説明

食品収納容器の製造方法及び該方法に使用する装置

【課題】容器上端開口周縁部が外方に折曲し、更に先端を下方に折曲したフランジ部(鍔部)を常に綺麗に折曲し得る食品収納容器の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】パルプ材料から厚紙状物に形成する工程と、該厚紙状物の表裏の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部を外方に折り返して加熱貼着させる食品収納容器の製造方法であって、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁部を折曲させる部分の凹金型の先端リング状凸部を、紙の流れ目方向に折曲する容器開口周縁部より高い温度に加熱し、全体的に略同じ角度で折曲し得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルプ材料から形成される食品収納容器の製造方法及び該方法に使用する装置に係り、詳記すれば、パルプ材料からプレス成形により食品収納容器を製造するに際し、容器上端開口周縁部が綺麗に折曲できる製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を収容する弁当箱若しくはトレー等の食品収納容器としては、従来から発泡ポリウレタン等のプラスチック材料が使用されていた。しかしながら、プラスチック材料は使用後の後処理が容易ではないので、環境保全の観点から植物性繊維材料製食品収納容器が強く求められている。
【0003】
このような問題を解決するため本出願人は、図1に示すような、パルプ材料(パルプ又はパルプを主成分とする植物性繊維材料)から厚紙状物を形成する工程と、ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂を内面となる面にコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成する工程と、このようにして得た厚紙状物を凹凸一対のプレス金型で加熱プレスして四隅に側面片の重合部1を有する食品収納容器2を開発し、先に特許出願した(特許文献1)。
【0004】
このパルプ材料からなる容器は、安価に形成できることと、環境保全の観点から極めて高い評価を受けている。しかしながら、図1に示すように、容器上端開口周縁部が外方に上昇傾斜するように折曲した上昇傾斜部3と、更にその先端を下方に折曲した下降傾斜部4とからなるフランジ部(鍔部)5を形成する場合、一方の下降傾斜部4が開いて綺麗に折曲できない問題が生じた。即ち、図1の対向する短い側面片のフランジ部が長い側面片のフランジ部よりも角度が大きく開く問題が生じた。特に、両面コーティングした容器を製造する場合に、大きな差が生じた。
【0005】
【特許文献1】特開2006−315687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明のうち請求項1に記載の発明は、容器上端開口周縁部が外方に折曲し、更に先端を下方に折曲したフランジ部(鍔部)を常に略同角度に折曲し得る食品収納容器の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究の結果、紙には繊維と同じ紙の流れ目があることを想到し、紙の流れ目と同じ方向には容易に折曲し、紙の流れ目と交差する方向に折曲するには力が必要なことを見出し、紙の流れ目に交差して折曲する場合は、より高い温度に加熱して折曲し易くすることによって、常に全体的に同じように折曲し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち本発明は、パルプ材料から厚紙状物に形成する工程と、該厚紙状物の表裏の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部を外方に折り返してコーナー部を加熱貼着させる食品収納容器の製造方法であって、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁部を折曲させる部分の凹金型の先端(凹凸金型が上下方向の場合は上端である)リング状凸部を、紙の流れ目方向に折曲する周縁折曲部より高い温度に加熱することを特徴とする。
【0009】
前記折込片を形成した厚紙状物を一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片を前記側面片に重合させ、容器開口周縁折曲部を外方に折り返してコーナー部を加熱貼着させるのが好ましい(請求項2)。特にこのような容器の場合に効果的である。
