべたつきを防止することができるとともに、食品の必要以上の乾燥を防ぐことができる。
吸水量はセロハンの厚み、セロハンと架橋ポリエチレンフィルムとの接着面積を変更することで調整が可能であり、包装する食品によって適切な層構成を選択することができる。
また、中間層として直線カット性に優れるセロハンを用い、後述する内層11、外層13として易引裂性を有する架橋ポリエチレンフィルムを積層することによりカット刃での容易な切断が可能となった。
【0016】
<外層、内層>
外層13、内層11は架橋ポリエチレンフィルムよりなり、単層でも多層でもよい。
外層13、内層11は、例えば、ダブルバブルインフレーション法により製膜でき、単数もしくは複数の押出機を用いて、前記フィルムを構成する材料であるポリエチレンと所定の可塑剤を含有する樹脂組成物を環状ダイスから溶融押出して、これを急冷固化させたのち、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射することにより得られる。
また、架橋ポリエチレンフィルムは、さらに電離性放射線照射したものを延伸機内に誘導し、延伸開始点を、ポリエチレンと所定の可塑剤を含有する樹脂組成物の融点以上、かつ融点+40℃以下までの範囲に加熱しながら、速度差を設けたニップロール間でエアー注入を行い、MD方向、TD方向にそれぞれ延伸したものであることが好ましい。延伸倍率はMD方向、TD方向ともに5〜10倍が好ましく、6〜10倍がより好ましい。5倍以上に延伸することで易引裂性が得られ、10倍以下にすることにより延伸安定性が得られる。
【0017】
架橋ポリエチレンフィルムは、ゲル分率が10〜50質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。
10質量%以上にすることで易引裂性が得られ、50質量%以下にすることで延伸時の安定性が得られる。
架橋度の尺度としてゲル分率が用いられる。
ここでゲル分率とは、以下の方法で測定される。
精密天秤を用いて小数点以下2桁で試料を約100mg計り取り、その試料を150メッシュのステンレス製金網を袋状に折りたたんだ中に入れ、全体の質量を精密天秤で小数点以下2桁で測定したものをサンプルとする。
次に、前述のサンプルを1000mLの沸騰パラキシレン中で12時間抽出し、乾燥後、全体の質量を精密天秤を用いて小数点以下2桁で測定し、次式にて不溶解分の質量を求める。
不溶解分の質量(mg)=抽出前のサンプルの質量−抽出後のサンプルの質量
前記不溶解分の抽出前試料に対する割合をゲル分率として、次式により求める。
ゲル分率(質量%)=(不溶解分の質量/抽出前の試料質量)×100
【0018】
外層13、内層11を構成する架橋ポリエチレンフィルムの厚みは、5〜30μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。5μm以上にすることにより加工時の実用的な強度が得られ、30μm以下にすることによりカット刃での切断が容易になる。
【0019】
<接着部分>
外層13と中間層14、内層11と中間層14とは、それぞれ接着部分15を介して接着積層されている。
接着部分15の面積は、両者の界面の面積すなわち接着部分15によって接着される部材の面積の5〜50%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。5%以上にすることで十分な接着強度が得られ、50%以下にすることで十分な吸水量が得られる。
接着部分15を構成する接着剤としては、食品接触用途に使用可能なものであればエーテル系、エステル系等公知の接着剤が使用できる。
なお、図1中、接着部分15間の領域は、非接着部分(領域)である。
【0020】
<貫通孔>
内層11の架橋ポリエチレンフィルムには、当該内層11を貫通する貫通孔12が設けられている。
貫通孔12の孔径は0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmがより好ましい。貫通孔12の孔径0.1mm以上にすることにより十分な透湿性が得られ、2.0mm以下にすることにより水滴の逆戻りが抑制できる。
