説明

食品容器、容器入り納豆及びその製造方法、調味料注入方法

【課題】使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している納豆用調味料を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出できる納豆容器を提供すること。
【解決手段】本発明の食品容器11は、食品収納凹部25を有する容器本体22と、その開口26を塞ぐ発泡樹脂製の蓋体23とを有する。蓋体23には蓋体内面23b側に膨出した形状の調味料収納凹部32が設けられる。蓋体23には調味料収納凹部32に連通する開裂溝31が設けられる。蓋体23において開裂溝31を挟んでその両側には、蓋体外面23a側に隆起した形状の被操作部38が対峙して配置される。蓋体外面23a側には、調味料収納凹部32の開口を覆って密閉するシール材13が設けられる。被操作部38を蓋体外面23a側から操作して開裂溝31に歪みを生じさせると、開裂溝31が開裂する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆等の食品と個包装されない調味料とを容器内にて別々に収納してなる食品容器、容器入り納豆及びその製造方法、調味料注入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、納豆は紙製あるいは合成樹脂製の容器内に収納された状態で販売されるが、一般的に容器内には個包装された納豆用調味料も併せて収納されている。調味料等を個包装した場合、喫食時に個包装から調味料等を取り出して納豆にかける作業が必要となるが、通常その作業は面倒である。また、かかる作業を行う際には、個包装を破ろうとする指に調味料が付着したり、その指に力が入り過ぎて調味料が周囲に飛び散ったりするため、煩わしさを伴う。また、使用後に個包装はゴミとなるため、環境の面から見ても好ましくない。
【0003】
このような背景から、納豆と個包装されない納豆用調味料とを納豆容器内にて別々に収納してなる容器入り納豆が従来提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。そして、特許文献1〜3で提案されている容器入り納豆によれば、喫食時に個包装から調味料を取り出して納豆にかける作業が不要となる結果、手を汚す煩わしさも一応は解消されるようになっている。
【0004】
ちなみに、特許文献1のものは、破断しにくい強度を有する合成樹脂製の蓋体に収納凹部が形成され、その収納凹部内に調味料を収納した状態でその開口部を易破断シール体で密封した構成を有している。そして喫食時には、収納凹部内に形成した破断突起体でこの易破断シール体を破断することにより、調味料を納豆に注入するようになっている。
【0005】
特許文献2のものは、破断しにくい強度を有する合成樹脂製の蓋体に収納凹部が形成され、その収納凹部内に調味料を収納した状態でその開口部を帯シール片で密封した構成を有している。そして喫食時には、この帯シール片を引っ張って剥離することにより、収納凹部を開口させて調味料を納豆に注入するようになっている。
【0006】
特許文献3のものは、収納部本体と共蓋とヒンジ部とが発泡樹脂により一体形成されるとともに、ヒンジ部に沿って切断手段が形成され、調味料を収納する包装フィルムが共蓋の凹部開口に固着された構成を有している。そして喫食時には、まず収納部本体と共蓋とを切断手段に沿って切り離し、次に包装フィルムを剥がすことにより、収納凹部を開口させて調味料を納豆に注入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−179174号公報
【特許文献2】特開2002−37349号公報
【特許文献3】特開平10−305886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3で提案されている容器入り納豆には、下記のような問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1、2のものは、破断突起体や帯シール片を設ける必要があるため、構造的に非常に複雑である。ゆえに、製造上及び容器の原料コスト上、納豆用の容器として実現することは非常に困難である。また、特に特許文献2のものは、使用後に帯シール片などの余分なゴミが発生するが、このようなゴミは通常調味料で汚れているため、テーブル上に直接置くことができない。このため、取扱上不便である。勿論、このようなゴミの発生は、環境面から見てあまり好ましいものではない。
【0010】
また、特許文献3のものは、使用時に共蓋を切り離すことが必須であり、なおかつ切り離し後に包装フィルムを剥がして開口させる必要がある。ゆえに、使用にあたり煩雑な作業を要求される。しかも、包装フィルムを剥がして開ける際に手が汚れるばかりか、包装フィルム自体が汚れたゴミとなってしまう。また、切り離された共蓋は外側が調味料で汚れているため、納豆付着防止用の被膜フィルムがないと、共蓋の内側まで汚れてしまう結果になる。よってこの場合には、テーブル上に共蓋を直接置くことができなくなり、取扱上不便なものとなる。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している調味料を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出させることができる食品容器、容器入り納豆を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記の優れた容器入り納豆を製造するうえで好適な方法を提供すること、容器入り納豆の蓋体から調味料を吐出させて納豆に簡単に注入する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段[1]〜[12]を以下に列挙する。
【0013】
[1]食品収納凹部を有する容器本体と、前記容器本体の開口を塞ぐ発泡樹脂製の蓋体とを有する食品容器であって、前記蓋体には、蓋体内面側に膨出した形状の調味料収納凹部が設けられるとともに、前記調味料収納凹部に連通する開裂溝が設けられ、前記蓋体において前記開裂溝を挟んでその両側には、蓋体外面側に隆起した形状の被操作部が対峙して配置され、前記蓋体の前記蓋体外面側には、前記調味料収納凹部の開口を覆って密閉するシール材が設けられ、前記被操作部を前記蓋体外面側から操作して前記開裂溝に歪みを生じさせることにより、前記開裂溝が開裂しうるように構成されていることを特徴とする食品容器。
【0014】
従って、手段1に記載の発明によると、被操作部を蓋体外面側から操作して開裂溝に歪みを生じさせることにより、被操作部のすぐ近くに位置する開裂溝の箇所に応力を集中させることができ、もって開裂溝を開裂させることができる。その結果、調味料収納凹部に収納されていた調味料が開裂溝を介して開裂箇所に到達し、そこから調味料収納凹部の外部に吐出される。なお、蓋体は発泡樹脂製であるため、切れ目などの構造を設けなくても、比較的容易に特定部位を開裂させることができる。ゆえに、内部に収納している調味料を簡単に外部に吐出させることができる。また、本発明によると、破断突起体や帯シール片を設ける必要がないため、構造的に簡単なものとなり、比較的低コストで製造することができる。
