説明

食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐のために使用する除菌防腐剤

【課題】解決しようとする課題点は、食中毒の原因又は食品の腐敗の原因となる微生物に対して高い除菌防腐能を有し、人体に対し安全であり、かつ組成物としての安定性が高く安価で製造することが可能である、食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐のために使用する除菌防腐剤を新規に提供することである。
【解決手段】(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステル、(C)スルホコハク酸エステル、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコール、及び(E)水を少なくとも含む溶液1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなる除菌防腐剤を創成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐のために使用する除菌防腐剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品及び飲料の製造行程あるいは加工行程において、食品又は飲料の腐敗や、微生物による食中毒の発生を未然に防止するために、その製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具に関しては、徹底した衛生管理が実施されている。衛生管理の方法としては、具体的には前記の施設、環境、設備、機器、道具の洗浄や、紫外線照射や加熱による除菌等の他に、除菌剤及び防腐剤を用いた除菌防腐が挙げられる。しかしながら、洗浄作業のみで微生物汚染を十分に防止するのは非常に困難であり、一方、紫外線や加熱による除菌は、紫外線を照射する設備又は加熱装置の設置が必要であり、施設、環境、設備、機器、道具の全般で広範囲に実施が可能とは言えず、かつ食品及び飲料の製造行程あるいは加工行程の従事者に対して多大な危険性を有している。ゆえに、食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐には、除菌剤及び防腐剤を用いた除菌防腐の処理が汎用されている。
【0003】
食品及び飲料の製造施設又は加工施設等においては、大腸菌、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、サルモネラ菌等の食中毒菌やバシルス菌等の芽胞菌を除菌するために、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤や次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤やフェノール系殺菌剤を用いて設備や機器、道具等の除菌洗浄が行われている。しかしながら洗浄を目的とした洗剤では、これらの食中毒菌を完全に除菌することはできない。また、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤や次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤やフェノール系殺菌剤等を使用した場合は、その除菌作用自体は優れるものの、これらの殺菌剤が製造された食品又は飲料に混入すると、その毒性による人体への影響が懸念されるだけではなく、これらの殺菌剤の場合には塩素系成分、フェノール系成分に独特の不快な臭いがあり、食品又は飲料に悪影響を与える。
【0004】
そこで、従来の除菌剤とは異なる、人体に対してより安全であって、かつ高い除菌防腐能を有し、更には食品の味や香り、色彩等の外観や食感等にも影響しない食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具のための除菌防腐剤の開発が望まれており、現在までに様々な除菌防腐剤が提案されてきている。例えば、有機酸及び界面活性剤を主成分とする除菌洗浄剤(特許文献1)、胆汁酸と有機酸及びアルコールを含有する殺菌洗浄料(特許文献2)、過酢酸、酢酸、過酸化水素及び無機酸を含有する殺菌洗浄剤組成物(特許文献3)、ヨウ化ベンザルコニウムを有効成分とする殺菌組成物(特許文献4)、ポリヘキサメチレングアニジン塩抗菌剤を含有する除菌洗浄剤(特許文献5)、タンニン物質、脂肪酸エステル類、キレート剤よりなる抗菌性組成物(特許文献6)等がこれまでに開示されている。しかしながら、それらの除菌防腐能や、人体に対する安全性に関しては、未だ満足のいくものではない。また、食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌防腐処理は、衛生管理の面から頻繁に実施される作業であることから、使用する環境下において、該除菌防腐剤は成分の乖離や沈殿、層分離等の発生が起きない十分安定なものであって、かつ安価に入手可能なものである必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、解決しようとする課題点は、食中毒の原因又は食品の腐敗の原因となる微生物に対して高い除菌防腐能を有し、人体に対し安全であり、かつ組成物としての安定性が高く安価で製造することが可能である、食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐のために使用する除菌防腐剤を新規に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、(E)水が0〜55重量%、を少なくとも含む溶液1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなる組成物が優れた除菌防腐能を有することを見いだし、本発明である食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐のために使用する除菌防腐剤を創成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の除菌防腐剤は、食中毒の原因又は食品の腐敗の原因となる微生物に対して優れた除菌防腐能を有する。また、本発明の除菌防腐剤は、全て医薬品や医薬部外品及び食品等で従来から汎用されてきた成分で構成されるものであって、成分の安定性並びに人体への安全性に関しては殊更優れるものである。更に、これらの成分は、非常に安価でかつ大量に入手が可能な化合物ばかりであり、日常的に使用するにあたって消費者の経済的負担が軽減されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−335696号公報
【特許文献2】特開2000−198998号公報
【特許文献3】特開2003−292996号公報
【特許文献4】特開平9−110608号公報
【特許文献5】特開2002−47111号公報
【特許文献6】特開2006−206558号公報
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の除菌防腐剤は、第一に、少なくとも(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、及び(E)水が0〜55重量%を含む溶液を必須とする。
【0010】