【0010】
容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端を容器下方に折曲することによりフランジ部を形成し、該フランジ部の下方に折曲する部分の凹金型の先端リング状凸部を加熱するのが好ましい(請求項3)。
【0011】
前記折込片は、底面コーナーに接する部分は角部に形成され、前記折込片の上方は、切欠部に形成されている場合に適している(請求項4)。折込片は、V字状とか三角形状とするのが好ましい。
【0012】
容器開口周縁折曲部は、折込片が側面片に重合した状態で、前記折込片より上方で折曲し、更に先端を容器下方に折曲した形状に形成されている場合に効果的である(請求項5)。
【0013】
前記容器は、容器に内容物を収容した後、フィルムをラッピングして開口部と容器開口周縁折曲部上面を覆うように構成してなるトレーであるのが適している(請求項6)。
【0014】
本発明の製造装置は、パルプ材料から形成した厚紙状物にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部を外方に折り返して、コーナー部を加熱貼着させる食品収納容器の製造装置であって、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁部を折曲させる部分の凹金型の先端(凹凸金型が上下方向の場合は上端である)リング状凸部を、紙の流れ目方向に折曲させる容器開口周縁折曲部より高い温度に加熱する加熱部材を固定若しくは埋設したことを特徴とする。
【0015】
前記折込片を形成した厚紙状物を一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片が前記側面片に重合し、容器開口周縁部を外方に折り返してコーナー部を加熱貼着させるのが好ましい(請求項8)。
【0016】
前記容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端を下方に折曲することによりフランジ部を形成し、該フランジ部の下方に折曲する部分の凹金型の上端リング状凸部を加熱する(請求項9)。前記凹金型先端には、容器上端外周を外方で前記折込片より上方で折曲し、更にその先端を下方に折曲した形状に形成するリング状凸起部が形成されている場合に適している(請求項10)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、紙の流れ目方向と交差して折曲する部分の金型のリング状凸部を加熱して、厚紙状物を折曲し易くすることによって、常に全体的に略同角度で綺麗に折曲した食品収容容器が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】公知の食品収容容器の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明により製造する食品容器の原料厚紙状物の一部平面図である。図は、容器の一部展開図である。
【図3】本発明に使用する凹金型の平面図である。
【図4】本発明に使用する凹金型及び凸金型の断面図である。
【図5】図6の状態を経て本発明の食品収容容器に成形した状態を示す部分斜視図である。
【図6】本発明により製造する食品容器の一例を示す一部展開図である。
【図7】本発明方法による金型により食品収容容器を製造する例を示す断面図である。
【図8】本発明方法により製造する食品容器の他の例を示す斜視図である。
【図9】本発明の原料厚紙状物の他の例を示す平面図である。図は、容器の展開図である。
【図10】本発明の食品収容容器の製造法を示す概略平面図である。
【図11】本発明に使用する金型の概略断面図である。
【図12】本発明に使用する金型の概略平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・・・・側面片の重合部2・・・・・・食品収用容器5・・・・・・容器のフランジ部(鍔部)6・・・・・・切欠部7,7´,8・・・・・・側面片9・・・・・・折込片10,10´・・・・・・ロッド(厚紙状物支持部材)11・・・・・・凹金型(メス金型)12・・・・・・凸金型(オス金型)13・・・・・・コイルスプリング17,17´・・・・・・リング状凸条18・・・・・・加熱板19,19´,20・・・・・・側面片25・・・・・加熱エアー噴出管28・・・・・液体(水)を循環させる通路