【0015】
そして、本発明の食品容器はもともと平坦であった発泡樹脂シートを金型成型にて食品収納凹部等を成型するのと同時に調味料収納凹部、被操作部、開裂溝を成型することができる。よって、硬質プラスチックなどを用いる必要もなく、また食品容器製造工程を極めてシンプルにすることができ、比較的低コストで製造することができる。
【0016】
さらに本発明では、密閉用のシール材の破断や剥離を伴わずに調味料が吐出可能な構造であるため、使用後に帯シール片などの余分なゴミが発生しない。よって、自分の手や周囲を汚すことなく、しかも煩雑な作業を伴うことなく調味料を吐出させることができ、取扱上便利である。
【0017】
[2]前記被操作部は、前記シール材を介して指で押圧される被押圧部であることを特徴とする手段1に記載の食品容器。
【0018】
従って、手段2に記載の発明によると、被操作部が指で押圧される被押圧部であるので、比較的簡単な操作で押圧力を加えることができ、結果的に開裂溝の特定部位を容易にかつ確実に開裂させることができる。この操作は、蓋体を開かずに(蓋体を閉めた状態のまま)行うことができるため、衛生的でありかつ調味料が飛び散るなどの心配もない。また、被押圧部の一部をシール材から露出させなくてもよく、被押圧部をシール材で覆う構造とすることができるため、無理なくシール材を設置することができ、製造の困難性が小さくなる。
【0019】
[3]前記調味料収納凹部の底部は、前記開裂溝に向って傾斜していることを特徴とする手段1または2に記載の食品容器。
【0020】
従って、手段3に記載の発明によると、調味料収納凹部の底部が開裂溝に向って傾斜しているため、調味料収納凹部から開裂箇所に向けて調味料がスムーズに案内される。よって、調味料をより簡単かつ確実に外部に吐出させることができる。
【0021】
[4]前記蓋体には、前記調味料収納凹部、前記開裂溝及び前記被操作部を包囲する包囲溝が設けられていることを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の食品容器。
【0022】
従って、手段4に記載の発明によると、調味料収納凹部、開裂溝及び被操作部を包囲する包囲溝が設けられていることにより、蓋部が全体的に補強されて湾曲などが防止されるとともに、シール材の捲れが防止される。また、蓋部全体の変形等により被操作部に力が加わることで、開裂溝が意図せずに開裂してしまうことも未然に防止することができる。
【0023】
[5]前記容器本体と前記蓋体とそれらを連結するヒンジ部とが、前記発泡樹脂を用いて一体的に形成されていることを特徴とする手段1乃至4のいずれか1項に記載の食品容器。
【0024】
従って、手段5に記載の発明によると、容器本体と蓋体とそれらを連結するヒンジ部とが発泡樹脂を用いて一体的に形成されているので、容器成型が容易であり、容器の製造コストを抑えられるという利点がある。さらに、食品製造段階においても蓋体を閉じる工程がシンプルになるので、食品製造コストを抑えられるという利点がある。
【0025】
[6]前記食品収納凹部には納豆が収納され、前記調味料収納凹部には納豆用調味料が収納されることを特徴とする手段1乃至5のいずれか1項に記載の食品容器。
【0026】
[7]手段1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器における前記食品収納凹部に納豆を収納し、前記調味料収納凹部に納豆用調味料を収納してなる容器入り納豆。
【0027】
従って、手段7に記載の発明によると、被操作部の操作による開裂溝の開裂によって、調味料収納凹部に収納されていた納豆用調味料が開裂溝を介して開裂箇所に到達し、そこから調味料収納凹部の外部に吐出される。その結果、食品収納凹部に収納されている納豆に納豆用調味料を注ぐことができる。
【0028】
[8]手段1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器の前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、前記容器本体における前記食品収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記食品収納凹部を塞ぐように、前記納豆用調味料が充填され前記シール材により密閉された前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記食品容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程とを含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【0029】
従って、手段8に記載の発明によると、調味料を充填してシール材で密閉し、次いで蒸煮大豆を充填した後に蓋閉じを行うという順序であるため、以下の利点がある。例えば、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料の充填及びシール密閉を行おうとすると、容器本体が撓む可能性があり、上手くシールするためにはシール時間を長めに設定する、あるいはシール位置をできるだけ蓋体の周縁部近くに設定するなどの工夫が必要になる。これに対して本発明によれば、シールしたい蓋体だけをしっかり支えてシールすることが可能なため、容器本体の撓みを防ぐことができ、シール密閉工程にて特に工夫をしなくても蓋体を確実に密閉することができる。また、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料の充填及びシール密閉を行う場合、調味料充填工程でのミス(液垂れなど)やシール不良が生じると、充填済みの蒸煮大豆が無駄になってしまう。これに対して本発明によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、調味料充填及びシール密閉工程でミスが起きやすい場合に、この製造方法を採用する価値がある。さらに本発明によれば、工程の比較的早い段階で調味料を充填してシール材で密閉しているので、調味料収納凹部への異物の付着や菌汚染のリスクが小さくなり、衛生的に好ましい。
【0030】
[9]手段1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器の前記容器本体における前記食品収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記食品収納凹部を塞ぐように前記食品容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記食品容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程とを含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【0031】