(A)の炭素数8〜22の脂肪酸は、置換基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状又は分岐状の飽和あるいは不飽和脂肪酸であれば特に限定されないが、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸から選択される。脂肪酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩から選択される。特に、融点が低い脂肪酸が性状の安定性や製造の簡便性から好ましく、カプリル酸、カプリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸とそれらの塩から選択される。当該溶液中における脂肪酸の含有量は、15〜45重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0011】
(B)の炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルは、特に限定されないが、具体的にはモノカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、モノイソパルミチン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、モノオキシステアリン酸グリセリル、トリオキシステアリン酸グリセリル、モノヒドロキシステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリルから選択される。特に、水に対する溶解性並びに固有の限界ミセル濃度の点から、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル及びモノオレイン酸グリセリルから選択される。当該溶液中におけるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルの含有量は、20〜50重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0012】
(C)のスルホコハク酸エステルは、特に限定されないが、具体的にはスルホコハク酸ジエチルヘキシル、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オレイン酸アミドエトキシエタノールスルホコハク酸エステル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸β−シトステリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレングリコールジメチコンスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸イソプロパノールアミドスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム、スルホコハク酸ヤシ油アルキルグルコシド、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムから選択される。特に、水に対する溶解性並びに製造におけるコストの面から、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム及びスルホコハク酸ジエチルヘキシル又はその塩から選択される。当該溶液中におけるスルホコハク酸エステルの含有量は、10〜30重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0013】
本発明の除菌防腐剤で用いられる少なくとも(A)〜(E)を含む溶液には、脂肪酸の酸化を防止するために、更に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は医薬品、医薬部外品及び食品に通常添加されている成分であれば特に限定されないが、具体的には、アスコルビン酸類、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、フラボノイド類、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。溶液への配合量としては、0.001〜5重量%の範囲であれば十分である。
【0014】
本発明の除菌防腐剤で用いられる(A)〜(E)を含む溶液の製造方法としては、公知な処方製剤の製造方法より得られる。例えば、(A)〜(C)を必要ならば(A)の融点以上に加温しながら溶解及び混合した後、これにあらかじめ混合した(D)及び(E)の混合物を、例えば攪拌機を備えた乳化装置やホモミキサー、ディスパーミキサー、高剪断力の高圧ホモジナイザーや高圧及び/又は真空ホモミキサー、超音波乳化機、SPG膜乳化機、スタティック型ラインミキサー、コロイドミル等といった混合装置を用いて徐々に添加しながら撹拌混合することで当該溶液が製造される。
【0015】
本発明の除菌防腐剤は、第二に前記(A)〜(E)を含む溶液を水性基剤に混合して分散させてなることを必須とする。混合する比率は、溶液1重量部に対し、水性基剤が1〜500重量部の範囲で設定される。混合するにあたって、特に混合装置等は必須ではないが、本発明の除菌防腐剤を大量に製造する場合には撹拌装置を備えた設備であることが好ましい。本発明で用いられる水性基剤は、水又はエタノールを0〜10重量%含む水溶液である。また、当該水性基剤には、除菌防腐剤のハンドリング性を向上させることを目的に、更に増粘剤を添加することができる。増粘剤は医薬品、医薬部外品及び食品に通常添加されている成分であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル酸重合体、アクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アミド重合体、アクリル酸アミド・スチレン共重合体、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アルギン酸又はその塩、加水分解コラーゲン又はその誘導体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、加水分解コムギタンパク質又はその誘導体、加水分解シルク又はその塩又はその誘導体、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、スチレン・ビニルピロリドン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、加水分解エラスチン又はその塩、加水分解カゼイン又はその塩、アラビアゴム、カラギーナン、カラヤガム、ゼラチン、キチン又はその誘導体又はそれらの塩、キトサン又はその誘導体又はそれらの塩、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、流動パラフィン、ヒアルロン酸又はその塩、ソルビトール、トレハロース、デキストラン、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸又はその塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグルタミン酸又はその塩、ユーグレナ多糖体、イソブチレン・マレイン酸塩共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、β−グルカン又はその塩等が挙げられる。水性基剤への配合量としては、0.0001〜20重量%の範囲で設定することができる。
【0016】