また、貫通孔12の合計面積の、フィルム面積に対する割合(開口率)は0.3〜4.0%であることが好ましく、0.5〜2.0%がより好ましい。開口率を0.3%以上にすることで十分な透湿性が得られ、4.0%以下にすることで内層11としての強度を維持することができる。
貫通孔12の孔径の測定方法及び開口率の算出方法については、後述する実施例で示す方法を適用する。
【0021】
<第1の形態の食品包装用シートの製造方法>
以下、第1の実施形態に係る食品包装用シートの製造方法について説明する。
なお、本実施形態に係る食品包装用シートの製造方法は、以下の記載に限定されるものではない。
前述の方法で製膜された架橋ポリエチレンフィルムのうち、内層用のフィルムに、貫通孔を形成する。貫通孔の形成方法としては、例えばフィルムの繰り出し機と巻き取り機の間に、希望する孔径、開口率の熱針を有する加熱ロールを設置し、300℃程度に加熱された熱針に、長尺のフィルムを連続的に接触させる方法を適用できる。
また、セロハンと架橋ポリエチレンフィルムの積層方法としては、まずセロハンの片面に所望の接着形状、接着面積で作られたグラビアロール用いて、溶剤に溶解させたエステル系接着剤をコートし、乾燥させ、溶剤を蒸発除去したのち、架橋ポリエチレンフィルムを重ねて、加熱した状態で圧着させる。ついで、もう片面に貫通孔が施された架橋ポリエチレンフィルムを同様の方法で積層する。
その後、所定の幅にスリットすることにより、第1の形態の食品包装用シートが得られる。
【0022】
(第2の形態の食品包装用シート)
図2に第2の形態における食品包装用シートの概略断面図を示す。
食品包装用シート20は、片面に防水処理が施されているセロハンよりなる外層23と、 前記外層23の非防水処理面側に、接着部分25を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる内層21を具備している。
前記内層21には貫通孔22が形成されており、前記接着部分25の面積は、層間界面の面積、すなわち接着部分25によって接着される部材の面積の5〜50%である。
【0023】
<外層>
第2の形態の食品包装用シートを構成するセロハンよりなる外層23は、一の面に防水処理が施されており、防水処理面24となっている。
外層23の材料としては、上述した第1の形態と同様のものが使用でき、普通セロハンが好ましい。
片面に防水処理が施されたセロハンの製法としては、特に制限は無く、従来公知の方法を適用できる。
外層23を構成する防水処理面24を有するセロハンとしては、例えば、普通セロハンの片面に種々のアンカー剤を介して、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の親水性高分子化合物を塗布、積層したものや、セロハンの生分解性を生かして、生分解性ポリエステルウレタン樹脂と、ポリイソシアネート樹脂、重合ロジンエステル樹脂、及びパラフィンを有する添加剤とからなる被覆樹脂をセロハンの片面に被覆し防湿層を形成した生分解性防湿処理セロハン等が挙げられる。
【0024】
第2の形態の食品包装用シートの透湿度(WVTR)は、500g/m2・24hr以下が好ましく、100g/m2・24hr以下がより好ましい。
透湿度は、後述する実施例に記載するように、JIS−K7194に準拠し、40℃−90%Rhの条件下で測定することができる。
上記構成にすることにより、食品を包装した時に食品から発生する水蒸気が、後述する内層21の架橋ポリエチレンフィルムに施された貫通孔を通過し、セロハン層のみでなく、セロハンと架橋ポリエチレンフィルムの未接着部分に拡散されることで、高い吸水性を発現し、開封後の食品のべたつきを防止することができるとともに、食品の必要以上の乾燥を防ぐことができる。
吸水量はセロハンの厚み、セロハンと架橋ポリエチレンフィルムとの接着面積を変更することで調整が可能であり、包装する食品によって適切な層構成を選択することができる。
また、外層23として直線カット性に優れるセロハンを用い、後述する内層21として易引裂性を有する架橋ポリエチレンフィルムを積層することによりカット刃での容易な切断が可能となった。
【0025】
<内層>