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
パルプ材料(パルプと植物性繊維材料との混合物を含む)から厚紙状物を製造するには公知の方法によって行えば良い。即ち、パルプ材料を水に懸濁させたものを、すき工程、みず切り工程及び乾燥工程を経て、厚紙状物とすればよい。厚紙状物の表裏面の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂を塗布し、形成しようとする容器の展開形状に切断する。これを凹凸一対のプレス金型で加熱プレスすれば良い。プレス金型でプレスするには、対向する一方の側面片は、先に起立させなければならない。尚、厚紙状物には、耐水剤を含有させるのが良い。
【0022】
本発明にパルプと共に使用する植物性繊維材料としては、竹、葦、サトウキビ又はケナフを使用することができるが、バージンパルプ単独、バージンパルプと竹材との混合物又は古紙からのパルプ材料とするのが、バージンパルプが強度と衛生面の点から、バージンパルプと竹材との混合物及び古紙は、価格の点から好ましい。
【0023】
ヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程は、展開形状に切断する前であっても後であってもよい。熱可塑性樹脂は、厚紙状物の一方でも良いが、魚等を収容するトレーとする場合は、表面と裏面の両方にコーティングするのが好ましい。熱可塑性樹脂をコーティングするのは、金型で容器に形成できると共に、水分、血液、液汁などの浸み込みが防止できるからであるが、内面だけでは、魚等の血が外面に付着した場合に水洗できない。熱可塑性樹脂としては、特にポリエチレン又はポリプロピレンを使用するのが好ましい。
【0024】
厚紙状物を容器の展開形状に打ち抜くと同時に(若しくはその後に)、一方の対向する側面片(好ましくは短いほうの側面片)は、若干上昇するような折り目をつけるのが好ましいが、折り目はつけなくとも差し支えない。
【0025】
このようにして形成した厚紙状物には、図2に示すように、容器開口周縁部をフランジ部(鍔部)に支障なく形成するための切欠部6を四隅に形成する。側面片7と8及び8と7´との間には、切欠部6が位置し、切欠部6の分だけ短くなったV字形の折込片9が形成されている。要するに、折込片9の上方が切欠部6になっている。折込片9両側及び底面と側面との境界に折り目を形成すると良い。折り目は、抜き金型によって形成するのが好ましいが、形成しなくとも差し支えない。折込片9は、底面コーナーに接する部分が鋭角の形状であれば良いが、三角形状(V字状)とするのが好ましい。鋭角の角度は、この実施例では10〜20度、特に14度〜16度とするのが好ましいが、容器の用途によっては、側壁を更に起立させることができるので、10〜30度程度が好ましい。
【0026】
図3及び図4は、本発明に使用する金型の一例を示すものであり、厚紙状物の先に起立させる両側面片(対向する短い辺とするのが好ましい)は、出没し得るロッド10,10´上に支持されている。ロッド10,10´は、凹金型(メス金型)11に形成された孔(空洞)に嵌合し、孔内を上下動する。ロッド10,10´は、常時は、凹金型11上端より15〜30mm程度突出しているのが好ましい。孔は、好ましくは直径3〜10mm、特に好ましくは、3〜7mmである。上記実施例では、ロッド10,10´は、先端が斜面で断面四角形に形成されている。断面は多角形でも円形でも差し支えない。
【0027】
ロッド10,10´下端は、コイルスプリング13上端に固定した円板に固定されている。従って、ロッド10,10´が凸金型12に押されると、コイルスプリング13の力に抗して下降し、押圧を解くと、コイルスプリング13の力により元の位置に上昇復帰するようになっている。
【0028】
メス金型11の凹部14周縁部上端外周には、メス金型凹部周縁部が外方に向けて上昇傾斜した上昇傾斜部15と上昇傾斜部15先端から下降した下降傾斜部16とから略山形に形成されたリング状凸条17が形成されているので、図5に示すように、容器を形成すると同時に、四隅をヒートシールして、開口部周縁部が外方に向けた上昇傾斜部3と、その先端部が下降した下降傾斜部4からなる山形形状の鍔状部5を有する食品収納容器2を一工程で製造することができる。尚、上昇傾斜部3及び下降傾斜部4が円弧状であり、半円状の鍔状部5を形成するようにしても良い。
【0029】
