説明

食品包装用ストレッチフィルム

【課題】指押し復元性、ヒートシール性などに優れ、自動ストレッチ包装機へ好適なポリオレフィン系樹脂の食品包装用ストレッチフィルムを提供する。
【解決手段】少くとも3層で、中心層が(A)ホモポリプロピレン20〜40質量%、(B)エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとを共重合させた密度0.85〜0.89g/cm3のランダム共重合体5〜30質量%、(C)炭素数3〜20のα−オレフィンの少なくとも2種のオレフィンのランダム共重合体であり、融点が無いか120℃以下、密度0.85〜0.88g/cm3のオレフィン系共重合体5〜30質量%、(D)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂及びそれらの水素添加樹脂中の少なくとも一種の樹脂15〜40質量%を含む樹脂組成物で形成され、表層がポリエチレン系樹脂である食品包装用ストレッチフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用ストレッチフィルムに関する。更に詳しくは、透明性、解反性、低収縮力、カット性、ヒートシール性、ストレッチ性などの食品包装用ストレッチフィルムとしての必要条件に優れるとともに、特にストレッチ後の収縮が遅く、自動ストレッチ包装機での適性の高いポリオレフィン系樹脂を主体にする食品包装用ストレッチフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
青果物、鮮魚、精肉などをトレイに入れ、その上からストレッチフィルムで覆って包装して販売する方式がスーパーマーケットなどで多用されている。このストレッチフィルムには、古くから軟質ポリ塩化ビニルフィルムが使用されて来た。近年、軟質ポリ塩化ビニルフィルムは焼却時に塩化水素ガスを発生すること、また含有されている可塑剤が溶出する場合があることなどが問題視されはじめ、そのため無可塑剤で、ポリ塩化ビニルフィルムに代わる食品包装用ストレッチフィルム、例えばポリオレフィン系フィルムの開発が進められている。
【0003】
トレイの上からストレッチフィルムで覆う包装を、作業効率を高めるため、自動ストレッチ包装機で行う方法が導入されている。この自動ストレッチ包装機を使用して包装するとき、軟質ポリ塩化ビニルフィルムのようなストレッチ後の収縮速度が遅いフィルムを用いた場合は、フィルムをストレッチしてトレイの底部裏面でオーバーラップさせてからヒートシールするまでの間にフィルムの収縮による逃げが小さく、そのため十分にオーバーラップさせた状態でヒートシールできる(いわゆる、オーバーラップ性が良い)。しかし、ポリオレフィン系フィルムはゴムライクであり、ストレッチしてからヒートシールまでのわずかな時間でフィルムが収縮する傾向が強く、そのため十分にオーバーラップさせた状態でヒートシールすることができなく、ヒートシール部分のオーバーラップ量が不足し、包装不良が発生し易い。
【0004】
従来から軟質ポリ塩化ビニルフィルムの特性を備えさせることを目的としたポリオレフィン系のストレッチフィルムが種々提案されている。そして、ストレッチフィルムに必要な表面及び裏面の粘着適性を、防曇剤を添加したエチレン−酢酸ビニル共重合体層で形成することによって満たし、またストレッチフィルムのストレッチ性等の適性をポリオレフィンを主体とする中心層で満たした3層構成のポリオレフィン系食品包装用ストレッチフィルムが提案されているが、未だ十分な性能を備えたポリオレフィン系食品包装用ストレッチフィルムは得られていない。例えば、中心層がエチレン−α−オレフィン共重合体含有樹脂である食品包装用ストレッチフィルムが提案されている(特許文献1)が、このフィルムは、弾性が強く、食品包装用ストレッチフィルムとしての必要物性に劣り、実用化しがたい。そこで、中心層が、硬質ポリオレフィン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体及び石油樹脂等の樹脂組成物の層である食品包装用ストレッチフィルムが提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、食品包装用ストレッチフィルムを物性面から検討し、特定の貯蔵弾性率(E’)、損失正接(tanδ)を有し、幅方向の破断伸びが長さ方向の破断伸びよりも大きく、幅方向及び長さ方向の100%伸長時の引張応力の合計量が1000kg/cm2以下である食品包装用ストレッチフィルムが提案されている(特許文献3)。そして、この物性を備えた食品包装用ストレッチフィルムが種々提案され、例えば、特定の結晶化熱量を有するプロピレン系重合体の単独又はその混合物と石油樹脂との樹脂組成物からなる層を有する食品包装用ストレッチフィルム(特許文献4)、プロピレン系樹脂、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体及び石油樹脂の樹脂組成物からなる層を有する食品包装用ストレッチフィルム(特許文献5)、エチレンを主体とするα−オレフィンの繰り返し単位と、そのα−オレフィンの繰り返し単位に結合した又は結合していない環状オレフィンの繰り返し単位とを含む樹脂との樹脂組成物からなる層を有する食品包装用ストレッチフィルム(特許文献6)が提案され、更に150%伸び時の応力ρ150と50%伸び時の応力ρ50との比率(ρ150/ρ50)が包装適性に影響することが知られている(特許文献6)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−077927号公報
【特許文献2】特開平11−320785号公報
【特許文献3】特開平9−183458号公報
【特許文献4】特開平9−154479号公報
