説明

食品包装用ストレッチフィルム

【課題】 フィルムカット性・ヒートシール性・耐熱性が良好で、コシ感を付与させることが可能であり、さらに透明性や経済性にも優れた食品包装用ストレッチフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも2層からなり、一方の表面層がヒートシール層である積層フィルムであり、当該積層フィルムの長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の130℃での引張破断強度の和が40kgf/cm以上であり、周波数10Hz・20℃での貯蔵弾性率(E’)が1.5×10〜5.0×10dyn/cmであることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用に好適に用いられるストレッチ包装用フィルムに関し、特に塩素やポリ塩化ビニル用可塑剤を含まず、さらにトレーの代替として樹脂加工されたフィルムまたはシートの上に食品を乗せ、エッジ部分をシールしてなる包装体を形成するのに最適な食品包装用ストレッチフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮食品や惣菜等のプリパッケージ包装としては、軽量ポリスチレンペーパー(PSP)トレー等に入れた食品をストレッチフィルムでオーバーラップ包装した包装形態(ストレッチ包装)が最も普及している。しかしながら、近年は包装材料費の削減が積極的に行われており、特に上記トレーのコスト削減が大きな問題として挙げられている。
【0003】
さらに、容器の廃棄処理や冷蔵庫等の保管の際に嵩張り、重量も大きく、処理の際にもコストがかかることも環境問題を考える上で重要課題である。
【0004】
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂からなるトレーもしくはこれらの樹脂を表面にラミネートしたトレーを用い、トレー上面のエッジ部分にラップフィルムをヒートシールしてなる包装体であって、当該ラップフィルムが2層以上の構造で、トレーとヒートシールされる層がメタロセン系触媒により製造された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(A)からなり、示差走査熱量計で走査速度10℃/分で昇温させて測定した結晶融解ピーク温度が前記樹脂(A)より10〜70℃高い樹脂(B)からなる層が該樹脂(A)層に積層されていることを特徴とする包装体が開示されているが、トレー包装であることから、上記の容器の廃棄処理等の課題を解決できていない。
【0005】
これに対し、トレーの代替として、樹脂加工されたフィルムまたはシートの上に食品を乗せ、その上からストレッチフィルムを被せてエッジ部分をシールしてなる包装形態もごく一部で採用されている。
【0006】
現在では、一般的なストレッチフィルムが上記包装形態に使用されているが、柔軟性がありすぎるためにコシ感がなく、フィルムのカット性も良くないものが多い。その他厚みが薄いフィルムや、コシ感の無いフィルムで包装した商品については、手に取る際食品を直接触れているような不快感を覚えるような問題もある。
【0007】
また、嵩の高い食品をヒートシール包装する際、食品とヒートシールユニットで張力が発生し、フィルムは熱を加えられながら引き伸ばされる。この時、フィルムの厚みが薄い場合やフィルムの耐熱性がない場合、ヒートシールユニット近辺にあるフィルムに穴があき、その結果、食品より発生するドリップが外部に漏れ、商品価値を損なうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−145317公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、フィルムカット性・ヒートシール性・耐熱性が良好で、コシ感を付与させることが可能であり、さらに透明性や経済性にも優れた食品包装用ストレッチフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも2層からなり、一方の表面層がヒートシール層である積層フィルムであり、当該積層フィルムの長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の130℃での引張破断強度の和が40kgf/cm以上であり、周波数10Hz・20℃での貯蔵弾性率(E’)が1.5×10〜5.0×10dyn/cmであることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルムカット性・ヒートシール性・耐熱性が良好であり、コシ感を付与させることが可能であり、さらに透明性や経済性にも優れた食品包装用ストレッチフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施態様の一例としてのストレッチ包装用フィルム(以下、単にストレッチフィルムと称することがある)について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施態様に限定されるものではない。
【0014】
本発明のストレッチフィルムに用いる樹脂組成物は、溶融押出温度が180℃以上で溶融押出・成形加工可能な熱可塑性樹脂が好適に用いられる。具体的にはポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられるが、比較的安価であるポリオレフィン系樹脂が好ましく使用される。
【0015】
本発明のストレッチフィルムに用いる樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の昇温速度で測定したときの融解熱量(ΔHm)が50J/g以上であることが好ましい。ここで、融解熱量(ΔHm)は、樹脂組成物の分子量、コモノマー含有量(共重合比)、ランダム度(エチレン成分の共重合体中の分散性)や立体規則性などに依存する。一般的に、融解熱量が大きいほど高融点となるため、耐熱性に優れると言える。融解熱量(ΔHm)が50J/g以上であれば耐熱性を付与させることができ、そのような樹脂組成物層を少なくとも1層有することでヒートシール時の穴開きを防止することが好ましい。ΔHmの上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は160J/g以下である。ΔHmは、60〜150J/gであることがさらに好ましく、特に70〜140J/gであるのが好ましい。