図3及び図4に示すように、紙の流れ目方向と交差(略直交)するメス金型のリング状凸条17近傍のメス金型側面上端には、加熱板18が固定されている。この加熱板18によって、上記下降傾斜部16が加熱されるようになっている。加熱は、紙の流れ目方向に折曲させる凹金型の下降傾斜部16の温度より高くすればよい。5〜15℃程度高くするのが好ましい。
【0030】
両面コーティングした容器とする場合は、熱可塑性樹脂の軟化温度以下に加熱しなければならない。従って、凹金型及び上記下降傾斜部16は、軟化温度以下に加熱することになる。
【0031】
この実施例では、ポリエチレンを使用しているので、ポリエチレンの軟化温度80℃以下とする。凹金型の温度を50〜65℃とすれば、好ましくは、上記下降傾斜部16が、65〜75℃となるようにすれば良い。上記実施例では加熱板を使用したが、ヒーターのような熱源をメス金型に埋設して、上記下降傾斜部が、所定の温度となるようにしても勿論良い。上記実施例では、金型の長さ方向が、紙の流れ目方向とする。
【0032】
図3及び図4に示すように、メス金型11を挟んで壁19,19´が立設している。壁19と19´の間は、厚紙状物の幅と同じになっている。厚紙状物を滑り台のようなスロープに案内されて、メス金型上に落下し、壁19と19´に挟持されて、前方の壁20で停止するようになっている。壁19,19´,20は、位置決めの役割をするものであり、この状態でプレスする。
【0033】
厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材(ロッド)10,10´上に載せることにより先に起立させ、一対のプレス金型11,12で、加熱プレスして、前記折込片9が前記側面片7,7´に重合貼着し、容器開口部周縁部は、上昇傾斜部3と下降傾斜部4とからなるフランジ部5に形成されるように加熱貼着させて食品収納容器を製造する。この際、支持部材10,10´は、凸金型12と凹金型11でプレスするときは、弾性体13の力に抗して下降し、プレス後凸金型12を上昇させると弾性体13の力で元の位置に上昇復帰するようになっている。
【0034】
図2に示す厚紙状物を凹凸金型でプレスして、重合貼着させ、V字形の片9よりも上の部分を折り返すと、図6の状態を経て、図5に示すように容器開口周縁部が、外方上昇傾斜部3と該傾斜部から下降した下降傾斜部4からなる断面略山形のフランジ部(鍔状部)5を容易に形成することができる。V字形の折込片9を長くし、V字形の折込片9と一緒に折り返すと、三重になった部分を折り返すことになるから、コーナー部に皺が多く生じたり破けたりする場合が生じ、綺麗な鍔状部5が形成できない。図6に示すように、短いV字形の折込片9は、側壁7´の表面Aに貼着する。
【0035】
図7は、本発明に使用する金型の他の例を示すものであり、厚紙状物21の先に起立させる両側面片(対向する短い辺とするのが好ましい)は、出没し得るロッド10,10´で支持されている。ロッド10,10´は、凹金型(メス金型)11に形成された孔内を上下動する。
【0036】
上記のように構成されているので、ロッド10,10´が凸金型(オス金型)12に押圧されると、ロッド10,10´は、バネ13の力に抗して下降し、凸金型12を上昇させると、バネ13の力により元の位置に復帰するようになっている。
【0037】
支持部材(ロッド)10,10´は、凹金型11の孔に単に上下動し得るように設ければよいが、両面コーティングした容器を製造する場合は、凹金型を55〜65℃程度に加熱し、容器のコーナーに熱風を当てて連続的にプレスすると、メス金型の温度が高くなり、メス金型に容器が貼着するので、図11及び図12に示すように、メス金型を冷却する必要があるから、凹金型側壁内に冷却用の水を循環させる通路28を形成する。冷却は55〜65℃程度を維持するようにすれば良い。そのため、この通路28の邪魔にならないように設ける必要がある。
【0038】
上記金型は、図7に示すように、メス金型11の凹部上端外周に断面略山形のリング状凸条17を設けた金型を使用しているので、容器を形成すると同時に、四隅をヒートシールして、山形の鍔状部を有する食品収納容器を一工程で製造することができる。図7では、断面略四角形のリング状凸条を設けた金型を使用しているので、断面コ字形の鍔状部12´を有する食品収納容器となっている。
【0039】
凹凸一対の加熱プレス金型で食品収納容器を形成するには、厚紙状物21を図3、図4及び図8に示すメス金型(凹金型)11上に載置する。一方の対向する側面片は、ロッド10,10´上に支持されている。
【0040】