内層21は架橋ポリエチレンフィルムよりなり、単層でも多層でもよい。
内層21は、例えば、ダブルバブルインフレーション法により製膜でき、単数もしくは複数の押出機を用いて、構成材料であるポリエチレンと所定の可塑剤を含有する樹脂組成物を環状ダイスから溶融押出して、これを急冷固化させた後、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射することにより得られる。
また、架橋ポリエチレンフィルムは、さらに電離性放射線照射したものを延伸機内に誘導し、延伸開始点を、ポリエチレンと所定の可塑剤を含有する樹脂組成物の融点以上、かつ融点+40℃以下までの範囲に加熱しながら、速度差を設けたニップロール間でエアー注入を行い、MD方向、TD方向にそれぞれ延伸することが好ましい。延伸倍率はMD方向、TD方向ともに5〜10倍が好ましく、6〜10倍がより好ましい。5倍以上に延伸することで易引裂性が得られ、10倍以下にすることにより延伸安定性が得られる。
【0026】
架橋ポリエチレンフィルムは、ゲル分率が10〜50質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。
10質量%以上にすることで易引裂性が得られ、50質量%以下にすることで延伸時の安定性が得られる。
架橋度の尺度としてゲル分率が用いられる。
ここでゲル分率とは、以下の方法で測定される。
精密天秤を用いて小数点以下2桁で試料を約100mg計り取り、その試料を150メッシュのステンレス製金網を袋状に折りたたんだ中に入れ、全体の質量を精密天秤で小数点以下2桁で測定したものをサンプルとする。
次に、前述のサンプルを1000mLの沸騰パラキシレン中で12時間抽出し、乾燥後、全体の質量を精密天秤を用いて小数点以下2桁で測定し、次式にて不溶解分の質量を求める。
不溶解分の質量(mg)=抽出前のサンプルの質量−抽出後のサンプルの質量
前記不溶解分の抽出前試料に対する割合がゲル分率として、次式により求められる。
ゲル分率(質量%)=(不溶解分の質量/抽出前の試料質量)×100
【0027】
内層21を構成する架橋ポリエチレンフィルムの厚みは、5〜30μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。5μm以上にすることにより加工時の実用的な強度が得られ、30μm以下にすることによりカット刃での切断が容易になる。
【0028】
<接着部分>
外層23と内層21とは、接着部分25を介して積層されている。
接着部分25の面積は、両者の界面の面積すなわち接着部分によって接着される部材の面積の5〜50%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。5%以上にすることで十分な接着強度が得られ、50%以下にすることで十分な吸水量が得られる。
接着部分25を構成する接着剤としては、食品接触用途に使用可能なものであればエーテル系、エステル系等公知の接着剤が使用できる。
なお、図2中、接着部分25間の領域は、非接着部分(領域)である。
【0029】
<貫通孔>
内層21の架橋ポリエチレンフィルムには、当該内層21を貫通する貫通孔22が設けられている。
貫通孔22の孔径は0.1〜2.0mmが好ましく、0.1〜1.0mmがより好ましい。0.1mm以上にすることにより十分な透湿性が得られ、2.0mm以下にすることにより水滴の逆戻りが抑制できる。
また、貫通孔12の合計面積のフィルム面積に対する割合(開口率)は0.3〜4.0%であることが好ましく、0.5〜2.0%がより好ましい。開口率を0.3%以上にすることで十分な透湿性が得られ、4.0%以下にすることで内層21としての強度を維持することができる。
貫通孔22の孔径の測定方法及び開口率の算出方法については、後述する実施例で示す方法を適用する。
【0030】
<第2の形態の食品包装用シートの製造方法>
以下、第2の実施形態に係る食品包装用シートの製造方法について説明する。
なお、本実施形態に係る食品包装用シートの製造方法は、以下の記載に限定されるものではない。