【特許文献5】特開平9−165491号公報
【特許文献6】特開平8−259707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、透明性、解反性、低収縮力、カット性、ヒートシール性、ストレッチ性などの食品包装用ストレッチフィルムとしての物性が優れていると共に、ストレッチ後の収縮速度が遅い特性を持ち、自動ストレッチ包装機への適性(特にオーバーラップ性)の良い、安価なポリオレフィン系樹脂を主体にする食品包装用ストレッチフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、中心層をポリオレフィンで形成した安価な食品包装用ストレッチフィルムについて種々検討した結果、適度な柔軟性を有するポリオレフィン例えばランダムポリプロピレン又は低密度ポリエチレンを主体にし、これに石油樹脂等を配合した組成物を中心層にしたものは、ゴムライクな弾性特性があり、ストレッチ後の収縮速度が速く、オーバーラップ性が悪いが、特定の極めて硬いポリオレフィンと特定の極めて柔らかいポリオレフィンを混合させた混合樹脂を中心層にしたものでは、適度な柔軟性を保ちながら、ポリオレフィン特有のゴムライクな弾性特性を低減させ得ることを知見し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、中心層及び両外面層の少くとも3層からなる食品包装用ストレッチフィルムであって、その中心層が下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)ホモポリプロピレン20〜40質量%
(B)エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、密度0.85〜0.89g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体5〜30質量%
(C)炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれた少なくとも2種のオレフィンのランダム共重合体であって、融点が無いか有っても120℃以下の密度0.85〜0.88g/cm3のオレフィン系共重合体5〜30質量%
(D)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂及びそれらの水素添加樹脂から選ばれた少なくとも一種の樹脂15〜40質量%
を含む樹脂組成物〔但し、(A)と(B)と(C)と(D)の合計は100質量%〕で形成され、両外面層がポリエチレン系樹脂で形成されていることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品包装用ストレッチフィルムは、透明性、解反性、低収縮力、カット性、ヒートシール性、ストレッチ性などの食品包装用ストレッチフィルムとしての物性が優れている。また、本発明の食品包装用ストレッチフィルムはストレッチ後の収縮速度が遅いため、フィルムをストレッチしてトレイの底部裏面でオーバーラップさせてからヒートシールするまでの間にフィルムの収縮による逃げが小さく、十分にオーバーラップさせた状態でヒートシールできる特性(いわゆる、オーバーラップ性が良い)を持つため、自動ストレッチ包装機での使用に適している。またオレフィン素材とするので安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の食品包装用ストレッチフィルムの中心層の(A)成分はホモポリプロピレンである。このホモポリプロピレン(アイソタクティックポリプロピレン)は、結晶性が高く、一般フィルムでは汎用されているが、ストレッチフィルムの分野では、硬すぎるため従来使用されていない。このホモポリプロピレンは、一般的にはチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などを用いて気相法で製造する。また、(A)成分のホモポリプロピレンは、微量のエチレン、1−ブテンなどの共重合成分を含んでいても、ホモポリプロピレンとしての物性レベルにあるもの、具体的には結晶化熱量が80J/g以上であれば使用可能であるが、好ましくは共重合成分を含まない純粋なホモポリプロピレンである。(A)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量の20〜40質量%であり、25〜35質量%がオーバーラップ性がもっとも良好となり更に好ましい。
【0012】
本発明の食品包装用ストレッチフィルムの中心層の(B)成分は、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、密度が0.85〜0.89g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体である。このランダム共重合体は、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとを、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒を用いて気相法、液相法などで重合させて得ることができる。(B)成分の密度が0.89g/cm3以上のものを用いた場合は、(A)成分のホモポリプロピレンの硬さを打ち消すことができず、そのため得られたフィルムは食品包装用ストレッチフィルムとしては硬すぎる。(B)成分は、硬さ調整上、好ましは密度0.88g/cm3以下、より好ましくは密度0.87g/cm3以下である。(B)成分としては、具体的には、エチレンと少量のプロピレン又は1−ブテンとを共重合させた直鎖状超低密度ポリエチレンが挙げられる。特にメタロセン触媒を用いて液相法で重合させた密度0.85〜0.88g/cm3のエチレン−プロピレンランダム共重合体が好ましい。また、α−オレフィンの重合比率も柔軟性の指標となる。α−オレフィンの重合比率が20質量%以上で良好な柔軟性を与える。(B)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量の5〜30質量%であり、10〜25質量%がオーバーラップ性がもっとも良好となり更に好ましい。