上記実施例では、支持部材としてロッド10,10´を使用している。ロッド10,10´は、図3、図4及び図8に示すように、四隅のコーナー近くの凹金型の孔に、嵌合している。コーナー近くというのは、好ましくはコーナー貼着部(重合部)よりも5mm〜側面片の長さの1/4程度の位置とするのが良い。ロッドは、短い側面片に設ければ、2本で十分であるが、容器が大きい場合は、更に中間に1本設ければよい。短い側面片に設けるのが持ち上げ易いことから好ましい。
【0041】
ロッドの代わりに板体を対向する面に、押圧により、バネの力に抗して下降し、押圧を解くと、バネの力により上昇するように、凹金型に設けた細長い孔に嵌合させても差し支えない。板体の長さは、側面片の長さの1/3以上でコーナー貼着部(重合部)よりも5mm程度の長さとするのが良い。
【0042】
支持部材は、ロッドではなく、板体をバネの力に抗して下降(移動)させ、バネの力により元の位置に復帰するようにしても差し支えない。また、板体を凹金型(メス金型)11上端に斜めに設けて押圧により下降(移動)して凹金型と同一平面となり、押圧を解くとバネの力により元の位置に復帰するようにしても差し支えない。また、板体を起倒し得るように設けても良い。
【0043】
支持部材は、凹金型上に設けるのが好ましいが、凹金型の両側部に接して若しくは近接して設けることが出来る場合は、特に金型上に設ける必要はない。また、この場合に金型のプレスの邪魔にならないなら、上下動させる必要もない。
【0044】
上記実施例では、弾性体として、コイルバネを使用しているが、押圧により弾性体の力に抗して下降し、押圧を解くことにより、弾性体の力により元の位置に復帰するものであるなら、どのような弾性体でもよく、特に限定されない。
【0045】
上記実施例では、凹凸金型で上下方向にプレスする例を示したが、凹凸金型を左右方向にプレスするように配置し、上から凹凸金型の間に厚紙状物を落下させて、横方向にプレスしても差し支えない。
【0046】
図9は、両面ポリエチレンコーティングした容器を製造する一例を示すものであり、厚紙状物の四隅には、細長い切欠部6が形成され、該切欠部6に面して、V字形の折込片9が形成されている。即ち、折込片9より上が切欠部6になっている。
【0047】
切欠部6の斜め上方(好ましくは、垂直から15〜45度傾斜)に対向して、細長い加熱エアー噴出管25が位置し、常時180〜200℃の加熱エアーを噴出している。加熱エアー噴出管25には、ヒーター内装管26が連設され、圧縮空気27がヒーターを通って180〜200℃で、加熱エアー噴出管25から噴出するように温度制御されている。加熱エアーの温度が低すぎると貼着不良が生じるし、高すぎるとこげが生じる。
【0048】
上記実施例では、常時加熱エアーを噴出しているが、プレスするときだけ噴出するように、断続的に制御しても勿論良い。
【0049】
加熱エアー噴出管25は、自在に屈曲し得るように形成され、容器の大きさに応じて、自在に噴射位置及び方向を調整できるようになっている。
斜め上方と斜め下方の両方から加熱エアーを噴出させても差し支えない。その場合、斜め下方からエアーを噴出させる場合は、冷却の目的で使用することも出来る。
【0050】
図8に示すように、凹金型(又は凸金型)の四隅に小孔(直径1mm程度)を穿設し、パイプ22を埋設して形成した加熱エアーの通路を通った加熱エアーをこの小孔から噴出させても良い。斜め上方又は/及び斜め下方からの加熱エアーの噴出と、金型からの加熱エアーの噴出とを併用しても差し支えない。図中23は、通路に加熱エアーを導入するパイプであり、パイプ22に嵌合している。
【0051】
凹金型は、熱風を噴射し、多数回成形すると金型温度が上昇するので、図10及び図11に示すように、金型温度が55℃〜65℃を維持するように、循環路28を水が循環している。この温度範囲であると、効果的に成形した容器の金型への付着が防止されると共にコーナーが綺麗に貼着できる。温度が低すぎると貼着不良が生じ、高すぎると成形した容器が金型に付着する。
【0052】
プレスする凸金型の温度は。180℃前後で行っているが、170〜190℃で行うのが好ましい。低すぎると、コーナー部の貼着不良品が発生するし、高すぎると、こげ等の紙の変質が生じる。
【0053】
図9は、ポリエチレンコーティングした厚紙状物の他の例を示すものであり、四隅に側面片を形成する切断部29を形成し、短いほうの側面片8,8´を先に起立させ、凹凸金型でプレスして隣接する側面片8と7及び7´、8´と7及び7´とを重合させ、前記と同様に折り返してフランジ部(鍔状部)を有する容器を形成することができる。
【0054】