従って、手段9に記載の発明によると、蒸煮大豆を充填し、次いで調味料を充填してシール材で密閉した後に蓋閉じを行うという順序であるため、以下の利点がある。即ちこの順序であると、シール密閉工程において少々不便さがある一方で、食品容器自体を反転しなくてよいという利点があり、製造ラインを単純化できる点で好ましい。また、蒸煮大豆充填工程や蓋閉じ工程でのミス(豆のはみ出しによる容器汚れ、潰れなど)が生じると、充填済みの調味料とシール材とが無駄になってしまう。これに対して本発明によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、蒸煮大豆充填工程でミスが起きやすい場合に、本発明の製造方法を採用する価値がある。
【0032】
[10]手段1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器の前記容器本体における前記食品収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記食品収納凹部を塞ぐように前記食品容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記食品容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と、前記蓋体における前記調味料収納凹部に前記納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程とを含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【0033】
従って、手段10に記載の発明によると、蒸煮大豆を充填して蓋閉じしかつ納豆菌発酵を行ってから、調味料を充填してシール材で密閉するという順序であるため、設備上衛生的にキープできる設備で製造する場合には、問題なく採用することができる。また、納豆の発酵不良などが生じる場合、調味料を充填してから発酵という工程であると、充填済みの調味料とシール材とが無駄になってしまうが、納豆菌発酵後に調味料の充填及びシールをすれば、そのような無駄の発生を防止することができる。つまり、発酵不良が起きやすい場合にこの製造方法を採用する価値がある。
【0034】
[11]手段7に記載の容器入り納豆の前記被操作部を前記蓋体外面側から操作して前記開裂溝を開裂させることにより、前記納豆に前記納豆用調味料を注入する方法。
【0035】
従って、手段11に記載の発明によると、被操作部に対する所定の操作により、納豆用調味料を調味料収納凹部の外部に吐出させて、納豆に注ぐことができる。
【0036】
[12]手段7に記載の容器入り納豆の前記被操作部を前記蓋体外面側から前記シール材を介して押圧して前記開裂溝を開裂させることにより、前記納豆に前記納豆用調味料を注入する方法。
【0037】
従って、手段12に記載の発明によると、被操作部に対する押圧操作により、納豆用調味料を比較的簡単に調味料収納凹部の外部に吐出させて、納豆に注ぐことができる。
【発明の効果】
【0038】
従って、請求項1〜7に記載の発明によれば、使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している納豆用調味料を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出させることができる納豆容器、容器入り納豆を提供することにある。また、請求項8〜10に記載の発明によれば、上記の優れた容器入り納豆を製造するうえで好適な方法を提供することができる。また、請求項11〜12に記載の発明によれば、上記の優れた容器入り納豆において、納豆用調味料を納豆に容易にかつ手を汚すことなく注入することができる好適な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の納豆容器(蓋閉め前かつシール前)を示す平面図。
【図2】第1実施形態の納豆容器(蓋閉め後かつシール後)を示す平面図。
【図3】図2の納豆容器の正面図。
【図4】図2の納豆容器のA−A線断面図。
【図5】図2の納豆容器のB−B線断面図。
【図6】図2の納豆容器のC−C線断面図。
【図7】上記納豆容器の使用時の様子を説明するためのC−C線断面図。
【図8】上記納豆容器の使用時の様子を説明するためのA−A線断面図。
【図9】第2実施形態の納豆容器(蓋閉め前かつシール前)を示す一部破断平面図。
【図10】図9の納豆容器のD−D線断面図。
【図11】第3実施形態の納豆容器(蓋閉め前かつシール前)を示す一部破断平面図。
【図12】図11の納豆容器のE−E線断面図。
【図13】第4実施形態の納豆容器(蓋閉め前かつシール前)を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した一実施の形態の納豆容器11を図1〜図8に基づき詳細に説明する。
【0041】
図1〜図6に示されるように、本実施形態の納豆容器11は、納豆2及び納豆用調味料3を内部に別々に収納しておき、必要に応じて納豆用調味料3を納豆2に注ぎ入れることが可能な構造の容器である。この納豆容器11は発泡樹脂シート製の成型体12とシール材13とからなる容器であって、発泡樹脂シート製の成型体12は容器本体22と蓋体23とヒンジ部24とを備えた構造を有している。容器本体22は平面視矩形状であって、上側に開口26が形成された納豆収納凹部25を有している。この納豆収納凹部25には納豆2が収納される。蓋体23は容器本体22の開口26を塞ぐための部分であって、容器本体22と同じく平面視矩形状を呈している。容器本体22と蓋体23とはヒンジ部24を介して連結されている。
【0042】
図1等に示されるように、納豆容器11を構成する発泡樹脂シート製の成型体12は、厚さ3mm以内であることがよく、ここでは厚さ約1.5mmのものを使用している。発泡樹脂シートを構成する樹脂としては、発泡ポリスチレン樹脂を使用しているが、発泡ポリエチレン樹脂や発泡ポリウレタン樹脂等を使用してもよい。そして、この発泡樹脂シート製の成型体12では、短辺の方向(即ち図1の左右方向)が原反シートの巻き取り方向(原反の長手方向)となっている。発泡樹脂シート製の成型体12は、内部に多数の気泡を有している。これらの気泡は回転長円体状(あるいは回転楕円体状)の独立気泡であって、長軸が一定の方向に沿って配列した状態となっている。この方向のことを「気泡の配向方向D1」と呼ぶことにする。従って、この発泡樹脂シート製の成型体12においては、短辺の方向に気泡が配向していると把握できる。
【0043】