【0013】
本発明の(C)成分は、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれた少なくとも2種のオレフィンのランダム共重合体であって、融点が無いか有っても120℃以下の密度0.85〜0.88g/cm3のオレフィン系共重合体である。エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体を使用した場合はオーバーラップ性が劣るので、この共重合体にはエチレン単位を存在させない。また、融点が無いか、有っても融点が120℃以下のものは、柔軟であるとともに、室温付近でのtanδが大きく、減衰性にすぐれるので、オーバーラップ性の向上に寄与する。また、(C)成分は、結晶性が低く柔軟なものがよく、この観点から密度0.85〜0.88g/cm3のものが用いられる。また融点を有しない共重合体が好ましい。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0014】
この(C)成分として、好ましいものは、プロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体で、特に融点がないものが好ましい。プロピレンと1−ブテンは安価であり、さらに気相法による効率的な合成が可能なため、好ましく用いられる。(C)成分は、柔軟であることが本発明における必要条件である。プロピレンと1−ブテンとが一方に偏ることない重合比率で、ランダムに合成されたものは、結晶性が低くより柔軟となる。結晶性が低く、柔軟なα−オレフィン系共重合体は密度が低い。プロピレン−1−ブテンランダム共重合体の場合、柔軟性を付与して硬さを調整する点から、その密度は0.88g/cm3以下、より好ましくは0.87g/cm3以下である。特に融点が無いプロピレン−1−ブテンランダム共重合体で、プロピレン単量体の含有率が30〜70重量%のものは、減衰性にすぐれ、好適に用いられる。(C)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量の5〜30質量%であり、10〜25質量%がオーバーラップ性がもっとも良好となり更に好ましい。
【0015】
本発明では、上記の(B)成分と、上記の(C)成分とを組み合わせて使用し、(A)成分のホモポリプロピレンに配合するが、これは食品包装用ストレッチフィルムとしての適度な硬さを与え、またオーバーラップ性を良くするためである。そして、(B)成分又は(C)成分のそれぞれを単独で配合したときより、それらの混合物を配合したときの方がオーバーラップ性能が優れているが、その理由は不明である。また、(C)成分として、上記のプロピレン−1−ブテンランダム共重合体を用いる場合、その密度の低いものは、ベタツキにより樹脂ペレットの扱いが面倒になるため、ランダムポリプロピレンを少量添加してベタツキを改良し扱い易くするのが好ましい。
【0016】
本発明で用いる(D)成分は、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂及びそれらの水素添加樹脂から選ばれた少なくとも一種の樹脂である。石油樹脂としては、シクロペンタジエンまたはその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂などが挙げられ、テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フエノール樹脂が挙げられ、またロジン系樹脂としてはガムロジン、ウツドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールで変性したエステル化ロジン樹脂などが挙げられる。これらの(D)成分は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に混合した場合に比較的良好な相溶性を示すが、色調や熱安定性、相溶性といった面から水素添加誘導体を用いることが好ましい。
【0017】
石油樹脂等は主に分子量を変えることにより種々のガラス転移温度を有するものが得られるが、本発明に適合し得るのはガラス転移温度が50〜100℃、好ましくは70〜90℃のものである。ガラス転移温度が50℃未満であると、混合樹脂組成物としての結晶性は低下するが、弾性率が低くなり過ぎてフイルム全体として好適な粘弾性特性を得ることが困難になる。一方ガラス転移温度が100℃を超えるものでは、添加量が少ないとポリオレフィンの結晶性が残存しその混合効果が小さく、また添加量を多くすると混合樹脂組成物としての結晶性は低下するが、ガラス転移温度の上昇に伴って弾性率も高くなり、ストレツチフイルムとして必要な伸展性や低温特性が損なわれる。(D)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量の15〜40質量%である。オーバーラップ性の良さから、好ましくは20〜40質量%である。
【0018】