本発明の方法により製造する食品収納容器としては、特に限定されないが、好適なものとして、魚等を収容するトレーが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の製造方法及び製造装置を使用することによって、紙の流れ目方向と交差して折曲する部分の金型凸部を加熱して折曲し易くすることによって、常に全体的に略同じ角度に折曲した食品収容容器が製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ材料から厚紙状物に形成する工程と、該厚紙状物の表裏の一方若しくは両方にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングする工程と、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部を外方に折り返して加熱貼着させる食品収納容器の製造方法であって、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁部を折曲させる部分の凹金型の先端リング状凸部を、紙の流れ目方向に折曲する容器開口周縁部より高い温度に加熱することを特徴とする食品収納容器の製造方法。
【請求項2】
前記折込片を形成した厚紙状物を一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片を前記側面片に重合させ、容器開口部を外方に折り返してコーナー部を加熱貼着させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端を容器下方に折曲することによりフランジ部を形成し、該フランジ部の下方に折曲する部分の凹金型の先端リング状凸部を加熱する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記折込片は、底面コーナーに接する部分は角部に形成され、前記折込片の上方は、切欠部に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
容器開口周縁折曲部は、折込片が側面片に重合した状態で、前記折込片より上方で折曲し、更に先端を容器下方に折曲した形状に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記容器は、容器に内容物を収容した後、フィルムをラッピングして開口部と容器開口周縁折曲部上面を覆うように構成してなるトレーである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
パルプ材料から形成した厚紙状物にヒートシール能を有する熱可塑性樹脂をコーティングし、前記厚紙状物の四隅に側面片を形成する切断部を形成するか、隣接する側面片を連結する折込片を形成し、このようにして得た厚紙状物を、対向する一方の側面片を側面片裏面に当接させた支持部材で支持し、一対のプレス金型で、加熱プレスして、容器開口周縁部を外方に折り返してコーナー部を加熱貼着させる食品収納容器の製造装置であって、紙の流れ目方向と交差する方向に容器開口周縁部を折曲させる部分の凹金型の先端リング状凸部を、紙の流れ目方向に折曲させる容器開口周縁折曲部より高い温度に加熱する加熱部材を固定若しくは埋設したことを特徴とする食品収納容器の製造装置。
【請求項8】
前記折込片を形成した厚紙状物を一対のプレス金型で、加熱プレスして、前記折込片が前記側面片に重合し、容器開口周縁部を外方に折り返してコーナー部を加熱貼着させる請求項7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記容器開口周縁部を外方に折曲し、その先端を下方に折曲することによりフランジ部を形成し、該フランジ部の下方に折曲する部分の凹金型の上端リング状凸部を加熱する請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記凹金型先端には、容器上端外周を外方で前記折込片より上方で折曲し、更にその先端を下方に折曲した形状に形成するリング状凸起部が形成されている請求項8又は9に記載の製造装置。

【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−189728(P2011−189728A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163628(P2010−163628)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(503181705)
【Fターム(参考)】