図1〜図8に示されるように、本実施形態の蓋体23は、蓋体外面23aにて開口する一対の調味料収納凹部32と、同じく蓋体外面23aにて開口する1本の断面略V字状の開裂溝31とを有している。開裂溝31と一対の調味料収納凹部32とは蓋体23において互いに連結している。一対の蓋体23は調味料収納凹部32及び開裂溝31は、もともと平坦であった発泡樹脂シートを金型成型して所定部分を裏面側に膨出させて成型体12とする際に形成されたものである。開裂溝31は、成型体12における蓋体領域の中央部に位置しているとともに、気泡の配向方向D1に対して垂直に延びている。本実施形態のように開裂溝31が気泡の配向方向D1に対して垂直であると、きれいに開裂しやすく最も好ましいが、その角度のズレが45°以内であれば比較的きれいに開裂することができ好ましい。より好ましくは±30°、さらに好ましくは±20°以内、特に好ましくは±10°以内である。一対の調味料収納凹部32は、開裂溝31を挟んでその両端側にそれぞれ配置されている。なお、本実施形態における一対の調味料収納凹部32は、大きさ及び形状が等しいが、必ずしもそうでなくてもよい。また、発泡樹脂シート製の成型体12の平面視において、調味料収納凹部32は、開裂溝31に向うに従って幅が徐々に狭くなる形状となっている。
【0044】
図4,図5等に示されるように、調味料収納凹部32の底部34は、開裂溝31に向って5°〜30°ほど傾斜している。このような傾斜は、底部34の全体に設けられていなくてもよく、一部に設けられていればよい。調味料収納凹部32は、開裂溝31と連結する部位において最も深くなっている。図4に示されるように、調味料収納凹部32の最深部の深さは、特に限定されないが5mm以上となるように設定されることがよい(本実施形態では約8mm)。開裂溝31の最浅部の深さは、特に限定されないが5mm以上となるように設定されることがよい(本実施形態では約7mm)。なお、開裂溝31の長さについては、特に限定されないが5mm以上となるように設定されることがよい(本実施形態では約12mm)。このような寸法設定にする理由としては、開裂溝31がよりいっそう破断して開裂しやすくなり、発泡樹脂のカスの発生をより確実に防止することができるからである。
【0045】
図1,図2,図5,図6等に示されるように、本実施形態の蓋体23は、蓋体外面23a側に隆起した形状の被操作部としての被押圧部38を一対有している。これらの被押圧部38は、蓋体23において開裂溝31を挟んだ両側に対峙して配置されている。また、被押圧部38は、蓋体23の中央部に位置する開裂溝31近傍位置から、蓋体23の外周部に向かって延びている。本実施形態の被押圧部38は、外端から内端に行くほど幅狭となる平面視形状を有している。この形状のメリットは、被押圧部38の面積が確保されるため操作性を維持できるとともに、比較的容易に応力を内端に集中させることができるという点である。
【0046】
また、被押圧部38の内端の幅は、特に限定されないが15mm以下となるように設定されることがよい(本実施形態では約12mm)。このような寸法設定にする理由としては、応力を開裂溝31に集中させることができる結果、開裂溝31がよりいっそう破断して開裂しやすくなるからである。
【0047】
開裂溝31の底部を基準とする被押圧部38の高さは、特に限定されないが5mm以上であることが好ましい(本実施形態では約7mm)。このような寸法設定にする理由としては、当該高さが低すぎると、例えば調味料収納凹部32を深く形成したような場合に、被押圧部38の上面が蓋体外面23aよりもかなり低くなり、シール材13を介して押圧しにくくなる可能性があるからである。被押圧部38の上面は、蓋体外面23aより7mm以内の位置(高さ)に設計することが好ましい。より好ましくは5mm以内、さらに好ましくは3mm以内、特に好ましくは1mm以内に設計することである。逆に、被押圧部38の上面を蓋体外面23aよりも高い位置に設計することも可能であるが、その場合には蓋体外面23aよりも3mm以内の位置(高さ)に設計することが好ましく、より好ましくは1mm以内に設計することである。このような設計とすれば、シール材13の溶着を問題なく行うことができ、かつ、納豆容器11を複数重ねたときでも安定的に配置することができる。ちなみに、本実施形態の被押圧部38は、上面が傾斜しておらず蓋体外面23aと同レベルの位置にある。
【0048】
図1、図2、図5等に示されるように、一対の被押圧部38の上面中央部には、蓋体外面23a側にて開口する溝41がそれぞれ形成されている。これらの溝41は、調味料収納凹部32及び開裂溝31ほど深くなくてよく、3mm以下(本実施形態では約1mm)となっている。なお、これらの溝41は、開裂溝31に対して直交する位置関係にある。従って、被押圧部38の押圧時には開裂溝31の中央部に応力が集中しやすい構造となっている。また、蓋体23を折り曲げることも想定すると、これらの溝41の存在が折り曲げ操作をより行いやすくするという利点もある。
【0049】
図1、図2、図4、図5等に示されるように、蓋体23には、蓋体外面23a側にて開口するとともに、調味料収納凹部32、被押圧部38及び開裂溝31をほぼ包囲する包囲溝42が設けられている。このような包囲溝42を設けた結果、蓋体23が全体的に補強されている。包囲溝42は、調味料収納凹部32及び開裂溝31ほど深くなくてよく、7mm以下(本実施形態では約5mm)となっている。
【0050】
図2〜図6等に示されるように、蓋体23の蓋体外面23a側には、可撓性及び液体不透過性を有するシール材13として、樹脂フィルムが熱溶着されている。この樹脂フィルムからなるこのシール材13は、特に凹凸加工を施したものではなく、略平坦でシンプルな構成を有している。シール材13を形成する樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等といった汎用樹脂が使用可能である。シール材13は、蓋体外面23aの全体を覆うように熱溶着されることで、調味料収納凹部32内の納豆用調味料3を密閉している。シール材13は透明、不透明を問わず選択することが可能である。例えば、前者であると、収納後であっても納豆用調味料3の状態等を目視確認または検査機による確認をすることができる。また、一対の被押圧部38がある位置を目視確認することができる。後者であると、納豆用調味料3の光による劣化等を防止することができる。ここで、納豆用調味料3としては、液体状の納豆用たれ等が具体例として挙げられる。また、本実施形態では、シール材13の裏面が一対の被押圧部38の上面に接しており、互いに熱溶着されている。
【0051】
次に、本実施形態の納豆容器11の使用方法(調味料注入方法)を図7、図8に基づいて説明する。まず、納豆2及び納豆用調味料3が収納された納豆容器11(即ち容器入り納豆)を用意する。この納豆容器11における容器本体22のフランジ部と蓋体23とは互いに溶着されている。また、蓋体23の蓋体外面23a側にはシール材13が熱溶着されている。
【0052】