本発明の中心層を形成する樹脂組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外に、少量のランダムポリプロピレンなどを添加することは可能であるが、物性が悪い方向に向かうため、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量に対して10%以下に押えることが好ましい。また、製造工程中に生じるサイクル品を中心層に混合してもよい。サイクル品を中心層に混合したときは、外面層の樹脂例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体が中心層に混入することになる。その場合には、相比を変更し、ストレッチフィルム全体としての(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の比率が、本発明で規定する範囲内になるようにすることで物性の変化を最小限にとどめることができる。
【0019】
本発明においては、中心層だけでは、適切なヒートシール性、粘着性、防曇性を設定するのが困難である。そのため、中心層の両面に他の樹脂層を設ける。この樹脂層は一層でも、二層以上でもよい。これらの樹脂層は、中心層より柔軟でオーバーラップ性などの物性にほとんど影響を与えないものが選ばれる。本発明の食品包装用ストレッチフィルムの両面の表面層、すなわち両外面層には、ポリエチレン系樹脂からなる層が適する。ポリエチレン系樹脂は、中心層より柔軟なことによりオーバーラップ性などの物性にほとんど影響を与えず、中心層のポリプロピレンを含む樹脂層より、軟化温度が低いことにより好適なヒートシール性となるため、好適に使用される。
【0020】
このポリエチレン系樹脂は、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1-ブテン共重合体、エチレン−1-ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーメタアクリル酸メチル共重合体、エチレンーメタアクリル酸エチル共重合体、エチレンーメタアクリル酸共重合体、エチレンーメタアクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、のようなエチレンを主体とするエチレン系共重合体や低密度ポリエチレンのようなポリエチレンである。エチレン−酢酸ビニル共重合体は特に軟化温度が低く、柔軟でオーバーラップ性などの物性にほとんど影響を与えることなく、良好なヒートシール性を持ち、適切な粘着性を持ち、防曇剤を混合してもあまり白濁しないので特に好ましい。
【0021】
本発明の食品包装用ストレッチフィルムの総厚さは、7〜15μmである。中心層と両外面層の厚さの比率は、1:1.5〜3:1が好ましい。また、本発明の食品包装用ストレッチフィルムは、温度20℃で測定した、横方向の150%伸び時の応力ρ150と横方向の50%伸び時の応力ρ50との比率(横方向の応力比率:ρ150/ρ50)が1.0〜1.3、特に1.05〜1.2であるものが好ましい。食品包装用ストレッチフィルムを自動ストレッチ包装機に掛けて使用する場合、オーバーラップ性については、包装機がフィルムを横方向にストレッチして包装するする仕様上、そのフィルムの横方向の応力比率が問題となる。食品包装用ストレッチフィルムでは、その横方向の応力比率が小さいほどオーバーラップ性が良い。また、その応力比率が大きくなると、包装作業時にフィルムを伸ばすのに強い力が必要になるため作業性が低下し、更にトレーの変形や潰れが生じやすい。
【0022】
フィルムの横方向の応力比率は、フィルムを構成する樹脂組成と共に製造条件に大きく影響される。多層で厚み10μm程度のフィルムは、一般に、丸ダイを用いた押出機によってインフレーション成形で製造される。このときのブロー比(フィルムの直径/ダイ口径)が横方向の応力比率に関係する。厚さ10μm程度の薄いフィルムを丸ダイを用いたインフレーション成形で製造するときは、ブロー比を5〜6程度と大きくして薄くするのが一般である。この従来の方法では、フィルムの応力比率は1.5程度と大きくなってしまう。そのため、食品包装用ストレッチフィルムの場合にはオーバーラップ性が劣るものになってしまう。例えば、特許文献6に代表される従来の食品包装用ストレッチフィルムは、ブロー比5〜6において横方向の応力比率1.5程度、ブロー比4において横方向の応力比率1.3程度である。本発明の食品包装用ストレッチフィルムは、横方向の応力比率が基本的に小さく、更に応力比率が小さいにもかかわらず部分的な伸びむらが発生しない。ブロー比が5〜8程度で成形して、横方向の応力比率が1.0〜1.3ものが得られ、良好な包装適正を示す食品包装用ストレッチフィルムが得られる。
【実施例】
【0023】
表1の実施例1〜10及び比較例1〜4の各組成物を中心層とし、またエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量15質量%、190℃MFR=2.0g/10分)100質量部に防曇剤としてジグリセリンモノオレ−ト2質量部を混練した組成物を表裏外面層にして、共押出インフレーシヨンにてブロー比6で成形し、総厚み10μm(表外面層2.5μm/中心層5μm/裏外面層2.5μm)のフイルムを得た。
【0024】
表1及び表2の組成物において、
・ホモポリプロピレンは住友化学社製FS2011DGである。
・エチレン−プロピレン共重合体(1)は、住友化学社製エスプレンSPO V−0141(プロピレン27質量%、密度0.86)である。
・エチレン−プロピレン共重合体(2)は、住友化学社製エスプレンSPO V−0111(プロピレン22質量%、密度0.87)である。
・エチレン−1−ブテン共重合体(1)は、住友化学社製エスプレンSPO N−0441(1−ブテン30質量%、密度0.86)である。
・エチレン−1−ブテン共重合体(2)は、住友化学社製エスプレンSPO N−0391(1−ブテン17質量%、密度0.88)である。