【0016】
また、本発明のストレッチフィルムで用いる樹脂組成物は、下記(1)に記載の樹脂組成物(A)20〜80質量%と、および下記(2)に記載の樹脂組成物(B)80〜20質量%とを含む混合物を主たる成分とすることが好ましい。
(1)示差熱走査熱量計(DSC)にて昇温速度10℃/分で測定した時の融解熱量(ΔHm)が50J/g以下である樹脂組成物
(2)示差熱走査熱量計(DSC)にて昇温速度10℃/分で測定した時の融解熱量(ΔHm)が50J/gを超える樹脂組成物
ここで、樹脂組成物(A)
において示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の昇温速度で測定したときの融解熱量(ΔHm)が50J/gであれば、本ストレッチフィルムとして要求される食品容器とのヒートシール性が確保しやすくなる。下限値としては特に限定されるものはないが、ヒートシール時の穴あきによるドリップ漏れを考慮すると、1.0J/g以上であることが好ましい。樹脂組成物(A)の融解熱量(ΔHm)は、2〜40J/g、特に3〜30J/gであることが好ましい。
【0017】
樹脂組成物(A)において、融解熱量(ΔHm)や融解温度(Tm)を上記範囲とする手段としては、共重合体とする方法や、立体規則性を低減させる方法などが好適に用いられる。
【0018】
当該共重合体としては、プロピレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられる。α−オレフィンとしては、好ましくは炭素数2〜20のものが挙げられ、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。この際、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で、または2種以上を組み合わせて用いても構わない。
【0019】
具体的には、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体およびポリプロピレン系エラストマーの中から選ばれる1種のプロピレン系重合体、または、これら2種以上の組み合わせからなる混合樹脂を用いるのが好ましい。これらの中でも、低結晶性や柔軟性と耐熱性とのバランスおよび工業的に比較的安価に入手可能であること等から、プロピレン−エチレン共重合体が特に好適である。
【0020】
これらの共重合体において、融解熱量および柔軟性と耐熱性等の観点から、α−オレフィン、特にエチレンの含有率は5質量%以上であるのが好ましく、中でも8〜15質量%であるのが特に好適である。上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は30質量%以下である。30質量%以下であれば、結晶性が低下し過ぎることがなく、ヒートシール時の穴あきによるドリップ漏れなどの問題を防止することができる。
【0021】
樹脂組成物(A)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.2N)が、0.2g/10分以上、好ましくは、0.5〜18g/10分であり、1〜15g/10分がより好ましい。
【0022】
樹脂組成物(A)の配合量は20〜80質量%、さらには25〜75質量%、特に30〜70質量%であることが好ましい。20質量%未満であると、フィルムのストレッチ性が不十分となる傾向があり、ヒートシールの際フィルム抜けによる包装不良が発生する恐れがある。また、80質量%を超えるとフィルムが過柔軟となり、フィルムカット性が低下することがある。
【0023】
樹脂組成物(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法が挙げられる。
【0024】
本発明のストレッチフィルムに用いる樹脂組成物(B)は、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の昇温速度で測定したときの融解熱量(ΔHm)が50J/g以上であることが好ましく、プロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンと「共重合可能な他の単量体」とのランダム共重合体やブロック共重合体などを挙げることができる。
【0025】
このような樹脂組成物(B)を配合することで、フィルム強度を高めることができ、フィルムカット性やコシ感を改善できる。また、耐熱性を付与させることで、ヒートシール時の穴開きを防止する事ができる。
【0026】
この際、共重合可能な他の単量体としては、エチレンや1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が挙げられるが、これらの二種以上が共重合されていてもよい。
【0027】
ストレッチフィルムに必要な適度な柔軟性を付与するという観点からは、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、およびリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種類の混合成分を用いるのが好ましい。
【0028】
なお、樹脂組成物(B)において、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの融解熱量(ΔHm)が50J/g以上であれば、強度や耐熱性を保持することができる。上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は160J/g以下である。融解熱量(ΔHm)は、さらに60〜150J/gであることが好ましく、特に70〜140J/gであるのが好ましい。
【0029】
樹脂組成物(B)の配合量は80〜20質量%、特に75〜25質量%、中でも特に70〜30質量%であることが好ましい。80質量%を超えると、フィルムのストレッチ性が不十分であり、ヒートシールの際フィルム抜けによる包装不良が発生する恐れがある。20質量%未満であると、また、フィルムが過柔軟となり、フィルムカット性が低下する。
【0030】
樹脂組成物(B)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合、そのエチレン含有量は、5質量%未満であることが好ましく、4.5質量%以下であるのがさらに好ましく、特に4質量%以下であるのがより好ましい。
【0031】
樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.2N)が、0.2g/10分以上、好ましくは、0.5〜18g/10分であり、1〜15g/10分であるのがより好ましい。
【0032】
また、表面層にはヒートシール層を有することが必要である。ヒートシール性とは一般的には表面層と表面層以外の層の融解温度差を利用することによって生み出される特性であり、十分なヒートシール強度を得ることや樹脂そのもののハンドリング性を考慮すると、DSCで測定した際の融解ピーク温度の差が20〜70℃であることが好ましい。材質は特に制限はないが、特にエチレン系重合体(C)を用いることが好ましく、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、および、エチレンを主成分とする共重合体、例えばエチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルおよびそのアイオノマー、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる一種または二種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体、或いは、それらの混合組成物などを挙げることができる。
【0033】
エチレン系重合体中のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を超えるものである。これらのエチレン系重合体(C)の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリルエステル共重合体およびアイオノマー樹脂の中から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましい。
【0034】
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。これらの中でも、エチレン系重合体(C)として、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に0.5〜8g/10分、中でも特に1〜6g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
【0035】
ここで、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、表面層にある場合には、良好なヒートシール性を付与することができる。その一方、25質量%以下であれば、表面層である場合であっても、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、メルトフローレートが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができるから好ましい。
【0036】
表面以外の層において、エチレン重合体(C)の含有量はエチレン系重合体(C)の含有量は1〜50質量%であるのが好ましい。エチレン系重合体(C)の含有量が1質量%以上であればストレッチフィルムに必要な透明性を付与することができ、中でもエチレン系重合体(C)の含有量は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、50質量%以下であればヒートシール時の穴あきを防止できる耐熱性が充分であり、かかる観点から、エチレン系重合体(C)の含有量は45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
表面層および表面層以外の層においては、本発明の主旨を超えない範囲で、例えば防曇剤、帯電防止剤、滑り性、自己粘着性等の性能を付与するために、次のような各種添加剤を樹脂層に適宜配合することができる。
【0038】
ここで、各種添加剤としては例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪酸アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、グリセリンラウレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキルエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、さらに、パラフィン系オイル等を挙げることができ、これらのうち一種または二種以上を併用することができる。
【0039】
そして、これらの添加剤は、各層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
【0040】
なお、表面層以外の層の少なくとも片面側に、エチレン系重合体(C)成分を主成分とする層を積層する場合、表面層以外の層に含有するエチレン系重合体(C)は、表面層に含有するエチレン系重合体(C)と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。例えば本発明のストレッチフィルムの製造工程において、製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを、表面層以外の層に配合して使用することで、材料の無駄をなくし、材料コストの軽減を図ることができるが、この場合には、表面層以外の層に含有するエチレン系重合体(C)は、表面層と同じとなる。
【0041】
本発明フィルムがヒートシールされる際、底材となる食品用容器については、樹脂がラミネートされた食品容器が好ましいが、基材はラミネート樹脂の剥がれ等が起こらないものであればどのような材質でも問題はない。材質としては、金属・プラスチック製シートまたはフィルム・紙等が挙げられる。
【0042】
また、本発明のフィルムの表面層以外の層の厚みは5μm以上であることが好ましい。当該厚みが5μm以上であれば、フィルムに必要な耐熱性を付与でき、ヒートシールによる穴あきを防止できる。上限値としては特に制限はないが、フィルムに適度な柔軟性を付与し、ヒートシールの際フィルム抜けによる包装不良防止するため、実用上は25μm以下である。
【0043】
また、積層構成とする場合は、表裏層と表裏層以外の層の厚み割合の好適な範囲は、表裏層20〜60%、表裏層以外の層80〜40%であるのがストレッチ包装用フィルムとしての諸物性および経済性の面から好ましい。
【0044】