そして、蓋体23を開封する前に調味料注入を行いたい場合には、シール材13を剥がすことなく下記の操作を行う。即ち、蓋体外面23a側からシール材13を介して被押圧部38の上面を指39で下方向に押圧する。すると、一対の被操作部38のすぐ近くに位置する開裂溝31に歪みが生じ、とりわけ底部中央部P1が左右方向に引っ張られ、当該箇所に応力が集中する。このため、底部中央部P1が他の部分より優先的に破断してシャープに開裂する(図8参照)。その結果、調味料収納凹部32に収納されていた納豆用調味料3が開裂溝31を介して開裂箇所(底部中央部P1)に到達し、そこから調味料収納凹部32の外部に吐出される。この状態において蓋体23の直下には納豆2が位置しているため、その納豆2上に容易にかつ確実に納豆用調味料3が注がれる。図7では、一対の被押圧部38の上面を2本の指39でそれぞれ押圧する様子を示したが、それらを1本の指39で押圧するようにしても構わない。この後、蓋体23を開封して納豆2を納豆用調味料3とともにかき回せば、喫食できる状態にすることができる。なお、蓋体23を先に開封した後であっても、いったん蓋体23を元の位置に戻して同様の操作を行えば、納豆用調味料3を注入することが勿論可能である。
【0053】
次に、本実施形態の容器入り納豆を製造する方法をいくつか例を挙げて説明する。
【0054】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は次のとおりである。まず、図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を上向きにして配置する。そして、蓋体23における一対の調味料収納凹部32に、図示しない充填装置を用いて納豆用調味料3を所定量充填する(調味料充填工程)。次に、納豆用調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐようにシール材13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉する(シール密閉工程)。次に、シール密閉工程を経た納豆容器11を反転させて、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、図示しない別の充填装置によって、容器本体22における納豆収納凹部25に所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。納豆用調味料3が充填されシール材13により密閉された状態の納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、蒸煮大豆が充填された納豆収納凹部25を塞ぐように蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蒸煮大豆と納豆用調味料3とが充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管することで納豆菌発酵を行い(発酵工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
【0055】
第1の製造方法によると、調味料3を充填してシール材13で密閉し、次いで蒸煮大豆を充填した後に蓋閉じを行うという順序であるため、以下の利点がある。例えば、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料3の充填及びシール密閉を行おうとすると、容器本体22が撓む可能性があり、上手くシールするためにはシール時間を長めに設定する、あるいはシール位置をできるだけ蓋体23の周縁部近くに設定するなどの工夫が必要になる。これに対して第1の製造方法によれば、シールしたい蓋体23だけをしっかり支えてシールすることが可能なため、容器本体22の撓みを防ぐことができ、シール密閉工程にて特に工夫をしなくても蓋体23を確実に密閉することができる。また、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料3の充填及びシール密閉を行う場合、調味料充填工程でのミス(液垂れなど)やシール不良が生じると、充填済みの蒸煮大豆が無駄になってしまう。これに対して第1の製造方法によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、調味料充填及びシール密閉工程でミスが起きやすい場合に、この製造方法を採用する価値がある。さらに第1の製造方法によれば、工程の比較的早い段階で調味料3を充填してシール材13で密閉しているので、調味料収納凹部32への異物の付着や菌汚染のリスクが小さくなり、衛生的に好ましい。
【0056】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は次のとおりである。まず、図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を下向きにし、かつ、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、納豆容器11の容器本体22における納豆収納凹部25に図示しない充填装置を用いて所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。次に、蒸煮大豆が充填された状態の納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、納豆収納凹部25を塞ぐように納豆容器11の蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蓋体23における調味料収納凹部32に、図示しない別の充填装置を用いて納豆用調味料3を所定量充填する(調味料充填工程)。次に、納豆用調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐようにシール材13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉する(シール密閉工程)。次に、蒸煮大豆と納豆用調味料とが充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管することで納豆菌発酵を行い(発酵工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
【0057】
第2の製造方法によると、蒸煮大豆を充填し、次いで調味料3を充填してシール材13で密閉した後に蓋閉じを行うという順序であるため、以下の利点がある。即ちこの順序であると、シール密閉工程において少々不便さがある一方で、納豆容器11自体を反転しなくてよいという利点があり、製造ラインを単純化できる点で好ましい。また、蒸煮大豆充填工程や蓋閉じ工程でのミス(豆のはみ出しによる容器汚れ、潰れなど)が生じると、充填済みの調味料3とシール材13とが無駄になってしまう。これに対して第2の製造方法によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、蒸煮大豆充填工程でミスが起きやすい場合に、第2の製造方法を採用する価値がある。
【0058】
(第3の製造方法)
