説明

食品容器封緘用粘着テープ

【課題】冷蔵ショーケース内の剥がれが無く、また電子レンジ加熱後にも糊残りせず、なおかつテープにノッチが入っていても、テープを切ったときに千切れが発生しない粘着テープを提供する。
【解決手段】基材と前記基材の少なくとも片面に形成された粘着剤層からなる粘着テープであって、前記基材の23℃における引張弾性率が1000〜4000MPaの範囲であることを特徴とする粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、詳しくは電子レンジで加熱して調理される食品容器封緘用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアやスーパー等で販売される弁当類の包装では、従来のラップ包装に変わり、粘着テープのみの包装形態が提案されている。
【0003】
しかし、この包装形態においては、電子レンジで加熱した後、テープを剥がす、またはノッチ部分より切ろうとすると、容器に糊残りが生じたり、テープが細かく千切れてしまい指にまとわりつくなどの課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冷蔵ショーケース内の剥がれが無く、また電子レンジ加熱後にも糊残りせず、なおかつテープにノッチが入っていても、テープを切ったときに千切れが発生しない粘着テープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の粘着テープを提供するものである。
(1)基材と前記基材の少なくとも片面に形成された粘着剤層からなる粘着テープであって、前記基材の23℃における引張弾性率が1000〜4000MPaの範囲であることを特徴とする粘着テープ。
(2)前記基材の70℃における引張弾性率が500〜2500MPaの範囲であることを特徴とする、(1)に記載の粘着テープ。
(3)基材がPETフィルム、またはインフレーション押し出し成形にて形成された二軸延伸OPPフィルムであることを特徴とする(1)または(2)に記載の粘着テープ。
(4)基材の厚みが50μm〜100μmの範囲である(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着テープ。
(5)テープの表面部分に、長さ1〜5mm、間隔3〜8mmで、手で切るための切れ目を設けてあることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着テープ。
(6)弁当などの容器封緘に用いられる(1)〜(5)に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コンビニ、スーパーなどの冷蔵ショーケース内では剥がれがなく、電子レンジ加熱後に手でテープを切って食品入りの容器を開ける際にも千切れたテープが手に付着することはない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の粘着テープを示す概略図である。
【図2】本発明の粘着テープを弁当箱に適用し、指で切る前の図である。
【図3】本発明の粘着テープを弁当箱に適用し、指で切った後の図である。
【図4】低音接着性評価方法を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の粘着テープは、電子レンジの加熱に供される食品入り容器の封緘に好ましく使用される。
【0009】
該粘着テープは、封緘された容器において手で粘着テープをちぎることができるものである。この要求を満たすために、テープの基材の23℃での弾性率は1000〜4000MPa程度、好ましくは1500〜3500MPa程度である。また、テープの基材の70℃での弾性率は500〜4000MPa程度、好ましくは600〜1600MPa程度である。これらの弾性率の条件を満たすことで、テープを加熱前の室温もしくは加熱後のいずれであっても封緘に十分な強度を保持しつつ、手で容易に千切れるという相反する要件を満たすことになる。
【0010】
このような要件を満たす粘着テープの基材としては、ポリエステルフィルム(好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)、またはインフレーション押し出し成形にて形成された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(二軸延伸OPPフィルム)が特に好ましく使用できる。二軸延伸OPPフィルムは、手でちぎった場合に指に付着することはないが、Tダイ押し出し成形にて形成された延伸ポリプロピレンフィルムではちぎったときに指に付着する不具合がある。フィルムの指への付着は粘着剤が関係すると思われるが、テープの基材も大きく関係する。
【0011】
基材の厚みとしては、15μm〜100μm、好ましくは18μm〜60μmの範囲である。基材が薄すぎると粘着テープの強度が弱く、切れやすくなり、粘着テープで封緘する場合にもテープにコシがなく、封緘の作業効率が低下する。基材が厚すぎると、手で切断するのが難しくなる。
【0012】
本発明の粘着テープは、基材と該基材の少なくとも片面に形成された粘着剤層とからなる。上記粘着剤層は(A)(メタ)アクリル系共重合体、(B)粘着付与樹脂、及び、(C)硬化剤を含有する粘着剤組成物を塗工してなるものである。
【0013】
上記(メタ)アクリル系共重合体は、(a)アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b)カルボキシル基含有単量体、必要に応じて(c)その他重合可能な単量体を含有する単量体混合物を重合することにより得られるものである。上記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは特に限定されず、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)等が好適である。