・プロピレン−1-ブテン共重合体は、プロピレン−1-ブテン共重合体(住友化学社製タフセレンT−1712:密度0.86)85質量%とランダムポリプロピレン(住友化学社製S−131)15質量%の混合物である。
・石油樹脂は荒川化学工業社製アルコンP−125である。
【0025】
得られた各フィルムについて、オーバーラップ性、透明性、解反性、フィルムの収縮力を評価した。評価は次の方法によった。その結果も合わせて表1及び表2に示した。
オーバーラップ性:寺岡精工株式会社製のストレッチ自動包装機AW−3600を用いて、幅350mmの各ストレッチフィルムで、縦24cm×横24cm×高さ3cmの発泡スチロール製トレーを自動包装した。オーバーラップ性は、その際のトレー底面でのフィルムの重合部分の距離を測定して評価した。◎は6cmm以上、○は4cm以上〜6cm未満、△は2cm以上〜4cm未満、×は2cm未満、を表す。
透明性:ブル−ムによる透明性を評価した。すなわち、各ストレッチフィルムのロールを50℃の雰囲気中に10日間放置後、ヘイズ測定(JIS K7136-2000による光の散乱の測定)して評価した。値が小さいほど透明性がよい。○は3.0未満、△は3.0以上〜4.0未満、×は4.0以上、を表す。
解反性:350mm幅の各ストレッチフィルムのロールを50℃の雰囲気中に10日間放置後、ストログラフ・スピ−ド500mm/分で解反し、そのときの解反力を測定して評価した。○は200g/350mm以下、×は200g/350mm以上を表す。
収縮力:ストレッチ自動包装機AW−3600を用いて、幅350mmの各ストレッチフィルムで、縦20cm×横20cm×高さ3cmの発泡スチロール製トレーを自動包装した。このときのトレ−の歪みを目視して、ストレッチフィルムの収縮力を評価した。フィルムの収縮力が大きいほどトレーの歪が大きい。○は歪みがない、△は歪みが少ない、×は歪み大きい、を表す。なお、×にはフィルムが硬いためため引っ張ることができずに、機械の把持部から外れた場合も含まれている。
また、実施例1と実施例2とについて、横方向の応力比率(ρ150/ρ50)を測定した。実施例1の横方向の応力比率は1.15であった。実施例2の横方向の応力比率は1.15であった。また、実施例11の横方向の応力比率は1.09であった。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から分かるように、中心層の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の配合割合が本発明の範囲内である実施例1〜11のストレッチフィルムは、総体的に優れており、実用上、使用可能であった。しかし、本発明の要件を満たさない比較例1〜4は、オーバーラップ性が著しく劣る点が有り、実用にならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心層及び両外面層の少くとも3層からなる食品包装用ストレッチフィルムであって、その中心層が下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)ホモポリプロピレン20〜40質量%
(B)エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、密度0.85〜0.89g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体5〜30質量%
(C)炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれた少なくとも2種のオレフィンのランダム共重合体であって、融点が無いか有っても120℃以下の密度0.85〜0.88g/cm3のオレフィン系共重合体5〜30質量%
(D)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂及びそれらの水素添加樹脂から選ばれた少なくとも一種の樹脂15〜40質量%
を含む樹脂組成物〔但し、(A)と(B)と(C)と(D)の合計は100質量%〕で形成され、両外面層がポリエチレン系樹脂で形成されていることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項2】
(B)成分が、エチレン−プロピレンランダム共重合体、(C)成分が融点が無いプロピレン−1−ブテンランダム共重合体である請求項1記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項3】
(B)成分が、エチレン−1−ブテンランダム共重合体、(C)成分が融点が無いプロピレン−1−ブテンランダム共重合体である請求項1記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項4】
両外面層のポリエチレン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層である請求項1〜3のいずれかに記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項5】
温度20℃で測定した、横方向の150%伸び時の応力ρ150と横方向の50%伸び時の応力ρ50との比率(ρ150/ρ50)が、1.0〜1.3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の食品包装用ストレッチフィルム。

【公開番号】特開2006−315700(P2006−315700A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138026(P2005−138026)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】