第3の製造方法は次のとおりである。まず、図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を下向きにし、かつ、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、納豆容器11の容器本体22における納豆収納凹部25に、図示しない充填装置を用いて所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。次に、納豆収納凹部25に蒸煮大豆が充填された納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、納豆収納凹部25を塞ぐように蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蒸煮大豆が充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管して納豆菌発酵を行う(発酵工程)。次に、蓋体23における調味料収納凹部32に納豆用調味料3を充填する(調味料充填工程)。次に、納豆用調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐようにシール材13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉して(シール密閉工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
【0059】
第3の製造方法によると、蒸煮大豆を充填して蓋閉じしかつ納豆菌発酵を行ってから、調味料3を充填してシール材13で密閉するという順序であるため、設備上衛生的にキープできる設備で製造する場合には、問題なく採用することができる。また、納豆2の発酵不良などが生じる場合、調味料3を充填してから発酵という工程であると、充填済みの調味料3とシール材13とが無駄になってしまうが、納豆菌発酵後に調味料3の充填及びシールをすれば、そのような無駄の発生を防止することができる。つまり、発酵不良が起きやすい場合にこの製造方法を採用する価値がある。
【0060】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0061】
(1)本実施形態の納豆容器11によると、被押圧部38を蓋体外面23a側から押圧して開裂溝31に歪みを生じさせることにより、被押圧部38のすぐ近くに位置する開裂溝31の箇所に応力を集中させることができ、もって開裂溝31を開裂させることができる。その結果、調味料収納凹部32に収納されていた納豆用調味料3が開裂溝31を介して開裂箇所に到達し、そこから調味料収納凹部32の外部に吐出される。なお、蓋体23は発泡樹脂製であるため、切れ目などの構造を設けなくても、比較的容易に特定部位を開裂させることができる。ゆえに、内部に収納している納豆用調味料3を簡単に外部に吐出させることができる。また、本実施形態の納豆容器11によると、破断突起体帯や帯シール片を設ける必要がないため、構造的に簡単なものとなり、比較的低コストで製造することができる。
【0062】
(2)本実施形態では、もともと平坦であった発泡樹脂シートを金型成型にて納豆収納凹部25を成型するのと同時に調味料収納凹部32、被押圧部38、開裂溝31を成型することができる。よって、硬質プラスチックなどを用いる必要もなく、また容器製造工程を極めてシンプルにすることができ、比較的低コストで製造することができる。
【0063】
(3)さらに本実施形態の納豆容器11では、密閉用のシール材13の破断や剥離を伴わずに納豆用調味料3が吐出可能な構造となっている。そのため、使用後に帯シール片などの余分なゴミが発生しない。よって、自分の手や周囲を汚すことなく、しかも煩雑な作業を伴うことなく納豆用調味料3を吐出させることができ、取扱上便利である。
【0064】
(4)本実施形態の納豆容器11では、シール材13を介して指39で被押圧部38を押圧する構造を採用している。従って、比較的簡単な操作で被押圧部38に押圧力を加えることができ、結果的に開裂溝31の特定部位を容易にかつ確実に開裂させることができる。また、被押圧部38の一部をシール材13から露出させなくてもよく、被押圧部38をシール材13で覆う構造とすることができるため、無理なくシール材13を設置することができ、製造の困難性が小さくなる。そして、この構成であれば、蓋体23の上面から被押圧部38を突出させる必要がなく、シール材13を設けた状態では蓋体23の上面を平坦にすることができる。よって、シール材13の溶着を問題なく行うことができ、かつ、納豆容器11を複数重ねたときでも安定的に配置することができる。
【0065】
(5)本実施形態の納豆容器11では、調味料収納凹部32の底部34が開裂溝31に向って傾斜している。従って、調味料収納凹部32から開裂箇所に向けて納豆用調味料3がスムーズに案内され、納豆用調味料3をより簡単かつ確実に外部に吐出させることができる。特に本実施形態のように蓋体23を分離せずに納豆用調味料3を吐出させる場合でも、傾斜によって納豆用調味料3が流れやすくなるため、ヒンジ部24に近い側の調味料収納凹部32についても、納豆用調味料3を残らず注ぎだすことができる。
【0066】
(6)本実施形態の納豆容器11では、調味料収納凹部32、開裂溝31及び被押圧部38を包囲する包囲溝42が蓋体23に設けられている。このため、蓋体23が全体的に補強されて湾曲などが防止されるとともに、シール材13の捲れが防止される。また、蓋体23全体の変形等により被押圧部38に力が加わることで、開裂溝31が意図せずに開裂してしまうことも、未然に防止することができる。
【0067】
(7)本実施形態の納豆容器11では、密閉用のシール材13が平坦な樹脂フィルムであることから、切れ目や突起部がない極めて単純な構造となっており、加工コストを低く抑えることができる。また、シール材13側を折り曲げて開裂する必要がないことから、薄い樹脂フィルムを使用することができ、材料コストを低く抑えることができる。さらに、このような樹脂フィルムを蓋体23の蓋体外面23a側に溶着することで、漏れを防止しつつ調味料3を確実に収納することができる。
【0068】
(8)本実施形態の容器入り納豆では、蓋体23で容器本体22を塞いだときに、調味料収納凹部32及び開裂溝31が全体的に納豆収納凹部25によって覆われて保護され、外部に露出しない状態となる。ゆえに、調味料収納凹部32及び開裂溝31の破損や変形を未然に防止することができる。また、開裂溝31があらかじめ下側、つまり納豆収納凹部25側を向いているため、特に向きを変えることなく、そのまま被押圧部38を押圧して納豆用調味料3を吐出させることができる。よって、納豆2に調味料3を速やかに注ぐことができ、非常に利便性が高い。しかも、本実施形態の容器入り納豆の場合、蓋体23を閉じたままで納豆用調味料3を吐出可能であるため、納豆用調味料3によって自分の手や周囲を汚すことがないという利点がある。
【0069】
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態の納豆容器11Aを図9、図10に基づき詳細に説明する。
【0070】