前述の方法で製膜された架橋ポリエチレンフィルム(内層用のフィルム)に、貫通孔を形成する。貫通孔の形成方法としては、例えばフィルムの繰り出し機と巻き取り機の間に、希望する孔径、開口率の熱針を有する加熱ロールを設置し、300℃程度に加熱された熱針に、長尺のフィルムを連続的に接触させる方法を適用できる。
また、セロハンと架橋ポリエチレンフィルムの積層方法としては、セロハンの非防水処理面に所望の接着形状、接着面積で作られたグラビアロールを用いて、溶剤に溶解させたエステル系接着剤をコートし、乾燥させ、溶剤を蒸発除去したのち、貫通孔が施された架橋ポリエチレンフィルムを重ねて、加熱した状態で圧着させる。
その後、所定の幅にスリットすることにより第2の形態の食品包装用シートが得られる。
【0031】
〔食品包装用材料〕
本実施形態の食品包装用材料は、カット刃を具備する収納箱に、上述した第1の形態又は第2の形態の食品包装用シートが、ロール状に巻回された状態で収納されている。
本実施形態の食品包装用材料は、必要な時に必要量を容易にカットできる、食品包装用シートとして適した形状を提供することができる。
【0032】
〔食品包装用シート、食品包装用材料の用途〕
本実施形態の食品包装用シートは、例えば、温かいおにぎりやハンバーガー等の包装や、電子レンジでの加熱用にも適しており、肉や魚等の切り身を包んで冷蔵や冷凍保存する場合にも好適に使用できる。第1の形態の食品包装用シートにおいては内層11、第2の食品包装用シートにおいては内層21を食品側にして包装することにより、良好な吸水性が発揮され、結露が防止でき、食品の食味の劣化を効果的に防止できる。
【実施例】
【0033】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は下記の通りである。
<接着面積>
セロハンと架橋ポリエチレンフィルムの接着面積は、グラビアロールに形成した接着剤の塗布部分の形状と数から算出した。
図3に接着パターンの配置例を示す。図3に示すように、円形の接着部分を正四角形状のフィルム面上に配置して接着パターンを形成し、A、B、Cの寸法が、それぞれA=5mm、B=11mm、C=11mmである場合、接着面積は16%となる。
【0035】
<孔径と開口率>
架橋ポリエチレンフィルムに施された貫通孔の孔径は、後述する実施例及び比較例における有孔加工の際に用いた熱針の針径である。
開口率は、前記貫通孔の合計面積のフィルム面積に対する割合として、次式により求めた。
開口率(%)=(貫通孔の合計面積/フィルム面積)×100
図4に貫通孔を示す有孔パターンの概略平面図を示し、円形の貫通孔(D)が正四角形状のフィルムに配列された状態を示した。具体的に、図4中のD、E、Fの寸法が、それぞれD=0.6mm、E=4.85mm、F=4.85mm(貫通孔の数≒42500個/m2)である場合、開口率は1.2%となる。
【0036】
<ゲル分率>
以下の方法で算出した。
精密天秤を用いて小数点以下2桁で試料を約100mg計り取り、その試料を150メッシュのステンレス製金網を袋状に折りたたんだ中に入れ、全体の質量を精密天秤で小数点以下2桁で測定したものをサンプルとした。
次に、前記サンプルを1000mLの沸騰パラキシレン中で12時間抽出し、乾燥後、全体の質量を精密天秤を用いて小数点以下2桁で測定し、次式にて不溶解分の質量を求めた。
不溶解分の質量(mg)=抽出前のサンプルの質量−抽出後のサンプルの質量
前記不溶解分の抽出前試料に対する割合がゲル分率として、次式により求めた。
ゲル分率(質量%)=(不溶解分の質量/抽出前の試料質量)×100
【0037】
<カット性>
後述する実施例及び比較例において作製したシートを、サランラップ(旭化成ホームプロダクツ株式会社製)の化粧箱から200mm引き出して、化粧箱に付属しているカット刃で容易に切断できるかを、下記の3段階で評価した。
○:容易に切断可能
△:スムーズに切断が出来ない
×:切断が困難で化粧箱が変形する
【0038】
<包装テスト>
図5に、実施例及び比較例で用いたおにぎりの概略斜視図を示す。図5中のG、H、Iは実施例及び比較例で採用した寸法を示す。