【0014】
上記単量体混合物における上記炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合量の下限は91重量%、上限は99.8重量%である。上記炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合量が91重量%未満であると、低温粘着性が不十分になり、99.8重量%を超えると、粘着力が低下する。
【0015】
上記カルボキシル基含有単量体は特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好適である。
【0016】
上記単量体混合物における上記カルボキシル基含有単量体の配合量の下限は0.1重量%、好ましくは0.5重量%、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは3重量%、特に好ましくは5重量%である。上記カルボキシル基含有単量体の配合量の上限は9重量%、好ましくは7重量%、より好ましくは6重量%、特に好ましくは5重量%である。上記カルボキシル基含有単量体の配合量が0.1重量%未満であると、硬化剤との反応点が消失し粘着力が著しく低下し、9重量%を超えると、低温接着性が低下する。上記カルボキシル基含有単量体の配合量の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は7重量%であり、より好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0017】
上記その他重合可能な単量体は特に限定されず、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等や、アクリルアミド、2−メチルアクリルアミド、2−エチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド基含有単量体等が挙げられる。これらのその他重合可能な単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、酢酸ビニル、アミド基含有単量体が好適である。
【0018】
上記単量体混合物における上記その他重合可能な単量体の配合量は、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。
【0019】
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、ロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、テルペンフェノールや水素化テルペン等のテルペン系樹脂が好適である。粘着付与樹脂は、低温時に封緘に十分な粘着力を付与し、加熱後の千切れたテープが手指に付着しない、狭い範囲の粘着力を与えるために配合されるものである。
【0020】
上記粘着剤組成物において上記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対する上記粘着付与樹脂の配合量の下限は0.5重量部、上限は10重量部である。上記粘着付与樹脂の配合量が0.5重量部未満であると、粘着力が低下し、10重量部を超えると、経時での変色等の問題が発生する。上記粘着付与樹脂の配合量の好ましい下限は0.8重量部、好ましい上限は9重量部であり、より好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0021】
上記粘着剤組成物は、硬化剤としてエポキシ系、イミン系、イソシアネート系などの硬化剤を使用する。エポキシ系硬化剤としては、N,N’−(シクロヘキサン−1.3−ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)が挙げられ、イミン系硬化剤としては、N,N−ヘキサメチレン−1.6−ビス(1−アジリジニルカルボキシアミド)などが挙げられ、イソシアネート系硬化剤としては、トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
上記粘着剤組成物において上記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対する上記硬化剤の配合量の下限は0.001重量部、上限は3重量部である。上記硬化剤の配合量が0.001重量部未満であると、再剥離性が低下し、3重量部を超えると、ガラス転移点が過剰に高温になり、タックが低下する。上記硬化剤の配合量の好ましい下限は0.005重量部、好ましい上限は2.5重量部であり、より好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は2.0重量部である。
【0023】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤、熱安定剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0024】
本発明の粘着テープには、手で容易に千切れるように切れ目を入れるのが好ましい。切れ目の方向は幅方向でも長さ方向でもよいが、好ましくは長さ方向に切れ目を入れる。切れ目は中央付近に入れてもよいが、好ましくは図1に示すように粘着テープの両側に切れ目を入れるのが好ましい。切れ目の長さ、間隔は、テープの基材の厚み、強度、幅等により異なり、特に限定されないが、例えば長さ1〜5mm、間隔3〜8mmが好ましく例示される。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1〜3及び比較例1〜3