本発明の除菌防腐剤は、食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐等の目的で、公知の除菌剤、殺菌剤あるいは消毒剤と同様の取り扱いで使用することができる。除菌防腐剤を使用する対象としては、(1)食品又は飲料の製造工場あるいは加工工場内の貯蔵機器又は施設、製造設備又は機器、充填設備又は機器、包装設備又は機器、工場内の床面又は壁面、窓、作業台、搬送用コンベア等、(2)一般家庭の台所を含む厨房施設内の床面又は壁面、素材又は製造した食品の貯蔵機器、作業台、焜炉、器具や食器等の保管場、シンク、自動食器洗浄機、電子レンジ類等、(3)食品又は飲料の製造あるいは加工に使用する例えば包丁、まな板、鍋等の道具全般、食器類、食品又は素材の保存用容器類等が例示できる。本発明の除菌防腐剤の使用方法としては、道具類を除菌防腐剤中に短時間浸漬するか、あるいは対象とする施設、環境、設備、機器あるいは道具に直接噴霧又は塗布あるいは布等に含浸させて塗布する方法が簡便で好ましい。しかしながら、本発明はこれらの使用対象及び方法のみに限定されるものではない。
【0017】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
表1〜2に本発明の除菌防腐剤の製造に用いる溶液の製造例を示した。表中の各成分の数値は重量%を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
(実施例1)製造例1〜8の除菌防腐能試験
製造例1〜8を用いて製造した除菌防腐剤に対し、食中毒原因微生物又は食品腐敗の原因微生物に対する除菌防腐試験を実施した。製造例1〜8を水に1:1の比率で混合したものを除菌防腐剤として供試した。本試験で用いる微生物は、Staphylococcus aureus ATCC6538、Escherichia coli(血清型O-157:H7) ATCC43895、Salmonella enteritidis (Salmonella enterica subsp. enterica) NBRC3313、Bacillus cereus NBRC15305の4種を対象とした。試験方法は日本薬局方で規定される保存効力試験に準拠し、各微生物の増殖用培地として普通寒天培地、生菌数測定用の培地としてソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地(SCD寒天培地)を用いた。除菌防腐剤へ各微生物を接種した後、培養7日目及び14日目の結果を表3〜5に示した。
【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
(実施例1の結果)
製造例1〜8の除菌防腐能を試験した結果、表3〜5で示されたとおり、培養14日経過時点で、供試した4種の微生物全てで生菌の存在が確認されず、優れた除菌防腐能を示した。特に製造例1〜2の組成物は、培養7日経過時点で全ての微生物が死滅していることが確認され、本発明の中でも特に優れた除菌防腐剤であることが判明した。
【0026】
(実施例2)除菌防腐剤の製造における(A)〜(E)を含む溶液と水性基剤の混合比の検討
本発明の除菌防腐剤を製造するにあたり、(A)〜(E)を含む溶液と水性基剤の混合比率について、以下に記載の混合比率で製造した組成物の除菌防腐能を調べた。供試する溶液として、実施例1において最も除菌防腐能に優れていた製造例1を選択した。試験方法は実施例1の方法に準拠し、更に本発明の除菌防腐剤自体の微生物汚染に対する耐性を確認する目的で、Bacillus subtilis NBRC3134、Aspergillus niger NBRC6341の2種の微生物を対象微生物に追加し、培養14日目おける各微生物の生菌数を測定した。結果を表6に示した。
製造例9:製造例1の溶液1重量部に対し、水100重量部の比率で混合して得られた除菌防腐剤。
製造例10:製造例1の溶液1重量部に対し、水200重量部の比率で混合して得られた除菌防腐剤。
製造例11:製造例1の溶液1重量部に対し、水500重量部の比率で混合して得られた除菌防腐剤。
製造例12:製造例1の溶液1重量部に対し、水1000重量部の比率で混合して得られた除菌防腐剤。
製造例13:製造例1の溶液1重量部に対し、5%エタノール水溶液200重量部の比率で混合して得られた除菌防腐剤。
製造例14:製造例1の溶液1重量部に対し、10%エタノール水溶液200重量部の比率で混合して得られた除菌防腐剤。
【0027】
【表6】

【0028】
(実施例2の結果)
製造例9〜14の除菌防腐剤について除菌防腐能を測定した結果、溶液1重量部に対し、水性基剤500重量部の混合比率までが実施例1で得られた除菌防腐能が維持されるものであった。しかしながら、水性基剤が1000重量部となると除菌防腐能が低下しており、かつ本試験で追加した微生物2種の結果から除菌防腐剤自体の微生物汚染に対する耐性も低下していた。また製造例9〜11及び13〜14の結果から、水性基剤として水のみでもエタノールを含む水溶液でも同等の除菌防腐能を示すことが判明した。更には、製造例9〜14は全ての組成物において、本発明の除菌防腐剤中に含まれる成分の乖離や沈殿、層分離等の発生もなく、安定な組成物であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品又は飲料の製造施設あるいは加工施設、環境、設備、機器、道具の除菌又は防腐のために使用する除菌防腐剤であって、少なくとも下記の(A)〜(E)を含む溶液の1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなることを特徴とする除菌防腐剤。
(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩が15〜45重量%、
(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルが20〜50重量%、
(C)スルホコハク酸エステルが10〜30重量%、
(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールが0〜10重量%、
(E)水が0〜55重量%
【請求項2】
炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩が、カプリル酸、カプリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸又はそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の除菌防腐剤。
【請求項3】
炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルが、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル及びモノオレイン酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の除菌防腐剤。
【請求項4】
スルホコハク酸エステルが、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム及びスルホコハク酸ジエチルヘキシル又はその塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3記載の除菌防腐剤。

【公開番号】特開2011−219414(P2011−219414A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90114(P2010−90114)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(509306203)テクノマイニング株式会社 (10)
【Fターム(参考)】