本発明のストレッチフィルムは、例えば押出機から材料を溶融押出し、インフレーション成形またはTダイ成形によりフィルム状に成形することにより製造することができる。積層フィルムとする場合は、複数の押出機を用いて多層ダイにより共押出するのが好ましい。実用的には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましく、その際のブローアップ比(チューブ径/ダイ径)は3以上が好ましく、特に4〜7の範囲が好適である。その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでもよい。
【0045】
さらに、得られたフィルムを樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用してフィルムの縦方向に1.2〜5倍程度に延伸、またはフィルムの縦横方向に1.2〜5倍程度に二軸延伸してもよい。これにより、カット性の改良や熱収縮性の付与などを行うことができる。
【0046】
本発明のストレッチフィルムの耐熱性は、JIS Z1702に準じて温度130℃、引張速度200mm/分で引張試験を行って測定することができる。その際、MD方向とTD方向の引張破断強度の和が40kgf/cm2以上である必要がある。40kgf/cm以上であれば、ヒートシールの際、フィルムの穴開きを防止することができ、食品から発生するドリップ漏れを防止することができる。特に50kgf/cm以上とすることがより好ましい。上限値としては特に制限はないが、実用上としては150kgf/cm以下である。
【0047】
本発明のストレッチフィルムの10Hz・20℃における動的粘弾性測定において、貯蔵弾性率(E’)は1.5×10〜5.0×10dyn/cmである。1.5×10dyn/cm以上であれば、フィルムに必要なコシ感やフィルムのカット性を付与することがで、特に、2.0×10dyn/cm以上であることが好ましい。一方、5.0×10dyn/cm以下であれば、フィルムのストレッチ性が確保でき、ヒートシールの際フィルム抜けによる包装不良を防止することができる。特に、4.0×10dyn/cm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本発明におけるフィルムおよびその材料についての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直角方向を横方向と呼ぶ。
【0049】
(1)融解熱量(ΔHm)
パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、JIS K 7121に準じて、測定サンプルを10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、1分間保持した後、10℃/分の降温速度で降温し、1分間保持した後、再度測定サンプルを10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、融解熱量(ΔHm)を求めた。
【0050】
(2)フィルム縦方向の破断強度
JIS K7127に準じて、温度130℃、引張速度200mm/分で引張試験を行い、MD・TD方向の破断強度(kgf/cm2)をそれぞれ測定し、MD+TDの値の和を求めた。
【0051】
(3)フィルムの貯蔵弾性率(E’)
試料を縦4mm、横60mmに切り出し、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−60℃から測定し、得られたデータから貯蔵弾性率(E’)の値を求めた。
【0052】
(4)フィルムのカット性
寺岡精工製包装機SW−1000を用いて、所定のサイズの紙トレーをフィルムで包装する際、カットされるフィルムの端面を目視で確認し、フィルムカット性を以下に示す基準で評価した。
○: カット端面が綺麗であり、問題なくカットが可能
△: カットはできるが、端面が不均一
×: カットできない
【0053】
(5)ヒートシール性
(4)に示す同型機を用いて仕上げた包装体を確認し、フィルムに穴が存在するかを目視で確認し、ヒートシール性を以下に示す基準で評価した。
○:穴あきなし。ヒートシール性良好
×:穴あきあり。または食品容器とフィルムがヒートシールしていない。
ヒートシール性不良
【0054】
(6)透明性(Haze)
ASTM D1003に準じて、得られたフィルムをヘイズメーターにて測定し、下記基準で評価した。
◎:1.5%未満
○:1.5〜2.0%未満
△:2.0〜2.5%未満
×:2.5%以上
【0055】
実施例1:
(A)成分として、プロピレン−エチレン−ランダム共重合体(融解熱量4.9J/g、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)2g/10分)50質量%と、(B)成分である結晶性ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体、融解熱量81.6J/g、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)50質量%とを中間層として溶融混練する一方、(C)成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15質量%、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2.0g/10分)と、防曇剤としてジグリセリンオレートとを、97質量部:3質量部の比率で両表面層として溶融混練し、環状ダイ温度190℃、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、総厚み18μm(3μm/12μm/3μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0056】
実施例2:
実施例1で用いた(A)成分および(B)成分のほかに、(C)成分としてEVA(酢酸ビニル含有量15質量%、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2.0g/10分)を、質量比で(A)/(B)/(C)=45/45/10で溶融混練した以外は実施例1と同様にして総厚み18μm(3μm/12μm/3μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0057】
比較例1:
実施例1における中間層の組成を、実施例1で用いた(A)成分100質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、総厚み18μm(3μm/12μm/3μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0058】
比較例2:
実施例1における中間層の組成を、実施例1で用いた(B)成分100質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、総厚み18μm(3μm/12μm/3μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0059】
比較例3:
中間層の組成を、実施例1で用いた(A)成分80質量%と実施例2で用いた(C)成分20質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、総厚み18μm(3μm/12μm/3μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0060】
比較例4:
実施例1における中間層の組成を、(A)成分10質量%と(B)成分90質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、総厚み18μm(3μm/12μm/3μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0061】
比較例5:
実施例1における中間層の組成を、(A)成分90質量%と(B)成分10質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、総厚み18μm(3μm/12μm/3μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。
【0062】
比較例6:
実施例1における中間層の厚みを、3μmに変更した以外は実施例1と同様にして、総厚み18μm(7.5μm/3μm/7.5μm)(サンプル)を得た。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果より、130℃における引張破断強度の和が40kgf/cm以上である実施例1および2については、フィルムカット性・ヒートシール性がいずれも良好であり、透明性も良好であった。これに対し、本発明の規定範囲外である比較例は、フィルムカット性、ヒートシール性のいずれかが劣るということが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の食品包装用ストレッチフィルムは、トレーの代替として、樹脂加工されたフィルムまたはシートの上に食品を乗せ、その上からストレッチフィルムを被せてエッジ部分をシールしてなる、新規の包装形態に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層からなり、一方の表面層がヒートシール層である積層フィルムであり、当該積層フィルムの長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の130℃での引張破断強度の和が40kgf/cm以上であり、周波数10Hz・20℃での貯蔵弾性率(E’)が1.5×10〜5.0×10dyn/cmであることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項2】
示差走査熱量計(DSC)にて昇温速度10℃/分で測定した時の融解熱量(ΔHm)が50J/g以上である樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する請求項1記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項3】
下記(1)に記載の樹脂組成物(A)20〜80質量%と、下記(2)に記載の樹脂組成物(B)80〜20質量%とを含む混合物を主たる成分とする請求項1記載の食品包装用ストレッチフィルム。
(1)示差熱走査熱量計(DSC)にて昇温速度10℃/分で測定した時の融解熱量(ΔHm)が50J/g以下である樹脂組成物(A)
(2)示差熱走査熱量計(DSC)にて昇温速度10℃/分で測定した時の融解熱量(ΔHm)が50J/gを超える樹脂組成物
【請求項4】
樹脂組成物(A)または(B)がポリオレフィン系樹脂である請求項3記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項5】
樹脂組成物(A)がエチレン含有量5%以上であるプロピレン系樹脂であり、樹脂組成物(B)がエチレン含有量5%未満である結晶性プロピレン系樹脂である請求項3または4に記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項6】
表面層を除いた部分の厚みが5μm以上である請求項1〜5のいずれかに記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項7】
表面層がエチレン系重合体(C)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項8】
表面層以外の層に、エチレン系重合体(C)を1〜50質量%含有する請求項1〜7のいずれかに記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項9】
エチレン系重合体(C)が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリルエステル共重合体及びアイオノマー樹脂の中から選ばれる1種または2種類の混合成分である請求項7または8に記載の食品包装用ストレッチフィルム。
【請求項10】
エチレン系重合体(C)の酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、かつメルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項7〜9のいずれかに記載の食品包装用ストレッチフィルム。

【公開番号】特開2013−82124(P2013−82124A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223506(P2011−223506)
【出願日】平成23年10月8日(2011.10.8)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】