下記の表1に示す粘着剤層の粘着剤、基材を有する粘着テープを作製した。基材の厚みはPETフィルムでは25μm、インフレ成形でのOPPフィルムは50μm、Tダイ成形でのOPPフィルムは40μmであり、粘着剤層の厚みは25μmであった。また、テープの切れ目は長さ5mm、間隔5mmであった。このテープを用いて弁当を封緘し以下の評価項目について試験した。結果を表1に示す。
(1)粘着力
25℃湿度65%の環境下で、得られた粘着テープを10mm幅の短冊状に細切して、ステンレス板に2kgゴムローラ1往復の荷重にて貼り合わせた。その後、JIS規格(JIS Z 0237)に準ずる方法により剥離速度300mm/minで180°方向のピール試験を行い、応力を測定した。
(2)保持力
JIS-Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に順ずる測定装置にて、テープの幅24mm、長さ24mmとし、JIS-G4305に定める表面仕上げBAの鋼板を被着体とし、垂直方向に1kgの荷重をかけ2時間経過後のズレ値を測定した。
(3)23℃引張弾性率
JIS-B7721に規定する、引張試験機を用いて、試験機の測定部分に温度23±1℃に保てる恒温槽を設けた。テープを幅24mm、長さ200mmに裁断し試験片を得て、試験機に測定部の距離が100mmとなるように装着後、恒温槽内に3分以上放置した後、引張速度5mm/secの速度で引っ張り、応力・歪み曲線を得た。この応力・歪み曲線を解析し、23℃での引張弾性率を算出した。
(4)70℃引張弾性率
恒温槽の温度を70±1℃に保った以外は、23℃弾性率と同様の試験方法にて、70℃での引張弾性率を算出した。
(5)低温接着性
JIS-B7721に規定する、引張試験機を用いて、試験機の測定部分に温度5±1℃に保てる恒温槽を設けた。テープを幅24mm、長さ200mmに裁断し試験片を得て、試験片をループ状に丸め、テープ両端を引張試験機の上部チャックにセットした。引張試験機の下部チャックには、板状の被着体を水平に保てる治具を用いて、ポリスチレン板をセットした。引張試験機の上側チャックを徐々に降下させ、試験片のループ部分頂点が被着体に接した位置をゼロ点とし、そこから更に10mm上側チャックを降下させ、被着体との接触面積を広げた(この時、被着体にはテープの自重分のみの荷重がかかることになる)。その後、5mm/secの速度で引張試験機を上昇させ、その時の荷重最大値を読み取った。この数値が1.5N/10mmを超えるものを○、1.01〜1.5N/10mmを△、1.0N/10mm未満のものを×として評価した。(図4参照)
(6)加熱後糊残り
容器と蓋とからなる内容量500MLのポリスチレンの容器に350MLの水道水を加え、幅18mm、長さ150mmに裁断したテープにて、蓋の上から容器にかけて四方にL字型に貼付し、電子レンジにて約2分加熱し水の温度が70℃前後になるよう調整した。電子レンジから取り出し後、時間をおかず直ぐにテープを剥離して、ポリスチレン容器上への粘着剤の残りを目視にて確認した。
(7)切断時千切れ
幅18mm、長さ150mmに裁断したテープの端部から3mmの部分に長さ5mmのノッチを5mm間隔で刻み試験片を得た。試験片を容器と蓋とからなるポリスチレンの容器に、蓋の上から容器にかけてL字型に貼付し、2時間以上放置した。2時間以上経過後に、L字型に貼付したテープの隙間から指を入れ、引っ掛けるように手前に引き、テープの切断を試みた。切断したテープが2つに切れ、指に付着しなかったものを○、3つ以上に分断され、断片が指に付着したものを×として評価した。
(8)ボールタック
JIS-Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に記載の傾斜式ボールタックに従い試験を行った。傾斜角は30°であり、助走路および測定部の長さは夫々100mmである。1/32インチ(No.1)〜1(No.32)インチの鋼球を小さい方から順に転がし、測定部に止まったボールの最大径を測定値とした。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材の少なくとも片面に形成された粘着剤層からなる粘着テープであって、前記基材の23℃における引張弾性率が1000〜4000MPaの範囲であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記基材の70℃における引張弾性率が500〜2500MPaの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
基材がPETフィルム、またはインフレーション押し出し成形にて形成された二軸延伸OPPフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
基材の厚みが50μm〜100μmの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
テープの表面部分に、長さ1〜5mm、間隔3〜8mmで、手で切るための切れ目を設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
弁当などの容器封緘に用いられる請求項1〜5に記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211247(P2012−211247A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77185(P2011−77185)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】