本実施形態の納豆容器11Aは、上記第1実施形態と同様に一対の被押圧部38Aを備えているが、その形状が若干異なっている。即ち、本実施形態の被押圧部38Aは、図9に示されるように、第1実施形態の被押圧部38に比べて外端の幅が細く形成されている。また、図10に示されるように、被押圧部38Aの上面は外端から内端に向かって若干傾斜しており、全体的に蓋体外面23aよりも低い位置にある。そのため、シール材13の裏面は、被押圧部38Aの上面から離間し、接していない状態となっている。このような構造の納豆容器11Aであっても、シール材13を介して被押圧部38Aを指39で押圧することができ、開裂溝31の特定部位を容易にかつ確実に開裂させることができる。よって、使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している納豆用調味料3を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出させることができる。なお、この構成であると、被押圧部38Aが蓋体外面23aから引っ込んでいるため、被押圧部38に対して不測の押圧力が加わりにくい。ゆえに、開裂溝31が意図せずに開裂するリスクを確実に低減することができる点で有利である。
【0071】
[第3実施形態]
以下、本発明を具体化した第3実施形態の納豆容器11Bを図11、図12に基づき詳細に説明する。
【0072】
本実施形態の納豆容器11Bは、上記第1実施形態と同様に一対の被押圧部38Bを備えているが、その形状が異なっている。即ち、本実施形態の被押圧部38Bは、図11に示されるように平面視で略矩形の島状を呈しており、第1実施形態のときよりも小面積となるように形成されている。また、このような被押圧部38Bを採用した結果、調味料収納凹部32がつながって1つになっている。このような構造の納豆容器11Bであっても、シール材13を介して被押圧部38Bを指39で押圧することができ、開裂溝31の特定部位を容易にかつ確実に開裂させることができる。よって、使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している納豆用調味料3を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出させることができる。なお、この構成であると、被押圧部38Bが小さくなる分、調味料収納凹部32の容積が増えるため、より多くの納豆用調味料3を収納可能となる点で有利である。
【0073】
[第4実施形態]
以下、本発明を具体化した第4実施形態の納豆容器11Cを図13に基づき詳細に説明する。
【0074】
上記第1実施形態では、容器本体22と蓋体23とを分離するための分離加工部が特に形成されていなかったが、第4実施形態の発泡樹脂シート製の成型体12Aのように、ヒンジ部24近傍に分離加工部51を形成してもよい。好適な分離加工部としてはミシン目などがある。ミシン目はヒンジ部24に沿って1本または2本形成される。このような構成であると、容器本体22と蓋体23とを容易に分離することができる。また、分離加工部51を設けておけば、切り離してから納豆用調味料3を注ぎたいか、切り離さずに納豆用調味料3を注ぎたいか、というように、ユーザーが好みに合わせて自由に選択できるようになる。
【0075】
また、第1実施形態では気泡の配向方向D1が成型体12の短辺方向に平行であったが、第4実施形態では成型体12Aの長辺方向に平行である点で相違している。よって、ミシン目などの分離加工部51が、気泡の配向方向D1に直交して延びるように配置されている。この構成であると、分離加工部51の強度低下を回避することができる点で有利である。
【0076】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、蓋体23に2つの調味料収納凹部32を設けたものを示したが、調味料収納凹部32の数は2つに限らず、1つのみあるいは3つ以上であってもよい。また、調味料収納凹部32が複数ある場合、同じ種類の調味料を収納してもよいほか、異なる種類の調味料を収納してもよい。
【0078】
・上記実施形態では、容器本体22と蓋体23とが一体的に形成されていたが、それぞれ別体として形成されたものであってもよい。
【0079】
・上記実施形態では、被操作部として被押圧部38〜38Bを設け、その被押圧部38〜38Bを指39で下方に押圧力を加えて開裂させるものとしたが、当該方向以外の方向に押圧力を加えて開裂させるような構成とすることもできる。また、被操作部として被押圧部を採用する代わりに、例えば引っ張ったり捩じったりするような操作を行う被操作部を設け、引っ張り力や捩じり力により開裂溝31に応力を集中させ、開裂させるようにしてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、シール材13によって蓋体23における蓋体外面23aの全体を覆うように熱溶着したが、必要に応じて被操作部を露出させ、直接操作できるようにしてもよい。
【0081】
・上記実施形態ではシール材13として樹脂フィルムを用いたが、樹脂フィルム以外のものを使用してもよい。つまり、ある程度薄くて可撓性や液体不透過性を有するものであれば、必ずしも樹脂製でなくてもよい。そのようなものとして、例えば、油含浸紙、フィルムコート紙、金属ラミネートフィルム、金属箔などを挙げることができる。
【0082】
・上記実施形態では、本発明を、食品収納凹部25に納豆2が収納され、調味料収納凹部32に納豆用調味料3が収納される納豆容器11〜11Cに具体化したが、納豆容器以外の食品容器に具体化しても勿論よい。
【0083】
次に、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)手段1乃至12のいずれか1項において、前記開裂溝は前記蓋体の中央部に位置していること。
(2)手段1乃至12のいずれか1項において、前記発泡樹脂のシート厚さが3mm以下、前記開裂溝の最浅部の深さが3mm以上、前記開裂溝の長さが5mm以上、前記被操作部の内端の幅が10mm以下であること。
(3)手段1乃至12のいずれか1項において、前記被操作部は、前記蓋体の中央部に位置する前記開裂溝近傍の位置から前記蓋体の外周部に向かって延びていること。
(4)手段1乃至12のいずれか1項において、前記調味料収納凹部は複数であること。
(5)手段1乃至12のいずれか1項において、前記調味料収納凹部は前記開裂溝を挟んで一対配置されていること。
(6)手段1乃至12のいずれか1項において、前記被操作部の上面は前記開裂溝に向かって傾斜しており、前記シール材の裏面に接していないこと。
(7)手段1乃至12のいずれか1項において、前記被操作部の上面は前記シール材の裏面に接していること。
(8)手段1乃至12のいずれか1項において、前記被操作部は外端から内端に行くほど幅狭となる平面視形状を有すること。
(9)手段1乃至12のいずれか1項において、前記開裂溝の底部を基準とする前記被操作部の高さは5mm以上であること。
(10)手段2乃至12のいずれか1項において、前記容器本体と前記蓋体とを分離するための分離加工部が前記ヒンジ部近傍に形成されていること。
(11)手段2乃至12のいずれか1項において、前記容器本体と前記蓋体とを分離するためのミシン目が前記ヒンジ部近傍に形成されていること。