図5に示される大きさのおにぎり(寸法:G=30mm、H=70mm、I=70mm)を電子レンジで加熱(700W−30s)し、直後に幅4cm、長さ12cmの焼き海苔を図5に示すように巻き、後述する実施例及び比較例において作製したシート(220mm×200mm)を、内層11、21側がおにぎりに接するようにして図6のように包装し、室温で5時間放置後に開封した。
おにぎりの表面の水滴の付き具合と前記シートからの剥離性を、それぞれ下記の基準で評価した。
(水滴の付き具合)
◎:ほとんど水滴が付いていない。
○:小さな水滴が若干付いているが実用上問題ない。
×:大きな水滴が付いて、濡れている。
(シートからの剥離性)
○:シートに何も残らない。
△:わずかにご飯粒等が残る。
×:かなりご飯粒等が残り、形が崩れる。
【0039】
<吸水性>
後述する実施例及び比較例において作製したシートを10×10cmに切断し、試料を作製した。
前記試料を水の中に浸漬させ、1時間後に取り出し、シート表面の水滴をキッチンペーパーで拭き取った後の重量増加量を100倍して、1m2あたりの吸水量を算出した。
【0040】
<透明性>
おにぎりを包んだときに中身が視認できるか確認した。
○:中身が容易に視認できる。
△:中身が明瞭ではないが視認できる。
×:中身が視認できない。
【0041】
<透湿度(WVTR)>
JIS−K7194に準拠し、40℃−90%Rhの条件下で測定した。
◎:100g未満
○:100g以上、500g未満
×:500g以上
【0042】
<総合評価>
○:各項目の評価が全て○と◎から構成されるもの。
×:各項目の評価で△、又は×を含むもの。
【0043】
〔実施例1〕
中間層14としてセロハン(フタムラ化学社製 太閤セロハンPL−DG ♯300)を用いた。
外層13に架橋ポリエチレンフィルム(旭化成ケミカルズ社製 サンテックA210E、厚み10μm、ゲル分率25質量%、延伸倍率MD/TD=7/7倍)を用いた。
内層11に、図4に示すパターンに従い、孔径0.6mm、開口率1.2%の有孔加工を施した架橋ポリエチレンフィルム(旭化成ケミカルズ社製 サンテックA210E、厚み10μm、ゲル分率25質量%、延伸倍率MD/TD=7/7倍)を用いた。
図3に示す接着パターンに従い、中間層と外層の接着面積が両者の界面面積の16%となるように、グラビアロールを用いて、ライン速度50m/minでポリエステル系接着剤(東洋モートン社製 TM−265L)を中間層にコートし、乾燥させ、溶剤を蒸発除去した後、外層を重ねて加熱した状態で圧着させた。
次に、前記シートの中間層の反対側の面に内層を同様の方法でドライラミネートすることで、図1に示す構成の食品包装用シートを得た。
当該食品包装用シートを、幅220mmにスリットし、内径34mm、長さ230mmの紙管に10m巻回したのち、サランラップ(旭化成ホームプロダクツ株式会社製)の化粧箱に収納し、食品包装用材料を得た。
得られた食品包装用シート及び食品包装用材料について、上記評価を実施した。
結果を下記表1に示す。
【0044】
〔実施例2〕
外層23として片面防水処理セロハン(フタムラ化学社製 太閤セロハンMOT ♯300)を用いた。
内層21として、図4に示すパターンに従い、孔径0.6mm、開口率1.2%の有孔加工を施した架橋ポリエチレンフィルム(旭化成ケミカルズ社製 サンテックA210E、厚み10μm、ゲル分率25質量%、延伸倍率MD/TD=7/7倍)を用いた。
図3に示す接着パターンに従い、外層と内層の接着面積が両者の界面面積の16%となるように、グラビアロールを用いて、ライン速度50m/minでポリエステル系接着剤(東洋モートン社製 TM−265L)を外層の非防水処理面側にコートし、乾燥させ、溶剤を蒸発除去した後、内層を重ねて加熱した状態で圧着することで図2に示す構成の食品包装用シートを得た。
当該食品包装用シートを、幅220mmにスリットし、内径34mm、長さ230mmの紙管に10m巻回したのち、サランラップ(旭化成ホームプロダクツ株式会社製)の化粧箱に収納し、食品包装用材料を得た。
得られた食品包装シート及び食品包装用材料について、上記評価を実施した。
結果を下記表1に示す。
【0045】
〔実施例3〕
内層11として、孔径1.2mm、開口率4.8%(実施例1の有孔パターンで孔径のみ変更)の有孔加工を施した架橋ポリエチレンフィルム(旭化成ケミカルズ社製 サンテックA210E、厚み10μm、ゲル分率25質量%、延伸倍率MD/TD=7/7倍)を用いた。