(12)手段2乃至12のいずれか1項において、前記食品容器は、長辺及び短辺を有する長方形状の発泡樹脂シート製の成型体からなり、前記短辺の方向が原反シートの巻き取り方向(原反の長手方向、気泡の配向方向D1)となっていること。
(13)手段2乃至12のいずれか1項において、前記食品容器は、長辺及び短辺を有する長方形状の発泡樹脂シート製の成型体からなり、前記長辺の方向が原反シートの巻き取り方向(原反の長手方向、気泡の配向方向D1)となっていること。
【符号の説明】
【0084】
2…納豆
3…納豆用調味料
11,11A,11B,11C…食品容器としての納豆容器
12,12A…容器本体
13…シール材
22…容器本体
23…蓋体
23a…蓋体外面
23b…蓋体内面
24…ヒンジ部
25…納豆収納凹部
26…開口
31…開裂溝
32…調味料収納凹部
34…(調味料収納凹部の)底部
38,38A,38B…被操作部としての被押圧部
41…折曲溝
42…包囲溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品収納凹部を有する容器本体と、前記容器本体の開口を塞ぐ発泡樹脂製の蓋体とを有する食品容器であって、
前記蓋体には、蓋体内面側に膨出した形状の調味料収納凹部が設けられるとともに、前記調味料収納凹部に連通する開裂溝が設けられ、
前記蓋体において前記開裂溝を挟んでその両側には、蓋体外面側に隆起した形状の被操作部が対峙して配置され、
前記蓋体の前記蓋体外面側には、前記調味料収納凹部の開口を覆って密閉するシール材が設けられ、
前記被操作部を前記蓋体外面側から操作して前記開裂溝に歪みを生じさせることにより、前記開裂溝が開裂しうるように構成されている
ことを特徴とする食品容器。
【請求項2】
前記被操作部は、前記シール材を介して指で押圧される被押圧部であることを特徴とする請求項1に記載の食品容器。
【請求項3】
前記調味料収納凹部の底部は、前記開裂溝に向って傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の食品容器。
【請求項4】
前記蓋体には、前記調味料収納凹部、前記開裂溝及び前記被操作部を包囲する包囲溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の食品容器。
【請求項5】
前記容器本体と前記蓋体とそれらを連結するヒンジ部とが、前記発泡樹脂を用いて一体的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の食品容器。
【請求項6】
前記食品収納凹部には納豆が収納され、前記調味料収納凹部には納豆用調味料が収納されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の食品容器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器における前記食品収納凹部に納豆を収納し、前記調味料収納凹部に納豆用調味料を収納してなる容器入り納豆。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器の前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、
前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、
前記容器本体における前記食品収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記食品収納凹部を塞ぐように、前記納豆用調味料が充填され前記シール材により密閉された前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、
前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記食品容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と
を含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器の前記容器本体における前記食品収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記食品収納凹部を塞ぐように前記食品容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、
前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、
前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、
前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記食品容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と
を含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の食品容器の前記容器本体における前記食品収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記食品収納凹部を塞ぐように前記食品容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記食品容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と、
前記蓋体における前記調味料収納凹部に前記納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、
前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と
を含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【請求項11】
請求項7に記載の容器入り納豆の前記被操作部を前記蓋体外面側から操作して前記開裂溝を開裂させることにより、前記納豆に前記納豆用調味料を注入する方法。
【請求項12】
請求項7に記載の容器入り納豆の前記被操作部を前記蓋体外面側から前記シール材を介して押圧して前記開裂溝を開裂させることにより、前記納豆に前記納豆用調味料を注入する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−103728(P2013−103728A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247318(P2011−247318)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(301058355)株式会社ミツカン (32)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】