その他の条件は、実施例1と同様として食品包装用シート及び食品包装用材料を作製し、上記評価を実施した。結果を下記表1に示す。
【0046】
〔比較例1〕
中間層14と外層13、中間層14と内層11の、それぞれにおける接着面積が両者の界面面積の100%となるように積層した。
その他の条件は、実施例1と同様として食品包装用シート及び食品包装用材料を作製し、上記評価を実施した。結果を下記表1に示す。
【0047】
〔比較例2〕
前記外層13及び内層11として、厚み10μmの未延伸ポリエチレンフィルムを用いた。
その他の条件は、実施例1と同様として食品包装用シート及び食品包装用材料を作製し、上記評価を実施した。結果を下記表1に示す。
【0048】
〔比較例3〕
食品包装用シートとしてセロハン(フタムラ化学社製 太閤セロハンPL−DG ♯300)単層を用いた。
その他の条件は、実施例1と同様として食品包装用材料を作製し、上記評価を実施した。結果を下記表1に示す。
【0049】
〔比較例4〕
食品包装用シート及び食品包装用材料として、アルミホイル(東洋アルミ社製 クッキングホイル)を用い、上記評価を実施した。結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の食品包装用シートは、温かいおにぎりやハンバーガー等の各種食品包装用シート、電子レンジでの加熱用シート、肉や魚等の切り身を包んで冷蔵や冷凍保存用シートとして、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0052】
10 食品包装用シート
11 架橋ポリエチレンフィルム(内層)
12 貫通孔
13 架橋ポリエチレンフィルム(外層)
14 普通セロハン
15 接着剤(接着部分)
20 食品包装用シート
21 架橋ポリエチレンフィルム(内層)
22 貫通孔
23 片面防水処理セロハン(外層)
24 防水処理面
25 接着剤(接着部分)
31 非接着部分
32 接着部分
41 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロハンよりなる中間層と、
前記中間層の一の面に、接着部分を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる外層と、
前記中間層の他の一の面に、接着部分を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる内層と、
を具備し、
前記内層には貫通孔が形成されており、
前記接着部分の面積が、層間界面の面積の5〜50%である食品包装用シート。
【請求項2】
片面に防水処理が施されているセロハンよりなる外層と、
前記外層の、非防水処理面側に、接着部分を介して積層されている、架橋ポリエチレンフィルムよりなる内層と、
を具備し、
前記内層には貫通孔が形成されており、
前記接着部分の面積が、層間界面の面積の5〜50%である食品包装用シート。
【請求項3】
前記架橋ポリエチレンフィルムが、ゲル分率10〜50質量%の延伸フィルムである請求項1又は2に記載の食品包装用シート。
【請求項4】
前記貫通孔の孔径が0.1〜2.0mmであり、当該貫通孔の開孔率が0.3〜4%である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の食品包装用シート。
【請求項5】
カット刃を具備する収納箱に、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の食品包装用シートが、ロール状に巻回された状態で収納されている食品包装用材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−81673(P2012−81673A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230842(P2010−230842)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】